JP5358242B2 - 重合体粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、重合体粒子及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、モノマー液滴の懸濁安定性の向上、重合体粒子の水への分散性の向上、懸濁安定剤の脱落の抑制をし得る重合体粒子の製造方法、その方法により得られた重合体粒子及びその用途に関する。本発明の重合体粒子は、コーティング用組成物、バリ取り用研磨剤等として好適に使用できる。
平均粒子径が0.01〜100μmの重合体粒子は、例えば、塗料や、インキ粘着剤用、接着剤用、人工大理石用等の添加剤や、紙処理剤用、化粧品用等の充填材や、クロマトグラフィーのカラム充填材や、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤や、フィルム用のアンチブロッキング剤や、光拡散剤等の用途で使用されている。
上記重合体粒子は、通常懸濁重合により製造されている。懸濁重合では、モノマーを含む液滴を、合一のないかつ安定に懸濁した系で重合させる方法、及び重合によって均一な粒子径分布を有する微細な重合体粒子を得る方法について種々の検討がなされてきた。
ところで、懸濁重合では、様々な懸濁安定剤を使用することが報告されている。例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、澱粉等の水溶性高分子や、難溶性の微粉末状の無機化合物が一般に使用されている。無機化合物としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性塩類、珪酸、粘土、シリカ、金属酸化物の粉末等が知られている。
上記懸濁安定剤の内、水溶性高分子を用いた場合、懸濁重合によって得られた粒子は、粒子径分布が広いという欠点があった。加えて、併発する乳化重合により微粒子が多く発生すること、及び重合体粒子表面に付着した懸濁安定剤の除去が困難である欠点もあった。
また、難水溶性塩類を用いた場合、比較的粒子径分布を狭くできる。しかし、微小な重合体粒子を得るためには、難水溶性塩類の量を比較的多くする必要があり、併発する乳化重合により微粒子が多く発生するという欠点があった。そのため、重合後に、比較的多量の酸による洗浄、引き続き多量の水による洗浄を行う必要があり、製造工程が煩雑となっていた。
そこで、微粒子の発生を抑制し、粒子径分布の狭い重合体粒子を得る方法が、例えば、特開昭62−266561号公報(特許文献1)、特開平10−237216号公報(特許文献2)、特開2000−355639号公報(特許文献3)等に報告されている。
特開昭62−266561号公報には、重合性モノマーを水相中で重合させるに際して、水相にシリカと水溶性無機塩とを含有させる方法が記載されている。この公報によれば、シリカと水溶性無機塩とを併用することで、粒子径分布の狭い重合体粒子が得られるとされている。
一方、特開平10−237216号公報及び特開2000−355639号公報には、疎水性シリカ粒子を、アルコールのような親水性有機化合物の存在下に、水性媒体中に分散させ、得られた水性媒体中で、重合性モノマーを懸濁重合させる方法が記載されている。これら公報に記載の方法では、疎水性無機酸化物を、親水性有機化合物の存在下に、水性媒体中に分散させ、得られた水性分散媒体中で、重合性モノマーを所定粒子径に懸濁させ、次いで懸濁重合させることで、粒子径分布の狭い重合体粒子が得られるとされている。
本発明者は、重合体粒子を簡便に製造する方法として、懸濁安定剤としてのコロイダルシリカと、アルカリ金属のハロゲン化物との存在下に特定の成分を含む重合性モノマーを重合させる方法を発明した(特開2007−217645号公報(特許文献4))。
特開昭62−266561号公報 特開平10−237216号公報 特開2000−355639号公報 特開2007−217645号公報
しかしながら、特開昭62−266561号公報では、重合性モノマーを水相に安定に分散させるため、比較的多量のシリカが必要であった。
一方、特開平10−237216号公報及び特開2000−355639号公報では、疎水性シリカ粒子を、水性媒体中に均一に分散させるために比較的多量の親水性有機化合物が必要である。親水性有機化合物は、そのまま廃棄することが困難であり、かつ再資源化が望まれている。そのため、重合後に親水性有機化合物の回収が必要であり、製造工程が煩雑となっていた。
特開2007−217645号公報では、比較的簡便ではあるものの、さらに簡便な方法が求められている。
したがって、従来技術と比較してより簡便な方法で、モノマー液滴の懸濁安定性を向上し得る重合体粒子の製造方法、更には、懸濁安定化剤として用いたコロイダルシリカの、得られた重合体粒子表面からの脱落を抑制でき、製造工程時の洗浄、固液分離等が容易な製造方法の提供が望まれている。
本発明の発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、水酸基を有するモノマーを含む重合性ビニル系モノマーの水系懸濁重合により、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、
重合性ビニル系モノマーと重合開始剤とを含むモノマー混合物を、懸濁安定剤としてコロイダルシリカの存在下に水系懸濁重合させることにより、重合体粒子を得る方法であって、
前記モノマー混合物が、前記重合性ビニル系モノマー100重量部に対し、水酸基を有するモノマーを0.5〜30重量部の範囲で含むことを特徴とする重合体粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記方法により得られた重合体粒子であって、重合性ビニル系モノマー由来の重合体成分と、コロイダルシリカ由来のシリカ成分とを含むことを特徴とする重合体粒子も提供される。
本発明によれば、懸濁重合時のモノマー液滴の安定性を簡便な方法により向上させた重合体粒子の製造方法を提供できる。また、懸濁安定剤として用いたコロイダルシリカの、得られた重合体粒子表面からの脱落を抑制でき、重合体粒子の製造工程における洗浄、固液分離等の容易な製造方法を提供できる。
更に、重合体粒子表面に残存するコロイダルシリカの効果により、重合体粒子の水性媒体への分散性を向上させることが可能となる。分散性の向上した重合体粒子は、水系塗料用の艶消し剤や、化粧品の原料、光拡散剤等に好適に使用できる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明に使用できる重合性ビニル系モノマーは、特には限定されず、ビニル基が1つのモノマー(単官能モノマー)、2つ以上のモノマー(多官能モノマー)が挙げられる。単官能モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びその誘導体、
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体がある。場合によっては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸等も使用できる。更に、これらを2種以上組合せて用いてもよい。
上記単官能モノマー中、安価なスチレンやメタクリル酸メチル等が好ましい。
また、多官能モノマーとして、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。このモノマーを使用することで、架橋した重合体粒子を得ることができる。本発明では、耐溶剤性付与の観点から、重合性ビニル系モノマー中に、単官能及び多官能モノマーを含むことが好ましい。多官能モノマーは、全モノマー中、0.5〜50重量%の範囲で使用することが好ましく、1〜40重量%の範囲で使用することがより好ましい。
また、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタリン塩等を本発明の効果を妨げない範囲で1種もしくは2種以上組合せて使用することもできる。
本発明において、前記重合性ビニル系モノマー100重量部に対し、水酸基を有するモノマー0.5〜30重量部を使用する。これにより、懸濁重合に分散安定剤として使用するコロイダルシリカを重合体粒子表面に強固に付着させることができる。
本発明において使用することのできる水酸基を有するモノマーは、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等のメタクリル酸ヒドロキシアルキル、又は下記の一般式(I)、(II)等の(メタ)アクリル酸エステル系誘導体を使用することができる。なお、(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを意味する。
特に好ましくは、一般式(I)及び/又は(II):
一般式(I):
(式中、R1はH又はCH3であり、R2及びR3はそれぞれCH2CH2又はCH3CHCH2であり、m及びnはそれぞれ1〜50である)、
一般式(II):
(式中、R4はH又はCH3であり、pは1〜50である)
の第一級水酸基を有するモノマーである。
ここで、一般式(I)中、m及びnは、それぞれ好ましくは1〜20であり、更に好ましくは2〜15である。
また、一般式(II)中、pは、好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜5である。
なお、一般式(I)中の[(R2O)m−(R3O)n]は、ブロック状であっても、任意にモノマー単位が組合せられていてもよい。
水酸基を有するモノマーの添加量は、重合性ビニル系モノマー100重量部に対して、0.5〜30重量部であり、好ましくは1〜20重量部である。0.5重量部未満の場合、懸濁安定剤としてのコロイダルシリカが、重合体粒子に固着せず、水性媒体中に残存することがあり、重合体粒子の単離が困難となるので好ましくない。一方、30重量部より多い場合、添加する量に見合った効果(懸濁安定性)が得られず、経済的でもないため好ましくない。
重合性ビニル系モノマーの重合には、重合開始剤が使用される。重合開始剤としては、通常、水系懸濁重合に用いられる油溶性の過酸化物系重合開始剤又はアゾ系重合開始剤が挙げられる。具体的には、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤、
2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、(2−カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等のアゾ系重合開始剤が挙げられる。
この中でも、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が、重合開始剤の分解速度等の点で好ましい。
重合開始剤は、重合性ビニル系モノマー100重量部に対して、0.01〜10重量部用いるのが好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0重量部である。重合開始剤が0.01重量部未満では、重合開始の機能を果たし難く、また、10重量部を越えて用いる場合は、コストがかかるので不経済的であるため好ましくない。
上記重合性ビニル系モノマー、水酸基を有するモノマー、重合開始剤及び/又はその他の成分は、公知の方法により混合されてモノマー混合物とされる。
次に、モノマー混合物を水系懸濁重合させるための水性媒体としては、水、又は水とアルコール(例えば、メタノール、エタノール)のような水溶性溶媒との混合媒体が挙げられる。水性媒体の使用量は、重合体粒子の安定化を図るために、通常、重合性ビニル系モノマー及び水酸基を有するモノマーの合計100重量部に対して、100〜1000重量部である。
また、水系での乳化粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
懸濁安定剤としてのコロイダルシリカは、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。
コロイダルシリカとしては平均粒子径が500nm以下のものを用いることが好ましい。500nmより大きい場合には、安定に懸濁重合を行うために必要な添加量が多くなり、経済的でないため好ましくない。加えて、安定にモノマー混合物を分散させることが困難であるため好ましくない。平均粒子径は、できるだけ小さいことが好ましく、10〜150nmの範囲であることがより好ましく、10〜100nmの範囲であることが更により好ましい。
ここでコロイダルシリカの平均粒子径は、窒素吸着法(BET法)により測定して得られる比表面積径である。平均粒子径(比表面積径)(Dnm)は、窒素吸着法で測定して、比表面積Sm2/gから、D=2720/Sの式によって与えられる。
コロイダルシリカとしては、沈降性シリカパウダー、気相法シリカパウダー等パウダー状のコロイダルシリカ、媒体中で一次粒子レベルまで安定分散させたコロイダルシリカのゾルが使用できる。この内、後者が好ましい。コロイダルシリカのゾルとしては水性シリカゾルとオルガノシリカゾルがありどちらも使用可能である。特に、重合体粒子の製造に水性媒体を用いるため、コロイダルシリカのゾルの分散安定性の面から水性コロイダルシリカを使用することが最も好ましい。コロイダルシリカのゾル中のシリカ濃度(固形分濃度)は5〜50重量%のものが一般に市販されており、容易に入手できるので好ましい。
コロイダルシリカは、重合性ビニル系モノマー100重量部に対して、0.5〜15重量部の範囲であることが好ましく、1〜10重量部の範囲であることがより好ましい。0.5重量部未満の場合、分散安定性が低くなるので好ましくない。一方、15重量部を越える場合、それに見合った効果が見られないので好ましくない。
また、本発明においては、更に分散安定性を向上する目的で、アルカリ金属塩を添加することが好ましい。アルカリ金属塩としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、臭化ナトリウム、臭化マグネシウム等が挙げられる。特に、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の塩化物が好ましい。
アルカリ金属塩は、水性媒体100重量部に対し、0.1〜10重量部使用することが好ましく、0.5〜5重量部の範囲であることがより好ましい。
更に、コロイダルシリカによる懸濁安定性向上の効果を妨げない範囲内で、他の懸濁安定剤を添加してもよい。
また、懸濁安定剤と、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤とを併用することも可能である。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
これら懸濁安定剤や界面活性剤は、単独で又は2種以上を組合せて用いてもよいが、得られる重合体粒子の径と重合時の分散安定性を考慮して、懸濁安定剤及び界面活性剤の選択や使用量を適宜調製して使用される。
このようにして調製された水性媒体にモノマー混合物を添加して、水系懸濁重合を行う。
モノマー混合物の分散方法として、例えば、水性媒体中にモノマー混合物を直接添加し、プロペラ翼等の攪拌力によりモノマー滴として水性媒体に分散させる方法、ローターとステーターから構成される高せん断力を利用する分散機であるホモミキサー、もしくは超音波分散機等を用いて分散させる方法等が挙げられる。この内、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等のモノマー液滴同士の衝突や機壁への衝突力を利用した高圧型分散機やMPG(マイクロポーラスガラス)多孔膜を通してモノマー混合物を水性媒体中に圧入させる等の方法によって分散させれば、粒子径をより均一にそろえられて好ましい。
次いで、モノマー混合物が液滴として分散された水性懸濁液を、加熱することにより懸濁重合を開始させる。重合反応中は、水性懸濁液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は例えば、液滴の浮上や重合後の粒子の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
懸濁重合において、重合温度は30〜120℃程度にするのが好ましく、更に好ましくは、40〜80℃程度である。そしてこの重合温度を保持する時間としては、0.1〜20時間程度が好ましい。
得られた重合体粒子は、吸引ろ過、遠心脱水、遠心分離、加圧脱水等の方法により含水ケーキとして分離され、更に、得られた含水ケーキを水洗し、乾燥することにより目的の重合体粒子を得ることができる。
本発明の重合体粒子は、大きさ及び形状は特に限定されない。上記重合体粒子の製造方法によれば、1〜100μmの平均粒子径の粒子を得ることができる。
ここで、粒子の平均粒子径の調製は、モノマー混合物と水性媒体との混合条件、他の懸濁安定剤や界面活性剤等の添加量及び上記攪拌機の攪拌条件、分散条件を調製することで可能である。
また、本発明の重合体粒子は、水分散性を向上できる。例えば、水分散性を200秒以下にすることができる。これは、重合体粒子が、コロイダルシリカを含んでいるためであると発明者は考えている。特に、水酸基含有モノマーを懸濁重合時に使用することで、コロイダルシリカが重合体粒子の表面に偏在することが、水分散性の向上に寄与していると考えている。
本発明によれば、塗布物(例えば、光拡散フィルム等)を得ることが可能な、上記樹脂粒子を含むコーティング用組成物を提供することもできる。ここで、コーティング用組成物は、任意のバインダーを含んでいてもよい。
バインダーとしては、特に限定されず、公知のバインダーをいずれも使用できる。例えば、アクリル系バインダー(三菱レイヨン社製:商品名ダイヤナールLR−102、ダイヤナールBR−106)等が挙げられる。樹脂粒子は、使用する用途により適宜調整されるが、バインダー100重量部に対して、0.1〜1000重量部の範囲で使用できる。
コーティング用組成物には、通常分散媒体が含まれる。分散媒体としては、水性及び油性の媒体がいずれも使用できる。油性の媒体としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられ、水性の媒体としては、水、アルコール系溶剤が挙げられる。特に、本発明の樹脂粒子は、水性媒体に対して高い濡れ性値を有しているため、水性媒体を使用すれば粒子の分散性を向上できる。
更に、コーティング用組成物には、硬化剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
また、本発明の重合体粒子は、微細なコロイダルシリカが重合体粒子表面に強固に付着しており、塗料あるいは光拡散フィルム等の微粒子をコーティングしてなる組成物に対し、耐スクラッチ性を向上させることも可能である。
更には、微細なコロイダルシリカが重合体粒子表面に強固に付着しており、重合体粒子自体の帯電性を低下させることが可能である。そのため、電気、電子、光学部品の精密製品のバリ取り用研磨剤として使用することも可能である。
バリ取り研磨としては、機械式、空気式等の乾式ブラスト加工、水を併用する湿式ブラスト加工が挙げられる。機械式ブラスト加工は、機械的に投射することにより、研磨対象物に研磨剤を衝突させて、研磨を行う方法である。空気式ブラスト加工は、圧縮空気の作用で研磨対象物に研磨剤を衝突させて、研磨を行う方法である。湿式ブラスト加工は、水と研磨剤とを混合してスラリーとし、このスラリーを噴射することにより、研磨対象物に研磨剤を衝突させて、研磨を行う方法である。
本発明の研磨剤は、コロイダルシリカが重合体粒子表面に強固に付着しているため、水への分散性が良好である点、また粒子の帯電性を低下させることが可能である点から、乾式、湿式ブラスト加工いずれの方法でも使用できる。
湿式ブラスト加工において、スラリーを形成する方法は特に限定されないが、通常の攪拌機を用いて、水に研磨剤を分散させることで容易に形成できる。本発明の研磨剤は、従来の合成樹脂系の研磨剤と異なり、親水性が高いため、容易に攪拌され浮遊や沈降を生じ難い。また残留モノマーが少ないので、スラリーが泡だってしまうといった問題も生じ難い。なお、水には、水溶性の有機溶媒や、他の添加剤が含まれていてもよい。
スラリー中の研磨剤の配合割合は、容量比で、5〜50%であることが好ましい。配合割合が、この範囲であることで、不十分な研磨や過剰研磨が抑制できる。配合割合は、10〜40%であることが好ましい。
更に、スラリーの噴射は、研磨剤の配合割合、研磨対象物の種類等により適宜調整されるが、スラリー圧力が1〜8kg/m2、噴射量が5〜50リットル/minの条件で行うことが好ましい。
また、研磨対象物は、本発明の研磨剤により研磨可能であれば特に限定されない。例えば、電子機器(IC、コンデンサ、抵抗、プリント基板等)の合成樹脂製のパッケージのバリ、各種樹脂成形体(筐体、自動車部品)のバリ等が挙げられる。バリを構成する合成樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
また、本発明の重合体粒子は、例えば、インキ粘着剤用、接着剤用、人工大理石用等の添加剤や、紙処理剤用、化粧品用等の充填材や、クロマトグラフィーのカラム充填材や、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤や、フィルム用のアンチブロッキング剤や、光拡散剤等の用途に使用できる。
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の各性質の評価方法を下記する。
(平均粒子径の評価方法)
平均粒子径はマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)で測定した値である。測定方法はCoulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、50μmアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
具体的には、重合体粒子0.1gを0.1%ノニオン系界面活性剤溶液10ml中にタッチミキサー及び超音波を用いて予備分散させ、これを本体備え付けの、ISOTON II(ベックマンコールター社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次にマルチサイザーII本体にアパチャーサイズを50μm、Currentを800、Gainを4、Polarityを+と入力(アパチャーサイズ等は必要に応じて変更して入力可能である)してmanualで測定を行う。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した点で測定を終了する。平均粒子径は、この測定値の平均値であり、体積平均粒子径を意味する。
(水分散性の評価方法)
100mlのビーカーにイオン交換水50gを入れ、重合体粒子1gを静かに水面に展開する。重合体粒子が、水になじみ、水中に分散し始める時間を計測する。計測された時間が小さいほど、水分散性が良好であることを意味する。
(強熱残分の評価方法)
得られた重合体粒子を、600℃の電気炉内で焼失させ、残渣の重量分率から求めることができる。残渣の重量分率は、重合体粒子へのシリカの付着(含有)度合いを表す。
実施例1
水1800gに対し、懸濁安定剤であるコロイダルシリカとしてスノーテックスO−40(日産化学社製:平均粒子径20〜30nm、固形分40重量%)125g、更に、アルカリ金属塩として塩化ナトリウム30g、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(第一工業製薬社製:ノイゲンEA−167)0.6gを混合させた分散媒を、攪拌装置を有する重合容器に入れた。
別途、重合性ビニル系モノマーとしてメタクリル酸メチル850gとエチレングリコールジメタクリレート50g、水酸基を有するモノマーとしてブレンマーPP−1000(日本油脂社製:式(I)中、R1はCH3、mは0、nは平均して4〜6の混合物である)100g(11重量部)、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを均一に溶解してなるモノマー混合物を調製した。
このモノマー混合物を上記分散媒に加えて、ホモミキサーにて7,000rpmで約10分攪拌して、モノマー混合物を微分散した。
その後、攪拌速度300rpmで攪拌を継続させ、モノマー混合物を加えた分散媒の温度が60℃になってから8時間懸濁重合を行った。
次いで、攪拌しながら重合容器内の反応液を室温まで冷却した。次いで、反応液を定性ろ紙101で吸引ろ過し、イオン交換水3リットルで洗浄、続いて脱液し、その後、60℃のオーブン中で一昼夜乾燥させることで目的の重合体粒子を取り出した。得られた重合体粒子の平均粒子径は8.6μm、強熱残分は4.7%である。
実施例2
実施例1において、水酸基を有するモノマーとしてプラクセルFM−5(ダイセル化学社製:式(II)中、R4はCH3であり、pは5である)を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は10.1μm、強熱残分は4.8%であった。
実施例3
実施例1において、メタクリル酸メチル940g、エチレングリコールジメタクリレート50g、水酸基を有するモノマーとしてブレンマー50PEP300(日本油脂社製:式(I)中、R1はCH3であり、m、nは平均してm=3.5、n=2.5の混合物である) 10g(1重量部)とし、コロイダルシリカの添加量50gとした以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は15.2μm、強熱残分は1.9%であった。
実施例4
実施例1において、コロイダルシリカとしてスノーテックスOL(日産化学社製:平均粒子径40〜50nm、固形分20重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は11.8μm、強熱残分は4.8%であった。
実施例5
実施例1において、コロイダルシリカの添加量を50g、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(第一工業製薬社製:ノイゲンEA−167)0.35gとし、ホモミキサーを用いず、攪拌速度300rpmで攪拌した以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子経は80.1μm、強熱残分は1.8%であった。
比較例1
水酸基を有するモノマーを使用しないこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た(平均粒子径9.5μm)。得られた重合体粒子を定性ろ紙にて、吸引ろ過する際に、反応液のろ過性が悪かった。そのため、反応液から重合体粒子を単離することが困難であった。強熱残分は0.2%であり、使用したコロイダルシリカの大部分が粒子表面より脱落していた。
比較例2
実施例3において、水酸基を有するモノマーの使用量を0.3gとしたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は18.1μm、強熱残分は0.5%であり、使用したコロイダルシリカの大部分が粒子表面より脱落していた。
比較例3
この比較例は、コロイダルシリカの代わりにポリビニルアルコールを使用し、コロイダルシリカを使用しない例である。
まず、水2000gに対し、ポリビニルアルコール(日本合成化学社製ゴーセノールGH−23)40gを溶解させた媒体を、攪拌装置を有する重合容器に入れた。
別途、重合性ビニル系モノマーとしてメタクリル酸メチル900gとエチレングリコールジメタクリレート100g、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを均一に溶解してなるモノマー混合物を調製した。
このモノマー混合物を上記媒体に加えて、ホモミキサーにて8,000rpmで約10分攪拌して、モノマー混合物を微分散した。
その後、攪拌速度300rpmで攪拌を継続させ、モノマー混合物を加えた媒体の温度が60℃になってから8時間懸濁重合を行うことで重合性ビニル系モノマーを重合させ、
次いで、実施例1と同様にして、目的の重合体粒子を取り出した。得られた重合体粒子の平均粒子径は7.8μm、強熱残分は0%であった。
(水分散性の評価例)
実施例1〜5及び比較例1〜3により得られた重合体粒子について、以下のように水への分散性の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
表1から、実施例1〜5の重合体粒子は、水分散性が良好であることがわかった。この理由は、水酸基を有するモノマーとコロイダルシリカとの相互作用により、コロイダルシリカが重合体粒子に含まれているためであると考えられる。
(強熱残分の評価例)
実施例1〜5及び比較例1〜3により得られた重合体粒子について、以下のように強熱残分の評価を実施した。評価結果を表2に示す。
表2から、実施例1〜5の重合体粒子は、強熱残分の評価が良好であることがわかった。この理由は、水酸基を有するモノマーとコロイダルシリカとの相互作用により、コロイダルシリカが重合体粒子に含まれているためであると考えられる。
(塗料の製造及びその評価例)
実施例1で得られた樹脂粒子 2重量部
市販の水系樹脂バインダー液(固形分30%) 20重量部
上記の各成分をペイントシェーカーで5分間混合して、塗料を得た。
この塗料を、塗布厚が30μmとなるように、コート紙にアプリケーターで塗布し、オーブンで12時間乾燥して塗膜を得た。
得られた塗膜のグロス値(堀場製作所社製 グロスチェッカ IG−331にて、JIS Z−8741に準拠して測定)は、0(測定角度20°)、4(測定角度60°)であり、爪による傷つきの耐性に優れていた。
(ブラスト加工試験及びその評価例)
実施例5で得た重合体粒子を容積比が30%となるように水に分散させスラリーを得る。得られたスラリーを湿式ブラスト研磨機(不二製作所社製液体ホーニング機LH−5)を用いて、ICリードフレームのパッケージの合成樹脂バリ取りに用いた。ブラスト加工はスラリー圧力6kg/m2、ノズル噴射量10リットル/minで行った。
スラリー中での研磨剤の浮遊は見られず、また攪拌による泡立ちもなく安定した研磨が実施できた。また研磨後の物品100個を目視で確認し、削りの残したバリのある物品の個数を確認した結果3個であり、バリ取り効果も良好な結果であった。

Claims (4)

  1. 重合性ビニル系モノマーと重合開始剤とを含むモノマー混合物を、懸濁安定剤としてのコロイダルシリカの存在下に、水系懸濁重合させることで重合体粒子を得る方法であって、
    前記モノマー混合物が、前記重合性ビニル系モノマー100重量部に対し、水酸基を有するモノマーを0.5〜30重量部の範囲で含み、
    前記水酸基を有するモノマーが、次の一般式(I)及び/又は(II):
    一般式(I):
    (式中、R 1 はH又はCH 3 であり、R 2 及びR 3 はそれぞれCH 2 CH 2 又はCH 3 CHCH 2 であり、m及びnはそれぞれ1〜50である)、
    一般式(II):
    (式中、R 4 はH又はCH 3 であり、pは1〜50である)
    であり、
    前記重合体粒子が、前記重合性ビニル系モノマー由来の重合体成分と、前記コロイダルシリカ由来のシリカ成分とを含む重合体粒子の製造方法。
  2. 請求項1に記載の方法により得られた重合体粒子。
  3. 請求項2に記載の重合体粒子を含むコーティング用組成物。
  4. 前記重合体成分100重量部に対し、前記コロイダルシリカ由来のシリカ成分が1〜20重量部含まれる請求項2に記載の重合体粒子よりなるバリ取り用研磨剤。
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