JP5358242B2 - 重合体粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
一方、特開平10−237216号公報及び特開2000−355639号公報では、疎水性シリカ粒子を、水性媒体中に均一に分散させるために比較的多量の親水性有機化合物が必要である。親水性有機化合物は、そのまま廃棄することが困難であり、かつ再資源化が望まれている。そのため、重合後に親水性有機化合物の回収が必要であり、製造工程が煩雑となっていた。
特開2007−217645号公報では、比較的簡便ではあるものの、さらに簡便な方法が求められている。
したがって、従来技術と比較してより簡便な方法で、モノマー液滴の懸濁安定性を向上し得る重合体粒子の製造方法、更には、懸濁安定化剤として用いたコロイダルシリカの、得られた重合体粒子表面からの脱落を抑制でき、製造工程時の洗浄、固液分離等が容易な製造方法の提供が望まれている。
重合性ビニル系モノマーと重合開始剤とを含むモノマー混合物を、懸濁安定剤としてコロイダルシリカの存在下に水系懸濁重合させることにより、重合体粒子を得る方法であって、
前記モノマー混合物が、前記重合性ビニル系モノマー100重量部に対し、水酸基を有するモノマーを0.5〜30重量部の範囲で含むことを特徴とする重合体粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記方法により得られた重合体粒子であって、重合性ビニル系モノマー由来の重合体成分と、コロイダルシリカ由来のシリカ成分とを含むことを特徴とする重合体粒子も提供される。
更に、重合体粒子表面に残存するコロイダルシリカの効果により、重合体粒子の水性媒体への分散性を向上させることが可能となる。分散性の向上した重合体粒子は、水系塗料用の艶消し剤や、化粧品の原料、光拡散剤等に好適に使用できる。
本発明に使用できる重合性ビニル系モノマーは、特には限定されず、ビニル基が1つのモノマー(単官能モノマー)、2つ以上のモノマー(多官能モノマー)が挙げられる。単官能モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びその誘導体、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、
上記単官能モノマー中、安価なスチレンやメタクリル酸メチル等が好ましい。
特に好ましくは、一般式(I)及び/又は(II):
一般式(I):
(式中、R1はH又はCH3であり、R2及びR3はそれぞれCH2CH2又はCH3CHCH2であり、m及びnはそれぞれ1〜50である)、
一般式(II):
(式中、R4はH又はCH3であり、pは1〜50である)
の第一級水酸基を有するモノマーである。
ここで、一般式(I)中、m及びnは、それぞれ好ましくは1〜20であり、更に好ましくは2〜15である。
また、一般式(II)中、pは、好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜5である。
なお、一般式(I)中の[(R2O)m−(R3O)n]は、ブロック状であっても、任意にモノマー単位が組合せられていてもよい。
この中でも、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が、重合開始剤の分解速度等の点で好ましい。
コロイダルシリカとしては平均粒子径が500nm以下のものを用いることが好ましい。500nmより大きい場合には、安定に懸濁重合を行うために必要な添加量が多くなり、経済的でないため好ましくない。加えて、安定にモノマー混合物を分散させることが困難であるため好ましくない。平均粒子径は、できるだけ小さいことが好ましく、10〜150nmの範囲であることがより好ましく、10〜100nmの範囲であることが更により好ましい。
ここでコロイダルシリカの平均粒子径は、窒素吸着法(BET法)により測定して得られる比表面積径である。平均粒子径(比表面積径)(Dnm)は、窒素吸着法で測定して、比表面積Sm2/gから、D=2720/Sの式によって与えられる。
アルカリ金属塩は、水性媒体100重量部に対し、0.1〜10重量部使用することが好ましく、0.5〜5重量部の範囲であることがより好ましい。
これら懸濁安定剤や界面活性剤は、単独で又は2種以上を組合せて用いてもよいが、得られる重合体粒子の径と重合時の分散安定性を考慮して、懸濁安定剤及び界面活性剤の選択や使用量を適宜調製して使用される。
ここで、粒子の平均粒子径の調製は、モノマー混合物と水性媒体との混合条件、他の懸濁安定剤や界面活性剤等の添加量及び上記攪拌機の攪拌条件、分散条件を調製することで可能である。
バインダーとしては、特に限定されず、公知のバインダーをいずれも使用できる。例えば、アクリル系バインダー(三菱レイヨン社製:商品名ダイヤナールLR−102、ダイヤナールBR−106)等が挙げられる。樹脂粒子は、使用する用途により適宜調整されるが、バインダー100重量部に対して、0.1〜1000重量部の範囲で使用できる。
更に、コーティング用組成物には、硬化剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
また、本発明の重合体粒子は、微細なコロイダルシリカが重合体粒子表面に強固に付着しており、塗料あるいは光拡散フィルム等の微粒子をコーティングしてなる組成物に対し、耐スクラッチ性を向上させることも可能である。
(平均粒子径の評価方法)
平均粒子径はマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)で測定した値である。測定方法はCoulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、50μmアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
100mlのビーカーにイオン交換水50gを入れ、重合体粒子1gを静かに水面に展開する。重合体粒子が、水になじみ、水中に分散し始める時間を計測する。計測された時間が小さいほど、水分散性が良好であることを意味する。
得られた重合体粒子を、600℃の電気炉内で焼失させ、残渣の重量分率から求めることができる。残渣の重量分率は、重合体粒子へのシリカの付着(含有)度合いを表す。
水1800gに対し、懸濁安定剤であるコロイダルシリカとしてスノーテックスO−40(日産化学社製:平均粒子径20〜30nm、固形分40重量%)125g、更に、アルカリ金属塩として塩化ナトリウム30g、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(第一工業製薬社製:ノイゲンEA−167)0.6gを混合させた分散媒を、攪拌装置を有する重合容器に入れた。
その後、攪拌速度300rpmで攪拌を継続させ、モノマー混合物を加えた分散媒の温度が60℃になってから8時間懸濁重合を行った。
実施例1において、水酸基を有するモノマーとしてプラクセルFM−5(ダイセル化学社製:式(II)中、R4はCH3であり、pは5である)を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は10.1μm、強熱残分は4.8%であった。
実施例1において、メタクリル酸メチル940g、エチレングリコールジメタクリレート50g、水酸基を有するモノマーとしてブレンマー50PEP300(日本油脂社製:式(I)中、R1はCH3であり、m、nは平均してm=3.5、n=2.5の混合物である) 10g(1重量部)とし、コロイダルシリカの添加量50gとした以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は15.2μm、強熱残分は1.9%であった。
実施例1において、コロイダルシリカとしてスノーテックスOL(日産化学社製:平均粒子径40〜50nm、固形分20重量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は11.8μm、強熱残分は4.8%であった。
実施例1において、コロイダルシリカの添加量を50g、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(第一工業製薬社製:ノイゲンEA−167)0.35gとし、ホモミキサーを用いず、攪拌速度300rpmで攪拌した以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子経は80.1μm、強熱残分は1.8%であった。
水酸基を有するモノマーを使用しないこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子を得た(平均粒子径9.5μm)。得られた重合体粒子を定性ろ紙にて、吸引ろ過する際に、反応液のろ過性が悪かった。そのため、反応液から重合体粒子を単離することが困難であった。強熱残分は0.2%であり、使用したコロイダルシリカの大部分が粒子表面より脱落していた。
実施例3において、水酸基を有するモノマーの使用量を0.3gとしたこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の平均粒子径は18.1μm、強熱残分は0.5%であり、使用したコロイダルシリカの大部分が粒子表面より脱落していた。
この比較例は、コロイダルシリカの代わりにポリビニルアルコールを使用し、コロイダルシリカを使用しない例である。
別途、重合性ビニル系モノマーとしてメタクリル酸メチル900gとエチレングリコールジメタクリレート100g、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを均一に溶解してなるモノマー混合物を調製した。
その後、攪拌速度300rpmで攪拌を継続させ、モノマー混合物を加えた媒体の温度が60℃になってから8時間懸濁重合を行うことで重合性ビニル系モノマーを重合させ、
次いで、実施例1と同様にして、目的の重合体粒子を取り出した。得られた重合体粒子の平均粒子径は7.8μm、強熱残分は0%であった。
実施例1〜5及び比較例1〜3により得られた重合体粒子について、以下のように水への分散性の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
表1から、実施例1〜5の重合体粒子は、水分散性が良好であることがわかった。この理由は、水酸基を有するモノマーとコロイダルシリカとの相互作用により、コロイダルシリカが重合体粒子に含まれているためであると考えられる。
実施例1〜5及び比較例1〜3により得られた重合体粒子について、以下のように強熱残分の評価を実施した。評価結果を表2に示す。
表2から、実施例1〜5の重合体粒子は、強熱残分の評価が良好であることがわかった。この理由は、水酸基を有するモノマーとコロイダルシリカとの相互作用により、コロイダルシリカが重合体粒子に含まれているためであると考えられる。
実施例1で得られた樹脂粒子 2重量部
市販の水系樹脂バインダー液(固形分30%) 20重量部
上記の各成分をペイントシェーカーで5分間混合して、塗料を得た。
この塗料を、塗布厚が30μmとなるように、コート紙にアプリケーターで塗布し、オーブンで12時間乾燥して塗膜を得た。
得られた塗膜のグロス値(堀場製作所社製 グロスチェッカ IG−331にて、JIS Z−8741に準拠して測定)は、0(測定角度20°)、4(測定角度60°)であり、爪による傷つきの耐性に優れていた。
実施例5で得た重合体粒子を容積比が30%となるように水に分散させスラリーを得る。得られたスラリーを湿式ブラスト研磨機(不二製作所社製液体ホーニング機LH−5)を用いて、ICリードフレームのパッケージの合成樹脂バリ取りに用いた。ブラスト加工はスラリー圧力6kg/m2、ノズル噴射量10リットル/minで行った。
スラリー中での研磨剤の浮遊は見られず、また攪拌による泡立ちもなく安定した研磨が実施できた。また研磨後の物品100個を目視で確認し、削りの残したバリのある物品の個数を確認した結果3個であり、バリ取り効果も良好な結果であった。
Claims (4)
- 重合性ビニル系モノマーと重合開始剤とを含むモノマー混合物を、懸濁安定剤としてのコロイダルシリカの存在下に、水系懸濁重合させることで重合体粒子を得る方法であって、
前記モノマー混合物が、前記重合性ビニル系モノマー100重量部に対し、水酸基を有するモノマーを0.5〜30重量部の範囲で含み、
前記水酸基を有するモノマーが、次の一般式(I)及び/又は(II):
一般式(I):
(式中、R 1 はH又はCH 3 であり、R 2 及びR 3 はそれぞれCH 2 CH 2 又はCH 3 CHCH 2 であり、m及びnはそれぞれ1〜50である)、
一般式(II):
(式中、R 4 はH又はCH 3 であり、pは1〜50である)
であり、
前記重合体粒子が、前記重合性ビニル系モノマー由来の重合体成分と、前記コロイダルシリカ由来のシリカ成分とを含む重合体粒子の製造方法。 - 請求項1に記載の方法により得られた重合体粒子。
- 請求項2に記載の重合体粒子を含むコーティング用組成物。
- 前記重合体成分100重量部に対し、前記コロイダルシリカ由来のシリカ成分が1〜20重量部含まれる請求項2に記載の重合体粒子よりなるバリ取り用研磨剤。
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