JP3570760B2 - 2−t−ブチルハイドロキノンの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ゴム、プラスチック、食用油脂類等の酸化防止剤や、重合禁止剤、写真薬、化粧品添加剤等として広く用いられている2−t−ブチルハイドロキノンを工業的に有利に製造することができる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2−t−ブチルハイドロキノンは、従来、工業的には、通常、ハイドロキノンを有機溶媒中、酸触媒の存在下にブチル化剤としてイソブチレン又はt−ブチルアルコールを用いて、ブチル化反応を行なうことによって製造されている。
しかしながら、このような製造方法によれば、ハイドロキノンのブチル化反応は、次式
【0003】
【化1】
【0004】
に示すように、逐次的に進み、最初のブチル化反応と次のブチル化反応のそれぞれの反応速度がほぼ同じであるので、上記ブチル化反応によれば、得られる反応生成物は、通常、2−t−ブチルハイドロキノンと共に、副生した2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンと未反応ハイドロキノンとを含む混合物である。
【0005】
そこで、従来、上記ブチル化反応の選択性を高める方法が種々提案されている。例えば、米国特許第 2,722,556号明細書には、85%リン酸の存在下にトルエン又はキシレン溶媒中において、ハイドロキノンをイソブチレン又はt−ブチルアルコールによってブチル化する方法が提案されているが、ハイドロキノン転化率47%において、2−t−ブチルハイドロキノンの選択率は64%にすぎない。
【0006】
特開昭62−81338号公報には、2−t−ブチルハイドロキノンの選択率を向上させる方法として、55〜65%リン酸水溶液を用いる方法が提案されているが、2−t−ブチルハイドロキノンの選択率は、ハイドロキノン転化率89%において87%である。
【0007】
米国特許第 4,323,713号明細書には、2−t−ブチルハイドロキノンの選択率を向上させる方法として、リン酸溶液の存在下に、キシレンと脂肪族ケトンとの混合溶媒中でブチル化反応を行なう方法が提案されており、この方法によれば、2−t−ブチルハイドロキノンの選択率は、ハイドロキノン転化率50%において、約90%まで向上することが記載されている。
【0008】
勿論、2−t−ブチルハイドロキノンの製造に際して、上記ハイドロキノンのブチル化反応のような逐次反応においては、モノブチル体の選択率を向上させるために、用いるイソブチレンに対して、ハイドロキノンを大過剰に用いればよいことは、既に知られているところである。しかし、このような方策は、反応器の単位容積当たりの目的物であるモノブチル体の収量が低下すること、及び大量の未反応ハイドロキノンを回収しなければならないこと等の問題があり、工業的に有利な方法とはいえない。
【0009】
このように、ハイドロキノンのブチル化による2−t−ブチルハイドロキノンの製造において、従来、提案されているいずれの方法によっても、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの副生を抑制することは困難であり、2−t−ブチルハイドロキノンのみを選択的に製造する方法は知られていない。
【0010】
そこで、従来、工業的に2−t−ブチルハイドロキノンを得るには、ハイドロキノンをブチル化し、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンと共に、未反応ハイドロキノンを含む反応混合物を得、この反応混合物から目的とする2−t−ブチルハイドロキノンを分離する方法が採用されている。
【0011】
しかしながら、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンは、その物理的性質、種々の有機溶媒に対する溶解性、沸点等が相互に近似しており、更に、いずれの化合物も、熱安定性がよくないところから、従来、工業的に行なわれている通常の分離方法によっては、得られる反応混合物から目的とする2−t−ブチルハイドロキノンの高純度品を効率よく分離することが困難である。例えば、特開昭62−81339号公報には、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンとは、比揮発度がいずれも1に近いこと、及び高温下では、いずれの化合物も熱分解を受け、また、微量の空気の漏れ込みによって著しく着色することから、蒸留による分離は、工業的には採用し難いことが記載されている。
【0012】
そこで、ハイドロキノンのブチル化反応によって得られる2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンとを含む反応混合物から、2−t−ブチルハイドロキノンを分離精製する方法としては、これら2つの化合物の有機溶媒に対する溶解度の差を利用する分別晶析法が種々提案されている。
【0013】
例えば、特願平3−236340号公報には、上記2つの化合物のトルエンに対する溶解度の差を利用する分別晶析法が記載されている。即ち、これによれば、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを含む反応混合物に晶析溶媒としてトルエンを添加して、この溶媒に対して溶解度のより小さい2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを先ず80℃において晶出させ、これを濾取し、次いで、晶析母液を40℃まで冷却して、目的とする2−t−ブチルハイドロキノンを晶析させ、これを分離するものである。この方法によれば、2−t−ブチルハイドロキノンは、94〜99%の純度にて得ることができるものの、晶析回収率は、生成した2−t−ブチルハイドロキノンに基づいて、25〜30%にすぎない。
【0014】
また、2つの化合物の熱水に対する溶解度の差を利用する抽出分離法も、従来より、多く提案されている。この方法は、熱水に対して、2−t−ブチルハイドロキノンがより溶解度が高いことを利用するものである。
【0015】
例えば、米国特許第 2,722,556号明細書には、酸触媒の存在下、トルエン中でハイドロキノンをブチル化し、未反応ハイドロキノンと共に、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンとを含む反応混合物を得、先ず、この反応混合物を水蒸気蒸留し、トルエンを留去して、2−t−ブチルハイドロキノンを熱水に溶解させ、移行させ、次いで、熱水に未溶解のまま、懸濁している2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの結晶を濾別し、最後に、この晶析母液を冷却して、目的とする2−t−ブチルハイドロキノンを晶出させ、これを濾取する方法が記載されている。
【0016】
更に、特開昭62−81340号公報には、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジブチルハイドロキノンとを含む反応混合物を先ず熱水を用いて固液抽出操作を行ない、次いで、得られた抽出液を冷却晶析して、2−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶をトルエン溶媒と室温下で接触させて、洗浄し、次いで、このようにして得られた2−t−ブチルハイドロキノンのスラリーから固形分を濾取し、得られたケーキを脱水した後、水蒸気蒸留して、ケーキに付着したトルエンを除去し、熱水から目的とする2−t−ブチルハイドロキノンを晶出させる方法が開示されている。この方法によれば、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン含量0.05重量%以下、トルエン含量数ppm以下のフード・グレードの高純度品を得ることができることが記載されている。しかし、この方法によれば、2−t−ブチルハイドロキノン1重量部に対して100重量部もの熱水を用いることが必要である。
【0017】
即ち、このような固液抽出法は、熱水に対する2−t−ブチルハイドロキノンの溶解度が小さいために(例えば、70℃で2重量%、40℃で1重量%)、多量の熱水を使用しなければならず、工業的に有利な方法といえない。
特開昭62−81339号公報には、上記固液熱水抽出を含む連続処理方法が記載されている。
【0018】
以上のように、従来のハイドロキノンのブチル化による方法によっては、2−t−ブチルハイドロキノンと共に2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンが副生し、前者のみを選択的に製造することができず、従って、工業的な2−t−ブチルハイドロキノンの製造においては、原料単位が悪く、また、副生する2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの処理の問題も生じる。
【0019】
しかも、上記反応によって得られる反応混合物から2−t−ブチルハイドロキノンを分離するにも、前述したように、蒸留による方法は、工業的に採用し難く、また、分別晶析による方法も、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの有機溶媒に対する溶解性の差が小さいので、分離精製プロセスが煩雑であり、それでいて、分離効率が悪く、そのうえ、多量の有機溶媒を必要とするので、製造コストが高い。
【0020】
かくして、従来、ブチル化剤を用いてハイドロキノンをブチル化する反応によって、2−t−ブチルハイドロキノンを効率よく得ることができる工業的に有利な方法が要請されている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、従来の2−t−ブチルハイドロキノンの製造における上述したような問題を解決するために鋭意研究した結果、ハイドロキノンをブチル化した反応混合物から晶析溶媒としてメタノールと水との混合溶媒を用いて分別晶析することによって、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを効率よく晶析分離することができ、他方、このジブチル体を晶析した後の晶析母液から芳香族炭化水素を晶析溶媒として用いることによって、モノブチル体を効率よく晶析分離することができ、しかも、上記副生したジブチル体は、酸触媒を用いて脱ブチル化することによって、2−t−ブチルハイドロキノンに容易に変換でき、これを上記反応混合物と併せて処理することによって、上記副生したジブチル体を有効に利用しつつ、目的とする2−t−ブチルハイドロキノンを効率よく得ることができることを見出して、本発明を完成するに至ったものである。
【0022】
即ち、本発明は、ハイドロキノンのブチル化によって、高純度の2−t−ブチルハイドロキノンを効率よく製造することができる工業的に有利な方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明による2−t−ブチルハイドロキノンの製造方法は、
(A)酸触媒水溶液の存在下に有機反応溶媒中にて、ブチル化剤を用いてハイドロキノンをブチル化する工程、
(B)得られた反応混合物から上記酸触媒水溶液を除去し、得られた油層に工程
(E)で得られた脱ブチル化反応生成物を加え、アルカリにより中和処理する工程、
(C)このように中和処理した油層から上記有機反応溶媒を蒸留によって回収し、得られた釜残物に晶析溶媒としてメタノールと水との混合溶媒を加えて、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを晶析させ、分離する工程、
(D)上記2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを分離した後の晶析母液から上記メタノールを蒸留によって回収し、得られた釜残物に晶析溶媒として芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンからなる混合溶媒を加えて、2−t−ブチルハイドロキノンを晶析させ、分離する工程、及び
(E)前記(C)工程から得られた2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを酸触媒の存在下に芳香族炭化水素溶媒中において脱ブチル化し、得られた反応生成物を前記工程(B)における前記油層に合体させる工程、
からなることを特徴とする。
【0024】
更に、本発明による方法は、工程(F)として、前記工程(D)において得られた晶析母液から晶析溶媒として用いられた芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンとを蒸留回収する工程を有していてもよい。
【0025】
図1は、本発明による方法を示すフロー・シートである。以下、図1を参照しつつ、本発明による2−t−ブチルハイドロキノンの製造方法について、詳細に説明する。
【0026】
工程Aは、ハイドロキノンのブチル化反応の工程である。この工程においては、原料であるハイドロキノンを有機反応溶媒と酸触媒水溶液との混合物中に攪拌しながら分散させた後、この混合物にブチル化剤を加えて、ブチル化反応を行うものである。
【0027】
上記酸触媒水溶液としては、好ましくは、リン酸水溶液が用いられ、特に、濃度60〜80重量%のリン酸水溶液が好ましく用いられ、最も好ましくは、濃度65〜75重量%のリン酸水溶液が用いられる。リン酸水溶液は、原料であるハイドロキノン100重量部に対して、通常、50〜1000重量部の範囲で用いられ、好ましくは、100〜300重量部の範囲で用いられる。
【0028】
ブチル化剤としては、イソブチレン又はt−ブチルアルコールのいずれをも用いることができるが、好ましくは、反応生成水を伴わないイソブチレンが用いられる。ブチル化剤は、通常、原料であるハイドロキノン1モルに対して、0.8〜1.5モルの範囲で用いられる。特に、原料であるハイドロキノンの転化率を高めて、ジブチル体の生成を少なくする観点からは、ブチル化剤は、原料であるハイドロキノン1モルに対して、0.9〜1.1モルの範囲で用いられるのが好ましい。
【0029】
上記有機反応溶媒は、特に、限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クメン等の芳香族炭化水素や、又はこれら芳香族炭化水素とジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトンとの混合溶媒が好ましく用いられる。これらのながでは、特に、キシレンか、又はキシレンとメチルイソブチルケトンとの混合溶媒が好ましく用いられる。
【0030】
有機反応溶媒は、特に、制限されるものではないが、通常、原料であるハイドロキノン100重量部に対して、200〜1000重量部の範囲で用いられ、好ましくは、250〜400重量部の範囲で用いられる。
【0031】
本発明において、上記ハイドロキノンのブチル化反応は、通常、70〜100℃、好ましくは、85〜95℃の範囲の温度にて行なわれる。反応圧力は、特に制約がなく、常圧、加圧下、いずれでもよい。
【0032】
本発明によれば、原料であるハイドロキノンを上記有機反応溶媒と酸触媒水溶液の混合物中に攪拌しながら分散させ、これにブチル化剤、例えば、イソブチレンを導入して、ブチル化反応を行なう。このようにして得られる反応混合物は、酸触媒水層と有機層との2液層からなり、反応生成物である2−t−ブチルハイドロキノンは、副生物である2,5−ジ−t−ハイドロキノンと未反応のハイドロキノンと共に、上記有機層に溶解している。
【0033】
工程(B)は、このようにして得られる反応混合物をアルカリにて中和処理する工程である。
即ち、上記ブチル化反応の終了後、得られた反応混合物を反応時の温度に保ちながら静置して分層させ、下層の酸触媒水溶液層、例えば、リン酸水溶液層を分液除去する。次いで、上層の有機層に後述する工程(E)において得られた脱ブチル化反応の反応生成物を合体させ、ここで残存している酸触媒を希アルカリ水溶液を用いて中和処理する。
上記ブチル化反応に用いた酸触媒水層は、分液後、再び、ブチル化反応工程に循環使用することができる。
【0034】
工程(C)は、ブチル化反応によって得られた反応混合物中の2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを晶析分離する工程である。
上記工程(B)で得られた中和処理後の油層から有機反応溶媒を蒸留によって留去した後、得られた釜残物に晶析溶媒としてメタノールと水との混合溶媒を加え、加熱して、上記釜残物を溶解させる。このようにして得られた溶液を徐冷し、ここで、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を析出させ、これを分離する。晶析温度は、通常、10〜60℃の範囲が好ましいが、特に、35〜40℃の範囲が好ましい。
【0035】
このようして得られた2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶は、後述する工程(E)に送られて、脱ブチル化反応に供される。2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を分離した後の晶析母液は、次の工程(D)で処理される。
上記晶析溶媒として用いられるメタノールと水との混合溶媒におけるメタノール濃度は、通常、10〜60重量%の範囲が好ましいが、特に、モノブチル体とジブチル体の溶解温度差が大きい30〜50重量%の範囲が好ましい。晶析溶媒中のメタノール濃度が10重量%よりも小さいときも、また、60重量%を越えるときも、2つの化合物の間の溶解度差が小さくなり、両者の分離効率が悪く、製品純度と晶析回収率の低下を招き、工業上、不利である。
【0036】
本発明の方法において、晶析溶媒として好ましく用いられる40重量%のメタノールを有する混合溶媒に対する2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの溶解度を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
工程(D)は、2−t−ブチルハイドロキノンの晶析分離工程である。
この工程(D)においては、上記工程(C)で得られた晶析母液を蒸留して、メタノールを除去する。次いで、得られた釜残物に2−t−ブチルハイドロキノンのための晶析溶媒として、芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンの混合溶媒を添加し、加温して、釜残物を溶解させて、均一な溶液とする。その後、上記溶液を徐冷し、2−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を析出させ、これを濾取する。
【0039】
上記晶析溶媒として用いられる芳香族炭化水素は、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンから選ばれる少なくとも1種が好ましいが、特に、キシレンが好ましい。また、上記脂肪族ケトンとしては、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が用いられる。特に、晶析溶媒として、芳香族炭化水素と脂肪族ケトンとの混合溶媒を用いるときは、キシレンとメチルイソブチルケトンとの混合溶媒が好ましく用いられる。
【0040】
2−t−ブチルハイドロキノンのための晶析溶媒は、釜残物100重量部に対して、通常、100〜300重量部の範囲で用いられ、特に好ましくは、100〜150重量部の範囲で用いられる。
【0041】
次いで、このようにして得られた2−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を有機溶媒にて洗浄して、粗結晶に付着している母液を除去する。この粗結晶の洗浄に用いられる有機溶媒は、特に、限定されるものではないが、本発明の方法によれば、2−t−ブチルハイドロキノンの晶析溶媒として用いられた前記芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンの混合溶媒を用いれば、プロセスを簡略化できるので好ましい。
【0042】
粗結晶を有機溶媒にて洗浄するには、例えば、濾過機フィルター上に2−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を保持して、これに洗浄液を振りかける方法や、洗浄液中に2−t−ブチルハイドロキノン結晶を加えて、適宜時間攪拌保持した後、濾過する方法等を例示することができ、このようにして、湿潤した精製結晶を得ることができる。ここに、洗浄液は、2−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶100重量部に対して、通常、50〜100重量部の範囲で用いられる。
【0043】
このようにして得られた2−t−ブチルハイドロキノンの湿潤精製結晶を乾燥機に置き、圧力100mmHg以下、温度100℃以下にて適宜時間加熱乾燥させることによって、2−t−ブチルハイドロキノンの白色結晶を得ることができる。
本発明によれば、このようにして得られる2−t−ブチルハイドロキノンは、純度99.5%以上の高純度品であり、晶析回収率は、通常、90%以上である。
この工程(D)において得られた上記晶析母液や洗浄液は、溶媒回収工程に送られ、溶媒が蒸留回収される。この回収溶媒は循環使用することができる。
【0044】
工程(E)は、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの脱ブチル化反応工程である。
この工程(E)においては、前記工程(C)で得られた2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を芳香族炭化水素溶媒中、酸触媒の存在下に脱ブチル化反応させて、本発明の方法において目的とする2−t−ブチルハイドロキノンに富む反応生成物を得るものである。
【0045】
この脱ブチル化反応においては、ジブチル体は、モノブチル体を経て、ハイドロキノンに脱ブチル化され、芳香環上のブチル基の数が少なくなるほど、反応速度が遅くなる。そこで、本発明によれば、この脱ブチル化反応において、反応条件を適切に設定して、反応を制御することによって、モノブチル体を主成分とする反応生成物を得ることができる。
【0046】
本発明によれば、この脱ブチル化反応においては、酸触媒としては、有機スルホン酸が好適に用いられる。このような有機スルホン酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等を例示することができる。
脱ブチル化反応において、上記酸触媒の使用量は、原料である2−t−ブチルハイドロキノン粗結晶100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは、0.5〜5重量部の範囲である。
【0047】
脱ブチル化反応の反応溶媒としては、芳香族炭化水素が好ましく用いられる。この芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン等が例示することができるが、工程(A)及び(D)において用いる芳香族炭化水素と同じものを用いれば、プロセスを簡略化することができ、工業的に有利である。
上記反応溶媒は、原料である2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン100重量部に対して、通常、300〜500重量部の範囲で用いられる。
【0048】
本発明において、脱ブチル化反応は、通常、用いる反応溶媒の還流温度において行なわれる。例えば、反応溶媒としてキシレンを用いたときは、反応温度は約140℃であり、メシチレンを用いたときには、反応温度は約165℃である。このように、反応温度は用いる反応溶媒によって規定されるが、通常、120〜170℃の範囲が好適である。
【0049】
他方、脱ブチル化反応によって発生したイソブチレンガスは、反応器上部から抜き出され、冷却捕集される。この回収イソブチレンは、工程(A)において、循環使用することができる。
【0050】
本発明によれば、この脱ブチル化反応においては、得られる反応生成物中の2−t−ブチルハイドロキノンの割合が50〜70モル%の範囲で反応を停止するのが望ましい。このモノブチル体の割合が70%を越えるときは、このブチル体が更に脱ブチル化されて生成するハイドロキノンの割合が10%を越えることとなり、2−t−ブチルハイドロキノンを製造することを目的とする本発明の観点から、工業上、不利である。他方、得られる反応生成物中の2−t−ブチルハイドロキノンの割合が50%よりも少ないときは、脱ブチル化されない未反応のジブチル体が多く残り、これも不利である。
脱ブチル化の反応の時間は、反応温度や触媒濃度によって異なるが、通常、1〜10時間の範囲である。
【0051】
このようにして、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの脱ブチル化によって得られた2−t−ブチルハイドロキノンに富む反応生成物は、前述したように、工程(B)における有機層に合体されて、中和処理される。
【0052】
工程(F)は、前述した工程(D)において、2−t−ブチルハイドロキノンを析出させ、分離した後の晶析母液から晶析溶媒として用いた芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンとを蒸留によって回収する工程である。
回収された溶媒は、工程(A)や(D)において再使用することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ハイドロキノンをブチル化して、2−t−ブチルハイドロキノンと共に、副生する2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンと未反応ハイドロキノンとを含む反応混合物を得るのであるが、この反応混合物からジブチル体を分離する際に、晶析溶媒として、メタノールと水との混合溶媒を用いるので、ジブチル体を効率よく晶析分離することができ、更に、ここに得られた晶析母液から芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンとの混合溶媒を晶析溶媒として用いることによって、効率よくモノブチル体を晶析分離することができ、更に、前記反応混合物から晶析分離したジブチル体を脱ブチル化して、モノブチル体に富む反応生成物を得、これを上記ハイドロキノンのブチル化反応混合物に合体させ、処理するので、ジブチル体を有効に利用しつつ、目的とするモブチル体を効率よく、工業上、有利に得ることができる。
従って、本発明の方法は、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの製造方法として、工業上、経済性にすぐれるものである。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0055】
実施例1
(工程(A)(ハイドロキノンのブチル化工程))
攪拌機、冷却器及びイソブチレン吹き込み管を備えた1リットル容量の三つ口フラスコにハイドロキノン106.8g(0.97モル)、70%リン酸水溶液106.8g(0.763モル)及びメチルイソブチルケトン/キシレン混合溶媒(重量比1/1)267gを仕込み、フラスコ内を窒素置換した。
【0056】
この後、攪拌しながら、フラスコ内の混合物を90℃まで昇温し、イソブチレン58.1g(1.04モル)を3時間かけて吹き込んだ。ここに、イソブチレン/ハイドロキノン仕込みモル比は1.07である。この後、90℃で2時間、反応を続けた。反応液は、反応初期はスラリー状であったが、反応の進行と共にスラリー中の懸濁物は次第に溶解し、反応終了時には、リン酸水層と油層とからなる均一な2液層を形成した。
この油層の一部を採取し、第二リン酸ナトリウム水溶液で中和処理し、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、ハイドロキノンの転化率は91.2%、2−t−ブチルハイドロキノンの収率は77.0モル%であった。
【0057】
(工程(B)(中和処理工程))
反応終了後、得られた反応混合物を90℃に保ちながら、静置して、2層に分層させ、下層のリン酸水層99.8gを抜き出した。このリン酸水層は、ブチル化反応工程に循環して再使用することができる。
上層の油層に後述する工程(E)で得られた脱ブチル化反応の反応生成物32.7gを加えて合体させ、これに5%第二リン酸ナトリウム水溶液22.4g(0.28モル)を添加して中和した。次いで、この混合物を80℃で静置し、分層させた後、水層を抜き出し、除去した。このようにして中和処理後の油層481.4gを得た。
【0058】
(工程(C)(2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの晶析分離工程))
上記中和処理後の油層を100mmHgの減圧下で蒸留し、水、メチルイソブチルケトン及びキシレンを回収した。得られた釜残物は183.8gであって、ハイドロキノン9.2g、2−t−ブチルハイドロキノン121.4g、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン15.3g、その他副生成物10.8gからなる組成を有するものであった。
【0059】
この釜残物に40%濃度のメタノールと水との混合溶媒(以下、メタノールと水との混合溶媒をメタノール水ということがある。)238gを加え、80℃まで昇温して、釜残物を溶解させ、均一な溶液とした。
この溶液を徐冷し、晶析を行なった。67℃で結晶の析出が始まり、35℃まで冷却した。析出した結晶を遠心分離器を用いて濾別した。得られた湿潤粗結晶には、2−t−ブチルハイドロキノン5.5gと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン12.5gが含まれていた。
【0060】
(工程(D)(2−t−ブチルハイドロキノンの晶析分離工程))
上記工程(C)で得られた晶析母液からメタノール水を蒸留により回収した。このメタノール水は上記工程(C)に循環し、再使用することができる。
得られた釜残物は167gであって、バイドロキノン9.2g、2−t−ブチルハイドロキノン118.6g、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン2.8gを含んでいた。
この釜残物にキシレン315gを加え、80℃まで昇温して、釜残物を溶解させ、均一な溶液とした。次いで、この溶液を35℃まで徐冷し、析出した結晶を遠心分離器を用いて濾別した。次いで、遠心分離器上のケーキにキシレン及び水を振りかけて、洗浄した。
【0061】
このようにして得られた2−t−ブチルハイドロキノンの湿潤結晶133.3gを圧力200mmHg、温度80℃の条件下で4時間乾燥して、2−t−ブチルハイドロキノンの白色精製結晶117.8gを得た。この結晶の純度は99.7%であり、不純物として、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン0.1%を含んでいた。
目的物である2−t−ブチルハイドロキノンの通算収率は、ハイドロキノン基準で73モル%であった。
【0062】
(工程(E)(2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの脱ブチル化工程))
攪拌機、冷却管及び排ガスラインを備えた100ml容量の三つ口フラスコに前記(C)工程で得られた2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶18gをキシレン18g及びp−トルエンスルホン酸0.4gと共に仕込み、反応温度140℃で4時間、攪拌して、脱ブチル化反応を行なった。発生したガスを冷却捕集して、イソブチレン3.3gを回収した。
【0063】
このようにして得られた反応生成物は、ハイドロキノン4.3重量%、2−t−ブチルハイドロキノン31.5重量%、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン9.2重量%からなる組成を有するものであった。
この反応生成物は、前記(B)工程における前記油層に合体させ、前述したように、中和処理した。
【0064】
前記工程(D)において、2−t−ブチルハイドロキノンを分離した後の母液からキシレンを蒸留回収した。キシレンの回収率は90%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明による2−t−ブチルハイドロキノンの製造を示すフロー・シートである。
【産業上の利用分野】
本発明は、ゴム、プラスチック、食用油脂類等の酸化防止剤や、重合禁止剤、写真薬、化粧品添加剤等として広く用いられている2−t−ブチルハイドロキノンを工業的に有利に製造することができる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2−t−ブチルハイドロキノンは、従来、工業的には、通常、ハイドロキノンを有機溶媒中、酸触媒の存在下にブチル化剤としてイソブチレン又はt−ブチルアルコールを用いて、ブチル化反応を行なうことによって製造されている。
しかしながら、このような製造方法によれば、ハイドロキノンのブチル化反応は、次式
【0003】
【化1】
【0004】
に示すように、逐次的に進み、最初のブチル化反応と次のブチル化反応のそれぞれの反応速度がほぼ同じであるので、上記ブチル化反応によれば、得られる反応生成物は、通常、2−t−ブチルハイドロキノンと共に、副生した2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンと未反応ハイドロキノンとを含む混合物である。
【0005】
そこで、従来、上記ブチル化反応の選択性を高める方法が種々提案されている。例えば、米国特許第 2,722,556号明細書には、85%リン酸の存在下にトルエン又はキシレン溶媒中において、ハイドロキノンをイソブチレン又はt−ブチルアルコールによってブチル化する方法が提案されているが、ハイドロキノン転化率47%において、2−t−ブチルハイドロキノンの選択率は64%にすぎない。
【0006】
特開昭62−81338号公報には、2−t−ブチルハイドロキノンの選択率を向上させる方法として、55〜65%リン酸水溶液を用いる方法が提案されているが、2−t−ブチルハイドロキノンの選択率は、ハイドロキノン転化率89%において87%である。
【0007】
米国特許第 4,323,713号明細書には、2−t−ブチルハイドロキノンの選択率を向上させる方法として、リン酸溶液の存在下に、キシレンと脂肪族ケトンとの混合溶媒中でブチル化反応を行なう方法が提案されており、この方法によれば、2−t−ブチルハイドロキノンの選択率は、ハイドロキノン転化率50%において、約90%まで向上することが記載されている。
【0008】
勿論、2−t−ブチルハイドロキノンの製造に際して、上記ハイドロキノンのブチル化反応のような逐次反応においては、モノブチル体の選択率を向上させるために、用いるイソブチレンに対して、ハイドロキノンを大過剰に用いればよいことは、既に知られているところである。しかし、このような方策は、反応器の単位容積当たりの目的物であるモノブチル体の収量が低下すること、及び大量の未反応ハイドロキノンを回収しなければならないこと等の問題があり、工業的に有利な方法とはいえない。
【0009】
このように、ハイドロキノンのブチル化による2−t−ブチルハイドロキノンの製造において、従来、提案されているいずれの方法によっても、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの副生を抑制することは困難であり、2−t−ブチルハイドロキノンのみを選択的に製造する方法は知られていない。
【0010】
そこで、従来、工業的に2−t−ブチルハイドロキノンを得るには、ハイドロキノンをブチル化し、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンと共に、未反応ハイドロキノンを含む反応混合物を得、この反応混合物から目的とする2−t−ブチルハイドロキノンを分離する方法が採用されている。
【0011】
しかしながら、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンは、その物理的性質、種々の有機溶媒に対する溶解性、沸点等が相互に近似しており、更に、いずれの化合物も、熱安定性がよくないところから、従来、工業的に行なわれている通常の分離方法によっては、得られる反応混合物から目的とする2−t−ブチルハイドロキノンの高純度品を効率よく分離することが困難である。例えば、特開昭62−81339号公報には、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンとは、比揮発度がいずれも1に近いこと、及び高温下では、いずれの化合物も熱分解を受け、また、微量の空気の漏れ込みによって著しく着色することから、蒸留による分離は、工業的には採用し難いことが記載されている。
【0012】
そこで、ハイドロキノンのブチル化反応によって得られる2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンとを含む反応混合物から、2−t−ブチルハイドロキノンを分離精製する方法としては、これら2つの化合物の有機溶媒に対する溶解度の差を利用する分別晶析法が種々提案されている。
【0013】
例えば、特願平3−236340号公報には、上記2つの化合物のトルエンに対する溶解度の差を利用する分別晶析法が記載されている。即ち、これによれば、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを含む反応混合物に晶析溶媒としてトルエンを添加して、この溶媒に対して溶解度のより小さい2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを先ず80℃において晶出させ、これを濾取し、次いで、晶析母液を40℃まで冷却して、目的とする2−t−ブチルハイドロキノンを晶析させ、これを分離するものである。この方法によれば、2−t−ブチルハイドロキノンは、94〜99%の純度にて得ることができるものの、晶析回収率は、生成した2−t−ブチルハイドロキノンに基づいて、25〜30%にすぎない。
【0014】
また、2つの化合物の熱水に対する溶解度の差を利用する抽出分離法も、従来より、多く提案されている。この方法は、熱水に対して、2−t−ブチルハイドロキノンがより溶解度が高いことを利用するものである。
【0015】
例えば、米国特許第 2,722,556号明細書には、酸触媒の存在下、トルエン中でハイドロキノンをブチル化し、未反応ハイドロキノンと共に、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンとを含む反応混合物を得、先ず、この反応混合物を水蒸気蒸留し、トルエンを留去して、2−t−ブチルハイドロキノンを熱水に溶解させ、移行させ、次いで、熱水に未溶解のまま、懸濁している2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの結晶を濾別し、最後に、この晶析母液を冷却して、目的とする2−t−ブチルハイドロキノンを晶出させ、これを濾取する方法が記載されている。
【0016】
更に、特開昭62−81340号公報には、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジブチルハイドロキノンとを含む反応混合物を先ず熱水を用いて固液抽出操作を行ない、次いで、得られた抽出液を冷却晶析して、2−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶をトルエン溶媒と室温下で接触させて、洗浄し、次いで、このようにして得られた2−t−ブチルハイドロキノンのスラリーから固形分を濾取し、得られたケーキを脱水した後、水蒸気蒸留して、ケーキに付着したトルエンを除去し、熱水から目的とする2−t−ブチルハイドロキノンを晶出させる方法が開示されている。この方法によれば、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン含量0.05重量%以下、トルエン含量数ppm以下のフード・グレードの高純度品を得ることができることが記載されている。しかし、この方法によれば、2−t−ブチルハイドロキノン1重量部に対して100重量部もの熱水を用いることが必要である。
【0017】
即ち、このような固液抽出法は、熱水に対する2−t−ブチルハイドロキノンの溶解度が小さいために(例えば、70℃で2重量%、40℃で1重量%)、多量の熱水を使用しなければならず、工業的に有利な方法といえない。
特開昭62−81339号公報には、上記固液熱水抽出を含む連続処理方法が記載されている。
【0018】
以上のように、従来のハイドロキノンのブチル化による方法によっては、2−t−ブチルハイドロキノンと共に2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンが副生し、前者のみを選択的に製造することができず、従って、工業的な2−t−ブチルハイドロキノンの製造においては、原料単位が悪く、また、副生する2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの処理の問題も生じる。
【0019】
しかも、上記反応によって得られる反応混合物から2−t−ブチルハイドロキノンを分離するにも、前述したように、蒸留による方法は、工業的に採用し難く、また、分別晶析による方法も、2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの有機溶媒に対する溶解性の差が小さいので、分離精製プロセスが煩雑であり、それでいて、分離効率が悪く、そのうえ、多量の有機溶媒を必要とするので、製造コストが高い。
【0020】
かくして、従来、ブチル化剤を用いてハイドロキノンをブチル化する反応によって、2−t−ブチルハイドロキノンを効率よく得ることができる工業的に有利な方法が要請されている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、従来の2−t−ブチルハイドロキノンの製造における上述したような問題を解決するために鋭意研究した結果、ハイドロキノンをブチル化した反応混合物から晶析溶媒としてメタノールと水との混合溶媒を用いて分別晶析することによって、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを効率よく晶析分離することができ、他方、このジブチル体を晶析した後の晶析母液から芳香族炭化水素を晶析溶媒として用いることによって、モノブチル体を効率よく晶析分離することができ、しかも、上記副生したジブチル体は、酸触媒を用いて脱ブチル化することによって、2−t−ブチルハイドロキノンに容易に変換でき、これを上記反応混合物と併せて処理することによって、上記副生したジブチル体を有効に利用しつつ、目的とする2−t−ブチルハイドロキノンを効率よく得ることができることを見出して、本発明を完成するに至ったものである。
【0022】
即ち、本発明は、ハイドロキノンのブチル化によって、高純度の2−t−ブチルハイドロキノンを効率よく製造することができる工業的に有利な方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明による2−t−ブチルハイドロキノンの製造方法は、
(A)酸触媒水溶液の存在下に有機反応溶媒中にて、ブチル化剤を用いてハイドロキノンをブチル化する工程、
(B)得られた反応混合物から上記酸触媒水溶液を除去し、得られた油層に工程
(E)で得られた脱ブチル化反応生成物を加え、アルカリにより中和処理する工程、
(C)このように中和処理した油層から上記有機反応溶媒を蒸留によって回収し、得られた釜残物に晶析溶媒としてメタノールと水との混合溶媒を加えて、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを晶析させ、分離する工程、
(D)上記2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを分離した後の晶析母液から上記メタノールを蒸留によって回収し、得られた釜残物に晶析溶媒として芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンからなる混合溶媒を加えて、2−t−ブチルハイドロキノンを晶析させ、分離する工程、及び
(E)前記(C)工程から得られた2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを酸触媒の存在下に芳香族炭化水素溶媒中において脱ブチル化し、得られた反応生成物を前記工程(B)における前記油層に合体させる工程、
からなることを特徴とする。
【0024】
更に、本発明による方法は、工程(F)として、前記工程(D)において得られた晶析母液から晶析溶媒として用いられた芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンとを蒸留回収する工程を有していてもよい。
【0025】
図1は、本発明による方法を示すフロー・シートである。以下、図1を参照しつつ、本発明による2−t−ブチルハイドロキノンの製造方法について、詳細に説明する。
【0026】
工程Aは、ハイドロキノンのブチル化反応の工程である。この工程においては、原料であるハイドロキノンを有機反応溶媒と酸触媒水溶液との混合物中に攪拌しながら分散させた後、この混合物にブチル化剤を加えて、ブチル化反応を行うものである。
【0027】
上記酸触媒水溶液としては、好ましくは、リン酸水溶液が用いられ、特に、濃度60〜80重量%のリン酸水溶液が好ましく用いられ、最も好ましくは、濃度65〜75重量%のリン酸水溶液が用いられる。リン酸水溶液は、原料であるハイドロキノン100重量部に対して、通常、50〜1000重量部の範囲で用いられ、好ましくは、100〜300重量部の範囲で用いられる。
【0028】
ブチル化剤としては、イソブチレン又はt−ブチルアルコールのいずれをも用いることができるが、好ましくは、反応生成水を伴わないイソブチレンが用いられる。ブチル化剤は、通常、原料であるハイドロキノン1モルに対して、0.8〜1.5モルの範囲で用いられる。特に、原料であるハイドロキノンの転化率を高めて、ジブチル体の生成を少なくする観点からは、ブチル化剤は、原料であるハイドロキノン1モルに対して、0.9〜1.1モルの範囲で用いられるのが好ましい。
【0029】
上記有機反応溶媒は、特に、限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クメン等の芳香族炭化水素や、又はこれら芳香族炭化水素とジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトンとの混合溶媒が好ましく用いられる。これらのながでは、特に、キシレンか、又はキシレンとメチルイソブチルケトンとの混合溶媒が好ましく用いられる。
【0030】
有機反応溶媒は、特に、制限されるものではないが、通常、原料であるハイドロキノン100重量部に対して、200〜1000重量部の範囲で用いられ、好ましくは、250〜400重量部の範囲で用いられる。
【0031】
本発明において、上記ハイドロキノンのブチル化反応は、通常、70〜100℃、好ましくは、85〜95℃の範囲の温度にて行なわれる。反応圧力は、特に制約がなく、常圧、加圧下、いずれでもよい。
【0032】
本発明によれば、原料であるハイドロキノンを上記有機反応溶媒と酸触媒水溶液の混合物中に攪拌しながら分散させ、これにブチル化剤、例えば、イソブチレンを導入して、ブチル化反応を行なう。このようにして得られる反応混合物は、酸触媒水層と有機層との2液層からなり、反応生成物である2−t−ブチルハイドロキノンは、副生物である2,5−ジ−t−ハイドロキノンと未反応のハイドロキノンと共に、上記有機層に溶解している。
【0033】
工程(B)は、このようにして得られる反応混合物をアルカリにて中和処理する工程である。
即ち、上記ブチル化反応の終了後、得られた反応混合物を反応時の温度に保ちながら静置して分層させ、下層の酸触媒水溶液層、例えば、リン酸水溶液層を分液除去する。次いで、上層の有機層に後述する工程(E)において得られた脱ブチル化反応の反応生成物を合体させ、ここで残存している酸触媒を希アルカリ水溶液を用いて中和処理する。
上記ブチル化反応に用いた酸触媒水層は、分液後、再び、ブチル化反応工程に循環使用することができる。
【0034】
工程(C)は、ブチル化反応によって得られた反応混合物中の2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを晶析分離する工程である。
上記工程(B)で得られた中和処理後の油層から有機反応溶媒を蒸留によって留去した後、得られた釜残物に晶析溶媒としてメタノールと水との混合溶媒を加え、加熱して、上記釜残物を溶解させる。このようにして得られた溶液を徐冷し、ここで、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を析出させ、これを分離する。晶析温度は、通常、10〜60℃の範囲が好ましいが、特に、35〜40℃の範囲が好ましい。
【0035】
このようして得られた2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶は、後述する工程(E)に送られて、脱ブチル化反応に供される。2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を分離した後の晶析母液は、次の工程(D)で処理される。
上記晶析溶媒として用いられるメタノールと水との混合溶媒におけるメタノール濃度は、通常、10〜60重量%の範囲が好ましいが、特に、モノブチル体とジブチル体の溶解温度差が大きい30〜50重量%の範囲が好ましい。晶析溶媒中のメタノール濃度が10重量%よりも小さいときも、また、60重量%を越えるときも、2つの化合物の間の溶解度差が小さくなり、両者の分離効率が悪く、製品純度と晶析回収率の低下を招き、工業上、不利である。
【0036】
本発明の方法において、晶析溶媒として好ましく用いられる40重量%のメタノールを有する混合溶媒に対する2−t−ブチルハイドロキノンと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの溶解度を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
工程(D)は、2−t−ブチルハイドロキノンの晶析分離工程である。
この工程(D)においては、上記工程(C)で得られた晶析母液を蒸留して、メタノールを除去する。次いで、得られた釜残物に2−t−ブチルハイドロキノンのための晶析溶媒として、芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンの混合溶媒を添加し、加温して、釜残物を溶解させて、均一な溶液とする。その後、上記溶液を徐冷し、2−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を析出させ、これを濾取する。
【0039】
上記晶析溶媒として用いられる芳香族炭化水素は、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンから選ばれる少なくとも1種が好ましいが、特に、キシレンが好ましい。また、上記脂肪族ケトンとしては、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が用いられる。特に、晶析溶媒として、芳香族炭化水素と脂肪族ケトンとの混合溶媒を用いるときは、キシレンとメチルイソブチルケトンとの混合溶媒が好ましく用いられる。
【0040】
2−t−ブチルハイドロキノンのための晶析溶媒は、釜残物100重量部に対して、通常、100〜300重量部の範囲で用いられ、特に好ましくは、100〜150重量部の範囲で用いられる。
【0041】
次いで、このようにして得られた2−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を有機溶媒にて洗浄して、粗結晶に付着している母液を除去する。この粗結晶の洗浄に用いられる有機溶媒は、特に、限定されるものではないが、本発明の方法によれば、2−t−ブチルハイドロキノンの晶析溶媒として用いられた前記芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンの混合溶媒を用いれば、プロセスを簡略化できるので好ましい。
【0042】
粗結晶を有機溶媒にて洗浄するには、例えば、濾過機フィルター上に2−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を保持して、これに洗浄液を振りかける方法や、洗浄液中に2−t−ブチルハイドロキノン結晶を加えて、適宜時間攪拌保持した後、濾過する方法等を例示することができ、このようにして、湿潤した精製結晶を得ることができる。ここに、洗浄液は、2−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶100重量部に対して、通常、50〜100重量部の範囲で用いられる。
【0043】
このようにして得られた2−t−ブチルハイドロキノンの湿潤精製結晶を乾燥機に置き、圧力100mmHg以下、温度100℃以下にて適宜時間加熱乾燥させることによって、2−t−ブチルハイドロキノンの白色結晶を得ることができる。
本発明によれば、このようにして得られる2−t−ブチルハイドロキノンは、純度99.5%以上の高純度品であり、晶析回収率は、通常、90%以上である。
この工程(D)において得られた上記晶析母液や洗浄液は、溶媒回収工程に送られ、溶媒が蒸留回収される。この回収溶媒は循環使用することができる。
【0044】
工程(E)は、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの脱ブチル化反応工程である。
この工程(E)においては、前記工程(C)で得られた2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶を芳香族炭化水素溶媒中、酸触媒の存在下に脱ブチル化反応させて、本発明の方法において目的とする2−t−ブチルハイドロキノンに富む反応生成物を得るものである。
【0045】
この脱ブチル化反応においては、ジブチル体は、モノブチル体を経て、ハイドロキノンに脱ブチル化され、芳香環上のブチル基の数が少なくなるほど、反応速度が遅くなる。そこで、本発明によれば、この脱ブチル化反応において、反応条件を適切に設定して、反応を制御することによって、モノブチル体を主成分とする反応生成物を得ることができる。
【0046】
本発明によれば、この脱ブチル化反応においては、酸触媒としては、有機スルホン酸が好適に用いられる。このような有機スルホン酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等を例示することができる。
脱ブチル化反応において、上記酸触媒の使用量は、原料である2−t−ブチルハイドロキノン粗結晶100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは、0.5〜5重量部の範囲である。
【0047】
脱ブチル化反応の反応溶媒としては、芳香族炭化水素が好ましく用いられる。この芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン等が例示することができるが、工程(A)及び(D)において用いる芳香族炭化水素と同じものを用いれば、プロセスを簡略化することができ、工業的に有利である。
上記反応溶媒は、原料である2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン100重量部に対して、通常、300〜500重量部の範囲で用いられる。
【0048】
本発明において、脱ブチル化反応は、通常、用いる反応溶媒の還流温度において行なわれる。例えば、反応溶媒としてキシレンを用いたときは、反応温度は約140℃であり、メシチレンを用いたときには、反応温度は約165℃である。このように、反応温度は用いる反応溶媒によって規定されるが、通常、120〜170℃の範囲が好適である。
【0049】
他方、脱ブチル化反応によって発生したイソブチレンガスは、反応器上部から抜き出され、冷却捕集される。この回収イソブチレンは、工程(A)において、循環使用することができる。
【0050】
本発明によれば、この脱ブチル化反応においては、得られる反応生成物中の2−t−ブチルハイドロキノンの割合が50〜70モル%の範囲で反応を停止するのが望ましい。このモノブチル体の割合が70%を越えるときは、このブチル体が更に脱ブチル化されて生成するハイドロキノンの割合が10%を越えることとなり、2−t−ブチルハイドロキノンを製造することを目的とする本発明の観点から、工業上、不利である。他方、得られる反応生成物中の2−t−ブチルハイドロキノンの割合が50%よりも少ないときは、脱ブチル化されない未反応のジブチル体が多く残り、これも不利である。
脱ブチル化の反応の時間は、反応温度や触媒濃度によって異なるが、通常、1〜10時間の範囲である。
【0051】
このようにして、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの脱ブチル化によって得られた2−t−ブチルハイドロキノンに富む反応生成物は、前述したように、工程(B)における有機層に合体されて、中和処理される。
【0052】
工程(F)は、前述した工程(D)において、2−t−ブチルハイドロキノンを析出させ、分離した後の晶析母液から晶析溶媒として用いた芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンとを蒸留によって回収する工程である。
回収された溶媒は、工程(A)や(D)において再使用することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ハイドロキノンをブチル化して、2−t−ブチルハイドロキノンと共に、副生する2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンと未反応ハイドロキノンとを含む反応混合物を得るのであるが、この反応混合物からジブチル体を分離する際に、晶析溶媒として、メタノールと水との混合溶媒を用いるので、ジブチル体を効率よく晶析分離することができ、更に、ここに得られた晶析母液から芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンとの混合溶媒を晶析溶媒として用いることによって、効率よくモノブチル体を晶析分離することができ、更に、前記反応混合物から晶析分離したジブチル体を脱ブチル化して、モノブチル体に富む反応生成物を得、これを上記ハイドロキノンのブチル化反応混合物に合体させ、処理するので、ジブチル体を有効に利用しつつ、目的とするモブチル体を効率よく、工業上、有利に得ることができる。
従って、本発明の方法は、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの製造方法として、工業上、経済性にすぐれるものである。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0055】
実施例1
(工程(A)(ハイドロキノンのブチル化工程))
攪拌機、冷却器及びイソブチレン吹き込み管を備えた1リットル容量の三つ口フラスコにハイドロキノン106.8g(0.97モル)、70%リン酸水溶液106.8g(0.763モル)及びメチルイソブチルケトン/キシレン混合溶媒(重量比1/1)267gを仕込み、フラスコ内を窒素置換した。
【0056】
この後、攪拌しながら、フラスコ内の混合物を90℃まで昇温し、イソブチレン58.1g(1.04モル)を3時間かけて吹き込んだ。ここに、イソブチレン/ハイドロキノン仕込みモル比は1.07である。この後、90℃で2時間、反応を続けた。反応液は、反応初期はスラリー状であったが、反応の進行と共にスラリー中の懸濁物は次第に溶解し、反応終了時には、リン酸水層と油層とからなる均一な2液層を形成した。
この油層の一部を採取し、第二リン酸ナトリウム水溶液で中和処理し、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、ハイドロキノンの転化率は91.2%、2−t−ブチルハイドロキノンの収率は77.0モル%であった。
【0057】
(工程(B)(中和処理工程))
反応終了後、得られた反応混合物を90℃に保ちながら、静置して、2層に分層させ、下層のリン酸水層99.8gを抜き出した。このリン酸水層は、ブチル化反応工程に循環して再使用することができる。
上層の油層に後述する工程(E)で得られた脱ブチル化反応の反応生成物32.7gを加えて合体させ、これに5%第二リン酸ナトリウム水溶液22.4g(0.28モル)を添加して中和した。次いで、この混合物を80℃で静置し、分層させた後、水層を抜き出し、除去した。このようにして中和処理後の油層481.4gを得た。
【0058】
(工程(C)(2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの晶析分離工程))
上記中和処理後の油層を100mmHgの減圧下で蒸留し、水、メチルイソブチルケトン及びキシレンを回収した。得られた釜残物は183.8gであって、ハイドロキノン9.2g、2−t−ブチルハイドロキノン121.4g、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン15.3g、その他副生成物10.8gからなる組成を有するものであった。
【0059】
この釜残物に40%濃度のメタノールと水との混合溶媒(以下、メタノールと水との混合溶媒をメタノール水ということがある。)238gを加え、80℃まで昇温して、釜残物を溶解させ、均一な溶液とした。
この溶液を徐冷し、晶析を行なった。67℃で結晶の析出が始まり、35℃まで冷却した。析出した結晶を遠心分離器を用いて濾別した。得られた湿潤粗結晶には、2−t−ブチルハイドロキノン5.5gと2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン12.5gが含まれていた。
【0060】
(工程(D)(2−t−ブチルハイドロキノンの晶析分離工程))
上記工程(C)で得られた晶析母液からメタノール水を蒸留により回収した。このメタノール水は上記工程(C)に循環し、再使用することができる。
得られた釜残物は167gであって、バイドロキノン9.2g、2−t−ブチルハイドロキノン118.6g、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン2.8gを含んでいた。
この釜残物にキシレン315gを加え、80℃まで昇温して、釜残物を溶解させ、均一な溶液とした。次いで、この溶液を35℃まで徐冷し、析出した結晶を遠心分離器を用いて濾別した。次いで、遠心分離器上のケーキにキシレン及び水を振りかけて、洗浄した。
【0061】
このようにして得られた2−t−ブチルハイドロキノンの湿潤結晶133.3gを圧力200mmHg、温度80℃の条件下で4時間乾燥して、2−t−ブチルハイドロキノンの白色精製結晶117.8gを得た。この結晶の純度は99.7%であり、不純物として、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン0.1%を含んでいた。
目的物である2−t−ブチルハイドロキノンの通算収率は、ハイドロキノン基準で73モル%であった。
【0062】
(工程(E)(2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの脱ブチル化工程))
攪拌機、冷却管及び排ガスラインを備えた100ml容量の三つ口フラスコに前記(C)工程で得られた2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンの粗結晶18gをキシレン18g及びp−トルエンスルホン酸0.4gと共に仕込み、反応温度140℃で4時間、攪拌して、脱ブチル化反応を行なった。発生したガスを冷却捕集して、イソブチレン3.3gを回収した。
【0063】
このようにして得られた反応生成物は、ハイドロキノン4.3重量%、2−t−ブチルハイドロキノン31.5重量%、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン9.2重量%からなる組成を有するものであった。
この反応生成物は、前記(B)工程における前記油層に合体させ、前述したように、中和処理した。
【0064】
前記工程(D)において、2−t−ブチルハイドロキノンを分離した後の母液からキシレンを蒸留回収した。キシレンの回収率は90%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明による2−t−ブチルハイドロキノンの製造を示すフロー・シートである。
Claims (6)
- (A)酸触媒水溶液の存在下に有機反応溶媒中にて、ブチル化剤を用いてハイドロキノンをブチル化する工程、
(B)得られた反応混合物から上記酸触媒水溶液を除去し、得られた油層に工程(E)で得られた脱ブチル化反応生成物を加え、アルカリにより中和処理する工程、
(C)このように中和処理した油層から上記有機反応溶媒を蒸留によって回収し、得られた釜残物に晶析溶媒としてメタノールと水との混合溶媒を加えて、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを晶析させ、分離する工程、
(D)上記2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを分離した後の晶析母液から上記メタノールを蒸留によって回収し、得られた釜残物に晶析溶媒として芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンからなる混合溶媒を加えて、2−t−ブチルハイドロキノンを晶析させ、分離する工程、及び
(E)前記(C)工程から得られた2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンを酸触媒の存在下に芳香族炭化水素溶媒中において脱ブチル化し、得られた反応生成物を前記工程(B)における前記油層に合体させる工程、 - 工程(A)において、酸触媒水溶液が濃度60〜80重量%のリン酸水溶液である請求項1記載の方法。
- 工程(A)において、ブチル化剤がイソブチレンである請求項1記載の方法。
- 工程(C)において、メタノールと水との混合溶媒がメタノール濃度10〜60重量である請求項1記載の方法。
- 工程(E)において、酸触媒が有機スルホン酸である請求項1記載の方法。
- 工程(F)として、工程(D)において得られた晶析母液から晶析溶媒として用いられた芳香族炭化水素か、又は芳香族炭化水素と脂肪族ケトンとを蒸留回収する工程を有する請求項1記載の方法。
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