JP3569816B2 - 舵取り装置 - Google Patents

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  • Power Steering Mechanism (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラックピニオン式の舵取り装置に関し、更に詳述すれば、舵取りのために軸長方向に摺動するラック軸に、転舵状態から直進状態への復元のための復元力を付与する構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の舵取り装置の一形式として、車体の左右方向に延設され、その両端を左右の操向車輪(一般的には前輪)に連結されたラック軸と、該ラック軸の中途部に噛合され、舵輪(ステアリングホィール)に連動連結されたピニオンとを備えたラックピニオン式の舵取り装置がある。
【0003】
前記ラック軸は、車体の左右方向に延設された筒形のハウジング内に軸長方向への摺動自在に支持され、該ハウジングの両側への突出端を左右の操向車輪に各別のリンク部材(タイロッド)を介して連繋させて、舵輪の操作に伴う前記ピニオンの回動に応じて摺動せしめ、この摺動を左右の操向車輪に伝え、これらの向きを変える構成となっている。前記タイロッドは、玉継手(ボールジョイント)等の継手部材を用いて前記ラック軸の端部に連結されており、ラック軸の摺動に伴って軸心に沿って直線運動をなす前記端部と、一軸回りの揺動により向きを変える操向車輪との間での力伝達が行えるようにしている。
【0004】
さて、自動車の舵取り機構は、一般的に、舵取りのための舵輪操作によってその向きを変えた操向車輪を、路面からの反力の作用により直進状態へ復元させる手段を備えており、走行中に舵輪から手を放すことにより前記操向車輪が直進状態に戻るようになしてある。このような復元は、操向車輪を含む舵取り機構の各部材が平面視において適正な位置関係を保って配置することにより良好に実現されるが、舵取り機構が配設される車両の前部には、一般的に、エンジン、変速機等、駆動系の構成部材も配設されることから、前述した適正な配置を実現することは難しい。
【0005】
また一方、近年の自動車には、舵取りのための舵輪の操作に要する労力負担を軽減して快適な操舵感覚を得るべく、動力舵取装置(パワーステアリング装置)が広く装備されている。これは、舵取り機構中に配した操舵補助用のアクチュエータが舵輪操作に応じて発生する力により舵取りを補助する構成としたものであり、前記アクチュエータとして、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータを用いる油圧式、同じく電動モータを用いる電動式とに大別される。
【0006】
前述したラックピニオン式の舵取り装置において油圧式の動力舵取装置を構成する場合、ラック軸のハウジングの中途部を液密に封止してなるシリンダ室内にラック軸に固設されたピストンを配し、これらにより操舵補助用の油圧シリンダを形成している。ところが、このようにした場合、シリンダ室の両側にて液密を保つためのシール部材がラック軸の周面に弾接し、これらがラック軸の摺動に対する抵抗として作用し、この摺動を伴って前述した如くに生じる直進状態への復元動作が阻害されるという不都合がある。
【0007】
このような事情により従来から、ばね等の弾性体を利用して直進状態への復元を補助する種々の構成が提案されている。復元補助のための弾性力は、復元を阻害する部材に直接的に付与するのが合理的であり、ラックピニオン式の舵取り装置においては、実開昭57−159577号公報等に開示されている如く、前記弾性力をラック軸に付与する構成が採用されている。
【0008】
この舵取り装置は、図6に示す如く、ラック軸1を収納する筒形のハウジング2の両側(片側のみ図示)の開口部20にコイルばねBを組み付けた構成となっている。この構成によれば、図中に白抜矢符にて示す向きにラック軸1が摺動するとき、ハウジング2内への進入側において、該ラック軸1の一部、具体的には、タイロッド4の連結のための玉継手5の端面が、座金B′を介して前記コイルばねBの他端に弾接し、これが縮短せしめられた状態となり、この状態にて舵取りのための舵輪操作が解除されたとき、前記コイルばねBのばね力により前記ラック軸1が逆向きに押圧され、直進状態への復元が補助されることとなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、以上の如き従来の構成においては、ハウジング2の開口部20に組み付けられたコイルばねBがラック軸1の外側を囲う態様に配設されており、ラック軸1は、舵取りのために左右両方向に生じる摺動長さの略全範囲に亘ってコイルばねBの内側を移動することになり、この移動に伴ってコイルばねBとの接触することが避けられず、この接触に伴う疵が、前記ラック軸1の外周に広範囲に亘って形成される虞れがある。
【0010】
このような疵が形成された場合、図6に示す如く、油圧式の動力舵取装置となすべくハウジング2の内部に操舵補助用の油圧シリンダSを備える構成においては、該油圧シリンダSの一側を封止するシール部材6に疵を生じたラック軸1が摺接し、シール部材6が損傷して、シール作用が損なわれるという不都合を招来する。
【0011】
また一方、図6の逆側においては、舵輪の操作に伴って回動するピニオンに噛合させるべくラック軸1に形成されたラック歯が損傷し、前記ピニオンとの噛合状態が悪化して、ラック軸1の摺動、及びこれに応じた舵取り動作が滑らかに行われなくなるという不都合がある。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、直進状態への復元を補助するための改良された補助手段を、ラック軸の外周における疵の形成範囲を限定された範囲に止め、操舵補助用の油圧シリンダのシール作用を損なわず、またラック歯の損傷を招来することなく構成することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る舵取り装置は、筒形のハウジング内に軸長方向への摺動自在に支持され、該ハウジングの両側への突出端の夫々に、各別の継手部材を介して左右の操向車輪に連なるタイロッドを連結してあるラック軸を備え、該ラック軸を舵輪の操作に応じて摺動せしめて前記操向車輪の向きを変える構成としたラックピニオン式の舵取り装置において、前記ラック軸の前記継手部材の取り付け側に、該継手部材の端面にその一端を当接させて外嵌保持され、前記ラック軸が摺動するとき、前記ハウジング内に進入する側にて、該ハウジングの一部にその他端を弾接させて縮短し、前記ラック軸に、前記進入の向きと逆向きの弾性力を付与する弾性体を具備することを特徴とする。
【0014】
本発明においては、タイロッドとの連結のための継手部材の取り付け側において、ラック軸に弾性部材を外嵌保持させ、舵取り操作に応じてラック軸が摺動するとき、前記弾性部材が、ハウジング内への進入側においてハウジングの端面と継手部材の端面との間にて押圧されて縮短し、摺動の向きと逆向きの弾性力が付与された状態となり、この状態にて舵取り操作が解除されたときには、前記弾性力の作用によりラック軸が押圧されて、該ラック軸の逆向きの摺動、即ち、直進状態への復元が補助される。以上の動作の間、前記弾性部材の内側には、該弾性部材の保持域近傍の限定された範囲が位置するのみであり、弾性部材との接触による疵もこの範囲内に生じ、ハウジング内に構成された操舵補助用の油圧シリンダのシール域、及びラック歯の形成域に及ばない。
【0015】
更に加えて前記ラック軸は、前記継手部材の取り付け側に他部よりも小径の保持部を備え、前記弾性体は、前記保持部に外嵌され、前記他部との間の段部と継手部材の端面との間にて所定の予圧を与えて保持されたコイルばねとしてあること、また、前記保持部の前記継手部材の取り付け端近傍に、該保持部よりも小径の係合部を形成し、前記コイルばねは、前記一端側に他部よりも巻き径を小とした座部を備え、該座部を前記係合部に嵌め合わせて固定してあることを夫々特徴とする。
【0016】
弾性部材をコイルばねとし、継手部材の取り付け側に形成された他部よりも小径の保持部に、この保持部と他部との間の段部と継手部材との間にて所定の予圧を与えて保持させ、前記コイルばねがハウジングの端面への弾接により縮短しない状態にあるとき、保持部上にてガタ付くことを防止する。また、コイルばねの一端側に他部よりも巻き径を小とした座部を設け、またラック軸側の保持部の継手部材の取り付け側に更に小径とした係合部を設け、該係合部に前記コイルばねの座部を嵌め合わせて固定する構成により、前記コイルばねの取り付けを継手部材の取り付けに先立って独立して行わせ得るようにし、組み立てが容易に行えるようにする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係るラックピニオン式の舵取り装置の要部を示す一部破断正面図、図2は、他の要部を示す正面断面図である。
【0018】
本発明に係る舵取り装置は、筒形をなすハウジング2の内部に軸長方向への摺動自在に支承されたラック軸1を備えている。ハウジング2の両側(図1及び図2に片側づつ図示)の開口部20,20から突出するラック軸1の両端部は、各別のタイロッド4,4を介して図示しない左右の操向車輪に夫々連繋させてある。
【0019】
ラック軸1は、図1中に破線により示す如く、その一側端部の近傍に適長に亘って形成されたラック歯10を備えており、該ラック歯10は、ハウジング2の中途部に交叉するピニオンハウジング21の内部に支承されたピニオン軸22に一体形成されたピニオン(図示せず)に噛合させてある。ピニオン軸22は、ピニオンハウジング21の上部への突出端を図示しない舵輪に連結され、舵取りのための前記舵輪の操作に応じて回転するようになしてあり、この回転を前記ピニオンとラック歯10との噛合によりラック軸1の摺動に変換し、この摺動を前記タイロッド4,4を介して左右の操向車輪に伝えて舵取りが行われる。
【0020】
ピニオンハウジング21の内部には、舵輪の操作に応じてピニオン軸22に加わる操舵トルクに応じて油圧の給排制御を行う油圧制御弁が構成されており、該油圧制御弁からの送出油を、ピニオンハウジング21の外側に連結された一対の送油管23,24を経てハウジング2の他側に形成された操舵補助用の油圧シリンダSに送り、ラック軸1の摺動に応じて前述の如く行われる舵取りを補助する動力舵取装置が構成されている。
【0021】
図2は、図1と反対側のハウジング2の端部近傍が示されている。前記油圧シリンダSは、図2中にその一部を示す如く、ラック軸1の外周に弾接するシール部材(オイルシール)6をその内周に保持する一対のシール環60,60(片側のみ図示)をハウジング2に内嵌し、該ハウジング2の内部を適長に亘って区切って液密に封止されたシリンダ室を形成し、該シリンダ室の内部に、ラック軸1の中途に嵌着固定されたピストンPを摺動自在に嵌挿して構成されている。前記送油管23,24(図2には一方の送油管23のみ図示)は、前記油圧制御弁からの送出油を導入すべく、ピストンPの両側に分離されたシリンダ室の両端部に夫々連結されている。
【0022】
ラック軸1の端部と前記タイロッド4,4との連結には、玉継手5,5が用いられている。該玉継手5は、図1中にその一部を破断して示す如く、タイロッド4の基端に一体的に連設された球体5aを、ラック軸1の軸端部に同軸的に螺合固定されたハウジング5bに抱持させてなり、該ハウジング5b内での前記球体5aの滑動により、ラック軸1に対するタイロッド4のあらゆる方向への傾倒を許容する公知の継手部材であり、タイロッド4によるラック軸1と操向車輪との連結を、両者の運動軌跡の相違を吸収して行えるようにしている。この連結部位は、ハウジング2の開口部20の外周縁とタイロッド4の基端部側外周とに両端を嵌着させたベローズ40により覆い、外部からの塵埃、水滴等の異物の侵入を防ぐようにしてある。
【0023】
ラック軸1は、継手部材としての玉継手5の取り付け側に、他部よりも小径に加工された保持部11を備えており、該保持部11には、本発明の特徴たるコイルばね3が外嵌保持させてある。また前記保持部11の玉継手5の取り付け側の端部近傍には、前記保持部11よりも更に小径に加工された係合部12が形成されており、前記コイルばね3は、該係合部12にその一端を係合させ、玉継手5のハウジング5bの端面に前記一端側を、また他端側を、保持部11と他部との境界となるラック軸1外周の段部の端面に夫々弾接せしめ、両者間にて所定の予圧を付与された状態に取り付けてある。
【0024】
図3は、コイルばね3の前記段部との当接側の拡大断面図であり、同側のコイルばね3の端部には、薄肉のキャップ環30が嵌め合わせてあり、前記段部との当接が該キャップ環30を介して生じるようになしてある。図示の如くキャップ環30は、コイルばね3との対向側に開口を有する「コ」の字形の断面形状を有し、その底辺の内側半部を前記段部に当接させてあり、該段部とコイルばね3との衝突を緩衝する緩衝体としての作用をなすと共に、一方の側辺により保持部11の周面とコイルばね3との間に隙間を確保し、両者の直接的な接触を防ぐ作用をなすべく設けてある。前記衝突に伴う緩衝を有効に行わせると共に、コイルばね3の縮短に伴う保持部11の外周に対する摺動を滑らかに行わせるため、前記キャップ環30は、合成樹脂製とするのが望ましい。
【0025】
図4は、コイルばね3の取り付け手順の説明図である。ラック軸1の端部には、前述した如く、他部よりも小径とされた保持部11が形成され、該保持部11の先端側に更に小径とされた係合部12が形成されている。本図に示す如くコイルばね3は、前記キャップ環30の装着側と逆側に、他部よりも巻き径を小とした略一巻き分の座部3aを備えている。該コイルばね3の自然長Xは、ラック軸1側の保持部11及び係合部12の長さYよりも長く、コイルばね3の座部3aの内径は、前記係合部12の外径よりもやや小さく設定されている。また前記保持部11の外径は、コイルばね3の他端に装着されたキャップ環30の内径よりもやや小さく設定されている。
【0026】
コイルばね3は、図4(a)に示す如く、ラック軸1の端部に対して同軸的に位置決めされ、前記キャップ環30の装着側を先として、該キャップ環30を保持部11に隙間嵌めさせつつラック軸1の端部に挿入し、キャップ環30を保持部11の基端側の段部に押し当てた後、座部3a側の押し込みを続け、該座部3aを係合部12に圧入せしめて、図4(b)に示す如く取り付けられる。この状態においてコイルばね3は、前記段部に押し付けられたキャップ環30と、係合部12に圧入された座部3aとの間にて、前記自然長Xよりも短いYなる長さを有して拘束された状態となり、この後にラック軸1の端部に螺合固定される玉継手5の端面との間において予圧を付与された状態に保持される。
【0027】
玉継手5の取り付けは、これのハウジング5bに同軸的に突設された雄ねじ部50をラック軸1の端面の軸心部に形成された雌ねじ孔13に螺合することにより実現されるが、この取り付けは、図4(b)に示す如く、前記コイルばね3を拘束した後に容易に行える。また取り付け完了後のコイルばね3は、ラック軸1中途の段部と玉継手5の端面との間に予圧を付与された状態にあり、また前記段部との当接部に介装されたキャップ環30により、保持部11の外周との間に隙間が確保された状態にあるから、走行中の振動によるコイルばね3のガタ付きを抑えることができ、各部との衝突による異音の発生を抑制することができる。
【0028】
図5は、本発明に係る舵取り装置の動作説明図である。なお本図においては、開口部20を覆うベローズ40の図示を省略してある。
【0029】
本図及び図1に示す如く、ラック軸1が突設されたハウジング2の開口部20には、玉継手5の進入が可能な大径の凹所2aと、該凹所2aの内奥側にコイルばね3の進入が可能な小径の凹所2bとが形成されている。直進状態を示す図5(a)において、ラック軸1の玉継手5の装着端は、ハウジング2の端部から離れた位置にあり、前記コイルばね3は、前述した取り付け状態を保っている。
【0030】
舵取り操作がなされた場合、ラック軸1は、前述の如く軸長方向に摺動する。この摺動は、ハウジング2の一側においては、図5(a)中に矢符により示す如く、ハウジング2内に進入する向きに生じ、他側においては、ハウジング2から更に突出する向きに生じる。ハウジング2内へのラック軸1の進入は、前記凹所2aの内部に玉継手5が入り込む範囲にて許容され、この摺動により前記コイルばね3は、凹所2aの内奥側の凹所2bに入り込み、先端側に装着されたキャップ環30が前記凹所2bの底面に弾接した後、更なる摺動に伴って、図5(b)に示す如く縮短せしめられ、ラック軸1を、図中に白抜矢符にて示す如く、前記進入の向きと逆向きに押圧する。
【0031】
この状態で前記舵取り操作が解除された場合、ラック軸1は、コイルばね3のばね力により、前記摺動の向きと逆向き、即ち、直進状態へ復元する向きに押圧され、この復元が補助される。なおコイルばね3先端のキャップ環30は、凹所2bの底面への弾接時においても緩衝体としての作用をなす。
【0032】
図5は、図1に示す側での動作を示しているが、これと逆側、即ち、図2に示す側においても同様の動作がなされ、コイルばね3の縮短により直進状態への復元が補助される。なお、図2に示す側のハウジング2は、前記油圧シリンダSのシリンダ室を形成するため円形断面のパイプ材が用いられており、同側の開口部20の内面を玉継手5の受け入れのための凹所2aとして利用し、前記シール環60よりも開口部20側にストッパ環7を内嵌固定して、該ストッパ環7の軸心部にコイルばね3の受け入れのための凹所2bを形成している。
【0033】
以上の如く本発明に係る舵取り装置においては、ラック軸1の端部に前述の如く装着されたコイルばね3が、大転舵時におけるラック軸1の摺動に伴って縮短せしめられ、この縮短に応じたばね力(弾性力)を発生してラック軸1の復元を補助する動作が行われるが、この動作の間、コイルばね3の内側には、ラック軸1の端部の限定された長さ範囲、具体的には、前記保持部11が位置するのみであり、コイルばね11との接触による疵もこの範囲内に限って生じるのみである。
【0034】
この保持部11は、図5(b)に示す如くコイルばね3が最も縮短した状態となった時においても、ハウジング2の内側にわずかに入り込むに過ぎず、図2に示す如く、ハウジング2の一側開口部20の近傍に設けられた操舵補助用の油圧シリンダSの一側を封止するシール部材6が、前記疵の形成部位との摺接により損傷し、シール作用が損なわれる虞れはない。一方、図1に示す側においても、コイルばね3との接触による疵の形成範囲が保持部11に限られ、ラック歯10の形成域に及ばないことから、該ラック歯10とピニオンとの噛合が良好に保たれる。
【0035】
なお、以上の実施の形態において、コイルばね3と保持部11との間には、コイルばね3の先端側に装着した合成樹脂製のキャップ環30により隙間が確保され、両者の直接的な接触を防ぐ構成としてあるから、保持部11における疵の発生も抑えることができる。
【0036】
また以上の実施の形態においては、直進状態への復元のための弾性部材としてコイルばね3を用いたが、該コイルばね3に代えて、他のばね、又はゴム等の弾性体を用いてもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明に係る舵取り装置においては、ラック軸が摺動したとき、該ラック軸の継手部材の取り付け側端部に外嵌保持させた弾性部材が、ハウジングと継手部材の端面との間にて押圧されて縮短し、前記摺動の向きと逆向きの弾性力を付与し、直進状態への復元を補助する構成であるから、前記弾性部材の内側には、該弾性部材の保持域近傍の限定された範囲が位置するのみであり、弾性部材との接触によるラック軸外周の疵もこの範囲内に生じ、ハウジング内に構成された操舵補助用の油圧シリンダのシール域、及びラック歯の形成域に及ばず、油圧シリンダのシール作用が損なわれず、またラック歯の損傷を招来する虞れもない。
【0038】
また、復元補助のための弾性部材としてコイルばねを用い、ラック軸の端部近傍に設けた小径の保持部に外嵌し、該保持部の一側の段部と継手部材の端面との間にて所定の予圧を与えて保持させてあるから、非動作状態においてもガタ付くことがない。更に、保持部の継手部材の取り付け側を更に小径として係合部を設け、コイルばねを、その一端側の巻き径を小とした座部を前記係合部に嵌め合わせて固定する構成としたから、コイルばねの取り付けが独立して行え、組み立てが容易となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るラックピニオン式の舵取り装置の要部を示す一部破断正面図である。
【図2】本発明に係るラックピニオン式の舵取り装置の他の要部を示す正面断面図である。
【図3】コイルばねのラック軸の段部との当接側の拡大断面図である。
【図4】コイルばねの取り付け手順の説明図である。
【図5】本発明に係る舵取り装置の動作説明図である。
【図6】直進状態への復元手段を備えた従来のラックピニオン式舵取り装置の要部を示す正面断面図である。
【符号の説明】
1 ラック軸
2 ハウジング
3 コイルばね
3a 座部
4 タイロッド
5 玉継手
6 シール部材
11 保持部
12 係合部
30 キャップ環
S 油圧シリンダ

Claims (3)

  1. 筒形のハウジング内に軸長方向への摺動自在に支持され、該ハウジングの両側への突出端の夫々に、各別の継手部材を介して左右の操向車輪に連なるタイロッドを連結してあるラック軸を備え、該ラック軸を舵輪の操作に応じて摺動せしめて前記操向車輪の向きを変える構成としたラックピニオン式の舵取り装置において、前記ラック軸の前記継手部材の取り付け側に、該継手部材の端面にその一端を当接させて外嵌保持され、前記ラック軸が摺動するとき、前記ハウジング内に進入する側にて、該ハウジングの一部にその他端を弾接させて縮短し、前記ラック軸に、前記進入の向きと逆向きの弾性力を付与する弾性体を具備することを特徴とする舵取り装置。
  2. 前記ラック軸は、前記継手部材の取り付け側に他部よりも小径の保持部を備え、前記弾性体は、前記保持部に外嵌され、前記他部との間の段部と継手部材の端面との間にて所定の予圧を与えて保持されたコイルばねとしてある請求項1記載の舵取り装置。
  3. 前記保持部の前記継手部材の取り付け端近傍に、該保持部よりも小径の係合部を形成し、前記コイルばねは、前記一端側に他部よりも巻き径を小とした座部を備え、該座部を前記係合部に嵌め合わせて固定してある請求項2記載の舵取り装置。
JP15464196A 1996-06-14 1996-06-14 舵取り装置 Expired - Fee Related JP3569816B2 (ja)

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