JP4623353B2 - 舵取り装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の車輪を操向するための舵取り装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
例えば、ラックアンドピニオン式の舵取り装置では、ステアリングホイールに連動させて、ラック軸を車体の幅方向に所定の範囲内で摺動させるようにしている。一般的に、ラック軸は直進状態からずれた状態にあると、路面からの力により自然に直進状態に戻るようになっているが、その戻りが悪いことがある。特に、ラック軸がその摺動範囲の端にあるときに、戻りが悪くなり易い。そこで、ラック軸がその摺動範囲の端に来たときに、この端からラック軸を離れさせるための離反機構が設けられている舵取り装置がある。
【0003】
このような離反機構を有する舵取り装置として、例えば、特開平10−1060号公報に示されるものがある。すなわち、図5に示すように、ラック軸90を摺動範囲の端から離れさせる力を得るための圧縮コイルばね91を、ラック軸90の小径部92内に位置規制して保持し、ラック軸90を支持するハウジング93に対して相対移動自在としている。しかしながら、上述の小径部92があると、ラック歯をラック軸90の端部近傍にまで形成できない。従って、ラック軸90の端部近傍にまでラック歯が必要な場合には、小径部92を形成できず、離反機構を設けることができない。
【0004】
また、実開平4−134783号公報等に示される舵取り装置では、上述の小径部が不要とされ、図6に示すように、ラック軸90を摺動自在に支持するハウジング93に筒状のケース96が固定され、このケース96内に圧縮コイルばね91が位置規制されて伸縮自在に保持され、且つラック軸90に対して相対移動自在とされる。ばね91の端部に薄板状の環状部材97が固定される。ラック軸90が摺動範囲の端に来ると、ばね91は、環状部材97を介してラック軸90の端部95とケース96の端部98との間に挟まれて圧縮され、ラック軸90を端から離れさせる力を生じさせる。しかしながら、ばね91の圧縮時、環状部材97はばね91を介してケース96の内面だけで案内されるので、ラック軸90の軸芯に対して偏った力がかかると、環状部材97の傾きやこじれが生じ易く、ばね91のスムーズな伸縮の阻害や離反機構の耐久性の低下が懸念される。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、ラック歯がラック軸の端部にまで形成される場合であっても離反機構を設けることができて、しかも離反機構の耐久性を高くできる舵取り装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1に記載の発明は、筒状のハウジングと、このハウジング内に軸長方向に摺動自在に支持されるラック軸と、このラック軸の端部と操向車輪に連なるタイロッドとを連結する継手部材と、ラック軸がその摺動範囲の端に達したときにこの端から離れさせるための離反力をラック軸に付与する離反機構とを備える舵取り装置において、上記離反機構は、ハウジングの端部に固定される筒状のケースと、このケース内に摺動自在に保持されてラック軸を取り囲み、且つラック軸に摺動自在な筒状の摺動部材と、摺動部材からラック軸に沿って継手部材側に延びるように延設されケースから突出自在な延設部と、ケース内に保持され摺動部材を延設部がケースから突出する方向に付勢する弾性部材とを備える一体的なユニットをなし、ラック軸が摺動範囲の端に接近するのに伴って継手部材が延設部に当接し摺動部材を変位させて弾性部材を変形させるようにしてあることを特徴とする舵取り装置を提供する。
【0007】
この発明によれば、ユニットをラック軸に対して相対移動自在とするので、ラック歯をラック軸の端にまで形成していても構わず、ラック歯に関係なくユニットを問題なく取り付けることができ、しかも、後付けすることもできる。
延設部により摺動部材はラック軸とケースとの両方で案内されることになるので、ラック軸やケースに対するこじれを生じることがない。従って、例えば、弾性部材として圧縮コイルばねを用いる場合に、圧縮コイルばねをスムーズに伸縮させることができ、圧縮コイルばね、ひいては離反機構の耐久性を高めることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の舵取り装置において、上記ケースの端部は、ラック軸が摺動範囲の端に達するときに継手部材に当接することを特徴とする舵取り装置を提供する。
この発明によれば、ラック軸の摺動範囲の端となる端位置を、ケースの端部で規制することにより高精度に実現でき、しかも、例えば、弾性部材として圧縮コイルばねを用いる場合に、このばねを端位置で密着させずに済むので、ばねの傷みを防止できる結果、離反機構の耐久性をより高めることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態の舵取り装置を図面を参照しつつ説明する。図1は、上述の舵取り装置の概略構成を示す模式図である。
本舵取り装置1は、ラックアンドピニオン式のものであり、操舵補助力を得られない手動操作タイプのものである。なお、舵取り装置1としては、操舵補助力を得るための電動モータまたは油圧シリンダ等を有する動力舵取り装置として構成してもよい。
【0010】
舵取り装置1は、筒状のハウジング2と、このハウジング2内に収容されてステアリングホイール3に連動して回動するピニオン4と、ピニオン4と噛み合うラック歯6が形成されるラック軸5とを有している。ラック軸5は、長尺の円筒形状に形成され、ラック軸5の軸長方向(以下、軸長方向ともいう。矢印S参照。)に沿う所定の範囲の外周面にラック歯6が形成されている。ラック軸5は、ハウジング2内で軸長方向に摺動自在に一対のラックブッシュ7を介して支持される。また、舵取り装置1は、ラック軸5の両端部8に設けられた継手部材としての一対のボールジョイントユニット9と、ボールジョイントユニット9に連結された一対のタイロッド10とを有している。各タイロッド10はナックルアーム11等を介して操向車輪12に連動するようにそれぞれ連結されている。また、タイロッド10の根元側部分、ボールジョイントユニット9およびラック軸5の突出部分は、ゴムブーツ13により覆われている。ステアリングホイール3を操作すると、ピニオン4が回動し、これに伴ってラック軸5がその軸長方向に移動し、操向車輪12を操向することができる。
【0011】
ハウジング2の両端部14には、図2に示すように、上述のラックブッシュ7と、ラックストッパ15とが設けられている。ラックストッパ15は、ボールジョイントユニット9の一部と当接することにより、ラック軸5がハウジング2内に進入するときのラック軸5の摺動範囲50の端となる端位置51を規制する。ラック軸5は所定の摺動範囲50内(端位置51〜端位置52の間)を移動できるようにされている。なお、図2には、ラック軸5の端面54の位置により、摺動範囲50、および互いに反対側となる端位置51,52を図示している。
【0012】
また、舵取り装置1は、ラック軸5がその摺動範囲50の端となる端位置51に接近したときにこの端から離れさせるための離反力をラック軸5に付与する離反機構16を有している。離反機構16は、ハウジング2の両端部14にそれぞれ設けられている。
舵取り装置1は、ハウジング2の両端部14について、それぞれほぼ同様に構成されている。以下では、図1で右側に図示される一方の端部14について説明する。また、軸線方向の向きについて、ハウジング2の内から外へ向かう向きを外側ともいい、逆向きを内側ともいう。
【0013】
特に本発明では、離反機構16は、後述するように複数の部材21〜24を一体的に扱える離反ユニット17をなす。
離反ユニット17は、ハウジング2の端部14の凹部内に止め環18により固定される筒状のケース21と、このケース21内に摺動自在に保持される筒状の摺動部材22と、摺動部材22からラック軸5に沿ってボールジョイントユニット9側に延びるように延設されケース21から突出自在な延設部23と、ケース21内に保持され摺動部材22を付勢する弾性部材24とを有する。
【0014】
ケース21は、ボールジョイントユニット9寄りとなる端部31をその径方向の内方に延びるフランジ状に形成され、軸長方向外側への摺動部材22の抜けを阻止する。また、端部31と反対側となる端部32は、径方向の内方に縮径されていて、これにより、軸長方向内側への弾性部材24の抜けを阻止する。
摺動部材22および延設部23は、一体に形成されて、ラック軸5を取り囲み、且つラック軸5に摺動自在とされている。
【0015】
延設部23は、摺動部材22に軸長方向外側へ向けて延びて形成されている。延設部23は、弾性部材24の付勢により摺動部材22がケース21の端部31に押し付けられる状態で、最も突出する。
弾性部材24は、圧縮コイルばねからなり、常時圧縮状態となるようにケース21内に保持されている。圧縮コイルばねの一端が摺動部材22と当接し、他端がケース21の端部32と当接している。これにより、弾性部材24は、延設部23がケース21から突出する方向となる軸長方向にハウジング2の外側へ向けて、摺動部材22を付勢する。
【0016】
また、圧縮コイルばねの内周と、その内部を挿通するラック軸5の外周との間に所定量の隙間が確保されていて、ラック軸5と離反ユニット17との相対移動に伴ってラック軸5と圧縮コイルばねとが接触しないようにされている。これにより、圧縮コイルばねの耐久性をより高めることができる。
ハウジング22の端部14は、上述の離反ユニット17、ラックブッシュ7等を収容する円柱形状の凹部を有している。軸長方向に沿って凹部の内側寄り部分にラックブッシュ7が固定されて、凹部の外側寄り部分に離反ユニット17が止め環18により固定されている。ラック軸5が、ハウジング2、ラックブッシュ7、および離反ユニット17を挿通している。
【0017】
ラック軸5の端部8は、離反ユニット17のケース21の端面30から延び出し、ボールジョイントユニット9が固定されている。
ボールジョイントユニット9は、凹部を有するジョイントハウジング25と、ジョイントハウジング25の凹部内に設けられた複数の部材からなる球面座26と、ジョイントハウジング25をラック軸5に固定するための雄ねじの形成された軸27と、ジョイントハウジング25とラック軸5との間に挟まれる回り止め座金28とを有している。タイロッド10の一端に一体に形成されたボール29が、球面座26により摺動自在に支持されて、ジョイントハウジング25の凹部内に内装されている。ジョイントハウジング25の凹部は、一方に開放されており、そこからタイロッド10が延び出している。また、ジョイントハウジング25は、タイロッド10が延び出している側と反対側に、上述の軸27が設けられている。軸27の雄ねじは、回り止め座金28を挿通して、ラック軸5の端部8に形成された雌ねじにねじ込まれている。
【0018】
離反機構16では、ラック軸5が摺動範囲50の端に接近するのに伴って、ボールジョイントユニット9の回り止め座金28が延設部23に当接し摺動部材22を変位させて弾性部材24を変形させる。これにより離反機構16は離反力(図4の矢印F参照)を得る。ラック軸5が、端位置51と隣接する位置(図3参照)から端位置51(図4参照)に近づくのに伴い、圧縮コイルばねの圧縮変形量、ひいては離反力は増大し、端位置51で最大となる。
【0019】
このように本離反ユニット17を離反機構16として機能しラック軸に対して相対移動自在とするので、従来技術の欄で説明した小径部92(図5参照)を設ける必要もないし、ラック歯6をラック軸5の端にまで形成していても構わない。従って、ラック歯6に関係なく離反ユニット17を問題なく舵取り装置1に取り付けることができ、しかも、後付けすることもできる。
後付けするには、例えば、ラック軸5からボールジョイントユニット9を取り外し、ハウジング2の端部14の凹部に取り付けられているラックストッパに代えて離反ユニット17を取り付ければよい。
【0020】
特に、例えば、ラック軸5の径方向の力が延設部23にかかる場合や、軸長方向の力であっても偏って延設部23にかかるような場合に、ボールジョイントユニット9側に延びる延設部23により、摺動部材22はラック軸5とケース21との両方で案内されることになるので、ラック軸5やケース21に対するこじれを生じることがない。従って、例えば、弾性部材24として圧縮コイルばねを用いる場合に、圧縮コイルばねをスムーズに伸縮させることができ、圧縮コイルばね、ひいては離反機構16の耐久性を高めることができる。
【0021】
また、弾性部材24により、ラック軸5が端位置51に接近するときに緩衝作用を得ることができる。
また、本実施の形態では、図4に示すように、ケース21の端部31の端面30は、ラック軸5が端位置51に達するときにボールジョイントユニット9の回り止め座金28に当接するようにしている。また、この状態で圧縮コイルばねの素線同士が密着しないようにされている。これにより、ケース21がラックストッパ15として機能し、ラック軸5の摺動範囲50の端となる端位置51をケース21の端部により規制することになるので、ばねの密着高さにより規制する場合に比べて、端位置51を高精度に実現できる。しかも、ラック軸5が端位置51にあるときであっても、ばねを密着させずに済むので、ばねの傷みを防止できる結果、離反機構16の耐久性をより高めることができる。
【0022】
なお、弾性部材24としては、圧縮コイルばねの他、引っ張りコイルばね、皿ばね等を利用することができる。また、摺動部材22と延設部23とを別体で形成し、互いに固定してもよい。
また、離反ユニット17の延設部23は、弾性部材24を変形させることと、端位置51を規制することとのために、回り止め座金28と当接するようにされていたが、この他、ジョイントハウジング25と当接してもよく、継手部材としてのボールジョイントユニット9の少なくとも一部と当接すればよい。
【0023】
その他、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の舵取り装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す舵取り装置の要部の一部断面正面図であり、離反機構の動作前の状態を示す。
【図3】図2に示す舵取り装置の要部の一部断面正面図であり、離反機構の動作開始の状態を示す。
【図4】図2に示す舵取り装置の要部の一部断面正面図であり、ラック軸が摺動範囲の端にある状態を示す。
【図5】従来の舵取り装置の離反機構を示す模式図であり、動作前の状態を示す。
【図6】従来の他の離反機構を示す模式図であり、動作前の状態を示す。
【符号の説明】
1 舵取り装置
2 ハウジング
5 ラック軸
8 ラック軸の端部
9 ボールジョイントユニット(継手部材)
10 タイロッド
12 操向車輪
14 ハウジングの端部
16 離反機構
17 離反ユニット
21 ケース
22 摺動部材
23 延設部
24 弾性部材
31 ケースの端部
50 ラック軸の摺動範囲
51 端位置(ラック軸の摺動範囲の端)
F 離反力
S 軸長方向(延設部がケースから突出する方向)
Claims (2)
- 筒状のハウジングと、このハウジング内に軸長方向に摺動自在に支持されるラック軸と、このラック軸の端部と操向車輪に連なるタイロッドとを連結する継手部材と、ラック軸がその摺動範囲の端に達したときにこの端から離れさせるための離反力をラック軸に付与する離反機構とを備える舵取り装置において、
上記離反機構は、
ハウジングの端部に固定される筒状のケースと、
このケース内に摺動自在に保持されてラック軸を取り囲み、且つラック軸に摺動自在な筒状の摺動部材と、
摺動部材からラック軸に沿って継手部材側に延びるように延設されケースから突出自在な延設部と、
ケース内に保持され摺動部材を延設部がケースから突出する方向に付勢する弾性部材とを備える一体的なユニットをなし、
ラック軸が摺動範囲の端に接近するのに伴って継手部材が延設部に当接し摺動部材を変位させて弾性部材を変形させるようにしてあることを特徴とする舵取り装置。 - 請求項1に記載の舵取り装置において、上記ケースの端部は、ラック軸が摺動範囲の端に達するときに継手部材に当接することを特徴とする舵取り装置。
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