JP3569257B2 - 導電性有機薄膜とその製造方法、それを用いた電子デバイス、電気ケーブル及び電極 - Google Patents

導電性有機薄膜とその製造方法、それを用いた電子デバイス、電気ケーブル及び電極 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、有機材料を用いた導電性有機薄膜とその製造方法、それを用いた有機電子デバイス、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス装置、電気ケーブル及び電極に関するものである。さらには、導電性を有する単分子膜又は単分子累積膜または薄膜の導電性変化を利用した有機電子デバイスと表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から有機導電膜については様々な提案がある。本出願人は、すでにポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアセン(Polyacene)、ポリフェニレン、ポリチェニレン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性共役基を含む導電膜を提案している(特開平2(1990)−27766号公報、USP5,008,127、EP−A−0385656、EP−A−0339677,EP−A−0552637、USP5,270,417、特開平5(1993)−87559号公報、特開平6(1994)−242352号公報)。
【0003】
また、従来から電子デバイスには、シリコン結晶に代表されるように無機系の半導体材料が用いられている。有機系の電子デバイス(以下、有機電子デバイス)としては、例えば日本国特許第2034197号及び第2507153号等に開示されている。これら各公報に記載されている有機電子デバイスは、印加された電界に応答し端子間に流れる電流をスイッチングする有機電子デバイスである。
【0004】
前記従来の有機系導電膜は、導電性が金属に比較すると低いという問題があった。また、従来から用いられてきた無機結晶では、微細化が進展するに伴い結晶欠陥が問題となり、デバイス性能が結晶に大きく左右される問題があった。また、フレキシビリティーが悪いという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、その第1番目の目的は、従来の有機導電膜よりも高い導電性を有するか、または金や銀などの導電性金属と同等かまたはそれ以上の導電性を有する導電性有機薄膜とその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の第2番目の目的は、デバイスの高密化が進展し0.1μm以下の微細加工がなされても、結晶性に左右されない有機物質を用いたデバイスを作製し、高集積化されたデバイスを提供することにある。また、プラスチック基板等に形成することにより、フレキシビリティーに優れた有機電子デバイスを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は他の分子の共役結合基と重合して導電ネットワークを形成していることを特徴とする。
【0009】
本発明の導電性有機薄膜は、基板に共有結合している基と、前記基板表面に沿った方向にポリマー化している導電性ネットワークを形成している導電性有機薄膜であって、前記導電性ネットワークはポリピロール及びポリチェニレンから選ばれる少なくとも一つのポリマーであり、前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、室温(25℃)においてドーパントなしで1×107S/cm以上であることが好ましい。
【0010】
次に本発明の導電性有機薄膜の製造方法は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合可能な末端官能基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合可能な共役結合可能基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含む分子からなる化合物を、表面に活性水素を有するか又は活性水素を付与した基材上に接触させ、脱離反応により共有結合させて有機薄膜を成膜し、前記有機薄膜を構成する有機分子を所定の方向に傾斜して配向させるか、または次の重合工程で配向させながら重合し、重合工程においては、前記共役結合可能基同士を電解酸化重合、触媒重合およびエネルギービーム照射重合から選ばれる少なくとも一つの重合法により共役結合させて導電ネットワークを形成することを特徴とする。
【0011】
次に本発明の2端子有機電子デバイスは、基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極と離隔した第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極とを電気的に接続する導電性有機薄膜とを備えた2端子有機電子デバイスであって、前記導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成していることを特徴とする。
次に本発明の3端子有機電子デバイスは、基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極と離隔した第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極とを電気的に接続する導電性有機薄膜と、前記基板と前記導電性有機薄膜との間に挟まれ、それぞれと絶縁されている第3の電極と、を備えた3端子有機電子デバイスであって、前記第3の電極は、前記第1の電極又は前記第2の電極との電極間に電圧を印加することにより前記導電性有機薄膜に作用させる電界を制御する電極であり、前記導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成していることを特徴とする。
【0012】
次に本発明の液晶表示装置は、基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極と離隔した第2の電極と、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成している導電性有機薄膜を介して、前記第1の電極と前記第2の電極とを電気的に接続し、前記基板と前記導電性有機薄膜との間に挟まれ、かつそれぞれと絶縁されており、前記第1又は第2の電極との間に印加される電圧により前記導電性有機薄膜に作用させる電界を制御する第3の電極とを備えた3端子有機電子デバイスをスイッチ素子として用いた液晶表示装置であって、前記基板上に複数の前記スイッチ素子がマトリックス状に配列配置されたアレイ基板と、前記アレイ基板表面に形成された第1の配向膜と、透明基板上に色要素がマトリックス状に配列配置されたカラーフィルター基板と、前記カラーフィルター基板表面に形成された第2の配向膜と、前記第1の配向膜と前記第2の配向膜とを内側にして対向させた前記アレイ基板と前記カラーフィルター基板との間に封止された液晶層とを有することを特徴とする。
【0013】
次に本発明のエレクトロルミネッセンス型表示装置は、基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極と離隔した第2の電極と、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成している導電性有機薄膜を介して、前記第1の電極と前記第2の電極とを電気的に接続し、前記基板と前記導電性有機薄膜との間に挟まれ、かつそれぞれと絶縁されており、前記第1又は第2の電極との間に印加された電圧により前記導電性有機薄膜に作用させる電界を制御する第3の電極とを備えた3端子有機電子デバイスをスイッチ素子として用いたエレクトロルミネッセンス型表示装置であって、複数の前記スイッチ素子が基板上にマトリックス状に配列配置されたアレイ基板と、前記アレイ基板と対向する共通電極と、前記アレイ基板と前記共通電極との間に形成された、電界の印加により発光する蛍光物質を含む発光層とを有することを特徴とする。
【0014】
次に本発明の電気ケーブルは、芯線と、前記芯線の表面の長さ方向に形成されている導電性有機薄膜と、前記導電性有機薄膜を覆う絶縁被膜とを備えた電気ケーブルであって、
前記導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が芯線の基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成していることを特徴とする。
【0015】
次に本発明の電極は、可視光線領域の光波長では透明な電極であって、前記電極は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成している導電性有機薄膜で形成されていることを特徴とする。
【0016】
次に本発明の導電性ネットワークは、下記化学式(7)または(8)で示される。
【0017】
【化7】
Figure 0003569257
【0018】
【化8】
Figure 0003569257
【0019】
(但し、前記化学式(7)及び(8)において、Xは水素、または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数でありm+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下の整数、pは整数であり、1、2又は3である。)
次に本発明の化合物は、下記化学式(9)または(10)で示される。
【0020】
【化9】
Figure 0003569257
【化10】
Figure 0003569257
【0021】
【化10】
Figure 0003569257
【0022】
(但し、前記式(9)及び(10)において、Xは水素、または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Dはハロゲン原子、イソシアネート基又は炭素数1−3のアルコキシル基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数でありm+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下の整数、pは整数であり、1、2又は3である。)
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明において、有機薄膜が導電性を有するのは、有機分子の集合群を構成する分子相互が共役結合してポリマー化していることによる。ここに、導電ネットワークは、電気伝導に関与する共役結合で結合した有機分子の集合体であり、共役結合鎖(共役系)を有するポリマーで形成されている。また、導電ネットワークは電極間の方向に形成されている。この共役結合鎖ポリマーは厳密に1方向に連なるものではなく、様々な方向のポリマー鎖が、全体として電極間に形成されていればよい。
【0024】
本発明においては、導電性有機薄膜の電導度(ρ)は、1S/cm以上、好ましくは1×10S/cm以上、さらに好ましくは1×10S/cm以上であり、さらに5.5×10S/cm以上、特に好ましくは1×10S/cm以上である。前記の値はすべて室温(25℃)におけるドーパントなしの場合である。
【0025】
前記重合した共役結合基は、ポリピロール、ポリチェニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン及びポリアセンから選ばれる少なくとも一つの共役結合基であることが好ましい。とくに共役結合が、ポリピロールまたはポリチェニレンであり、電解酸化重合させた薄膜は高い電導度を有する。
【0026】
前記活性水素を含まない有極性官能基は、エステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)及びカーボネイト(−OCOO−)基から選ばれる少なくとも一つの基であることが好ましい。
【0027】
前記末端結合基は、シロキサン(−SiO−)及び−SiN−結合から選ばれる少なくとも一つの結合であることが好ましい。
【0028】
前記末端結合基は、脱塩化水素反応、脱アルコール反応及びから選ばれる少なくとも一つの脱離反応によって形成されていることが好ましい。
【0029】
この方法によって形成される分子膜は、当業界では”化学吸着膜”または”セルフアセンブル(self assemble)膜”と言われているが、本発明においては”化学吸着膜”と呼ぶ。また、その形成方法を”化学吸着法”と呼ぶ。
【0030】
本発明において、分子の配向は、ラビングによる配向処理、脱離反応によって基材表面に分子を共有結合した後の反応溶液からの傾斜液切り処理、偏光の照射処理、及び重合工程における分子のゆらぎによる配向から選ばれる少なくとも一つによって形成されていることが好ましい。
【0031】
前記有機薄膜の導電領域は可視領域の波長を有する光に対して透明であることが好ましい。
【0032】
前記導電ネットワークを形成している分子ユニットは例えば下記式(11)または(12)で示されることが好ましい。
【0033】
【化11】
Figure 0003569257
【0034】
【化12】
Figure 0003569257
【0035】
(但し、前記式(11)及び(12)において、Xは水素、または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数でありm+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下の整数、pは整数であり、1、2又は3である。)
本発明で用いる材料分子の末端官能基は、クロロシリル基、アルコシリル基またはイソシアネート基であり、基材表面の活性水素と脱塩化水素反応、脱アルコール反応及び脱イソシアネート基から選ばれる少なくとも一つの脱離反応によって共有結合を形成することが好ましい。
【0036】
前記共役結合可能基は、ピロール基、チェニレン基、アセチレン基、及びジアセチレン基から選ばれる少なくとも一つの基であっても良い。
【0037】
前記有機分子は単分子層状に形成されていることが好ましい。
【0038】
また、前記単分子層形成工程を複数回繰り返すことにより、単分子層を積層させて単分子累積膜を形成しても良い。
【0039】
前記化学式EまたはFにおいて、Xがビニル結合などの不飽和基を含む場合は、例えば水分の存在する雰囲気中で電子線またはX線などのエネルギー線を照射することにより−OH基を導入できる。また、Xがビニル結合などの不飽和基を含む場合は、例えば過マンガン酸カリウム水溶液に浸漬することにより−COOHを導入できる。このようにすると、活性水素を導入できるので、さらに単分子膜を累積結合させることができる。
【0040】
また、前記単分子層形成工程と前記傾斜処理(配向)工程とを交互に繰り返し行った後、前記導電ネットワーク形成工程で、単分子累積膜の各単分子層内に導電ネットワークを一括形成することにより、導電性単分子累積膜を形成しても良い。
【0041】
また、前記単分子層形成工程、前記傾斜処理工程及び前記導電ネットワーク形成工程よりなる一連の工程を繰り返し行うことにより、導電性単分子累積膜を形成しても良い。
【0042】
重合方法としては、電解酸化重合、触媒重合及びエネルギー線照射重合から選ばれる少なくとも一つの重合方法がある。前記電解酸化による導電ネットワークを形成する前に、触媒重合及びエネルギー線照射重合から選ばれる少なくとも一つの予備重合を行っても良い。
【0043】
前記エネルギー線は、紫外線、遠紫外線、X線及び電子線から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0044】
前記エネルギー線は、偏光した紫外線、偏光した遠紫外線及び偏光したX線から選ばれる少なくとも一つであり、前記傾斜配向処理と前記導電ネットワーク形成とを同時に行っても良い。
【0045】
有機分子が有極性の官能基を含むことにより、印加された電界に対する感度が高く、応答速度が高速となる。したがって、有機薄膜の導電性を高速に変化させることができる。電界が印加された際、前記有機薄膜の導電性の変化は、有極性の官能基が電界に応答し、その応答による影響が前記導電ネットワークの構造に波及されたため、生じたと考えられる。
【0046】
また、ドーピングにより導電ネットワークに電荷移動性のドーパント物質の組み込めば、さらに導電率を向上することも可能である。このドーパント物質として、ヨウ素、BFイオン、Na,K等のアルカリ金属、Ca等のアルカリ土類金属等の任意のドーパント物質が利用できる。さらに有機膜形成工程の溶液に含まれる微量成分やガラス容器などから不可避的に混入されるコンタミネーションによるドーパント物質を含んでいても良い。
【0047】
別な例においては、電界応答型導電性有機薄膜中に電界が生じると、電界の強度に応じて導電ネットワークの導電が変化する。したがって、導電性有機薄膜に電界が作用していない状態と、所定の強度の電界が作用している状態とでは、導電ネットワークの導電率が異なる。したがって、電界のオン・オフ制御により、導電ネットワークの導電率をスイッチング制御することができる。
【0048】
また、強度の異なる第1の電界又は第2の電界が有機薄膜に印加されていると、導電ネットワークの導電率はそれぞれ第1の導電率又は第2の導電率となる。これにより、第1の導電率を有する安定状態と第2の導電率を有する安定状態との状態間を状態移行させて、導電ネットワークの導電率をスイッチングすることもできる。
【0049】
導電単分子層を構成する有機分子はかなり良く配向した状態にあるため、導電ネットワークの共役結合鎖が特定平面内に存在する。したがって、単分子層に形成された導電ネットワークは所定の方向に直線的に連なる。その導電ネットワークの直線性により、高い導電異方性を有する。また、その導電ネットワークの直線性は、導電ネットワークを構成する各共役結合鎖(共役系)が単分子層内の同一平面で略平行に配列していることを意味する。したがって、導電単分子層は、高い導電率を有し、且つ、均一な導電率を有する。また、上記導電ネットワークの直線性により、重合度の高い共役結合鎖を単分子層に有することとなる。
【0050】
別の例によれば、膜厚が薄くても極めて良好な導電性を有する導電性単分子膜及び導電性単分子累積膜を提供できる。また、それらの導電性の変化は極めて高速である。
【0051】
導電性単分子累積膜の場合、各導電性単分子層に導電ネットワークが形成されているので、単分子累積膜の導電ネットワークの導電率は、積層された単分子膜の層数に依存する。したがって、導電単分子層の積層数を変更することにより所望の導電率を有する導電性有機薄膜を提供できる。例えば、同一の導電性単分子層が積層された導電性累積膜であれば、それに含まれる導電ネットワークの導電率はほぼ比例する。
【0052】
導電性単分子累積膜において、すべての単分子層に形成された導電ネットワークの方向が同一である限り、各単分子層ごとに有機分子の配向の傾斜角が異なっていてもよい。また、すべての単分子層を同一有機分子から構成するものでなくとも良い。また、各導電性単分子層ごとに異なる種類の有機分子から構成された導電性単分子累積膜であってもよい。
【0053】
また、導電性単分子累積膜の場合は、基材に最近接する導電性単分子層が基材と化学結合で結合されていると、耐剥離性等の耐久性に優れる。
【0054】
別の例によれば、方向性を有する導電ネットワークを備えた電界応答型導電性有機薄膜を製造することができる。一般的に、導電ネットワークの方向は、傾斜処理工程を経た有機薄膜を構成した有機分子の傾斜方向と同一方向となる。方向性を有する導電ネットワークが形成される限り、有機分子の傾斜方向と同一でなくてもよい。
【0055】
ここに、傾斜処理工程における有機分子の傾斜方向は、有機分子の長軸を基材表面に射影した線分の方向を意味する。したがって、基材に対する傾斜角は同一角度でなくてもよい。
【0056】
別の例によれば、単分子層を有する有機薄膜が成膜できる。更に、単分子層を構成した有機分子の集合群を、傾斜処理工程において、精度よく所定の方向に傾斜させることができる。一般的には、単分子層を構成した分子を配向させることができる。更にまた、精度よく配向させることができることにより、導電ネットワーク形成工程において、方向性を有する導電ネットワークを簡便に形成できる。
【0057】
また、単分子層内の配向した有機分子相互を共役結合させると、重合度が高くかつ直線的に連なる導電ネットワークが形成できる。また、導電ネットワークの直線性により、均質な導電性単分子層が形成できる。
【0058】
別の例においては、前記偏光として可視光領域の波長を有する偏光を用いる。この例によれば、有機薄膜を構成した有機分子の剥離や、有機分子自体の破壊等による有機薄膜の破壊を防止又は抑制できる。
【0059】
別の例によれば、ラビング処理を施した基材表面に有機薄膜を成膜すると、その有機薄膜を構成した有機分子は所定の方向に傾斜した状態となる。一般的には、ラビング処理におけるラビング方向と成膜された有機分子の傾斜方向とは同一方向となる。
【0060】
前記ラビング処理で用いるラビング布として、ナイロン製又はレーヨン製の布を用いることができる。上記の構成の如くナイロン製又はレーヨン製のラビング布を用いることが、配向の精度を向上させる目的にとって適正である。
【0061】
前記導電ネットワーク形成工程で1種以上の重合法を適用し、前記有機薄膜を構成する分子相互を重合により又は重合及び該重合後の架橋により共役結合させて導電ネットワークを形成しても良い。この例によれば、有機分子の前記重合性基を共役結合で連結させ電気伝導を可能にする導電ネットワークを形成できる。重合の種類としては電解酸化重合、触媒重合及びエネルギービームの照射重合から選ばれる少なくと一つの重合法が利用できる。とくに最終工程において、電解酸化重合により導電ネットワークを完結させると、高い導電性を得ることができる。
【0062】
また、前記有機薄膜を形成する分子が共役結合で結合する重合性基を複数有する場合、一方の重合性基の重合で形成された高分子に対して、さらに架橋反応を行い他方の重合性基を共役結合させることにより、重合後の構造と異なる構造を有する導電ネットワークを形成できる。この際、重合により形成された高分子の側鎖にある前記他方の重合性基が架橋される。
【0063】
例えば、ジアセチレン基を有する有機分子の集合群からなる単分子膜を形成し、その単分子膜に触媒重合を行い、更に、エネルギービーム照射重合により架橋を行うと、極めて高い導電率を有するポリアセン型共役系を含む導電ネットワークを形成することができる。
【0064】
前記重合を行う工程で触媒重合法、電解重合法、エネルギービーム重合法よりなる群から選択される重合法を適用してもよい。この例によれば、触媒重合性を有する重合性基(以下、触媒重合性基ともいう)を有する有機分子からなる有機薄膜には触媒重合法を適用して、また、電解重合性を有する重合性基(以下、電解重合性基とも略記する)を有する有機分子からなる有機薄膜には電解重合法を適用して、また、エネルギービームの照射により重合する重合性基(以下、エネルギービーム重合性基ともいう)を有する有機分子からなる有機薄膜にはエネルギービーム重合法を適用して、導電ネットワークを形成することができる。効率よく導電ネットワークを形成するには、まず触媒重合法及び/又はエネルギービーム重合を行い、最終工程で電解酸化重合により反応を完結させる。
【0065】
複数回の架橋工程を採用する場合は、異なる作用による架橋工程の組合せでもよいが、同じ作用であるが反応条件が異なる工程の組合せも含む。例えば、触媒作用による架橋工程後に第1の種類のエネルギービーム照射による架橋工程を行い、さらに第2の種類のエネルギービーム照射による架橋工程を行う等により導電ネットワークを形成してもよい。
【0066】
前記導電ネットワーク形成工程で重合法として前記触媒重合法を適用し、前記重合性基としてピロール基、チェニレン基、アセチレン基又はジアセチレン基を有する有機分子の集合群よりなる有機薄膜に導電ネットワークを形成する。
【0067】
例えば、ピロール基を含む有機分子を用いてポリピロール型共役系を含む導電ネットワークを形成でき、チェニレン基を含む有機分子を用いてポリチェニレン型共役系を含む導電ネットワークを形成できる。
【0068】
前記導電ネットワーク形成工程で前記エネルギービーム重合法を適用し、前記重合性基としてアセチレン基又はジアセチレン基を有する有機分子の集合群からなる前記有機薄膜に導電ネットワークを形成することもできる。この例によれば、有機薄膜を構成する有機分子として、アセチレン基を有する有機分子を用いて、ポリアセチレン型共役系を含む導電ネットワークを形成できる。また、ジアセチレン基を有する有機分子を用いて、ポリジアセチレン型共役系又はポリアセン型共役系を含む導電ネットワークを形成できる。
【0069】
前記エネルギービームとして紫外線、遠紫外線、X線又は電子線を用いてもよい。この例によれば、効率よく導電ネットワークを形成することができる。また、エネルギービーム照射重合性基の種類によりそれぞれ吸収特性は異なるので、吸収効率の良いエネルギービームの種類及びエネルギーを選択すれば反応効率を向上できる。更に、多くのエネルギービーム照射重合性基がこれらのエネルギービームに対し吸収性を有する為、様々な種類のビーム照射重合性基を有する有機分子からなる有機薄膜に適用できる。
【0070】
また、前記エネルギービームとして偏光した紫外線、偏光した遠紫外線又は偏光したX線を用い、前記傾斜処理工程と前記導電ネットワーク形成工程とを同時に行うこともできる。この例によれば、有機薄膜を構成する有機分子を所定の方向に傾斜(配向)させるとともに、有機分子相互を共役結合させることができる。したがって、工程を簡素化できる。
【0071】
第1の電極と第2の電極とが導電ネットワークの方向に配列配置されていると対電極間の導電率が最も大きくなり、導電ネットワークの方向と直交するように配列配置されていると導電率が最も小さくなる。最大の導電率を有する状態に第1の電極と第2の電極とを形成すれば、導電率の変化域が大きな3端子有機電子デバイスを提供できる。
【0072】
対電極間の配列方向を調整して、第1の電極と第2の電極とを配置すれば、電極間の導電率を調整できる。また、電極の大きさの調整や、対電極間の距離の調整により、導電率の変化域を調整することもできる。
【0073】
本発明の3端子有機電子デバイスによれば、第1の電極と第2の電極とを電気的に接続するチャネル部が導電性有機薄膜で形成され、電界の印加により第1の電極と第2の電極との電極間(対電極間)の導電率が変化する3端子有機電子デバイスを提供できる。また、導電性薄膜を構成する有機分子が有極性の官能基を有することにより、印加された電界に対する感度が高く、応答速度が高速である。したがって、対電極間の導電率の変化速度が高速である3端子有機電子デバイスを提供できる。
【0074】
第1の電極と第2の電極とが導電ネットワークの方向に配列配置されていると電極間の導電率が最も大きくなり、導電ネットワークの方向と直交する方向に配列配置されていると、導電率が最も小さくなる。最大の導電率を有する状態に第1の電極と第2の電極とを形成すれば、導電率の変化域が大きな3端子有機電子デバイスを提供できる。
【0075】
対電極間の配列方向を調整して、第1の電極と第2の電極とを配置すれば、対電極間の導電率を調整できる。また、電極の大きさの調整や、対電極間の距離の調整により、導電率の変化域を調整することもできる。
【0076】
前記導電ネットワークの導電率は、前記導電性有機薄膜に印加される電界により変化することもできる。この例によれば、導電性有機薄膜に印加される電界は、第1の電極又は第2の電極と第3の電極との電極間にに印加する電圧で制御できる。したがって、第1の電極と第2の電極それぞれを互いに異なる固定電位に設定しておけば、第3の電極に印加する電圧により対電極間に流れる電流の制御を行うこともできる。
【0077】
前記有極性の官能基は、電界印加により分極率が大きくなる分極性の官能基であってもよい。
【0078】
上記の構成の如く、有極性の官能基が電界印加により分極率が大きくなる官能基(以下、分極性の官能基)であると、電界の変化に対する感度が極めて高くなり、それに伴い応答速度も極めて高速になる。
【0079】
前記分極性の官能基は、とくにカルボニル基、オキシカルボニル基、エステル基またはカーボネイト基であることが好ましい。このような官能基を用いると、電界の変化に対して応答速度が極めて高速な3端子有機電子デバイスを提供できる。
【0080】
前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記導電ネットワークの方向に配列配置されていてもよい。この例によれば、対電極間の間隔を固定して、様々な方向に第1の電極と第2の電極を配列配置させた場合において、対電極間の導電率を最大に設定することができる。したがって、対電極間の導電率の変化域が大きな有機電子デバイスを提供できる。
【0081】
前記導電性有機薄膜は、前記有機分子が単分子層状に配列し、かつ、前記単分子層内に導電ネットワークが形成されている導電単分子層としてもよい。この例によれば、導電性及び導電異方性に優れ、並びに、重合度が高い導電ネットワークを有する導電単分子層を含む導電性有機薄膜を提供できる。
【0082】
前記導電性有機薄膜は、1層の前記導電単分子層よりなる、基板上に固定された導電性単分子膜、又は、前記導電単分子層の累積された基板上に固定された導電性単分子累積膜であってもよい。この例によれば、膜厚が薄くても極めて良好な導電性を有する導電性単分子膜及び導電性単分子累積膜を提供できる。また、導電性単分子累積膜の場合、各導電性単分子層に導電ネットワークが形成されているので、単分子累積膜の導電ネットワークの導電率は、積層された単分子膜の層数に依存する。したがって、導電単分子層の積層数を変更することにより所望の導電率を有する導電性有機薄膜を提供できる。例えば、同一の導電性単分子層が積層された導電性累積膜であれば、それに含まれる導電ネットワークの導電率はほぼ比例する。
【0083】
導電性単分子累積膜において、すべての単分子層に形成された導電ネットワークの方向が同一である限り、各単分子層ごとに有機分子の配向の傾斜角が異なっていてもよい。また、すべての単分子層を同一有機分子から構成するものでなくとも良い。また、各導電性単分子層ごとに異なる種類の有機分子から構成された導電性単分子累積膜であってもよい。
【0084】
基材上に固定された、導電性単分子膜又は導電性単分子膜であってもよい。このとき、基材に最近接する導電性単分子層が基材と化学結合で結合されていると、耐剥離性に優れる。
【0085】
前記基板は、ガラスや樹脂フィルムなどの電気絶縁性の基板、又は任意の基板表面に絶縁膜が形成された絶縁膜付き基板であっても良い。基板はガラスやポリイミド樹脂などであれば表面に活性水素を有するので、そのままでも使用できる。活性水素が少ない基板の場合は、SiCl,HSiCl,SiClO−(SiCl−O)−SiCl(但し、nは0以上6以下の整数),Si(OH),HSi(OH),Si(OH)O−(Si(OH)−O)−Si(OH)(但し、nは0以上6以下の整数)などで処理するか、シリカ膜を形成するか、コロナ放電、プラズマ照射などで基材表面を活性化することにより活性水素を付与できる。
【0086】
基板が電気絶縁性材料の場合は、リーク電流が小さく、動作安定性に優れる有機電子デバイスを提供できる。
【0087】
本発明の有機導電膜は、電導度が高く、透明性も高い。この性質を利用した用途としては、電線、モーター、発電機、コンデンサー(キャパシター)、透明電極(ITO代替)、半導体装置配線・CPU配線(電気抵抗により発熱しない)、電磁波シールド、CRTガラス表面フィルター(静電気発生防止)等様々な用途が考えられる。
【0088】
(実施の形態1)
本実施の形態1においては、導電性単分子膜を例にし、図1及至図4を参照しながら、導電性単分子膜の製造方法及びその構造を説明する。図12は有機分子の傾斜方向を説明するための概念図であり、基材1に結合した有機分子は、有極性官能基の部分で分子が回転しやすく、配向しやすいことを示している。また、図1A−Bは基材上に形成された導電性単分子膜を分子レベルにまで拡大した概念図であり、図1Aはその断面図であり、図1Bはその平面図である。
(1)基材表面に対する有機分子の固定工程
まず、活性水素を含まない有極性の官能基(例えばオキシカルボニル基(−OCO−))7及び共役結合で結合する重合性基5(例えば1−ピロリル基(CN−))を有する有機分子からなる単分子膜4を、表面に活性水素を有するか付与した基材1上に形成する(成膜工程、単分子層形成工程)。有極性の官能基7に活性水素を含むと、下記に説明する分子末端のクロロシリル基と分子内反応(自己縮合)してしまい不都合である。
【0089】
分子末端がクロロシリル基またはアルコキシシリル基を有するシラン系界面活性剤等のような基材に化学吸着する官能基を末端に有する有機分子であると、基材表面の活性水素との間で脱塩化水素反応または脱アルコール反応による脱離反応を起こし、基材に結合固定され、耐剥離性、耐久性の高い単分子膜を形成できる。また、単分子層形成工程後に、有機溶媒に浸漬して、未吸着の有機分子を洗浄除去する工程(以下、「洗浄工程」ともいう。)を行えば、表面に汚れのない単分子膜4が形成できる。
(2)配向工程
次に、単分子膜を構成する有機分子を所定の方向に配向させる。配向させるには、下記の方法がある。
【0090】
(i) ラビング処理
傾斜処理工程では、図2に示すように、ラビング装置を用いて単分子膜表面にラビング処理を行い、単分子膜を構成する有機分子をラビング方向に配向させることができる。図2において、41はラビング布を、42はラビングロールを表す。
【0091】
(ii) 偏光処理
図3に示すように、偏光板13を用いて偏光を照射することにより、単分子膜4を構成する有機分子を偏光方向に配向させることができる。偏光としては、直線偏光が好ましい。これらの配向方法を適用すれば、精度よく配向させることができる。
【0092】
また、単分子層形成工程より前に、ラビング装置を用いて基材表面にラビング処理を施しておけば(前処理工程)、単分子膜形成工程で該ラビング処理した基材に配向した単分子膜を形成できる。このときの配向方向は、ラビング方向と同一方向である。
【0093】
(iii) 液切り配向処理
上記洗浄工程において、未吸着の有機分子を除去した後、図4に示すように、有機溶媒44の液面に対して所定の傾斜角度を保ちつつ基材を引き上げれば、単分子膜を構成する有機分子を液切り方向に配向させる(以下、「液切り配向」という。)ことができる。
【0094】
(iv) 溶液中での重合工程における分子のゆらぎによる配向
上記の3つの配向方法以外に、触媒重合及び/または電解酸化重合工程における分子のゆらぎによる配向でも良い。本発明で用いる有機分子は、内部に有極性官能基を含んでいるので、溶液中であれば、室温(25℃)程度でも分子が回転などのゆらぎが起こりやすい。このため、例えば電解酸化重合工程における分子のゆらぎによる配向を利用することができる。
【0095】
上記の4つの配向方法を単独で適用してもよいし、複数の配向方法を適用してもよい。異なる配向方法を組み合わせて、精度よく配向した状態にある配向した単分子膜を形成する際には、ラビング方向や偏光方向や液切り方向が同一方向になるようにすることが好ましい。
(3)導電ネットワーク形成工程
次に、単分子膜を構成する分子相互を共役結合させて導電ネットワークを形成する。
【0096】
共役結合で結合する重合性基が重合してなる共役系を形成できるのであれば、どのような方法であってもよい。単分子膜を構成する分子相互を重合又は架橋させて共役系を形成することができる。重合法としては、触媒重合法、電解重合法、エネルギービーム照射重合法等が利用でき、前記重合法を適用して重合又は架橋させることができる。このうち、触媒重合法及びエネルギービーム照射重合法は、予備ネットワーク形成に使用すると、重合速度が速いので効率よくネットワークを形成できる。
【0097】
共役結合可能基がエチニル基(アセチレン基を含む)の場合は、触媒重合及び/又は電子線重合を採用してポリアセチレンに重合することができる。
【0098】
共役結合可能基がジエチニル基(ジアセチレン基を含む)の場合は、触媒重合及び/又は光重合を採用してポリジアセチレン又はポリアセンに重合することができる。
【0099】
共役結合可能基がピロール基又はチオフェン基の場合は、触媒重合及び/又は電解酸化重合を採用してポリピロール又はポリチオチェンに重合することができる。とくに最終工程は電解酸化重合法を行い、導電ネットワークを完結させるのが好ましい。電解酸化重合の一例として、反応温度は室温(25℃)程度で良く、無触媒、純水溶液中で電界をかけることにより行う。もちろん反応温度を高くしたりあるいは低くしたり、触媒を使用したり、水以外の溶液を使用することは任意にできる。電解酸化重合法では電極間に電界をかけて重合するので、導電ネットワークが完成したか否かは、電極間の通電状態を観察することにより容易に判断できる。すなわち、導電ネットワークが完成した場合は、電極間の膜中を電流が急激に流れる現象が観察できる。
【0100】
また、重合又は架橋させる工程を複数回行うことにより、導電ネットワークを形成してもよい。例えば、膜材料分子として、共役結合で結合する重合性基を複数有する有機分子を用いた場合、前記有機分子からなる単分子層に含まれる複数の平面に導電ネットワークを形成することができる。更に、重合又は架橋を複数回行う際、各回ごとに重合法が異なっていてもよい。
【0101】
また、単分子膜を構成する有機分子がエネルギービーム照射重合性基を有する場合、偏光を照射すれば、単分子膜を配向させると同時に、導電ネットワークを形成することも可能である。
【0102】
本実施形態において、有極性官能基7を分子の中間部分に存在させると、その部分で分子は自由回転しやすので、配向処理の際に導電性基5が一定の方向に配向しやすく、かつ、最終工程における電解酸化重合の際に他の分子の導電性基5が近接して重合し、高分子化しやすくなる。
【0103】
図1A−Bは、前記のようにして得られた分子膜4であり、基材1上に共有結合され、導電性基5が共役結合によりポリマー化して導電ネットワークを形成している状態を示している。
【0104】
(実施の形態2)
単分子膜を形成する材料分子として、前記活性水素を含まない有極性官能基、例えばエステル基(−COO−)、カルボニル基(−CO−)及びカーボネイト(−OCOO−)基から選ばれる少なくとも一つの基である有極性の官能基を有する有機分子を用いてもよい。これ以外は上記実施の形態1と同様にして、有極性の官能基を有する有機分子の集合群からなる単分子膜であって、その単分子膜には、前記有機分子の集合群を構成する分子相互が共役結合で所定の方向に連なる導電ネットワークを各単分子層内に有する電界応答型導電性単分子膜が製造できる。
【0105】
(実施の形態3)
本実施の形態3は、電界応答型導電性有機薄膜が単分子累積膜である場合について、その製造方法及び構造を説明する。必要に応じて図5A−Dを参照する。
【0106】
まず、導電性単分子累積膜の製造方法について説明する。主に、下記の3種の方法で導電性単分子累積膜の形成が可能である。
(1)第1の製造方法は、単分子層を形成する工程を繰り返して単分子層を積層させた後、各単分子層を所定の方向に一括配向させ、続いて各単分子層内に導電ネットワークを形成する方法である。
(2)第2の製造方法は、単分子層を形成する工程と、続いて単分子層を配向させることを繰り返して配向した単分子累積層を形成した後、その配向した単分子累積膜の各単分子層に導電ネットワークを一括形成する方法である。
(3)第3の製造方法は、単分子層を形成し、続いてその単分子層を配向させ、更に続いてその単分子層に導電ネットワークを形成することを繰り返し行う方法である。
【0107】
単分子層の配向方法及び単分子層内の導電ネットワーク形成方法としては、上記実施の形態1の方法が同様に利用できる。ただし、配向処理法は重合前についてのみ有効な配向法である。
【0108】
上記3種の製造方法は、どの様な方法で単分子層を配向させるか、どの様な方法で導電ネットワークを形成させるか等により最適化されることが好ましい。更に、導電性単分子層を何層積層させた導電性単分子累積膜を形成するか等により、いずれの製造方法を適用するかを選択することが好ましい。
【0109】
積層数の多い導電性単分子累積膜を形成するのであれば、第2の製造方法若しくは第3の製造方法を適用することが好ましい。第1の方法であれば各単分子層ごとの導電性の均一性を保つことが難しくなる。
【0110】
第1の製造方法を適用する場合、配向方法としては光配向法又はラビング配向法を適用し、かつ、重合法としてはエネルギービーム照射重合法又は電界重合法が好ましい。更に、積層数の増加と共に、配向方法として光配向法の適用が有効となる。重合法として触媒重合法を適用すると、基材側下層の単分子層に導電ネットワークを形成することが困難となる。
【0111】
第2の製造方法を適用する場合も、第1の製造方法と同様であるが、配向を行う工程が増すため、配向処理工程(傾斜処理工程)では光配向法を適用することが簡便である好ましい。
【0112】
第3の製造方法を適用する場合は、すべての配向方法及びすべての重合方法が可能である。工程が多いため、製造効率は低くかつ製造コストは高くなるが、導電性に優れる単分子層からなり、かつ、各単分子層ごとの導電性の均一性に優れる導電性単分子累積膜が形成できる。
【0113】
上記一連の工程により、電界応答性の官能基を有する有機分子の集合群からなる単分子累積膜であって、その単分子累積膜には、前記有機分子の集合群を構成する分子相互が共役結合で所定の方向に連なる導電ネットワークを有する電界応答型導電性単分子累積膜が製造できる。
【0114】
次に、上記のようにして形成された導電性単分子累積膜の構造例を図5A−Dに示す。図5A−Dは単分子累積膜の構造例を示す分子レベルまで拡大した概念図である。図5Aは化学吸着法を用いた累積膜を示し、各単分子層の配向方向が同一方向であるX型導電性単分子累積膜の断面図である。図5Bは1層目が化学吸着膜、2層目以降がラングミュアー−ブロジェット法を用いて形成された累積膜であり、各単分子層の配向方向が同一方向であるY型導電性単分子累積膜の断面図である。図5Cはすべて化学吸着法によって形成された累積膜であり、各単分子層ごとに配向方向が異なるX型導電性単分子累積膜の断面図である。図5Dはすべて化学吸着法によって形成された累積膜であり、各単分子層ごとに2つの配向方向のいずれかに配向したX型導電性単分子累積膜の断面図である。図5A−Dにおいて、1は基材、4は単分子層、5は共役結合による導電性基、7は電界応答性官能基である。図5A−Dの各種の導電性単分子累積膜の各単分子層4の平面図は図1Bと同様である。
【0115】
(実施の形態4)
3端子有機電子デバイスの製造方法及び構造を図6A−Bに基づいて説明する。図6A−Bは、3端子有機電子デバイスの構造の例を模式的に説明した説明図である。
【0116】
まず、絶縁性の基板上、又は任意の基板11表面に絶縁膜18が形成された絶縁膜付き基板上に第3の電極17を形成する。次に、直接又は絶縁膜19を介して前記第3の電極13を覆うように、有極性の官能基及び共役結合で結合する重合性基を有する有機分子の集合群から成る有機薄膜を形成する。次に、その有機薄膜を構成する有機分子を傾斜させ、次に、有機薄膜を構成する分子相互を共役結合させ導電ネットワーク15を形成する。次に、前記導電ネットワーク15に接触するように、互いに離隔し且つ第3の電極17とも離隔した第1の電極12と第2の電極13とを形成すれば3端子有機電子デバイスが製造できる。
【0117】
これにより、基板上に形成された、第1の電極12と、前記第1の電極12と離隔した第2の電極13と、前記第1の電極12と第2の電極13を電気的に接続する導電性有機薄膜14と、基板11と有機薄膜14の間に挟まれ、それぞれと絶縁された第3の電極17と、を備えた3端子有機電子デバイスであって、前記第3の電極17は、前記第1の電極又は前記第2の電極と前記第3の電極間の電圧印加により有機薄膜14に作用させる電界を制御できる電極であり、有機薄膜14は、有極性の官能基を有する有機分子の集合群からなり、有機分子の集合群を構成する分子相互が共役結合した導電ネットワーク5を有する3端子有機電子デバイスが提供できる。
【0118】
図6Aは第1の電極12と第2の電極13が、基板11上の絶縁膜18の表面と導電性単分子膜14の側面に接した構造の3端子有機電子デバイスであり、図6Bは第1の電極12と第2の電極13が導電性単分子膜14表面に形成された構造の3端子有機電子デバイスである。第1の電極12及び第2の電極13の形成において、電極を形成する物質を蒸着した後、フォトレジストでマスクパターンを形成し、エッチングにより所定の第1の電極2と第2の電極3を形成する場合、異なるマスクパターンを用いることにより図6A又は図6Bの構造の3端子有機電子デバイスを製造できる。図6A−Bにおいて、8は有極性の官能基、15は電解重合により共役結合した基である。
【0119】
図6Aに示された構造であれば、任意の位置に重合性基を含む有機分子が利用でき、また分子に重合性基が複数存在する場合も第1と第2の電極間を電気的に接続する複数層の導電ネットワークを形成できる。さらに単分子累積膜であれば、各単分子層に導電ネットワークを形成できる。
【0120】
図6Bに示された構造であれば、導電ネットワークが基板と反対側の導電性単分子膜14表面に存在していないと、導電ネットワーク5と電極12,13との間の電気伝導が悪くなる。したがって、材料物質としては分子の端末に重合性基を有する有機分子を用いた方がよい。
【0121】
このような有機分子を用いた場合、導電性単分子膜14の導電ネットワークと電極との接触面積を大きくとれる為、接点抵抗を低減することが可能となり、単分子膜であっても良好な導電性を確保できる利点がある。
【0122】
さらに高い導電性が必要であれば、第1の電極12と第2の電極13の電極間に導電ネットワークを有する被膜を形成することができる。例えば、前記前記対電極工程後に、電解重合性の官能基を含む物質を溶かした有機溶媒中に浸漬し、第1の電極12と第2の電極13の電極間に第1の電圧を印加し且つ第1の電極12又は第2の電極13と有機溶媒に接触し有機薄膜の上方に配置された外部電極との電極間に第2の電圧を印加すれば、第1の構造の導電ネットワークを有する単分子膜又は単分子累積膜の表面にさらに被膜が形成され且つ前記被膜を構成する分子相互は電解重合して第2の構造の導電ネットワークが形成される。
【0123】
また、被膜を形成する際、電解重合性の官能基を含む物質を塗布し、第1と第2の電極間に電圧を印加すれば、同様に導電ネットワークを有するポリマー膜状の被膜を形成できる。
【0124】
有機薄膜を構成する有機分子が単分子層状に配列した単分子膜を含まない有機薄膜であれば、図6Aまたは図6Bのどちらの構造であっても上記のような差はない。
【0125】
次に、この3端子有機電子デバイスの電界印加による導電率の時間変化及びスイッチング動作を図7A−Bに基づいて説明する。図7Aは、第3の電極17に電圧を印加した場合の導電率の変化を定性的に示した模式図である。第3の電極13に印加した電圧は有機薄膜に作用された電界に比例すると考えると、横軸として印加電界又は第3の電極17の印加電圧をとることは等価であるので以下、印加電圧を用いて説明する。また導電ネットワークの導電率の変化は、第1の電極12と第2の電極13との間に一定電圧を印加した状態での電流の変化で説明する。
【0126】
導電ネットワークの導電率は第3の電極17に印加された電圧により変化し、印加電圧の増加とともにある一定の値に収束していくことがわかる。つまり第3の電極に電圧が印加されていないときの導電率と収束した導電率との範囲内で、第3の電極の印加電圧で導電率を制御できる。
【0127】
図7Aにおいて、電圧印加中の電流が0Aの場合を示しているが、電圧印加中のオン電流又は電圧印加されていないオフ電流のいずれか一方が0Vの場合に限定されない。また、電圧印加により電流値が減少する場合を例示したが、電流が増加するものであっても良い。これらは有機薄膜の構成や導電ネットワークの構造等に依存する。
【0128】
電圧を印加していない第1の導電率を有する安定状態と所定の電圧を印加した第2の導電率を有する安定状態との状態間の移行により、導電ネットワークの導電率のスイッチングが可能となる。
【0129】
図7Bは3端子有機電子デバイスのスイッチング動作の概念図であり、第1の電極12と第2の電極13との電極間に電圧を印加した状態での、所定の電圧印加状態(VON)のオン電流(IV=ON)と電圧を印加していない状態(VOFF)のオフ電流(IV=OFF)がスイッチング動作することを示している。したがって、図7Bから、第3の電極17に印加される所定の電圧のオン・オフで、電流をスイッチングできることがわかる。
【0130】
電圧のオン・オフによるスイッチングの場合を示したが、第3の電極17に第1の電圧を印加した場合の電流値と第2の電圧を印加した場合の電流値との間のスイッチングも可能である。
【0131】
本発明の導電性有機薄膜は電界制御の可変抵抗としても利用できる。
【0132】
【実施例】
以下、実施例に基づいて、本発明の内容を具体的に説明する。本発明は下記の実施例により限定されない。下記の実施例において、単に%と記載しているのは重量%を意味する。
【0133】
(実施例1)
まず、導電ネットワークが形成可能な1−ピロリル基(CN−)と、分極性の官能基であるオキシカルボニル基(−OCO−)と、基板表面の活性水素(例えば水酸基(−OH))と脱塩化水素反応するトリクロロシリル基(−SiCl)とを有する下記化学式(13)の物質(PEN:6−pyrrolylhexyl−12,12,12−trichloro−12−siladodecanoate)を下記工程1〜5にしたがって合成した。
【0134】
【化13】
Figure 0003569257
【0135】
I.前記化学式(1)の物質(PEN)の合成方法
工程1 6− ブロモ −1−( テトラヒドロピラニルオキシ ヘキサンの合成
500mlの反応容器に6−ブロモ−1−ヘキサノール197.8g(1.09mol)を仕込み、5℃以下に冷却した。これにジヒドロピラン102.1g(1.21mol)を10℃以下の温度で滴下した。滴下終了後、室温に戻して1時間攪拌させた。反応により得られた残渣をヘキサン/IPE(ジイソプロピルエーテル)=5/1にてシリカゲルカラム精製して263.4gの6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを得た。収率は90.9%であった。工程1の反応式を下記式(14)に示す。
【0136】
【化14】
Figure 0003569257
【0137】
工程2 N−[6−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロールの合成
アルゴン気流下、2リットルの反応容器にピロール38.0g(0.567mol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)200m1を仕込み、5℃以下に冷却した。これに1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液354ml(0.567mol)を10℃以下で滴下した。同温度で1時間攪拌させた後、ジメチルスルホキシド600mlを加えてTHFを加熱留去して溶媒置換した。次に、6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサン165.2g(0.623mol)を室温にて滴下した。滴下後、2時間、同温度で攪拌させた。
【0138】
反応混合物に水600molを加え、ヘキサン抽出し、有機層を水洗した。無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル=4/1にてシリカゲルカラム精製して107.0gのN−[6−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロールを得た。収率75.2%であった。工程2の反応式を下記式(15)に示す。
【0139】
【化15】
Figure 0003569257
【0140】
工程3 N −( ヒドロキシヘキシル )− ピロールの合成
1リットルの反応容器に上記で得られたN−[6−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロール105.0g(0.418mol)、メタノール450ml、水225ml、濃塩酸37.5mlを仕込み、室温にて6時間攪拌させた。反応混合物を飽和食塩水750mlに注加し、IPE抽出した。有機層を飽和食塩水洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥させ、溶媒留去した。得られた残渣をn−ヘキサン/酢酸エチル=3/1にてシリカゲルカラム精製し、63.1gのN−(6−ヒドロキシヘキシル)−ピロールを得た。収率90.3%であった。工程3の反応式を下記式(16)に示す。
【0141】
【化16】
Figure 0003569257
【0142】
工程4 N [6 (10 ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]−ピロールの合成
2リットルの反応容器にN−(6−ヒドロキシヘキシル)−ピロール62.0g(0.371mol)と、dryピリジン33.2g(0.420mol)、dryトルエン1850mlを仕込み、20℃以下で10−ウンデセノイルクロリド75.7g(0.373mol)のdryトルエン300m1溶液を滴下した。滴下時間は30分であった。その後、同温度にて1時間攪拌させた。反応混合物を氷水1.5リットルに注加し、1N塩酸で酸性にした。酢酸エチル抽出し、有機層を水洗、飽和食塩水洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥させ、溶媒を除去し、128.2gの粗体を得た。これをn−ヘキサン/アセトン=20/1にてシリカゲルカラム精製し、99.6gのN−[6−(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]−ピロールを得た。収率80.1%であった。工程4の反応式を下記式(17)に示す。
【0143】
【化17】
Figure 0003569257
【0144】
工程5 PENの合成
100mlキャップ付き耐圧試験管にN−[6−(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]−ピロール2.0g(6.0×10−3mo1)、トリクロロシラン0.98g(7.23×10−3mol)、HPtC1・6H0の5%イソプロピルアルコール溶液0.01gを仕込み、100℃で12時間反応させた。この反応液を活性炭で処理した後、2.66×10Pa(20Torr)の減圧下で低沸点成分を留去した。2.3gのPENを得た。収率81.7%であった。工程5の反応式を下記式(18)に示す。
【0145】
【化18】
Figure 0003569257
【0146】
なお、末端のトリクロロシリル基をトリメトキシシリル基に置換するには、前記化学式1のPENを3モル倍のメチルアルコールと室温(25℃)で攪拌し、脱塩化水素反応させる。必要に応じて前記塩化水素は水酸化ナトリウムを加えて塩化ナトリウムとして分離する。
【0147】
得られたPENについて、図15にNMRのチャート、図16にIRのチャートをそれぞれ示す。
(NMR)
(1)測定機器:装置名AL300(日本電子株式会社製)
(2)測定条件:H−NMR(300MHz)、サンプル30mgをCDClに溶解し測定。
(赤外線吸収スペクトル:IR)
(1)測定機器:装置名270−30型(株式会社日立製作所製)
(2)測定条件:neat(サンプルを2枚のNaCl板に挟み測定)
II.分子膜の形成方法
前記化学式(1)のPENを用い、脱水したジメチルシリコーン溶媒で1wt%に薄めて化学吸着液を調製した。
【0148】
次に、絶縁性のポリイミド基板31(または導電性のメタル基板表面に第1の絶縁膜、例えばシリカ膜38を形成しても良いし、ガラス板を用いても良い。)の表面にアルミニウム(Al)を蒸着し、フォトリソグラフィ法を適用し長さが15μmで幅が40μmの第3の電極23をエッチング形成した。さらに前記Al製の第3の電極37を電解酸化して表面に絶縁性のアルミナ(Al)膜39を形成した(図8)。
【0149】
次に、単分子膜を形成する部分を残してレジストで覆われたポリイミド基板31を室温(25℃)の化学吸着液に1時間浸漬して、基板表面で脱塩化反応させ、レジスト開口部に選択的に薄膜を形成した。次に、基板上に残った未反応の前記物質を無水クロロフォルムで洗浄除去し、続いて前記フォトレジストのマスクパターンを除去して、前記物質よりなる単分子膜34aを選択的に成膜した(図9)。
【0150】
このとき、開口部のポリイミド基板31表面(シリカ膜38とAl膜39表面)には活性水素を含む水酸基が多数存在するので、前記物質のクロロシリル基(−SiCl)が水酸基と塩化水素反応を生じてポリイミド基板31表面に共有結合した下記化学式(19)で示される分子で構成された単分子膜34が形成された。
【0151】
【化19】
Figure 0003569257
【0152】
III.分子膜の配向方法
次に、単分子膜34aが形成されたポリイミド基板31をクロロフォルム溶液中に浸漬して洗浄し、クロロフォルム溶液から引き上げる際、第1の電極から第2の電極に向かう方向と平行に液切りできるようにポリイミド基板31を垂直に立てた状態で引き上げ、第1の電極から第2の電極に向かって一次配向した単分子膜34bを形成した(図10)。
IV.電極の形成方法
次に、全面にニッケル薄膜を蒸着形成した後、ホトリソグラフィ法を適用して、ギャップ間距離が10μm、長さが30μmの第1の電極22と第2電極23とを第3の電極37を挟むようにエッチングして形成した。
V.電解重合法
その後、純水溶液中で、電極間に5V/cmの電解を印加し電解酸化重合させた。電解酸化重合の条件は、反応温度25℃、反応時間5時間であった。これにより、電解重合して導電ネットワーク35を第1の電極22及び第2の電極23の電極間を電気的に接続した。このとき、電界の方向に沿って共役結合が自己組織的に形成されて行くので、完全に重合が終われば、第1の電極22と第2の電極23とは導電ネットワーク35で電気的に接続されていることになる。最後に、第3の電極37を基板31側から取り出して、3端子有機電子デバイスを製造できた(図11)。得られた有機導電膜34Cの膜厚は約2.0nm、ポリピロール部分の厚さは約0.2nm、有機導電膜34Cの長さは10mm、幅100μmであった。
【0153】
下記化学式(20)に得られた有機導電膜ポリマーの1ユニットを示す。
【0154】
【化20】
Figure 0003569257
【0155】
VI.測定
この3端子有機電子デバイスでは、第1の電極22と第2の電極23との間は、ポリピロール型の導電ネットワーク35で接続されている。得られた有機導電膜34Cを、市販の原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツルメント社製、SAP 3800N)を用い、AFM−CITSモードで、電圧:1mV、電流:160nAの条件における電導度ρは、室温(25℃)においてドープなしでρ>1×10S/cmであった。これは、前記電流計1×10S/cmまでしか測定することができず、針がオーバーして振り切れてしまったからである。電導度の良好な金属である金は室温(25℃)において5.2×10S/cm、銀は5.4×10S/cmであることからすると、本実施例の有機導電膜の電導度ρは驚くべき高い導電性である。前記値からすると、本発明の有機導電膜は、「超金属導電膜」ということができる。
【0156】
本発明において、有機導電膜の電導度ρを下げることは、導電ネットワークを不完全なものとしたり、分子の配向度を低下させることにより、容易にできる。
【0157】
次に前記で得られた有機導電膜に対し、第1の電極22と第2の電極23との間に1Vの電圧を印加し、かつ、第1の電極22と第3の電極27との間の電圧を0Vにすると、1mA程度の電流が流れた。
【0158】
次に、第1の電極22と第2の電極23との間に1Vの電圧を印加した状態で、第1の電極22と第3の電極37との間に5Vの電圧を印加すると、第1の電極22と第2の電極23との電極間の電流値がほぼ0A(ゼロアンペア)となった。その後、第1の電極22と第3の電極27との間の電圧を5Vから0Vにもどすと元の導電率が再現された。
【0159】
このような導電性の低下は、第3の電極37と第1の電極22との電極間に5Vの電圧を印加した際、有極性の官能基であるオキシカルボニル基(−OCO−)の分極が大きくなることにより、ポリピロール型の共役系が歪み導電ネットワーク35の導電率が低下することにより生じたと考えられる。
【0160】
すなわち、第1の電極22と第3の電極37との間に印加された電圧で、前記導電ネットワークの導電率を制御して第1の電極22と第2の電極23との間に流れる電流をスイッチングできた。
【0161】
(実施例2)
以下に示す合成工程によって、下記化学式(21)に示す[6−[(3−thienyl)hexyl−12,12,12−trichloro−12−siladodecanoate]](TEN)を合成した。
【0162】
【化21】
Figure 0003569257
【0163】
(1)工程1 6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンの合成
下記化学式(22)に示す反応を行い6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを合成した。まず、500mLの反応容器に6−ブロモ−1−ヘキサノール197.8g(1.09mol)を仕込み、5℃以下に冷却した後、これに、ジヒドロピラン102.1g(1.21mol)を10℃以下で滴下した。滴下終了後、室温に戻して1時間攪拌した。
【0164】
【化22】
Figure 0003569257
【0165】
得られた残渣をシリカゲルカラムに供し、溶出溶媒としてヘキサン/ジイソプロピルエーテル(IPE)混合溶媒(体積比5:1)を用いて精製し、263.4gの6−ブロモ−1(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを得た。この際の収率は90.9%であった。
(2)工程2 3−[6−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]チオフェンの合成
下記化学式(23)に示す反応を行い3−[6−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]チオフェンを合成した。
【0166】
【化23】
Figure 0003569257
【0167】
まず、アルゴン気流下、2Lの反応容器に削ったマグネシウム25.6g(1.06m。1)を仕込み、さらに、6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニル)ヘキサン140.2g(0.529mol)を含むドライテトラヒドロフラン(ドライTHF)溶液4Lを室温で滴下した。この際の滴下時間は1時間50分であって、発熱反応を起した。その後、室温で1.5時間攪拌して、グリニャール試薬を調製した。
【0168】
つぎに、アルゴン気流下、新たな2L反応容器に3−ブロモチオフェン88.2g(541mol)とジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)ニッケル(II)3.27gとを仕込み、前記調製したグリニャール試薬全量を室温で滴下した。この際、前記反応容器内の温度を室温(50℃以下)に保ち、滴下時間は、30分とした。滴下後、室温で23時間攪拌した。
【0169】
この反応混合物を、0℃に保った0.5N HCl 1.3Lに添加し、IPE抽出を行った。得られた有機層を水洗し、さらに飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを添加して乾燥させた。そして、溶媒を留去し、3−[6−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体199.5gを得た。この粗体は、精製せずに次の工程3に供した。
(3)工程3 3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンの合成
下記化学式(24)に示す反応を行い3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを合成した。
【0170】
【化24】
Figure 0003569257
【0171】
1Lの反応容器に、前記工程2で得られた未精製3−[6−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]−チオフェン199.5g、メタノール450mL、水225mLおよび濃塩酸37.5mLを仕込み、室温で6時間攪拌して反応させた。この反応混合物を飽和食塩水750mLに添加し、IPE抽出を行った。そして、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、さらに無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒留去して3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体148.8gを得た。この粗体をシリカゲルカラムに供し、溶出溶媒としてn−へキサン/酢酸エチル混合溶媒(体積比3:1)を用いて精製し、84.8gの3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを得た。この際の収率は、工程2で得られた3−[6−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体に対して87.0%であった。
(4) 3−[6−(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]−チオフェンの合成
下記化学式(25)に示す反応を行い3−(6−(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル)−チオフェンを合成した。
【0172】
【化25】
Figure 0003569257
【0173】
2Lの反応容器に、工程3で得られた3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体84.4g(0.458mol)、ドライピリジン34.9g(0.442mol)およびドライトルエン1450mLを仕込み、20℃以下の状態で、さらに10−ウンデセノイルクロリド79.1g(0,390mol)を含有するドライトルエン溶液250mLを滴下した。滴下時間は、30分とし、その後、同じ温度で23時間攪拌して反応させた。得られた反応混合物を氷水2Lに添加し、さらに1N塩酸75mLを加えた。この混合液を酢酸エチル抽出して、得られた有機層を水洗し、さらに飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを添加して乾燥させる、溶媒を除去することにより、3−[6−(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]−チオフェンを含有する粗体161.3gを得た。この粗体をシリカゲルカラムに供し、溶出溶媒としてn−ヘキサン/アセトン混合溶媒(体積比20:1)を用いて精製し、157.6gの3−[6−(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]−チオフェンを得た。この際の収率は、前記工程3で得られた3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体に対して98.2%であった。
(5)工程5 TENの合成
下記化学式(26)に示す反応を行いTENを合成した。
【0174】
【化26】
Figure 0003569257
【0175】
(a)まず、100mLのキャップ付き耐圧試験管に、3−[6−(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]−チオフェン10.0g(2.86×1012mol)、トリクロロシラン4.65g(3.43×104mol)およびHPtC1・6H0を5重量%の割合で含有するイソプロピルアルコール溶液0.05gを仕込み、100℃で14時間反応させた。この反応液を活性炭で処理した後、減圧下で低沸点成分を留去した。減圧条件は、2.66×10Pa(20Torr)とした。
【0176】
(b)同様に、100mLキャップ付き耐圧試験管に、3−[6−(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]−チオフェン39.0g(1.11×10−1mol)、トリクロロシラン18.2g(1.34×10−1mol)、HPtCl・6H0を5重量%の割合で含有するイソプロピルアルコール溶液0.20gを仕込み、100℃で12時間反応させた。この反応液を活性炭で処理した後、減圧下で低沸点成分を留去した。減圧条件は前述のとおりである。
【0177】
(a)と(b)で得られた残渣を混合し、これにアルゴンガスを1時間通して塩酸ガスを除去することによって、65.9gの目的物TENを得た。この際のTENの収率は、前記工程4で得られた3−[6−(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体に対して97.2%であった。
【0178】
得られたTENについて、IR分析およびNMR分析を行った。以下にその条件および結果を示す。なお、図17にNMRのチャート、図18にIRのチャートをそれぞれ示す。
(NMR)
(1)測定機器:装置名AL300(日本電子株式会社製)
(2)測定条件:H−NMR(300MHz)、サンプル30mgをCDClに溶解し測定。
(赤外線吸収スペクトル:IR)
(1)測定機器:装置名270−30型(株式会社日立製作所製)
(2)測定条件:neat(サンプルを2枚のNaCl板に挟み測定)
得られたTENを用いて実施例1と同様にポリチェニレンからなる導電性分子膜を電解重合法により形成した。得られた有機導電膜の膜厚は約2.0nm、ポリチェニレン部分の厚さは約0.2nm、有機導電膜の長さは10mm、幅100μmであった。また、得られた有機導電膜は可視光線のもとでは透明であった。
【0179】
下記化学式(27)に得られた有機導電膜ポリマーの1ユニットを示す。
【0180】
【化27】
Figure 0003569257
【0181】
この有機導電膜を、実施例1と同様に、市販の原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツルメント社製、SAP 3800N)を用い、AFM−CITSモードで、電圧:1mV、電流:160nAの条件で電導度を測定した。その結果、電導度ρは、室温(25℃)においてドープなしでρ>1×10S/cmであった。
【0182】
(実施例3)
本実施例においては、液切り配向処理後に第1の電極22から第2の電極23に向かう方向を偏光方向とする偏光した可視光を500mJ/cm程度照射すると、配向性の高い単分子膜24bが得られた。また、このとき、偏光方向を第1の電極22から第2の電極23に向かう方向と45°で交叉する方向に設定して同様の照射を行うと、単分子膜を構成する有機分子は、当初の引き上げ方向から動き、偏光方向と略平行方向に配向した。
【0183】
このように、液切り配向処理及び偏光照射による配向処理を施した後、導電ネットワーク形成工程を行うと極めて導電性に優れた導電性単分子膜24cを形成できた。
【0184】
ここで、有極性の官能基が分極性のオキシカルボニル基であると、スイッチングを極めて高速で行えた。オキシカルボニル基以外に、カルボニル基、エステル基等の官能基を有する分子を使用できた。
【0185】
また、導電ネットワーク35としてポリアセチレン型、ポリジアセチレン型、ポリアセン型、ポリピロール型、ポリチェニレン型の共役系が使用でき、導電率が高かった。また、導電ネットワークを形成する共役結合で結合する重合性基として、電解重合性の官能基としてのピロール基以外に、同じくチェニレン基が利用できた。なお、重合方法を変えれば、アセチレン基、ジアセチレン基を有する物質も利用できた。
【0186】
単分子膜又は単分子累積膜の作製には、化学吸着法以外に、ラングミュアーブロジェット法を使用できた。
【0187】
また、有機薄膜を重合する工程の前に、第1の電極22と第2の電極23を形成する工程を行うと、導電ネットワークの形成に際して、第1の電極22と第2の電極23を電解重合に利用できた。すなわち、電解重合性の官能基としてピロール基又はチェニレン基を有する有機分子の集合群からなる有機薄膜の第1の電極22と第2の電極23との電極間に電圧を印加し第1の電極22と第2の電極23との電極間の有機薄膜を選択的に電解重合できた。
【0188】
基板上に第3の電極37とピロール基又はチェニレン基を有する有機分子の集合群からなり配向した単分子膜34bと、第1の電極と、第2の電極と、を形成した後に、ピロール基又はチェニレン基を含む物質を溶かした有機溶媒中に浸漬して、第1の電極22と第2の電極23との間に第1の電圧を印加し、且つ第1の電極22又は第2の電極23と前記有機溶媒に接触し、配向した単分子膜34bの上方に配置された外部電極との電極間に第2の電圧を印加して、配向した単分子膜34bの表面に被膜を形成すると同時に単分子膜と被膜のそれぞれにポリピロール型又はポリチェニレン型の導電ネットワークを形成できた。この場合、有機電子デバイスは、それぞれに導電ネットワークを有する単分子膜層とポリマー膜状の被膜層とからなるチャネル部を有する。
【0189】
また、基板上に第3の電極37とピロール基又はチェニレン基を有する有機分子の集合群からなる配向した単分子膜34bと第1の電極22と第2の電極23とを形成し、配向した単分子膜34bにポリピロール又はポリチェニレン型の第1の構造の導電ネットワークを形成した後に、ピロール基又はチェニレン基を含む物質を溶かした有機溶媒中に浸漬して、第1の電極22と第2の電極23との間に第1の電圧を印加し、且つ前記第1の電極22又は第2の電極23と前記有機溶媒に接触し導電性単分子膜34cの上方に配置された外部電極との間に第2の電圧を印加して、導電ネットワークが形成された単分子膜34cの表面にさらに被膜を形成すると同時に被膜にポリピロール型又はポリチェニレン型の第2の構造の導電ネットワークを形成できた。この場合、有機電子デバイスは、それぞれに導電ネットワークを有する単分子膜層とポリマー膜状の被膜層とからなるチャネル部を有する。
【0190】
導電ネットワークの形成において、電解重合以外では、重合性基として触媒重合性の官能基であるピロール基、チェニレン基、アセチレン基、ジアセチレン基等を有する有機分子の集合群からなる単分子膜又は単分子累積膜の分子相互を触媒重合して、導電ネットワークを形成できた。また、重合性基としてアセチレン基、ジアセチレン基等のビーム照射重合性基を有する有機分子の集合群からなる単分子膜又は単分子累積膜に、紫外線、遠紫外線、電子線又はX線等のエネルギービームを照射して、有機分子相互を重合し導電ネットワークを形成できた。
【0191】
(実施例4)
上記実施例1と同様の方法で、複数の3端子有機電子デバイスを液晶の動作スイッチとしてアクリル基板表面に配列配置してアレイ基板を作製し、さらにその表面に配向膜を作製した。次に、スクリーン印刷法を用いてシール接着剤を封口部を除いてパターン形成した後、プレキュアーしてカラーフィルター基板の配向膜面を向かい合わせにし、貼り合わせて圧着し前記パターン形成された接着剤を硬化させて、空セルを作製した。最後に、空セルに所定の液晶を真空注入した後、液晶を封止することにより液晶表示装置を製造できた。ここで、基板上に3端子有機電子デバイスを形成してTFTアレイ基板を作製すること以外は、公知技術を利用した。
【0192】
この方法では、TFTアレイの製造において、基板加熱の必要がないので、アクリル基板のようなガラス転移(Tg)点の低い基板を用いても十分に高画質なTFT型液晶表示装置が製造できた。
【0193】
(実施例5)
上記実施例1と同様の方法で、複数の3端子有機電子デバイスを液晶の動作スイッチとしてアクリル基板表面に配列配置してTFTアレイ基板を作製した。その後、公知の方法を用いて前記3端子有機電子デバイスのに接続される画素電極を形成し、TFTアレイ基板上に電界が印加されると発光する蛍光物質からなる発光層を形成し、TFTアレイ基板に対向する透明共通電極を発光層上に形成して、エレクトロルミネッセンス型カラー表示装置を製造できた。ここで、基板上に3端子有機電子デバイスを形成してアレイ基板を形成すること以外は、公知技術を利用した。
【0194】
発光層を形成する際、赤、青、緑色の光を発光する3種類の素子をそれぞれ所定の位置に形成することにより、エレクトロルミネッセンス型カラー表示装置が製造できた。各色要素の配列は公知技術を利用した。
【0195】
(実施例6)
本実施例は、上記実施例1に記載のPEN(化学式13)を用い、基材として直径1mmのガラスファイバーを用い、その表面に(化学式19)の単分子膜を形成し、溶媒から引き上げる際に分子を配向させた。その後、ガラスファイバーの両末端に電極を配置し、純水液中で、電極間に5V/cmの電解を印加し電解酸化重合させた。電解酸化重合の条件は、反応温度25℃、反応時間8時間であり、ガラスファイバー上にポリピロールの共役結合重合膜(化学式20)がガラスファイバーの軸方向に沿って長さ10mm形成できた。得られた有機導電膜34Cの膜厚は約2.0nm、ポリピロール部分の厚さは約0.2nmであった。また、得られた有機導電膜は可視光線のもとでは透明であった。
【0196】
このようにして得られた有機薄膜の表面を覆うように絶縁膜を形成することにより電気ケーブルを作製した。得られた電線の断面図を図13に示す。図13において、50は電気ケーブル、51はガラス芯線、52はポリピロール電解酸化重合膜、53は室温硬化型のシリコーンゴムからなる被覆絶縁膜である。
【0197】
この電気ケーブルの電導度ρはドープなしでρ>1×10S/cmであり、「超金属導電膜」であることが確認できた。電導度の測定は実施例1と同じ方法で行った。
【0198】
本実施例においては、前記電気ケーブルは互いに電気的に絶縁された複数の芯線で形成され、集合電線を形成していてもよい。
【0199】
また、電線を作成する場合の芯線は、ガラス以外にも金属も使用することができる。金属の場合は、表面に酸化物を形成すると、単分子膜は形成しやすい。
【0200】
(実施例7)
前記実施例1〜5において、導電性分子が配向しているか否かは、図14に示すような液晶セル60を形成し、偏光板67,68で挟み、裏面より光を照射して70の位置から観察することにより確認できる。液晶セル60は、導電性分子膜62、64がそれぞれ形成されたガラス板61、63を導電性分子膜を内側にして、ギャップ間距離5〜6μmに保持して周囲を接着剤65で封止し、内部に液晶組成物66(ネマチック液晶、例えばチッソ社製”LC,MT−5087LA”)を注入して作成する。
(1)偏光板67,68をクロスにした場合、導電性分子膜62、64の配向方向を揃え、この方向と、一方の偏光板を平行にし、他方の偏光板を直交させる。完全に配向していれば液晶が配向して均一な黒色になる。均一な黒色にならない場合は配向不良である。
(2)偏光板67,68を平行にした場合、導電性分子膜62、64の配向方向を揃え、この方向と、両方の偏光板を平行にする。完全に配向していれば液晶が配向して均一な白色になる。均一な白色にならない場合は配向不良である。
【0201】
なお、裏側の基板が透明でない場合は、偏光板は上側一枚とし、表面より光を照射して反射光で観察する。
【0202】
この方法により、前記実施例1〜5で得られた導電性分子膜は配向していることが確認できた。
【0203】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、従来の有機導電膜よりも高い導電性を有するか、または金や銀などの導電性金属と同等かまたはそれ以上の導電性を有する導電性有機薄膜とその製造方法を提供できる。
【0204】
次に本発明は、デバイスの高密化が進展し0.1μm以下の微細加工がなされても、結晶性に左右されない有機物質を用いたデバイスを作製することにより高集積化されたデバイスを提供できる。また、プラスチック基板等に形成することにより、フレキシビリティーに優れた有機電子デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Aは本発明の実施の形態1における基材上に形成された導電性単分子膜を分子レベルにまで拡大した概念断面図であり、Bはその平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるラビング配向法を説明するための概念図である。
【図3】本発明の実施の形態1における光配向法を説明するための概念図である。
【図4】本発明の実施の形態1における引き上げ配向法を説明するための概念図である。
【図5】A−Dは本発明の実施の形態3における単分子累積膜の構造例を示す分子レベルまで拡大した概念図であり、Aは化学吸着法を用いた累積膜を示し、各単分子層の配向方向が同一方向であるX型導電性単分子累積膜の断面図であり、Bは2層目以降がラングミュアー−ブロジェット法を用いて形成された累積膜であり、各単分子層の配向方向が同一方向であるY型導電性単分子累積膜の断面図であり、Cは各単分子層ごとに配向方向が異なるX型導電性単分子累積膜の断面図であり、Dは各単分子層ごとに2つの配向方向のいずれかに配向したX型導電性単分子累積膜の断面図である。
【図6】A−Bは本発明の実施の形態4における3端子有機電子デバイスの構造を分子レベルまで拡大した概念図であり、Aは第1と第2の電極が絶縁膜付き基板表面に形成された構造の断面図、Bは第1と第2の電極が有機薄膜表面に形成された構造の断面図である。
【図7】A−Bは本発明の実施の形態4における印加電界に対する3端子有機電子デバイスの導電性の変化を説明する概念図であり、Aは導電ネットワークの導電率と第3の電極に印加された電圧との依存性を説明する概念図、Bは第3の電極への電圧印加の有無によるスイッチング動作を説明する概念図である。
【図8】本発明の実施例1の第3電極形成工程を説明するための第3の電極を形成した基板を拡大した概念断面図である。
【図9】本発明の実施例1における成膜工程を説明するための単分子膜を形成した基板を分子レベルまで拡大した概念断面図である。
【図10】は本発明の実施例1における配向した単分子膜を形成した基板を分子レベルまで拡大した概念断面図である。
【図11】本発明の実施例1における対電極形成工程及び導電ネットワーク形成工程を説明するための導電ネットワークを形成し、かつ第1の電極と第2の電極とを形成した基板を分子レベルまで拡大した概念断面図である。
【図12】本発明の実施の形態1における有機分子の傾斜方向を説明するための概念斜視図である。
【図13】本発明の実施例6で得られた電気ケーブルの概念断面図である。
【図14】本発明の実施例7における導電性分子の配向を評価する方法を示す説明図。
【図15】本発明の実施例1で得られたピロリル化合物のNMRのチャートである。
【図16】本発明の実施例1で得られたピロリル化合物のIRのチャートである。
【図17】本発明の実施例2で得られたチェニル化合物のNMRのチャートである。
【図18】本発明の実施例2で得られたチェニル化合物のIRのチャートである。
【符号の説明】
1 基板
4 導電性単分子膜
5 導電ネットワーク
7 活性水素を含まない有極性官能基
11 基板
12 第1の電極
13 第2の電極
14 電界応答型導電性単分子膜
15 導電ネットワーク
17 第3の電極
18 第1の絶縁膜
19 第2の絶縁膜
31 ポリイミド基板
34 電界応答型単分子膜
34a 単分子膜
34b 配向した単分子膜
34c 導電性単分子膜
35 導電ネットワーク
37 アルミ製の第3の電極
38 シリカ膜
39 アルミナ膜
41 ラビング布
42 ラビングロール
43 偏光板
44 有機溶媒
50 電気ケーブル
51 ガラス芯線
52 ポリピロール電解酸化重合膜
53 被覆絶縁膜
60 液晶セル

Claims (27)

  1. 有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、
    前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、
    前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、
    前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は他の分子の共役結合基と重合して導電ネットワークを形成していることを特徴とする導電性有機薄膜。
  2. 重合が、電解酸化重合、触媒重合およびエネルギービーム照射重合から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  3. 前記重合した導電ネットワークが、ポリピロール、ポリチェニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン及びポリアセンから選ばれる少なくとも一つの共役結合基である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  4. 前記CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基が、エステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)及びカーボネイト(−OCOO−)基から選ばれる少なくとも一つの基である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  5. 前記末端結合基が、シロキサン(−SiO−)及び−SiN−結合から選ばれる少なくとも一つの結合(但し、Si及びNには価数に相当する他の結合基があっても良い。)である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  6. 前記分子の配向が、ラビングによる配向処理、脱離反応によって基材表面に分子を共有結合した後の反応溶液からの傾斜液切り処理、偏光の照射処理、及び重合時の分子のゆらぎによる配向から選ばれる少なくとも一つによって形成されている請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  7. 前記有機薄膜の導電領域が可視領域の波長を有する光に対して透明である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  8. 前記導電ネットワークを形成している分子ユニットが下記化学式(1)または(2)で示される請求項1に記載の導電性有機薄膜。
    【化1】
    【化2】
    (但し、前記化学式(1)及び(2)において、Xは水素、または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数でありm+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下の整数、pは整数であり、1、2又は3である。)
  9. 前記導電性ネットワークはポリピロール及びポリチェニレンから選ばれる少なくとも一つのポリマーであり、前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、室温(25℃)においてドーパントなしで1×107S/cm以上である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  10. 有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合可能な末端官能基と、
    前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合可能な共役結合可能基と、
    前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含む分子からなる化合物を、表面に活性水素を有するか又は活性水素を付与した基材上に接触させ、脱離反応により共有結合させて有機薄膜を成膜し、
    前記有機薄膜を構成する有機分子を所定の方向に傾斜して配向させるか、または次の重合工程で配向させながら重合し、
    重合工程においては、前記共役結合可能基同士を電解酸化重合、触媒重合およびエネルギービーム照射重合から選ばれる少なくとも一つの重合法により共役結合させて導電ネットワークを形成する導電性有機薄膜の製造方法。
  11. 前記末端官能基が、ハロゲン化シリル基、アルコシリル基またはイソシアネート基であり、基材表面の活性水素と脱塩化水素反応、脱アルコール反応及び脱イソシアネート反応から選ばれる少なくとも一つの脱離反応によって共有結合を形成する請求項10に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  12. 前記共役結合可能基が、ピロリル基、チェニル基、アセチレン基を含むエチニル基及びジアセチレン基を含むジエチニル基から選ばれる少なくとも一つの基である請求項10に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  13. 前記CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基が、エステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)及びカーボネイト(−OCOO−)基から選ばれる少なくとも一つの基である請求項10に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  14. 重合工程の最終段階においては、電解酸化重合により導電ネットワークを完結させる請求項10に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  15. 前記分子の配向を、ラビングによる配向処理、脱離反応によって基材表面に分子を共有結合した後の反応溶液からの傾斜液切り処理、偏光の照射処理、及び重合時の分子のゆらぎによる配向から選ばれる少なくとも一つの処理によって行う請求項10に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  16. 前記有機分子が下記化学式(3)または(4))で示される請求項10に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
    【化3】
    【化4】
    (但し、前記式(3)及び(4)において、Xは水素、または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Dはハロゲン原子、イソシアネート基又は炭素数1−3のアルコキシル基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数でありm+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下の整数、pは整数であり、1、2又は3である。)
  17. 前記有機分子は単分子層状に形成されている請求項10に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  18. 前記単分子層形成工程を複数回繰り返すことにより、単分子層を積層させて単分子累積膜を形成する請求項17に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  19. 前記単分子層形成工程と前記傾斜処理工程とを交互に繰り返し行った後、前記導電ネットワーク形成工程で、単分子累積膜の各単分子層内に導電ネットワークを一括形成することにより、導電性単分子累積膜を形成する請求項18に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  20. 前記単分子層形成工程、前記傾斜処理工程及び前記導電ネットワーク形成工程を繰り返し行うことにより、導電性単分子累積膜を形成する請求項10に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  21. 前記導電ネットワーク形成中または形成後に、さらにドーパントを添加する請求項10に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  22. 基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極と離隔した第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極とを電気的に接続する導電性有機薄膜とを備えた2端子有機電子デバイスであって、
    前記導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成していることを特徴とする2端子有機電子デバイス。
  23. 基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極と離隔した第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極とを電気的に接続する導電性有機薄膜と、前記基板と前記導電性有機薄膜との間に挟まれ、それぞれと絶縁されている第3の電極と、を備えた3端子有機電子デバイスであって、
    前記第3の電極は、前記第1の電極又は前記第2の電極との電極間に電圧を印加することにより前記導電性有機薄膜に作用させる電界を制御する電極であり、
    前記導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成していることを特徴とする3端子有機電子デバイス。
  24. 基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極と離隔した第2の電極と、
    有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成している導電性有機薄膜を介して、前記第1の電極と前記第2の電極とを電気的に接続し、前記基板と前記導電性有機薄膜との間に挟まれ、かつそれぞれと絶縁されており、前記第1又は第2の電極との間に印加される電圧により前記導電性有機薄膜に作用させる電界を制御する第3の電極とを備えた3端子有機電子デバイスをスイッチ素子として用いた液晶表示装置であって、
    前記基板上に複数の前記スイッチ素子がマトリックス状に配列配置されたアレイ基板と、
    前記アレイ基板表面に形成された第1の配向膜と、
    透明基板上に色要素がマトリックス状に配列配置されたカラーフィルター基板と、
    前記カラーフィルター基板表面に形成された第2の配向膜と、
    前記第1の配向膜と前記第2の配向膜とを内側にして対向させた前記アレイ基板と前記カラーフィルター基板との間に封止された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置。
  25. 基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極と離隔した第2の電極と、
    有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成している導電性有機薄膜を介して、前記第1の電極と前記第2の電極とを電気的に接続し、
    前記基板と前記導電性有機薄膜との間に挟まれ、かつそれぞれと絶縁されており、前記第1又は第2の電極との間に印加された電圧により前記導電性有機薄膜に作用させる電界を制御する第3の電極とを備えた3端子有機電子デバイスをスイッチ素子として用いたエレクトロルミネッセンス型表示装置であって、
    複数の前記スイッチ素子が基板上にマトリックス状に配列配置されたアレイ基板と、
    前記アレイ基板と対向する共通電極と、
    前記アレイ基板と前記共通電極との間に形成された、電界の印加により発光する蛍光物質を含む発光層とを有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス型表示装置。
  26. 可視光線領域の光波長では透明な電極であって、
    前記電極は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成している導電性有機薄膜で形成されていることを特徴とする電極。
  27. 芯線と、前記芯線の表面の長さ方向に形成されている導電性有機薄膜と、前記導電性有機薄膜を覆う絶縁被膜とを備えた電気ケーブルであって、
    前記導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が芯線の基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、CO基の両端が直接又はOを介してCに繋がる有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形成していることを特徴とする電気ケーブル。
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