JP2002309013A - 導電性有機薄膜とその製造方法、それを用いた電子デバイス、電気ケーブル、電極、ピロリル化合物及びチェニル化合物 - Google Patents

導電性有機薄膜とその製造方法、それを用いた電子デバイス、電気ケーブル、電極、ピロリル化合物及びチェニル化合物

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JP2002309013A
JP2002309013A JP2001386590A JP2001386590A JP2002309013A JP 2002309013 A JP2002309013 A JP 2002309013A JP 2001386590 A JP2001386590 A JP 2001386590A JP 2001386590 A JP2001386590 A JP 2001386590A JP 2002309013 A JP2002309013 A JP 2002309013A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】金や銀などの導電性金属と同等かまたはそれ以
上の導電性を有する導電性有機薄膜とその製造方法及び
これを用いたデバイス等を提供する。 【解決手段】有機分子34cの一方の末端が基材38表面と
共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの
部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記
末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分
に、活性水素を含まない有極性官能基を含み、前記有機
分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合して
ポリマー化しており、導電ネットワーク35を形成してい
る。導電性有機薄膜の電導度(ρ)は、室温(25℃)
においてドーパントなしで好適には1×107S/cm
以上である。とくに電解酸化重合させたポリピロールま
たはポリチェンレン共役結合の膜は高い導電性を有す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、有機材料を用いた
導電性有機薄膜とその製造方法、それを用いた有機電子
デバイス、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス装
置、電気ケーブル電極、ピロリル化合物及びチェニル化
合物に関するものである。さらには、導電性を有する単
分子膜又は単分子累積膜または薄膜の導電性変化を利用
した有機電子デバイスと表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から有機導電膜については様々な提
案がある。本出願人は、すでにポリアセチレン、ポリジ
アセチレン、ポリアセン(Polyacene)、ポリフェニレ
ン、ポリチェニレン、ポリピロール、ポリアニリンなど
の導電性共役基を含む導電膜を提案している(特開平2(1
990)-27766号公報、USP5,008,127、EP-A-0385656、EP-A
-0339677,EP-A-0552637、USP5,270,417、特開平5(199
3)-87559号公報、特開平6(1994)-242352号公報)。
【0003】また、従来から電子デバイスには、シリコ
ン結晶に代表されるように無機系の半導体材料が用いら
れている。有機系の電子デバイス(以下、有機電子デバ
イス)としては、例えば日本国特許第2034197号及び第2
507153号等に開示されている。これら各公報に記載され
ている有機電子デバイスは、印加された電界に応答し端
子間に流れる電流をスイッチングする有機電子デバイス
である。
【0004】前記従来の有機系導電膜は、導電性が金属
に比較すると低いという問題があった。また、従来から
用いられてきた無機結晶では、微細化が進展するに伴い
結晶欠陥が問題となり、デバイス性能が結晶に大きく左
右される問題があった。また、フレキシビリティーが悪
いという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記に鑑みな
されたものであり、その第1番目の目的は、従来の有機
導電膜よりも高い導電性を有するか、または金や銀など
の導電性金属と同等かまたはそれ以上の導電性を有する
導電性有機薄膜とその製造方法を提供することにある。
【0006】本発明の第2番目の目的は、デバイスの高
密化が進展し0.1μm以下の微細加工がなされても、
結晶性に左右されない有機物質を用いたデバイスを作製
し、高集積化されたデバイスを提供することにある。ま
た、プラスチック基板等に形成することにより、フレキ
シビリティーに優れた有機電子デバイスを提供すること
にある。
【0007】本発明の第3番目の目的は、前記導電性有
機薄膜に有用なピロリル化合物及びチェニル化合物を提
供することである.
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端
が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子
のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結
合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいず
れかの部分に、活性水素を含まない有極性官能基を含
み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合
基は他の分子の共役結合基と重合して導電ネットワーク
を形成していることを特徴とする。
【0009】次に本発明の別の導電性有機薄膜は、基板
に共有結合している基と、前記基板表面に沿った方向に
ポリマー化している導電性ネットワークを形成している
導電性有機薄膜であって、前記導電性ネットワークはポ
リピロール及びポリチェニレンから選ばれる少なくとも
一つのポリマーであり、前記導電性有機薄膜の電導度
(ρ)が、室温(25℃)においてドーパントなしで1
×107S/cm以上であることを特徴とする。
【0010】次に本発明の導電性有機薄膜の製造方法
は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合可能な
末端官能基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在
し、他の分子と重合可能な共役結合可能基と、前記末端
結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、活
性水素を含まない有極性官能基を含む分子からなる化合
物を、表面に活性水素を有するか又は活性水素を付与し
た基材上に接触させ、脱離反応により共有結合させて有
機薄膜を成膜し、前記有機薄膜を構成する有機分子を所
定の方向に傾斜して配向させるか、または次の重合工程
で配向させながら重合し、重合工程においては、前記共
役結合可能基同士を電解酸化重合、触媒重合およびエネ
ルギービーム照射重合から選ばれる少なくとも一つの重
合法により共役結合させて導電ネットワークを形成する
ことを特徴とする。
【0011】次に本発明の3端子有機電子デバイスは、
基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極と離
隔した第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極とを
電気的に接続する導電性有機薄膜と、前記基板と前記導
電性有機薄膜との間に挟まれ、それぞれと絶縁されてい
る第3の電極と、を備えた3端子有機電子デバイスであ
って、前記第3の電極は、前記第1の電極又は前記第2
の電極との電極間に電圧を印加することにより前記導電
性有機薄膜に作用させる電界を制御する電極であり、前
記導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が基材表面
と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれか
の部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前
記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分
に、活性水素を含まない有極性官能基から選ばれる少な
くとも一つの基を含み、前記有機分子は配向しており、
かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形
成していることを特徴とする。
【0012】次に本発明の液晶表示装置は、基板上に形
成された第1の電極と、前記第1の電極と離隔した第2
の電極と、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合
した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存
在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結合
基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、活性水
素を含まない有極性官能基を含み、前記有機分子は配向
しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネット
ワークを形成している導電性有機薄膜を介して、前記第
1の電極と前記第2の電極とを電気的に接続し、前記基
板と前記導電性有機薄膜との間に挟まれ、かつそれぞれ
と絶縁されており、前記第1又は第2の電極との間に印
加される電圧により前記導電性有機薄膜に作用させる電
界を制御する第3の電極と、を備えた3端子有機電子デ
バイスをスイッチ素子として用いた液晶表示装置であっ
て、前記基板上に複数の前記スイッチ素子がマトリック
ス状に配列配置されたアレイ基板と、前記アレイ基板表
面に形成された第1の配向膜と、透明基板上に色要素が
マトリックス状に配列配置されたカラーフィルター基板
と、前記カラーフィルター基板表面に形成された第2の
配向膜と、前記第1の配向膜と前記第2の配向膜とを内
側にして対向させた前記アレイ基板と前記カラーフィル
ター基板との間に封止された液晶層とを有することを特
徴とする。
【0013】次に本発明のエレクトロルミネッセンス型
表示装置は、基板上に形成された第1の電極と、前記第
1の電極と離隔した第2の電極と、有機分子の一方の末
端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分
子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役
結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のい
ずれかの部分に、活性水素を含まない有極性官能基を含
み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合
基は重合して導電ネットワークを形成している導電性有
機薄膜を介して、前記第1の電極と前記第2の電極とを
電気的に接続し、前記基板と前記導電性有機薄膜との間
に挟まれ、かつそれぞれと絶縁されており、前記第1又
は第2の電極との間に印加された電圧により前記導電性
有機薄膜に作用させる電界を制御する第3の電極とを備
えた3端子有機電子デバイスをスイッチ素子として用い
たエレクトロルミネッセンス型表示装置であって、複数
の前記スイッチ素子が基板上にマトリックス状に配列配
置されたアレイ基板と、前記アレイ基板と対向する共通
電極と、前記アレイ基板と前記共通電極との間に形成さ
れた、電界の印加により発光する蛍光物質を含む発光層
とを有することを特徴とする。
【0014】次に本発明の電気ケーブルは、芯線と、前
記芯線の表面の長さ方向に形成されている導電性有機薄
膜と、前記導電性有機薄膜を覆う絶縁被膜とを備えた電
気ケーブルであって、前記導電性有機薄膜は、有機分子
の一方の末端が芯線の基材表面と共有結合した末端結合
基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分
子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共役
結合基との間のいずれかの部分に、活性水素を含まない
有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、か
つ、前記共役結合基は電解酸化重合により重合して導電
ネットワークを形成していることを特徴とする。
【0015】次に本発明の電極は、可視光線領域の光波
長では透明な電極であって、前記電極は、有機分子の一
方の末端が基材表面と共有結合した末端結合基と、前記
有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合し
た共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との
間のいずれかの部分に、活性水素を含まない有極性官能
基を含み、前記有機分子は配向しており、かつ、前記共
役結合基は重合して導電ネットワークを形成している導
電性有機薄膜であることを特徴とする。
【0016】次に本発明の導電性ネットワークは、下記
化学式(7)または(8)で示される。
【0017】
【化7】
【0018】
【化8】
【0019】(但し、前記化学式(7)及び(8)にお
いて、Xは水素、または不飽和基を含む有機基、qは0
〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシ
カルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO
−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Eは水素
または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数であり
m+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下
の整数、pは整数であり、1、2又は3である。)次に
本発明の化合物は、下記化学式(9)または(10)で
示される。
【0020】
【化9】
【0021】
【化10】
【0022】(但し、前記式(9)及び(10)におい
て、Xは水素、または不飽和基を含む有機基、qは0〜
10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカ
ルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)
またはカーボネイト(−OCOO−)基、Dはハロゲン
原子、イソシアネート基又は炭素数1−3のアルコキシ
ル基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、m、
nは整数でありm+nは2以上25以下、好ましくは1
0以上20以下の整数、pは整数であり、1、2又は3
である。)
【0023】
【発明の実施の形態】本発明において、有機薄膜が導電
性を有するのは、有機分子の集合群を構成する分子相互
が共役結合してポリマー化していることによる。ここ
に、導電ネットワークは、電気伝導に関与する共役結合
で結合した有機分子の集合体であり、共役結合鎖(共役
系)を有するポリマーで形成されている。また、導電ネ
ットワークは電極間の方向に形成されている。この共役
結合鎖ポリマーは厳密に1方向に連なるものではなく、
様々な方向のポリマー鎖が、全体として電極間に形成さ
れていればよい。
【0024】本発明においては、導電性有機薄膜の電導
度(ρ)は、1S/cm以上、好ましくは1×103
/cm以上、さらに好ましくは1×104S/cm以上
であり、さらに5.5×105S/cm以上、特に好ま
しくは1×107S/cm以上である。前記の値はすべ
て室温(25℃)におけるドーパントなしの場合であ
る。
【0025】前記重合した共役結合基は、ポリピロー
ル、ポリチェニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレ
ン及びポリアセンから選ばれる少なくとも一つの共役結
合基であることが好ましい。とくに共役結合が、ポリピ
ロールまたはポリチェニレンであり、電解酸化重合させ
た薄膜は高い電導度を有する。
【0026】前記活性水素を含まない有極性官能基は、
エステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−O
CO−)、カルボニル基(−CO−)及びカーボネイト
(−OCOO−)基から選ばれる少なくとも一つの基で
あることが好ましい。
【0027】前記末端結合基は、シロキサン(−SiO
−)及び−SiN−結合から選ばれる少なくとも一つの
結合であることが好ましい。
【0028】前記末端結合基は、脱塩化水素反応、脱ア
ルコール反応及びから選ばれる少なくとも一つの脱離反
応によって形成されていることが好ましい。
【0029】この方法によって形成される分子膜は、当
業界では”化学吸着膜”または”セルフアセンブル(sel
f assemble)膜”と言われているが、本発明において
は”化学吸着膜”と呼ぶ。また、その形成方法を”化学
吸着法”と呼ぶ。
【0030】本発明において、分子の配向は、ラビング
による配向処理、脱離反応によって基材表面に分子を共
有結合した後の反応溶液からの傾斜液切り処理、偏光の
照射処理、及び重合工程における分子のゆらぎによる配
向から選ばれる少なくとも一つによって形成されている
ことが好ましい。
【0031】前記有機薄膜の導電領域は可視領域の波長
を有する光に対して透明であることが好ましい。
【0032】前記導電ネットワークを形成している分子
ユニットは例えば下記式(11)または(12)で示さ
れることが好ましい。
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】
【0035】(但し、前記式(11)及び(12)にお
いて、Xは水素、または不飽和基を含む有機基、qは0
〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシ
カルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO
−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Dはハロ
ゲン原子、イソシアネート基又は炭素数1−3のアルコ
キシル基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、
m、nは整数でありm+nは2以上25以下、好ましく
は10以上20以下の整数、pは整数であり、1、2又
は3である。) 本発明で用いる材料分子の末端官能基は、クロロシリル
基、アルコシリル基またはイソシアネート基であり、基
材表面の活性水素と脱塩化水素反応、脱アルコール反応
及び脱イソシアネート基から選ばれる少なくとも一つの
脱離反応によって共有結合を形成することが好ましい。
【0036】前記共役結合可能基は、ピロール基、チェ
ニレン基、アセチレン基、及びジアセチレン基から選ば
れる少なくとも一つの基であっても良い。
【0037】前記有機分子は単分子層状に形成されてい
ることが好ましい。
【0038】また、前記単分子層形成工程を複数回繰り
返すことにより、単分子層を積層させて単分子累積膜を
形成しても良い。
【0039】前記化学式EまたはFにおいて、Xがビニ
ル結合などの不飽和基を含む場合は、例えば水分の存在
する雰囲気中で電子線またはX線などのエネルギー線を
照射することにより−OH基を導入できる。また、Xが
ビニル結合などの不飽和基を含む場合は、例えば過マン
ガン酸カリウム水溶液に浸漬することにより−COOH
を導入できる。このようにすると、活性水素を導入でき
るので、さらに単分子膜を累積結合させることができ
る。
【0040】また、前記単分子層形成工程と前記傾斜処
理(配向)工程とを交互に繰り返し行った後、前記導電
ネットワーク形成工程で、単分子累積膜の各単分子層内
に導電ネットワークを一括形成することにより、導電性
単分子累積膜を形成しても良い。
【0041】また、前記単分子層形成工程、前記傾斜処
理工程及び前記導電ネットワーク形成工程よりなる一連
の工程を繰り返し行うことにより、導電性単分子累積膜
を形成しても良い。
【0042】重合方法としては、電解酸化重合、触媒重
合及びエネルギー線照射重合から選ばれる少なくとも一
つの重合方法がある。前記電解酸化による導電ネットワ
ークを形成する前に、触媒重合及びエネルギー線照射重
合から選ばれる少なくとも一つの予備重合を行っても良
い。
【0043】前記エネルギー線は、紫外線、遠紫外線、
X線及び電子線から選ばれる少なくとも一つであること
が好ましい。
【0044】前記エネルギー線は、偏光した紫外線、偏
光した遠紫外線及び偏光したX線から選ばれる少なくと
も一つであり、前記傾斜配向処理と前記導電ネットワー
ク形成とを同時に行っても良い。
【0045】有機分子が有極性の官能基を含むことによ
り、印加された電界に対する感度が高く、応答速度が高
速となる。したがって、有機薄膜の導電性を高速に変化
させることができる。電界が印加された際、前記有機薄
膜の導電性の変化は、有極性の官能基が電界に応答し、
その応答による影響が前記導電ネットワークの構造に波
及されたため、生じたと考えられる。
【0046】また、ドーピングにより導電ネットワーク
に電荷移動性のドーパント物質の組み込めば、さらに導
電率を向上することも可能である。このドーパント物質
として、ヨウ素、BF-イオン、Na,K等のアルカリ
金属、Ca等のアルカリ土類金属等の任意のドーパント
物質が利用できる。さらに有機膜形成工程の溶液に含ま
れる微量成分やガラス容器などから不可避的に混入され
るコンタミネーションによるドーパント物質を含んでい
ても良い。
【0047】別な例においては、電界応答型導電性有機
薄膜中に電界が生じると、電界の強度に応じて導電ネッ
トワークの導電が変化する。したがって、導電性有機薄
膜に電界が作用していない状態と、所定の強度の電界が
作用している状態とでは、導電ネットワークの導電率が
異なる。したがって、電界のオン・オフ制御により、導
電ネットワークの導電率をスイッチング制御することが
できる。
【0048】また、強度の異なる第1の電界又は第2の
電界が有機薄膜に印加されていると、導電ネットワーク
の導電率はそれぞれ第1の導電率又は第2の導電率とな
る。これにより、第1の導電率を有する安定状態と第2
の導電率を有する安定状態との状態間を状態移行させ
て、導電ネットワークの導電率をスイッチングすること
もできる。
【0049】導電単分子層を構成する有機分子はかなり
良く配向した状態にあるため、導電ネットワークの共役
結合鎖が特定平面内に存在する。したがって、単分子層
に形成された導電ネットワークは所定の方向に直線的に
連なる。その導電ネットワークの直線性により、高い導
電異方性を有する。また、その導電ネットワークの直線
性は、導電ネットワークを構成する各共役結合鎖(共役
系)が単分子層内の同一平面で略平行に配列しているこ
とを意味する。したがって、導電単分子層は、高い導電
率を有し、且つ、均一な導電率を有する。また、上記導
電ネットワークの直線性により、重合度の高い共役結合
鎖を単分子層に有することとなる。
【0050】別の例によれば、膜厚が薄くても極めて良
好な導電性を有する導電性単分子膜及び導電性単分子累
積膜を提供できる。また、それらの導電性の変化は極め
て高速である。
【0051】導電性単分子累積膜の場合、各導電性単分
子層に導電ネットワークが形成されているので、単分子
累積膜の導電ネットワークの導電率は、積層された単分
子膜の層数に依存する。したがって、導電単分子層の積
層数を変更することにより所望の導電率を有する導電性
有機薄膜を提供できる。例えば、同一の導電性単分子層
が積層された導電性累積膜であれば、それに含まれる導
電ネットワークの導電率はほぼ比例する。
【0052】導電性単分子累積膜において、すべての単
分子層に形成された導電ネットワークの方向が同一であ
る限り、各単分子層ごとに有機分子の配向の傾斜角が異
なっていてもよい。また、すべての単分子層を同一有機
分子から構成するものでなくとも良い。また、各導電性
単分子層ごとに異なる種類の有機分子から構成された導
電性単分子累積膜であってもよい。
【0053】また、導電性単分子累積膜の場合は、基材
に最近接する導電性単分子層が基材と化学結合で結合さ
れていると、耐剥離性等の耐久性に優れる。
【0054】別の例によれば、方向性を有する導電ネッ
トワークを備えた電界応答型導電性有機薄膜を製造する
ことができる。一般的に、導電ネットワークの方向は、
傾斜処理工程を経た有機薄膜を構成した有機分子の傾斜
方向と同一方向となる。方向性を有する導電ネットワー
クが形成される限り、有機分子の傾斜方向と同一でなく
てもよい。
【0055】ここに、傾斜処理工程における有機分子の
傾斜方向は、有機分子の長軸を基材表面に射影した線分
の方向を意味する。したがって、基材に対する傾斜角は
同一角度でなくてもよい。
【0056】別の例によれば、単分子層を有する有機薄
膜が成膜できる。更に、単分子層を構成した有機分子の
集合群を、傾斜処理工程において、精度よく所定の方向
に傾斜させることができる。一般的には、単分子層を構
成した分子を配向させることができる。更にまた、精度
よく配向させることができることにより、導電ネットワ
ーク形成工程において、方向性を有する導電ネットワー
クを簡便に形成できる。
【0057】また、単分子層内の配向した有機分子相互
を共役結合させると、重合度が高くかつ直線的に連なる
導電ネットワークが形成できる。また、導電ネットワー
クの直線性により、均質な導電性単分子層が形成でき
る。
【0058】別の例においては、前記偏光として可視光
領域の波長を有する偏光を用いる。この例によれば、有
機薄膜を構成した有機分子の剥離や、有機分子自体の破
壊等による有機薄膜の破壊を防止又は抑制できる。
【0059】別の例によれば、ラビング処理を施した基
材表面に有機薄膜を成膜すると、その有機薄膜を構成し
た有機分子は所定の方向に傾斜した状態となる。一般的
には、ラビング処理におけるラビング方向と成膜された
有機分子の傾斜方向とは同一方向となる。
【0060】前記ラビング処理で用いるラビング布とし
て、ナイロン製又はレーヨン製の布を用いることができ
る。上記の構成の如くナイロン製又はレーヨン製のラビ
ング布を用いることが、配向の精度を向上させる目的に
とって適正である。
【0061】前記導電ネットワーク形成工程で1種以上
の重合法を適用し、前記有機薄膜を構成する分子相互を
重合により又は重合及び該重合後の架橋により共役結合
させて導電ネットワークを形成しても良い。この例によ
れば、有機分子の前記重合性基を共役結合で連結させ電
気伝導を可能にする導電ネットワークを形成できる。重
合の種類としては電解酸化重合、触媒重合及びエネルギ
ービームの照射重合から選ばれる少なくと一つの重合法
が利用できる。とくに最終工程において、電解酸化重合
により導電ネットワークを完結させると、高い導電性を
得ることができる。
【0062】また、前記有機薄膜を形成する分子が共役
結合で結合する重合性基を複数有する場合、一方の重合
性基の重合で形成された高分子に対して、さらに架橋反
応を行い他方の重合性基を共役結合させることにより、
重合後の構造と異なる構造を有する導電ネットワークを
形成できる。この際、重合により形成された高分子の側
鎖にある前記他方の重合性基が架橋される。
【0063】例えば、ジアセチレン基を有する有機分子
の集合群からなる単分子膜を形成し、その単分子膜に触
媒重合を行い、更に、エネルギービーム照射重合により
架橋を行うと、極めて高い導電率を有するポリアセン型
共役系を含む導電ネットワークを形成することができ
る。
【0064】前記重合を行う工程で触媒重合法、電解重
合法、エネルギービーム重合法よりなる群から選択され
る重合法を適用してもよい。この例によれば、触媒重合
性を有する重合性基(以下、触媒重合性基ともいう)を
有する有機分子からなる有機薄膜には触媒重合法を適用
して、また、電解重合性を有する重合性基(以下、電解
重合性基とも略記する)を有する有機分子からなる有機
薄膜には電解重合法を適用して、また、エネルギービー
ムの照射により重合する重合性基(以下、エネルギービ
ーム重合性基ともいう)を有する有機分子からなる有機
薄膜にはエネルギービーム重合法を適用して、導電ネッ
トワークを形成することができる。効率よく導電ネット
ワークを形成するには、まず触媒重合法及び/又はエネ
ルギービーム重合を行い、最終工程で電解酸化重合によ
り反応を完結させる。
【0065】複数回の架橋工程を採用する場合は、異な
る作用による架橋工程の組合せでもよいが、同じ作用で
あるが反応条件が異なる工程の組合せも含む。例えば、
触媒作用による架橋工程後に第1の種類のエネルギービ
ーム照射による架橋工程を行い、さらに第2の種類のエ
ネルギービーム照射による架橋工程を行う等により導電
ネットワークを形成してもよい。
【0066】前記導電ネットワーク形成工程で重合法と
して前記触媒重合法を適用し、前記重合性基としてピロ
ール基、チェニレン基、アセチレン基又はジアセチレン
基を有する有機分子の集合群よりなる有機薄膜に導電ネ
ットワークを形成する。
【0067】例えば、ピロール基を含む有機分子を用い
てポリピロール型共役系を含む導電ネットワークを形成
でき、チェニレン基を含む有機分子を用いてポリチェニ
レン型共役系を含む導電ネットワークを形成できる。
【0068】前記導電ネットワーク形成工程で前記エネ
ルギービーム重合法を適用し、前記重合性基としてアセ
チレン基又はジアセチレン基を有する有機分子の集合群
からなる前記有機薄膜に導電ネットワークを形成するこ
ともできる。この例によれば、有機薄膜を構成する有機
分子として、アセチレン基を有する有機分子を用いて、
ポリアセチレン型共役系を含む導電ネットワークを形成
できる。また、ジアセチレン基を有する有機分子を用い
て、ポリジアセチレン型共役系又はポリアセン型共役系
を含む導電ネットワークを形成できる。
【0069】前記エネルギービームとして紫外線、遠紫
外線、X線又は電子線を用いてもよい。この例によれ
ば、効率よく導電ネットワークを形成することができ
る。また、エネルギービーム照射重合性基の種類により
それぞれ吸収特性は異なるので、吸収効率の良いエネル
ギービームの種類及びエネルギーを選択すれば反応効率
を向上できる。更に、多くのエネルギービーム照射重合
性基がこれらのエネルギービームに対し吸収性を有する
為、様々な種類のビーム照射重合性基を有する有機分子
からなる有機薄膜に適用できる。
【0070】また、前記エネルギービームとして偏光し
た紫外線、偏光した遠紫外線又は偏光したX線を用い、
前記傾斜処理工程と前記導電ネットワーク形成工程とを
同時に行うこともできる。この例によれば、有機薄膜を
構成する有機分子を所定の方向に傾斜(配向)させると
ともに、有機分子相互を共役結合させることができる。
したがって、工程を簡素化できる。
【0071】第1の電極と第2の電極とが導電ネットワ
ークの方向に配列配置されていると対電極間の導電率が
最も大きくなり、導電ネットワークの方向と直交するよ
うに配列配置されていると導電率が最も小さくなる。最
大の導電率を有する状態に第1の電極と第2の電極とを
形成すれば、導電率の変化域が大きな3端子有機電子デ
バイスを提供できる。
【0072】対電極間の配列方向を調整して、第1の電
極と第2の電極とを配置すれば、電極間の導電率を調整
できる。また、電極の大きさの調整や、対電極間の距離
の調整により、導電率の変化域を調整することもでき
る。
【0073】本発明の3端子有機電子デバイスによれ
ば、第1の電極と第2の電極とを電気的に接続するチャ
ネル部が導電性有機薄膜で形成され、電界の印加により
第1の電極と第2の電極との電極間(対電極間)の導電
率が変化する3端子有機電子デバイスを提供できる。ま
た、導電性薄膜を構成する有機分子が有極性の官能基を
有することにより、印加された電界に対する感度が高
く、応答速度が高速である。したがって、対電極間の導
電率の変化速度が高速である3端子有機電子デバイスを
提供できる。
【0074】第1の電極と第2の電極とが導電ネットワ
ークの方向に配列配置されていると電極間の導電率が最
も大きくなり、導電ネットワークの方向と直交する方向
に配列配置されていると、導電率が最も小さくなる。最
大の導電率を有する状態に第1の電極と第2の電極とを
形成すれば、導電率の変化域が大きな3端子有機電子デ
バイスを提供できる。
【0075】対電極間の配列方向を調整して、第1の電
極と第2の電極とを配置すれば、対電極間の導電率を調
整できる。また、電極の大きさの調整や、対電極間の距
離の調整により、導電率の変化域を調整することもでき
る。
【0076】前記導電ネットワークの導電率は、前記導
電性有機薄膜に印加される電界により変化することもで
きる。この例によれば、導電性有機薄膜に印加される電
界は、第1の電極又は第2の電極と第3の電極との電極
間にに印加する電圧で制御できる。したがって、第1の
電極と第2の電極それぞれを互いに異なる固定電位に設
定しておけば、第3の電極に印加する電圧により対電極
間に流れる電流の制御を行うこともできる。
【0077】前記有極性の官能基は、電界印加により分
極率が大きくなる分極性の官能基であってもよい。
【0078】上記の構成の如く、有極性の官能基が電界
印加により分極率が大きくなる官能基(以下、分極性の
官能基)であると、電界の変化に対する感度が極めて高
くなり、それに伴い応答速度も極めて高速になる。
【0079】前記分極性の官能基は、とくにカルボニル
基、オキシカルボニル基、エステル基またはカーボネイ
ト基であることが好ましい。このような官能基を用いる
と、電界の変化に対して応答速度が極めて高速な3端子
有機電子デバイスを提供できる。
【0080】前記第1の電極と前記第2の電極とが、前
記導電ネットワークの方向に配列配置されていてもよ
い。この例によれば、対電極間の間隔を固定して、様々
な方向に第1の電極と第2の電極を配列配置させた場合
において、対電極間の導電率を最大に設定することがで
きる。したがって、対電極間の導電率の変化域が大きな
有機電子デバイスを提供できる。
【0081】前記導電性有機薄膜は、前記有機分子が単
分子層状に配列し、かつ、前記単分子層内に導電ネット
ワークが形成されている導電単分子層としてもよい。こ
の例によれば、導電性及び導電異方性に優れ、並びに、
重合度が高い導電ネットワークを有する導電単分子層を
含む導電性有機薄膜を提供できる。
【0082】前記導電性有機薄膜は、1層の前記導電単
分子層よりなる、基板上に固定された導電性単分子膜、
又は、前記導電単分子層の累積された基板上に固定され
た導電性単分子累積膜であってもよい。この例によれ
ば、膜厚が薄くても極めて良好な導電性を有する導電性
単分子膜及び導電性単分子累積膜を提供できる。また、
導電性単分子累積膜の場合、各導電性単分子層に導電ネ
ットワークが形成されているので、単分子累積膜の導電
ネットワークの導電率は、積層された単分子膜の層数に
依存する。したがって、導電単分子層の積層数を変更す
ることにより所望の導電率を有する導電性有機薄膜を提
供できる。例えば、同一の導電性単分子層が積層された
導電性累積膜であれば、それに含まれる導電ネットワー
クの導電率はほぼ比例する。
【0083】導電性単分子累積膜において、すべての単
分子層に形成された導電ネットワークの方向が同一であ
る限り、各単分子層ごとに有機分子の配向の傾斜角が異
なっていてもよい。また、すべての単分子層を同一有機
分子から構成するものでなくとも良い。また、各導電性
単分子層ごとに異なる種類の有機分子から構成された導
電性単分子累積膜であってもよい。
【0084】基材上に固定された、導電性単分子膜又は
導電性単分子膜であってもよい。このとき、基材に最近
接する導電性単分子層が基材と化学結合で結合されてい
ると、耐剥離性に優れる。
【0085】前記基板は、ガラスや樹脂フィルムなどの
電気絶縁性の基板、又は任意の基板表面に絶縁膜が形成
された絶縁膜付き基板であっても良い。基板はガラスや
ポリイミド樹脂などであれば表面に活性水素を有するの
で、そのままでも使用できる。活性水素が少ない基板の
場合は、SiCl4,HSiCl3,SiCl3O-(Si
Cl2-O)n-SiCl3(但し、nは0以上6以下の整
数),Si(OH)4,HSi(OH)3,Si(OH)
3O-(Si(OH)2-O)n-Si(OH)3(但し、n
は0以上6以下の整数)などで処理するか、シリカ膜を
形成するか、コロナ放電、プラズマ照射などで基材表面
を活性化することにより活性水素を付与できる。
【0086】基板が電気絶縁性材料の場合は、リーク電
流が小さく、動作安定性に優れる有機電子デバイスを提
供できる。
【0087】本発明の有機導電膜は、電導度が高く、透
明性も高い。この性質を利用した用途としては、電線、
モーター、発電機、コンデンサー(キャパシター)、透
明電極(ITO代替)、半導体装置配線・CPU配線
(電気抵抗により発熱しない)、電磁波シールド、CR
Tガラス表面フィルター(静電気発生防止)等様々な用
途が考えられる。
【0088】(実施の形態1)本実施の形態1において
は、導電性単分子膜を例にし、図1及至図4を参照しな
がら、導電性単分子膜の製造方法及びその構造を説明す
る。図12は有機分子の傾斜方向を説明するための概念
図であり、基材1に結合した有機分子は、有極性官能基
の部分で分子が回転しやすく、配向しやすいことを示し
ている。また、図1A−Bは基材上に形成された導電性
単分子膜を分子レベルにまで拡大した概念図であり、図
1Aはその断面図であり、図1Bはその平面図である。 (1)基材表面に対する有機分子の固定工程 まず、活性水素を含まない有極性の官能基(例えばオキ
シカルボニル基(−OCO−))7及び共役結合で結合
する重合性基5(例えば1−ピロリル基(C44
−))を有する有機分子からなる単分子膜4を、表面に
活性水素を有するか付与した基材1上に形成する(成膜
工程、単分子層形成工程)。有極性の官能基7に活性水
素を含むと、下記に説明する分子末端のクロロシリル基
と分子内反応(自己縮合)してしまい不都合である。
【0089】分子末端がクロロシリル基またはアルコキ
シシリル基を有するシラン系界面活性剤等のような基材
に化学吸着する官能基を末端に有する有機分子である
と、基材表面の活性水素との間で脱塩化水素反応または
脱アルコール反応による脱離反応を起こし、基材に結合
固定され、耐剥離性、耐久性の高い単分子膜を形成でき
る。また、単分子層形成工程後に、有機溶媒に浸漬し
て、未吸着の有機分子を洗浄除去する工程(以下、「洗
浄工程」ともいう。)を行えば、表面に汚れのない単分
子膜4が形成できる。 (2)配向工程 次に、単分子膜を構成する有機分子を所定の方向に配向
させる。配向させるには、下記の方法がある。
【0090】(i) ラビング処理 傾斜処理工程では、図2に示すように、ラビング装置を
用いて単分子膜表面にラビング処理を行い、単分子膜を
構成する有機分子をラビング方向に配向させることがで
きる。図2において、41はラビング布を、42はラビ
ングロールを表す。
【0091】(ii) 偏光処理 図3に示すように、偏光板13を用いて偏光を照射する
ことにより、単分子膜4を構成する有機分子を偏光方向
に配向させることができる。偏光としては、直線偏光が
好ましい。これらの配向方法を適用すれば、精度よく配
向させることができる。
【0092】また、単分子層形成工程より前に、ラビン
グ装置を用いて基材表面にラビング処理を施しておけば
(前処理工程)、単分子膜形成工程で該ラビング処理し
た基材に配向した単分子膜を形成できる。このときの配
向方向は、ラビング方向と同一方向である。
【0093】(iii) 液切り配向処理 上記洗浄工程において、未吸着の有機分子を除去した
後、図4に示すように、有機溶媒44の液面に対して所
定の傾斜角度を保ちつつ基材を引き上げれば、単分子膜
を構成する有機分子を液切り方向に配向させる(以下、
「液切り配向」という。)ことができる。
【0094】(iv) 溶液中での重合工程における分子の
ゆらぎによる配向 上記の3つの配向方法以外に、触媒重合及び/または電
解酸化重合工程における分子のゆらぎによる配向でも良
い。本発明で用いる有機分子は、内部に有極性官能基を
含んでいるので、溶液中であれば、室温(25℃)程度
でも分子が回転などのゆらぎが起こりやすい。このた
め、例えば電解酸化重合工程における分子のゆらぎによ
る配向を利用することができる。
【0095】上記の4つの配向方法を単独で適用しても
よいし、複数の配向方法を適用してもよい。異なる配向
方法を組み合わせて、精度よく配向した状態にある配向
した単分子膜を形成する際には、ラビング方向や偏光方
向や液切り方向が同一方向になるようにすることが好ま
しい。 (3)導電ネットワーク形成工程 次に、単分子膜を構成する分子相互を共役結合させて導
電ネットワークを形成する。
【0096】共役結合で結合する重合性基が重合してな
る共役系を形成できるのであれば、どのような方法であ
ってもよい。単分子膜を構成する分子相互を重合又は架
橋させて共役系を形成することができる。重合法として
は、触媒重合法、電解重合法、エネルギービーム照射重
合法等が利用でき、前記重合法を適用して重合又は架橋
させることができる。このうち、触媒重合法及びエネル
ギービーム照射重合法は、予備ネットワーク形成に使用
すると、重合速度が速いので効率よくネットワークを形
成できる。
【0097】共役結合可能基がエチニル基(アセチレン
基を含む)の場合は、触媒重合及び/又は電子線重合を
採用してポリアセチレンに重合することができる。
【0098】共役結合可能基がジエチニル基(ジアセチ
レン基を含む)の場合は、触媒重合及び/又は光重合を
採用してポリジアセチレン又はポリアセンに重合するこ
とができる。
【0099】共役結合可能基がピロール基又はチオフェ
ン基の場合は、触媒重合及び/又は電解酸化重合を採用
してポリピロール又はポリチオチェンに重合することが
できる。とくに最終工程は電解酸化重合法を行い、導電
ネットワークを完結させるのが好ましい。電解酸化重合
の一例として、反応温度は室温(25℃)程度で良く、
無触媒、純水溶液中で電界をかけることにより行う。も
ちろん反応温度を高くしたりあるいは低くしたり、触媒
を使用したり、水以外の溶液を使用することは任意にで
きる。電解酸化重合法では電極間に電界をかけて重合す
るので、導電ネットワークが完成したか否かは、電極間
の通電状態を観察することにより容易に判断できる。す
なわち、導電ネットワークが完成した場合は、電極間の
膜中を電流が急激に流れる現象が観察できる。
【0100】また、重合又は架橋させる工程を複数回行
うことにより、導電ネットワークを形成してもよい。例
えば、膜材料分子として、共役結合で結合する重合性基
を複数有する有機分子を用いた場合、前記有機分子から
なる単分子層に含まれる複数の平面に導電ネットワーク
を形成することができる。更に、重合又は架橋を複数回
行う際、各回ごとに重合法が異なっていてもよい。
【0101】また、単分子膜を構成する有機分子がエネ
ルギービーム照射重合性基を有する場合、偏光を照射す
れば、単分子膜を配向させると同時に、導電ネットワー
クを形成することも可能である。
【0102】本実施形態において、有極性官能基7を分
子の中間部分に存在させると、その部分で分子は自由回
転しやすので、配向処理の際に導電性基5が一定の方向
に配向しやすく、かつ、最終工程における電解酸化重合
の際に他の分子の導電性基5が近接して重合し、高分子
化しやすくなる。
【0103】図1A−Bは、前記のようにして得られた
分子膜4であり、基材1上に共有結合され、導電性基5
が共役結合によりポリマー化して導電ネットワークを形
成している状態を示している。
【0104】(実施の形態2)単分子膜を形成する材料
分子として、前記活性水素を含まない有極性官能基、例
えばエステル基(−COO−)、カルボニル基(−CO
−)及びカーボネイト(−OCOO−)基から選ばれる
少なくとも一つの基である有極性の官能基を有する有機
分子を用いてもよい。これ以外は上記実施の形態1と同
様にして、有極性の官能基を有する有機分子の集合群か
らなる単分子膜であって、その単分子膜には、前記有機
分子の集合群を構成する分子相互が共役結合で所定の方
向に連なる導電ネットワークを各単分子層内に有する電
界応答型導電性単分子膜が製造できる。
【0105】(実施の形態3)本実施の形態3は、電界
応答型導電性有機薄膜が単分子累積膜である場合につい
て、その製造方法及び構造を説明する。必要に応じて図
5A−Dを参照する。
【0106】まず、導電性単分子累積膜の製造方法につ
いて説明する。主に、下記の3種の方法で導電性単分子
累積膜の形成が可能である。 (1)第1の製造方法は、単分子層を形成する工程を繰
り返して単分子層を積層させた後、各単分子層を所定の
方向に一括配向させ、続いて各単分子層内に導電ネット
ワークを形成する方法である。 (2)第2の製造方法は、単分子層を形成する工程と、
続いて単分子層を配向させることを繰り返して配向した
単分子累積層を形成した後、その配向した単分子累積膜
の各単分子層に導電ネットワークを一括形成する方法で
ある。 (3)第3の製造方法は、単分子層を形成し、続いてそ
の単分子層を配向させ、更に続いてその単分子層に導電
ネットワークを形成することを繰り返し行う方法であ
る。
【0107】単分子層の配向方法及び単分子層内の導電
ネットワーク形成方法としては、上記実施の形態1の方
法が同様に利用できる。ただし、配向処理法は重合前に
ついてのみ有効な配向法である。
【0108】上記3種の製造方法は、どの様な方法で単
分子層を配向させるか、どの様な方法で導電ネットワー
クを形成させるか等により最適化されることが好まし
い。更に、導電性単分子層を何層積層させた導電性単分
子累積膜を形成するか等により、いずれの製造方法を適
用するかを選択することが好ましい。
【0109】積層数の多い導電性単分子累積膜を形成す
るのであれば、第2の製造方法若しくは第3の製造方法
を適用することが好ましい。第1の方法であれば各単分
子層ごとの導電性の均一性を保つことが難しくなる。
【0110】第1の製造方法を適用する場合、配向方法
としては光配向法又はラビング配向法を適用し、かつ、
重合法としてはエネルギービーム照射重合法又は電界重
合法が好ましい。更に、積層数の増加と共に、配向方法
として光配向法の適用が有効となる。重合法として触媒
重合法を適用すると、基材側下層の単分子層に導電ネッ
トワークを形成することが困難となる。
【0111】第2の製造方法を適用する場合も、第1の
製造方法と同様であるが、配向を行う工程が増すため、
配向処理工程(傾斜処理工程)では光配向法を適用する
ことが簡便である好ましい。
【0112】第3の製造方法を適用する場合は、すべて
の配向方法及びすべての重合方法が可能である。工程が
多いため、製造効率は低くかつ製造コストは高くなる
が、導電性に優れる単分子層からなり、かつ、各単分子
層ごとの導電性の均一性に優れる導電性単分子累積膜が
形成できる。
【0113】上記一連の工程により、電界応答性の官能
基を有する有機分子の集合群からなる単分子累積膜であ
って、その単分子累積膜には、前記有機分子の集合群を
構成する分子相互が共役結合で所定の方向に連なる導電
ネットワークを有する電界応答型導電性単分子累積膜が
製造できる。
【0114】次に、上記のようにして形成された導電性
単分子累積膜の構造例を図5A−Dに示す。図5A−D
は単分子累積膜の構造例を示す分子レベルまで拡大した
概念図である。図5Aは化学吸着法を用いた累積膜を示
し、各単分子層の配向方向が同一方向であるX型導電性
単分子累積膜の断面図である。図5Bは1層目が化学吸
着膜、2層目以降がラングミュアー−ブロジェット法を
用いて形成された累積膜であり、各単分子層の配向方向
が同一方向であるY型導電性単分子累積膜の断面図であ
る。図5Cはすべて化学吸着法によって形成された累積
膜であり、各単分子層ごとに配向方向が異なるX型導電
性単分子累積膜の断面図である。図5Dはすべて化学吸
着法によって形成された累積膜であり、各単分子層ごと
に2つの配向方向のいずれかに配向したX型導電性単分
子累積膜の断面図である。図5A−Dにおいて、1は基
材、4は単分子層、5は共役結合による導電性基、7は
電界応答性官能基である。図5A−Dの各種の導電性単
分子累積膜の各単分子層4の平面図は図1Bと同様であ
る。
【0115】(実施の形態4)3端子有機電子デバイス
の製造方法及び構造を図6A−Bに基づいて説明する。
図6A−Bは、3端子有機電子デバイスの構造の例を模
式的に説明した説明図である。
【0116】まず、絶縁性の基板上、又は任意の基板1
1表面に絶縁膜18が形成された絶縁膜付き基板上に第
3の電極17を形成する。次に、直接又は絶縁膜19を
介して前記第3の電極13を覆うように、有極性の官能
基及び共役結合で結合する重合性基を有する有機分子の
集合群から成る有機薄膜を形成する。次に、その有機薄
膜を構成する有機分子を傾斜させ、次に、有機薄膜を構
成する分子相互を共役結合させ導電ネットワーク15を
形成する。次に、前記導電ネットワーク15に接触する
ように、互いに離隔し且つ第3の電極17とも離隔した
第1の電極12と第2の電極13とを形成すれば3端子
有機電子デバイスが製造できる。
【0117】これにより、基板上に形成された、第1の
電極12と、前記第1の電極12と離隔した第2の電極
13と、前記第1の電極12と第2の電極13を電気的
に接続する導電性有機薄膜14と、基板11と有機薄膜
14の間に挟まれ、それぞれと絶縁された第3の電極1
7と、を備えた3端子有機電子デバイスであって、前記
第3の電極17は、前記第1の電極又は前記第2の電極
と前記第3の電極間の電圧印加により有機薄膜14に作
用させる電界を制御できる電極であり、有機薄膜14
は、有極性の官能基を有する有機分子の集合群からな
り、有機分子の集合群を構成する分子相互が共役結合し
た導電ネットワーク5を有する3端子有機電子デバイス
が提供できる。
【0118】図6Aは第1の電極12と第2の電極13
が、基板11上の絶縁膜18の表面と導電性単分子膜1
4の側面に接した構造の3端子有機電子デバイスであ
り、図6Bは第1の電極12と第2の電極13が導電性
単分子膜14表面に形成された構造の3端子有機電子デ
バイスである。第1の電極12及び第2の電極13の形
成において、電極を形成する物質を蒸着した後、フォト
レジストでマスクパターンを形成し、エッチングにより
所定の第1の電極2と第2の電極3を形成する場合、異
なるマスクパターンを用いることにより図6A又は図6
Bの構造の3端子有機電子デバイスを製造できる。図6
A−Bにおいて、8は有極性の官能基、15は電解重合
により共役結合した基である。
【0119】図6Aに示された構造であれば、任意の位
置に重合性基を含む有機分子が利用でき、また分子に重
合性基が複数存在する場合も第1と第2の電極間を電気
的に接続する複数層の導電ネットワークを形成できる。
さらに単分子累積膜であれば、各単分子層に導電ネット
ワークを形成できる。
【0120】図6Bに示された構造であれば、導電ネッ
トワークが基板と反対側の導電性単分子膜14表面に存
在していないと、導電ネットワーク5と電極12,13
との間の電気伝導が悪くなる。したがって、材料物質と
しては分子の端末に重合性基を有する有機分子を用いた
方がよい。
【0121】このような有機分子を用いた場合、導電性
単分子膜14の導電ネットワークと電極との接触面積を
大きくとれる為、接点抵抗を低減することが可能とな
り、単分子膜であっても良好な導電性を確保できる利点
がある。
【0122】さらに高い導電性が必要であれば、第1の
電極12と第2の電極13の電極間に導電ネットワーク
を有する被膜を形成することができる。例えば、前記前
記対電極工程後に、電解重合性の官能基を含む物質を溶
かした有機溶媒中に浸漬し、第1の電極12と第2の電
極13の電極間に第1の電圧を印加し且つ第1の電極1
2又は第2の電極13と有機溶媒に接触し有機薄膜の上
方に配置された外部電極との電極間に第2の電圧を印加
すれば、第1の構造の導電ネットワークを有する単分子
膜又は単分子累積膜の表面にさらに被膜が形成され且つ
前記被膜を構成する分子相互は電解重合して第2の構造
の導電ネットワークが形成される。
【0123】また、被膜を形成する際、電解重合性の官
能基を含む物質を塗布し、第1と第2の電極間に電圧を
印加すれば、同様に導電ネットワークを有するポリマー
膜状の被膜を形成できる。
【0124】有機薄膜を構成する有機分子が単分子層状
に配列した単分子膜を含まない有機薄膜であれば、図6
Aまたは図6Bのどちらの構造であっても上記のような
差はない。
【0125】次に、この3端子有機電子デバイスの電界
印加による導電率の時間変化及びスイッチング動作を図
7A−Bに基づいて説明する。図7Aは、第3の電極1
7に電圧を印加した場合の導電率の変化を定性的に示し
た模式図である。第3の電極13に印加した電圧は有機
薄膜に作用された電界に比例すると考えると、横軸とし
て印加電界又は第3の電極17の印加電圧をとることは
等価であるので以下、印加電圧を用いて説明する。また
導電ネットワークの導電率の変化は、第1の電極12と
第2の電極13との間に一定電圧を印加した状態での電
流の変化で説明する。
【0126】導電ネットワークの導電率は第3の電極1
7に印加された電圧により変化し、印加電圧の増加とと
もにある一定の値に収束していくことがわかる。つまり
第3の電極に電圧が印加されていないときの導電率と収
束した導電率との範囲内で、第3の電極の印加電圧で導
電率を制御できる。
【0127】図7Aにおいて、電圧印加中の電流が0A
の場合を示しているが、電圧印加中のオン電流又は電圧
印加されていないオフ電流のいずれか一方が0Vの場合
に限定されない。また、電圧印加により電流値が減少す
る場合を例示したが、電流が増加するものであっても良
い。これらは有機薄膜の構成や導電ネットワークの構造
等に依存する。
【0128】電圧を印加していない第1の導電率を有す
る安定状態と所定の電圧を印加した第2の導電率を有す
る安定状態との状態間の移行により、導電ネットワーク
の導電率のスイッチングが可能となる。
【0129】図7Bは3端子有機電子デバイスのスイッ
チング動作の概念図であり、第1の電極12と第2の電
極13との電極間に電圧を印加した状態での、所定の電
圧印加状態(VON)のオン電流(IV=ON)と電圧を印加
していない状態(VOFF)のオフ電流(IV=OFF)がスイ
ッチング動作することを示している。したがって、図7
Bから、第3の電極17に印加される所定の電圧のオン
・オフで、電流をスイッチングできることがわかる。
【0130】電圧のオン・オフによるスイッチングの場
合を示したが、第3の電極17に第1の電圧を印加した
場合の電流値と第2の電圧を印加した場合の電流値との
間のスイッチングも可能である。
【0131】本発明の導電性有機薄膜は電界制御の可変
抵抗としても利用できる。
【0132】
【実施例】以下、実施例に基づいて、本発明の内容を具
体的に説明する。本発明は下記の実施例により限定され
ない。下記の実施例において、単に%と記載しているの
は重量%を意味する。
【0133】(実施例1)まず、導電ネットワークが形
成可能な1−ピロリル基(C44N−)と、分極性の官
能基であるオキシカルボニル基(−OCO−)と、基板
表面の活性水素(例えば水酸基(−OH))と脱塩化水
素反応するトリクロロシリル基(−SiCl3)とを有
する下記化学式(13)の物質(PEN:6-pyrrolylhe
xyl-12,12,12-trichloro-12-siladodecanoate)を下記
工程1〜5にしたがって合成した。
【0134】
【化13】
【0135】I.前記化学式(1)の物質(PEN)の
合成方法工程1 6-ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘ
キサンの合成 500mlの反応容器に6-ブロモ-1-ヘキサノール197.8g(1.0
9mol)を仕込み、5℃以下に冷却した。これにジヒドロピ
ラン102.1g(1.21mol)を10℃以下の温度で滴下した。滴
下終了後、室温に戻して1時間攪拌させた。反応により
得られた残渣をヘキサン/IPE(ジイソプロピルエーテ
ル)=5/1にてシリカゲルカラム精製して263.4gの6-
ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを得
た。収率は90.9%であった。工程1の反応式を下記式
(14)に示す。
【0136】
【化14】
【0137】工程2 N−[6−(テトラヒドロピラニ
ルオキシ)ヘキシル]ピロールの合成 アルゴン気流下、2リットルの反応容器にピロール38.0
g(0.567mol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)200m1
を仕込み、5℃以下に冷却した。これに1.6Mのn−ブチ
ルリチウムヘキサン溶液354ml(0.567mol)を10℃以下
で滴下した。同温度で1時間攪拌させた後、ジメチルス
ルホキシド600mlを加えてTHFを加熱留去して溶媒置
換した。次に、6-ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキサン165.2g(0.623mol)を室温にて滴下した。滴
下後、2時間、同温度で攪拌させた。
【0138】反応混合物に水600molを加え、ヘキサン抽
出し、有機層を水洗した。無水硫酸マグネシウムにて乾
燥後、溶媒留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル=4
/1にてシリカゲルカラム精製して107.0gのN−[6−
(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロールを
得た。収率75.2%であった。工程2の反応式を下記
式(15)に示す。
【0139】
【化15】
【0140】工程3 N-(6-ヒドロキシヘキシル)-ピ
ロールの合成 1リットルの反応容器に上記で得られたN-[6-(テト
ラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロール105.0g
(0.418mol)、メタノール450ml、水225ml、濃
塩酸37.5mlを仕込み、室温にて6時間攪拌させ
た。反応混合物を飽和食塩水750mlに注加し、IP
E抽出した。有機層を飽和食塩水洗浄し、無水硫酸マグ
ネシウムにて乾燥させ、溶媒留去した。得られた残渣を
n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1にてシリカゲルカラ
ム精製し、63.1gのN-(6-ヒドロキシヘキシル)-ピロー
ルを得た。収率90.3%であった。工程3の反応式を
下記式(16)に示す。
【0141】
【化16】
【0142】工程4 N-[6-(10-ウンデセノイル
オキシ)ヘキシル]−ピロールの合成 2リットルの反応容器にN-(6-ヒドロキシヘキシル)-
ピロール62.0g(0.371mol)と、dryピリジン33.2
g(0.420mol)、dryトルエン1850ml
を仕込み、20℃以下で10-ウンデセノイルクロリド75.
7g(0.373mol)のdryトルエン300m1溶液
を滴下した。滴下時間は30分であった。その後、同温
度にて1時間攪拌させた。反応混合物を氷水1.5リッ
トルに注加し、1N塩酸で酸性にした。酢酸エチル抽出
し、有機層を水洗、飽和食塩水洗浄し、無水硫酸マグネ
シウムにて乾燥させ、溶媒を除去し、128.2gの粗
体を得た。これをn−ヘキサン/アセトン=20/1に
てシリカゲルカラム精製し、99.6gのN-[6-(1
0-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-ピロールを得
た。収率80.1%であった。工程4の反応式を下記式
(17)に示す。
【0143】
【化17】
【0144】工程5 PENの合成 100mlキャップ付き耐圧試験管にN-[6-(10-
ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-ピロール2.0g
(6.0×10-3mo1)、トリクロロシラン0.98g
(7.23×10-3mol)、H2PtC16・6H20の5%イソ
プロピルアルコール溶液0.01gを仕込み、100℃
で12時間反応させた。この反応液を活性炭で処理した
後、2.66×103Pa(20Torr)の減圧下で低沸点成分を留去
した。2.3gのPENを得た。収率81.7%であっ
た。工程5の反応式を下記式(18)に示す。
【0145】
【化18】
【0146】なお、末端のトリクロロシリル基をトリメ
トキシシリル基に置換するには、前記化学式1のPEN
を3モル倍のメチルアルコールと室温(25℃)で攪拌
し、脱塩化水素反応させる。必要に応じて前記塩化水素
は水酸化ナトリウムを加えて塩化ナトリウムとして分離
する。
【0147】得られたPENについて、図15にNMR
のチャート、図16にIRのチャートをそれぞれ示す。 (NMR) (1)測定機器:装置名AL300(日本電子株式会社
製) (2)測定条件:1H−NMR(300MHz)、サン
プル30mgをCDCl3に溶解し測定。 (赤外線吸収スペクトル:IR) (1)測定機器:装置名270−30型(株式会社日立
製作所製) (2)測定条件:neat(サンプルを2枚のNaCl板に挟み
測定) II.分子膜の形成方法 前記化学式(1)のPENを用い、脱水したジメチルシ
リコーン溶媒で1wt%に薄めて化学吸着液を調製した。
【0148】次に、絶縁性のポリイミド基板31(また
は導電性のメタル基板表面に第1の絶縁膜、例えばシリ
カ膜38を形成しても良いし、ガラス板を用いても良
い。)の表面にアルミニウム(Al)を蒸着し、フォト
リソグラフィ法を適用し長さが15μmで幅が40μm
の第3の電極23をエッチング形成した。さらに前記A
l製の第3の電極37を電解酸化して表面に絶縁性のア
ルミナ(Al23)膜39を形成した(図8)。
【0149】次に、単分子膜を形成する部分を残してレ
ジストで覆われたポリイミド基板31を室温(25℃)
の化学吸着液に1時間浸漬して、基板表面で脱塩化反応
させ、レジスト開口部に選択的に薄膜を形成した。次
に、基板上に残った未反応の前記物質を無水クロロフォ
ルムで洗浄除去し、続いて前記フォトレジストのマスク
パターンを除去して、前記物質よりなる単分子膜34a
を選択的に成膜した(図9)。
【0150】このとき、開口部のポリイミド基板31表
面(シリカ膜38とAl23膜39表面)には活性水素
を含む水酸基が多数存在するので、前記物質のクロロシ
リル基(−SiCl)が水酸基と塩化水素反応を生じて
ポリイミド基板31表面に共有結合した下記化学式(1
9)で示される分子で構成された単分子膜34が形成さ
れた。
【0151】
【化19】
【0152】III.分子膜の配向方法 次に、単分子膜34aが形成されたポリイミド基板31
をクロロフォルム溶液中に浸漬して洗浄し、クロロフォ
ルム溶液から引き上げる際、第1の電極から第2の電極
に向かう方向と平行に液切りできるようにポリイミド基
板31を垂直に立てた状態で引き上げ、第1の電極から
第2の電極に向かって一次配向した単分子膜34bを形
成した(図10)。 IV.電極の形成方法 次に、全面にニッケル薄膜を蒸着形成した後、ホトリソ
グラフィ法を適用して、ギャップ間距離が10μm、長
さが30μmの第1の電極22と第2電極23とを第3
の電極37を挟むようにエッチングして形成した。 V.電解重合法 その後、純水溶液中で、電極間に5V/cmの電解を印
加し電解酸化重合させた。電解酸化重合の条件は、反応
温度25℃、反応時間5時間であった。これにより、電
解重合して導電ネットワーク35を第1の電極22及び
第2の電極23の電極間を電気的に接続した。このと
き、電界の方向に沿って共役結合が自己組織的に形成さ
れて行くので、完全に重合が終われば、第1の電極22
と第2の電極23とは導電ネットワーク35で電気的に
接続されていることになる。最後に、第3の電極37を
基板31側から取り出して、3端子有機電子デバイスを
製造できた(図11)。得られた有機導電膜34Cの膜
厚は約2.0nm、ポリピロール部分の厚さは約0.2
nm、有機導電膜34Cの長さは10mm、幅100μ
mであった。
【0153】下記化学式(20)に得られた有機導電膜
ポリマーの1ユニットを示す。
【0154】
【化20】
【0155】VI.測定 この3端子有機電子デバイスでは、第1の電極22と第
2の電極23との間は、ポリピロール型の導電ネットワ
ーク35で接続されている。得られた有機導電膜34C
を、市販の原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインス
ツルメント社製、SAP 3800N)を用い、AFM
−CITSモードで、電圧:1mV、電流:160nA
の条件における電導度ρは、室温(25℃)においてド
ープなしでρ>1×107S/cmであった。これは、
前記電流計1×107S/cmまでしか測定することが
できず、針がオーバーして振り切れてしまったからであ
る。電導度の良好な金属である金は室温(25℃)にお
いて5.2×105S/cm、銀は5.4×105S/c
mであることからすると、本実施例の有機導電膜の電導
度ρは驚くべき高い導電性である。前記値からすると、
本発明の有機導電膜は、「超金属導電膜」ということが
できる。
【0156】本発明において、有機導電膜の電導度ρを
下げることは、導電ネットワークを不完全なものとした
り、分子の配向度を低下させることにより、容易にでき
る。
【0157】次に前記で得られた有機導電膜に対し、第
1の電極22と第2の電極23との間に1Vの電圧を印
加し、かつ、第1の電極22と第3の電極27との間の
電圧を0Vにすると、1mA程度の電流が流れた。
【0158】次に、第1の電極22と第2の電極23と
の間に1Vの電圧を印加した状態で、第1の電極22と
第3の電極37との間に5Vの電圧を印加すると、第1
の電極22と第2の電極23との電極間の電流値がほぼ
0A(ゼロアンペア)となった。その後、第1の電極2
2と第3の電極27との間の電圧を5Vから0Vにもど
すと元の導電率が再現された。
【0159】このような導電性の低下は、第3の電極3
7と第1の電極22との電極間に5Vの電圧を印加した
際、有極性の官能基であるオキシカルボニル基(−OC
O−)の分極が大きくなることにより、ポリピロール型
の共役系が歪み導電ネットワーク35の導電率が低下す
ることにより生じたと考えられる。
【0160】すなわち、第1の電極22と第3の電極3
7との間に印加された電圧で、前記導電ネットワークの
導電率を制御して第1の電極22と第2の電極23との
間に流れる電流をスイッチングできた。
【0161】(実施例2)以下に示す合成工程によっ
て、下記化学式(21)に示す[6-[(3-thienyl)hexyl-1
2,12,12-trichloro-12-siladodecanoate]](TEN)を
合成した。
【0162】
【化21】
【0163】(1)工程1 6−ブロモ−1−(テトラ
ヒドロピラニルオキシ)ヘキサンの合成 下記化学式(22)に示す反応を行い6−ブロモ−1−
(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを合成した。
まず、500mLの反応容器に6−ブロモ−1−ヘキサ
ノール197.8g(1.09mol)を仕込み、5℃
以下に冷却した後、これに、ジヒドロピラン102.1
g(1.21mol)を10℃以下で滴下した。滴下終
了後、室温に戻して1時間攪拌した。
【0164】
【化22】
【0165】得られた残渣をシリカゲルカラムに供し、
溶出溶媒としてヘキサン/ジイソプロピルエーテル(I
PE)混合溶媒(体積比5:1)を用いて精製し、26
3.4gの6−ブロモ−1(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキサンを得た。この際の収率は90.9%であっ
た。 (2)工程2 3-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘ
キシル]チオフェンの合成 下記化学式(23)に示す反応を行い3-[6-(テトラヒド
ロピラニルオキシ)ヘキシル]チオフェンを合成した。
【0166】
【化23】
【0167】まず、アルゴン気流下、2Lの反応容器に
削ったマグネシウム25.6g(1.06m。1)を仕
込み、さらに、6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニ
ル)ヘキサン140.2g(0.529mol)を含む
ドライテトラヒドロフラン(ドライTHF)溶液4Lを
室温で滴下した。この際の滴下時間は1時間50分であ
って、発熱反応を起した。その後、室温で1.5時間攪
拌して、グリニャール試薬を調製した。
【0168】つぎに、アルゴン気流下、新たな2L反応
容器に3−ブロモチオフェン88.2g(541mo
l)とジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)ニッ
ケル(II)3.27gとを仕込み、前記調製したグリニ
ャール試薬全量を室温で滴下した。この際、前記反応容
器内の温度を室温(50℃以下)に保ち、滴下時間は、
30分とした。滴下後、室温で23時間攪拌した。
【0169】この反応混合物を、0℃に保った0.5N
HCl 1.3Lに添加し、IPE抽出を行った。得
られた有機層を水洗し、さらに飽和食塩水で洗浄した
後、無水硫酸マグネシウムを添加して乾燥させた。そし
て、溶媒を留去し、3-[6-(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体199.5gを得
た。この粗体は、精製せずに次の工程3に供した。 (3)工程3 3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオ
フェンの合成 下記化学式(24)に示す反応を行い3−(6−ヒドロ
キシヘキシル)−チオフェンを合成した。
【0170】
【化24】
【0171】1Lの反応容器に、前記工程2で得られた
未精製3-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]−
チオフェン199.5g、メタノール450mL、水2
25mLおよび濃塩酸37.5mLを仕込み、室温で6
時間攪拌して反応させた。この反応混合物を飽和食塩水
750mLに添加し、IPE抽出を行った。そして、得
られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、さらに無水硫酸マ
グネシウムで乾燥させた後、溶媒留去して3−(6−ヒ
ドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体148.8
gを得た。この粗体をシリカゲルカラムに供し、溶出溶
媒としてn−へキサン/酢酸エチル混合溶媒(体積比
3:1)を用いて精製し、84.8gの3−(6−ヒド
ロキシヘキシル)−チオフェンを得た。この際の収率
は、工程2で得られた3-[6-(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体に対して87.0
%であった。 (4) 3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チ
オフェンの合成 下記化学式(25)に示す反応を行い3−(6−(10
−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル)−チオフェンを合
成した。
【0172】
【化25】
【0173】2Lの反応容器に、工程3で得られた3−
(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体8
4.4g(0.458mol)、ドライピリジン34.
9g(0.442mol)およびドライトルエン145
0mLを仕込み、20℃以下の状態で、さらに10−ウ
ンデセノイルクロリド79.1g(0,390mol)
を含有するドライトルエン溶液250mLを滴下した。
滴下時間は、30分とし、その後、同じ温度で23時間
攪拌して反応させた。得られた反応混合物を氷水2Lに
添加し、さらに1N塩酸75mLを加えた。この混合液
を酢酸エチル抽出して、得られた有機層を水洗し、さら
に飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを添
加して乾燥させる、溶媒を除去することにより、3-[6-
(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェンを含
有する粗体161.3gを得た。この粗体をシリカゲル
カラムに供し、溶出溶媒としてn−ヘキサン/アセトン
混合溶媒(体積比20:1)を用いて精製し、157.
6gの3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオ
フェンを得た。この際の収率は、前記工程3で得られた
3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗
体に対して98.2%であった。 (5)工程5 TENの合成 下記化学式(26)に示す反応を行いTENを合成し
た。
【0174】
【化26】
【0175】(a)まず、100mLのキャップ付き耐
圧試験管に、3-[6-(10−ウンデセノイルオキシ)ヘ
キシル]-チオフェン10.0g(2.86×1012m
ol)、トリクロロシラン4.65g(3.43×10
4mol)およびH2PtC16・6H20を5重量%の
割合で含有するイソプロピルアルコール溶液0.05g
を仕込み、100℃で14時間反応させた。この反応液
を活性炭で処理した後、減圧下で低沸点成分を留去し
た。減圧条件は、2.66×103Pa(20Torr)とした。
【0176】(b)同様に、100mLキャップ付き耐
圧試験管に、3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシ
ル]-チオフェン39.0g(1.11×10-1mo
l)、トリクロロシラン18.2g(1.34×10-1
mol)、H2PtCl6・6H20を5重量%の割合で
含有するイソプロピルアルコール溶液0.20gを仕込
み、100℃で12時間反応させた。この反応液を活性
炭で処理した後、減圧下で低沸点成分を留去した。減圧
条件は前述のとおりである。
【0177】(a)と(b)で得られた残渣を混合し、
これにアルゴンガスを1時間通して塩酸ガスを除去する
ことによって、65.9gの目的物TENを得た。この
際のTENの収率は、前記工程4で得られた3-[6-(10-
ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェンを含む粗
体に対して97.2%であった。
【0178】得られたTENについて、IR分析および
NMR分析を行った。以下にその条件および結果を示
す。なお、図17にNMRのチャート、図18にIRの
チャートをそれぞれ示す。 (NMR) (1)測定機器:装置名AL300(日本電子株式会社
製) (2)測定条件:1H−NMR(300MHz)、サン
プル30mgをCDCl3に溶解し測定。 (赤外線吸収スペクトル:IR) (1)測定機器:装置名270−30型(株式会社日立
製作所製) (2)測定条件:neat(サンプルを2枚のNaCl板に挟み
測定) 得られたTENを用いて実施例1と同様にポリチェニレ
ンからなる導電性分子膜を電解重合法により形成した。
得られた有機導電膜の膜厚は約2.0nm、ポリチェニ
レン部分の厚さは約0.2nm、有機導電膜の長さは1
0mm、幅100μmであった。また、得られた有機導
電膜は可視光線のもとでは透明であった。
【0179】下記化学式(27)に得られた有機導電膜
ポリマーの1ユニットを示す。
【0180】
【化27】
【0181】この有機導電膜を、実施例1と同様に、市
販の原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツルメ
ント社製、SAP 3800N)を用い、AFM−CI
TSモードで、電圧:1mV、電流:160nAの条件
で電導度を測定した。その結果、電導度ρは、室温(2
5℃)においてドープなしでρ>1×107S/cmで
あった。
【0182】(実施例3)本実施例においては、液切り
配向処理後に第1の電極22から第2の電極23に向か
う方向を偏光方向とする偏光した可視光を500mJ/
cm2程度照射すると、配向性の高い単分子膜24bが
得られた。また、このとき、偏光方向を第1の電極22
から第2の電極23に向かう方向と45°で交叉する方
向に設定して同様の照射を行うと、単分子膜を構成する
有機分子は、当初の引き上げ方向から動き、偏光方向と
略平行方向に配向した。
【0183】このように、液切り配向処理及び偏光照射
による配向処理を施した後、導電ネットワーク形成工程
を行うと極めて導電性に優れた導電性単分子膜24cを
形成できた。
【0184】ここで、有極性の官能基が分極性のオキシ
カルボニル基であると、スイッチングを極めて高速で行
えた。オキシカルボニル基以外に、カルボニル基、エス
テル基等の官能基を有する分子を使用できた。
【0185】また、導電ネットワーク35としてポリア
セチレン型、ポリジアセチレン型、ポリアセン型、ポリ
ピロール型、ポリチェニレン型の共役系が使用でき、導
電率が高かった。また、導電ネットワークを形成する共
役結合で結合する重合性基として、電解重合性の官能基
としてのピロール基以外に、同じくチェニレン基が利用
できた。なお、重合方法を変えれば、アセチレン基、ジ
アセチレン基を有する物質も利用できた。
【0186】単分子膜又は単分子累積膜の作製には、化
学吸着法以外に、ラングミュアーブロジェット法を使用
できた。
【0187】また、有機薄膜を重合する工程の前に、第
1の電極22と第2の電極23を形成する工程を行う
と、導電ネットワークの形成に際して、第1の電極22
と第2の電極23を電解重合に利用できた。すなわち、
電解重合性の官能基としてピロール基又はチェニレン基
を有する有機分子の集合群からなる有機薄膜の第1の電
極22と第2の電極23との電極間に電圧を印加し第1
の電極22と第2の電極23との電極間の有機薄膜を選
択的に電解重合できた。
【0188】基板上に第3の電極37とピロール基又は
チェニレン基を有する有機分子の集合群からなり配向し
た単分子膜34bと、第1の電極と、第2の電極と、を
形成した後に、ピロール基又はチェニレン基を含む物質
を溶かした有機溶媒中に浸漬して、第1の電極22と第
2の電極23との間に第1の電圧を印加し、且つ第1の
電極22又は第2の電極23と前記有機溶媒に接触し、
配向した単分子膜34bの上方に配置された外部電極と
の電極間に第2の電圧を印加して、配向した単分子膜3
4bの表面に被膜を形成すると同時に単分子膜と被膜の
それぞれにポリピロール型又はポリチェニレン型の導電
ネットワークを形成できた。この場合、有機電子デバイ
スは、それぞれに導電ネットワークを有する単分子膜層
とポリマー膜状の被膜層とからなるチャネル部を有す
る。
【0189】また、基板上に第3の電極37とピロール
基又はチェニレン基を有する有機分子の集合群からなる
配向した単分子膜34bと第1の電極22と第2の電極
23とを形成し、配向した単分子膜34bにポリピロー
ル又はポリチェニレン型の第1の構造の導電ネットワー
クを形成した後に、ピロール基又はチェニレン基を含む
物質を溶かした有機溶媒中に浸漬して、第1の電極22
と第2の電極23との間に第1の電圧を印加し、且つ前
記第1の電極22又は第2の電極23と前記有機溶媒に
接触し導電性単分子膜34cの上方に配置された外部電
極との間に第2の電圧を印加して、導電ネットワークが
形成された単分子膜34cの表面にさらに被膜を形成す
ると同時に被膜にポリピロール型又はポリチェニレン型
の第2の構造の導電ネットワークを形成できた。この場
合、有機電子デバイスは、それぞれに導電ネットワーク
を有する単分子膜層とポリマー膜状の被膜層とからなる
チャネル部を有する。
【0190】導電ネットワークの形成において、電解重
合以外では、重合性基として触媒重合性の官能基である
ピロール基、チェニレン基、アセチレン基、ジアセチレ
ン基等を有する有機分子の集合群からなる単分子膜又は
単分子累積膜の分子相互を触媒重合して、導電ネットワ
ークを形成できた。また、重合性基としてアセチレン
基、ジアセチレン基等のビーム照射重合性基を有する有
機分子の集合群からなる単分子膜又は単分子累積膜に、
紫外線、遠紫外線、電子線又はX線等のエネルギービー
ムを照射して、有機分子相互を重合し導電ネットワーク
を形成できた。
【0191】(実施例4)上記実施例1と同様の方法
で、複数の3端子有機電子デバイスを液晶の動作スイッ
チとしてアクリル基板表面に配列配置してアレイ基板を
作製し、さらにその表面に配向膜を作製した。次に、ス
クリーン印刷法を用いてシール接着剤を封口部を除いて
パターン形成した後、プレキュアーしてカラーフィルタ
ー基板の配向膜面を向かい合わせにし、貼り合わせて圧
着し前記パターン形成された接着剤を硬化させて、空セ
ルを作製した。最後に、空セルに所定の液晶を真空注入
した後、液晶を封止することにより液晶表示装置を製造
できた。ここで、基板上に3端子有機電子デバイスを形
成してTFTアレイ基板を作製すること以外は、公知技
術を利用した。
【0192】この方法では、TFTアレイの製造におい
て、基板加熱の必要がないので、アクリル基板のような
ガラス転移(Tg)点の低い基板を用いても十分に高画
質なTFT型液晶表示装置が製造できた。
【0193】(実施例5)上記実施例1と同様の方法
で、複数の3端子有機電子デバイスを液晶の動作スイッ
チとしてアクリル基板表面に配列配置してTFTアレイ
基板を作製した。その後、公知の方法を用いて前記3端
子有機電子デバイスのに接続される画素電極を形成し、
TFTアレイ基板上に電界が印加されると発光する蛍光
物質からなる発光層を形成し、TFTアレイ基板に対向
する透明共通電極を発光層上に形成して、エレクトロル
ミネッセンス型カラー表示装置を製造できた。ここで、
基板上に3端子有機電子デバイスを形成してアレイ基板
を形成すること以外は、公知技術を利用した。
【0194】発光層を形成する際、赤、青、緑色の光を
発光する3種類の素子をそれぞれ所定の位置に形成する
ことにより、エレクトロルミネッセンス型カラー表示装
置が製造できた。各色要素の配列は公知技術を利用し
た。
【0195】(実施例6)本実施例は、上記実施例1に
記載のPEN(化学式13)を用い、基材として直径1
mmのガラスファイバーを用い、その表面に(化学式1
9)の単分子膜を形成し、溶媒から引き上げる際に分子
を配向させた。その後、ガラスファイバーの両末端に電
極を配置し、純水液中で、電極間に5V/cmの電解を
印加し電解酸化重合させた。電解酸化重合の条件は、反
応温度25℃、反応時間8時間であり、ガラスファイバ
ー上にポリピロールの共役結合重合膜(化学式20)が
ガラスファイバーの軸方向に沿って長さ10mm形成で
きた。得られた有機導電膜34Cの膜厚は約2.0n
m、ポリピロール部分の厚さは約0.2nmであった。
また、得られた有機導電膜は可視光線のもとでは透明で
あった。
【0196】このようにして得られた有機薄膜の表面を
覆うように絶縁膜を形成することにより電気ケーブルを
作製した。得られた電線の断面図を図13に示す。図1
3において、50は電気ケーブル、51はガラス芯線、
52はポリピロール電解酸化重合膜、53は室温硬化型
のシリコーンゴムからなる被覆絶縁膜である。
【0197】この電気ケーブルの電導度ρはドープなし
でρ>1×107S/cmであり、「超金属導電膜」で
あることが確認できた。電導度の測定は実施例1と同じ
方法で行った。
【0198】本実施例においては、前記電気ケーブルは
互いに電気的に絶縁された複数の芯線で形成され、集合
電線を形成していてもよい。
【0199】また、電線を作成する場合の芯線は、ガラ
ス以外にも金属も使用することができる。金属の場合
は、表面に酸化物を形成すると、単分子膜は形成しやす
い。
【0200】(実施例7)前記実施例1〜5において、
導電性分子が配向しているか否かは、図14に示すよう
な液晶セル60を形成し、偏光板67,68で挟み、裏
面より光を照射して70の位置から観察することにより
確認できる。液晶セル60は、導電性分子膜62、64
がそれぞれ形成されたガラス板61、63を導電性分子
膜を内側にして、ギャップ間距離5〜6μmに保持して
周囲を接着剤65で封止し、内部に液晶組成物66(ネ
マチック液晶、例えばチッソ社製”LC,MT−508
7LA”)を注入して作成する。(1)偏光板67,6
8をクロスにした場合、導電性分子膜62、64の配向
方向を揃え、この方向と、一方の偏光板を平行にし、他
方の偏光板を直交させる。完全に配向していれば液晶が
配向して均一な黒色になる。均一な黒色にならない場合
は配向不良である。(2)偏光板67,68を平行にし
た場合、導電性分子膜62、64の配向方向を揃え、こ
の方向と、両方の偏光板を平行にする。完全に配向して
いれば液晶が配向して均一な白色になる。均一な白色に
ならない場合は配向不良である。
【0201】なお、裏側の基板が透明でない場合は、偏
光板は上側一枚とし、表面より光を照射して反射光で観
察する。
【0202】この方法により、前記実施例1〜5で得ら
れた導電性分子膜は配向していることが確認できた。
【0203】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、従来の
有機導電膜よりも高い導電性を有するか、または金や銀
などの導電性金属と同等かまたはそれ以上の導電性を有
する導電性有機薄膜とその製造方法を提供できる。
【0204】次に本発明は、デバイスの高密化が進展し
0.1μm以下の微細加工がなされても、結晶性に左右
されない有機物質を用いたデバイスを作製することによ
り高集積化されたデバイスを提供できる。また、プラス
チック基板等に形成することにより、フレキシビリティ
ーに優れた有機電子デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Aは本発明の実施の形態1における基材上に形
成された導電性単分子膜を分子レベルにまで拡大した概
念断面図であり、Bはその平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるラビング配向法
を説明するための概念図である。
【図3】本発明の実施の形態1における光配向法を説明
するための概念図である。
【図4】本発明の実施の形態1における引き上げ配向法
を説明するための概念図である。
【図5】A−Dは本発明の実施の形態3における単分子
累積膜の構造例を示す分子レベルまで拡大した概念図で
あり、Aは化学吸着法を用いた累積膜を示し、各単分子
層の配向方向が同一方向であるX型導電性単分子累積膜
の断面図であり、Bは2層目以降がラングミュアー−ブ
ロジェット法を用いて形成された累積膜であり、各単分
子層の配向方向が同一方向であるY型導電性単分子累積
膜の断面図であり、Cは各単分子層ごとに配向方向が異
なるX型導電性単分子累積膜の断面図であり、Dは各単
分子層ごとに2つの配向方向のいずれかに配向したX型
導電性単分子累積膜の断面図である。
【図6】A−Bは本発明の実施の形態4における3端子
有機電子デバイスの構造を分子レベルまで拡大した概念
図であり、Aは第1と第2の電極が絶縁膜付き基板表面
に形成された構造の断面図、Bは第1と第2の電極が有
機薄膜表面に形成された構造の断面図である。
【図7】A−Bは本発明の実施の形態4における印加電
界に対する3端子有機電子デバイスの導電性の変化を説
明する概念図であり、Aは導電ネットワークの導電率と
第3の電極に印加された電圧との依存性を説明する概念
図、Bは第3の電極への電圧印加の有無によるスイッチ
ング動作を説明する概念図である。
【図8】本発明の実施例1の第3電極形成工程を説明す
るための第3の電極を形成した基板を拡大した概念断面
図である。
【図9】本発明の実施例1における成膜工程を説明する
ための単分子膜を形成した基板を分子レベルまで拡大し
た概念断面図である。
【図10】は本発明の実施例1における配向した単分子
膜を形成した基板を分子レベルまで拡大した概念断面図
である。
【図11】本発明の実施例1における対電極形成工程及
び導電ネットワーク形成工程を説明するための導電ネッ
トワークを形成し、かつ第1の電極と第2の電極とを形
成した基板を分子レベルまで拡大した概念断面図であ
る。
【図12】本発明の実施の形態1における有機分子の傾
斜方向を説明するための概念斜視図である。
【図13】本発明の実施例6で得られた電気ケーブルの
概念断面図である。
【図14】本発明の実施例7における導電性分子の配向
を評価する方法を示す説明図。
【図15】本発明の実施例1で得られたピロリル化合物
のNMRのチャートである。
【図16】本発明の実施例1で得られたピロリル化合物
のIRのチャートである。
【図17】本発明の実施例2で得られたチェニル化合物
のNMRのチャートである。
【図18】本発明の実施例2で得られたチェニル化合物
のIRのチャートである。
【符号の説明】
1 基板 4 導電性単分子膜 5 導電ネットワーク 7 活性水素を含まない有極性官能基 11 基板 12 第1の電極 13 第2の電極 14 電界応答型導電性単分子膜 15 導電ネットワーク 17 第3の電極 18 第1の絶縁膜 19 第2の絶縁膜 31 ポリイミド基板 34 電界応答型単分子膜 34a 単分子膜 34b 配向した単分子膜 34c 導電性単分子膜 35 導電ネットワーク 37 アルミ製の第3の電極 38 シリカ膜 39 アルミナ膜 41 ラビング布 42 ラビングロール 43 偏光板 44 有機溶媒 50 電気ケーブル 51 ガラス芯線 52 ポリピロール電解酸化重合膜 53 被覆絶縁膜 60 液晶セル
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年1月4日(2002.1.4)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項21
【補正方法】変更
【補正内容】
【化3】
【化4】 (但し、前記式(3)及び(4)において、Xは水素、
または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Z
はエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−
OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネ
イト(−OCOO−)基、Dはハロゲン原子、イソシア
ネート基又は炭素数1−3のアルコキシル基、Eは水素
または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数であり
m+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下
の整数、pは整数であり、1、2又は3である。)
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項38
【補正方法】変更
【補正内容】
【化5】
【化6】 (但し、前記式(5)及び(6)において、Xは水素、
または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Z
はエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−
OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネ
イト(−OCOO−)基、Dはハロゲン原子、イソシア
ネート基又は炭素数1−3のアルコキシル基、Eは水素
または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数であり
m+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下
の整数、pは整数であり、1、2又は3である。)
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】
【化9】
【化10】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正内容】
【0035】(但し、前記式(11)及び(12)にお
いて、Xは水素、または不飽和基を含む有機基、qは0
〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシ
カルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO
−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Eは水素
または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数であり
m+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下
の整数、pは整数であり、1、2又は3である。) 本発明で用いる材料分子の末端官能基は、クロロシリル
基、アルコシリル基またはイソシアネート基であり、基
材表面の活性水素と脱塩化水素反応、脱アルコール反応
及び脱イソシアネート基から選ばれる少なくとも一つの
脱離反応によって共有結合を形成することが好ましい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01B 1/12 H01B 1/12 E 5G309 Z 7/02 7/02 Z 13/00 501 13/00 501Z H01L 21/28 301 H01L 21/28 301Z 21/283 21/283 Z 29/786 C08L 101:00 51/00 H01L 29/28 // C08L 101:00 29/78 618B (72)発明者 山本 伸一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 2H092 JA24 JB11 JB31 KA20 NA29 PA08 4F071 AA38 AA58 AA61 AA80 AB02 AB03 AB04 AF37 AH12 BA02 BB12 BC02 4M104 AA10 BB02 BB05 BB36 CC01 CC05 DD77 EE03 EE16 GG09 5C094 BA03 BA27 BA43 CA19 CA24 DA13 ED03 FA01 FB01 FB12 JA05 5F110 AA30 BB01 CC03 CC07 DD01 DD02 EE03 FF01 FF24 GG05 GG41 GG58 HK02 5G309 RA15

Claims (38)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機分子の一方の末端が基材表面と共有
    結合した末端結合基と、 前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重
    合した共役結合基と、 前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部
    分に、活性水素を含まない有極性官能基を含み、 前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は
    他の分子の共役結合基と重合して導電ネットワークを形
    成していることを特徴とする導電性有機薄膜。
  2. 【請求項2】 重合が、電解酸化重合、触媒重合および
    エネルギービーム照射重合から選ばれる少なくとも一つ
    である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  3. 【請求項3】 最終段階の重合が電解酸化重合である請
    求項2に記載の導電性有機薄膜。
  4. 【請求項4】 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、
    室温(25℃)においてドーパントなしで1S/cm以
    上である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  5. 【請求項5】 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、
    室温(25℃)においてドーパントなしで1×103
    /cm以上である請求項4に記載の導電性有機薄膜。
  6. 【請求項6】 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、
    室温(25℃)においてドーパントなしで5.5×10
    5S/cm以上である請求項5に記載の導電性有機薄
    膜。
  7. 【請求項7】 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、
    室温(25℃)においてドーパントなしで1×107
    /cm以上である請求項6に記載の導電性有機薄膜。
  8. 【請求項8】 前記重合した共役結合基が、ポリピロー
    ル、ポリチェニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレ
    ン及びポリアセンから選ばれる少なくとも一つの共役結
    合基である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  9. 【請求項9】 前記活性水素を含まない有極性官能基
    が、エステル基(−COO−)、オキシカルボニル基
    (−OCO−)、カルボニル基(−CO−)及びカーボ
    ネイト(−OCOO−)基から選ばれる少なくとも一つ
    の基である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  10. 【請求項10】 前記末端結合基が、シロキサン(−S
    iO−)及び−SiN−結合から選ばれる少なくとも一
    つの結合(但し、Si及びNには価数に相当する他の結
    合基があっても良い。)である請求項1に記載の導電性
    有機薄膜。
  11. 【請求項11】 前記分子の配向が、ラビングによる配
    向処理、脱離反応によって基材表面に分子を共有結合し
    た後の反応溶液からの傾斜液切り処理、偏光の照射処
    理、及び重合時の分子のゆらぎによる配向から選ばれる
    少なくとも一つによって形成されている請求項1に記載
    の導電性有機薄膜。
  12. 【請求項12】 前記有機薄膜の導電領域が可視領域の
    波長を有する光に対して透明である請求項1に記載の導
    電性有機薄膜。
  13. 【請求項13】 前記導電ネットワークを形成している
    分子ユニットが下記化学式(1)または(2)で示され
    る請求項1に記載の導電性有機薄膜。 【化1】 【化2】 (但し、前記化学式(1)及び(2)において、Xは水
    素、または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整
    数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル
    基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカ
    ーボネイト(−OCOO−)基、Eは水素または炭素数
    1−3のアルキル基、m、nは整数でありm+nは2以
    上25以下、好ましくは10以上20以下の整数、pは
    整数であり、1、2又は3である。)
  14. 【請求項14】 基板に共有結合している基と、前記基
    板表面に沿った方向にポリマー化している導電性ネット
    ワークを形成している導電性有機薄膜であって、前記導
    電性ネットワークはポリピロール及びポリチェニレンか
    ら選ばれる少なくとも一つのポリマーであり、前記導電
    性有機薄膜の電導度(ρ)が、室温(25℃)において
    ドーパントなしで1×107S/cm以上である導電性
    有機薄膜。
  15. 【請求項15】 有機分子の一方の末端が基材表面と共
    有結合可能な末端官能基と、 前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重
    合可能な共役結合可能基と、 前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部
    分に、活性水素を含まない有極性官能基を含む分子から
    なる化合物を、表面に活性水素を有するか又は活性水素
    を付与した基材上に接触させ、脱離反応により共有結合
    させて有機薄膜を成膜し、 前記有機薄膜を構成する有機分子を所定の方向に傾斜し
    て配向させるか、または次の重合工程で配向させながら
    重合し、 重合工程においては、前記共役結合可能基同士を電解酸
    化重合、触媒重合およびエネルギービーム照射重合から
    選ばれる少なくとも一つの重合法により共役結合させて
    導電ネットワークを形成する導電性有機薄膜の製造方
    法。
  16. 【請求項16】 前記末端官能基が、ハロゲン化シリル
    基、アルコシリル基またはイソシアネート基であり、基
    材表面の活性水素と脱塩化水素反応、脱アルコール反応
    及び脱イソシアネート反応から選ばれる少なくとも一つ
    の脱離反応によって共有結合を形成する請求項15に記
    載の導電性有機薄膜の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記共役結合可能基が、ピロリル基、
    チェニル基、アセチレン基を含むエチニル基及びジアセ
    チレン基を含むジエチニル基から選ばれる少なくとも一
    つの基である請求項15に記載の導電性有機薄膜の製造
    方法。
  18. 【請求項18】 前記活性水素を含まない有極性官能基
    が、エステル基(−COO−)、オキシカルボニル基
    (−OCO−)、カルボニル基(−CO−)及びカーボ
    ネイト(−OCOO−)基から選ばれる少なくとも一つ
    の基である請求項15に記載の導電性有機薄膜の製造方
    法。
  19. 【請求項19】 重合工程の最終段階においては、電解
    酸化重合により導電ネットワークを完結させる請求項1
    5に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記分子の配向を、ラビングによる配
    向処理、脱離反応によって基材表面に分子を共有結合し
    た後の反応溶液からの傾斜液切り処理、偏光の照射処
    理、及び重合時の分子のゆらぎによる配向から選ばれる
    少なくとも一つの処理によって行う請求項15に記載の
    導電性有機薄膜の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記有機分子が下記化学式(3)また
    は(4))で示される請求項15に記載の導電性有機薄
    膜の製造方法。 【化3】 【化4】 (但し、前記式(3)及び(4)において、Xは水素、
    または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Z
    はエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−
    OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネ
    イト(−OCOO−)基、Dはハロゲン原子、イソシア
    ネート基又は炭素数1−3のアルコキシル基、Eは水素
    または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数であり
    m+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下
    の整数、pは整数であり、1、2又は3である。)
  22. 【請求項22】 前記有機分子は単分子層状に形成され
    ている請求項15に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  23. 【請求項23】 前記単分子層形成工程を複数回繰り返
    すことにより、単分子層を積層させて単分子累積膜を形
    成する請求項22に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  24. 【請求項24】 前記単分子層形成工程と前記傾斜処理
    工程とを交互に繰り返し行った後、前記導電ネットワー
    ク形成工程で、単分子累積膜の各単分子層内に導電ネッ
    トワークを一括形成することにより、導電性単分子累積
    膜を形成する請求項23に記載の導電性有機薄膜の製造
    方法。
  25. 【請求項25】 前記単分子層形成工程、前記傾斜処理
    工程及び前記導電ネットワーク形成工程を繰り返し行う
    ことにより、導電性単分子累積膜を形成する請求項15
    に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  26. 【請求項26】 前記エネルギービームが、紫外線、遠
    紫外線、X線及び電子線から選ばれる少なくとも一つで
    ある請求項15に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  27. 【請求項27】 前記エネルギービームが、偏光した紫
    外線、偏光した遠紫外線及び偏光したX線から選ばれる
    少なくとも一つであり、前記傾斜配向処理と前記導電ネ
    ットワーク形成とを同時に行う請求項26に記載の導電
    性有機薄膜の製造方法。
  28. 【請求項28】 前記導電ネットワーク形成中または形
    成後に、さらにドーパントを添加する請求項15に記載
    の導電性有機薄膜の製造方法。
  29. 【請求項29】 基板上に形成された第1の電極と、前
    記第1の電極と離隔した第2の電極と、前記第1の電極
    と第2の電極とを電気的に接続する導電性有機薄膜とを
    備えた2端子有機電子デバイスであって、 前記導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が基材表
    面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれ
    かの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、
    前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部
    分に、活性水素を含まない有極性官能基を含み、前記有
    機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合し
    て導電ネットワークを形成していることを特徴とする2
    端子有機電子デバイス。
  30. 【請求項30】 基板上に形成された第1の電極と、前
    記第1の電極と離隔した第2の電極と、前記第1の電極
    と第2の電極とを電気的に接続する導電性有機薄膜と、
    前記基板と前記導電性有機薄膜との間に挟まれ、それぞ
    れと絶縁されている第3の電極と、を備えた3端子有機
    電子デバイスであって、 前記第3の電極は、前記第1の電極又は前記第2の電極
    との電極間に電圧を印加することにより前記導電性有機
    薄膜に作用させる電界を制御する電極であり、 前記導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が基材表
    面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子のいずれ
    かの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合基と、
    前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれかの部
    分に、活性水素を含まない有極性官能基を含み、前記有
    機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は重合し
    て導電ネットワークを形成していることを特徴とする3
    端子有機電子デバイス。
  31. 【請求項31】 基板上に形成された第1の電極と、前
    記第1の電極と離隔した第2の電極と、 有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結
    合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の
    分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共
    役結合基との間のいずれかの部分に、活性水素を含まな
    い有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、
    かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形
    成している導電性有機薄膜を介して、前記第1の電極と
    前記第2の電極とを電気的に接続し、前記基板と前記導
    電性有機薄膜との間に挟まれ、かつそれぞれと絶縁され
    ており、前記第1又は第2の電極との間に印加される電
    圧により前記導電性有機薄膜に作用させる電界を制御す
    る第3の電極とを備えた3端子有機電子デバイスをスイ
    ッチ素子として用いた液晶表示装置であって、 前記基板上に複数の前記スイッチ素子がマトリックス状
    に配列配置されたアレイ基板と、 前記アレイ基板表面に形成された第1の配向膜と、 透明基板上に色要素がマトリックス状に配列配置された
    カラーフィルター基板と、 前記カラーフィルター基板表面に形成された第2の配向
    膜と、 前記第1の配向膜と前記第2の配向膜とを内側にして対
    向させた前記アレイ基板と前記カラーフィルター基板と
    の間に封止された液晶層とを有することを特徴とする液
    晶表示装置。
  32. 【請求項32】 基板上に形成された第1の電極と、前
    記第1の電極と離隔した第2の電極と、 有機分子の一方の末端が基材表面と共有結合した末端結
    合基と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の
    分子と重合した共役結合基と、前記末端結合基と前記共
    役結合基との間のいずれかの部分に、活性水素を含まな
    い有極性官能基を含み、前記有機分子は配向しており、
    かつ、前記共役結合基は重合して導電ネットワークを形
    成している導電性有機薄膜を介して、前記第1の電極と
    前記第2の電極とを電気的に接続し、 前記基板と前記導電性有機薄膜との間に挟まれ、かつそ
    れぞれと絶縁されており、前記第1又は第2の電極との
    間に印加された電圧により前記導電性有機薄膜に作用さ
    せる電界を制御する第3の電極と、 を備えた3端子有機電子デバイスをスイッチ素子として
    用いたエレクトロルミネッセンス型表示装置であって、 複数の前記スイッチ素子が基板上にマトリックス状に配
    列配置されたアレイ基板と、 前記アレイ基板と対向する共通電極と、 前記アレイ基板と前記共通電極との間に形成された、電
    界の印加により発光する蛍光物質を含む発光層とを有す
    ることを特徴とするエレクトロルミネッセンス型表示装
    置。
  33. 【請求項33】 可視光線領域の光波長では透明な電極
    であって、 前記電極は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結
    合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に
    存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結
    合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、活性
    水素を含まない有極性官能基を含み、前記有機分子は配
    向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネッ
    トワークを形成している導電性有機薄膜で形成されてい
    ることを特徴とする電極。
  34. 【請求項34】 芯線と、前記芯線の表面の長さ方向に
    形成されている導電性有機薄膜と、前記導電性有機薄膜
    を覆う絶縁被膜とを備えた電気ケーブルであって、 前記導電性有機薄膜は、有機分子の一方の末端が芯線の
    基材表面と共有結合した末端結合基と、前記有機分子の
    いずれかの部分に存在し、他の分子と重合した共役結合
    基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間のいずれ
    かの部分に、活性水素を含まない有極性官能基を含み、
    前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は
    重合して導電ネットワークを形成していることを特徴と
    する電気ケーブル。
  35. 【請求項35】 前記電気ケーブルは互いに電気的に絶
    縁された複数本の芯線を含む集合電線を形成している請
    求項34に記載の電気ケーブル。
  36. 【請求項36】 芯線がガラスまたは金属である請求項
    34に記載の電気ケーブル。
  37. 【請求項37】 可視光線領域の光波長では透明な電極
    であって、 前記電極は、有機分子の一方の末端が基材表面と共有結
    合した末端結合基と、前記有機分子のいずれかの部分に
    存在し、他の分子と重合した共役結合基と、前記末端結
    合基と前記共役結合基との間のいずれかの部分に、活性
    水素を含まない有極性官能基を含み、前記有機分子は配
    向しており、かつ、前記共役結合基は重合して導電ネッ
    トワークを形成している導電性有機薄膜であることを特
    徴とする電極。
  38. 【請求項38】 下記化学式(5)または(6)で示さ
    れるピロリル化合物またはチェニル化合物。 【化5】 【化6】 (但し、前記式(5)及び(6)において、Xは水素、
    または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Z
    はエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−
    OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネ
    イト(−OCOO−)基、Dはハロゲン原子、イソシア
    ネート基又は炭素数1−3のアルコキシル基、Eは水素
    または炭素数1−3のアルキル基、m、nは整数であり
    m+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下
    の整数、pは整数であり、1、2又は3である。)
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