JP2003231737A - 導電性有機薄膜とその製造方法およびこれに用いる3−ピロール化合物 - Google Patents

導電性有機薄膜とその製造方法およびこれに用いる3−ピロール化合物

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Shinichi Yamamoto
伸一 山本
Kazufumi Ogawa
小川  一文
Norihisa Mino
規央 美濃
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】従来の有機導電膜よりも高い導電性を有する導
電性有機薄膜とその製造方法とこれに用いる3−ピロリ
ル化合物を提供する。 【解決手段】表面に活性水素を含む基材(1,2)表面と共
有結合した末端結合基と、N基に活性水素を含まない3
−ピロリル基と、前記末端結合基と前記3−ピロリル基
との間は活性水素を含まない有機基を含む有機分子で構
成され、前記3−ピロリル基は他の分子の共役結合基と
重合して導電性ポリマー(34)を形成している。共役結合
基の重合は、電解酸化重合、触媒重合、エネルギー線照
射重合を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、導電性有機薄膜と
その製造方法およびこれに用いる3−ピロリル化合物に
関するものである。さらに詳しくは、基材表面に形成す
る単分子または単分子累積膜からなる導電性ポリマー膜
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から有機導電膜については様々な提
案がある。本出願人は、すでにポリアセチレン、ポリジ
アセチレン、ポリアセン(Polyacene)、ポリフェニレ
ン、ポリチェニレン、ポリピロール、ポリアニリンなど
の導電性共役基を含む導電膜を提案している(特開平2(1
990)-27766号公報、USP5,008,127、EP-A-0385656、EP-A
-0339677,EP-A-0552637、USP5,270,417、特開平5(199
3)-87559号公報、特開平6(1994)-242352号公報)。
【0003】前記従来の有機系導電膜は、導電性が金属
に比較すると低いという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来の
問題を解決するため、従来の有機導電膜よりも高い導電
性を有し、好ましくは金属よりも高い導電性を有する導
電性有機薄膜とその製造方法およびこれに用いる3−ピ
ロリル化合物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の導電性有機薄膜は、表面に活性水素を含む
基材表面と共有結合した末端結合基と、N基に活性水素
を含まない3−ピロリル基と、前記末端結合基と前記3
−ピロリル基との間は活性水素を含まない有機基を含む
有機分子で構成された被膜であり、前記被膜内で3−ピ
ロリル基は他の分子の共役結合基と重合して導電性共役
結合鎖を形成していることを特徴とする。
【0006】次に本発明の導電性有機薄膜の製造方法
は、表面に活性水素を含む基材表面と共有結合可能な末
端官能基と、N基に活性水素を含まない3−ピロリル基
と、前記末端官能基と前記3−ピロリル基との間は活性
水素を含まない有機基を含む化合物を、前記表面に活性
水素を含む基材表面に接触させ、脱離反応により共有結
合させて有機薄膜を成膜し、前記前記3−ピロリル基と
共役結合可能基同士を電解酸化重合、触媒重合およびエ
ネルギービーム照射重合から選ばれる少なくとも一つの
重合法により共役結合させて導電性ポリマーを形成する
ことを特徴とする。
【0007】次に本発明の3−ピロリル基を含む化合物
は、下記式(B)で示される。
【0008】
【化4】
【0009】(但し、Bは水素、炭素数1〜10のアル
キル基を含む有機基または活性水素導入可能基、Zはエ
ステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OC
O−)、カルボニル基(−CO−)及びカーボネイト
(−OCOO−)基、アゾ(−N=N−)基から選ばれ
る少なくとも一つの官能基または化学結合(−)、Rは
炭素数1〜3のアルキル基、m,nは整数でありm+n
は2以上25以下、Dはハロゲン原子、イソシアネート
基及び炭素数1−3のアルコキシル基から選ばれる少な
くとも一つの反応基、Eは水素または炭素数1−3のア
ルキル基、pは1,2又は3の整数である。)
【0010】
【発明の実施の形態】本発明において、有機薄膜が導電
性を有するのは、有機分子の集合群を構成する分子相互
が共役結合してポリマー化していることによる。ここ
に、導電性有機薄膜(以下「導電性ポリマー」ともい
う。)は、電気伝導に関与する共役結合で結合した有機
分子の集合体であり、共役結合鎖(共役系)を有するポ
リマーで形成されている。また、導電性ポリマーは電極
間の方向に形成されている。この共役結合鎖ポリマーは
厳密に1方向に連なるものではなく、様々な方向のポリ
マー鎖が形成されていればよい。
【0011】本発明においては、導電性有機薄膜の電導
度(ρ)は、1S/cm以上、好ましくは1×103
/cm以上、さらに好ましくは5.5×105S/cm
以上、最も好適には1×107S/cm以上である。前
記の値はすべて室温(25℃)、相対湿度60%におけ
るドーパントなしの場合である。
【0012】前記導電性ポリマーの部分は、ポリ(3−
ピロール)、ポリ(3−ピロール)とポリ(1−ピロー
ル)との共重合体、およびポリ(3−ピロール)とポリ
チェニレンから選ばれる少なくとも一つのポリマーであ
ることが好ましい。共重合体の場合は、ポリ(3−ピロ
ール)ユニットを含むポリマーが50モル%以上である
ことが好ましい。
【0013】本発明の導電性ポリマーは、重合を電解酸
化重合法で行った薄膜はとくに高い電導度を有する。
【0014】前記末端結合基は、シロキサン(−SiO
−)およびSiN−結合から選ばれる少なくとも一つの
結合であることが好ましい。
【0015】前記末端結合基は、脱塩化水素反応、脱ア
ルコール反応および脱イソシアネート反応から選ばれる
少なくとも一つの脱離反応によって形成されている。例
えば分子末端の官能基が-SiCl3,-Si(OR)3(但しRは炭素
数1-3のアルキル基),または-Si(NCO)3の場合、基材表面
または基材の上に形成した下地層表面に-OH基,-CHO基,-
COOH基,-NH2基,>NH基等に含まれる活性水素が存在する
と、脱塩化水素反応、脱アルコール反応または脱イソシ
アネート反応が起こり、化学吸着分子を基材表面または
基材の上に形成した下地層表面に共有結合させる。
【0016】この方法によって形成される分子膜は、当
業界では”化学吸着膜”または”セルフ アセンブリン
グ フィルム(self assembling film)”と言われている
が、本発明においては”化学吸着膜”と呼ぶ。また、そ
の形成方法を”化学吸着法”と呼ぶ。
【0017】本発明において、好ましくは導電性分子を
配向させる。分子の配向は、ラビングによる配向処理、
脱離反応によって基材表面に分子を共有結合した後の反
応溶液からの傾斜液切り処理、偏光の照射処理、および
重合工程における分子のゆらぎによる配向から選ばれる
少なくとも一つによって形成されていることが好まし
い。
【0018】前記導電性有機薄膜は可視領域の波長を有
する光に対して透明である。これは、膜厚がナノメータ
ーレベル(通常10nm以下、分子修飾しても50nm
以下)であり、可視光線の波長領域(300nm〜80
0nm)よりはるかに薄いからである。
【0019】前記導電性有機薄膜を形成している分子ユ
ニットは例えば下記式(A)で示されることが好まし
い。
【0020】
【化5】
【0021】(但し、Bは水素、炭素数1〜10のアル
キル基を含む有機基、活性水素導入可能基またはその残
基、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル
基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)及びカー
ボネイト(−OCOO−)基、アゾ(−N=N−)基か
ら選ばれる少なくとも一つの官能基または化学結合
(−)、Rは炭素数1〜3のアルキル基、m,nは整数
でありm+nは2以上25以下、Yは酸素(O)または
窒素(N)、Eは水素または炭素数1−3のアルキル
基、pは1,2又は3の整数である。)前記導電性有機
薄膜を形成するための化学吸着剤分子は例えば下記式
(B)で示される。
【0022】
【化6】
【0023】(但し、Bは水素、炭素数1〜10のアル
キル基を含む有機基または活性水素導入可能基、Zはエ
ステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OC
O−)、カルボニル基(−CO−)及びカーボネイト
(−OCOO−)基、アゾ(−N=N−)基から選ばれ
る少なくとも一つの官能基または化学結合(−)、Rは
炭素数1〜3のアルキル基、m,nは整数でありm+n
は2以上25以下、Dはハロゲン原子、イソシアネート
基及び炭素数1−3のアルコキシル基から選ばれる少な
くとも一つの反応基、Eは水素または炭素数1−3のア
ルキル基、pは1,2又は3の整数である。)とくに末
端がトリクロロシリル基(-SiCl3)の場合は、基材との
反応性が高いので好ましい。
【0024】また、前記単分子層形成工程を複数回繰り
返すことにより、単分子層を積層させて単分子累積膜を
形成しても良い。
【0025】前記化学式Bにおいて、B基がビニル結合
などの不飽和基を含む場合は、例えば水分の存在する雰
囲気中で電子線またはX線などのエネルギー線を照射す
ることにより水酸基(−OH)を導入でき、また、過マ
ンガン酸カリウム水溶液に浸漬することにより−COO
Hを導入できる。他の方法として、酸素プラズマ処理、
UV/オゾン処理、コロナ処理、または濃硫酸と重クロ
ム酸カリウムの混合溶液に浸漬する方法(クロム混酸液
処理)などもある。このようにすると、活性水素を導入
できるので、さらに単分子膜を累積結合させることがで
きる。
【0026】また、前記単分子層形成工程と前記傾斜処
理(配向)工程とを交互に繰り返し行った後、前記導電
性ポリマー形成工程で、単分子累積膜の各単分子層内に
導電性ポリマーを一括形成することにより、導電性単分
子累積膜を形成しても良い。
【0027】また、前記単分子層形成工程、前記傾斜処
理工程および前記導電性ポリマー形成工程よりなる一連
の工程を繰り返し行うことにより、導電性単分子累積膜
を形成しても良い。
【0028】重合方法としては、電解酸化重合、触媒重
合およびエネルギー線照射重合から選ばれる少なくとも
一つの重合方法がある。前記電解酸化による導電性ポリ
マーを形成する前に、触媒重合およびエネルギー線照射
重合から選ばれる少なくとも一つの予備重合を行っても
良い。
【0029】前記エネルギー線は、紫外線、遠紫外線、
X線および電子線から選ばれる少なくとも一つであるこ
とが好ましい。
【0030】前記エネルギー線は、偏光した紫外線、偏
光した遠紫外線および偏光したX線から選ばれる少なく
とも一つであり、前記傾斜配向処理と前記導電性ポリマ
ー形成とを同時に行っても良い。
【0031】有機分子が有極性の官能基を含むことによ
り、印加された電界に対する感度が高く、応答速度が高
速となる。したがって、有機薄膜の導電性を高速に変化
させることができる。電界が印加された際、前記有機薄
膜の導電性の変化は、有極性の官能基が電界に応答し、
その応答による影響が前記導電性ポリマーの構造に波及
されたため、生じたと考えられる。
【0032】また、ドーピングにより導電性ポリマーに
電荷移動性のドーパント物質の組み込めば、さらに導電
率を向上することも可能である。このドーパント物質と
して、ヨウ素、BF-イオン、Na,K等のアルカリ金
属、Ca等のアルカリ土類金属等の任意のドーパント物
質が利用できる。さらに有機膜形成工程の溶液に含まれ
る微量成分やガラス容器などから不可避的に混入される
コンタミネーションによるドーパント物質を含んでいて
も良い。
【0033】導電単分子層を構成する有機分子はかなり
良く配向した状態にあるため、導電性ポリマーの共役結
合鎖が特定平面内に存在する。したがって、単分子層に
形成された導電性ポリマーは所定の方向に直線的に連な
る。その導電性ポリマーの直線性により、高い導電異方
性を有する。また、その導電性ポリマーの直線性は、導
電性ポリマーを構成する各共役結合鎖(共役系)が単分
子層内の同一平面で略平行に配列していることを意味す
る。したがって、導電単分子層は、高い導電率を有し、
且つ、均一な導電率を有する。また、前記導電性ポリマ
ーの直線性により、重合度の高い共役結合鎖を単分子層
に有する。
【0034】別の例によれば、膜厚が薄くても極めて良
好な導電性を有する導電性単分子膜および導電性単分子
累積膜を提供できる。
【0035】導電性単分子累積膜の場合、各導電性単分
子層に導電性ポリマーが形成されているので、単分子累
積膜の導電性ポリマーの導電率は、積層された単分子膜
の層数に依存する。したがって、導電単分子層の積層数
を変更することにより所望の導電率を有する導電性有機
薄膜を提供できる。例えば、同一の導電性単分子層が積
層された導電性累積膜であれば、それに含まれる導電性
ポリマーの導電率はほぼ比例する。
【0036】導電性単分子累積膜において、すべての単
分子層に形成された導電性ポリマーの方向が同一である
限り、各単分子層ごとに有機分子の配向の傾斜角が異な
っていてもよい。また、すべての単分子層を同一有機分
子から構成するものでなくとも良い。また、各導電性単
分子層ごとに異なる種類の有機分子から構成された導電
性単分子累積膜であってもよい。
【0037】また、導電性単分子累積膜の場合は、基材
に最近接する導電性単分子層が基材と化学結合で結合さ
れているので、耐剥離性等の耐久性に優れる。
【0038】傾斜処理工程における有機分子の傾斜方向
は、有機分子の長軸を基材表面に射影した線分の方向を
意味する。したがって、基材に対する傾斜角は同一角度
でなくてもよい。
【0039】単分子層を構成した有機分子の集合群を、
傾斜処理工程において、精度よく所定の方向に傾斜させ
ることができる。一般的には、単分子層を構成した分子
を配向させることができる。精度よく配向させることが
できるので、導電性ポリマー形成工程において、方向性
を有する導電性ポリマーを簡便に形成できる。
【0040】また、単分子層内の配向した有機分子相互
を共役結合させると、重合度が高くかつ直線的に連なる
導電性ポリマーが形成できる。また、導電性ポリマーの
直線性により、均質な導電性単分子層が形成できる。
【0041】別の例においては、前記偏光として可視光
領域の波長を有する偏光を用いる。この例によれば、有
機薄膜を構成した有機分子の剥離や、有機分子自体の破
壊等による有機薄膜の破壊を防止または抑制できる。
【0042】別の例によれば、ラビング処理を施した基
材表面に有機薄膜を成膜すると、その有機薄膜を構成し
た有機分子は所定の方向に傾斜した状態となる。一般的
には、ラビング処理におけるラビング方向と成膜された
有機分子の傾斜方向とは同一方向となる。
【0043】前記ラビング処理で用いるラビング布とし
て、ナイロン製またはレーヨン製の布を用いることがで
きる。前記の構成の如くナイロン製またはレーヨン製の
ラビング布を用いることが、配向の精度を向上させる目
的にとって適正である。
【0044】前記導電性ポリマー形成工程で1種以上の
重合法を適用し、前記有機薄膜を構成する分子相互を重
合によりまたは重合および該重合後の架橋により共役結
合させて導電性ポリマーを形成しても良い。この例によ
れば、有機分子の前記重合性基を共役結合で連結させ電
気伝導を可能にする導電性ポリマーを形成できる。重合
の種類としては電解酸化重合、触媒重合およびエネルギ
ービームの照射重合から選ばれる少なくと一つの重合法
が利用できる。とくに最終工程において、電解酸化重合
により導電性ポリマーを完結させると、高い導電性を得
ることができる。
【0045】また、前記有機薄膜を形成する分子が共役
結合で結合する重合性基を複数有する場合、一方の重合
性基の重合で形成された高分子に対して、さらに架橋反
応を行い他方の重合性基を共役結合させることにより、
重合後の構造と異なる構造を有する導電性ポリマーを形
成できる。この際、重合により形成された高分子の側鎖
にある前記他方の重合性基が架橋される。
【0046】前記重合を行う工程で触媒重合法、電解重
合法、エネルギービーム重合法よりなる群から選択され
る重合法を適用してもよい。効率よく導電性ポリマーを
形成するには、まず触媒重合法および/またはエネルギ
ービーム重合を行い、最終工程で電解酸化重合により反
応を完結させる。
【0047】複数回の架橋工程を採用する場合は、異な
る作用による架橋工程の組合せでもよいが、同じ作用で
あるが反応条件が異なる工程の組合せも含む。例えば、
触媒作用による架橋工程後に第1の種類のエネルギービ
ーム照射による架橋工程を行い、さらに第2の種類のエ
ネルギービーム照射による架橋工程を行う等により導電
性ポリマーを形成してもよい。
【0048】また、前記エネルギービームとして偏光し
た紫外線、偏光した遠紫外線または偏光したX線を用
い、前記傾斜処理工程と前記導電性ポリマー形成工程と
を同時に行うこともできる。この例によれば、有機薄膜
を構成する有機分子を所定の方向に傾斜(配向)させる
とともに、有機分子相互を共役結合させることができ
る。したがって、工程を簡素化できる。
【0049】本発明で用いる基材は、表面に活性水素を
有するか、活性水素を付与した基材を用いる。ガラス、
金属、セラミックス、プラスチック、紙など基材の種類
は問わない。表面に活性水素が少ない基材の場合は、Si
Cl4 ,HSiCl3 ,SiCl3O-(SiCl2-O)n-SiCl3(但し、nは0以上
6以下の整数),Si(OCH3)4 ,HSi(OCH3)3 ,Si(OCH3)3O-(Si
(OCH3)2-O)n-Si(OCH3)3(但し、nは0以上6以下の整
数)などで処理する。前記化合物も化学吸着法により形
成でき、膜厚は1〜10nm程度の薄膜で形成するのが
透明性を損なわないので好ましい。また、蒸着法を用い
てシリカ膜、またはAl2O3膜を形成しても良い。また、
コロナ放電やプラズマ照射などで基材表面を活性化する
ことにより活性水素を付与できる。
【0050】本発明の有機導電膜は、電導度が高く、透
明性も高い。この性質を利用した用途としては、電線、
モーター、発電機、コンデンサー(キャパシター)、透
明電極(ITO代替)、半導体装置配線・CPU配線
(電気抵抗により発熱しない)、電磁波シールド、導電
ガラス、透明アンテナ線、面発熱膜、CRTガラス表面
フィルター(静電気発生防止)、乗り物ガラス、建築物
の窓ガラス等様々な用途が考えられる。
【0051】(実施の形態1)本実施の形態1において
は、有機薄膜が単分子膜である場合について、その製造
方法及びその構造を説明する。
【0052】まず、製造方法について説明する。共役重
合性官能基を有する有機分子を基材と接触させて、基材
上に単分子膜を形成する単分子層形成工程(化学吸着膜
形成工程)を行い、次に、単分子膜を構成する分子相互
が共役結合で所定の方向に連なる導電性ポリマーを有す
る導電領域を単分子膜の少なくとも一部に形成する導電
領域形成工程を行うことにより、導電領域を有する単分
子膜を形成できる。前記において、化学吸着膜形成工程
で形成された有機分子を所定の方向に配向(傾斜)させ
ることが好ましい。このようにすると、重合度及び導電
率の高い導電領域を形成できる。
【0053】ここに、単分子膜及び単分子層において
は、所定の方向に傾斜させることは、単分子膜を構成す
る有機分子を配向させることと同じであるので、以下、
単分子膜や単分子層に対しては、配向ともいう。
【0054】このような配向した単分子膜を形成する方
法としては、単分子層形成工程前に基材表面をラビング
処理しておき(前処理工程)、ラビング処理済みの基材
表面に単分子膜を形成する方法や、単分子層形成工程後
に単分子膜に対して配向処理を施して(傾斜処理工
程)、配向した単分子膜を形成する方法等が適用でき
る。また、前処理工程と傾斜処理工程とを含む製造方法
であれば極めて直線性に優れた導電性ポリマーを形成で
きる。
【0055】前記の単分子層形成工程に引き続き、洗浄
工程を含む製造方法であれば、表面に汚れのない単分子
膜を形成することができる。また、電荷移動性のドーパ
ントをドーピングするドーピング工程を含む製造方法で
あれば、簡便に、導電領域の導電率を向上させることが
できる。また、導電領域形成工程後に、単分子膜上に絶
縁性の保護膜を形成する工程を含む製造方法であれば、
耐剥離性等の耐久性に優れる保護膜付き単分子膜を製造
できる。以下に、各工程について説明する。
【0056】単分子層形成工程では、膜材料分子を含む
有機溶液に基材を浸漬することにより単分子膜を形成し
てもよいし、有機溶液を基材上に塗布することにより単
分子膜を形成してもよい。また、膜材料分子を含むガス
中に基材を暴露することにより単分子膜を形成してもよ
い。
【0057】シラン系界面活性剤等のような、基材に化
学吸着する官能基を末端に有する有機分子を膜材料分子
として用いると、基材上に結合固定された耐剥離性等の
耐久性に優れた単分子膜を形成できる。2層目以降の積
層膜を形成する場合は、化学吸着法あるいはラングミュ
アーブロジェット法を適用できる。
【0058】また、単分子層形成工程は、基材の全面又
は一部の面に単分子膜を形成する工程であってもよい
し、基材に、所定のパターンに単分子膜を形成する工程
であってもよい。例えば、基材表面に単分子膜を形成す
るパターン以外の部位に被膜(レジストパターン)を形
成し、被膜の形成された基材と膜材料分子とを接触させ
て単分子膜を成膜した後、被膜を除去することにより所
定のパターンに単分子膜を形成することができる。
【0059】次に、洗浄工程では、単分子層形成工程後
に、単分子膜の形成された基材を洗浄用の有機溶媒に浸
漬させて、未吸着の有機分子を洗浄除去することができ
る。洗浄用の有機溶媒として非水系の有機溶媒を用いる
ことが好ましい。
【0060】次に、配向処理工程では、基材の表面を任
意の1方向にラビング処理する工程であってもよいし、
所定の部位ごとにラビング方向を異ならせる様にラビン
グ処理する工程であってもよい。ラビング処理方法につ
いては、下記の傾斜処理工程において説明する。配向処
理工程で用いるラビング装置と傾斜処理工程で用いるラ
ビング装置とは同一の装置であり、基材上に単分子膜が
形成されているか否かの違いである(図5A)。
【0061】以下に、所定の部位ごとにラビング方向を
異ならせる場合の前処理工程の例を説明する。基材表面
に所定の第1のパターン状に被膜を形成し(レジストパ
ターン)、被膜の形成されていない基材表面を所定の第
1のラビング方向にラビングし、ラビング処理後に被膜
を除去する。その後、基材表面に第1のパターンと異な
る第2のパターン状に被膜(レジストパターン)を形成
し、被膜の形成されていない基材表面を所定の第2のラ
ビング方向にラビングし、ラビング処理後に被膜を除去
する。これにより、第1のラビング方向にラビング処理
した部位と、第2のラビング方向にラビング処理した部
位とを形成できる。更に、これをラビング方向を異なら
せて繰り返すことにより、複雑なラビングパターンを形
成することもできる。
【0062】次に、配向処理工程(傾斜処理工程)で
は、ラビング配向法、光配向法、液切り配向法等を適用
して、単分子膜を構成する有機分子を所定の方向に配向
させることができる。図5A−Cは、有機薄膜を構成す
る分子を傾斜(配向)させる配向法を説明するための模
式的斜視図であり、図5Aはラビング配向法、図5Bは
光配向法、図5Cは液切り配向法である。
【0063】ラビング配向法は、図5Aに示したよう
に、単分子膜4の形成された基材1を所定の方向(基材
搬送方向)Cに搬送しながら、単分子膜4と接触するラ
ビング布41の巻き付けられたラビングロール42を回
転方向Aに回転させて、ラビング布41で単分子膜4の
表面を擦ることにより、単分子膜4を構成する有機分子
をラビング方向Bに配向させる方法である。これによ
り、基材1上に、ラビング方向Bに配向した単分子膜4
を形成することができる。
【0064】光配向法は、図5Bに示したように、透過
軸方向Dを有する偏光板43に紫外線または可視光線4
5を照射し、偏光46により単分子膜4を構成する有機
分子を偏光方向Eに配向させる方法である。偏光として
は直線偏光が好ましい。これにより、基材1上に、偏光
方向に配向した単分子膜4を形成することができる。
【0065】また、液切り配向法は、図5Cに示したよ
うに、洗浄用の有機溶媒44の液面に対して所定の傾斜
角度を保ちつつ引き上げ方向Fに基材1を引き上げ、単
分子膜4を構成する有機分子を液切り方向Gに配向させ
る方法である。これにより基材1上に、配向した単分子
膜4を形成することができる。
【0066】さらに図示していないが、触媒重合、電解
酸化重合時の溶液中における分子のゆらぎによっても配
向させることができる。
【0067】液切り配向法、ラビング配向法、光配向
法、重合時の溶液中における分子のゆらぎによる配向い
ずれか1つの方法を適用する工程であってもよいし、複
数種の配向法を組み合わせて順次適用する工程であって
もよい。異なる配向方法を組み合わせて、精度よく配向
した状態にある配向した単分子膜を形成する際には、ラ
ビング方向や偏光方向や液切り方向が同一方向になるよ
うにすることが好ましい。
【0068】また、全体的又は部分的に単分子膜を一方
向に配向させる工程であってもよいし、所定の部位ごと
に配向方向を異ならせて配向させる工程であってもよ
い。所定の部位ごとに配向方向を異ならせる場合、ラビ
ング配向法又は光配向法を適用することが好ましい。ラ
ビング配向法を適用して所定の部位ごとに配向方向を異
ならせることもできる。
【0069】また、光配向法を適用して所定の部位ごと
に配向方向を異ならせて配向させる場合には、例えば、
所定のパターンを形成した第1のフォトマスクを介し
て、第1の偏光を照射した後、第1のフォトマスクのパ
ターンと異なる所定のパターンを形成した第2のフォト
マスクを介して、第1の偏光の偏光方向と異なる偏光方
向を有する第2の偏光を照射すればよい。更に、パター
ンが互いに異なる複数のフォトマスクと偏光方向の互い
に異なる複数種の偏光とを用いれば、複雑な配向パター
ンを形成することができる。
【0070】また、偏光方向を変化させながら、単分子
膜に偏光をスキャン照射すれば、直線的に連なる導電性
ポリマーばかりでなく、曲線的に連なる導電性ポリマー
を形成することが可能である。
【0071】次に、導電領域形成工程では、単分子膜を
構成する分子相互を重合又は架橋させて共役系を形成す
ることができる。重合や架橋を行う重合法として触媒重
合法、電解重合法、エネルギービーム照射重合法等を適
用することができる。
【0072】重合又は架橋させる工程を複数回行うこと
により、導電性ポリマーを形成してもよい。例えば、膜
材料分子として、共役重合性官能基(共役結合で重合す
る重合性官能基)を複数有する有機分子を用いた場合、
単分子層内に含まれる複数の平行な平面それぞれに共役
系(共役結合鎖)を形成することができる。
【0073】更に、重合又は架橋を複数回行う際、各回
ごとに重合法あるいは重合条件が異なっていてもよい。
ここで、重合条件とは、同一の重合法を用いた場合の反
応条件を意味する。例えば、触媒重合において触媒の種
類や反応温度等が異なる場合、また、電解重合において
印加電圧等が異なる場合、また、エネルギービーム照射
重合においてビームの種類やビームのエネルギーやビー
ムの照射強度等が異なる場合である。
【0074】また、単分子膜の全部又は1部に導電領域
を形成する工程であってもよいし、電気的に互いに絶縁
された複数の導電領域を単分子膜に形成する工程であっ
てもよい。以下に、膜材料分子に含まれる共役重合性官
能基が触媒重合性官能基の場合、電解重合性官能基であ
る場合、エネルギービーム照射重合性官能基である場合
について説明する。
【0075】第1に、単分子膜を構成する有機分子が触
媒重合性官能基を有する場合について説明する。単分子
膜と触媒とを接触させることにより導電性ポリマーを形
成できる。したがって、触媒を含む溶液に単分子膜を浸
漬してもよいし、触媒を含む溶液を単分子膜に塗布して
もよく、また、触媒を含むガス雰囲気中に単分子膜を暴
露してもよいし、触媒を含むガスを単分子膜に吹き付け
てもよい。
【0076】また、前記配向処理工程(傾斜処理工程)
を行わない場合、触媒を含む溶液を単分子膜表面に対し
て一定方向に流すことにより、又は、触媒を含むガスを
単分子膜表面に対して一定方向に吹き付けることによ
り、単分子膜を配向させると共に導電性ポリマーを形成
することが可能である。したがって、配向処理工程を省
略して、所定の方向に連なる導電性ポリマーを含む導電
領域を形成できる。
【0077】また、電気的に互いに絶縁された複数の導
電領域を形成する場合、単分子膜上に所定のパターンの
被膜(レジストパターン)を形成した後、触媒と接触さ
せることにより、被膜の形成されていない部位に導電領
域を形成することができる。不要であれば被膜を除去す
ればよい。
【0078】第2に、単分子膜を構成する有機分子が電
解重合性官能基を有する場合について説明する。単分子
膜に電位差のある1対の電極を接触させることにより、
所定の方向に連なる導電性ポリマーを形成できる。した
がって、単分子膜の表面又は側面に接触しかつ互いに離
隔した1対の電解重合用の電極を形成し、形成した1対
の電極間に電圧を印加してもよいし、単分子膜の表面又
は側面に1対の外部電極を互いの電極が離隔するように
接触させ、一対の外部電極間に電圧を印加してもよい。
【0079】また、電気的に互いに絶縁された複数の導
電領域を形成する場合、複数対の電極を所定のパターン
に形成し、電極に所定の電位を与えることにより、電位
の異なる電極間に導電領域を形成できる。このとき2つ
の電極のみに電位を与えて導電領域を1つずつ形成して
もよいし、3つ以上の複数の電極に電位を与えて複数の
導電領域を同時に形成してもよい。
【0080】前記において、電極を形成して電解重合を
行うと端子付き導電領域を有する単分子膜を製造でき
る。不要であれば、これらの電極は除去する。
【0081】第3に、単分子膜を構成する有機分子がエ
ネルギービーム照射重合性官能基を有する場合について
説明する。単分子膜にエネルギービームを照射すること
により、導電性ポリマーを形成することができる。エネ
ルギービームとしては光、X線、電子線等を用いること
ができる。好ましくは、エネルギービームとして偏光又
は偏光X線を用いる。
【0082】また、前記配向処理工程(傾斜処理工程)
を行わない場合であっても、偏光を照射することによ
り、単分子膜を配向させると共に、導電性ポリマーを形
成することが可能である。したがって、配向処理工程を
省略して、所定の方向に連なる導電性ポリマーを含む導
電領域を形成できる。
【0083】また、電気的に互いに絶縁された複数の導
電領域を形成する場合、所定のパターンを形成した第1
のフォトマスクを介して、エネルギービームを照射した
後、第1のフォトマスクのパターンと異なる所定のパタ
ーンを形成した第2のフォトマスクを介して、エネルギ
ービームを照射する。
【0084】このとき、第1のフォトマスクを介して照
射されるエネルギービームと第2のフォトマスクを介し
て照射されるエネルギービームとは同じエネルギービー
ムでなくともよい。更に、エネルギービームとして偏光
又は偏光X線を用いる場合には、それらの偏光方向が同
じでなくともよい。例えば、パターンが互いに異なる複
数のフォトマスクと偏光方向の互いに異なる複数種の偏
光とを用いれば、導電性ポリマーの方向が互いに異なる
導電領域を簡便に形成できる。
【0085】また、エネルギービームを単分子膜にスキ
ャン照射すれば、より簡便に電気的に互いに絶縁された
複数の導電領域を形成できる。このとき、エネルギービ
ームとして偏光又は偏光X線を用いれば、導電性ポリマ
ーの方向が互いに異なる導電領域を簡便に形成すること
ができる。更に、偏光方向とスキャン方向(エネルギー
ビームの進行方向)とを平行に保ちながらスキャン照射
すれば、曲線的に所定の方向に連なる導電性ポリマーを
形成できる。
【0086】前記導電性ポリマーを効率よく形成するた
めには、触媒重合および/または光エネルギービーム照
射による重合をまず行い、最後に電解酸化重合によりネ
ットワークを完結させる手段がある。触媒重合および/
または光エネルギービーム照射による重合は重合速度が
速く、また電解酸化重合はそれほど速くはないが電流を
流しながら重合させるので、ネットワークが完結した瞬
間に大電流が流れるため、完結したい否かを容易に検知
できる。
【0087】次にドーピング工程では、電荷移動性のド
ーパントをドーピングすることにより、簡便に導電率を
向上させることができる。ドーパントとしてはヨウ素
(I2)、BF-イオン等のアクセプター・ドーパント
(電子受容体)であってもよいし、Li等のドナー・ド
ーパント(電子供与体)であってもよい。
【0088】次に、基材絶縁膜形成工程では、基材上に
シリカ膜又は酸化アルミニウム膜等の絶縁性の被膜を形
成することができる。透明電極等に用いるためには透明
な被膜を形成する必要がある。また、絶縁性の被膜とし
て、膜構成分子が化学吸着しやすい被膜を形成すると、
基材の材質に依らず、単分子膜を形成できる。
【0089】最後に、保護膜形成工程では、単分子膜表
面にの絶縁性の保護膜を形成する。保護膜形成工程を行
えば、耐剥離性等の耐久性に優れた単分子膜を形成する
ことができる。また、ドーパントを含む単分子膜であれ
ば、脱ドーピングによるドーパントの蒸発を低減でき
る。また、透明電極等に用いるためには透明な保護膜を
形成する。
【0090】前記の製造方法により形成された導電領域
を有する単分子膜の構造例を図1A−Cに示す。図1A
−Cは、例えばガラス基材1上に形成された、導電領域
を有する単分子膜を模式的に示す断面図である。図1A
は基材1の表面に単分子膜4が共有結合により固定され
ており、共役重合性官能基9が重合されて導電領域6が
全領域に形成され、導電性ポリマー5が形成されている
状態を示す。図1Bは複数の部分領域(導電領域6,
6)に導電性ポリマー5が形成された単分子膜を示す。
図1Cは共役重合性官能基を内部に有する有機分子から
なり、複数の部分領域(導電領域6)に導電性ポリマー
の形成された単分子膜を示す。
【0091】図2は、単分子膜4中の導電性ポリマー5
の方向を説明するための模式的平面図である。なお、図
2以外の図面においては、蛇行した導電性ポリマーを蛇
行のない直線又は蛇行のない曲線として表す。
【0092】また、前記導電領域を有する単分子膜内に
おける、導電領域のパターン例を図3A−Dに示す。図
3A−Dは、基材上に形成された導電性ポリマーを含む
単分子層の導電領域6の構成例を模式的に示す平面図で
ある。図3Aは一方向に連なる導電性ポリマー5が全領
域に形成され単分子層4であり、図3Bは、各導電領域
6に一方向に連なる導電性ポリマー5の形成された、平
行な導電領域6を有する単分子層4を示し、図3Cは、
各導電領域に一方向に連なる導電性ポリマー6の形成さ
れた、マトリックス状に配列した導電領域6を有する単
分子層4を示し、図3Dは、各導電領域に形成された導
電性ポリマーの方向が同じでなく、かつ、各導電領域の
形状も同じでない、任意のパターンに配列した導電領域
6を有する単分子層4を示す。
【0093】また、基材上に形成される導電領域を有す
る単分子膜の構成を図4A−Bに示す。図4A−Bは、
基材上に形成された、単分子膜の構造例を模式的に示す
断面図である。図4Aは基材絶縁膜2付き基材1上に形
成された単分子膜を示し、図4Bは基材1上に形成さ
れ、かつ表面に保護膜3の形成された単分子膜4を示
す。図示していないが、基材上に、絶縁膜と単分子膜と
保護膜とが基材表面から順次積層された構造でもよい。
【0094】また、図6A−Bは、基材上の選択的な部
位に導電領域を形成した構成例を模式的に示す斜視図で
ある。図6Aは基材1上の全部位に形成された単分子膜
4内に、複数の導電領域6が形成された構成を示し、図
6Bは全領域に導電領域6の形成された単分子膜4を、
基材1上に複数形成した構成を示す。
【0095】(実施の形態2)本実施の形態2において
は、導電領域を有する単分子累積膜の例を説明する。
【0096】単分子累積膜を形成する場合、第1層目は
化学吸着法により形成する。第2層目以降は化学吸着法
でもよいし、ラングミュアーブロジェット法を適用して
も良い。しかし、全層を化学吸着法による単分子積層膜
とすることが簡便であり、好ましい。また、配向処理工
程(傾斜処理工程)を行うことは実施の形態1において
も説明したが、単分子累積膜の場合は単分子膜の場合に
比べその重要性が大きい。以下においては、配向処理工
程を含む製造方法について説明する。
【0097】本発明に係る導電領域を有する単分子累積
膜に製造方法おいては、単分子層形成工程と、導電領域
形成工程と、配向処理工程との様々な組合せ及び順序が
可能である。以下に、好ましい製造方法を製造方法1〜
5に説明する。
【0098】製造方法1は、単分子層形成工程を複数回
連続して行って単分子累積膜を形成した後、導電領域形
成工程を行うことにより、導電領域を有する単分子累積
膜を形成する製造方法である。
【0099】製造方法2は、単分子層形成工程と配向処
理工程(傾斜処理工程)とを順次交互に複数回行って、
配向した単分子層を積層させた後、導電領域形成工程を
行うことにより、導電領域を有する単分子累積膜を形成
する製造方法である。
【0100】製造方法3は、単分子層形成工程と配向処
理工程(傾斜処理工程)と導電領域形成工程を順次行う
一連の工程を複数回行うことにより、導電領域を有する
単分子累積膜を形成する製造方法である。
【0101】製造方法4は、単分子層形成工程と配向処
理工程(傾斜処理工程)と導電領域形成工程を順次行っ
て導電領域を有する単分子膜を形成した後、単分子層形
成工程を複数回連続して行い、その後、導電領域形成工
程を行うことにより、導電領域を有する単分子累積膜を
形成する製造方法である。
【0102】製造方法5は、前処理工程を行った後、単
分子層形成工程を複数回連続して行い、その後、導電領
域形成工程を行うことにより、導電領域を有する単分子
累積膜を形成する製造方法である。また、前処理工程を
行った後、前記製造方法1〜製造方法5のいずれかの製
造方法を行う製造方法であっても好ましい。
【0103】前記の製造方法1〜5を用いた場合であっ
ても、導電領域を有する単分子累積膜にどの様な導電領
域のパターンを形成するか、また、配向処理工程でどの
様な配向方法を適用するか、導電領域形成工程でどの様
な重合方法を適用するか、等によりその優位性は製造方
法ごとに異なる。したがって、所望の導電領域を有する
単分子累積膜を形成するために最適な製造方法を選択す
ることが重要である。
【0104】前記製造方法1〜5は、更に、基材絶縁膜
形成工程、洗浄工程、ドーピング工程、保護膜形成工程
のいずれか1つ又は複数の工程を含む製造方法であって
もよい。単分子層形成工程、導電領域形成工程、前処理
工程、配向工程、基材絶縁膜形成工程、洗浄工程、ドー
ピング工程及び保護膜形成工程の各々についての詳細
は、前記実施の形態1を参照することとし、以下におい
て、有機薄膜が単分子膜であるか、又は単分子累積膜で
あるかによって生じる各工程の相違点について述べる。
【0105】各単分子層形成工程において、同一の膜材
料分子を用いて、1種の有機分子からなる単分子累積膜
を形成してもよいし、異なる膜材料分子を用いて、単分
子層ごとに構成分子の異なる単分子累積膜を形成しても
よい。
【0106】次に、配向処理工程におけるラビング配向
法及び光配向法の適用性について説明する。単分子膜形
成工程で、基材は膜構成分子を含む溶液中から所定の角
度、通常は溶液面に対して垂直で引き上げられるため、
単分子形成工程で液切り配向が行われていることにな
る。
【0107】ラビング配向法は、膜表面をラビングする
ことにより、膜を構成する有機分子を配向させる方法で
あるため、積層数の多い単分子累積膜に対して適用した
場合、基材側下層の単分子層を十分に配向させることが
できなくなる。したがって、ラビング配向は、製造方法
2〜4を適用する場合に適している。なお、製造方法1
を適用して積層数の少ない単分子累積膜を形成する場合
であれば、ラビング配向法を用いることができる。
【0108】一方、光配向法は、積層数の多い単分子累
積膜に対しも適用できるので、製造方法1〜5のいずれ
に対しても適している。ただし、過度に積層数が多くな
り、光透過性が劣化する場合においては、基材側下層の
単分子層を十分に配向させることができなくなる。
【0109】次に、導電領域形成工程で触媒重合法、電
解重合法、エネルギービーム照射重合法を適用する場合
について、好ましい製造方法を重合法ごとに説明する。
【0110】触媒重合法は、単分子累積膜の表面と触媒
とを接触させて重合反応を誘起する方法であるので、基
材側下層の単分子層内に十分に重合した導電性ポリマー
を形成することが困難となる。したがって、触媒重合法
を適用する場合は、前記製造方法4が適している。積層
数が極めて少ない単分子累積膜を形成する場合には、前
記製造方法1又は製造方法2であってもよい。
【0111】また、電解重合法を適用する場合、単分子
累積膜表面に接触した一対の電極に電圧を印加すると基
材側下層の単分子層内に十分に重合した導電性ポリマー
を形成することが困難となるので、単分子累積膜の側面
部に接触した電極に電圧を印加することが好ましい。こ
のように、側面部に接触した電極に電圧を印加すれば、
前記製造方法1〜5のいずれの製造方法を適用しても単
分子累積膜の各単分子層に導電性ポリマーを形成するこ
とができる。更に、電解重合法は、単分子累積膜の全面
に導電領域を形成する場合や単分子累積膜を貫通する導
電領域を形成する場合に適する。
【0112】また、エネルギービーム照射重合法は、積
層数の多い単分子累積膜に対しも適用できるので、製造
方法1〜5のいずれに対しても適している。ただし、過
度に積層数が多くなり、エネルギービームの透過性が劣
化する場合においては、基材側下層の単分子層を十分に
配向させることができなくなる。
【0113】次に、洗浄工程は、単層形成後ごとに行う
ことが好ましい。
【0114】次に、ドーピング工程は、導電性ポリマー
の形成された単分子層に対して個々に行うことが好まし
い。したがって、ドーピング工程を行う際には、前記製
造方法3を適用することが好ましく、前記製造方法3の
各導電領域形成工程後に行うことが好ましい。
【0115】前記の製造方法により形成される、単分子
累積膜の導電領域の構造例を図7A−Cに示す。図7A
は各単分子層4の配向方向を同一方向とするX型の単分
子累積膜を示し、図7Bは各単分子層4ごとに配向方向
を強めたX型の単分子累積膜であり、図7Cは各単分子
層4ごとに2つの配向方向のいずれかに配向したX型の
単分子累積膜である。
【0116】(実施の形態3)本実施の形態に係る電気
ケーブルを図8A−Cを用いて説明する。図8A−C
は、単分子膜が形成された導電領域を芯線として用いる
電気ケーブルの構造例を模式的に示す図である。図8A
は、ガラスまたは金属からなる芯線11の外表面に形成
され、全領域を導電領域とする導電性単分子膜6を備
え、その表面が電気的絶縁膜13で被覆された電気ケー
ブルの断面図である。図8Bは、四角柱状の絶縁基材1
1の表面に形成され、かつ、外側表面を絶縁保護膜13
で被膜された、4つの導電領域を有する単分子膜4を備
えた集合電線型の電気ケーブルの斜視図である。図8C
は、基材上に形成された、全領域を導電領域6とする単
分子膜4と4対の接点7とを備えた集合電極型のフラッ
トケーブルの斜視図である。なお、図8Cのフラットケ
ーブルは、有機薄膜の導電領域が高い導電異方性を有す
ることにより、4本の芯線を備えたフラットケーブルと
なる。
【0117】また、図6A−Bに示された、絶縁基材1
上に導電領域6を有する有機薄膜4に、更に、絶縁性の
保護膜を形成することによっても、集合電極型のフラッ
トケーブルを提供することができる。
【0118】(実施の形態4)本発明の有機薄膜は、導
線、集合配線、電極、透明電極として利用した様々なデ
バイスを提供できる。例えば、半導体素子、コンデン
サ、半導体装置等の電子デバイスや、液晶表示装置、電
界発光素子、太陽電池等の光デバイスを提供できる。
【0119】例えば、図9A−Bは、単分子膜に形成さ
れた導電領域を電極として用いるコンデンサの構造例を
模式的に示す断面図であり、図9Aは、導電領域6を有
する単分子膜4の形成された2つの基材1で、各単分子
膜4を内側にして、誘電体8を狭持した構造であり、図
9Bは、誘電体8の平行な2つの表面それぞれに、導電
領域6を有する単分子膜4の形成された構造である。図
9A及び図9Bにおいて、導電性ポリマーの方向と直交
する方向に、導電領域6を貫く金属接点7(配線、リー
ド線)が形成されていると、有機薄膜電極全面に均一な
電圧を印加でき、好ましい。
【0120】本発明のピロール化合物は、例えば3−ア
ルキルピロールと末端ブロモ1−アルキルを反応させて
(3−アルキルピロリル)アルキルを合成する工程と、
前記合成された(3−アルキルピロリル)アルキルとト
リクロロシランを反応させることで、(3−アルキルピ
ロリル)アルキルトリクロロシランを合成できる。アル
キル(3−アルキルピロリル)アルキルトリクロロシラ
ンの場合は、例えばアルキル(3−アルキルピロール)
と末端ブロモ1−アルキルを反応させてアルキル(3−
アルキルピロリル)アルキルを合成する工程と、前記合
成されたアルキル(3−アルキルピロリル)アルキルと
トリクロロシランを反応させることで合成できる。
【0121】
【実施例】以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に
説明する。下記の実施例において、単に%と表示してい
るのは質量%を意味する。
【0122】(実施例1) [1]合成工程1. 11−(3−メチルピロリル)−
1−ウンデセンの合成 下記化学式(C)に示す反応式に従って、アルゴン気流
下、2Lの反応容器に3−メチルピロ−ル 0.567
mol、脱水テトラヒドロフラン(THF)200mlを
仕込み、5℃以下に冷却した。
【0123】これに1.6M n-ブチルリチウムヘキサ
ン溶液354ml(0.567mol)を10℃以下で滴
下した。同温度で1時間攪拌させた後、ジメチルスルホ
キシドを600ml加えてTHFを加熱留去して溶媒置
換した。次に、11―ブロモ−1−ウンデセン 14
5.2g(0.623mol)を室温にて滴下した。滴下
後、2時間、同温度で攪拌させた。
【0124】次に、前記反応混合物に水600molを加
え、ヘキサン抽出し、有機層を水洗した。無水硫酸マグ
ネシウムにて乾燥後、溶媒留去した。
【0125】さらに、残渣を、ヘキサン/酢酸エチル=
50/1にてシリカゲルカラムで精製して113.2g
の11−(3−メチルピロリル)−1−ウンデセンを得
た。
【0126】
【化7】
【0127】収率は91.2%であった。
【0128】なお、ここで、ピロリル基の5位をアルキ
ル基、または末端にビニル基やエチニル基のような不飽
和基を含む下記式の(a)−(g)で示される官能基で
置換した原料を用いても、分子修飾された11−(3−
メチルピロリル)−1−ウンデセン誘導体がそれぞれ得
られた。
【0129】
【化8】
【0130】[2]合成工程2. 11−(3−メチル
ピロリル)−ウンデセニルトリクロロシランの合成 下記化学式(C2)に示す反応式に従って、(1)〜(8)の
反応をそれぞれ行った。
【0131】
【化9】
【0132】(1) 50mlキャップ付き耐圧試験管
に、11−(3−メチルピロリル)−1−ウンデセン
9.1×10-3mol、トリクロロシラン1.48×10-2m
ol、AIBN0.015gを仕込み80℃で5時間反応させ
た。
【0133】その後、NMRにて反応チェックしたとこ
ろ、ほとんど未反応であった。
【0134】さらにトリクロロシラン1.48×10-2m
ol、AIBN 0.015gを加え、100℃で22時間反
応させた。反応チェックすると、50%程度反応が進行
していた。(2) 50mlキャップ付き耐圧試験管に、
11−(3−メチルピロリル)−1−ウンデセン9.1
×10-3mol、トリクロロシラン1.48×10-2mol、H
2PtCl 6・6H2Oの5%イソプロピルアルコ−ル溶液0.0
1gを仕込み50℃で9時間反応させた。NMRにて反応
チェックしたところ、50%程度反応が進行していた。
【0135】その後、一夜同温度にて反応させたが反応
は進行しなかった。 (3) 還流冷却管、滴下ロートを取り付けた30ml反
応容器に、11−(3−メチルピロリル)−1−ウンデ
セン9.1×10-3mol、H2PtCl6・6H2Oの5%イソプロ
ピルアルコ−ル溶液0.01gを仕込み、70℃に加熱
した。これにトリクロロシラン10×10-2molを60
〜70℃で2時間かけて滴下した。
【0136】その後2時間同温度で反応させた。
【0137】NMRにて反応チェックしたところ、50%
程度反応が進行していた。
【0138】その後、一夜同温度にて反応させたが反応
は進行しなかった。 (4) 還流冷却管、滴下ロートを取り付けた50ml反
応容器に、11−(3−メチルピロリル)−1−ウンデ
セン4.57×10-2mol、H2PtCl6・6H2Oの5%イソプ
ロピルアルコ−ル溶液0.05gを仕込み、70℃に加
熱した。これにトリクロロシラン5.50×10-2molを
60〜70℃で4時間かけて滴下した。
【0139】その後、6時間同温度で反応させた。NMR
にて反応チェックしたところ、50%程度反応が進行し
ていた。
【0140】その後、H2PtCl6・6H2Oの5%イソプロピ
ルアルコ−ル溶液0.05g加えて一夜同温度にて反応
させたが反応は進行しなかった。
【0141】これにトリクロロシラン5.50×10-2m
olを60〜70℃で2時間かけて滴下した。このとき、
トリクロロシランが還流するため内温50℃に下がっ
た。なお、滴下後6時間反応させて、反応チェックした
ところ反応は進行していなかった。
【0142】これを50mlキャップ付き耐圧試験管に
移し、100℃で一夜反応させたが、変化がなかった。
【0143】これを減圧蒸留して4.0gの11−(3
−メチルピロリル)−ウンデセニルトリクロロシランを
得た。
【0144】このとき、得た物質のbpは119〜12
1℃/5.32Pa(0.04mmHg)であり、収率は24.
7%であった。 (5) 50mlキャップ付き耐圧試験管に、11−(3
−メチルピロリル)−1−ウンデセン4.57×10-2m
ol、トリクロロシラン7.38×10-2mol、H2PtCl6・6
H2Oの5%イソプロピルアルコ−ル溶液0.05gを仕込
み100℃で3時間反応させた。NMRにて反応チェック
したところ、50%程度反応が進行していた。その後、
一夜同温度にて反応させたが反応は進行しなかった。 (6) 還流冷却管、滴下ロートを取り付けた50ml反
応容器に、11−(3−メチルピロリル)−1−ウンデ
セン3.06×10-1mol、H2PtCl6・6H2Oの5%イソプ
ロピルアルコ−ル溶液0.34gを仕込み、70℃に加
熱した。これにトリクロロシラン3.69×10-1molを
60〜70℃で2時間かけて滴下した。その後、3時間
同温で反応させた。NMRにて反応チェックしたところ、
40%程度反応が進行していた。その後、一夜同温度に
て反応させたが反応は進行しなかった。
【0145】前記(5)、(6)を合わせて減圧蒸留して、2
6.9gの11−(3−メチルピロリル)−ウンデセニ
ルトリクロロシランを得た。このとき、得た物質のbp
は121〜123℃/6.65Pa(0.05mmHg)であ
り、収率は21.6%であった。 (7) 還流冷却管、滴下ロートを取り付けた50ml反
応容器に、11−(3−メチルピロリル)−1−ウンデ
セン3.65×10-1mol、H2PtCl6・6H2Oの5%イソプ
ロピルアルコ−ル溶液0.41gを仕込み、70℃に加
熱した。これにトリクロロシラン4.42×10-1molを
60〜70℃で2時間かけて滴下した。その後一夜同温
にて反応させた。NMRにて反応チェックしたところ、3
0%程度反応が進行していた。
【0146】これを減圧蒸留して、17.0gの11−
(3−メチルピロリル)−ウンデセニルトリクロロシラ
ンを得た。このとき、得た物質のbpは129〜132℃
/33.25Pa(0.25mmHg)であり、収率は13.1%
であった。 (8) 100mlキャップ付き耐圧試験管に、11−
(3−メチルピロリル)−1−ウンデセン45.0g
(2.05×10-1mol)、トリクロロシラン1.85×
10-1mol、H2PtCl6・6H2Oの5%イソプロピルアルコ−
ル溶液0.23gを仕込み100℃で12時間反応させ
た。NMRにて反応チェックしたところ、50%程度反応
が進行していた。
【0147】これを減圧蒸留して、14.7gの11−
(3−メチルピロリル)−ウンデセニルトリクロロシラ
ンを得た。このとき、得た物質のbpは124〜125
℃/13.3Pa(0.1mmHg)であり、収率は22.4%
であった。
【0148】なお、ここで反応(7)、(8)では回収した原
料を用いて反応させた。
【0149】以上、工程2の合成方法として8種の合成
条件を検討したが、どれも収率20〜25%程度であっ
た。ただし、回収原料を使って、トリクロロシラン滴下
法では13%と低くなってしまった。また、滴下法はス
ケ−ルが大きくなると反応率が低下するようである。
【0150】以上の結果から、仕込量、反応時間等を考
慮すると、反応条件(2)か(8)の方法が適当と思われる。
【0151】ここで、ピロリル基の5位を炭素数1−1
0のアルキル基、または末端にビニル基やアセチレン基
のような不飽和基を含むアルキル基で置換した11−
(3−メチルピロリル)−ウンデセンを原料として用い
ても、11−(3−メチルピロリル)−ウンデセニルト
リクロロシラン誘導体がそれぞれ得られた。
【0152】前記化学式(C2)で得られた下記化学式
(C3)に示す11−(3−メチルピロリル)−ウンデ
セニルトリクロロシランを脱水したジメチルシリコーン
溶媒で1%に薄めて化学吸着液を調製した。
【0153】
【化10】
【0154】また、図10Aに示すように予め厚み0.
2mmの電気的絶縁性ポリイミド基材21の表面に、厚
み0.5μmの電気的絶縁性シリカ膜2を形成した。
【0155】次に、ポリイミド基材21を化学吸着溶液
に浸漬して、シリカ膜2の表面に化学吸着分子を化学吸
着させた(単分子層形成工程)。単分子層形成工程後、
ポリイミド基材21をクロロホルム溶液に浸漬して、ポ
リイミド基材21上に残留する未反応の膜材料分子を洗
浄除去した。これにより、表面に汚れのない単分子膜1
4を形成した(図10A)。
【0156】このとき、ポリイミド基材21上のシリカ
膜2表面には、活性水素を含む水酸基が多数存在するの
で、それらの水酸基と化学吸着分子の−SiCl結合基
との脱塩素反応により共有結合で化学結合して、化学式
(C4)に示す化学吸着分子で構成された単分子膜14
が形成されている。ただし、化学式(C4)において、
化学吸着分子中の全ての−SiCl結合基がシリカ膜2
表面と反応した場合を示したが、少なくとも1つの−S
iCl結合基がシリカ膜2表面と反応していればよい。
【0157】
【化11】
【0158】次に、形成した単分子膜14の表面に、液
晶配向膜の作製に使用するラビング装置(図5A)を使
用してラビング処理を行い、単分子膜14を構成する化
学吸着分子を配向させた(傾斜処理工程)(図10
B)。ラビング処理においてレーヨン製のラビング布4
1を巻き付けた直径7.0cmのラビングロール42を
用い、押し込み深さ0.3mm、ニップ幅11.7m
m、回転数1200回転/s、テーブルスピード(基材
走行速度)40mm/sの条件でラビングを行った。こ
のとき、ラビング方向と略平行に配向(傾斜)した単分
子膜24となった。
【0159】次に、真空蒸着法、フォトリソグラフィ法
及びエッチング法を適用して、単分子膜24の表面に、
長さ50mmの一対の白金電極17を5mm隔てて蒸着
形成した後、室温下で超純水中に浸漬し、かつ、一対の
白金電極17間に8Vの電圧を6時間印加して、電解酸
化重合を行った(導電領域形成工程)。これにより、下
記化学式(C5)を重合単位とする、所定の方向(ラビ
ング方向)に連なる導電性のポリピロール型共役系を含
む導電性ポリマーを有する導電領域16を一対の白金電
極17間に形成できた(導電領域形成工程)(図10
D)。
【0160】
【化12】
【0161】得られた有機導電膜の膜厚は約2.0n
m、ポリピロール部分の厚さは約0.2nmであった。
【0162】前記の一対の白金電極17間に有機導電膜
を介して8Vの電圧印加で1mAの電流を流すことがで
きた。したがって、ドナーやアクセプタ等の不純物をド
ープしなくとも、導電性ポリマーの導電率が約103
/cmの導電領域を有する単分子膜34が得られた。
【0163】上記のようにして形成された導電領域の導
電率は金属の1/10〜1/100程度であるので、単
分子膜34を積層すれば半導体素子やコンデンサ等の機
能デバイスの配線や電極に使用できるレベルであった。
また、本実施例に係る単分子膜34は可視領域の波長の
光を吸収しないため、積層すれば液晶表示素子、電解発
光素子、太陽電池等の透明電極としても使用できるレベ
ルであった。
【0164】なお、上記の本実施例では絶縁性のシリカ
膜2を表面に設けたポリイミド基材21を用いたが、絶
縁性の酸化アルミニウム膜を表面に設けたポリイミド基
材を用いても同様の導電領域を有する単分子膜が得られ
た。また、ポリイミド基材の代わりに導電性のアルミニ
ウム基材を用いても、その基材表面にシリカ膜を設ける
こと又はその基材表面に酸化処理を施すことにより、同
様の導電領域を有する単分子膜が得られた。
【0165】また、上記の本実施例の傾斜処理工程でラ
ビング配向法を適用したが、単分子層形成工程前に、シ
リカ膜を設けたポリイミド基材の表面にラビング処理を
施し、その後、同様の方法で単分子膜を形成すればラビ
ング方向に配向した単分子膜を形成することができ、更
にその後、同様の方法で導電領域を形成すると、同様な
導電特性の導電領域を有する単分子膜が得られた。
【0166】また、上記の本実施例の傾斜処理工程でラ
ビング配向法を適用したが、図5Bに示す如く、偏光板
43を介して紫外線を照射しても、単分子膜14を構成
する化学吸着分子22が偏光方向と略平行に配向した単
分子膜24を形成する(光配向法)ことができ、その
後、上記と同じ方法で導電領域を形成すると、より導電
性に優れた導電領域を有する単分子膜34が得られた。
なお、光配向法で用いる光としては、上記の偏光紫外線
のみに限らず、単分子膜34が吸収する波長の光であれ
ば用いることができた。
【0167】また、上記の本実施例の洗浄工程におい
て、洗浄用のクロロフォルム溶液からポリイミド基材1
を引き上げる際に、図5Cに示す如く、ポリイミド基材
1の表面を洗浄用のクロロフォルム溶液44の液面にし
て、略垂直に引き上げて液切りを行っても、単分子膜を
構成する化学吸着分子22が液切り方向と略平行に配向
した単分子膜24を形成する(液切り配向法)ことがで
きた。これにより、洗浄工程と傾斜処理工程とを同時に
行うことができる。更に、液切り配向処理を行った単分
子膜に光配向処理を施し、その後、上記と同じ方法で導
電領域を形成すると、導電率104S/cmの導電領域
を有する単分子膜34が得られた。
【0168】(実施例2)実施例1と同様の方法で合成
した下記化学式(D1)に示す5−ヘキシル−(3−メ
チルピロリル)オクタデセニルトリクロロシランを用
い、脱水したジメチルシリコーンの有機溶媒で1%に薄
めて化学吸着液を調製した。
【0169】
【化13】
【0170】次に、厚み0.2mmの絶縁性ポリイミド
基材101(ガラスあるいは導電性のメタル基材でも良
い)の表面に厚み0.5μmの絶縁性の薄膜、例えばシ
リカ保護膜あるいはAl23の保護膜102を形成した
(図11A)。
【0171】次に、前記吸着液に浸漬して前記シリカ膜
表面に化学吸着を行い、さらに表面に残った未反応の前
記物質をクロロホルムで洗浄除去して、前記物質よりな
る単分子膜103を選択的に形成した(図11B)。
【0172】このとき、基材表面(シリカ膜またはAl
23膜)には活性水素を含む水酸基が多数存在するの
で、前記物質の−SiCl基が水酸基と脱塩化水素反応
を生じて基材表面に共有結合した下記化学式(D2)で
示される分子で構成された単分子膜103が形成された。
【0173】
【化14】
【0174】その後、図11Cに示したように、液晶配
向膜作製に使用するラビング装置104を使用し、レーヨ
ン製布105(吉川加工(株)製:YA−20−R)で、
押し込み深さ0.3mm、ニップ幅11.7mm、回転
数1200回転、テーブルスピード40mm/secの
条件で電極ギャップとほぼ垂直方向にラビング処理する
と、単分子膜を構成する分子がラビング方向とほぼ並行
に配向した単分子膜103'が得られた(図11D)。
【0175】次に、前記単分子膜表面に長さ50mmの
白金電極(ソース、ドレーン電極)106,106'を5mm間
隔で1対を蒸着形成し、超純水中で室温(25℃)下で
6時間この電極間に8Vの直流電界を印加してピロリル
基107の電解酸化重合を行った。その結果、図11Eと
下記化学式(D3)で示されるような前記電極間を導電
性のポリピロリル基107'(共役結合基)で接続され、室
温(25℃)での導電度が4×103S/cm(この単
分子膜の場合、8Vの電界印加で、4mAの電流を流す
ことができた)の導電性単分子膜108が得られた(図1
1F)。
【0176】
【化15】
【0177】なお、より大きな電流容量が必要な場合に
は、前記物質の代わりに末端アルキル基を不飽和炭化水
素基、たとえば前記化学式8のD−Fで示したようなビ
ニル基やアセチレン基を組み込んだ物質を用い、化学吸
着反応させた後、重合後または重合前に酸化して水酸基
(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)に変換
し、この活性水素の部分に次層の単分子膜を累積する工
程を繰り返して単分子膜を累積形成すれば導電性の単分
子累積膜を形成できた。
【0178】この導電度は、金属の1/10〜1/10
0程度であり、積層すれば半導体装置やコンデンサ等の
機能デバイスの配線や電極に使用できるレベルであっ
た。また、この被膜は、単分子膜であり、膜厚がナノメ
ーターレベルできわめて薄いため、可視光の波長の光を
ほとんど吸収せず、透過する。このため、液晶表示素子
や電界発光素子、太陽電池等の透明電極に使用できるレ
ベルであった。
【0179】なお、ここで、単分子膜を構成する分子を
配向させる際、偏光板121を介して紫外線122を照射する
(図12A)と、単分子膜を構成する分子123が偏光方
向とほぼ並行に配向した単分子膜が得られ、その後、前
記と同様の方法で重合するとより導電性に優れた導電性
単分子膜が得られた。
【0180】なお、光配向に用いる光として、単分子膜
が吸収する波長の光であれば、紫外光あるいは可視光領
域の偏光を用いて光配向を行うことが可能であった。
【0181】また、同単分子膜を形成後、もう一度洗浄
液124であるクロロフォルムに浸漬し、同様の洗浄を行
い、さらに基材を立てながら引き上げて液切りを行う
と、単分子膜を構成する分子が液切り方向とほぼ並行に
配向した単分子膜123'が得られ、その後、前記と同様の
方法で電解酸化重合すると、室温(25℃)で104
・cmの導電性単分子膜が得られた(図12B)。
【0182】また、基材を立てながら引き上げて液切り
を行う工程を光配向の前に行うとさらに配向性を向上で
きた。
【0183】なお、この様な被膜は、電界発光素子(E
L)や太陽電池で用いられているインジウム錫酸化物合
金(ITO)製透明電極の代わりの透明電極としても利
用可能であった。
【0184】また、層内の複数の導電性共役結合基が特
定の方向に配向した単分子膜状または単分子累積膜状の
被膜で、導電度が103S/cm以上の被膜を作成すると、
コンデンサの電極、半導体ICチップの配線、または電
磁波シールド膜にも利用可能であった。
【0185】(実施例3)図13に示すように、実施例
1においてポリイミド基材101の代わりにSi基材131
(ゲート電極として利用)を用い、保護膜102の代わり
に2酸化シリコン膜(SiO2)132を形成し、同様の導
電性単分子膜133を形成した後、一対の白金電極(それ
ぞれソース134、ドレーン135電極として利用)を5μm
間隔で形成した他は、同様のプロセスを行ない、前記S
iO2膜をゲート絶縁膜とした薄膜トランジスタ(TF
T)型有機電子デバイス(3端子素子)136を作製でき
た(図13)。
【0186】このデバイスでは、TFTのチャネルは、
それぞれ両端がソース及びドレーン電極に結合された共
役結合基であるポリピロリル基で構成されているため、
電界効果の移動度が約1000cm2/V・S数百以上の有機
TFTが容易に得られた。
【0187】(実施例4)図14に示すように、まず、
多数の有機電子デバイスを液晶の動作スイッチとして用
いるため、実施例1と同様のプロセスでアクリル基材
(0.5mm厚)141表面に3端子有機電子デバイス142
群をマトリック状に複数個配列配置形成して、さらに、
それぞれのソース側及びゲート側電極をソース配線とゲ
ート配線でそれぞれ接続した。またドレーン側電極に
は、インジウム−錫酸化物合金(ITO)を用いて透明
電極143を形成した。
【0188】次に、前記アレイ基材表面に通常の方法で
ポリイミド被膜を形成し、ラビングして配向膜144を形
成し、アレイ基材145を作製した。
【0189】一方、平行して、アクリル基材146表面に
マトリック状にRGBの色要素147群を配列配置してカ
ラーフィルターを形成し、さらに導電性透明電極148を
前面に形成してカラーフィルター基材149を作製した。
【0190】次に、前記カラーフィルター表面にポリイ
ミド被膜を形成し、ラビングして配向膜144'を作製し
た。
【0191】次に、前記配向膜の形成されたアレイ基材
145とカラーフィルター基材149を配向膜が向かい合わせ
になるよう重ね合わせし、スペーサー150を挟んでエポ
キシ系接着剤151で封口部を除いて接着して所定の間隔
で周縁部をシール接着した液晶セルを作製した。
【0192】最後に、TN型液晶152を注入し封止し
て、さらに周辺回路を組み込んだICチップを実装し、
前後に偏光板153,153'を設置してバックライト154を組
み込んでTN型液晶表示装置155を製造できた(図1
4)。
【0193】この方法では、アレイの製造において、基
材加熱の必要がないので、アクリル基材のようなガラス
転移点(Tg)が低い基材を用いても十分高画質な型液
晶表示装置を作成できた。
【0194】このとき、有機電子デバイスのゲート電極
に接する絶縁性単分子膜または絶縁性単分子累積膜とし
て、炭化水素基を含む界面活性剤(例えばCH3-(CH2)9-S
i-Cl 3)を用い、化学吸着法によりCH3-(CH2)9-Si(-O-)3
の単分子膜を形成した。この場合は、耐電圧特性を0.
5×1010V/cm〜1×1010V/cmまで大幅に向
上できた。その耐剥離強度は、1トン/cm2程度にな
り、信頼性に優れた液晶表示装置製造できた。
【0195】なお、実施例4においてはボトムゲートタ
イプの液晶表示装置の作成例を示したが、トップゲート
タイプの液晶表示装置に応用することもできる。
【0196】(実施例5)図15に示すように、まず、
多数の有機電子デバイスを電界発光素子の動作スイッチ
として用いるため、実施例1と同様のプロセスでポリエ
ーテルサルホン基材(厚み0.2mm)161表面に3端
子有機電子デバイス162群をマトリック状に複数個配列
配置形成して、さらに、それぞれのソース側及びゲート
側電極をソース配線とゲート配線でそれぞれ接続した。
またドレーン側電極には、インジウム−錫酸化物合金
(ITO)を用いて透明電極163を形成してアレイ基材1
64を作製した。
【0197】次に、前記3端子有機電子デバイスのドレ
ーンに接続された透明電極163上にホール輸送層165を蒸
着し、さらに赤色発光層166(2,3,7,8,12,13,17,18-オ
クタエチル-21H23H-ポルフィン プラチナ(I
I))と緑色発光層66’(トリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム)と青色発光層166"(4,4'−ビス
(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル)をそれぞれ
マスク蒸着した後、さらに電子輸送層167を全面蒸着
し、陰極168(例えばMgとAgの合金、AlとLiの
合金、または電子輸送層167の上にLiFとAlを積層
したもの)を形成して、最後に、周辺回路を組み込んだ
ICチップを実装するとEL型表示装置169を製造した
(図15)。
【0198】この方法ではアレイの製造において、基材
を加熱する必要がないので、ポリエーテルサルホン基材
を用いても十分高画質なEL型表示装置を作成できた。
【0199】このとき、有機電子デバイスのゲート電極
の上に実施例4で用いた炭化水素基を含む界面活性剤で
絶縁膜を形成すると、耐電圧特性を0.5×1010V/
cm〜1×1010V/cmまで大幅に向上できた。その
耐剥離強度は、1トン/cm 2程度になり、信頼性に優
れた液晶表示装置が製造できた。
【0200】また、3端子有機電子デバイスのドレーン
に個々に接続されたエレクトロルミネッセンス膜を接続
形成する工程において、それぞれ赤、青、緑色の光を発
光する3種類のエレクトロルミネッセンス膜を形成して
エレクトロルミネッセンス型カラー表示装置を製造でき
た。
【0201】(実施例6)まず、3−メチルピロリル基
(C4H4N-CH3)と、分極性の官能基であるオキシカルボニ
ル基(-OCO-)と、基板表面の活性水素(例えば水酸基(-O
H))と脱塩化水素反応するトリクロロシリル基(-SiCl3)
とを有する下記化学式(E1)の物質(PEN:6-(3-m
ethyl pyrrolyl)hexyl-12,12,12-trichloro-12-siladod
ecanoate)を下記工程1〜5にしたがって合成した。
【0202】
【化16】
【0203】I.前記化学式(1)の物質(PEN)の
合成方法 工程1 6-ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘ
キサンの合成 500mlの反応容器に6-ブロモ-1-ヘキサノール197.8g(1.0
9mol)を仕込み、5℃以下に冷却した。これにジヒドロピ
ラン102.1g(1.21mol)を10℃以下の温度で滴下した。滴
下終了後、室温に戻して1時間攪拌させた。反応により
得られた残渣をヘキサン/IPE(ジイソプロピルエーテ
ル)=5/1にてシリカゲルカラム精製して263.4gの6-
ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを得
た。収率は90.9%であった。工程1の反応式を下記式
(E2)に示す。
【0204】
【化17】
【0205】工程2 (3−Nメチル)[6−(テトラ
ヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロールの合成 アルゴン気流下、2リットルの反応容器に3メチルピロ
ール0.567mol、脱水テトラヒドロフラン(THF)200m
1を仕込み、5℃以下に冷却した。これに1.6Mのn−ブ
チルリチウムヘキサン溶液354ml(0.567mol)を10℃以
下で滴下した。同温度で1時間攪拌させた後、ジメチル
スルホキシド600mlを加えてTHFを加熱留去して溶媒
置換した。次に、6-ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオ
キシ)ヘキサン165.2g(0.623mol)を室温にて滴下した。
滴下後、2時間、同温度で攪拌させた。
【0206】反応混合物に水600molを加え、ヘキサン抽
出し、有機層を水洗した。無水硫酸マグネシウムにて乾
燥後、溶媒留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル=4
/1にてシリカゲルカラム精製して107.0gの(3−Nメ
チル)[6−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシ
ル]ピロールを得た。収率75.2%であった。工程2
の反応式を下記式(E3)に示す。
【0207】
【化18】
【0208】工程3 (3−Nメチル)(6-ヒドロキシ
ヘキシル)-ピロールの合成 1リットルの反応容器に上記で得られた(3−Nメチ
ル)[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]
ピロール0.418mol、メタノール450ml、水225m
l、濃塩酸37.5mlを仕込み、室温にて6時間攪拌
させた。反応混合物を飽和食塩水750mlに注加し、
IPE抽出した。有機層を飽和食塩水洗浄し、無水硫酸
マグネシウムにて乾燥させ、溶媒留去した。得られた残
渣をn−ヘキサン/酢酸エチル=3/1にてシリカゲル
カラム精製し、65.1gの(3−Nメチル)(6-ヒドロキ
シヘキシル)-ピロールを得た。収率88.1%であっ
た。工程3の反応式を下記式(E4)に示す。
【0209】
【化19】
【0210】工程4 (3−Nメチル)[6-(10-ウ
ンデセノイルオキシ)ヘキシル]−ピロールの合成 2リットルの反応容器に(3−Nメチル)(6-ヒドロキ
シヘキシル)-ピロール0.371molと、dryピリジン3
3.2g(0.420mol)、dryトルエン185
0mlを仕込み、20℃以下で10-ウンデセノイルクロ
リド75.7g(0.373mol)のdryトルエン300
m1溶液を滴下した。滴下時間は30分であった。その
後、同温度にて1時間攪拌させた。反応混合物を氷水
1.5リットルに注加し、1N塩酸で酸性にした。酢酸
エチル抽出し、有機層を水洗、飽和食塩水洗浄し、無水
硫酸マグネシウムにて乾燥させ、溶媒を除去し、12
8.2gの粗体を得た。これをn−ヘキサン/アセトン
=20/1にてシリカゲルカラム精製し、99.6gの
(3−Nメチル)[6-(10-ウンデセノイルオキシ)
ヘキシル]-ピロールを得た。収率80.1%であっ
た。工程4の反応式を下記式(E5)に示す。
【0211】
【化20】
【0212】工程5 PENの合成 100mlキャップ付き耐圧試験管に(3−Nメチル)
[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-ピロ
ール6.0×10-3mo1、トリクロロシラン0.98g
(7.23×10-3mol)、H2PtC16・6H20の5%イソ
プロピルアルコール溶液0.01gを仕込み、100℃
で12時間反応させた。この反応液を活性炭で処理した
後、2.66×103Pa(20Torr)の減圧下で低沸点成分を留去
した。2.3gのPENを得た。収率81.7%であっ
た。工程5の反応式を下記式(E6)に示す。
【0213】
【化21】
【0214】なお、末端のトリクロロシリル基をトリメ
トキシシリル基に置換するには、前記化学式1のPEN
を3モル倍のメチルアルコールと室温(25℃)で攪拌
し、脱塩化水素反応させる。必要に応じて前記塩化水素
は水酸化ナトリウムを加えて塩化ナトリウムとして分離
する。 II.分子膜の形成方法 前記化学式(E1)のPENを用い、脱水したジメチル
シリコーン溶媒で1wt%に薄めて化学吸着液Eを調製し
た。
【0215】次に、厚み5mmのガラス基板の表面に厚
み2nmのシリカ下地層を形成した。このシリカ下地層
は、テトラクロロシラン(SiCl4)を、脱水したジメチル
シリコーンの有機溶媒で1%に薄めて化学吸着下地層溶
液を調製し、この化学吸着下地層溶液をガラス基板の片
面にコーティングし、テトラクロロシラン(SiCl4)とガ
ラス基板の表面の水酸基(-OH)との間で脱塩化水素反応
を起こさせ、次いでクロロホルムで洗浄除去して未反応
物を除去し、トリクロロシラノール(Cl3Si-O-)からなる
単分子膜を形成した。次に水と反応させ、(OH)3Si-O-膜
に置換し、水酸基を導入してシリカ下地層を形成した。
【0216】次に、前記シリカ下地層の表面に前記化学
吸着液Eをコーティングして、化学吸着反応を行い、さ
らに表面に残った未反応の前記物質をクロロホルムで洗
浄除去して、前記物質よりなる単分子膜を形成した。
【0217】このとき、シリカ下地層には活性水素を含
む水酸基が多数存在するので、前記物質(E1)の−S
iCl基が水酸基と脱塩化水素反応を生じて基板表面に
共有結合した下記化学式(E7)で示される分子で構成
された単分子膜が形成された。
【0218】
【化22】
【0219】III.分子膜の配向方法 次に、単分子膜が形成されたガラス基板を非水クロロフ
ォルム溶液で洗浄し、乾燥後、図5Aに示すラビング配
向処理をして配向した単分子膜を形成した。 IV.電極の形成方法 次に、単分子膜の両端の所定の部分にニッケル薄膜を蒸
着形成した。ギャップ間距離は10cm、長さが30c
mの第1電極と第2電極とを形成した。 V.重合法 まず、光エネルギービーム重合をした。図5Bに示すよ
うに、第1の電極から第2の電極に向かう方向を偏光方
向とする偏光した可視光を500mJ/cm2程度照射
して、配向性させつつ、予備重合した。
【0220】その後、純水溶液中で、電極間に5V/c
mの電解を印加し電解酸化重合させた。電解酸化重合の
条件は、反応温度25℃、反応時間8時間であった。こ
れにより、電解重合して導電性有機薄膜を形成した。こ
のとき、電界の方向に沿って共役結合が自己組織的に形
成されて行くので、完全に重合が終われば、第1の電極
と第2の電極とは導電性ポリマーで電気的に接続され
た。得られた有機導電膜の膜厚は約2.0nm、ポリピ
ロール部分の厚さは約0.2nm、有機導電膜の長さは
10cm、幅30cmであった。
【0221】下記化学式(E8)に得られた有機導電膜
ポリマーの1ユニットを示す。
【0222】
【化23】
【0223】VI.測定 得られた導電性有機薄膜を、市販の原子間力顕微鏡(A
FM)(セイコーインスツルメント社製、SAP 38
00N)を用い、AFM−CITSモードで、電圧:1
mV、電流:160nAの条件における電導度ρは、室
温(25℃)においてドープなしでρ>1×107S/
cmであった。これは、前記電流計1×107S/cm
までしか測定することができず、針がオーバーして振り
切れてしまったからである。電導度の良好な金属である
金は室温(25℃)において5.2×105S/cm、
銀は5.4×105S/cmであることからすると、本
実施例の有機導電膜の電導度ρは驚くべき高い導電性で
ある。ゆえに本発明の有機導電膜は、「超金属導電膜」
ということができる。
【0224】本発明において、有機導電膜の電導度ρを
下げることは、導電ネットワークを不完全なものとした
り、分子の配向度を低下させることにより、容易にでき
る。
【0225】得られた導電性有機薄膜は、透明電極また
は電線として有用であった。
【0226】前記実施例2と同様に、前記化学式(E
1)の分子の5位に、CH2=CH-CH2-を導入しておき、前
記化学式(E8)に示す導電性有機薄膜を形成後、2重
結合の部分を酸化することにより水酸基(-OH)を導入
し、次いで前記化学式(E1)のピロリル化合物を反応
させて累積膜を形成することができた。
【0227】(実施例7)前記実施例6で得られた化合
物を、脱水したジメチルシリコーン溶媒で1%に薄めて
化学吸着液を調製した。この化学吸着液に直径1mmの
ガラスファイバーを室温(25℃)で1時間浸漬し、ガ
ラスファイバー表面で脱塩化反応させ、薄膜を形成させ
た。次に、未反応の前記化合物を非水溶液のクロロフォ
ルムで洗浄除去した。これにより、ガラスファイバー表
面の水酸基と、前記化合物のクロロシリル基(−SiC
l)との間で塩化水素反応を生じて単分子膜が形成され
た。
【0228】次に、単分子膜が形成されたガラスファイ
バーをクロロフォルム溶液中に浸漬して洗浄し、クロロ
フォルム溶液から引き上げる際、長さ方向に液切りして
単分子膜を配向させた。
【0229】次に、ガラスファイバーの端部の一部分に
ニッケル薄膜を蒸着形成した。
【0230】その後、純水溶液中で、電極間に5V/c
mの電解を印加し電解酸化重合させた。電解酸化重合の
条件は、反応温度25℃、反応時間8時間であった。こ
れにより、電解重合して導電性ポリマーを形成し、両電
極間を電気的に接続した。このとき、電界の方向に沿っ
て共役結合が自己組織的に形成されて行くので、完全に
重合が終われば、両電極間は導電性ポリマーで電気的に
接続されたことになる。このようにして、ガラスファイ
バー上にポリピロールの共役結合重合膜がガラスファイ
バーの軸方向に沿って長さ10mm形成できた。有機薄
膜の膜厚は約2.0nm、ポリピロール部分の厚さは約
0.2nmであった。また、得られた有機導電膜は可視
光線のもとでは透明であった。
【0231】このようにして得られた有機薄膜の表面を
覆うように絶縁膜を形成することにより電気ケーブルを
作製した。得られた電線の断面図を図8Aに示す。図8
Aにおいて、11はガラス芯線、6はポリピロール電解
酸化重合膜、13は室温硬化型のシリコーンゴムからな
る被覆絶縁膜である。
【0232】得られた導電性有機薄膜を、市販の原子間
力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツルメント社製、
SAP 3800N)を用い、AFM−CITSモード
で、電圧:1mV、電流:160nAの条件における電
導度ρは、室温(25℃)においてドープなしでρ>1
×107S/cmであった。これは、前記電流計1×1
7S/cmまでしか測定することができず、針がオー
バーして振り切れてしまったからである。
【0233】このようにして得られた有機薄膜の表面を
覆うように絶縁膜を形成することにより電気ケーブルを
作製した。被覆絶縁膜は、室温硬化型のシリコーンゴム
を用いた。
【0234】本実施例においては、前記電気ケーブルは
互いに電気的に絶縁された複数本の芯線を含む集合電線
を形成していてもよい。
【0235】また、電線を作成する場合の芯線は、ガラ
ス以外にも金属も使用することができる。金属の場合
は、表面に酸化物を形成すると、単分子膜は形成しやす
い。
【0236】(実施例8)前記実施例1〜7おいて、導
電性分子が配向しているか否かは、図16に示すような
液晶セル170を形成し、偏光板177,178で挟み、裏面より
光を照射して180の位置から観察することにより確認で
きる。液晶セル170は、導電性分子膜172,174がそれぞれ
形成されたガラス板171,173の導電性分子膜を内側にし
て、ギャップ間距離5〜6μmに保持して周囲を接着剤
175で封止し、内部に液晶組成物176(ネマチック液晶、
例えばチッソ社製”LC,MT−5087LA”)を注
入して作成した。 (1)偏光板177,178をクロスにした場合、導電性分子
膜172,174の配向方向を揃え、この方向と、一方の偏光
板を平行にし、他方の偏光板を直交させる。完全に配向
していれば液晶が配向して均一な黒色になる。均一な黒
色にならない場合は配向不良である。 (2)偏光板177,178を平行にした場合、導電性分子膜1
72,174の配向方向を揃え、この方向と、両方の偏光板を
平行にする。完全に配向していれば液晶が配向して均一
な白色になる。均一な白色にならない場合は配向不良で
ある。
【0237】なお、裏側の基材が透明でない場合は、偏
光板は上側一枚とし、表面より光を照射して反射光で観
察する。
【0238】この方法により、前記実施例1〜13で得
られた導電性分子膜は配向していることが確認できた。
【0239】
【発明の効果】本発明は、導線、配線、電極または透明
電極として利用できる導電性ポリマーからなる有機薄膜
を提供できる。また、この導電性ポリマーからなる有機
薄膜を導線、配線、電極、透明電極として用いた、半導
体装置、コンデンサ、液晶表示素子、電界発光素子、太
陽電池等の高性能なデバイスを提供できる。更に、この
導電性ポリマーからなる有機薄膜を用いた同軸ケーブ
ル、フラットケーブル等の電気ケーブルが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1における基材上に形成され
た導電性ポリマーを含む単分子膜を模式的に示す断面図
であり、Aは全領域に導電性ポリマーの形成された単分
子膜、Bは複数の部分領域に導電性ポリマーの形成され
た単分子膜、Cは共役重合性官能基を内部に有する有機
分子からなり、複数の部分領域に導電性ポリマーの形成
された単分子膜である。
【図2】本発明の実施形態1における導電性ポリマーの
方向を説明するための模式的平面図である。
【図3】本発明の実施形態1における基材上に形成され
た導電性ポリマーを含む単分子層の導電領域の構成例を
模式的に示す平面図であり、Aは一方向に連なる導電性
ポリマーが全領域に形成され単分子層、Bは各導電領域
に一方向に連なる導電性ポリマーの形成された平行な導
電領域を有する単分子層、Cは各導電領域に一方向に連
なる導電性ポリマーの形成されたマトリックス状に配列
した導電領域を有する単分子層、Dは各導電領域に形成
された導電性ポリマーの方向が同じで、かつ、各導電領
域の形状も同じでない、任意のパターンに配列した導電
領域を有する単分子層である。
【図4】本発明の実施形態1における基材上に形成され
た単分子膜の構造例を模式的に示す断面図であり、Aは
電気絶縁膜付き基材上に形成された単分子膜、Bは基材
上に形成され、かつ、表面に保護膜の形成された単分子
膜である。
【図5】本発明の実施形態1における有機薄膜を構成す
る分子を傾斜(配向)させる配向法を説明するための模
式的斜視図であり、Aはラビング配向法、Bは光配向
法、Cは液切り配向法である。
【図6】本発明の実施形態1における基材上の選択的な
部位に導電領域を形成した構成例を模式的に示す斜視図
であり、Aは基材上の全部位に形成された単分子膜内に
複数の導電領域が形成された構成を示し、Bは全領域に
導電領域の形成された単分子膜を、基材上に複数形成し
た構成を示す。
【図7】本発明の実施形態2における基材上に形成され
た単分子累積膜の積層構造例を模式的に示す断面図であ
り、Aは各単分子層の配向方向を同一方向とするX型の
単分子累積膜、Bは各単分子層ごとに配向方向の傾斜が
強くなるX型の単分子累積膜、Cは各単分子層ごとに2
つの配向方向のいずれかに配向したX型の単分子累積膜
である。
【図8】Aは本発明の実施例12における芯線の外表面
に形成され、全領域を導電領域とする導電性単分子膜を
備え、その表面が電気的絶縁膜で被覆された電気ケーブ
ルの断面図、Bは本発明の実施形態3における四角柱状
の絶縁体の表面に形成され、外側表面は絶縁膜で被膜さ
れた4つの導電領域を有する単分子膜を備えた集合電線
型の電気ケーブルの斜視図、Cは本発明の実施形態3に
おける基材上に形成された全領域を導電領域とする単分
子膜と3対の接続部とを備えた集合電線型のフラットケ
ーブルの斜視図である。
【図9】本発明の実施形態4における単分子膜に形成さ
れた導電領域を電極として用いるコンデンサの構造例を
模式的に示す断面図であり、Aは導電領域を有する単分
子膜の形成された2つの基材で各単分子膜を内側にして
誘電体を狭持した構造、Bは誘電体の平行な2つの表面
それぞれに導電領域を有する単分子膜が形成された構造
を示す。
【図10】本発明の実施形態1および実施例6における
導電領域を有する単分子膜を製造する工程を説明するた
めの断面図であり、Aは単分子層形成工程後における基
材上に形成された単分子膜、Bは傾斜処理(配向処理)
工程後における配向した単分子膜、Cは重合電極形成工
程で表面に形成された一対の電極に電圧を印加する導電
領域形成工程を開始した直後の単分子膜、Dは導電領域
形成工程後における導電性ポリマーが形成された単分子
膜である。
【図11】A〜Fは本発明の実施例2における有機導電
性膜の製造工程概念図である。
【図12】A〜Bは本発明の実施例2における分子層内
の分子を配向させるプロセスを説明するための断面概念
図である。
【図13】本発明の実施例3における有機電子デバイス
を説明するための断面概念図である。
【図14】本発明の実施例4における液晶表示装置を説
明するための断面概念図である。
【図15】本発明の実施例5におけるエレクトロルミネ
ッセンス(EL)表示装置を説明するための断面概念図
である。
【図16】本発明の実施例8における導電性分子の配向
を評価する方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 基材(基材) 2 基材絶縁膜 3 保護被膜 4 単分子膜(単分子層) 5 共役系(共役結合鎖) 6 導電領域 7 金属接点(配線) 8 誘電体 9 共役重合性官能基 11 絶縁性基材 13 絶縁保護膜 14 ピロール基を有する有機分子からなる単分子膜 16 ポリピロール型導電性ポリマーを有する導電領域 17 電解重合用の白金電極 21 樹脂基材 24 ピロール基を有する有機分子が配向した単分子膜 34 ポリピロール型導電性ポリマーを有する単分子膜 41 ラビングロール 42 ラビング布 43 偏光板 44 洗浄用の有機溶液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 美濃 規央 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 4J032 BA13 BA14 BB01 BB03 BC01 BC02 BC03 BC07 BC12 BC21 BC32

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に活性水素を含む基材表面と共有結
    合した末端結合基と、N基に活性水素を含まない3−ピ
    ロリル基と、前記末端結合基と前記3−ピロリル基との
    間は活性水素を含まない有機基を含む有機分子で構成さ
    れた被膜であり、 前記被膜内で3−ピロリル基は他の分子の共役結合基と
    重合して導電性共役結合鎖を形成していることを特徴と
    する導電性有機薄膜。
  2. 【請求項2】 重合が、電解酸化重合、触媒重合および
    エネルギービーム照射重合から選ばれる少なくとも一つ
    である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  3. 【請求項3】 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、
    室温(25℃)においてドーパントなしで1S/cm以
    上である請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  4. 【請求項4】 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、
    室温(25℃)においてドーパントなしで1×103
    /cm以上である請求項3に記載の導電性有機薄膜。
  5. 【請求項5】 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、
    室温(25℃)においてドーパントなしで5.5×10
    5S/cm以上である請求項4に記載の導電性有機薄
    膜。
  6. 【請求項6】 前記重合した共役結合基が、ポリ(3−
    ピロール)、ポリ(3−ピロール)とポリ(1−ピロー
    ル)との共重合体、およびポリ(3−ピロール)とポリ
    チェニレンから選ばれる少なくとも一つのポリマーであ
    る請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  7. 【請求項7】 前記末端結合基が、シロキサン(−Si
    O−)およびSiN−結合から選ばれる少なくとも一つ
    の結合(但し、SiおよびNには価数に相当する他の結
    合基があっても良い。)である請求項1に記載の導電性
    有機薄膜。
  8. 【請求項8】 前記導電性有機薄膜を構成する分子は配
    向されている請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  9. 【請求項9】 前記導電性有機薄膜は、可視領域の波長
    を有する光に対して透明である請求項1に記載の導電性
    有機薄膜。
  10. 【請求項10】 前記導電性有機薄膜を形成しているポ
    リ(3−ピロール)分子ユニットが下記化学式(A)で
    示される請求項1に記載の導電性有機薄膜。 【化1】 (但し、Bは水素、炭素数1〜10のアルキル基を含む
    有機基、活性水素導入可能基またはその残基、Zはエス
    テル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO
    −)、カルボニル基(−CO−)及びカーボネイト(−
    OCOO−)基、アゾ(−N=N−)基から選ばれる少
    なくとも一つの官能基または化学結合(−)、Rは炭素
    数1〜3のアルキル基、m,nは整数でありm+nは2
    以上25以下、Yは酸素(O)または窒素(N)、Eは
    水素または炭素数1−3のアルキル基、pは1,2又は
    3の整数である。)
  11. 【請求項11】 前記導電性有機薄膜が、さらにドーパ
    ント物質を含む請求項1に記載の導電性有機薄膜。
  12. 【請求項12】 前記導電性有機薄膜が、単分子膜また
    は単分子累積膜である請求項1に記載の導電性有機薄
    膜。
  13. 【請求項13】 表面に活性水素を含む基材表面と共有
    結合可能な末端官能基と、N基に活性水素を含まない3
    −ピロリル基と、前記末端官能基と前記3−ピロリル基
    との間は活性水素を含まない有機基を含む化合物を、 前記表面に活性水素を含む基材表面に接触させ、脱離反
    応により共有結合させて有機薄膜を成膜し、 前記3−ピロリル基と共役結合可能基同士を電解酸化重
    合、触媒重合およびエネルギービーム照射重合から選ば
    れる少なくとも一つの重合法により共役結合させて導電
    性ポリマーを形成することを特徴とする導電性有機薄膜
    の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記末端官能基が、ハロゲン化シリル
    基、アルコシシリル基またはイソシアネート基であり、
    基材表面の活性水素と脱塩化水素反応、脱アルコール反
    応および脱イソシアネート反応から選ばれる少なくとも
    一つの脱離反応によって共有結合を形成する請求項13
    に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記共役結合可能基が、3−ピロリル
    基、1−ピロリル基、およびチェニル基から選ばれる少
    なくとも一つの基である請求項13に記載の導電性有機
    薄膜の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記脱離反応により共有結合させた後
    の有機薄膜を、ラビングによる配向処理、脱離反応によ
    って基材表面に分子を共有結合した後の反応溶液からの
    傾斜液切り処理、偏光の照射処理、および重合時の分子
    のゆらぎによる配向から選ばれる少なくとも一つの配向
    処理を行う請求項13に記載の導電性ガラスの製造方
    法。
  17. 【請求項17】 前記N基に活性水素を含まない3−ピ
    ロリル基を含む有機分子が下記化学式(B)で示される
    請求項13に記載の導電性有機薄膜の製造方法。 【化2】 (但し、Bは水素、炭素数1〜10のアルキル基を含む
    有機基または活性水素導入可能基、Zはエステル基(−
    COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カル
    ボニル基(−CO−)及びカーボネイト(−OCOO
    −)基、アゾ(−N=N−)基から選ばれる少なくとも
    一つの官能基または化学結合(−)、Rは炭素数1〜3
    のアルキル基、m,nは整数でありm+nは2以上25
    以下、Dはハロゲン原子、イソシアネート基及び炭素数
    1−3のアルコキシル基から選ばれる少なくとも一つの
    反応基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、p
    は1,2又は3の整数である。)
  18. 【請求項18】 前記導電性有機薄膜を単分子層状に形
    成する請求項13に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記導電性有機薄膜を形成した後、前
    記化学式(B)の不飽和基Bに活性水素を導入し、さら
    に単分子膜を積層させて単分子累積膜を形成する請求項
    17に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記エネルギービームが、紫外線、遠
    紫外線、X線および電子線から選ばれる少なくとも一つ
    である請求項13に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記エネルギービームが、偏光した紫
    外線、偏光した遠紫外線および偏光したX線から選ばれ
    る少なくとも一つであり、配向処理と導電性有機薄膜形
    成とを同時に行う請求項20に記載の導電性有機薄膜の
    製造方法。
  22. 【請求項22】 前記導電性有機薄膜形成中または形成
    後に、さらにドーパントを添加する請求項13に記載の
    導電性有機薄膜の製造方法。
  23. 【請求項23】 下記式(B)で示される3−ピロリル
    基を含む化合物。 【化3】 (但し、Bは水素、炭素数1〜10のアルキル基を含む
    有機基または活性水素導入可能基、Zはエステル基(−
    COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カル
    ボニル基(−CO−)及びカーボネイト(−OCOO
    −)基、アゾ(−N=N−)基から選ばれる少なくとも
    一つの官能基または化学結合(−)、Rは炭素数1〜3
    のアルキル基、m,nは整数でありm+nは2以上25
    以下、Dはハロゲン原子、イソシアネート基及び炭素数
    1−3のアルコキシル基から選ばれる少なくとも一つの
    反応基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、p
    は1,2又は3の整数である。)
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