JP2003234029A - 導電性有機薄膜の製造方法 - Google Patents

導電性有機薄膜の製造方法

Info

Publication number
JP2003234029A
JP2003234029A JP2002031478A JP2002031478A JP2003234029A JP 2003234029 A JP2003234029 A JP 2003234029A JP 2002031478 A JP2002031478 A JP 2002031478A JP 2002031478 A JP2002031478 A JP 2002031478A JP 2003234029 A JP2003234029 A JP 2003234029A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
base material
thin film
treatment
organic thin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2002031478A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazufumi Ogawa
小川  一文
Norihisa Mino
規央 美濃
Shinichi Yamamoto
伸一 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority to JP2002031478A priority Critical patent/JP2003234029A/ja
Publication of JP2003234029A publication Critical patent/JP2003234029A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacturing Of Electric Cables (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 導電性有機薄膜を基材表面の所定の領域に選
択的に形成することができる、導電性有機薄膜の製造方
法を提供する。 【解決手段】 前記基材表面と共有結合を形成可能な末
端結合可能基と、他の分子と重合可能な共役結合可能基
とを含む有機分子の被膜を、基材1表面の導電性有機薄
膜を形成しようとする領域2に選択的に形成し、前記被
膜4を構成する有機分子を配向させた後、前記共役結合
可能基を他の有機分子の共役結合可能基と重合させて共
役結合鎖を形成し、導電性有機薄膜5を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基材表面にパター
ン状に形成された導電性有機薄膜の製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、電子デバイスには、シリコン結晶
に代表されるような無機材料が用いられている。しかし
ながら、このような無機材料では、微細化が進展するに
伴い、結晶欠陥が問題となり、デバイス性能が結晶に大
きく左右される問題があった。
【0003】これに対して、導電性有機薄膜は、微細加
工がなされても特性がほとんど劣化しないことから、デ
バイスの微細化の進展に対応し得る材料として注目され
ている。本出願人は、導電性有機薄膜として、既に、ポ
リアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリフ
ェニレン、ポリチェニレン、ポリピロール、ポリアニリ
ンなどの共役結合鎖を含む有機薄膜を提案している(例
えば、特開平2(1990)-27766号公報、USP5,008,127、EP-
A-0385656、EP-A-0339677,EP-A-0552637、USP5,270,41
7、特開平5(1993)-87559号公報、特開平6(1994)-242352
号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、各
種電子デバイスの微細化の進展に鑑み、所望のパターン
状の導電性有機薄膜を容易に形成することができる導電
性有機薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の導電性有機薄膜の製造方法は、基材表面の
所定の領域に選択的に形成された導電性有機薄膜の製造
方法であって、表面に活性水素を有するかまたは活性水
素を付与した前記基材の前記所定の領域に、分子の一方
の末端に前記基材表面と共有結合を形成可能な末端結合
可能基を含み、前記分子のいずれかの部分に他の分子と
重合可能な共役結合可能基を含む有機分子を接触させ、
前記有機分子の末端結合可能基と前記基材表面の活性水
素とを反応させて共有結合を形成させることにより、前
記基材表面の前記所定の領域に選択的に被膜を形成し、
前記被膜を構成する有機分子を配向させ、前記共役結合
可能基を他の有機分子の共役結合可能基と重合させて共
役結合鎖を形成することを含むことを特徴とする。
【0006】このような製造方法によれば、所望のパタ
ーンを有する導電性有機薄膜を容易に形成することがで
きる。なお、「所定の領域」とは、導電性有機薄膜を形
成しようとする領域を意味する。
【0007】本発明により形成される導電性有機薄膜
は、有機分子の重合により共役結合鎖が形成され、この
共役結合鎖による導電ネットワークが形成されることに
より、導電性を発現するものである。なお、「導電ネッ
トワーク」とは、電気伝導に関与する共役結合鎖の集合
体を意味する。
【0008】また、前記被膜を構成する有機分子を配向
させるため、共有結合可能基を一定の方向に配列させ、
且つ、共有結合可能基同士を近接して配列させることが
できる。その結果、有機分子の重合の進行を容易とし、
高い導電性を有する導電領域を形成することができる。
【0009】更に、前記被膜を構成する有機分子を配向
させることにより、導電ネットワークを構成する共役結
合鎖を、導電性有機薄膜内の特定の面内で略平行に配列
させることも可能となる。そのため、方向性を有する導
電ネットワークを形成することができ、導電領域に導電
異方性を付与することも可能となる。
【0010】なお、配向させるとは、被膜を構成する各
有機分子を所定の方向に傾斜させることを意味する。ま
た、本発明において、有機分子の配向方向とは、前記有
機分子の長軸を基材表面に射影した線分の方向をいう。
【0011】前記製造方法において、前記被膜を所定の
領域に選択的に形成する方法としては、前記基材表面の
前記所定の領域を除く領域を被覆するレジストパターン
を形成し、前記レジストパターンが形成された前記基材
表面に前記有機分子を接触させた後、前記レジストパタ
ーンを除去する方法が挙げられる。このような方法によ
れば、前記被膜を、比較的少ない工程数で、前記被膜を
所望のパターンに形成することができる。
【0012】また、前記被膜を所定の領域に選択的に形
成する別の方法としては、前記基材として疎水性基材を
用い、前記基材表面の前記所定の領域に活性水素付与処
理を施した後、前記基材表面に前記有機分子を接触させ
る方法が挙げられる。このような方法によれば、微細な
パターンであっても、基材表面に前記被膜を精度良く形
成することが可能となる。
【0013】前記活性水素付与処理としては、例えば、
前記基材表面を酸化する処理が挙げられる。この場合、
前記基材表面の酸化は、例えば、酸素および水素供給物
質の存在下で、前記基材表面に紫外線照射処理、プラズ
マ処理およびコロナ処理から選ばれる少なくとも1つの
処理を施すことにより実施することができる。
【0014】前記被膜を所定の領域に選択的に形成する
更に別の方法としては、前記基材として親水性基材を用
い、前記基材表面の前記所定の領域を除く領域に活性水
素除去処理を施した後、前記基材表面に前記有機分子を
接触させる方法が挙げられる。このような方法によれ
ば、微細なパターンであっても、基材表面に前記被膜を
精度良く形成することが可能となる。
【0015】前記活性水素除去処理としては、例えば、
前記基材表面に疎水性被膜を形成する処理が挙げられ
る。この場合、前記疎水性被膜の形成は化学吸着法によ
り実施されることが好ましい。
【0016】また、前記活性水素除去処理としては、前
記基材表面と活性水素との結合を切断する処理を採用す
ることも可能である。この場合、前記基材表面と活性水
素との結合は、例えば、不活性雰囲気において、前記基
材表面に紫外線照射処理、プラズマ処理およびコロナ処
理から選ばれる少なくとも1つの処理を施すことにより
切断することができる。
【0017】前記製造方法において、配向処理として
は、例えば、ラビング処理、前記被膜を備えた前記基材
表面から液体を所定の方向に液切りする処理、および、
偏光照射処理などが挙げられる。また、重合時の分子の
ゆらぎによっても、被膜を構成する有機分子を配向させ
ることができる。
【0018】前記製造方法においては、前記被膜が、単
分子膜または単分子累積膜であることが好ましい。この
好ましい例によれば、導電性単分子膜または導電性単分
子累積を製造することができる。このような導電性有機
薄膜は、膜厚が薄くても極めて良好な導電性を示すとい
う利点を有している。
【0019】更に、導電性単分子累積膜の場合、単分子
層の層数を変更することにより、所望の導電率を得るこ
とができる。単分子累積膜の導電率は、例えば、積層さ
れた単分子の層数に依存し、例えば、同一の単分子膜を
累積した場合、その導電率は、単分子膜の累積数にほぼ
比例する。
【0020】前記製造方法において、前記有機分子は、
末端結合可能基と共役結合可能基とを含む。
【0021】前記共役結合可能基は、ピロリル基、チェ
ニル基、エチニレン基(−C≡C−)およびジアセチレ
ン基(−C≡C−C≡C−)から選ばれる少なくとも一
つの基を含む官能基であることが好ましい。共役結合可
能基がピロリル基を含む場合、ポリピロール型の共役結
合鎖を形成することができ、チェニル基を含む場合は、
ポリチオフェン型の共役結合鎖を形成することができ
る。また、共役結合可能基がエチニレン基を含む場合
は、ポリアセチレン型の共役結合鎖を形成することがで
き、ジアセチレン基を含む場合は、ポリジアセチレン型
またはポリアセン型の共役結合鎖を形成することができ
る。
【0022】前記末端結合可能基は、ハロゲン化シリル
基、アルコキシシリル基またはイソシアネートシリル基
であることが好ましい。ハロゲン化シリル基は、特にク
ロロシリル基であることが好ましい。また、アルコキシ
シリル基は、特に、炭素数1〜3のアルコキシシリル基
であることが好ましい。
【0023】末端結合基がハロゲン化シリル基である場
合、前記基材表面の活性水素との脱ハロゲン化水素反応
により共有結合を形成することができる。末端結合基が
アルコキシシリル基である場合は、前記基材表面の活性
水素との脱アルコール反応により共有結合を形成するこ
とができる。また、末端結合基がイソシアネートシリル
基である場合は、前記基材表面の活性水素との脱イソシ
アネート反応により共有結合を形成することができる。
【0024】また、前記製造方法においては、前記末端
結合可能基と前記基材表面の活性水素との反応により形
成される共有結合が、シロキサン結合(−SiO−)お
よび−SiN−結合から選ばれる少なくとも一つの結合
であることが好ましい。この場合、SiおよびNには価
数に相当する他の結合基が結合していてもよい。他の結
合基が結合した形態としては、有機分子の末端結合基同
士が結合することにより、前記有機分子が重合した形態
が挙げられる。
【0025】更に、前記有機分子は、前記末端結合基と
前記共役結合可能基との間に、活性水素を含まない有極
性官能基を含むことが好ましい。この好ましい例によれ
ば、有極性官能基の部分で分子が自由回転しやすくなる
ので、被膜を構成する有機分子が配向しやすくなる。
【0026】また、このような有極性官能基を含む有機
分子を用いた場合、形成される導電性有機薄膜を、印加
された電界に応じて導電性が変化する導電性材料とする
ことが可能となる。電界の印加による導電領域の導電性
の変化は、有極性官能基が電界に応答し、その応答によ
る影響が導電ネットワークの構造に波及されるために生
じるものと考えられる。
【0027】前記有極性官能基は、エステル基(−CO
O−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニ
ル基(−CO−)およびカーボネイト(−OCOO−)
基から選ばれる少なくとも一つの基であることが好まし
い。このように電界の印加によって分極が大きくなる官
能基であれば、印加電界に対する感度が極めて高くな
り、応答速度も極めて高速になる。
【0028】また、前記有機分子は、前記末端結合可能
基と前記共役結合可能基との間に光応答性官能基を含ん
でいてもよい。このような光応答性官能基を含む有機分
子を用いた場合、形成される導電性有機薄膜を、照射さ
れた光に応じて導電性が変化する導電性材料とすること
が可能となる。光応答性官能基としては、例えば、アゾ
基(−N=N−)が挙げられる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発
明の製造方法の一例について説明する。図1A〜Dは、
本発明の製造方法の一例を説明するための工程図であ
る。
【0030】まず、基材1表面に、導電性有機薄膜の前
駆体となる被膜4を形成する(図1A〜C)。本発明の
製造方法においては、被膜4は、基材1表面の導電性有
機薄膜を形成しようとする領域2(以下、「導電膜形成
予定領域」という。)に形成され、それ以外の領域には
形成されない。すなわち、前記被膜4は、基材1表面に
所定のパターン状に形成される。
【0031】被膜4をパターン状に形成する方法につい
ては、特に限定するものではないが、例えば、以下に説
明するような方法を用いることができる。
【0032】まず、基材1表面に、導電膜形成予定領域
2を開口し、それ以外の領域を被覆するレジストパター
ン3を形成する(図1A)。
【0033】基材1としては、特に限定するものではな
く、導電性有機薄膜の使用目的や、被膜形成方法などに
応じて、あらゆる材質のものを選択することができる。
例えば、被膜形成方法として化学吸着法を採用する場合
は、表面に活性水素を有するか、または、活性水素を付
与する処理が施された基材を用いることが好ましい。こ
のような基材の具体例については後述する。
【0034】また、レジストパターン3としては、特に
限定するものではないが、有機溶剤により溶解除去され
得るような材料を使用することが好ましい。このような
材料としては、例えば、フォトレジストなどが挙げられ
る。その形成方法としては、例えば、フォトレジストを
用いる場合は、基材表面にレジストを塗布し、フォトリ
ソグラフィー法により、このレジストに導電膜形成予定
領域に対応する形状の開口部を形成する方法を採用する
ことができる。
【0035】続いて、前記レジストパターン3が形成さ
れた基材1表面に被膜4を形成する(図1B)。被膜4
の形成方法としては、例えば、化学吸着法などを採用す
ることができる。以下、被膜形成方法の一例として、化
学吸着法を採用した場合について説明する。
【0036】化学吸着法は、被膜材料となる有機分子を
基材表面に接触させることにより、前記有機分子を基材
表面に化学吸着させる方法である。
【0037】被膜材料となる有機分子としては、前述し
たように、分子の一方の末端に末端結合可能基を含み、
前記分子のいずれかの部分に共役結合可能基を含むもの
が使用される。
【0038】共役結合可能基は、他の分子との重合によ
り共役結合を形成可能な官能基である。共役結合可能基
の具体例については、前述した通りである。
【0039】末端結合可能基は、基材表面との反応によ
り、化学結合、好ましくは共有結合を形成し得る官能基
である。末端結合可能基の具体例については、前述した
通りである。
【0040】更に、被膜材料となる有機分子は、共役結
合可能基と末端結合可能基との間に、活性水素を含まな
い有極性官能基または光応答性官能基を有することが好
ましい。有極性官能基および光応答性官能基の具体例に
ついては、前述した通りである。
【0041】好ましい有機分子としては、下記化学式
(1)または(2)で示される化合物が挙げられる。
【0042】
【化2】
【0043】上記化学式において、Xは水素、エステル
基を含む有機基または不飽和基を含む有機基である。エ
ステル基を含む有機基としては、例えば、CH3COO
−、C25COO−、C37COO−などが挙げられ
る。また、不飽和基を含む有機基としては、例えば、H
2C=CH−、CH3CH=CH−などが挙げられる。
【0044】また、上記化学式において、qは0〜10
の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボ
ニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)また
はカーボネイト基(−OCOO−)、Dはハロゲン、イ
ソシアネート基または炭素数1〜3のアルコキシル基、
Eは水素または炭素数1〜3のアルキル基、mおよびn
は2≦(m+n)≦25、好ましくは10≦(m+n)
≦20を満たす整数、pは1〜3の整数である。
【0045】また、前記有機分子の別の例としては、下
記化学式(3)または(4)で示される化合物が挙げら
れる。なお、下記式において、X、D、E、p、q、m
およびnは、前記式(1)および(2)と同様である。
【0046】
【化3】
【0047】また、前記有機分子の更に別の例として
は、下記化学式(5)または(6)で示される化合物が
挙げられる。なお、下記式において、X、D、E、pお
よびqは、前記式(1)および(2)と同様である。ま
た、rは、2〜25、好ましくは10〜20の整数であ
る。
【0048】
【化4】
【0049】また、好ましい有機分子の更に別の例とし
ては、下記化学式(7)〜(10)で示される化合物が
挙げられる。なお、下記式において、X、D、E、pお
よびはq、前記式(1)および(2)と同様である。ま
た、sおよびtは、それぞれ、1〜20の整数である。
【0050】
【化5】
【0051】基材としては、表面に活性水素を有する基
材を用いることができる。基材表面において活性水素
は、例えば、−OH基、−COOH基、−NH2基、−
NH基などとして存在するものである。活性水素を有す
る基材としては、例えば、ガラス基材、石英基材、シリ
コン基材、窒化シリコン基材などを用いることができ
る。
【0052】また、活性水素を付与する処理が施された
基材を使用することも可能である。この場合、基材本体
については特に限定するものではなく、活性水素を有す
る基材であっても、活性水素に乏しい基材であってもよ
い。活性水素を付与する処理としては、例えば、SiC
4、HSiCl3、SiCl3O−(SiCl2−O) n
−SiCl3(但し、nは0以上6以下の整数)、Si
(OH)4、HSi(OH)3、Si(OH)3O−(S
i(OH)2−O)n−Si(OH)3(但し、nは0以
上6以下の整数)などを基材表面に接触させて、親水性
の化学吸着膜を形成する方法を採用することができる。
また、基材表面に、例えば、SiO2、Al23、Ti2
3などの無機酸化物を形成することによっても、活性
水素を付与することができる。また、その他の処理方法
としては、例えば、コロナ処理およびプラズマ処理など
により、基材表面を活性化させる方法が挙げられる。
【0053】前記有機分子を前記基材1表面に接触させ
ると、前記基材1の非マスク部において、有機分子の末
端結合可能基と基材表面の活性水素とが反応し、化学結
合、好ましくは共有結合が形成される。これにより、有
機分子が基材1表面に固定され、被膜4が形成される。
【0054】例えば、末端結合可能基がハロゲン化シリ
ル基、アルコキシシリル基またはイソシアネートシリル
基である場合、これらの基が基材表面の活性水素との間
で脱ハロゲン化水素反応、脱アルコール反応または脱イ
ソシアネート反応などの脱離反応を起こすことにより共
有結合が形成される。このとき、基材表面の活性水素が
−OH基として存在する場合は、前記共有結合としてシ
ロキサン(−SiO−)結合が形成され、活性水素が−
NH基として存在する場合は、前記共有結合として−S
iN−結合が形成される。
【0055】化学吸着法において、前記有機分子を基材
表面に接触させる方法としては、一般に、前記有機分子
を溶媒に添加して化学吸着液を調製し、これを基材表面
に接触させる方法が採られる。有機溶媒としては、例え
ば、キシレン、トルエン、ジメチルシロキサンなどの非
水系有機溶媒を使用することができる。また、化学吸着
液における前記有機分子の濃度は、特に限定するもので
はないが、例えば0.01〜1モル/L、好ましくは
0.05〜0.1モル/Lである。
【0056】また、基材と化学吸着液を接触させる時間
は、特に限定するものではないが、例えば1〜10時
間、好ましくは1〜3時間である。また、このときの化
学吸着液の温度は、例えば10〜80℃、好ましくは2
0〜30℃である。
【0057】基材表面に化学吸着液を接触させる方法と
しては、例えば、基材を化学吸着液に浸漬する方法、基
材表面に化学吸着液を塗布する方法などを採用すること
ができる。
【0058】また、単分子累積膜を形成する場合は、一
層目の単分子膜を形成した後、更に前記単分子膜の表面
を親水化処理してから、前述と同様の化学吸着法により
単分子膜の形成を行えばよい。このような親水化処理と
化学吸着とを繰り返すことによって、所望の積層数の累
積膜が形成できる。
【0059】親水化処理の方法については、特に限定す
るものではないが、例えば、単分子膜表面にビニル基な
どの不飽和基が存在する場合であれば、水分の存在する
雰囲気中で、単分子層表面に電子線またはX線などのエ
ネルギー線を照射する方法を採用することができる。こ
の方法によれば、単分子膜表面に−OH基を導入するこ
とができる。また、別の方法としては、単分子膜表面を
過マンガン酸カリウム水溶液に浸漬する方法が挙げられ
る。この場合、単分子膜表面に−COOH基を導入する
ことができる。
【0060】また、単分子累積膜を形成する場合、二層
目以降の単分子膜の形成は、ラングミュア−ブロジェッ
ト(LB)法などによって形成することも可能である。
この場合、下層となる単分子膜表面の親水化処理は必ず
しも必要ではない。しかしながら、親水化処理を施すこ
とが、下層単分子膜と上層単分子膜とを化学結合させる
ことができ、耐久性に優れた累積膜を形成することでき
るため、好ましい。
【0061】なお、単分子累積膜を形成する場合は、す
べての層を同一有機分子で構成しても、各層を異なる種
類の有機分子で構成してもよい。また、単分子累積膜の
構造については特に限定するものではなく、X型、Y型
およびZ型のいずれの構造であってもよい。
【0062】被膜4形成後、基材1表面からレジストパ
ターン3を除去する(図1C)。レジストパターン3の
除去方法としては、特に限定するものではないが、例え
ば、有機溶剤によってレジストパターンを溶解させる方
法などを採用することができる。この場合、有機溶剤と
しては、レジストの種類に応じて適宜選択することがで
き、例えば、クロロホルム、アセトン、キシレンなどを
用いることができる。
【0063】更に、被膜形成後、基材表面を洗浄するこ
とが好ましい。この洗浄工程を実施することにより、基
材表面から未吸着の有機分子を除去することができ、表
面に汚れのない被膜とすることができる。この洗浄工程
は、被膜形成後、レジストパターンを除去する前に実施
しても、レジストパターンを除去した後に実施してもよ
い。なお、基材を洗浄する有機溶剤としては、例えば、
クロロホルム、アセトン、メタノール、エタノールなど
を用いることができる。
【0064】上記のような方法により、被膜4が、導電
膜形成予定領域2に選択的に形成される。図2は、この
ような方法により形成される被膜の構造の一例を示す模
式図である。この図に示すように、前記被膜4を構成す
る有機分子は、基材1表面と前記末端結合可能基との結
合により、前記基材1表面に固定されて単分子膜を形成
する。なお、図2において、10は被膜を構成する有機
分子を表し、11は共役結合可能基を表し、12は末端
結合基を表す。
【0065】本発明の製造方法においては、被膜を構成
する有機分子を配向させる。図3は、配向処理後の被膜
の構造の一例を示す模式図である。この図に示すよう
に、配向処理後の被膜においては、有機分子が所定の方
向に傾斜している。
【0066】配向処理方法としては、例えば、下記の方
法を採用することができる。
【0067】(i) ラビング処理 ラビング処理は、被膜表面をラビング布で一定方向に擦
るものである。このラビング処理によれば、被膜を構成
する有機分子をラビング方向に配向させることができ
る。なお、ラビング布としては、ナイロン製またはレー
ヨン製の布を用いることができる。
【0068】また、被膜形成に先立って基材表面にラビ
ング処理を施し、このラビング処理後の基材表面に被膜
を形成することによっても、被膜を構成する有機分子を
所定の方向に傾斜した状態に配向させることができる。
この場合、有機分子の配向方向は、一般に、ラビング処
理におけるラビング方向と同一方向となる。
【0069】(ii) 偏光照射処理 被膜に偏光を照射することにより、被膜を構成する有機
分子を配向させることができる。この場合、有機分子の
配向方向は、一般に、偏光方向と同一方向となる。この
ような偏光照射処理による配向方法によれば、被膜を構
成する有機分子の基材表面からの脱離や有機分子自体の
破壊などによる、被膜の破損を防止または抑制すること
ができる。なお、偏光としては、可視光領域の波長を有
する直線偏光を用いることが好ましい。
【0070】(iii) 液切り処理 液切り処理は、被膜が形成された基材表面を液体で濡ら
し、この液体を基材表面から所定の方向に液切りするこ
とにより実施される。この場合、有機分子の配向方向
は、一般に、液切り方向と同一方向となる。この処理
は、被膜を備えた基材を液体に浸漬した後、液面に対し
て所定の傾斜角度を保ちながら、基材を前記液体から引
き上げることにより実施することができる。
【0071】被膜形成後に基材の洗浄を実施する場合、
液切り処理は、洗浄に用いた溶剤の液切り方向を一定方
向とすることにより実施することができる。また、被膜
形成の際に、化学吸着液の液切り方向を一定方向とする
ことによっても、同様の配向効果を得ることができる。
【0072】また、液切り方法は、液体からの基材の引
き上げによる方法に限られるものではなく、乾燥空気な
どの気体を一定方向から基板表面に吹き付けて同一方向
に非水系溶媒を飛散除去する方法を採用することも可能
である。この場合、非水系溶媒が飛散していく方向が液
切り方向となり、被膜を構成する有機分子をこの方向に
配向させることができる。
【0073】(iv) 溶液中での重合工程における分子の
ゆらぎによる配向 上記の3つの配向方法以外に、後の重合工程における分
子のゆらぎによる配向を用いることも可能である。特
に、被膜を構成する有機分子が有極性官能基を含む場
合、溶液中であれば、室温(25℃)程度においても、
分子の回転などのゆらぎが起こりやすい。このため、例
えば、後の重合工程を溶液中で実施することにより、こ
の分子のゆらぎによって、被膜を構成する有機分子を配
向させることが可能となる。
【0074】上記4つの配向方法は単独で適用しても、
複数の配向方法を組み合わせて適用してもよい。複数の
配向方法を組み合わせて適用することにより、被膜を構
成する有機分子を、より精度良く配向した状態とするこ
とができる。この場合、各配向方法により実現される有
機分子の配向が略同一方向となることが好ましい。すな
わち、ラビング方向、偏光方向および液切り方向を略同
一方向とすることが好ましい。
【0075】また、この配向処理においては、前記被膜
の全体を配向させてもよいし、前記被膜の特定の部分の
みを配向させてもよい。また、基材表面に複数の被膜パ
ターンが形成されている場合、各被膜パターンごとに配
向方向を異ならせてもよい。このように、各被膜パター
ンごとに配向方向を異ならせる場合は、配向処理方法と
して、ラビング配向処理または偏光照射処理を適用する
ことが好ましい。
【0076】ラビング処理を適用して各パターンごとに
配向方向を異ならせる方法としては、例えば、基材また
は被膜表面に所定のパターンを形成した第1のレジスト
パターンを形成し、このレジストパターンで被覆されて
いない基材または被膜表面を所定の第1のラビング方向
にラビングし、ラビング処理後に第1のレジストパター
ンを除去する。その後、基材または被膜表面に第1のレ
ジストパターンと異なる所定のパターンが形成された第
2のレジストパターンを形成し、このレジストパターン
で被覆されていない基材または被膜表面を所定の第2の
ラビング方向にラビングし、ラビング処理後に第2のレ
ジストパターンを除去する。これにより、第1のラビン
グ方向にラビング処理した部分と、第2のラビング方向
にラビング処理した部分とを形成できる。更に、これ
を、ラビング方向を異ならせて繰り返すことにより、各
パターンごとに配向方向を異ならせることができる。
【0077】また、偏光照射処理を適用して各被膜パタ
ーンごとに配向方向を異ならせる方法としては、例え
ば、所定のパターンを形成した第1のフォトマスクを介
して、第1の偏光を照射した後、第1のフォトマスクの
パターンと異なる所定のパターンを形成した第2のフォ
トマスクを介して、第1の偏光の偏光方向と異なる偏光
方向を有する第2の偏光を照射すればよい。更に、これ
を、偏光方向を異ならせて繰り返すことにより、各パタ
ーンごとに配向方向を異ならせることができる。
【0078】また、偏光方向を変化させながら、各被膜
パターンに偏光をスキャン照射することによっても、各
パターンごとに配向方向を異ならせることができる。
【0079】また、前記被膜として単分子累積膜を形成
する場合、被膜の配向方法としては、単分子層を形成す
る工程を繰り返して単分子累積膜を形成した後、この累
積膜に対して所定の方向に一括配向させる方法が適用で
きる。この方法は、特に累積層数が少ない場合に有効な
方法である。この方法を適用する場合、配向方法として
は偏光照射処理またはラビング処理を採用することが好
ましい。また、単分子層を形成した後、続いて単分子層
を配向させる工程を繰り返す方法を適用することも可能
である。この方法は、特に累積層数が多い場合に有効な
方法である。この方法を適用する場合、配向方法として
は偏光照射処理を採用することが好ましい。
【0080】また、前記被膜として単分子累積膜を形成
する場合、単分子累積膜を構成する各層の配向方向は同
一方向であっても、層毎に異なっていてもよい。
【0081】次に、上記被膜を構成する有機分子を重合
させて、導電性有機薄膜5を形成する(図1D)。
【0082】図4は、重合後の被膜(すなわち、導電性
有機薄膜5)の構造の一例を示す模式図である。この図
に示すように、重合により、前記被膜4を構成する有機
分子の共役結合可能基同士が結合し、共役結合鎖が形成
される。そして、この共役結合鎖の形成により導電ネッ
トワークが形成され、前記被膜4に導電性が発現する。
なお、図4において、20は導電性有機薄膜を構成する
重合体の1ユニットを表し、21は前記共役結合鎖を構
成する1ユニットを表し、22は基材表面と化学結合し
た末端結合基を表す。
【0083】例えば、前記被膜を構成する有機分子が、
前記化学式(1)または(2)で表される化合物である
場合、導電性有機薄膜を構成する重合体として、それぞ
れ、下記化学式(11)または(12)で表されるユニ
ットから構成される重合体を形成することができる。な
お、下記式(11)および(12)において、X、Z、
E、m、n、pおよびqは、前記式(1)および(2)
と同様である。
【0084】
【化6】
【0085】また、前記被膜を構成する有機分子が、前
記化学式(3)または(4)で表される化合物である場
合、導電性有機薄膜を構成する重合体として、それぞ
れ、下記化学式(13)または(14)で表されるユニ
ットから構成される重合体を形成することができる。な
お、下記式(13)および(14)において、X、E、
m、n、pおよびqは、前記式(3)および(4)と同
様である。
【0086】
【化7】
【0087】また、前記被膜を構成する有機分子が、前
記化学式(5)または(6)で表される化合物である場
合、導電性有機薄膜を構成する重合体として、それぞ
れ、下記化学式(15)または(16)で表されるユニ
ットから構成される重合体を形成することができる。な
お、下記式(15)および(16)において、X、E、
p、qおよびrは、前記式(5)および(6)と同様で
ある。
【0088】
【化8】
【0089】また、前記被膜を構成する有機分子が、前
記化学式(7)〜(10)で表される化合物である場
合、導電性有機薄膜を構成する重合体として、それぞ
れ、下記化学式(17)〜(20)で表されるユニット
から構成される重合体を形成することができる。なお、
下記式(17)〜(20)において、X、E、p、q、
sおよびtは、前記式(7)〜(10)と同様である。
【0090】
【化9】
【0091】なお、この工程において「重合」とは、共
役結合可能基同士が結合して共役結合鎖を形成する反応
を意味する。例えば、被膜を構成する有機分子が既に共
役結合可能基以外の部位で重合している場合、分子(重
合体)内の共役結合可能基同士が結合して架橋するが、
本工程の重合はこのような架橋を含むものである。
【0092】重合工程は、例えば、触媒重合、エネルギ
ービーム照射重合、電解重合などの方法により実施する
ことができる。以下に、各重合方法について詳説する。
【0093】(i)触媒重合 触媒重合は、前記被膜を、触媒を含む溶液に接触させる
ことにより実施される。触媒としては、被膜を構成する
有機分子に応じて適宜選択することができるが、例え
ば、チグラーナッタ触媒およびハロゲン化金属触媒など
を使用することができる。ハロゲン化金属触媒として
は、金属として、Mo、W、Nb、Taなどを含むもの
が好ましく、具体例としては、MoCl5、WCl6、N
bCl5、TaCl5、Mo(CO)5、W(CO)6、N
b(CO)5、Ta(CO)5などが挙げられる。
【0094】触媒を含む溶液としては、例えば、クロロ
ホルム、トルエン、ジオキサン、アニソールなどの有機
溶媒に触媒を添加したものが使用できる。また、重合条
件については、特に限定するものではないが、例えば、
温度20〜30℃、時間1〜120分である。
【0095】被膜に触媒溶液を接触させる方法として
は、例えば、触媒を含む溶液に被膜が形成された基材を
浸漬する方法、触媒を含む溶液を被膜表面に塗布する方
法などが適用できる。また、触媒を含む溶液を被膜表面
に対して一定方向に流すことにより、被膜を構成する有
機分子を配向させるとともに重合させることも可能であ
る。
【0096】また、被膜に触媒を接触させる方法とし
て、触媒を含むガス雰囲気中に被膜を暴露する方法、触
媒を含むガスを被膜表面に吹き付ける方法などを適用す
ることも可能である。後者の場合、触媒を含むガスを被
膜表面に対して一定方向に吹き付けることにより、被膜
を構成する有機分子を配向させるとともに重合させるこ
とも可能である。
【0097】(ii)エネルギービーム照射重合 エネルギービーム照射重合は、前記被膜にエネルギービ
ームを照射することにより実施される。エネルギービー
ムとしては、例えば、赤外線、紫外線、遠紫外線、可視
光線などの光線、X線などの放射線、電子線などの粒子
線などが適用できる。また、エネルギービームとして、
例えば、偏光した紫外線、偏光した遠紫外線、偏光した
X線などを用いた場合、有機分子の配向と重合とを同時
に行うこともできる。
【0098】共役結合可能基はその種類に応じて吸収特
性が異なるため、例えば、有機分子の共役結合可能基の
種類に応じて、適宜、エネルギービームの種類および照
射条件(照射量、照射時間等)を決定すればよい。例え
ば、共役結合可能基がエチニレン基またはジアセチレン
基の場合は、エネルギービームとして紫外線を照射する
ことが好ましい。
【0099】このように共役結合可能基の種類に応じ
て、エネルギービームの種類および条件などを決定する
ことによって、重合反応の効率を向上できる。また、多
くの共役結合可能基が、エネルギービームに対し吸収性
を有するため、様々な種類の共役結合可能基を有する有
機分子からなる被膜に対しても適用できる。
【0100】また、基材表面に複数の被膜パターンが存
在する場合、これら複数のパターンを1回の照射工程に
より一括して重合させてもよいし、各パターンごとに別
々の照射工程により重合してもよい。後者の場合、例え
ば、所定のパターンを形成した第1のフォトマスクを介
して、エネルギービームを照射した後、第1のフォトマ
スクと異なる所定のパターンを形成した第2のフォトマ
スクを介して、エネルギービームを照射する方法を適用
することが可能である。このとき、第1のフォトマスク
を介して照射されるエネルギービームと第2のフォトマ
スクを介して照射されるエネルギービームとは、同種の
エネルギービームである必要はなく、更に、エネルギー
ビームとして偏光または偏光X線を用いる場合にはそれ
らの偏光方向が同じでなくともよい。偏光方向の異なる
エネルギービームを使用すれば、各パターンごとに、形
成される導電ネットワークの方向を異ならせることがで
きる。
【0101】(iii)電解重合 電解重合は、前記被膜に接触するように電極対を形成
し、この電極間に電圧を印加することにより実施され
る。この電解重合では、前記被膜の電極対に挟まれた部
分のみが重合し、それ以外の部分は重合しない。従っ
て、パターン状の被膜を重合させる場合、パターン全体
が電極対に挟まれるように、電極対を配置すればよい。
例えば、被膜のパターンが矩形である場合、この矩形パ
ターンの互いに対向する二辺に沿って電極を配置すれば
よい。また、一つのパターンに対して複数の電極対を配
置し、各電極対に電圧を印加することによってパターン
全体を重合させることもできる。また、複数の独立した
パターンが存在する場合は、各パターンごとに電極対を
設ければよい。
【0102】電極としては、特に限定するものではない
が、例えば、Ti、Ni、Au、Ptなどの金属および
その合金などを使用することができる。その形成方法と
しては、基材または被膜表面に電極材料を成膜し、これ
をパターニングする方法を採用により実施することがで
きる。成膜方法としては、例えば、蒸着法、スパッタ法
などを採用することができ、パターニング方法として
は、例えば、レジストを用いたエッチングまたはリフト
オフなどを採用することができる。
【0103】また、電極を形成する箇所については、前
述したようにパターン状の被膜を重合させることができ
れば、特に限定するものではない。例えば、電極を前記
被膜上に形成し、電極の下面が前記被膜と接触するよう
な形態とすることができる。このような形態は、電極と
被膜との接触面積を大きくすることができるため、多少
の電極剥離が生じた場合などであっても、後工程におけ
る被膜の電解重合を確実に実施できるという利点を有し
ている。また、別の例としては、電極を基材上に形成
し、電極の側面が前記被膜と接触するような形態が挙げ
られる。
【0104】また、電極対としては、前述したように基
材上または被膜上に固定形成された電極を使用してもよ
いし、基材上または被膜上に固定されておらず、単に被
膜に接触させただけの電極を使用してもよい。後者の場
合は、電極対を接触させてパターンの一部を重合させた
後、電極対を移動させて、パターンの他の部分を重合さ
せるという操作を繰り返すことによって、最終的にパタ
ーン全体を重合させることも可能である。
【0105】電極対に印加される電圧の大きさは、被膜
を構成する有機分子の酸化還元電位よりも大きければ、
特に限定するものではない。印加電圧は、両電極間に生
じる電界の大きさが、例えば、1.5〜200V/c
m、好ましくは1.5〜20V/cmとなるように設定
される。
【0106】また、電極間に印加する電圧としては、直
流電圧を使用しても、交流電圧を使用してもよい。ま
た、電極間に印加する電圧をパルス波とすることも可能
である。通常、電界酸化重合によって水素が発生する
が、水素の発生が局所的に起こった場合、発生した水素
が気泡となり、電極を剥離する場合がある。このような
水素の局所的発生を抑制できることから、電圧として
は、交流電圧を用いることが好ましい。また、直流電圧
を用いる場合は、これをパルス波状に印加することが好
ましい。
【0107】また、電解重合工程における重合時間は、
特に限定するものではなく、電極間に導電ネットワーク
が形成されるのに要する時間とされる。この電解重合工
程においては、電極間に電界をかけた状態で被膜を重合
させるため、導電ネットワーク形成が完了したが否か
は、電極間の通電状態を観察することにより容易に判断
できる。すなわち、導電ネットワークが完成した場合
は、電極間の被膜に電流が急激に流れる現象が観察でき
る。
【0108】また、その他の電解条件については、特に
限定するものではない。例えば、電解温度は20〜30
℃、好ましくは室温(25℃)程度とすることができ
る。
【0109】重合方法の選択は、被膜を構成する有機分
子の種類などに応じて、適宜選択することができる。
【0110】触媒重合を採用する場合は、被膜を構成す
る有機分子が、共役結合可能基として、例えば、ピロー
ル基、チェニレン基、エチニレン基、ジアセチレン基な
どを含むことが好ましい。
【0111】また、エネルギービーム照射重合を採用す
る場合は、被膜を構成する有機分子が、共役結合可能基
として、例えば、エチニレン基、ジアセチレン基などを
含むことが好ましい。
【0112】また、電解重合を採用する場合は、被膜を
構成する有機分子が、共役結合可能基として、例えば、
ピロール基、チェニレン基などを含むことが好ましい。
【0113】また、複数の重合方法を組み合わせて用い
ることも可能である。この場合、少なくとも重合の最終
工程において、電解重合を行うことが好ましい。具体的
には、例えば、予備重合として触媒重合またはエネルギ
ービーム照射重合を行った後、最終的に電解重合を行う
組み合わせが挙げられる。触媒重合およびエネルギービ
ーム照射重合は重合速度が速いという利点を有してお
り、電解重合は電極間に電圧を印加しながら重合させる
ので、導電ネットワークが完結した時に電極間に電流が
流れるため、重合が完結したか否かを容易に検知できる
という利点を有している。
【0114】また、重合工程においては、有機分子を重
合させるだけでなく、更に重合後に架橋反応させて、導
電ネットワークを形成してもよい。例えば、有機分子が
2以上の共役結合可能基を有している場合、一方の共役
結合可能基を他の有機分子と重合させた後、さらに他方
の共役結合可能基にを他の有機分子と架橋させれば、重
合後とは異なる構造の導電ネットワークを形成すること
ができる。
【0115】例えば、共役結合可能基としてジアセチレ
ン基を含む有機分子の集合群からなる被膜を形成し、そ
の被膜に触媒重合を行い、更に、エネルギービーム照射
重合により架橋を行うと、ポリアセン型の共役結合鎖を
含む導電ネットワークを形成することができる。
【0116】更に、本発明の製造方法においては、導電
性有機薄膜にドーパントを添加する工程を実施してもよ
い。このように、電荷移動性のドーパントをドーピング
すると、簡便に導電率を向上させることができる。ドー
パントとしては、例えば、ヨウ素、BF-イオンなどの
アクセプター・ドーパント(電子受容体)、並びに、L
i、Na、Kなどのアルカリ金属、Caなどのアルカリ
土類金属などのドナー・ドーパント(電子供与体)が使
用できる。
【0117】本発明の製造方法により製造される導電性
有機薄膜は、有機分子の重合体であり、この有機分子同
士の重合により形成された共役結合鎖を有している。そ
のため、前記共役結合鎖による導電ネットワークが形成
されている。この導電ネットワークは方向性を有するこ
とが好ましい。この場合、導電ネットワークを構成する
共役結合鎖は厳密に一方向に連なる必要はなく、例え
ば、導電ネットワークが様々な方向に連なる共役結合鎖
を含むが、全体として特定の方向に形成されていればよ
い。
【0118】この導電性有機薄膜の導電度(ρ)につい
ては、特に限定するものではないが、例えば1S/cm
以上、好ましくは1×103S/cm以上、更に好まし
くは1×104S/cm以上、更に好ましくは5.5×
105S/cm以上、最も好ましくは1×107S/cm
以上である。なお、前記値はすべて室温(25℃)にお
けるドーパントなしの場合である。このように、金属と
同等か、またはそれ以上の導電性を得ることも可能であ
る。
【0119】本発明の製造方法によれば、用途に応じ
て、様々なパターンの導電性有機薄膜を形成することが
可能である。図5A−Cは、導電性有機薄膜のパターン
の一例を示す模式図である。図5Aの例においては、基
材1表面に帯状の導電性有機薄膜5が複数形成されてお
り、これが互いに平行に配置されている。図5Bの例に
おいては、基材1表面に比較的小面積の導電性有機薄膜
5が複数形成されており、これがマトリクス状に配置さ
れている。図5Cは、基材1表面に異なる形状を有する
導電性有機薄膜5が複数形成されている。
【0120】このように、本発明の製造方法によれば、
所望のパターン状の導電性有機薄膜を製造することがで
きる。そのため、この導電性有機薄膜を、導線(配
線)、集合配線、電極、透明電極などとして利用した様
々なデバイスの製造に適用することができる。例えば、
半導体素子、コンデンサなどの電子デバイスや、液晶表
示装置、電界発光素子、太陽電池などの光デバイスの製
造に適用することが可能である。
【0121】(第2の実施形態)導電性有機薄膜の前駆
体となる被膜をパターン状に形成する方法は、前述のよ
うな方法に限定されない。例えば、以下に説明するよう
な、活性水素付与処理を用いた方法により実施すること
ができる。
【0122】この方法は、基材表面の導電膜形成予定領
域に活性水素付与処理を施した後、化学吸着法により前
記導電膜形成予定領域に被膜を形成することにより実施
される。なお、活性水素付与処理とは、基材表面を活性
水素が露出した状態とする処理を意味する。
【0123】この方法を採用する場合、基材としては、
表面に活性水素が露出していない基材が使用される。こ
のような基材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカ
ーボネート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂などの疎水
性樹脂基材が挙げられる。また、基材としては、表面に
疎水性被膜を備えた基材を用いることも可能である。疎
水性被膜としては、例えば、アルミニウムなどの金属
膜、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテ
ルサルホン樹脂などの疎水性樹脂膜などが挙げられる。
また、疎水性被膜を備えた基材の場合、基材本体の材質
は限定するものではなく、疎水性基材であっても、親水
性基材であってもよい。
【0124】活性水素付与処理としては、例えば、基材
表面の導電膜形成予定領域を酸化することにより、その
領域に活性水素を付与する処理が採用できる。
【0125】基材表面の酸化は、例えば、酸素および水
素原子供給物質の存在下で、基材表面の導電膜形成予定
領域に紫外線を照射することにより実施される。このよ
うな方法によれば、紫外線照射により酸素が分解されて
オゾンが生成し、このオゾンが水素原子供給物質と反応
して、活性水素を有する活性種が生成する。一方、基材
表面に紫外線が照射されると、基材表面の原子間の共有
結合が切断され、未結合手が形成される。この基材表面
の未結合手に活性水素を含む活性種が作用することによ
り、基材表面に活性水素が付与される。
【0126】水素原子供給物質としては、例えば、水、
アンモニアなどを使用することができる。水素原子供給
物質として水を用いた場合、基材表面において、活性水
素を−OH基として存在させることができる。また、水
素原子供給物質としてアンモニアを用いた場合は、活性
水素を−NH基として存在させることができる。
【0127】酸化による活性水素付与処理は、基材表面
の導電膜形成予定領域に対して実施し、それ以外の領域
に対しては実施しない。このように基材表面の特定領域
のみを選択的に処理する方法としては、例えば、基材表
面に、導電膜形成予定領域を開口し、その他の領域を被
覆するフォトマスクを形成し、このマスクを介して前記
基材表面に紫外線を照射する方法を採用することができ
る。また、紫外線照射手段として、例えばエキシマレー
ザーなどのレーザーを用いる場合は、基材表面の特定領
域に紫外線をスポット照射する方法を採用することもで
きる。
【0128】また、上記方法においては、紫外線照射処
理に代えて、コロナ処理、プラズマ処理などの方法を採
用することも可能である。これらの処理を酸素および水
素原子供給物質の存在下で実施することにより、基材表
面に活性水素を付与することができる。
【0129】このようにして、基材表面の導電膜形成予
定領域に活性水素付与処理を施した後、化学吸着法によ
り被膜を形成する。なお、化学吸着法に使用される試薬
(被膜材料である有機分子を含む。)および操作方法に
ついては、第1の実施形態において説明したとおりであ
る。
【0130】このとき、活性水素付与処理が施された領
域、すなわち導電膜形成予定領域においては、被膜材料
である有機分子の末端結合可能基と基材表面の活性水素
とが反応し、化学結合が形成される。これにより、前記
有機分子が基材表面に固定され、導電性有機薄膜の前駆
体となる被膜が形成される。一方、活性水素付与処理が
施されていない領域、すなわち導電膜形成予定領域を除
く領域においては、被膜材料である有機分子は基材表面
に固定されない。その結果、基材表面には、導電性有機
薄膜の前駆体となる被膜をパターン状に形成することが
できる。
【0131】(第3の実施形態)更に、導電性有機薄膜
の前駆体となる被膜をパターン状に形成する方法とし
て、例えば、以下に説明するような、活性水素除去処理
を用いた方法を採用することも可能である。
【0132】この方法は、基材表面の導電膜形成予定領
域を除く領域に活性水素除去処理を施した後、化学吸着
法により被膜を形成する方法である。なお、活性水素除
去処理とは、基材表面を、活性水素が露出している状態
から、活性水素が露出していない状態に変化させる処理
を意味する。
【0133】この方法を採用する場合、基材としては、
表面に活性水素が露出した基材が使用される。このよう
な基材としては、例えば、ガラス基材、シリコン基材、
酸化シリコン基材、窒化シリコン基材などの親水性基材
が挙げられる。また、基材としては、表面に親水性被膜
を備えた基材を用いることも可能である。親水性被膜と
しては、例えば、金属酸化物、ガラス、シリコン、酸化
シリコン、窒化シリコンなどが挙げられる。また、親水
性被膜を備えた基材の場合、基材本体の材質については
特に限定するものではなく、疎水性基材であっても、親
水性基材であってもよい。
【0134】活性水素除去処理としては、例えば、次に
挙げるような方法を採用することができる。
【0135】第1の方法は、基材表面の導電膜形成予定
領域を除く領域に、疎水性被膜を形成する方法である。
【0136】疎水性被膜は、例えば、化学吸着法により
形成することができる。この場合、疎水性被膜の形成材
料としては、疎水基と、基材表面の活性水素と化学結合
を形成し得る末端結合可能基とを含む有機分子が用いら
れる。疎水基としては、例えば、炭化水素基、水素の一
部または全部がフッ素で置換された炭化水素基を用いる
ことができる。前記炭化水素基は、飽和の炭化水素基で
あっても、不飽和の炭化水素基であってもよい。また、
前記炭化水素基は、直鎖状であっても、分枝鎖状であっ
ても、環状であってもよい。前記炭化水素基の炭素数
は、特に限定するものではないが、例えば1〜36個、
好ましくは5〜30個である。
【0137】また、末端結合可能基は、基材表面の活性
水素と反応することにより、化学結合、好ましくは共有
結合を形成し得る官能基である。このような官能基とし
ては、例えば、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル
基、イソシアネートシリル基などが挙げられる。
【0138】このような疎水性被膜材料分子の具体例と
しては、下記化学式(21)または(22)で示される
化合物が挙げられる。
【0139】
【化10】
【0140】ここで、aは、例えば0〜30、好ましく
は0〜25の整数である。bは、例えば0〜25、好ま
しくは0〜10の整数である。また、cは、例えば0〜
10、好ましくは2〜6の整数である。Dはハロゲン、
イソシアネート基または炭素数1〜3のアルコキシル基
であり、Eは水素または炭素数1〜3のアルキル基であ
り、pは1〜3の整数である。
【0141】このような材料分子を前記基材表面に接触
させると、上記有機分子の末端結合可能基と基材表面の
活性水素とが反応し、末端結合可能基が基材表面と化学
結合する。これにより、疎水性被膜が基材表面に形成さ
れる。
【0142】なお、化学吸着法の具体的な操作方法につ
いては、特に限定するものではない。例えば、疎水性被
膜の材料分子を溶媒に添加して化学吸着液を調製し、こ
れを基材表面に接触させる方法を採用することができ
る。更に、疎水性被膜形成後、未反応の材料分子を基材
表面から除去するため、基材表面を洗浄することが好ま
しい。
【0143】前記疎水性被膜の形成は、基材表面の導電
膜形成予定領域を除く領域に対して実施し、導電膜形成
予定領域に対しては実施しない。このように基材表面の
特定領域のみに疎水性被膜を形成する方法としては、例
えば、基材表面に、導電膜形成予定領域を被覆し、その
他の領域は被覆しないレジストパターンを形成した後、
前記レジストパターンを備えた基材に対して化学吸着法
を実施する方法を採用することができる。
【0144】また、基材全面に疎水性被膜を形成した
後、導電膜形成予定領域に存在する前記疎水性被膜を除
去する方法を採用することも可能である。
【0145】疎水性被膜の除去方法としては、例えば、
酸素の存在下で、導電膜形成予定領域の疎水性被膜に紫
外線を照射する方法が挙げられる。このような方法によ
れば、紫外線照射により酸素が分解されてオゾンが生成
し、このオゾンが更に分解することにより、酸化力の強
い活性酸素が生成する。この活性酸素により疎水性被膜
が酸化され、揮発性の物質に分解されて除去される。疎
水性被膜が除去された領域は、活性水素を有する基材が
露出する。
【0146】この場合、疎水性被膜の特定領域のみを選
択的に除去するには、疎水性被膜表面に、導電膜形成予
定領域を開口し、その他の領域を被覆するフォトマスク
を形成し、このフォトマスクを介して前記基材表面に紫
外線を照射すればよい。また、紫外線照射手段として、
例えばエキシマレーザーなどのレーザーを用いる場合
は、疎水性被膜の特定領域に紫外線をスポット照射する
方法を採用することもできる。
【0147】また、紫外線照射処理の他に、コロナ処
理、プラズマ処理などの方法を採用することも可能であ
る。これらの処理を酸素の存在下で実施することによ
り、基材表面の疎水性被膜を酸化除去することができ
る。
【0148】なお、上記説明においては、疎水性被膜と
して化学吸着法により形成された被膜を用いる場合を例
示したが、疎水性被膜は基材表面に意図的に形成された
ものである必要はない。例えば、基材表面に不純物とし
て付着した油や、ヒトの皮脂などであってもよい。
【0149】第2の方法は、基材表面の導電膜形成予定
領域を除く領域に対して、物理的な疎水化処理を施こす
方法である。このような方法としては、基材表面の共有
結合を物理的手段により切断し、活性水素を除去する方
法が挙げられる。
【0150】具体的な処理方法としては、例えば、不活
性雰囲気下において、基材表面に紫外線を照射する方法
が挙げられる。このような方法によれば、紫外線照射に
より、活性水素を基材に結合させる共有結合が切断さ
れ、この結合の切断に伴なって活性水素が除去される。
【0151】このような物理的処理による活性水素除去
は、基材表面の導電膜形成予定領域を除く領域に対して
実施し、導電膜形成予定領域に対しては実施しない。こ
のように基材表面の特定領域のみを選択的に処理する方
法としては、例えば、基材表面に、導電膜形成領域を被
覆し、その他の領域は被覆しないフォトマスクを形成
し、このマスクを介して、前記基材表面に紫外線を照射
する方法を採用することができる。また、紫外線照射処
理を採用する場合は、紫外線照射手段としてエキシマレ
ーザーなどのレーザーを用い、基材表面の特定領域に紫
外線をスポット照射する方法を採用することもできる。
【0152】また、紫外線照射処理の他に、コロナ処
理、プラズマ処理などの方法を採用することも可能であ
る。これらの処理を不活性雰囲気で実施することによ
り、基材表面の活性水素を除去することも可能である。
【0153】このようにして、基材表面の導電膜形成予
定領域を除く領域に活性水素除去処理を施した後、化学
吸着法により被膜を形成する。なお、化学吸着法に使用
される試薬(被膜材料である有機分子を含む。)および
操作方法については、第1の実施形態で説明したとおり
である。
【0154】このとき、活性水素除去処理が施されてい
ない領域、すなわち導電膜形成予定領域においては、被
膜材料となる有機分子の末端結合可能基と基材表面とが
反応し、末端結合可能基が基材表面と化学結合する。こ
れにより、前記有機分子が基材表面に固定されて、導電
性有機薄膜の前駆体となる被膜が形成される。一方、活
性水素除去処理が施された領域、すなわち導電膜形成予
定領域を除く領域においては、被膜材料となる有機分子
は基材表面に固定されない。その結果、基材表面には、
導電性有機薄膜の前駆体となる被膜がパターン状に形成
される。
【0155】
【実施例】以下、実施例に基づいて、本発明の内容を具
体的に説明する。本発明は下記実施例により限定されな
い。下記実施例において、単に「%」と記載しているの
は重量%を意味する。
【0156】(実施例1) I.PENの合成 下記化学式(23)で表される物質(PEN:6-pyrrol
ylhexyl-12,12,12-trichloro-12-siladodecanoate)
を、下記工程1〜5にしたがって合成した。
【0157】
【化11】
【0158】工程1 6-ブロモ-1-(テトラヒドロピラ
ニルオキシ)ヘキサンの合成 500mlの反応容器に6-ブロモ-1-ヘキサノール197.8g(1.0
9mol)を仕込み、5℃以下に冷却した。これにジヒドロピ
ラン102.1g(1.21mol)を10℃以下の温度で滴下した。滴
下終了後、室温に戻して1時間攪拌させた。反応により
得られた残渣をヘキサン/IPE(ジイソプロピルエーテ
ル)=5/1にてシリカゲルカラム精製して263.4gの6-
ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを得
た。収率は90.9%であった。工程1の反応式を下記式
(24)に示す。
【0159】
【化12】
【0160】工程2 N−[6−(テトラヒドロピラニ
ルオキシ)ヘキシル]ピロールの合成 アルゴン気流下、2リットルの反応容器にピロール38.0
g(0.567mol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)200m1
を仕込み、5℃以下に冷却した。これに1.6Mのn−ブチ
ルリチウムヘキサン溶液354ml(0.567mol)を10℃以下
で滴下した。同温度で1時間攪拌させた後、ジメチルス
ルホキシド600mlを加えてTHFを加熱留去して溶媒置
換した。次に、6-ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキサン165.2g(0.623mol)を室温にて滴下した。滴
下後、2時間、同温度で攪拌させた。
【0161】反応混合物に水600molを加え、ヘキサン抽
出し、有機層を水洗した。無水硫酸マグネシウムにて乾
燥後、溶媒留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル=4
/1にてシリカゲルカラム精製して107.0gのN−[6−
(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロールを
得た。収率75.2%であった。工程2の反応式を下記
式(25)に示す。
【0162】
【化13】
【0163】工程3 N-(6-ヒドロキシヘキシル)-ピ
ロールの合成 1リットルの反応容器に上記で得られたN-[6-(テト
ラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロール105.0g
(0.418mol)、メタノール450ml、水225ml、濃
塩酸37.5mlを仕込み、室温にて6時間攪拌させ
た。反応混合物を飽和食塩水750mlに注加し、IP
E抽出した。有機層を飽和食塩水洗浄し、無水硫酸マグ
ネシウムにて乾燥させ、溶媒留去した。得られた残渣を
n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1にてシリカゲルカラ
ム精製し、63.1gのN-(6-ヒドロキシヘキシル)-ピロー
ルを得た。収率90.3%であった。工程3の反応式を
下記式(26)に示す。
【0164】
【化14】
【0165】工程4 N-[6-(10-ウンデセノイル
オキシ)ヘキシル]−ピロールの合成 2リットルの反応容器にN-(6-ヒドロキシヘキシル)-
ピロール62.0g(0.371mol)と、dryピリジン33.2
g(0.420mol)、dryトルエン1850ml
を仕込み、20℃以下で10-ウンデセノイルクロリド75.
7g(0.373mol)のdryトルエン300m1溶液
を滴下した。滴下時間は30分であった。その後、同温
度にて1時間攪拌させた。反応混合物を氷水1.5リッ
トルに注加し、1N塩酸で酸性にした。酢酸エチル抽出
し、有機層を水洗、飽和食塩水洗浄し、無水硫酸マグネ
シウムにて乾燥させ、溶媒を除去し、128.2gの粗
体を得た。これをn−ヘキサン/アセトン=20/1に
てシリカゲルカラム精製し、99.6gのN-[6-(1
0-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-ピロールを得
た。収率80.1%であった。工程4の反応式を下記式
(27)に示す。
【0166】
【化15】
【0167】工程5 PENの合成 100mlキャップ付き耐圧試験管にN-[6-(10-
ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-ピロール2.0g
(6.0×10-3mo1)、トリクロロシラン0.98g
(7.23×10-3mol)、H2PtC16・6H20の5%イソ
プロピルアルコール溶液0.01gを仕込み、100℃
で12時間反応させた。この反応液を活性炭で処理した
後、2.66×103Pa(20Torr)の減圧下で低沸点成分を留去
した。2.3gのPENを得た。収率81.7%であっ
た。工程5の反応式を下記式(28)に示す。
【0168】
【化16】
【0169】なお、末端のトリクロロシリル基をトリメ
トキシシリル基に置換するには、前記化学式1のPEN
を3モル倍のメチルアルコールと室温(25℃)で攪拌
し、脱塩化水素反応させる。必要に応じて前記塩化水素
は水酸化ナトリウムを加えて塩化ナトリウムとして分離
する。
【0170】得られたPENについて、図7にNMRの
チャート、図8にIRのチャートをそれぞれ示す。
【0171】(NMR) (1)測定機器:装置名AL300(日本電子株式会社
製) (2)測定条件:1H−NMR(300MHz)、サン
プル30mgをCDCl3に溶解し測定。
【0172】(赤外線吸収スペクトル:IR) (1)測定機器:装置名270−30型(株式会社日立
製作所製) (2)測定条件:neat(サンプルを2枚のNaCl板に挟み
測定)
【0173】II.単分子膜の形成 前記化学式(23)のPENを用い、脱水したジメチル
シリコーン溶媒で1wt%に薄めて化学吸着液を調製し
た。また、SiH4とO2ガスとの混合ガスを用いたプラ
ズマ重合により、ポリイミド基板表面にシリカ膜を形成
した。
【0174】更に、前記基板表面にフォトレジスト(東
京応化工業社製「OEPR5000(商品名)」)を塗
布し、フォトリソグラフィー法により前記レジストをパ
ターニングした。これにより、前記基板表面に、導電膜
形成予定領域を開口し、且つ、その他の領域を被覆する
レジストパターンを形成した。なお、レジストパターン
の開口部は、10μm×100μmの矩形とした。
【0175】前記基板を室温(25℃)の化学吸着液に
1時間浸漬して、基板表面で脱塩化反応させ、前記基板
の全面に薄膜を形成した。次に、基板上に残った未反応
の前記物質を無水クロロフォルムで洗浄除去した後、レ
ジストパターンを有機溶媒に溶解させることにより除去
した。これにより、基板表面に単分子膜を選択的に形成
した。なお、形成された単分子膜の形状は、10μm×
100μmの矩形であった。
【0176】このとき、シリカ膜で被覆されたポリイミ
ド基板表面には活性水素を含む水酸基が多数存在するの
で、前記レジストパターンの開口部においては、前記物
質のクロロシリル基(−SiCl)が基板表面の水酸基
と脱塩化水素反応を生じて、基板表面に共有結合する。
これにより、下記化学式(29)で示される分子で構成
された単分子膜が形成された。
【0177】
【化17】
【0178】III.単分子膜の配向 次に、単分子膜が形成されたポリイミド基板をクロロフ
ォルム溶液中に浸漬して洗浄し、クロロフォルム溶液か
ら引き上げる際、後の工程で形成する第1の電極から第
2の電極に向かう方向と平行に液切りできるように、ポ
リイミド基板を垂直に立てた状態で引き上げた。これに
より、第1の電極から第2の電極に向かって一次配向し
た単分子膜を形成した。
【0179】IV.電極の形成 次に、基板全面にニッケル膜を蒸着形成した後、フォト
リソグラフィ法およびエッチングを適用して、前記単分
子膜上に第1の電極および第2の電極を形成した。図6
に示すように、第1の電極31および第2の電極32
は、被膜パターン4を挟んで互いに対向するように配置
した。なお、電極間の距離は10μmとした。
【0180】V.電解重合 その後、純水溶液中で、第1の電極と第2の電極との間
に電圧を印加して、前記単分子膜を構成する分子を電解
重合させた。電解重合の条件は、電界5V/cm、反応
温度25℃、反応時間5時間であった。
【0181】この電解重合により単分子膜が重合し、導
電性有機薄膜が形成された。導電性有機薄膜の形状は、
10μm×100μmの矩形であった。なお、得られた
導電性有機薄膜の膜厚は約2.0nmであり、ポリピロ
ール部分の厚さは約0.2nmであった。また、得られ
た有機導電膜は可視光線のもとでは透明であった。
【0182】下記化学式(30)に、導電性有機薄膜を
構成するポリマーの1ユニットを示す。
【0183】
【化18】
【0184】VI.測定 市販の原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツル
メント社製、SAP3800N)を用い、AFM−CI
TSモードで、電圧:1mV、電流:160nAの条件
により、得られた導電性有機薄膜の電導度(ρ)を測定
した。その結果、室温(25℃)において、ドープなし
で、ρ>1×107S/cmであった。これは、電流計
が1×107S/cmまでしか測定することができず、
針がオーバーして振り切れてしまったからである。電導
度の良好な金属である金は室温(25℃)において5.
2×105S/cm、銀は5.4×105S/cmである
ことからすると、本実施例において形成された導電性有
機薄膜の電導度は驚くべき高い導電性である。前記値か
らすると、この導電性有機薄膜は「超金属導電領域」と
いうことができる。
【0185】(実施例2) I.TENの合成 下記化学式(31)で表される物質(TEN:6-[(3-th
ienyl)hexyl-12,12,12-trichloro-12-siladodecanoat
e])を、下記工程1〜5にしたがって合成した。
【0186】
【化19】
【0187】工程1 6−ブロモ−1−(テトラヒドロ
ピラニルオキシ)ヘキサンの合成 下記化学式(32)に示す反応を行い6−ブロモ−1−
(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを合成した。
まず、500mLの反応容器に6−ブロモ−1−ヘキサ
ノール197.8g(1.09mol)を仕込み、5℃
以下に冷却した後、これに、ジヒドロピラン102.1
g(1.21mol)を10℃以下で滴下した。滴下終
了後、室温に戻して1時間攪拌した。
【0188】
【化20】
【0189】得られた残渣をシリカゲルカラムに供し、
溶出溶媒としてヘキサン/ジイソプロピルエーテル(I
PE)混合溶媒(体積比5:1)を用いて精製し、26
3.4gの6−ブロモ−1(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキサンを得た。この際の収率は90.9%であっ
た。
【0190】工程2 3-[6-(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキシル]チオフェンの合成 下記化学式(33)に示す反応を行い3-[6-(テトラヒド
ロピラニルオキシ)ヘキシル]チオフェンを合成した。
【0191】
【化21】
【0192】まず、アルゴン気流下、2Lの反応容器に
削ったマグネシウム25.6g(1.06m。1)を仕
込み、さらに、6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニ
ル)ヘキサン140.2g(0.529mol)を含む
ドライテトラヒドロフラン(ドライTHF)溶液4Lを
室温で滴下した。この際の滴下時間は1時間50分であ
って、発熱反応を起した。その後、室温で1.5時間攪
拌して、グリニャール試薬を調製した。
【0193】つぎに、アルゴン気流下、新たな2L反応
容器に3−ブロモチオフェン88.2g(541mo
l)とジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)ニッ
ケル(II)3.27gとを仕込み、前記調製したグリニ
ャール試薬全量を室温で滴下した。この際、前記反応容
器内の温度を室温(50℃以下)に保ち、滴下時間は、
30分とした。滴下後、室温で23時間攪拌した。
【0194】この反応混合物を、0℃に保った0.5N
HCl 1.3Lに添加し、IPE抽出を行った。得
られた有機層を水洗し、さらに飽和食塩水で洗浄した
後、無水硫酸マグネシウムを添加して乾燥させた。そし
て、溶媒を留去し、3-[6-(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体199.5gを得
た。この粗体は、精製せずに次の工程3に供した。
【0195】工程3 3−(6−ヒドロキシヘキシル)
−チオフェンの合成 下記化学式(34)に示す反応を行い3−(6−ヒドロ
キシヘキシル)−チオフェンを合成した。
【0196】
【化22】
【0197】1Lの反応容器に、前記工程2で得られた
未精製3-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]−
チオフェン199.5g、メタノール450mL、水2
25mLおよび濃塩酸37.5mLを仕込み、室温で6
時間攪拌して反応させた。この反応混合物を飽和食塩水
750mLに添加し、IPE抽出を行った。そして、得
られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、さらに無水硫酸マ
グネシウムで乾燥させた後、溶媒留去して3−(6−ヒ
ドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体148.8
gを得た。この粗体をシリカゲルカラムに供し、溶出溶
媒としてn−へキサン/酢酸エチル混合溶媒(体積比
3:1)を用いて精製し、84.8gの3−(6−ヒド
ロキシヘキシル)−チオフェンを得た。この際の収率
は、工程2で得られた3-[6-(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体に対して87.0
%であった。
【0198】工程4 3-[6-(10-ウンデセノイルオキ
シ)ヘキシル]-チオフェンの合成 下記化学式(35)に示す反応を行い3−(6−(10
−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル)−チオフェンを合
成した。
【0199】
【化23】
【0200】2Lの反応容器に、工程3で得られた3−
(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体8
4.4g(0.458mol)、ドライピリジン34.
9g(0.442mol)およびドライトルエン145
0mLを仕込み、20℃以下の状態で、さらに10−ウ
ンデセノイルクロリド79.1g(0.390mol)
を含有するドライトルエン溶液250mLを滴下した。
滴下時間は、30分とし、その後、同じ温度で23時間
攪拌して反応させた。得られた反応混合物を氷水2Lに
添加し、さらに1N塩酸75mLを加えた。この混合液
を酢酸エチル抽出して、得られた有機層を水洗し、さら
に飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを添
加して乾燥させる、溶媒を除去することにより、3-[6-
(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェンを含
有する粗体161.3gを得た。この粗体をシリカゲル
カラムに供し、溶出溶媒としてn−ヘキサン/アセトン
混合溶媒(体積比20:1)を用いて精製し、157.
6gの3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオ
フェンを得た。この際の収率は、前記工程3で得られた
3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗
体に対して98.2%であった。
【0201】工程5 TENの合成 下記化学式(36)に示す反応を行いTENを合成し
た。
【0202】
【化24】
【0203】(a)まず、100mLのキャップ付き耐
圧試験管に、3-[6-(10−ウンデセノイルオキシ)ヘ
キシル]-チオフェン10.0g(2.86×1012m
ol)、トリクロロシラン4.65g(3.43×10
4mol)およびH2PtC16・6H20を5重量%の
割合で含有するイソプロピルアルコール溶液0.05g
を仕込み、100℃で14時間反応させた。この反応液
を活性炭で処理した後、減圧下で低沸点成分を留去し
た。減圧条件は、2.66×103Pa(20Torr)とした。
【0204】(b)同様に、100mLキャップ付き耐
圧試験管に、3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシ
ル]-チオフェン39.0g(1.11×10-1mo
l)、トリクロロシラン18.2g(1.34×10-1
mol)、H2PtCl6・6H20を5重量%の割合で
含有するイソプロピルアルコール溶液0.20gを仕込
み、100℃で12時間反応させた。この反応液を活性
炭で処理した後、減圧下で低沸点成分を留去した。減圧
条件は前述のとおりである。
【0205】(a)と(b)で得られた残渣を混合し、
これにアルゴンガスを1時間通して塩酸ガスを除去する
ことによって、65.9gの目的物TENを得た。この
際のTENの収率は、前記工程4で得られた3-[6-(10-
ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェンを含む粗
体に対して97.2%であった。
【0206】得られたTENについて、IR分析および
NMR分析を行った。以下にその条件および結果を示
す。なお、図9にNMRのチャート、図10にIRのチ
ャートをそれぞれ示す。
【0207】(NMR) (1)測定機器:装置名AL300(日本電子株式会社
製) (2)測定条件:1H−NMR(300MHz)、サン
プル30mgをCDCl3に溶解し測定。
【0208】(赤外線吸収スペクトル:IR) (1)測定機器:装置名270−30型(株式会社日立
製作所製) (2)測定条件:neat(サンプルを2枚のNaCl板に挟み
測定)
【0209】II.単分子膜の形成、配向処理、電極の形
成および電解重合 得られたTENを用いた以外は、前記実施例1と同様に
して、単分子膜の形成、配向処理、電極の形成および電
解重合を実施した。
【0210】その結果、矩形パターンの導電性有機薄膜
が形成された。導電領域の寸法は、10μm×100μ
mであった。なお、得られた導電性有機薄膜の膜厚は約
2.0nmであり、ポリチオフェン部分の厚さは約0.
2nmであった。また、得られた有機導電膜は可視光線
のもとでは透明であった。
【0211】下記化学式(37)に、この導電性有機薄
膜を構成するポリマーの1ユニットを示す。
【0212】
【化25】
【0213】III.測定 得られた導電性有機薄膜の電導度(ρ)を、前記実施例
1と同様の方法により測定した。その結果、室温(25
℃)においてドープなしでρ>1×107S/cmであ
り、前記実施例1と同様に、驚くべき高い導電性を示し
た。
【0214】(実施例3)シリカ膜を備えたポリイミド
基板に代えて、後述するような前処理を施したアクリル
基板を用いたこと以外は、前記実施例1および2と同様
にして導電性有機薄膜を作製した。
【0215】基板の前処理は、次のようにして実施し
た。まず、疎水性基板であるアクリル樹脂基板表面にレ
ジストを塗布し、これをフォトリソグラフィー法により
パターニングした。これにより、前記基板表面に、導電
膜形成予定領域を開口し、且つ、その他の領域を被覆す
るレジストパターンを形成した。なお、レジストパター
ンの開口部は10μm×100μmの矩形とした。
【0216】次に、前記レジストパターンを備えた基板
に対して、相対湿度50%の条件下で、KrFエキシマ
レーザーを用いて紫外線照射処理を施した。これによ
り、レジストパターン開口部において、基材表面が空気
中の水分と反応し、その表面に水酸基(−OH基)が付
与された。その後、レジストを除去した。
【0217】このような基板を化学吸着液に浸漬して単
分子膜を形成した場合、前記前処理工程において紫外線
照射された部分(レジストパターン開口部)に、単分子
膜が選択的に形成された。そして、この単分子膜を重合
させることにより、導電性有機薄膜が基板表面に選択的
に形成された。なお、この導電性有機薄膜の形状は、1
0μm×100μmの矩形であった。
【0218】(実施例4)シリカ膜を備えたポリイミド
基板に代えて、後述するような前処理を施したガラス基
板を用いたこと以外は、前記実施例1および2と同様に
して導電性有機薄膜を作製した。
【0219】基板の前処理は、次のようにして実施し
た。まず、親水性基板であるガラス基板表面にレジスト
を塗布し、これをフォトリソグラフィー法によりパター
ニングした。これにより、前記基板表面に、導電膜形成
予定領域を被覆するレジストパターンを形成した。な
お、レジストパターンの形状は10μm×100μmの
矩形とした。
【0220】次に、メチルトリクロロシラン(CH3
iCl3)を脱水したジメチルシリコーン系有機溶媒に
添加し、0.05wt%の化学吸着液を調製した。前記レ
ジストパターンを備えた基板を、前記化学吸着液に25
℃の条件で2時間浸漬した。基板上に残った未反応のメ
チルトリクロロシランをエタノールで洗浄除去した後、
レジストを除去した。このとき、ガラス基板表面には活
性水素を含む水酸基が多数存在するので、非マスク部に
おいて、メチルトリクロロシランのクロロシリル基(−
SiCl)が基板表面の水酸基と脱塩化水素反応を生じ
て、基板表面に共有結合する。これにより、前記基板の
非マスク部に、疎水性被膜が形成された。
【0221】このような基板を被膜材料である有機分子
を含む化学吸着液に浸漬して単分子膜を形成した場合、
前記疎水性被膜が形成されていない部分に、単分子膜が
選択的に形成された。そして、この単分子膜を重合させ
ることにより、導電性有機薄膜が基板表面に選択的に形
成された。なお、この導電性有機薄膜の形状は、10μ
m×100μmの矩形であった。
【0222】(実施例5)単分子膜が形成された基板を
クロロフォルム溶液中に浸漬して洗浄し、この基板をク
ロロフォルム溶液から所定の方向に引き上げた後、さら
に、偏光した可視光を照射することによる配向処理を行
ったこと以外は、前記実施例1〜4と同様にして導電性
有機薄膜を形成した。なお、液切り方向は、第1の電極
から第2の電極に向う方向とし、偏光方向は、第1の電
極から第2の電極に向う方向と45°で交叉するように
設定した。また、偏光照射は、約500mJ/cm2
条件で行った。
【0223】この結果、単分子膜を構成する有機分子
は、前記液切り方向への配向から、偏光方向とほぼ平行
に配向した。
【0224】そして、このように単分子有機薄膜に液切
り配向処理および偏光照射による配向処理を施した後に
重合した場合、前記実施例1〜4と同様に、優れた導電
性を示す導電性有機薄膜を形成することができた。
【0225】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の製造方法
は、基材表面の所定の領域に選択的に形成された導電性
有機薄膜の製造方法であって、前記基材表面と共有結合
を形成可能な末端結合可能基と、他の分子と重合可能な
共役結合可能基とを含む有機分子の被膜を、前記基材表
面の前記所定の領域に選択的に形成し、前記被膜を構成
する有機分子を配向させ、前記共役結合可能基を他の有
機分子の共役結合可能基と重合させて共役結合鎖を形成
することを含むため、所望のパターンを有する導電性有
機薄膜を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1A−Dは、本発明の導電性有機薄膜の製
造方法の一例を示す工程図である。
【図2】 導電性有機薄膜の前駆体となる被膜の構造の
一例を示す模式図である。
【図3】 配向処理を施した前記被膜の構造の一例を示
す模式図である。
【図4】 導電性有機薄膜の構造の一例を示す模式図で
ある。
【図5】 図5A−Bは、それぞれ、本発明の製造方法
により得られる導電性有機薄膜のパターンの一例を示す
図である。
【図6】 本発明の一実施例における電解重合の電極配
置を示す図である。
【図7】 本発明の一実施例により得られたピロリル化
合物のNMRのチャートである。
【図8】 前記ピロリル化合物のIRのチャートであ
る。
【図9】 本発明の別の一実施例により得られたチェニ
ル化合物のNMRのチャートである。
【図10】 前記チェニル化合物のIRのチャートで
ある。
【符号の説明】
1 基材 2 導電膜形成予定領域 3 レジストパターン 4 被膜 5 導電性有機薄膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 伸一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5G323 CA05

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材表面の所定の領域に選択的に形成さ
    れた導電性有機薄膜の製造方法であって、 表面に活性水素を有するかまたは活性水素を付与した前
    記基材の前記所定の領域に、 分子の一方の末端に前記基材表面と共有結合を形成可能
    な末端結合可能基を含み、前記分子のいずれかの部分に
    他の分子と重合可能な共役結合可能基を含む有機分子を
    接触させ、 前記有機分子の末端結合可能基と前記基材表面の活性水
    素とを反応させて共有結合を形成させることにより、前
    記基材表面の前記所定の領域に選択的に被膜を形成し、 前記被膜を構成する有機分子を配向させ、 前記共役結合可能基を他の有機分子の共役結合可能基と
    重合させて共役結合鎖を形成することを含むことを特徴
    とする導電性有機薄膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記基材表面の前記所定の領域を除く領
    域を被覆するレジストパターンを形成し、前記レジスト
    パターンが形成された前記基材表面に前記有機分子を接
    触させた後、前記レジストパターンを除去することによ
    り、前記基材表面に前記被膜を選択的に形成する請求項
    1に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記基材として疎水性基材を用い、前記
    基材表面の前記所定の領域に活性水素付与処理を施した
    後、前記基材表面に前記有機分子を接触させることによ
    り、前記基材表面に前記被膜を選択的に形成する請求項
    1に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記活性水素付与処理が、前記基材表面
    を酸化する処理である請求項3に記載の導電性有機薄膜
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記基材表面の酸化が、酸素および水素
    供給物質の存在下で、前記基材表面に紫外線照射処理、
    プラズマ処理およびコロナ処理から選ばれる少なくとも
    1つの処理を施すことにより実施される請求項4に記載
    の導電性有機薄膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記基材として親水性基材を用い、前記
    基材表面の前記所定の領域を除く領域に活性水素除去処
    理を施した後、前記基材表面に前記有機分子を接触させ
    ることにより、前記基材表面に前記被膜を選択的に形成
    する請求項1に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記活性水素除去処理が、前記基材表面
    に疎水性被膜を形成する処理である請求項6に記載の導
    電性有機薄膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記疎水性被膜の形成が、化学吸着法に
    より実施される請求項7に記載の導電性有機薄膜の製造
    方法。
  9. 【請求項9】 前記活性水素除去処理が、前記基材表面
    と活性水素との結合を切断する処理である請求項6に記
    載の導電性有機薄膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記基材表面と活性水素との結合の切
    断が、不活性雰囲気において、前記基材表面に紫外線照
    射処理、プラズマ処理およびコロナ処理から選ばれる少
    なくとも1つの処理を施すことにより実施される請求項
    9に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記被膜を構成する有機分子の配向
    が、ラビング処理による配向、前記被膜を備えた前記基
    材表面から液体を所定の方向に液切りする処理による配
    向、偏光照射処理による配向、および、前記重合時の分
    子のゆらぎによる配向から選ばれる少なくとも一つによ
    り実現される請求項1〜10のいずれかに記載の導電性
    有機薄膜の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記被膜が、単分子膜または単分子累
    積膜である請求項1〜11のいずれかに記載の導電性有
    機薄膜の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記共役結合可能基が、ピロリル基、
    チェニル基、エチニレン基(−C≡C−)およびジアセ
    チレン基(−C≡C−C≡C−)から選ばれる少なくと
    も一つの基を含む請求項1〜12のいずれかに記載の導
    電性有機薄膜の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記末端結合可能基が、ハロゲン化シ
    リル基、アルコキシシリル基またはイソシアネートシリ
    ル基であり、前記末端結合可能基と前記基材表面の活性
    水素との反応が、脱ハロゲン化水素反応、脱アルコール
    反応または脱イソシアネート反応である請求項1〜13
    のいずれかに記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記末端結合可能基と前記基材表面の
    活性水素との反応により形成される共有結合が、シロキ
    サン結合(−SiO−)および−SiN−結合から選ば
    れる少なくとも一つの結合である請求項1〜14のいず
    れかに記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記有機分子が、前記末端結合可能基
    と前記共役結合可能基との間に、活性水素を含まない有
    極性官能基を含む請求項1〜15のいずれかに記載の導
    電性有機薄膜の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記有極性官能基が、エステル基(−
    COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カル
    ボニル基(−CO−)およびカーボネイト(−OCOO
    −)基から選ばれる少なくとも一つの基である請求項1
    6に記載の導電性有機薄膜の製造方法。
  18. 【請求項18】 前記被膜を構成する有機分子が、前記
    末端結合可能基と前記共役結合可能基との間に光応答性
    官能基を含む請求項1〜15のいずれかに記載の導電性
    有機薄膜の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記光応答性官能基がアゾ基(−N=
    N−)である請求項18に記載の導電性有機薄膜の製造
    方法。
  20. 【請求項20】 前記被膜を構成する有機分子が、下記
    化学式(1)または(2)で示される請求項1〜19の
    いずれかに記載の導電性有機薄膜の製造方法。 【化1】 (但し、Xは水素、エステル基を含む有機基または不飽
    和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Zはエステル
    基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO
    −)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネイト
    (−OCOO−)基、Dはハロゲン、イソシアネート基
    または炭素数1〜3のアルコキシル基、Eは水素または
    炭素数1〜3のアルキル基、mおよびnは2≦(m+
    n)≦25を満たす整数、pは1〜3の整数である。)
JP2002031478A 2002-02-07 2002-02-07 導電性有機薄膜の製造方法 Withdrawn JP2003234029A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002031478A JP2003234029A (ja) 2002-02-07 2002-02-07 導電性有機薄膜の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002031478A JP2003234029A (ja) 2002-02-07 2002-02-07 導電性有機薄膜の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003234029A true JP2003234029A (ja) 2003-08-22

Family

ID=27774875

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002031478A Withdrawn JP2003234029A (ja) 2002-02-07 2002-02-07 導電性有機薄膜の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003234029A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005099004A (ja) * 2003-08-27 2005-04-14 Matsushita Electric Ind Co Ltd マイクロチップ並びにその製造方法及びそれを用いた検査方法
JP2005326400A (ja) * 2004-04-16 2005-11-24 Matsushita Electric Ind Co Ltd 試料検査装置及びその製造方法
WO2006070801A1 (ja) * 2004-12-27 2006-07-06 Fujikura Ltd. 電子デバイスおよびその製造方法
JP2006185673A (ja) * 2004-12-27 2006-07-13 Fujikura Ltd 電子デバイスの製造方法
JP2006185675A (ja) * 2004-12-27 2006-07-13 Fujikura Ltd 電子デバイスおよびその製造方法

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005099004A (ja) * 2003-08-27 2005-04-14 Matsushita Electric Ind Co Ltd マイクロチップ並びにその製造方法及びそれを用いた検査方法
JP4505287B2 (ja) * 2003-08-27 2010-07-21 パナソニック株式会社 マイクロチップ並びにその製造方法及びそれを用いた検査方法
JP2005326400A (ja) * 2004-04-16 2005-11-24 Matsushita Electric Ind Co Ltd 試料検査装置及びその製造方法
JP4606926B2 (ja) * 2004-04-16 2011-01-05 パナソニック株式会社 試料検査装置及びその製造方法
WO2006070801A1 (ja) * 2004-12-27 2006-07-06 Fujikura Ltd. 電子デバイスおよびその製造方法
JP2006185673A (ja) * 2004-12-27 2006-07-13 Fujikura Ltd 電子デバイスの製造方法
JP2006185675A (ja) * 2004-12-27 2006-07-13 Fujikura Ltd 電子デバイスおよびその製造方法
US8007335B2 (en) 2004-12-27 2011-08-30 Fujikura Ltd. Manufacturing method for electronic device
US8018146B2 (en) 2004-12-27 2011-09-13 Fujikura Ltd. Electronic device and manufacturing method therefor

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7220468B2 (en) Conductive organic thin film, method for manufacturing the same, and electronic device, electric cable, electrode, pyrrolyl compound, and thienyl compound using the same
US7560731B2 (en) Organic electronic device and method for manufacturing the same
JP5061414B2 (ja) 薄膜トランジスタ素子
EP1381058B1 (en) Conductive organic thin film and production method therefor, electrode and electric cable using it
WO2005010995A1 (ja) 電子素子、集積回路およびその製造方法
WO2005004204A2 (en) An electrochemical method and resulting structures for attaching molecular and biomolecular structures to semiconductor micro and nanostructures
JPH0587559A (ja) 走査型トンネル電子顕微鏡用原子間力顕微鏡の探針
TW515119B (en) Organic electronic device, method of producing the same, and method of operating the same
Huang et al. Electrochemical cross-linking and patterning of nanostructured polyelectrolyte− carbazole precursor ultrathin films
JP4020247B2 (ja) 高分子グラフト基板製造方法
JPH0517595A (ja) 高分子超薄膜エレクトレツト及びその製造方法
JP2013027964A (ja) 微細構造体の製造方法、複合体
JP2003234029A (ja) 導電性有機薄膜の製造方法
JP2002309013A (ja) 導電性有機薄膜とその製造方法、それを用いた電子デバイス、電気ケーブル、電極、ピロリル化合物及びチェニル化合物
Tao et al. Microfabrication of interdigitated polyaniline/polymethylene patterns on a gold surface
JP2003234021A (ja) 導電性有機薄膜の製造方法
US7091517B2 (en) Patterned functionalized silicon surfaces
JP4264216B2 (ja) 3端子有機電子デバイス
JP2003221258A (ja) 導電性ガラス及びその製造方法
JP2003231702A (ja) 導電性有機薄膜の製造方法
JP2003309307A (ja) 有機電子デバイスおよびその製造方法
JP2010238869A (ja) 有機トランジスタの製造方法
JP2008084980A (ja) デバイス
JP2003223814A (ja) 導電性有機薄膜とその製造方法、それを用いた電極および電気ケーブル
JP2003231738A (ja) 導電性有機薄膜とその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20050510