JPH0587559A - 走査型トンネル電子顕微鏡用原子間力顕微鏡の探針 - Google Patents

走査型トンネル電子顕微鏡用原子間力顕微鏡の探針

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JPH0587559A
JPH0587559A JP3247970A JP24797091A JPH0587559A JP H0587559 A JPH0587559 A JP H0587559A JP 3247970 A JP3247970 A JP 3247970A JP 24797091 A JP24797091 A JP 24797091A JP H0587559 A JPH0587559 A JP H0587559A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 先端の尖った金属線の先端部分が単分子膜、
他の部分が積層膜で覆われ、積層薄膜の表面部分に導電
性を有する分子を存在させることにより、耐久性に優れ
しかも製作方法が簡単な探針とする。 【構成】 CCl3 Si(CH2 2 (CF2 6 (C
2 2 SiCl3 などのシランカップリング剤の非水
溶媒をタングステン線1に接触させ、脱塩化水素反応を
おこさせ、非水溶媒での洗浄と水洗によって単分子膜2
を形成する。この操作を5回繰り返すと5層の単分子積
層膜4が得られる。次に先端部分を酸素プラズマ中でア
ッシング処理することによって、先端部5のみ単分子積
層膜を取り除き、末端がチオフェンであるシランカップ
リング剤を反応させることにより、最外層を導電性ポリ
チオフェン3で覆う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、走査型トンネル電子顕
微鏡対応の原子間力顕微鏡の探針に関するものである。
【0002】
【従来技術】原子間力顕微鏡は、測定試料表面を先端の
尖った探針でオングストロームの精度で走査し、この時
探針と試料との間に働く原子間力を測定することによっ
て試料の表面形状を調べようとするものである(G. Bin
nig et al. Phys. Rev. Lett. 56, 930(1986) )。
【0003】探針と試料の間に働く原子間力を測定する
方法として、トンネル電流を用いたものがある。図8に
示すように、探針は先端の尖った突起150、梃子部1
51、梃子部を支える台160よりなり、梃子部表面に
は金属152が蒸着してある。そして、梃子部表面に接
近して先端の尖った金属線153が固定されていて、梃
子部151表面上の金属膜152と金属線153との間
に流れるトンネル電流154を測定できるようになって
いる。ここで、突起150と試料表面の間に力が働き梃
子部がたわむと金属線と梃子部の距離が変化し、それに
ともなってトンネル電流の値も変化する(図9)。この
トンネル電流の変化を測定することによって、梃子部の
たわみ、すなわち突起と試料に働く原子間力が分かる。
【0004】しかしこのシステムでは、梃子部と金属線
との距離を適正に調整することが難しく、また、振動に
弱いという欠点を持っていた。これらの問題を解決すべ
くピッチェらは以下に示すような原子間力を測定する方
法を提案した(M. Pitsch etal., Progr Colloid Polym
Sci, 83, 56(1990) )。ここで使われている探針のこ
とを、走査型トンネル電子顕微鏡対応の原子間力顕微鏡
の探針と定義する。
【0005】図10に示すように、走査型トンネル電子
顕微鏡の探針200を絶縁体201、202で被い、さ
らにその絶縁体201、202の上に金属203を蒸着
する。ここで、絶縁体201、202はポリビニルアル
コール201とオクタデシルトリクロロシラン(OT
S)202よりなり、特に、探針の先端部分の絶縁体が
OTS202のみからなるように工夫されている。OT
S膜の厚さは10オングストローム程度で、このOTS
を介して探針と蒸着された金属の間にトンネル電流が流
れることのできる距離である。通常用いられている走査
型トンネル電子顕微鏡は、試料と探針の間に流れるトン
ネル電流を測定する様な構造になっている。そして、こ
の探針と蒸着された金属薄膜の間に流れるトンネル電流
を検出できるように走査型トンネル電子顕微鏡を工夫し
て使用している。ここで、探針を試料表面に近づける
と、両者の間には原子間力が働き、有機薄膜であるOT
Sは柔らかいために歪み、蒸着された金属膜と探針の距
離が変化する。この結果、流れるトンネル電流も変化
し、このトンネル電流の変化から探針と試料表面に働く
原子間力が測定できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記したピッチェらの
提案した方法は、探針の調整が不要で、振動にも強いと
いう利点を持っていた。しかも、市販の走査型トンネル
電子顕微鏡を原子間力顕微鏡に転用できるという優れた
ものであった。
【0007】しかしながら、ピッチェらの作製した探針
は原子間力顕微鏡の探針としては実用に耐えなかった。
なぜなら、有機薄膜と蒸着された金属薄膜の密着性が良
くなく、探針が試料上を走査しているときに蒸着した金
属薄膜が剥離してしまうという問題を持っていたからで
ある。また、探針の作製工程も多く、再現性良く探針を
作製できなかった。
【0008】本発明は、原子間力顕微鏡の探針として耐
久性に優れ、しかも製作方法が簡単な走査型トンネル電
子顕微鏡対応の原子間力顕微鏡の探針を提供することを
目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の走査型トンネル電子顕微鏡用原子間力顕微
鏡の探針は、先端の尖った金属線の先端部分が単分子膜
で覆われ、他の部分が単分子積層膜で覆われ、かつ前記
単分子膜及び/又は積層薄膜の表面部分に導電性を有す
る分子が存在しているという構成を備えたものである。
【0010】前記構成においては、単分子積層膜が金属
表面とシロキサン基(−SiO−)を含む共有結合によ
って化学結合しており、かつ単分子の積層部分もシロキ
サン基(−SiO−)を含む共有結合によって化学結合
していることが好ましい。
【0011】
【作用】前記した本発明の構成によれば、探針を被って
いるのが表面が導電性を持った有機薄膜であり、これは
膜を構成する有機分子自身が導電性を持っているので、
蒸着金属が剥離するというようなことはなく、耐久性に
優れたものとなる。また、本発明の走査型トンネル電子
顕微鏡対応の原子間力顕微鏡の探針を作製するにあたっ
ては、金属を蒸着する必要がないので、作製の工程が少
なくなる。
【0012】また、単分子積層膜が金属表面とシロキサ
ン基(−SiO−)を含む共有結合によって化学結合し
ており、かつ単分子の積層部分もシロキサン基(−Si
O−)を含む共有結合によって化学結合しているという
本発明の好ましい構成によれば、下地の金属線から膜が
剥がれることはなく、膜表面も高分子を構成する共有結
合が切れぬ限り導電性を保つので、この探針は丈夫で充
分実用に耐え得る。
【0013】
【実施例】以下本発明の一実施例について、図面を参照
しながら説明する。直径0.2mm、長さ10mmのタ
ングステン線の一端を電解研磨法によって尖らせた。電
解研磨法は以下の手順で行った。
【0014】図4に示すように、亜硝酸ナトリウム水溶
液(20g/100mlH2 O)102に、タングステ
ン線100と白金線101を浸水して、両金属線間に、
タングステン線が正の電位になるように30Vの電圧を
電圧発生器104を用いてかける。この時、タングステ
ン線は、液面に対して垂直になるようにして約1mm程
度浸水する。電圧は、タングステン線から気泡や閃光の
出なくなるまで印加し続ける。この後、このタングステ
ン線を亜硝酸ナトリウム水溶液から取り出した後、純水
で5秒、エタノールで5秒洗浄する。
【0015】次に、このタングステン線をシランカップ
リング剤である、CCl3 Si(CH2 2 (CF2
6 (CH2 2 SiCl3 (以下MOL27と略称で記
す)30mMの溶けた溶液(溶媒としては、体積比で、
ノルマルヘキサデカン80%、四塩化炭素12%、クロ
ロホルム8%の混合溶液を使用)に1時間浸漬して、ま
ず1層目の単分子膜を形成した。この反応は、タングス
テン線表面の水酸基(−OH)と、前記MOL27のク
ロロシリル基(−SiCl)とが脱塩化水素(HCl)
することによって行われる。
【0016】次に、クロロホルムによる洗浄を行った。
この洗浄によって、未反応MOL27を除去する。続い
て純水による洗浄を行った。この洗浄によって、タング
ステン線表面の水酸基(−OH)と反応した前記MOL
27のクロロシリル基(−SiCl)以外のクロロシリ
ル基を加水分解し、架橋させる。続けて、このタングス
テン線に再びMOL27を上述の方法で付けた。この操
作を5回繰り返した。
【0017】この結果、図5に示すように、タングステ
ン線1は、MOL27が5層よりなる有機積層薄膜4で
被われた。次に、このタングステン線を先端部分約0.
5ミリを残してアルミ箔で被い、110℃で、酸素プラ
ズマ中で10分間アッシング処理することによって、タ
ングステン線1の先端部5のみのMOL27反応生成物
(単分子積層膜4)を取り除いた(図6)。
【0018】次にこのタングステン線1を、(化1)で
示される末端がチオフェンであるシランカップリング剤
30mMの溶けた溶液(溶媒としては、体積比で、ノル
マルヘキサデカン80%、四塩化炭素12%、クロロホ
ルム8%の混合溶液を使用)に8時間浸水後、クロロホ
ルム、続いて純水による洗浄を行った。この結果、末端
がチオフェン6である有機薄膜4でタングステン線1は
被われた(図7)。
【0019】
【化1】
【0020】これらの膜表面のチオフェンは電解重合法
によって重合した。すなわち0.1Mの過塩素酸銀の溶
解したアセトニトリル溶液中で、白金電極を対極、銀電
極を参照電極として、上記のタングステン線に約2Vの
電位を5分間印可することによって電解重合した。な
お、単分子積層膜表面のチオフェンは、導電性を有する
ことを確認した。
【0021】図1は、このようにして作製された走査型
トンネル電子顕微鏡対応の原子間力顕微鏡の探針の断面
模式図である。図1中、上図は探針の断面模式図で、下
図は上図のbの部分の分子レベルまで拡大した模式図で
ある。タングステン線1は、単分子積層膜の第1層2と
シロキサン結合(−SiO−)によって化学吸着されて
いる。また単分子積層膜の最外層3には、ポリチオフェ
ンが化学結合されている。
【0022】次に、この探針を用いて雲母の表面を観察
した。図2に測定システムを示す。このシステムは一般
に市販されている走査型トンネル電子顕微鏡の一部を改
良しただけの物なので、概略のみを示す。
【0023】図2において、50は測定対象となる試
料、51は今回作製された走査型トンネル電子顕微鏡対
応の原子間力顕微鏡の探針である。52はトンネル電流
を流すための電圧発生器、53はトンネル電流を検出す
る電流検出器、54は測定試料を原子レベルの精度で走
査するための圧電体で、電気信号(電圧)により伸縮
し、三次元方向すなわち試料を上下するZ軸方向、試料
を図の手前や奥方向に移動させるY軸方向、試料を図の
左右方向に移動させるX軸方向に動くように構成されて
いる。55は試料のZ軸方向制御用サーボ回路、56は
試料検査結果を記憶するX、Y、Z軸方向のメモリー装
置、57は試料を設定した範囲で走査する信号をコント
ロールするためのX−Y軸方向走査用回路,58はデー
ター解析装置、59はディスプレイを示す。
【0024】図3には走査型トンネル電子顕微鏡対応の
原子間力顕微鏡の探針51の取り付けられた部分の詳細
が示してある。すなわち、タングステン線1とこれを被
う有機薄膜7の間にトンネル電流が流れるように、銀ペ
ースト8を用いて膜7表面と電極9と導通を取ってい
る。
【0025】雲母の表面形状の測定は、トンネル電流が
一定になるように探針と雲母の距離を調整しながら、雲
母上を探針で走査した。探針の走査範囲は100オング
ストローム四方角とし、数秒かけて走査した。この結
果、雲母の原子像が観測された。この像は通常の原子間
力顕微鏡(たとえばディジタルインスツルメンツ社製、
Nanoscope )で観測した原子像と一致した。
【0026】この探針を用いて数十個の雲母の観察を行
ったが、依然として同じ雲母の像が得られ、充分実用に
耐え得る走査型トンネル電子顕微鏡対応の原子間力顕微
鏡の探針であることが証明された。
【0027】なお本実施例においては、有機薄膜表面の
導電性高分子であるポリチオフェンは電解重合法によっ
て簡単に重合できるので、作製方法が簡単である。なお
本実施例では、タングステン線を被う有機薄膜の表面が
ポリチオフェンよりなるが、これに限る必要はなく、例
えば、ポリピロール、ポリアニリン分子等様々な導電性
高分子のもの、もしくは、高分子ではないが表面方向の
みに導電性を持つ有機分子など様々なものを使用するこ
とができる。
【0028】以上説明した通り、本発明の一実施例によ
れば、金属線を被う有機薄膜がシランカップリング剤か
ら作成されたものであり、その膜の表面が導電性高分子
であるときは、この有機薄膜は下地の金属線とは共有結
合を結合し、膜の表面は共有結合よりなる高分子なの
で、下地の金属線から膜が剥がれることはなく、膜表面
も高分子を構成する共有結合が切れぬ限り導電性を保つ
ので、この探針は丈夫で充分実用に耐え得る。
【0029】
【発明の効果】以上のように、本発明の走査型トンネル
電子顕微鏡対応の原子間力顕微鏡の探針は、探針となる
金属線が有機薄膜で被われ、特にこの金属線の先端部を
被う有機薄膜が有機単分子積層膜であり、これらの有機
薄膜が表面方向には導電性を持つが厚さ方向には導電性
を持たないので、丈夫で、実用に耐え得るものである。
しかも、従来のものの様に、金属を蒸着する必要がない
ため、作製工程が少なくてすみ、再現性良く探針を作製
できるという利点を持つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で作製された走査型トンネル電子顕微鏡
対応の原子間力顕微鏡の探針の模式図である。
【図2】走査型トンネル電子顕微鏡対応の原子間力顕微
鏡の探針を用いた、試料の測定システムである。
【図3】走査型トンネル電子顕微鏡対応の原子間力顕微
鏡の探針の取り付け部の詳細図である。
【図4】タングステン線の電解エッチングの方法を示し
た図である。
【図5】タングステン線表面に単分子膜が5層積層され
た様子を示した模式図である。
【図6】酸素プラズマで処理した後のタングステン線を
示した模式図である。
【図7】単分子積層膜の最外層にポリチオフェンを結合
した後のタングステン線を示した模式図である。
【図8】従来の、トンネル電流を用いて原子間力を測定
するための方法を示した図である。
【図9】従来の、トンネル電流を用いて原子間力を測定
するための方法を示した図である。
【図10】従来法の走査型トンネル電子顕微鏡対応の原
子間力顕微鏡の探針を示した模式図である。
【符号の説明】
1 タングステン線 2 単分子積層膜の第1層目 3 単分子積層膜の最外層に結合したポリチオフェン 4 5層積層された単分子積層膜 5 単分子積層膜の除かれた部分 6 ポリチオフェン部 7 タングステン線を被う単分子積層膜 8 銀ペースト 9 電極 50 試料 51 走査型トンネル電子顕微鏡対応の原子間力顕微鏡
の探針 52 電圧発生器 53 電流検出器 54 圧電体 55 Z軸制御用サーボ回路 56 X、Y、Z軸方向のメモリー装置 57 X−Y軸方向走査用回路 58 データー解析装置 59 ディスプレイ 100 タングステン線 101 白金線 102 亜硝酸ナトリウム溶液 103 容器 104 電圧発生器 150 突起 151 梃子部 152 蒸着された金属 153 金属線 154 試料 160 梃子部を支える台 200 走査型トンネル電子顕微鏡の探針 201 ポリビニルアルコール 202 オクタデシルトリクロロシラン 203 蒸着された金属

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 先端の尖った金属線の先端部分が単分子
    膜で覆われ、他の部分が単分子積層膜で覆われ、かつ前
    記単分子膜及び/又は積層薄膜の表面部分に導電性を有
    する分子が存在している走査型トンネル電子顕微鏡用原
    子間力顕微鏡の探針。
  2. 【請求項2】 単分子積層膜が金属表面とシロキサン基
    (−SiO−)を含む共有結合によって化学結合してお
    り、かつ単分子の積層部分もシロキサン基(−SiO
    −)を含む共有結合によって化学結合している請求項1
    記載の走査型トンネル電子顕微鏡用原子間力顕微鏡の探
    針。
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