JP4264216B2 - 3端子有機電子デバイス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性を有する有機薄膜を用いた3端子有機電子デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子デバイスには、例えば、シリコン結晶に代表されるような無機系半導体結晶が使用されている。しかしながら、デバイスの軽量化、小型化、薄型等が望まれる近年、前記無機系半導体結晶では、微細化の進展に伴って、結晶欠陥が問題となり、デバイスの性能が結晶性に大きく左右されるという欠点が生じている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、結晶性に左右されず、小型化等が可能である高集積な電子デバイスの提供である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の3端子有機電子デバイスは、基板表面に絶縁膜が形成され、前記絶縁膜上に導電性有機薄膜が配置され、第1の電極と第2の電極とが、前記導電性有機薄膜の両端または前記導電性有機薄膜上に離間して配置され、前記導電性有機薄膜が前記両電極間を電気的に接続する3端子有機電子デバイスであって、
前記基板が、Si基板であり、かつ、前記第1の電極または前記第2の電極との間に電圧を印加することによって前記導電性有機薄膜に作用させる電界を制御する第3の電極として機能し、
前記導電性有機薄膜が、共役結合可能基を有する有機分子から構成され、前記有機分子の一方の末端が前記絶縁膜表面と共有結合し、かつ、前記有機分子の共役結合可能基が他の有機分子の共役結合可能基と共役結合により重合して導電性を示す共役結合鎖を形成しており、
前記有機分子が、前記絶縁膜表面と共有結合する部位と、他の有機分子と共役結合する部位との間に、エステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)およびカーボネイト(−OCOO−)基からなる群から選択された少なくとも一つの基を有していることを特徴とする。
【0005】
このような本発明の3端子有機電子デバイスは、前記第1の電極と第2の電極間を電気的に接続するために前記導電性有機薄膜を使用するので、例えば、デバイスの高密度化によりさらなる微細加工がなされても、結晶性に左右されないという優れた性質を示す。また、基板としてSi基板を使用することによって耐圧性が向上するため、このSi基板を前述のように第3の電極として使用することができる。このため、別途第3の電極を設ける従来のデバイスに比べて、製造工程を大幅に削減でき、製造も容易かつ簡便になる。このような有機デバイスは、例えば、液晶表示装置や、エレクトロルミネッセンス型表示装置、エレクトロルミネッセンス素子等の様々な装置に利用可能であり、かつ有用である。
【0006】
なお、本発明における前記導電性有機薄膜は、前記有機分子同士が共役結合することによって形成された電気伝導に関与する共役結合鎖を有している。この共役結合鎖の形成によって、導電性を示すネットワークが形成されている(すなわち、「導電ネットワーク」が形成されている)。この導電ネットワークは、通常、前記第1の電極と第2の電極とを繋ぐ方向に形成されているが、厳密に一方向に連なる必要はなく、例えば、様々な方向に前記有機分子同士が重合していても、全体として前記電極間をつなぐように形成されていればよい。
【0007】
本発明において、前記導電性有機薄膜を構成する有機分子は、配向していることが好ましい。配向させることによって、前記導電性有機薄膜の導電性が、より一層向上できるからである。なお、本発明において、有機分子の配向方向(傾斜配向方向)とは、前記有機分子の長軸を基材表面に射影した線分の方向をいう。
【0008】
本発明において、前記有機分子は、前記絶縁膜表面と共有結合する部位と、他の有機分子と共役結合する部位との間に、さらに活性水素を含まない有極性官能基を有していることが好ましい。このように有極性官能基を有していれば、前記有機分子により構成された導電性有機薄膜は、印加された電界に対する感度がさらに高くなるため、導電性を高速に変化することができる。したがって、このような導電性有機薄膜を用いた本願発明の3端子有機電子デバイスは、応答速度が高速である優れたデバイスとなる。なお、このような導電性の変化は、有極性官能基の電界応答による影響が、導電ネットワークの構造に波及されたために生じたと考えられる。
【0009】
前記有極性官能基としては、例えば、エステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)およびカーボネイト(−OCOO−)基からなる群から選択された少なくとも一つの基であることが好ましい。このように電界の印加によって分極が大きくなる分極性官能基であれば、印加電界に対する感度が極めて高くなり、応答速度も極めて高速になるからである。これらの官能基の中でもより好ましくはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)等である。
【0010】
本発明において、前記導電性有機薄膜は、有機分子同士の共役結合により重合した共役結合鎖を有しており、前記共役結合鎖としては、ポリピロール、ポリチェニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリピリジノピリジン、ポリアニリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つの基であることが好ましく、これらの中でもより好ましくは、ポリピロール、ポリチェニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアセンであり、特に好ましくはポリピロール、ポリチェニレンである。また、前記ポリアセチレンの誘導体としては、ポリメチルアセチレン、ポリブチルアセチレン、ポリシアノアセチレン、ポリジシアノアセチレン、ポリピリジルアセチレン、ポリフェニルアセチレン等があげられる。
【0011】
本発明において、前記導電性有機薄膜を構成する有機分子の一方の末端と前記絶縁膜表面との共有結合は、シロキサン(−SiO−)結合および−SiN−結合のうち少なくとも一方の結合であることが好ましい。なお、この場合、SiおよびNは、それぞれの価数に相当する他の結合基を有していてもよい。このような形態としては、例えば、有機分子の前記末端が、前記絶縁膜表面だけでなく、隣接する他の有機分子とも結合している場合があげられる。
【0012】
本発明において、前記導電性有機薄膜は、単分子膜または単分子膜が積層された単分子累積膜であることが好ましい。前記導電性有機薄膜が単分子膜の場合、膜厚が極めて薄いにもかかわらず充分な導電性を示し、また、単分子累積膜の場合、積層数を変化させることによって、所望の導電率に調整が可能できるため、それぞれ有用である。単分子累積膜の導電率は、例えば、積層された単分子の層数に依存しており、例えば、同一の単分子膜を積層する場合、その導電率は、単分子膜の積層数にほぼ比例する。
【0013】
本発明において、前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、室温(25℃)においてドーパントなしで、1S/cm以上であることが好ましく、また、より好ましくは1×103S/cm以上であり、特に好ましくは5.5×105S/cm以上であり、最も好ましくは1×107S/cm以上である。
る。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する前記導電性有機薄膜は、有機分子の重合体であり、前記有機分子とは、少なくとも、Si基板上の絶縁膜に共有結合できる末端結合可能基と、他の有機分子と共役結合できる共役結合可能基とを有する分子である。
【0015】
前記導電性有機薄膜は、例えば、前記有機分子同士が前記共役結合可能基において共役結合により重合して形成される。この重合によって、前述のように導電ネットワークが形成され、前記導電性有機薄膜は導電性を示すのである。
【0016】
なお、前記有機分子が、例えば、前記末端結合可能基として以下に示すような各種シリル基を有する場合、この部分において有機分子同士がシロキサン結合によって重合することが考えられるが、本発明において「重合」とは、特に示さない限り、この末端結合可能基における重合ではなく、共役結合可能基における重合のことをいう。
【0017】
前記末端結合可能基としては、例えば、ハロゲンシリル基、アルコキシシリル基、イソシアネートシリル基等があげられる。ハロゲンシリル基としては、クロロシリル基、ブロモシリル基、フルオロシリル基、ヨードシリル基があげられるが、好ましくはクロロシリル基である。また、アルコキシシリル基は、例えば、炭素数1〜7が好ましく、より好ましくは炭素数1〜3である。
【0018】
このような末端結合可能基であれば、前記絶縁膜表面と、例えば、脱塩化水素反応、脱アルコール反応、脱イソシアネート反応等の脱離反応によって共有結合することができる。例えば、絶縁膜表面の活性水素が−OH基由来である場合には、例えば、前記共有結合としてシロキサン結合(−SiO−)が形成され、活性水素が−NH基である場合には、前記共有結合として、―SiN―結合が形成される。したがって、前記絶縁膜表面は、活性水素を与える基として、例えば、−OH基、−CHO基、−COOH基や、−NH2基、>NH基等を有することが好ましい。
【0019】
前記共役結合可能基としては、例えば、ピロール基、チェニレン基、アセチレン基(エチニレン基 −C≡C−)、ジアセチレン基(−C≡C−C≡C−)アセン基、フェニレン基、フェニレンビニレン基、ピリジノピリジン基、アニリン基およびそれらの誘導体等であることが好ましく、これらの中でもより好ましくは、ピロール基、チェニレン基、アセチレン基、ジアセチレン基であり、特に好ましくは、ピロール基、チェニレン基である。また、前記アセチレン基の誘導体としては、例えば、メチルアセチレン基、ブチルアセチレン基、シアノアセチレン基、ジシアノアセチレン基、ピリジルアセチレン基、フェニルアセチレン基等があげられる。
【0020】
例えば、前記共役結合可能基がピロリル基を含む場合は、ポリピロール型の共役結合鎖を、チェニル基を含む場合は、ポリチオフェン型の共役結合鎖を、また、共役結合可能基がエチニレン基を含む場合は、ポリアセチレン型の共役結合鎖を、ジアセチレン基を含む場合は、ポリジアセチレン型またはポリアセン型の共役結合鎖を形成することができる。
【0021】
また、前述のように、前記有機分子は、活性水素を含まない有極性官能基を有していることが好ましい。このように有極性官能基を有する場合、有機分子は前記有極性官能基の部分で回転しやすくなるため、配向しやすくなる。前記有極性官能基としては、例えば、エステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)およびカーボネイト(−OCOO−)基があげられる。
【0022】
前記有機分子の具体例としては、例えば、以下に示すような物質があげられる。なお、前記有機分子は、これらに限定されるものではない。
【0023】
【化3】
Figure 0004264216
【0024】
前記式(5)および(6)において、Xは水素、エステル基を含む有機基または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Dはハロゲン、イソシアネート基または炭素数1−3のアルコキシル基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、mおよびnは整数であり、m+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下の整数、pは1〜3の整数である。
【0025】
前記Xがエステル基を含む有機基の場合、例えば、直鎖状炭化水素基、または不飽和炭化水素基を含む直鎖状炭化水素基等があげられ、Xの炭素数は、例えば、1〜10の範囲であり、好ましくは1〜6の範囲である。具体的には、例えば、CH3COO−、C25−COO−、C37−COO−等があげられる。
【0026】
前記Xが不飽和基を含む有機基の場合、例えば、鎖式不飽和炭化水素、脂環式炭化水素や芳香族炭化水素等の環式炭化水素等があげられる。これらは、置換基で置換されていても、置換されていなくてもよく、また、直鎖でも分枝鎖であってもよい。前記不飽和炭化水素としては、例えば、CH2=CH−やCH3−CH=CH−等のアルケニル基、アルキニル基等があげられ、その炭素数は、例えば、2〜10の範囲が好ましく、より好ましくは2〜7の範囲であり、特に好ましくは2〜3の範囲である。前記脂環式炭化水素としては、例えば、シクロアルケニル基等があげられる。また、前記芳香族炭化水素としては、例えば、アリール基、アリーレン基等があげられる。
【0027】
前記化学式(5)の具体例としては、例えば、下記化学式(7)で表わされる化合物(PEN:6-pyrrolylhexyl-12,12,12-trichloro-12-siladodecanoate)、および下記化学式(8)で表わされる化合物(8-pyrrolyloctyl-8,8,8-trichloro-8-silaoctanoate)があげられる。
【0028】
【化4】
Figure 0004264216
【0029】
また、前記化学式(6)の具体例としては、例えば、下記化学式(9)で表わされる化合物(TEN:6-(3-thienyl)hexyl-12,12,12-trichloro-12-siladodecanoate)、および下記化学式(10)で表わされる化合物(8-(3-thienyl)octyl-8,8,8-trichloro-8-silaoctanoate)があげられる。
【0030】
【化5】
Figure 0004264216
【0031】
また、これらの他にも下記化学式で表わされる有機分子も具体例としてあげられる。なお、下記式において、mおよびnは、前記式(5)、(6)と同様である。
【0032】
【化6】
Figure 0004264216
【0033】
前記式(5)または(6)に示す有機分子を重合させた場合、それぞれ下記化学式(1)または(2)に示すユニットから構成される導電性有機薄膜が形成される。
【0034】
【化7】
Figure 0004264216
【0035】
前記化学式(1)及び(2)において、Xは水素、エステル基を含む有機基または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、mおよびnは整数であり、m+nは2以上25以下、好ましくは10以上20以下の整数、pは1〜3の整数である。なお、Xは、前述と同様であることが好ましい。
【0036】
また、前記化学式(7)で表わされるPENを重合させた場合は、下記化学式(3)で表わされるユニットから、前記化学式(9)で表わされるTENを重合させた場合は、下記化学式(4)で表わされるユニットから、それぞれ構成される導電性有機薄膜が形成される。
【0037】
【化8】
Figure 0004264216
【0038】
(第1の実施形態)
つぎに、本発明の3端子有機電子デバイスの一例を図1を用いて説明する。同図は、前記有機デバイスの製造工程を示す概略断面図である。
【0039】
この有機デバイス1は、第3の電極(ゲート電極)を兼ねるSi基板2と、絶縁膜3、6と、第1および第2の電極4、5、導電性有機薄膜8とを備えている。Si基板2上には、絶縁膜3を介して第1の電極(ソース電極)4および第2の電極(ドレイン電極)5が積層されており、前記両電極4、5間には、絶縁膜6を介して導電性有機薄膜8が積層されている。また、第1の電極4、第2の電極5および導電性有機薄膜8が形成されていないSi基板2上には、絶縁膜6を介して、絶縁性の有機薄膜7が積層されている。
【0040】
このような有機デバイスは、例えば、以下に示すようにして製造できる。まず、図1(A)に示すように、Si基板2を準備し、Si基板2表面に絶縁膜3を形成する。前記絶縁膜は、特に制限されないが、例えば、SiO2であることが好ましい。SiO2絶縁膜の形成方法は、例えば、熱酸化法やCVD(化学気相成長)法等の従来公知の方法によって形成できる。
【0041】
つぎに、図1(B)に示すように、Si基板2表面に絶縁膜3を介して、第1の電極4(ソース電極)および第2の電極5(ドレイン電極)をパターン状に形成する。電極の材料としては、通常、Ti、Ni、Au、Pt、Alなどの金属およびその合金、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性化合物等が使用できる。電極形成は、例えば、Si基板2表面の絶縁膜3全面に金属膜を形成し、前記金属膜をフォトレジストを用いてエッチングしたり、リフトオフ法によりパターニングする等の通常公知の方法によって行うことができる。前記金属膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着等の蒸着法、スパッタ法等の従来公知の方法が適用できる。
【0042】
作製する有機デバイスの電気特性をさらに安定化させるためには、例えば、第1の電極4と第2の電極5との間隙が、均一な間隔で設置されていることが好ましい。
【0043】
そして、図1(C)に示すように、第1および第2の電極3、4をマスクとして、絶縁膜3をエッチング除去し、除去した部分に再度絶縁膜6を形成する(図1(D))。前記絶縁膜6は、例えば、前述と同様にして形成することもできるが、基板がSi基板であるため、例えば、エッチング後のSi基板2を洗浄すれば、その基板表面に極めて薄い自然酸化膜(SiO2)が形成されるため、これを絶縁膜6として使用できる。有機デバイスの増幅特性を向上させる場合、例えば、絶縁膜の厚みを薄くすることが望ましいが、前述のような自然酸化膜であれば、通常、0.3〜10nmの厚みと極めて薄いものであるため、特に好ましい。
【0044】
つぎに、図1(E)に示すように、Si基板2の絶縁膜6上に、有機分子から構成される有機薄膜7を形成する。この有機薄膜7は、単分子膜でもよいし、前記単分子膜を積層した単分子累積膜であってもよい。
【0045】
図2の模式図に、有機分子から構成される単分子膜7の一例を示す。なお、同図の例のおいて、有機分子20は、共役結合可能基9、有極性官能基10および末端結合可能基11を有するものとした。図示のように、有機分子20は、基板2上の絶縁膜6表面に前記末端結合可能基11が結合して単分子膜を形成する。
【0046】
有機薄膜7が単分子膜の場合、その膜厚は、例えば、1〜2nmの範囲である。
【0047】
また、有機薄膜7が単分子累積膜の場合、その膜厚は、例えば、1〜50nmの範囲であり、好ましくは1〜10nmの範囲であり、特に好ましくは1〜6nmの範囲である。また、その累積数は、例えば、2〜100の範囲であり、好ましくは2〜50の範囲、特に好ましくは2〜6の範囲である。
【0048】
この有機薄膜は、例えば、以下に示すような一般的な化学吸着法やラングミュアーブロジェト(LB)法によって形成できる。なお、これらの方法には限定されない。
【0049】
(1)化学吸着法
前述のような有機分子を溶解用の有機溶媒に溶解して化学吸着液を調製し、この化学吸着液中に、電極4、5を形成したSi基板2を浸漬し、Si基板2上の絶縁膜6と前記有機分子とを反応させる。Si基板2上の絶縁膜6が前述のような自然酸化膜(SiO2)の場合、その表面には水酸基(−OH)を有している。このため、例えば、前記有機分子の末端結合可能基がクロロシリル基の場合、前記水酸基の活性水素と前記有機分子のクロロシリル基との間で脱塩化水素反応が起こり、前記有機分子が絶縁膜6に化学吸着する。これによって、前記有機分子から構成される単分子膜が絶縁膜6を介してSi基板2上に形成される。そして、再度、Si基板を洗浄用有機溶媒に浸漬して、未吸着の有機分子を洗浄除去することによって、表面に汚れの無い単分子膜が得られる。なお、前記化学吸着液は、例えば、絶縁膜上に塗布してもよい。
【0050】
前記溶解用の有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、キシレン、トルエン、ヘキサメチルジシロキサン等が使用できる。また、前記有機溶媒中における前記有機分子の含有量は、例えば、0.01〜1mol/Lの範囲であり、好ましくは0.01〜0.8mol/Lの範囲であり、特に好ましくは0.1〜0.5mol/Lの範囲ある。
【0051】
また、洗浄用有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、キシレン、トルエン、メチルエチルエーテル、アセトン等が使用できる。
【0052】
この化学吸着の反応条件は、特に制限されないが、例えば、窒素雰囲気下で行うことが好ましく、また、相対湿度が0〜30%の範囲であることが好ましい。
【0053】
また、単分子累積膜を形成する場合には、前述のようにして一層目の単分子膜を形成した後、さらに前記単分子膜の表面を親水化処理してから、前述と同様の化学吸着法により単分子膜の形成を行えばよい。具体的には、親水化処理によって、活性水素を有する水酸基やカルボニル基等を前記表面に導入すればよい。この親水化処理と化学吸着とを繰り返し行うことによって、所望の積層数の累積膜が形成できる。
【0054】
前記単分子累積膜を形成する際の親水化処理は、例えば、酸素または窒素を含むガスの雰囲気下、前記Si基板2上の単分子膜に高エネルギー線を照射する方法等があげられる。
【0055】
具体的な例としては、絶縁膜上に形成された単分子膜表面が、ビニル基等の不飽和基を含む場合、例えば、水分が存在する雰囲気中で、電子線やX線などのエネルギー線を照射することによって、水酸基(−OH)を導入できる。また、例えば、過マンガン酸カリウム水溶液に浸漬すれば、カルボニル基(−COOH)を導入できる。
【0056】
(2)LB法
前述のような有機分子を有機溶媒に溶解して水性溶媒に添加し、その水面上に前記有機分子を展開させる。この際、前記有機分子は、親水性基側を水中に、疎水性基側を空気側にした状態で水面に広がって単分子膜を形成している。つぎに、前記有機溶媒を蒸発させた後、バリアによって一定の表面圧を加えて前記単分子膜に圧縮し、前記Si基板2の絶縁膜6上に移し取ればよい。また、有機薄膜7が単分子累積膜の場合は、前記水面上の単分子に一定の表面圧を加えながら、前記Si基板2を液面に対して上下させることによって、単分子を累積できる。基板を上昇下降させる場合に、下降時にのみ単分子膜を累積すればX型膜が製造でき、上昇時のみに累積させればのZ型膜が製造でき、上昇および下降の各過程ごとに累積させればY型膜が製造できる。このLB法の条件は、特に制限されず、従来公知の方法によって設定できる。
【0057】
つぎに、図1(F)に示すように、第1の電極4と第2の電極5との間に電圧を印加し、前記両電極間に形成されている有機薄膜7を電解重合して、導電性有機薄膜8を形成する。このとき、有機分子は、その共役結合可能基が電気化学的に酸化または還元することによって、電界方向に沿って他の有機分子と重合して行くため、完全に重合が終われば、第1の電極4と第2の電極5との間は、前記有機分子の共役結合、つまり共役結合鎖によって接続される。すなわち、重合により自己成長的に導電性ネットワークが形成されるのである。なお、両電極4、5間以外に形成されている有機薄膜7は、重合されていないため絶縁性を示し、絶縁膜として存在する。
【0058】
図3の模式図に、前記図2に示す単分子膜7を重合させた場合の導電性有機薄膜8の一例を示す。図示のように、絶縁膜6上に結合した有機分子は、共役結合可能基間で共役結合によって重合される。この共役結合可能基の重合により共役結合鎖12が形成され、導電ネットワークが形成される。導電ネットワーク形成の完了は、電極間の通電状態を観察することにより容易に判断ができる。すなわち、導電ネットワークが完成した時には、前記両電極間に電流が急激に流れる現象が観察できる。このような導電性有機薄膜は、例えば、金属と同等か、またはそれ以上の導電性を得ることも可能である。
【0059】
電圧の印加条件は、例えば、単分子膜7の大きさや種類によって適宜決定できる。具体的には、電圧は、電界の強さを、例えば、10〜500v/cmの範囲、好ましくは100〜300v/cm、特に好ましくは100〜150v/cmの範囲となるように印加する。また、電圧の印加時間は、例えば、100〜5000分の範囲であり、好ましくは100〜600分、特に好ましくは500〜600分である。
【0060】
電圧は、直流でも交流でもよく、また、連続的に印加しても不連続的(断続的)に印加してもよい。通常、電解酸化重合によって水素が発生するが、水素の発生が局所的に起こった場合、例えば、発生した水素が気泡となり、電極を剥離する場合がある。このため、水素の局所的発生を防止し、電極の性能をより一層維持できることから、電圧は、例えば、サイン波やパルス波の交流または断続的な交流電圧であることが好ましく、また、直流電圧の場合は断続的な印加であることが好ましい。なお、このような水素の局所的発生を防止するための電圧条件は、例えば、電界の強さ、電解重合させる有機薄膜の大きさ等によって適宜決定できる。
【0061】
このように電解重合を行う場合、有機分子の共役結合可能基は、例えば、ピロリル基、チェニレン基等であることが好ましい。
【0062】
なお、有機薄膜7が単分子累積膜の場合は、累積膜を構成する単分子膜の形成と重合を交互に行っても、単分子を積層して単分子累積膜を形成してから全体を重合させてもよい。
【0063】
この導電性有機薄膜8は、例えば、電荷移動性のドーパント物質を組み込むことによって、さらに導電率を向上させることも可能である。前記ドーパント物質としては、特に制限されないが、例えば、ヨウ素、BF-イオン、NaやK等のアルカリ金属、Ca等のアルカリ土類金属等の任意のドーパント物質が利用できる。また、例えば、有機薄膜7形成の際に、有機分子を溶解するための有機溶媒等に含まれる微量成分や、使用したガラス容器等から不可避的に混入した物質等が、ドーパント物質として含まれてもよい。
【0064】
最後に、図1(G)に示すように、Si基板2を第3の電極(ゲート電極)とすることによって、本発明の3端子有機電子デバイス1が完成される。
【0065】
このようにして得られた有機デバイスは、第1の電極4と第2の電極5との間、および第2の電極5と第3の電極(Si基板)2との間に電圧を印加し、第2の電極5と第3の電極2との間の電圧を変化させれば、導電性有機薄膜8内の共役結合鎖において電子の注入量が制御できるため、結果として第1の電極4と第2の電極5との間における導電性有機薄膜8の電流を制御できる。このため、いわゆるFET型有機デバイスとして使用できる。
【0066】
この3端子有機電子デバイスについて、電界印加による前記導電性有機薄膜の導電率の時間変化を図4(A)に基づいて説明し、また、そのスイッチング動作を図4(B)に基づいて説明する。同図(A)は、第3の電極(Si基板)に電圧を印加した場合の前記導電性有機薄膜の導電率変化を示すために、電極間の電流および電圧を定性的に示したグラフである。同図(A)において、縦軸は、第1および第2の電極間の電流とした。また、第3の電極に印加した電圧は、前記導電性有機薄膜に作用した電界(印加された電圧)に比例することから、第1および第2の電極間の印加電圧と、第3の電極の印加電圧とは等価となるため、横軸には第1および第2の電極間の印加電圧を示した。なお、第1および第2の電極間の印加電圧を一定電圧とした場合の電流変化とする。
【0067】
図示のように、第1および第2の電極間の電流は、第3の電極の印加電圧によって変化し、前記印加電圧の増加とともに一定の値に収束していくことから、第3の電極に電圧が印加されていない場合(V=0)の電流値と収束した電流値の範囲内で制御されていることがわかる。つまり、第3の電極の印加電圧によって、前記導電性有機薄膜の導電率が制御されていることを表わしている。このように、前記導電性有機薄膜に関し、電圧を印加していない場合の導電率を有する安定状態と所定電圧を印加した場合の導電率を有する安定状態とを、印加電圧の変化により移行させることによって、導電ネットワークの導電率のスイッチングが可能となる。
【0068】
同図(B)は、3端子有機電子デバイスのスイッチング動作の概念図であり、第1および第2の電極間に一定電圧を印加した場合における、第3の電極に所定電圧を印加した状態(VON)のオン電流(IV=ON)と、電圧を印加していない状態(VOFF)のオフ電流(IV=OFF)とがスイッチング動作することを示している。なお、横軸は時間を示し、ラインL1は電圧変化、ラインL2は電流変化をそれぞれ示す。
【0069】
図示のように、第3の電極に印加する電圧のオン・オフによって、第1および第2の電極間の電流、すなわち前記導電性有機薄膜の導電率をスイッチングできることがわかる。なお、同図においては、電圧のオン・オフによるスイッチングを示したが、第3の電極に、異なる二種類の電圧を印加させた場合にも、電流のスイッチングは、もちろん可能である。
【0070】
なお、有機薄膜7の重合工程の順序は、前記工程順序には限定されない。例えば、有機薄膜7を重合しない以外は、前述と同様にして有機デバイスを作製し、使用時における電圧の印加によって前記有機薄膜7の重合を行い、導電性有機薄膜8に変化させ、これをもって有機デバイスを完成させて、そのまま使用することもできる。
【0071】
(第2の実施形態)
前記第1の実施形態において、Si基板2上に絶縁膜を介して形成された有機薄膜7の重合工程に先立ち、前記有機薄膜7を構成する前記有機分子を傾斜配向させてもよい。前記有機分子を配向させれば、共役結合可能基を一定の方向に配列させ、かつ、共役結合可能基同士を近接して配列させることができる。その結果、有機分子の重合の進行を容易とし、その後形成される導電性有機薄膜の導電率をさらに向上することができるためである。図5(A)の模式図に、前記図2に示す単分子膜7を配向させた配向単分子膜13の一例を、図5(B)の模式図に、前記同図(A)の配向単分子膜13を重合させた導電性有機薄膜14を示す。なお、これらの図において、前記図2および図3と同一箇所には同一の符号を付している。
【0072】
前記傾斜配向処理の方法としては、例えば、以下に示す方法があげられる。
【0073】
(i)ラビング処理
ラビング装置を用いてSi基板上の有機薄膜7表面にラビング処理を行い、有機薄膜を構成する有機分子をラビング方向に配向させことができる。また、有機薄膜形成工程に先立ち、前処理工程として、ラビング装置を用いてSi基板2表面にラビング処理を施しておけば、前記Si基板上に絶縁膜を介して形成される有機薄膜も配向させることができる。なお、この場合の有機薄膜の配向方向は、ラビング方向と同一方向である。ラビング処理において使用するラビング布としては、配向精度を向上できることから、例えば、ナイロン製またはレーヨン製の布が好ましい。
【0074】
(ii)偏光処理
偏光板を用いた偏光照射により、有機薄膜7を構成する有機分子を偏光方向に配向させることができる。この場合、有機分子の配向方向は、一般に、偏光方向と同一方向となる。このような偏光照射処理による配向方法によれば、有機薄膜を構成する有機分子の基板上の絶縁膜表面からの脱離や有機分子自体の破壊などによる、有機薄膜の破損を防止または抑制することができる。なお、偏光としては、可視光領域の波長を有する直線偏光を用いることが好ましい。
【0075】
(iii)液きり処理
化学吸着法によって有機薄膜を形成する場合、未吸着有機分子の除去を目的としてSi基板の洗浄を行うため、この洗浄工程において有機薄膜を配向させることもできる。具体的には、例えば、洗浄用有機溶媒にSi基板を浸漬して未吸着有機分子を除去した後、前記洗浄用有機溶媒の液面に対して所定の傾斜角度を保持したまま、前記Si基板を引き上げる。これによって、有機薄膜を構成する有機分子を、前記引き上げ方向とは反対方向である液切り方向に配向させることができる(以下、「液切り配向」という。)。
【0076】
また、液切り方法は、液体からの基板の引き上げによる方法に限られるものではなく、乾燥空気などの気体を一定方向から基板表面に吹き付けて同一方向に非水系溶媒を飛散除去する方法を採用することも可能である。この場合、非水系溶媒が飛散していく方向が液切り方向となり、有機薄膜を構成する有機分子をこの方向に配向させることができる。
【0077】
(iv) 溶液中での重合工程における分子のゆらぎによる配向
上記の配向方法以外に、例えば、重合時における分子のゆらぎによって配向させることもできる。本発明における有機分子の中でも、例えば、内部に有極性官能基を含んむものは、溶液中であれば、室温(25℃)程度でも分子の回転によるゆらぎが起こりやすい。このため、例えば電解酸化重合工程における分子のゆらぎによる配向を利用することもできる。
【0078】
以上のような各配向処理の方法は、単独で適用してもよいし、複数の配向方法を適用してもよいが、異なる配向方法を組み合わせる場合、精度よく配向させるために、例えば、ラビング方向、偏光方向、液切り方向が同一方向になるように調製することが好ましい。
【0079】
なお、有機薄膜7を構成する単分子膜は、配向方向および配向角度が部分的に異なってもよいし、また、有機薄膜7が累積単分子膜の場合、各単分子膜における導電ネットワークの方向(第1の電極と第2の電極をつなぐ方向)が同一である限り、各単分子膜における配向方向および配向角度は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0080】
単分子膜の傾斜配向角度φは特に制限されないが、例えば、0°≦φ<90°の範囲であり、好ましくは5≦φ≦85°の範囲であり、特に好ましくは50≦φ≦85°の範囲である。なお、図11に示すように、単分子膜における有機分子20の前記傾斜配向角度φとは、基板の面に対する有機分子の傾斜角度であって、一方、基板の垂直方向に対する前記有機分子の角度は、θで表わされる。
【0081】
(第3の実施形態)
有機薄膜を構成する単分子膜を重合して導電ネットワークを形成する方法は、前述のような電解酸化重合には限定されず、例えば、触媒重合、エネルギービーム照射重合であってもよい。また、これらの組み合わせでもよく、重合の最終工程において電解酸化重合を行うことが好ましい。具体的には、例えば、予備重合として少なくとも触媒重合またはエネルギービーム照射重合を行った後、最終的に電解酸化重合を行う組合わせである。このように予備重合を行ってある程度部分的な重合を行い、部分的に重合した重合体を最終的な電解酸化重合により結合させれば、例えば、重合時間の短縮等を図ることもできる。これらの各重合方法は、例えば、以下に示すようにして行うことができる。
【0082】
(i)触媒重合
触媒重合は、従来公知の方法であり、触媒を含む有機溶媒中で行うことができる。前記触媒としては、使用する有機分子の種類に応じて適宜決定できるが、例えば、チグラーナッタ触媒やハロゲン化金属触媒等が使用でき、前記ハロゲン化金属触媒としては、金属として、例えば、Mo、W、Nb、Ta等を含むことが好ましく、具体的には、MoCl5、WCl6、NbCl5、TaCl5、Mo(CO)5、W(CO)6、Nb(CO)5、Ta(CO)5等があげられる。前記有機溶媒としては、例えば、トルエン、ジオキサン、アニソール等が利用できる。
【0083】
触媒反応の条件としては、使用する有機分子の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、室温、圧力1Paである。
【0084】
触媒反応により重合する有機分子の共役結合可能基としては、例えば、ピロリル基、チェニレン基、アセチレン基、ジアセチレン基等があげられる。
【0085】
(ii)エネルギービーム照射重合
エネルギービームとしては、例えば、赤外線、紫外線、遠紫外線、可視光線等の光線、X線等の放射線、電子線等の粒子線等が適用できる。共役結合可能基は、その種類に応じて吸収特性が異なるため、例えば、有機分子の共役結合可能基の種類に応じて、適宜、エネルギービームの種類や照射条件(照射量、照射時間等)を決定すればよい。これによって、重合反応の効率を向上できる。また、多くの種類の共役結合可能基が、エネルギービームに対し吸収性を有するため、単分子膜が様々な種類の共役結合可能基を有する有機分子から構成される場合であっても、適用できる。
【0086】
エネルギー照射により重合する共役結合可能基としては、例えば、アセチレン基、ジアセチレン基等があげられる。具体的には、共役結合可能基がアセチレン基の場合、X線や50〜100Mradのエレクトロンビームを照射することが好ましく、ジアセチレンの場合は、例えば、UV光(100mJ/cm2)を照射することが好ましい。
【0087】
前記エネルギービームとして、例えば、偏光した紫外線、偏光した遠紫外線、偏光したX線等を用いた場合、前記傾斜配向処理と前記導電ネットワーク形成(重合)とを同時に行うこともできる。このように偏光させたエネルギービームを照射すれば、単分子膜を構成する有機分子を所定の方向に傾斜配向させるとともに、有機分子相互を共役結合させることができるため、製造工程を簡素化できる。
【0088】
また、有機分子を共役結合により重合させてから、例えば、さらに重合後の架橋反応によって共役結合させ、導電ネットワークを形成してもよい。具体的には、例えば、有機分子が2以上の共役結合可能基を有している場合、一方の共役結合可能基を他の有機分子と重合させた後、さらに他方の共役結合基によって他の有機分子と重合させれば、重合後とは異なる構造の導電性ネットワークを形成することができる。このように、重合後にさらに重合を行えば、導電性をいっそう向上することができる。
【0089】
具体的には、例えば、共役結合可能基としてジアセチレン基を有する場合、はじめにエネルギービーム照射重合または触媒重合により一方のアセチレン基を重合させておき、さらに触媒重合またはエネルギービーム重合によって他方のアセチレンを重合させればよい。
【0090】
(第4の実施形態)
つぎに、本発明の3端子有機電子デバイスの他の一例を図6を用いて説明する。同図は、前記有機デバイスの製造工程を示す概略断面図である。特に示さない限りは前記第1の実施形態と同様に作製できる。
【0091】
Si基板2表面に酸化膜3を形成した後(図6(A))、この酸化膜上に有機分子から構成される有機薄膜7を形成し(図6(B))、有機薄膜7上に、さらに第1の電極4と第2の電極5とを形成する(図6(C))。
【0092】
そして、前記両電極4、5間に電界を印加して、前記両電極間に対応する箇所の有機薄膜7を電解重合して、有機薄膜7を部分的に導電性有機薄膜8とする(図6(D))。このように有機薄膜7上に電極を形成すれば、電極と有機薄膜との接触面積を大きくすることができ、例えば、電解重合時に電極が多少剥離しても、すでに電解重合した部分は導電性を有するため、有機薄膜と電極との間のコンタクトが保持され、重合がをスムーズに行うことができる。
【0093】
最後に、Si基板2を第3の電極(ゲート電極)とすることによって、本発明の3端子有機電子デバイス15が完成される(図6(E))。
【0094】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は下記実施例によっては限定されない。なお、下記実施例において、単に「%」とは、重量%を意味する。
【0095】
(実施例1)
有機分子であるPENを調製し、これを用いて前記実施形態4に示す前記図6と同様の3端子有機電子デバイス(FET)を作製して、その性能を調べた。
【0096】
I.PENの合成
まず、導電ネットワークを形成可能な1−ピロリル基(C44N−)と、分極性官能基であるオキシカルボニル基(−OCO−)と、絶縁膜表面の活性水素(例えば、水酸基(−OH)の水素)と脱塩化水素反応するトリクロロシリル基(−SiCl3)とを有する下記化学式(7)で表わされるPENを、以下の工程1〜5にしたがって合成した。
【0097】
【化9】
Figure 0004264216
【0098】
工程1 6- ブロモ -1-( テトラヒドロピラニルオキシ ) ヘキサンの合成
500mLの反応容器に6-ブロモ-1-ヘキサノール197.8g(1.09mol)を仕込み、5℃以下に冷却し、さらに、ジヒドロピラン102.1g(1.21mol)を10℃以下の温度で滴下した。滴下終了後、室温に戻して1時間攪拌して反応させた。この反応により得られた残渣をヘキサン/IPE(ジイソプロピルエーテル)=5/1にてシリカゲルカラム精製し、263.4gの6-ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを得た。この収率は90.9%であった。この工程1の反応式を下記式(13)に示す。
【0099】
【化10】
Figure 0004264216
【0100】
工程2 N- 6- (テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロールの合成
アルゴン気流下、2リットルの反応容器に、ピロール38.0g(0.567mol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)200mLを仕込み、5℃以下に冷却した。これに1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液354mL(0.567mol)を10℃以下で滴下した。同温度で1時間攪拌させた後、さらにジメチルスルホキシド600mlを加えてTHFを加熱留去し、溶媒置換した。次に、さらに6-ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサン165.2g(0.623mol)を室温で滴下した。滴下後、同温度で2時間攪拌した。得られた反応混合物に水600molを加えてヘキサン抽出し、有機層を水洗した。さらに、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した後、溶媒留去した。得られた残渣をヘキサン/酢酸エチル=4/1にてシリカゲルカラム精製し、107.0gのN-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロールを得た。その収率は75.2%であった。この工程2の反応式を下記式(14)に示す。
【0101】
【化11】
Figure 0004264216
【0102】
工程3 N -( - ヒドロキシヘキシル )- ピロールの合成
1リットルの反応容器に前記工程2において得られたN-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロール105.0g(0.418mol)、メタノール450mL、水225mL、濃塩酸37.5mLを仕込み、室温で6時間攪拌した。得られた反応混合物を飽和食塩水750mLに注加し、IPE抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、さらに無水硫酸マグネシウムにて乾燥させ、溶媒留去した。そして、得られた残渣をn−ヘキサン/酢酸エチル=3/1にてシリカゲルカラム精製し、63.1gのN-(6-ヒドロキシヘキシル)-ピロールを得た。収率は90.3%であった。この工程3の反応式を下記式(15)に示す。
【0103】
【化12】
Figure 0004264216
【0104】
工程4 N- 6- 10- ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]−ピロールの合成
2リットルの反応容器にN-(6-ヒドロキシヘキシル)-ピロール62.0g(0.371mol)、dryピリジン33.2g(0.420mol)、およびdryトルエン1850mlを仕込み、20℃以下で、さらに、10-ウンデセノイルクロリド75.7g(0.373mol)のdryトルエン300mL溶液を滴下した。滴下時間は30分であった。その後、同温度において1時間攪拌した。得られた反応混合物を氷水1.5リットルに注加し、1N塩酸で酸性にした。さらに酢酸エチル抽出を行い、有機層を水洗浄および飽和食塩水洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を除去して128.2gの粗体を得た。これをn−ヘキサン/アセトン=20/1にてシリカゲルカラム精製し、99.6gのN-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-ピロールを得た。収率は80.1%であった。この工程4の反応式を下記式(16)に示す。
【0105】
【化13】
Figure 0004264216
【0106】
工程5 PENの合成
100mlキャップ付き耐圧試験管に、N-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-ピロール2.0g(6.0×10-3mol)、トリクロロシラン0.98g(7.23×10-3mol)、およびH2PtC16・6H20の5%イソプロピルアルコール溶液0.01gを仕込み、100℃で12時間反応させた。この反応液を活性炭で処理した後、2.66×103Pa(20Torr)の減圧下で低沸点成分を留去することによって、2.3gのPENを得た。収率は81.7%であった。この工程5の反応式を下記式(17)に示す。
【0107】
【化14】
Figure 0004264216
【0108】
なお、PENの末端のトリクロロシリル基をトリメトキシシリル基に置換するには、前記化学式(7)のPENを3モル倍のメチルアルコールと室温(25℃)で攪拌し、脱塩化水素反応させればよい。この反応により生成した前記塩化水素は、必要に応じて水酸化ナトリウムを加えて塩化ナトリウムとして分離すればよい。
【0109】
得られたPENについて、図7にNMRのチャート、図8に赤外線吸収スペクトル(IR)のチャートをそれぞれ示す。また、NMRおよびIRの測定条件は以下に示す。
【0110】
(NMR)
(1)測定機器:装置名AL300(日本電子株式会社製)
(2)測定条件:1H−NMR(300MHz)、サンプル30mgをCDCl3に溶解し測定。
【0111】
(赤外線吸収スペクトル:IR)
(1)測定機器:装置名270−30型(株式会社日立製作所製)
(2)測定条件:neat(サンプルを2枚のNaCl板に挟み測定)
【0112】
II.有機薄膜の形成方法
まず、得られた前記化学式(7)のPENを、脱水したジメチルシリコーン溶媒で1wt%に薄めて化学吸着液を調製した。
【0113】
一方、Si基板を準備し、図6(A)に示すように前記Si基板表面に絶縁膜となるSiO2膜を形成した。前記SiO2膜3は、10%硝酸に1時間浸漬し、前記Si基板表面を酸化して形成した。
【0114】
つぎに、表面にSiO2の形成されたSi基板2のSiO2膜3表面のうち、後述する前記TENから構成される有機薄膜を形成しない部分をパターン状にフォトレジストで覆った。そして、このSi基板2を、予め調製した前記化学吸着液に室温(25℃)で1時間浸漬し、レジスト開口部の絶縁膜3上に選択的に有機薄膜7を形成させた。なお、SiO2膜3上に残った未反応のPENは無水クロロフォルムで洗浄除去し、続いて前記フォトレジストのマスクパターンも除去した。
【0115】
このように前記化学吸着液に基板を浸漬すると、レジスト開口部の絶縁膜3表面には活性水素を含む水酸基が多数存在するので、この水酸基がPENの末端トリクロロシリル基(−SiCl3)と脱塩化水素反応し、PENが吸着される。このため、絶縁膜3表面に共有結合した下記化学式(18)で示される分子で構成された単分子膜が前記有機薄膜7として形成された。
【0116】
【化15】
Figure 0004264216
【0117】
III.有機薄膜の配向
先に述べたように、単分子膜7を形成したSi基板2をクロロフォルム溶液で洗浄し、未反応PENを除去する際に、単分子膜7の配向を重ねて行った。Si基板2を前記クロロフォルム溶液に浸漬して洗浄し、前記溶液から引き上げる際、次の工程で形成する第1の電極から第2の電極に向かう方向と平行に液切りできるよう、Si基板2を垂直に立てた状態で引き上げた。これにより、第1の電極から第2の電極に向かって一次配向した単分子膜を形成した。
【0118】
IV.電極の形成
次に、Si基板2上に絶縁膜3を介して形成された配向単分子膜7の全面に、ニッケル薄膜を蒸着形成し、ホトリソグラフィ法によって、ギャップ間距離が10μm、長さが30μmである第1の電極4と第2の電極5を形成した。
【0119】
V.電解重合法
前記Si基板2を純水溶液に浸漬し、第1の電極4および第2の電極5間に電圧を印加して単分子膜7を電解酸化重合させ、導電性有機薄膜8を形成した。電解酸化重合の条件は、電界5V/cm、反応温度25℃、反応時間5時間であった。この電解重合によって、導電ネットワークが形成された。この導電ネットワークは、電界の方向に沿って共役結合が自己組織的に形成されていくため、完全に重合が終わると、この導電ネットワークによって、第1の電極4と第2の電極5と間が電気的に接続される。下記化学式(3)に、得られた導電性有機薄膜の1ユニットを示す。
【0120】
【化16】
Figure 0004264216
【0121】
このようにして得られた導電性有機薄膜8は、その膜厚が約2.0nm、ポリピロール部分の厚みが約0.2nm、その長さが10mm、幅が100μmであった。また、この導電性有機薄膜を構成する有機分子(PEN)の傾斜配向角度は、約85°であった。
【0122】
そして、最後に、Si基板2を第3の電極として取り出すことによって、3端子有機電子デバイスを製造できた。この3端子有機電子デバイスは、第1の電極4と第2の電極5との間が、ポリピロール型の共役結合鎖による導電ネットワークで接続されている。
【0123】
VI.測定
(1)導電性有機薄膜の特性
得られた導電性有機薄膜8の性能を、市販の原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツルメント社製、SAP 3800N)を用いて調べた。AFM−CITSモードで、電圧1mV、電流160nAの条件における電導度ρは、室温(25℃)において、ドープなしでρ>1×107S/cmであった。この結果は、使用した電流計が1×107S/cmまでしか測定することができず、針がオーバーして振り切れてしまったためである。電導度が良好な金属である金は、室温(25℃)において5.2×105S/cm、銀は5.4×105S/cmであることからすると、本実施例における導電性有機薄膜8の電導度ρは驚くべき高い導電性であるといえる。前記値からすると、本発明における導電性有機薄膜は、「超金属導電膜」ということができる。
【0124】
(2)3端子有機電子デバイスの特性
つぎに、得られた3端子有機電子デバイスについて、第1の電極4と第2の電極5との間に1Vの電圧を印加した状態で、第1の電極4と第3の電極2との間に0Vの電圧を印加すると、第1の電極4と第2の電極5との間に1mA程度の電流が流れた。続いて、第1の電極4と第2の電極5との間に1Vの電圧を印加した状態で、第1の電極4と第3の電極2との間に5Vの電圧を印加すると、第1の電極4と第2の電極5との間の電流値が、ほぼ0Aとなった。その後、第1の電極4と第3の電極2との間の電圧を5Vから0Vにもどすと、第1の電極4と第2の電極5との間に電流が戻り、元の導電率が再現された。
【0125】
このような導電性の低下は、第3の電極2と第1の電極4との間に5Vの電圧を印加した際、有極性の官能基であるオキシカルボニル基(−OCO−)の分極が大きくなることにより、ポリピロールからなる共役結合鎖に歪みが生じ、共役結合の共役度が低下することに伴い、導電ネットワークの導電率が低下することによって生じたと考えられる。そして、電圧を元に戻すことによって、前記分極が通常の状態に戻り、歪みが回復し、前記共役度が元に戻ったためと考えられる。すなわち、第1の電極4と第3の電極2との間に印加した電圧によって、前記導電ネットワークの導電率を制御し、第1の電極4と第2の電極5との間に流れる電流をスイッチングできたといえる。
【0126】
(実施例2)
有機分子であるTENを調製し、これを用いて前記実施形態4に示す前記図6と同様の3端子有機電子デバイス(FET)を作製して、その性能を調べた。
【0127】
I.TENの合成
下記化学式(9)に示すTENを、以下の工程1〜5にしたがって合成した。
【0128】
【化17】
Figure 0004264216
【0129】
工程1 6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンの合成
下記化学式(19)に示す反応を行い6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを合成した。
【0130】
【化18】
Figure 0004264216
【0131】
まず、500mLの反応容器に6−ブロモ−1−ヘキサノール197.8g(1.09mol)を仕込み、5℃以下に冷却した後、これにジヒドロピラン102.1g(1.21mol)を10℃以下で滴下した。滴下終了後、室温に戻して1時間攪拌した。得られた残渣をシリカゲルカラムに供し、溶出溶媒としてヘキサン/ジイソプロピルエーテル(IPE)混合溶媒(体積比5:1)を用いて精製し、263.4gの6−ブロモ−1(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを得た。この際の収率は90.9%であった。
【0132】
工程2 3-[6-( テトラヒドロピラニルオキシ ) ヘキシル ] チオフェンの合成
下記化学式(20)に示す反応を行い3-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]チオフェンを合成した。
【0133】
【化19】
Figure 0004264216
【0134】
まず、アルゴン気流下、2Lの反応容器に削ったマグネシウム25.6g(1.06mol)を仕込み、さらに、6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニル)ヘキサン140.2g(0.529mol)を含むドライテトラヒドロフラン(ドライTHF)溶液4Lを室温で滴下した。この際の滴下時間は1時間50分であって、発熱反応を起した。その後、室温で1.5時間攪拌して、グリニャール試薬を調製した。
【0135】
つぎに、アルゴン気流下、新たな2L反応容器に3−ブロモチオフェン88.2g(541mol)とジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)ニッケル(II)3.27gとを仕込み、前記調製したグリニャール試薬全量を室温で滴下した。この際、前記反応容器内の温度を室温(50℃以下)に保ち、滴下時間は、30分とした。滴下後、室温で23時間攪拌した。この反応混合物を、0℃に保った0.5N HCl 1.3Lに添加し、IPE抽出を行った。得られた有機層を水洗し、さらに飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを添加して乾燥させた。そして、溶媒を留去し、3-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体199.5gを得た。この粗体は、精製せずに次の工程3に供した。
【0136】
工程3 3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンの合成
下記化学式(21)に示す反応を行い3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを合成した。
【0137】
【化20】
Figure 0004264216
【0138】
1Lの反応容器に、前記工程2で得られた未精製3-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]−チオフェン199.5g、メタノール450mL、水225mLおよび濃塩酸37.5mLを仕込み、室温で6時間攪拌して反応させた。この反応混合物を飽和食塩水750mLに添加し、IPE抽出を行った。そして、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、さらに無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒留去して3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体148.8gを得た。この粗体をシリカゲルカラムに供し、溶出溶媒としてn−へキサン/酢酸エチル混合溶媒(体積比3:1)を用いて精製し、84.8gの3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを得た。この際の収率は、工程2で得られた3-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体に対して87.0%であった。
【0139】
工程4 3-[6-(10- ウンデセノイルオキシ ) ヘキシル ]- チオフェンの合成
下記化学式(22)に示す反応を行い3−(6−(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル)−チオフェンを合成した。
【0140】
【化21】
Figure 0004264216
【0141】
2Lの反応容器に、工程3で得られた3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体84.4g(0.458mol)、ドライピリジン34.9g(0.442mol)およびドライトルエン1450mLを仕込み、20℃以下の状態で、さらに10−ウンデセノイルクロリド79.1g(0,390mol)を含有するドライトルエン溶液250mLを滴下した。滴下時間は、30分とし、その後、同じ温度で23時間攪拌して反応させた。得られた反応混合物を氷水2Lに添加し、さらに1N塩酸75mLを加えた。この混合液を酢酸エチル抽出して、得られた有機層を水洗し、さらに飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを添加して乾燥させる、溶媒を除去することにより、3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェンを含有する粗体161.3gを得た。この粗体をシリカゲルカラムに供し、溶出溶媒としてn−ヘキサン/アセトン混合溶媒(体積比20:1)を用いて精製し、157.6gの3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェンを得た。この際の収率は、前記工程3で得られた3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体に対して98.2%であった。
【0142】
工程5 TENの合成
下記化学式(23)に示す反応を行いTENを合成した。
【0143】
【化22】
Figure 0004264216
【0144】
(a)まず、100mLのキャップ付き耐圧試験管に、3-[6-(10−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェン10.0g(2.86×1012mol)、トリクロロシラン4.65g(3.43×104mol)およびH2PtC16・6H20を5重量%の割合で含有するイソプロピルアルコール溶液0.05gを仕込み、100℃で14時間反応させた。この反応液を活性炭で処理した後、減圧下で低沸点成分を留去した。減圧条件は、2.66×103Pa(20Torr)とした。
【0145】
(b)同様に、100mLキャップ付き耐圧試験管に、3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェン39.0g(1.11×10-1mol)、トリクロロシラン18.2g(1.34×10-1mol)、H2PtCl6・6H20を5重量%の割合で含有するイソプロピルアルコール溶液0.20gを仕込み、100℃で12時間反応させた。この反応液を活性炭で処理した後、減圧下で低沸点成分を留去した。減圧条件は前述のとおりである。
【0146】
(a)と(b)で得られた残渣を混合し、これにアルゴンガスを1時間通して塩酸ガスを除去することによって、65.9gの目的物TENを得た。この際のTENの収率は、前記工程4で得られた3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェンを含む粗体に対して97.2%であった。
【0147】
得られたTENについて、IR分析およびNMR分析を行った。以下にその条件および結果を示す。なお、図9にNMRのチャート、図10にIRのチャートをそれぞれ示す。
【0148】
(NMR)
(1)測定機器:装置名AL300(日本電子株式会社製)
(2)測定条件:1H−NMR(300MHz)、サンプル30mgをCDCl3に溶解し測定。
【0149】
(赤外線吸収スペクトル:IR)
(1)測定機器:装置名270−30型(株式会社日立製作所製)
(2)測定条件:neat(サンプルを2枚のNaCl板に挟み測定)
【0150】
II.3端子有機デバイスの製造
得られたTENを用いた以外は、前記実施例1と同様にして3端子有機デバイスを製造した。
【0151】
得られた前記有機デバイスにおける導電性有機薄膜は、その膜厚が約2.0nm、ポリチェニレン部分の厚みが約0.2nm、その長さが10mm、幅が100μmであり、また、可視光線のもとでは透明であった。この導電性有機薄膜の1ユニットの構造を、下記化学式(4)に示す。
【0152】
【化23】
Figure 0004264216
【0153】
III.測定
(1)導電性有機薄膜の特性
得られた導電性有機薄膜の性能を、同じ条件で調べた結果、その電導度ρは、室温(25℃)においてドープなしでρ>1×107S/cmであり、前記実施例1における導電性有機薄膜と同様に、驚くべき高い導電性を示した。また、この導電性有機薄膜を構成する有機分子(TEN)の傾斜配向角度は、約75°であった。
【0154】
(2)3端子有機電子デバイスの特性
得られた3端子有機電子デバイスについて、前記実施例1と同様に特性を調べた結果、前記実施例1と同様の結果が得られた。
【0155】
(実施例3)
絶縁膜上に形成した単分子有機薄膜を、前記洗浄用有機溶媒から引き上げることによる傾斜配向処理した後、さらに、偏光した可視光を照射する傾斜配向処理を行う以外は、前記実施例1および実施例2と同様にして3端子有機電子デバイスを作製した。なお、液切り方向は、第1の電極から第2の電極に向う方向とし、偏光方向は、第1の電極から第2の電極に向う方向と45°で交叉するように設定した。また、偏光照射は、約500mJ/cm2の条件で行った。
【0156】
この結果、絶縁膜上の単分子有機薄膜を構成する有機分子は、前記液切り方向への配向から、偏光方向とほぼ平行に配向した。
【0157】
そして、このように単分子有機薄膜に液切り配向処理および偏光照射による配向処理を施した後に、重合処理を行い導電ネットワークを形成した場合、さらに優れた導電性を示す導電性有機薄膜となった。
【0158】
得られた3端子有機電子デバイスおよび前記導電性有機薄膜について、前記実施例1と同様にしてその特性を調べた結果、それぞれ前記実施例1と同様に優れた結果であった。
【0159】
(実施例3)
実施例1のPENの製造工程1において、6-ブロモ-1-ヘキサノールに代えて8−ブロモ−オクタノールを用い、製造工程4における10-ウンデセノイルクロリドに代えて6−ヘキセニルクロライドを用いた以外は同様に合成を行い、前記式(8)に表わされる化合物を調製した。これを用いて、前記実施例1と同様に3端子有機電子デバイスを作製した結果、得られた導電性有機薄膜および3端子有機電子デバイスは、前記実施例1と同様の結果を示した。
【0160】
(実施例4)
実施例2のTENの製造工程1において、6-ブロモ-1-ヘキサノールに代えて8−ブロモ−オクタノールを用い、製造工程4における10-ウンデセノイルクロリドに代えて6−ヘキセニルクロライドを用いた以外は同様に合成を行い、前記式(10)に表わされる化合物を調製した。これを用いて、前記実施例1と同様に3端子有機電子デバイスを作製した結果、得られた導電性有機薄膜および3端子有機電子デバイスは、前記実施例1と同様の結果を示した。
【0161】
【発明の効果】
以上のように、本発明の3端子有機電子デバイスによれば、前述のような導電性有機薄膜により第1の電極と第2の電極間を電気的に接続するため、例えば、デバイスの高密度化によりさらなる微細加工がなされても、結晶性に左右されないという優れた性質を示す。また、基板としてSi基板を使用することによって耐圧性が向上するため、このSi基板を前述のような第3の電極として使用することができる。このため、別途第3の電極を設ける従来のデバイスに比べて、製造工程を大幅に削減でき、製造も容易かつ簡便になり、有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)〜(G)は、本発明の実施形態において、3端子有機電子デバイスの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】前記実施形態において、単分子膜の構造の概略を示す模式図である。
【図3】前記実施形態において、導電性有機薄膜の構造の概略を示す模式図である。
【図4】図4(A)および(B)は、前記実施形態における3端子有機電子デバイスの導電性の変化を示す概略図であり、同図(A)は、電圧変化に対する電流の変化を示すグラフであり、同図(B)は、電圧印加の有無によるスイッチング動作を示す概略図である。
【図5】図5(A)は、本発明のその他の実施形態において、配向単分子膜の構造の概略示す模式図であり、図5(B)は、前記同図(A)における配向単分子が重合した導電性有機薄膜の構造の概略を示す模式図である。
【図6】図1(A)〜(E)は、本発明のさらにその他の実施形態において、3端子有機電子デバイスの製造方法の一例を示す工程図である。
【図7】本発明の一実施例により得られたピロール化合物のNMRのチャートである。
【図8】前記ピロール化合物のIRのチャートである。
【図9】本発明のその他の実施例により得られたチオフェン化合物のNMRのチャートである。
【図10】前記チオフェン化合物のIRのチャートである。
【図11】本発明のその他の実施形態において、有機分子の基板に対する傾斜配向角度を示す模式図である。
【符号の説明】
1、15 3端子有機電子デバイス
2 Si基板
3、6 絶縁膜
4 第1の電極
5 第2の電極
7 有機薄膜
8、14 導電性有機薄膜
9 共役結合可能基
10 有極性官能基
11 末端結合可能基
12 共役結合鎖
13 配向単分子膜
20 有機分子

Claims (13)

  1. 基板表面に絶縁膜が形成され、前記絶縁膜上に導電性有機薄膜が配置され、第1の電極と第2の電極とが、前記導電性有機薄膜の両端または前記導電性有機薄膜上に離間して配置され、前記導電性有機薄膜が前記両電極間を電気的に接続する3端子有機電子デバイスであって、
    前記基板が、Si基板であり、かつ、前記第1の電極または前記第2の電極との間に電圧を印加することによって前記導電性有機薄膜に作用させる電界を制御する第3の電極として機能し、
    前記導電性有機薄膜が、共役結合可能基を有する有機分子から構成され、前記有機分子の一方の末端が前記絶縁膜表面と共有結合し、かつ、前記有機分子の共役結合可能基が他の有機分子の共役結合可能基と共役結合により重合して導電性を示す共役結合鎖を形成しており、
    前記有機分子が、前記絶縁膜表面と共有結合する部位と、他の有機分子と共役結合する部位との間に、エステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)およびカーボネイト(−OCOO−)基からなる群から選択された少なくとも一つの基を有していることを特徴とする3端子有機電子デバイス。
  2. 前記導電性有機薄膜を構成する有機分子が、配向している請求項1記載の3端子有機電子デバイス。
  3. 前記共役結合鎖が、ポリピロール、ポリチェニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリピリジノピリジン、ポリアニリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも一つの鎖である請求項1または2に記載の3端子有機電子デバイス。
  4. 前記ポリアセチレンの誘導体が、ポリメチルアセチレン、ポリブチルアセチレン、ポリシアノアセチレン、ポリジシアノアセチレン、ポリピリジルアセチレンおよびポリフェニルアセチレンからなる群から選択された少なくとも一つの基である請求項3に記載の3端子有機電子デバイス。
  5. 前記導電性有機薄膜を構成する有機分子の一方の末端と前記絶縁膜表面との共有結合が、シロキサン(−SiO−)結合および−SiN−結合のうち少なくとも一方の結合である請求項1〜のいずれか一項に記載の3端子有機電子デバイス
  6. 前記導電性有機薄膜が、単分子膜または単分子膜が積層された単分子累積膜である請求項1〜のいずれか一項に記載の3端子有機電子デバイス。
  7. 前記導電性有機薄膜を構成するユニットが、少なくとも下記化学式(1)および(2)で表わされるユニットのいずれか一方である請求項1〜のいずれか一項に記載の3端子有機電子デバイス。
    Figure 0004264216
    (前記化学式(1)及び(2)において、Xは水素、エステル基を含む有機基または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)またはカーボネイト(−OCOO−)基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、mおよびnは整数であり、m+nは2以上25以下の整数、pは1〜3の整数である。)
  8. 前記導電性有機薄膜を構成するユニットが、少なくとも下記化学式(3)および(4)で表わされるユニットのいずれか一方である請求項7に記載の3端子有機電子デバイス。
    Figure 0004264216
  9. 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、室温(25℃)においてドーパントなしで1S/cm以上である請求項1〜のいずれか一項に記載の3端子有機電子デバイス。
  10. 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、室温(25℃)においてドーパントなしで1×103S/cm以上である請求項に記載の3端子有機電子デバイス。
  11. 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、室温(25℃)においてドーパントなしで5.5×105S/cm以上である請求項に記載の3端子有機電子デバイス。
  12. 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、室温(25℃)においてドーパントなしで1×107S/cm以上である請求項に記載の3端子有機電子デバイス。
  13. 前記導電性有機薄膜が、さらにドーパントを含有している請求項1〜12のいずれか一項に記載の3端子有機電子デバイス。
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