JP3809330B2 - 有機薄膜およびその製造方法、それを用いた液晶配向膜およびその製造方法、ならびにそれを用いた液晶表示装置およびその製造方法 - Google Patents

有機薄膜およびその製造方法、それを用いた液晶配向膜およびその製造方法、ならびにそれを用いた液晶表示装置およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機薄膜およびその製造方法、それを用いた液晶配向膜およびその製造方法、それを用いた液晶表示装置およびその製造方法、ならびに導電性薄膜およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
材料表面に目的とする機能性分子を薄膜として分子の構造や配向を整えて修飾し、機能性材料としての活用が試みられている。機能性分子の中でも、有機分子を用いた有機薄膜は、電子材料、光材料などとして、種々の分野で利用されている。従来、このような有機薄膜の多くは、膜全体として均質な材質で構成されている、すなわち膜全体として均質な分子の構造を有している。
【0003】
しかし、有機薄膜の高機能化という点からみると、膜全体として均質な分子の構造を有するもの以外に、膜の一部の分子構造が異なる有機薄膜の開発が望まれる。
【0004】
例えば、一般にカラー表示液晶素子は、マトリックス状に配置された透明電極とこの透明電極上に形成された液晶配向膜とを有する一対の基板を、液晶配向膜面を内側にして所定の間隙を持たせて対向させ、この間隙内に液晶が封入された構造を有している。より具体的には、例えば画素電極と薄膜トランジスタ(TFT)アレイとが形成された第1のガラス基板と、複数個の赤青緑のカラーフィルターが形成され、さらにその上に共通透明電極が形成された第2のガラス基板のそれぞれの表面に高分子膜を形成し、この被膜面にラビングを施して液晶配向性を付与する。次いで、被膜面(液晶配向膜面)を内側にしてスペーサーを介在させた状態で対向させ、基板の周縁を接着して空セル(パネル構造)となす。
【0005】
この空セル内にツイストネマチック(TN)などの液晶を注入した後密閉して液晶表示素子を構成し、更にこの素子の両外面に偏光板を配置するとともに、第1の電極の外側にバックライトを配置し、光学表示装置としての液晶表示装置が構成されている。
【0006】
このような構造を有する液晶表示装置は、電極電圧をTFTでON/OFFし液晶の配向状態を変化させることにより光透過を制御して、任意の映像を表示しようとするものである。したがって、光透過経路にあって液晶の配向状態を規制する配向膜は、表示性能を作用するきわめて重要な役割を担っている。
【0007】
特に、液晶表示装置の表示特性の一つである視野角を改善する目的で、種々の液晶配向膜が開発されている。例えば、一画素に対応する区画を分割して配向方向の異なる領域を複数設けるマスクラビング法、光配向法、リブ法などの配向分割法を用いて、1の配向膜にプレチルト角やプレチルト方位の異なる複数の領域を有する液晶配向膜が提案されている。
【0008】
しかし、これらの配向膜は、膜全体として均質な分子密度のものを複数の異なる配向方向を有する領域に分割させているにすぎない。
【0009】
また、低プレチルト角の配向膜の一部の上に、高プレチルト角の配向膜を設けた二重配向膜も提案されている。しかし、膜の一重の部分と二重の部分とで、光の透過性や色度に相違を生ずる恐れがある。
【0010】
また、導電性高分子は、重合性モノマーに高分子重合剤を加えて重合して得られた共役系高分子に電子供与性または電子受容性の化合物(ドーパント)を加えて(ドーピング)、導電性が付与された高分子である。あるいは、共役系高分子を電極として電気化学的に行う電気化学ドーピングされたものである。これを有機薄膜として用いると、高分子重合剤の量や反応時間を制御したり、膜内で導電性を必要とする部分のみにドーピングすることで、膜内の一部に導電性を付与することができる。
【0011】
しかし、これらの方法によると、高分子重合剤の量や反応時間などの重合条件の制御が容易でなかったり、膜内で導電性の異なる明確な領域を作れないという問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、隣接する領域の特性が異なる有機薄膜およびその製造方法、それを用いた液晶配向膜およびその製造方法、それを用いた液晶表示装置およびその製造方法、ならびに導電性薄膜およびその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、有機薄膜の隣接する領域の分子の分子密度を異ならせることにより、隣接する領域の特性を異ならせることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0014】
本発明の第1の態様は、基板上に形成された有機薄膜であって、分子密度の異なる少なくとも2つの領域を有し、かつ前記分子密度の異なる2つの領域が隣接していることを特徴とする。
【0015】
基板上の表面分子の構造や配向は、表面エネルギー、アンカリングエネルギー、導電性などの基板表面の特性に影響を与える。基板上に有機薄膜を設ければ、薄膜を構成する分子の密度差により、薄膜を構成する分子の単位面積あたりの化学反応性(例えば、同一分子同士または他分子間での分子間結合の程度、重合性、光反応性など)、基板表面の形状、薄膜構成分子の表面占有量、濡れ性などの化学的、物理的特性が変わり、基板表面の特性を変えることができる。すなわち、基板上の表面分子の構造や配向は、薄膜を構成する分子の分子密度を異ならせることで制御できる。本発明の有機薄膜は、隣接する領域の分子密度が異なる少なくとも2つの領域で構成されている。本発明の構成によれば、隣接する領域の分子密度が異なっているので、基板上の少なくとも隣接する2つの領域においては、表面分子の構造や配向を異なるものとすることができる。
【0016】
図1は、本発明の有機薄膜の一例を模式的に表した図であり、図1(a)はその斜視図、図1(b)は上記図1(a)におけるA−A'方向の断面図である。図1に示されるように、基板1上に有機薄膜2が形成されており、この有機薄膜2は、分子密度の異なる領域(I)3と領域(II)4とを有し、この分子密度の異なる2つの領域は隣接している。
【0017】
領域の形状は、特に制限されるものではなく、円形、方形、台形、六角形、長方形、ひし形などであってもよい。また、所定の幅を有する直線、曲線またはそれらが組み合わされた図形であってもよい。さらに、上記図形の一部を用いたもの、上記図形を組み合わせた図形、上記図形を拡大、縮小した図形、および上記少数図形の集合体などであってもよい。実施に際しては、これらの図形の中から1種以上を選択して使用すればよい。
【0018】
図1の例では、四角形の領域(II)を領域(I)が取り囲んだ形態をしているが、例えば図2に示すように、短冊状に並列して設けられていてもよい。この場合も、領域の形状は、上記と同様に、特に制限されるものではない。さらに、必要に応じて、図1と図2が組み合わされた形態であってもよい。
【0019】
なお、本明細書中で、単に分子密度というときは、基板上に形成された被膜の単位体積あたりの質量をいう。分子密度は、例えば二次イオン質量分析法などを用いて測定する。
【0020】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の有機薄膜において、上記隣接する領域がそれぞれ同一種類の化学物質分子の群で構成されているものである。
【0021】
図3は、本発明の一態様を模式的に表した要部拡大図である。領域(I)3と領域(II)4とは、ともに同一種類の化学物質分子Aの群で構成されている。領域(I)3と領域(II)4とは、基板表面の単位体積あたりの化学物質分子Aの質量が異なるように構成されているので、分子密度も異なる。また、領域(I)3と領域(II)4は隣接しているので、分子密度の異なる2つの領域が隣接している。この図では、便宜上2つの領域で説明したが、隣接する領域の化学物質分子Aの密度を変えさえすれば、同一種類の化学物質分子であっても、複数の分子密度の異なる領域を有する有機薄膜が得られる。
【0022】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様の有機薄膜において、上記隣接する領域がそれぞれ異なる種類の単一の化学物質分子の群で構成されているものである。
【0023】
図4は、本発明の別の一態様を模式的に表した要部拡大図である。領域(I)3と領域(II)4とは、それぞれ異なる種類の化学物質分子Aの群と化学物質分子Bの群とで構成されている。この場合に、領域(I)3と領域(II)4を構成する化学物質分子AとBとは、一般に分子の大きさが異なり、また化学物質分子AとBの基板表面における単位体積あたりの質量も異なるので、両者の分子密度も異なる。また、領域(I)3と領域(II)4は隣接しているので、分子密度の異なる2つの領域が隣接している。
【0024】
図4では、領域を構成する化学物質分子が2種類のものについて説明したが、領域を構成する化学物質分子が3種類以上であってもよい。図5は、領域を構成する化学物質分子が2種類以上の場合の態様を模式的に表した要部拡大図である。図中、領域(III)を構成する化学物質分子Xは、化学物質分子B以外の化学物質分子である。この場合も、上記と同様に分子密度の異なる2つの領域が隣接している。
【0025】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様の有機薄膜において、上記隣接する領域がそれぞれ一種類の化学物質分子の群と複数種の化学物質分子の混合物からなる群とで構成されているものである。
【0026】
図6は、本発明のさらに別の一態様を模式的に表した要部拡大図である。図6(a)に示すように、本発明では、隣接する2つの領域のうち、1つの領域(I)3は、一種類の化学物質分子Aの群で構成されており、他の領域(II)4は、複数種の化学物質分子(AとB)の混合物からなる群で構成されている。この場合には、一種類の化学物質分子Aの群と複数種の化学物質分子(AとB)の混合物からなる群とは、その組成が異なるため、分子密度を異ならせることができ、隣接する領域の分子密度が異なる少なくとも2つの領域を有する有機薄膜とすることができる。図6(a)の例のように、複数種の化学物質分子(AとB)の混合物からなる群は、一種類の化学物質分子Aの群を構成する化学物質を含んでいても良いし、いなくてもよい。例えば、図6(b)の例のように、領域(II)4を構成する複数種の化学物質分子(BとC)の混合物からなる群は、領域(I)3を構成する一種類の化学物質分子Aの群を構成する化学物質Aを含んでいない。この場合も、それぞれの領域を構成する化学物質分子の種類が異なるので、分子密度を異ならせることができる。
なお、複数種の化学物質分子の混合物からなる群は、2種類以上であれば何種類の化学物質分子の混合物であっても特に制限はない。
【0027】
また、複数種の化学物質分子の混合物からなる群で構成される領域は、例えば、表面エネルギー、導電性などの特性について、複数種の分子の特性を併せ持つ特性を付与できる。
【0028】
本発明の第5の態様は、上記第1の態様の有機薄膜において、上記隣接する領域がそれぞれ複数種の化学物質分子の混合物の群で構成されているものである。
【0029】
図7は、本発明のさらに別の一態様を模式的に表した要部拡大図である。図7(a)に示すように、本発明では、隣接する領域のうち、1つの領域(I)3は、複数種の化学物質分子(AとB)の混合物の群で構成されており、他の領域(II)4は、複数種の化学物質分子(CとD)の混合物の群で構成されている。この場合には、複数種の化学物質分子(AとB)の混合物の群と複数種の化学物質分子(CとD)の混合物の群とは、両者を構成する化学物質分子の種類などが異なるため、各領域の分子密度が異なり、隣接する領域の分子密度が異なる少なくとも2つの領域を有する有機薄膜とすることができる。
【0030】
図7(b)に示すように、隣接する領域を構成する複数種の化学物質分子の混合物の群は、共通する化学物質(この例では、A)を含んでいても良い。複数種の化学物質分子の混合割合や、他の化学物質の種類が異なることにより、それぞれの領域の分子密度を異ならせることができる。
【0031】
図7(c)に示すように、隣接する領域を構成するそれぞれの複数種の化学物質分子の混合物は、同一の化学物質であってもよい。この場合に、複数種の化学物質分子の混合割合などを変えることによっても、それぞれの領域の分子密度を異ならせることができるからである。
【0032】
また、いずれの領域も、複数種の化学物質分子の混合物の群である。したがって、各領域には、例えば、表面エネルギー、導電性などの特性について、複数種の分子の特性を併せ持つ特性を付与できる。
【0033】
本発明の第6の態様は、上記第1ないし5のいずれかの態様の有機薄膜において、領域がパターン状に形成されているものである。
本発明の有機薄膜は、少なくとも隣接する領域の分子密度が異なる領域で構成されている。したがって、化学物質の分子密度をパターン状に異なるようにすれば、領域がパターン状に形成された有機薄膜が得られる。
この結果、この有機薄膜を液晶配向膜に用いる場合に、隣接するパターン状の領域の分子密度が異なるので、配向分割を容易にすることができる。また、導電性の化学物質で領域を形成した場合に、導電路のパターンニングなどが容易となる。
【0034】
本発明の第7の態様は、上記第1ないし6のいずれかの態様の有機薄膜において、上記分子密度が基板へ化学吸着した分子の吸着密度によるものである。
【0035】
基板と化学物質分子とが化学吸着する場合には、基板上の化学物質との反応基数に対する化学物質分子の吸着量(化学吸着した分子の吸着密度)の差により、分子密度が変わる。すなわち、化学物質分子が基板に飽和状態で吸着した場合と不飽和の状態で吸着した場合、あるいは化学物質分子が基板に不飽和の状態で吸着した場合であっても不飽和の程度が異なる場合は、基板へ化学吸着した分子の吸着密度が異なる。化学吸着した分子の吸着密度が異なれば、分子密度も異なる。これにより、有機薄膜表面の表面エネルギーなどの特性を少なくとも隣接する領域において異ならせることができる。
なお、この場合の分子の吸着密度は、単位面積あたりの化学物質分子の化学吸着数を意味する。分子の吸着密度は、例えば、フーリエ変換外分光法、走査型透過電子顕微鏡、原子間力顕微鏡などで測定する。
【0036】
本発明の第8の態様は、上記第1ないし6のいずれかの態様の有機薄膜において、上記分子密度が基板表面の分子の占有密度によるものである。
【0037】
基板へ化学吸着した分子の吸着密度が同じであっても、たとえば吸着した分子の種類が異なれば、分子の大きさが異なるため、基板表面の分子の占有体積が異なる。図8は、基板表面の分子の占有密度の差を説明するための図である。たとえば、図8(a)に示すように基板に化学吸着した分子の短軸方向と長軸方向の長さが長い化学吸着分子で構成される領域と、図8(b)に示すように基板に化学吸着した分子の短軸方向と長軸方向の長さが短い化学吸着分子で構成される領域とでは、分子の占有体積が異なる。
また、図8(c)に示すように、基板に化学吸着した分子の短軸方向と長軸方向の長さの長い化学吸着分子と化学吸着した分子の短軸方向と長軸方向の長さの短い化学吸着分子とが混在している場合も、図8(a)の例や図8(b)の例で示される場合とは分子の占有体積が異なる。
【0038】
また、分子の占有密度に影響を与えるものとしては、上記に加え、基板に化学吸着している分子間の隙間に、他の分子が入り込んだ状態のものや、基板に化学吸着している分子に他の分子が結合している場合、基板に化学吸着してはいないが大きな分子の隙間に小さな分子が入り込んだ状態で積層されている場合などが挙げられる。
なお、分子の占有密度とは、基板上の単位体積あたりの分子の占有体積(体積密度)を意味する。分子の占有密度は、例えば以下のようにして求められる。分子の平均膜厚を基板上の単位体積の高さと仮定する。次に、各領域における膜の分子占有面積を例えば紫外線可視吸収スペクトル、表面電位測定法、変異電流測定法、X線反射率測定法などの公知の方法で測定する。領域の面積は、実際の領域の面積である。膜の分子占有面積を実際の領域の面積で割った値が、分子の占有密度となる。
【0039】
このように基板表面の分子の占有密度が異なれば、有機薄膜表面の表面エネルギーなどの特性も異なる。基板表面の分子の占有密度は、基板表面の分子の構造や配向に影響を与えるからである。したがって、少なくとも隣接する領域において基板表面の分子の占有密度が異なるようにすることで、この領域の分子密度を異なるものとすることができる。
【0040】
基板表面の分子の占有密度に影響を与えるものとしては、基板へ化学吸着した分子のみならず、基板へ吸着した吸着分子の上に未吸着の分子が存在し複数分子層となったもの、基板へ吸着した吸着分子間に未吸着の分子が存在しているもの、自らは直接基板に結合固定されていないが、直接固定された分子と結合し、更には直接固定されていない前記分子に更に他の分子が結合する形で複数の分子が連なり、複数分子からなる層を形成しているもの、あるいは基板上に積層された高分子などが挙げられる。
【0041】
本発明の第9の態様は、上記第7または8の態様の有機薄膜において、基板へ化学吸着した分子の群が感光性基を有しており、化学吸着した分子同士が感光性基を介して架橋結合したものである。
【0042】
この構成によれば、化学吸着分子同士が、感光性基を介して架橋結合しているので、有機薄膜は、立体構造的に安定化される。したがって、有機薄膜分子を配向させて架橋することで、有機薄膜分子の配向規制が可能となり、配向規制力に富む有機薄膜とすることができる。
【0043】
また、この分子は、基材表面に化学吸着しているので、基材との結合が強固で剥離しにくいので、耐久性に優れた有機薄膜とすることができる。
【0044】
本発明の第10の態様は、上記第1ないし9のいずれかの態様の有機薄膜において、各領域を構成する分子の群が、領域毎に同一または異なる方向に傾斜しているものである。
【0045】
上記のように、本願の有機薄膜は、隣接する領域の分子密度が異なっている。したがって、少なくとも隣接する領域の表面エネルギーやアンカリングエネルギーが異なっている。この結果、領域を構成する分子の群を、領域毎に同一または異なる方向に容易に傾斜させることができる。
【0046】
本発明の第11の態様は、上記第1ないし8のいずれかの態様の有機薄膜において、領域を構成する分子の群の少なくとも一部が重合性基を有しており、分子同士が重合性基を介して重合しているものである。
【0047】
この発明では、領域を構成する分子の群の少なくとも一部が重合性基を有している。したがって、少なくとも隣接する領域においては、重合性基を有する分子の濃度及び/又は種類が異なる。重合剤を用いて、重合性基を有する分子を重合することで、少なくとも隣接する領域では重合度が異なり、重合密度の異なる高分子からなる膜を得ることができる。なお、領域を構成する分子の群には、重合性基を有しないものが含まれていてもよい。このような分子も、重合には関与しないが、重合した高分子間に存在し、薄膜の分子密度には影響を与えるからである。
【0048】
本発明の第12の態様は、上記第11の態様の有機薄膜において、重合性基を有している分子がさらに基板への化学吸着性基を有しており、この分子が化学吸着性基を介して基板へ化学吸着しているものである。
【0049】
重合性基を有している分子がさらに基板への化学吸着性基を介して基材表面に化学吸着しているので、基材との結合が強固で剥離しにくいので、耐久性に優れた有機薄膜とすることができる。
【0050】
本発明の第13の態様は、上記第11または12の態様の有機薄膜において、各領域の導電性が、少なくとも隣接する領域において異なっているものである。
【0051】
有機薄膜を構成する高分子が共役系骨格を有していれば、これにドーピングすることで、導電性を付与することができる。請求項11または12に記載の有機薄膜は、少なくとも隣接する領域では重合密度の異なる高分子であり、隣接する領域での共役系骨格数が異なるので、少なくとも隣接する領域に異なる導電性を付与できる。
【0052】
本発明の第14の態様は、上記第1ないし13の態様の有機薄膜において、領域の表面エネルギーが、少なくとも隣接する領域において異なっているものである。
【0053】
上記のように、本発明の有機薄膜では、隣接する領域の分子密度が異なるものである。分子密度の相違は、表面エネルギーの相違に影響する。したがって、領域の表面エネルギーが、少なくとも隣接する領域において異なるものとすることができる。
【0054】
本発明の第15の態様は、有機薄膜の製造方法であって、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度のものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0055】
一種類の化学吸着物質を溶解した同一濃度の吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させれば、各部位の化学吸着物質の吸着量は変わる。この結果、基板上の少なくとも隣接する領域の分子密度を異なるようにすることができる。
【0056】
なお、本明細書中で、接触回数を変えるとは、領域を形成する場合に基板の該当部位における吸着溶液の接触回数を異ならせることをいう。
例えば図2に示す有機薄膜を製造する場合に、基板1上の領域(I)3と領域(II)4に該当する部位に吸着溶液を接触させ、次に基板1上の領域(I)3と領域(III)5に該当する部位に吸着溶液を接触させて、有機薄膜を製造した場合に、
領域(I)3に該当する部位の接触回数を2回、領域(II)4と領域(III)5に該当する部位の接触回数を1回と数える。
【0057】
発明の場合、吸着溶液としては、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度のものを使用する。従って、基板上の少なくとも隣接する領域で分子密度が異なる薄膜を形成するためには、基板上の少なくとも隣接する領域では吸着溶液の接触回数が異なっていなければならない。
【0058】
本発明の第16の態様は、有機薄膜の製造方法であって、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、異なる濃度のものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0059】
一種類の化学吸着物質を溶解した異なる濃度の吸着溶液を、基板の異なる部位に接触させれば、各部位の化学吸着物質の吸着量は変わる。この結果、基板上の少なくとも隣接する領域の分子密度を異なるようにすることができる。この場合に、吸着溶液の濃度が異なっているので、吸着溶液の接触回数は、異なっていても、同じであってもよい。ただし、基板上の少なくとも隣接する領域に該当する部位においては、化学吸着物質の吸着量が異なるようにする必要がある。基板上の少なくとも隣接する領域に該当する部位において化学吸着物質の吸着量を異ならせることで、基板上の少なくとも隣接する領域で分子密度が異なる薄膜が形成できるからである。
【0060】
本発明の第17の態様は、有機薄膜の製造方法であって、化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質が異なる種類のものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0061】
この方法では、化学吸着物質が異なる種類のものを溶解した吸着溶液を基板上の異なる部位に接触させる。この結果、各領域に吸着した化学吸着物質の種類が異なるので、容易に領域の分子の分布密度を変えることができる。
この場合に、基板の各部位に対する吸着溶液の接触回数は、特に制限されず、異なっていても、同じであってもよい。接触回数が同じであっても、化学吸着物質の種類が異なるので、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成することができる。また、接触回数を異ならせることで、基板上に種々の分子の分布密度を有する領域が作成できる。
【0062】
本発明の場合、吸着溶液の化学吸着物質の濃度は特に制限されない。異なる種類の化学吸着物質を用いるからである。この場合に、基板上に例えば3個以上の領域を形成する場合に、濃度の異なる吸着溶液を用いれば、隣接していない同一の化学吸着物質が吸着した領域であっても、分子密度を異ならせることができる。
【0063】
本発明の第18の態様は、有機薄膜の製造方法であって、化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、一種類の化学吸着物質からなるものと、複数種の化学吸着物質からなるものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0064】
この方法では、一種類の化学吸着物質からなるものと、複数種の化学吸着物質からなるものを溶解した吸着溶液を基板上の異なる部位に接触させる。この結果、各領域に吸着した化学吸着物質が異なるので、容易に領域の分子の分布密度を変えることができる。
【0065】
本発明の場合も、吸着溶液の化学吸着物質の濃度は特に制限されない。一種類の化学吸着物質からなるものと、複数種の化学吸着物質からなるものを用いるからである。
【0066】
一種類の化学吸着物質は、複数種の化学吸着物質に含まれていても、いなくてもよい。一種類の化学吸着物質は、複数種の化学吸着物質と同一の化学吸着物質ではないからである。
【0067】
本発明の第19の態様は、有機薄膜の製造方法であって、複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度、同一種類、かつ同一の混合割合のものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0068】
複数種の化学吸着物質を溶解した同一濃度、同一種類、かつ同一の混合割合の吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させれば、各部位の化学吸着物質の吸着量は変わる。この結果、基板上の少なくとも隣接する領域の分子密度を異なるようにすることができる。
【0069】
本発明の場合、吸着溶液としては、複数種の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度のものを使用する。従って、基板上の少なくとも隣接する領域で分子密度が異なる薄膜を形成するためには、基板上の少なくとも隣接する領域では吸着溶液の接触回数が異なっていなければならない。
【0070】
本発明の第20の態様は、有機薄膜の製造方法であって、複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質の種類、濃度、混合割合の少なくとも一つが異なるものを基板に接触させる場合に、
上記両吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0071】
本発明では、接触させる吸着溶液に溶解している複種類の化学吸着物質の種類、濃度、混合割合の少なくとも一つが異なる。この結果、容易に領域の分子の分布密度を変えることができる。
この場合に、基板の各部位に対する吸着溶液の接触回数は、特に制限されず、異なっていてもでまたは同一であってもよい。接触回数が同じであっても、化学吸着物質の種類などが異なるので、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成することができる。また、接触回数を異ならせることで、基板上に種々の分子の分布密度を有する領域が作成できる。
【0072】
本発明の場合、吸着溶液の化学吸着物質の濃度は特に制限されない。複数種の化学吸着物質の化学吸着物質の種類、濃度、混合割合の少なくとも一つが異なるからである。
【0073】
本発明の第21の態様は、上記第15ないし20のいずれかの態様の有機薄膜の製造方法において、領域がパターン状を形成するように化学吸着物質を接触させるものである。
【0074】
本発明の方法では、基板上に隣接する領域の分子密度が異なるように化学吸着溶液を接触させ、領域を形成する。したがって、領域がパターン状を形成するように化学吸着物質を接触させることで、領域をその目的に応じて容易にパターニングできる。
【0075】
本発明の第22の態様は、上記第15ないし21のいずれかの態様の有機薄膜の製造方法において、上記化学吸着物質が下記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有する分子を使用するものである。
【0076】
【化3】
Figure 0003809330
(式中、Aはケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン及びジルコニウムから選ばれる1種の原子を表しており、Xはハロゲン、アルコキシ基及びイソシアネート基から選ばれる1種の官能基を表している。)
【0077】
この方法によれば、上記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基と、基板上に存在する活性水素を有する官能基との間で共有結合させることにより、分子を基板上に化学吸着させることができる。具体的には、基板上にヒドロキシル基(OH基)が存在する場合、このOH基と−AX基との間でHXの脱離反応が生じる。これにより、吸着分子は、−A−O−結合を介して基板上に化学吸着する。この結果、吸着分子を基板上に強固に結合固定させることができ、密着性及び耐剥離性などに優れた有機薄膜を製造できる。
【0078】
本発明の第23の態様は、上記第15ないし22のいずれかの態様の有機薄膜の製造方法において、有機薄膜表面に付着した未吸着の分子を洗浄剤で洗浄して除去する洗浄工程を含むことを特徴とする。
【0079】
有機薄膜表面に付着した未吸着の分子を除去することにより、得られる薄膜は、単分子層状であるので、膜厚の制御を容易にできる。また、この有機薄膜を液晶配向膜に使用する場合、液晶分子を配向させる配向能の低下を抑制した液晶配向膜を製造できる。
【0080】
本発明の第24の態様は、上記第23の態様の有機薄膜の製造方法において、被膜形成工程が少なくとも2回化学吸着物質分子を化学吸着させる場合に、化学吸着物質分子を吸着させる毎に、上記洗浄工程を行うことを特徴とするものである。
【0081】
被膜形成工程が少なくとも2回化学吸着物質分子を化学吸着させる場合には、化学吸着物質分子を吸着させる毎に有機薄膜表面に付着した未吸着の分子を除去することにより、より効果的に膜厚の制御を容易にできる。特に、基板上で吸着分子の一部が重なり合うようにあるいは一の部分を他の部分が完全に含むように接触させる場合には、先の工程で未吸着の化学吸着物質を除去できるので好ましい。
【0082】
本発明の第25の態様は、上記第23または24の態様の有機薄膜の製造方法において、上記洗浄工程で用いる洗浄剤が、クロロホルム、アルキレングリコール類、アルコキシアルコール類及びケトン類からなる群より選ばれた少なくとも1種である。
【0083】
これらの溶媒を洗浄剤として用いると、未吸着の化学吸着物質を効率良く除去できるからである。
【0084】
本発明の第26の態様は、上記第15ないし25のいずれかの態様の有機薄膜の製造方法において
上記化学吸着物質として感光性基を有する吸着分子を含むものを使用し、上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程を含むことを特徴とする。
【0085】
有機薄膜を架橋構造とすることにより、立体構造的に安定化させることができる。特に、この有機薄膜を液晶配向膜として使用する場合、液晶分子を安定して配向規制することができ、配向規制力に優れた配向膜を製造できる。
【0086】
本発明の第27の態様は、上記第26の態様の有機薄膜の製造方法において、上記被膜形成工程が複数回化学吸着物質分子を化学吸着させる場合に、被膜形成工程の途中に少なくとも1回及び/又は被膜形成工程終了後に上記架橋処理工程を行うことを特徴とする。
【0087】
被膜形成工程の途中に少なくとも1回架橋処理工程を行えば、領域ごとに架橋条件を変えることができるので、配向分割が容易に行える。また、被膜形成工程終了後に架橋処理工程を行う場合には、本発明の有機薄膜は隣接する領域の分子密度が異なっており、同一条件で架橋処理工程を行っても、吸着分子の異方性の程度、吸着分子間の架橋の程度などの制御が容易である。
【0088】
本発明の第28の態様は、上記第26または27の態様の有機薄膜の製造方法において、照射する紫外線が、偏光光によるものである。
【0089】
偏光光を照射することで、吸着分子の感光性基で光の偏光方向と平行な部位の原子−原子結合部分に、光エネルギーを作用させ、当該部分の化学反応を励起させて、薄膜構成分子を相互に架橋反応させ、薄膜構成分子に一定方向の配向規制力を付与することができる。これにより、有機薄膜に熱安定性を付与できる。
【0090】
本発明の第29の態様は、上記第28の態様の有機薄膜の製造方法において、上記偏光光が直線偏光光によるものである。
【0091】
このような構成とすることで、効率良く有機薄膜に異方性を付与できる。
【0092】
本発明の第30の態様は、上記第26ないし29のいずれかの態様の有機薄膜の製造方法において、上記架橋処理工程が、少なくとも2回紫外線を照射する場合であって、照射する紫外線の光強度及び/又は波長を変えて照射する工程によるものである。
【0093】
このように照射する紫外線の光強度及び/又は波長を変えて、少なくとも2回紫外線を照射すると、複数の架橋の条件で架橋されるので、膜を構成する分子の架橋の強さに変化を与えることができる。
【0094】
本発明の第31の態様は、上記第26ないし30のいずれかの態様の有機薄膜の製造方法において、上記架橋処理工程が、有機薄膜に少なくとも2回紫外線を照射する場合であって、領域ごとに照射する紫外線の基材に対する入射角を変えて照射する工程によるものである。
【0095】
このような構成とすることにより、領域ごとに吸着分子の基板に対する傾きが変化し、領域ごとに異方性が制御された有機薄膜を製造できる。
【0096】
本発明の第32の態様は、上記第26ないし31のいずれかの態様の有機薄膜の製造方法において、上記架橋処理工程が、薄膜面に、照射ごとに偏光方向の異なる偏光光を用い、かつ照射ごとに照射区域が異なるようにして少なくとも2回の偏光照射を行い、領域ごとに薄膜構成分子の基板面に対する傾きの角度及び/又は配向方向を変える工程によるものである。
【0097】
このような構成とすることで、少なくとも2つの領域からなる有機薄膜の各領域にそれぞれ、領域ごとに基板に対する傾きが変化するとともに、異方性の異なる有機薄膜を製造できる。
【0098】
本発明の第33の態様は、上記第15ないし25のいずれかの態様の有機薄膜の製造方法において、上記化学吸着物質として少なくとも1種は、重合性を有する吸着分子を含むものを使用し、上記基板上で重合反応させて、基板上に共役系高分子層を形成し、さらにこれをドーピングして導電性を付与させることで少なくとも隣接する領域に異なる導電性を付与する導電性付与工程を含むことを特徴とする。
【0099】
本製造方法では、化学吸着物質として少なくとも1種は、重合性を有する吸着分子を含むものを使用するので、少なくとも隣接する領域については、重合性を有する吸着分子の分子密度を異ならせることができる。基板上で重合反応させる場合に、重合性を有する吸着分子の分子密度の高い領域では重合反応が促進され、密度の高い高分子層が形成される。逆に、重合性を有する吸着分子の分子密度の低い領域では重合反応が促進されないので、密度の低い高分子層が形成される。この場合に、重合剤の濃度や反応時間を制御しても、少なくとも隣接する領域の高分子の密度を異ならせることは可能である。しかし、最適な制御条件を見つけにくく、本発明のように、容易にかつ確実に少なくとも隣接する領域の高分子の密度を異ならせることはできない。
【0100】
また、上記高分子層にドーピングして導電性を付与させることで少なくとも隣接する領域に異なる導電性を付与することができる。この結果、有機薄膜内の任意の位置で、導電性を変化させることができる。
【0101】
本発明の第34の態様は、基板上に形成された液晶配向膜であって、分子密度の異なる少なくとも2つの領域を有し、かつ前記分子密度の異なる2つの領域が隣接していることを特徴とする。
【0102】
例えば、TN型モードのカラー表示液晶素子では、パネルの高精細化に伴うTFT配線密度の増加が、画素電極と信号及び走査線との距離を縮める結果となり、これらの間で生じる水平方向の電界の影響が大きくなり、他の画素からの横電界からのリバースチルトと呼ばれる配向欠陥、すなわち、その部分だけチルトが反転した状態を生じやすい。これを防止するため、画素の周辺部分のプレチルト角を高くする必要がある。
【0103】
このため、配向膜に用いられるポリイミド膜の材質を変更したり、焼成温度を制御することにより、プレチルト角を制御して、画素全体の極角アンカリングエネルギーを高くしている。ここで、極角アンカリングエネルギーとは、水平配向した液晶分子が外場により立ち上がろうとするとき、立ち上がる方向に束縛するエネルギーをいう。一方、画素の中心付近は、横電界の影響が小さい。逆に、画素の中心付近の極角アンカリングエネルギーが高ければ、画素の中心付近の駆動電圧が高くなる。このため、画素の中心付近の光の透過率が上昇し、視覚特性が低下するので、画素の中心付近の極角アンカリングエネルギーは、他の部分の極角アンカリングエネルギーより、低くしておくほうが望ましい。
【0104】
本発明の液晶配向膜は、分子密度の異なる少なくとも2つの領域を有し、かつ前記分子密度の異なる2つの領域が隣接しているので、プレチルト角の制御が容易であり、液晶に異なる極角アンカリングエネルギーを付与できる。
【0105】
特に、本発明の構成によれば、隣接する領域の分子密度が異なるので、画素に転移角となる極角アンカリングエネルギーが周辺の領域と異なる領域を設けることも容易である。
【0106】
本発明の第35の態様は、上記第34の態様の液晶配向膜において、上記隣接する領域がそれぞれ同一種類の化学物質分子の群で構成されているものである。
【0107】
本発明の第36の態様は、上記第34の態様の液晶配向膜において、上記隣接する領域がそれぞれ異なる種類の単一の化学物質分子の群で構成されているものである。
【0108】
本発明の第37の態様は、上記第34の態様の液晶配向膜において、上記隣接する領域がそれぞれ一種類の化学物質分子の群と複数種の化学物質分子の混合物からなる群とで構成されているものである。
【0109】
本発明の第38の態様は、上記第34の態様の液晶配向膜において、上記隣接する領域がそれぞれ複数種の化学物質分子の混合物の群で構成されているものである。
【0110】
本発明の第35から38の態様は、上記第34の態様の液晶配向膜の具体的な態様を表したものである。
【0111】
本発明の第39の態様は、上記第34ないし38のいずれかの態様の液晶配向膜において、基板上に隣接する領域の分子密度が異なる少なくとも2つの領域からなる液晶配向膜であって、1画素に対応する区画を複数かつパターン状に分割した上記領域ごとに薄膜構成分子の基板面に対する傾きの角度及び/又は配向方向を変えることにより、各領域のプレチルト角及び/又はプレチルト方位が制御されているものである。
【0112】
この液晶配向膜は、少なくとも隣接する領域の分子密度が異なっているので、この液晶配向膜に1画素に対応する区画を複数かつパターン状に分割した上記領域ごとに薄膜構成分子の基板面に対する傾きの角度及び/又は配向方向を変えることは容易である。この結果、プレチルト角及び/又はプレチルト方位は領域ごとに容易に制御できる。
【0113】
例えば、光学補償ベンド配向(OCB)モードの液晶表示装置では、液晶分子は、電圧オフ状態でベンド構造に配向しており、電圧オン状態でスプレー構造に配向している。液晶分子をベンド構造に配向させるためには、プレチルト角を大きくする必要がある。この発明では、特定の領域のプレチルト角を制御し、画素に転移角となる極角アンカリングエネルギーが周辺の領域とは異なる領域を容易に作ることができる。
【0114】
また、液晶パネルへの液晶の注入は、空パネルを真空に近い状態で、液晶溜めに浸漬し、次に圧力を常圧に戻すことにより、液晶パネル内外の圧力差と毛細管現象で、液晶は注入口から注入される。この場合に、注入口付近の配向膜の配向は、液晶注入時の圧力により配向ムラができる。本発明の構成では、注入口付近の配向膜の異方性や配向規制力を、他の領域より強くすることができるので、配向ムラの発生を防止できる。
【0115】
例えば、横型電界駆動型のイン・プレイン・スイッチング(IPS)モードの液晶表示装置では、その駆動原理を考えると、駆動オン時には、方位角方向の電界は電極上では強く、その外では弱いので、方位角アンカリングエネルギーは、電極上では大きく、その外では小さいことが望ましい。また、極角方向の電界成分は、電極上では有するが、その外ではほとんど有さないので、極角アンカリングエネルギーは電極上では大きく、その外では小さいことが望ましい。特に、電極上以外の領域では、広い視野角特性を発揮させるためには、プレチルト角があまり大きくないことが要求される。本発明の構成によれば、液晶配向膜の異なる領域に異なる表面エネルギーを付与することにより、配向膜の表面状態が変わり、アンカリングエネルギーを領域ごとに制御できるので、広い視野角特性が得られる。
特に、イン・プレイン・スイッチング(IPS)モードの液晶表示装置のTFT基板の面内に形成された対向電極のように、電極の形状が特殊な形態をしていたり、対向電極の高さが液晶層の厚みの範囲内で異なる場合であっても、電極の形状や高さによらず、電極上に高密度の薄膜を形成できるので、アンカリングエネルギーを大きくすることができる。
【0116】
本発明の第40の態様は、上記第34ないし39のいずれかの態様の液晶配向膜において、基板上に隣接する領域の分子密度が異なる少なくとも2つの領域からなる液晶配向膜であって、各領域を構成している化学吸着物質の種類、混合割合、化学吸着物質溶剤の濃度、吸着の態様の少なくとも1つを異ならせることにより、1画素に対応する区画を複数かつパターン状に分割した上記領域に異なる表面エネルギーを付与して、各領域の配向規制力が制御されているものである。
【0117】
各領域を構成する化学吸着物質の種類、混合割合、化学吸着物質の濃度、吸着の態様の少なくとも1つを異ならせることにより、少なくとも隣接する領域については、異なる表面エネルギーを付与することができる。ここで、「吸着の態様」とは、基板へ化学吸着した分子のみならず、吸着分子の上に未吸着分子が付着している場合や、未吸着分子が吸着分子と結合している場合なども含むものである。このような場合でも、領域の表面エネルギーに影響を与えるからである。
【0118】
表面エネルギーは配向膜の濡れ性、基板界面の配向規制力などに影響を及ぼしている。したがって、液晶配向膜の少なくとも隣接する領域に異なる表面エネルギーを付与することにより、配向膜の表面状態が変わり、アンカリングエネルギーが変わるので、液晶配向膜の任意の位置で配向規制力を制御できる。
【0119】
たとえば、配線の凸部の影やカラーフィルターなどの凹凸を有しているものの凸部は、配向膜の塗布が不均一になる場合がある。本発明の構成によれば、このような部分の配向膜の分子密度を高密度に調整することで、被膜の表面状態が変わり、アンカリングエネルギーを大きくすることで、リバースチルトを防止できる。
【0120】
本発明の第41の態様は、液晶配向膜の製造方法であり、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度のものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0121】
本発明の第42の態様は、液晶配向膜の製造方法であり、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、異なる濃度のものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0122】
本発明の第43の態様は、液晶配向膜の製造方法であり、化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質が異なる種類のものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0123】
本発明の第44の態様は、液晶配向膜の製造方法であり、化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、一種類の化学吸着物質からなるものと、複数種の化学吸着物質からなるものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0124】
本発明の第45の態様は、液晶配向膜の製造方法であり、複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度、同一種類、かつ同一の混合割合のものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0125】
本発明の第46の態様は、液晶配向膜の製造方法であり、複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質の種類、濃度、混合割合の少なくとも一つが異なるものを基板に接触させる場合に、
上記両吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0126】
本発明の第47の態様は、上記第41ないし46のいずれかの態様の液晶配向膜の製造方法において、領域がパターン状を形成するように化学吸着物質を接触させるものである。
【0127】
本発明の第48の態様は、上記第41ないし47のいずれかの態様の液晶配向膜の製造方法において、上記化学吸着物質が下記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有する分子を使用するものである。
【0128】
【化4】
Figure 0003809330
(式中、Aはケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン及びジルコニウムから選ばれる1種の原子を表しており、Xはハロゲン、アルコキシ基及びイソシアネート基から選ばれる1種の官能基を表している。)
【0129】
本発明の第49の態様は、上記第41ないし48のいずれかの態様の液晶配向膜の製造方法において、有機薄膜表面に付着した未吸着の分子を洗浄剤で洗浄して除去する洗浄工程を含むことを特徴とする。
【0130】
本発明の第50の態様は、上記第49の態様の液晶配向膜の製造方法において、被膜形成工程が少なくとも2回化学吸着物質を化学吸着させる場合に、化学吸着物質を吸着させる毎に、上記洗浄工程を行うことを特徴とする。
【0131】
本発明の第51の態様は、上記第49または50の態様の液晶配向膜の製造方法において、上記洗浄工程で用いる洗浄剤が、クロロホルム、アルキレングリコール類、アルコキシアルコール類及びケトン類からなる群より選ばれた少なくとも1種であるものである。
【0132】
本発明の第52の態様は、上記第41または51のいずれかの態様の液晶配向膜の製造方法において、上記化学吸着物質として感光性基を有する吸着分子を含むものを使用し、上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程を含むことを特徴とする。
【0133】
本発明の第53の態様は、上記第52の態様の液晶配向膜の製造方法において、上記被膜形成工程が複数回化学吸着物質分子を化学吸着させる場合に、被膜形成工程の途中に少なくとも1回及び/又は被膜形成工程終了後に上記架橋処理工程を行うことを特徴とする。
【0134】
本発明の第54の態様は、上記第52又は53の態様の液晶配向膜の製造方法において、照射する紫外線が、偏光光であるものである。
【0135】
本発明の第55の態様は、上記第54の態様の液晶配向膜の製造方法において、上記偏光光が直線偏光光であるものである。
【0136】
本発明の第56の態様は、上記第52ないし55のいずれかの態様の液晶配向膜の製造方法において、上記架橋処理工程が、少なくとも2回紫外線を照射する場合であって、照射する紫外線の光強度及び/又は波長を変えて照射する工程である。
【0137】
本発明の第57の態様は、上記第52ないし56のいずれかの態様の液晶配向膜の製造方法において、上記架橋処理工程が、有機薄膜に少なくとも2回紫外線を照射する場合であって、領域ごとに照射する紫外線の基材に対する入射角を変えて照射する工程である。
【0138】
本発明の第58の態様は、上記第52ないし57のいずれかの態様の液晶配向膜の製造方法において、上記架橋処理工程が、薄膜面に、照射ごとに偏光方向の異なる偏光光を用い、かつ照射ごとに照射区域が異なるようにして少なくとも2回の偏光照射を行い、領域ごとに薄膜構成分子の基板面に対する傾きの角度及び/又は配向方向を変える工程である。
【0139】
これらの方法により、本発明の液晶配向膜を製造できる。
【0140】
本発明の第59の態様は、少なくとも、対向する一対の基板と、前記一対の基板のうち少なくとも表示電極を有する基板の表面に形成された液晶配向膜と、前記対向する一対の基板間に封入された液晶とを備える液晶表示装置であって、
前記液晶配向膜が、上記第34ないし40のいずれかの態様の液晶配向膜であることを特徴とする。
【0141】
上記第34ないし40のいずれかの態様の液晶配向膜を使用した液晶表示装置は、隣接する領域の分子密度が異なることにより、隣接する領域の表面エネルギーや異方性などが異なっているので、広い視野角特性や液晶の配向均一性に優れる液晶表示装置を提供できる。
【0142】
液晶表示装置の型によらず、例えば光学補償ベンド配向モードの液晶表示装置(第60の態様)、イン・プレイン・スイッチングモードの液晶表示装置(第61の態様)においても、同様の効果が得られる。
【0143】
本発明の第62の態様は、液晶表示装置の製造方法の発明であって、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度のものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程と、
上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程と、
前記液晶配向膜付き基板と、少なくとも対向電極を有する対向基板とを、表示電極の形成された面を内側にして所定のセルギャップを設けて重ね合わせた後、両基板の間に液晶を配置する液晶セル形成工程と、
を少なくとも備えるものである。
【0144】
上記液晶表示装置は、例えば上記の方法で製造できる。また、接触させる化学吸着物質溶液は、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、異なる濃度のもの(第63の態様)であっても、化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質が異なる種類のもの(第64の態様)であっても、化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、一種類の化学吸着物質からなるものと、複数種の化学吸着物質からなるもの(第65の態様)であっても、複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度、同一種類、かつ同一の混合割合のもの(第66の態様)であっても、複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質の種類、濃度、混合割合の少なくとも一つが異なるもの(第67の態様)であっても、上記液晶表示装置を製造できる。
【0145】
本発明の第68の態様は、基板上に形成された導電性薄膜であって、分子密度の異なる少なくとも2つの領域を有し、かつ前記分子密度の異なる2つの領域が隣接していることを特徴とするものである。
【0146】
有機電気伝導体においては、結晶内でのドナー、アクセプターの配列制御が導電性に大きく影響する。したがって、膜分子の配向状態を制御できれば、結晶内でのドナー、アクセプターの配列を制御できるので、導電性も制御できる。本導電性薄膜では、隣接する領域の分子密度が異なっているので、領域ごとに膜分子の配向状態を制御できる。この結果、同一基板上の少なくとも2つの領域においては、導電性の異なる領域を有する薄膜を提供できる。
【0147】
本発明の第69の態様は、上記第68の態様の導電性薄膜において、上記隣接する領域がそれぞれ同一種類の化学物質分子の群で構成されているものである。
【0148】
本発明の第70の態様は、上記第69の態様の導電性薄膜において、上記隣接する領域がそれぞれ異なる種類の単一の化学物質分子の群で構成されているものである。
【0149】
本発明の第71の態様は、上記第69の態様の導電性薄膜において、上記隣接する領域がそれぞれ一種類の化学物質分子の群と複数種の化学物質分子の混合物からなる群とで構成されているものである。
【0150】
本発明の第72の態様は、上記第69の態様の導電性薄膜において、上記隣接する領域がそれぞれ複数種の化学物質分子の混合物の群で構成されているものである。
【0151】
これらは、第69の態様の導電性薄膜の態様を示すものである。
【0152】
本発明の第73の態様は、上記第68から72のいずれかの態様の導電性薄膜において、基板上に隣接する領域の分子密度が異なる少なくとも2つの領域からなる導電性薄膜であって、領域を形成する化学吸着物質として少なくとも1種は重合性を有する吸着分子を含むものを使用し、上記基板上で重合反応させて、基板上に共役系高分子層を形成し、さらにこれをドーピングして導電性を付与させることにより、少なくとも隣接する領域に異なる導電性を付与させたものである。
【0153】
この構成によると、領域ごとに導電性を変えることができる。したがって、領域をパターン上に形成して、分子回路などを作成することができる。
【0154】
本発明の第74の態様は、導電性薄膜の製造方法であって、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度のものを基板に接触させる場合に、
上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含むものである。
【0155】
上記導電性薄膜は、例えば上記の方法で製造できる。また、接触させる化学吸着物質溶液は、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、異なる濃度のもの(第75の態様)であっても、化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質が異なる種類のもの(第76の態様)であっても、化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、一種類の化学吸着物質からなるものと、複数種の化学吸着物質からなるもの(第77の態様)であっても、複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度、同一種類、かつ同一の混合割合のもの(第78の態様)であっても、複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質の種類、濃度、混合割合の少なくとも一つが異なるもの(第79の態様)であっても、上記導電性薄膜を製造できる。また、これらの領域がパターン状を形成するように化学吸着物質を接触させるようにしてもよい(第80の態様)。
【0156】
本発明の第81の態様は、上記第74ないし80のいずれかの態様の導電性薄膜の製造方法において、上記化学吸着物質として少なくとも1種は、重合性を有する吸着分子を含むものを使用し、上記基板上で重合反応させて、基板上に共役系高分子層を形成し、さらにこれをドーピングして導電性を付与させることで少なくとも隣接する領域に異なる導電性を付与する導電性付与工程を含むことを特徴とする。
【0157】
この工程によって、薄膜の領域に導電性を付与することができる。
【0158】
【発明の実施の形態】
本発明の有機薄膜は、基板上に形成された有機薄膜であって、分子密度の異なる少なくとも2つの領域を有し、かつ前記分子密度の異なる2つの領域が隣接しているものである。
すなわち、本発明の有機薄膜では、一の領域とこれに隣接する領域とが、分子密度において互いに独立している。
【0159】
本発明の有機薄膜に使用できる化学物質としては、基材表面に薄膜を形成できるものであれば特に制限はない。例えば、高分子、重合性モノマー、非重合性の化学物質などがあげられる。これらの中には、ポリイミドやその前駆体であるポリアミック酸、ポリビニルアルコールなどの従来公知の液晶配向膜として使用されている高分子材料やポリアセチレンなどの従来公知の導電性高分子として使用されている高分子材料の原料なども含まれる。
【0160】
これらの化学物質のなかで、好ましいものは、分子の一端に基板と化学結合する官能基を有する分子(化学吸着物質分子)である。化学吸着物質を用いると、密着性、耐剥離性に優れた有機薄膜を提供できる。
【0161】
好ましい化学吸着物質分子としては、例えば、下記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有する分子である。
【0162】
【化5】
Figure 0003809330
(式中、Aはケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン及びジルコニウムから選ばれる1種の原子を表しており、Xはハロゲン、アルコキシ基及びイソシアネート基から選ばれる1種の官能基を表している。)
なお、ハロゲンとしては、フッ素F、塩素Cl、臭素Br、ヨウ素Iなどが挙げられるが、基材との反応性の点では、Clが好ましい。
また、本明細書中で、化学物質分子A、化学吸着物質(A)または(X)と記載されている場合は、上記原子や官能基を意味するのではなく、分子や化学物質自体を意味している。
【0163】
このXが、基材表面の例えばヒドロキシル基(OH基)などの活性水素を有する基と反応して、HXの脱離反応を生じ、分子が基材表面に化学吸着する。
【0164】
また、ポリイミドなどの高分子材料や重合性モノマーの場合であっても、上記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有していれば、この官能基により、基板に吸着できるので、基板との密着性が向上する。
【0165】
また、上記基材表面に存在する活性水素を有する官能基としては、水素を供与できる官能基であれば、特に制限されず、上記水酸基の他に、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、スルフィン酸基、スルホン酸基などが挙げられる。さらに、上記官能基の活性水素が、それぞれアルカリ金属又はアルカリ土類金属で置換された官能基であってもよい。
基材表面に活性水素を有する官能基が存在しないか、存在していても少ない場合は、基材表面に活性水素を有する官能基を付与する処理をすればよい。この処理は、例えばコロナ放電処理、UV/オゾン処理、酸素プラズマ処理、過マンガン酸カリウム溶液等の化合物酸化剤処理などの公知の方法で行う。
【0166】
本発明の有機薄膜は、前記活性水素を有する基板上に直接吸着させるだけでなく、他の物質層を介して間接的に吸着させることもできる。このような他の物質層としては、特に限定されるものではないが、好ましくは表面にOH基、COOH基、NH基、NH2基、SH基等の親水性基を有する層である。他の物質層としては、具体的には、SiO2層、TiO2層などが挙げられる。
【0167】
上記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有する分子において、Aに結合しているX以外の官能基は、特に制限されず、有機薄膜の使用目的に応じて適宜選択できる。
例えば、炭素数1〜30程度の直鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、直鎖状シロキサン結合基などが挙げられる。これらの官能基により、有機薄膜の表面エネルギーなどを調整できる。
【0168】
なお、有機薄膜を液晶配向板などのように、基板表面に目的とする機能性分子を薄膜として分子の構造や配向を整えて使用する場合には、上記Aに結合しているX以外の官能基は、さらに感光性基としての機能を有していてもよい。
【0169】
上記Aに結合しているX以外の官能基がさらに感光性基としての機能を有するためには、例えば上記直鎖状炭化水素基または直鎖状シロキサン結合基の末端又は一部に、あるいは芳香族炭化水素基の置換基に、炭素−炭素二重結合基、炭素−炭素三重結合基、3フッ化炭素基(−CF3)、フェニル基(−C65)、アリール基(−C64−)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アルコキシ基(−OR、但しRは、アルキル基を表す)、シアノ基(−CN)、アミノ基(−NH2)、イミノ基(=NH)、ヒドロキシル基(−OH)、カルボニル基(=CO)、エステル基(−COO−)、カルボキシル基(−COOH)、アルデヒド基(−CHO)およびチオール基(−SH)からなる群より選ばれる少なくとも一つの有機基を有していればよい。
【0170】
なお、ポリイミド、ポリビニルアルコールなどの高分子材料を感光性高分子膜として用いる場合は、これらの感光性基を高分子材料に導入したものを用いればよい。
【0171】
また、有機薄膜に導電性を付与する場合は、以下のような導電性高分子を用いる。導電性高分子は、共役系高分子にドーピングしたものである。
【0172】
導電性高分子に使用される共役系高分子としては、例えばポリアセチレン誘導体のような脂肪族共役系高分子、ポリ(パラフェニレン)などの芳香族共役系高分子、ポリピロール、ポリチオフェンなどの複素環式共役系高分子、ポリアニリンなどの含ヘテロ原子共役系高分子、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)などの混合型共役系高分子などが挙げられる。
これらの共役系高分子は、それぞれ公知の重合性モノマーを重合して得られる。
【0173】
本発明の有機薄膜は、例えば以下のようにして製造できる。
例えば、図3のような有機薄膜を作る場合は、以下のようにする。基板上の領域(I)と領域(II)になる部位に同一種類の化学吸着物質(A)を溶解した吸着溶液で異なる濃度のもの(濃度a1、a2、a1≠a2)をそれぞれ接触させる。その後、溶媒を除去して化学吸着物質(A)を基板面に化学吸着させることで、分子密度が異なる少なくとも2つの領域(A1、A2)からなる薄膜を形成することができる。この場合は、2つの領域からなる薄膜を形成する場合について述べたが、同様の操作をすれば、3つ以上の領域からなる薄膜を形成する場合も同様である。
【0174】
化学吸着物質溶液は、非水系溶媒に、化学吸着物質(A)、例えば上記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有する分子の群が溶解した第1の吸着溶液(濃度a1)とこれと濃度の異なる第2の吸着溶液(濃度a2)を調整して得られる。
なお、この化学吸着物質溶液の調整は、相対湿度35%以下の乾燥雰囲気、例えば乾燥空気、乾燥窒素または乾燥ヘリウム中で行うことが好ましい。
【0175】
使用する非水性有機溶媒としては、具体的にはヘキサデカン、オクタンなどの鎖状脂肪族炭化水素、ビシクロヘキシルなどの環状炭化水素、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、トリクレンなどの有機ハロゲン化物、ジメチルシリコーン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサンなどが挙げられる。
これらの非水性有機溶媒は、単独でも、二種以上混合して使用してもよい。
【0176】
次に、上記吸着溶液作製工程にて作製した濃度の異なる第1の化学吸着物質溶液と第2の化学吸着物質溶液とを、有機溶剤等で予めよく洗浄した基板上の少なくとも隣接する部位に接触させた後、溶媒を除去すると、上記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有する分子の群が基材表面に化学吸着して固定される。より詳しくは、上記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有する分子に含まれるAX基と上記基材表面に多数存在する水酸基などの活性水素を有する官能基との間で縮合反応が起こり、HXが脱離する。この結果、上記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有する分子が基材表面に化学吸着して、領域(I)と領域(II)が形成される。
【0177】
なお、基板を有機溶剤等でよく洗浄するのは、吸着溶液の基板表面に対する付着性能を向上させるためであり、その他公知の方法で、表面処理を行ってもよい。
【0178】
また、同一濃度の吸着溶液を用いて、図3のような有機薄膜を作る場合は、以下のようにする。基板上の領域(I)と領域(II)になる部位に化学吸着物質(A)を溶解した吸着溶液(濃度a1)を接触させ、溶媒を除去して化学吸着物質(A)を基板面に化学吸着させる。次に、基板上の領域(I)または領域(II)になる部位に化学吸着物質(A)を溶解した吸着溶液(濃度a2、a1=a2)を接触させる。その後、溶媒を除去して化学吸着物質(A)を基板面に化学吸着させることで、分子密度が異なる少なくとも2つの領域(A1、A2)からなる薄膜を形成することができる。この場合は、2つの領域からなる薄膜を形成する場合について述べたが、同様の操作をすれば、3つ以上の領域からなる薄膜を形成する場合も同様である。また、基板上の領域(I)と領域(II)は、それぞれ吸着溶液の接触回数が異なる(1回または2回)。
【0179】
上記の製造方法では、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液を用いたが、一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液の変わりに、異なる種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液を用いても、1種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液と複数種の化学吸着物質を溶解した吸着溶液とを用いても、複数種の化学吸着物質を溶解した吸着溶液を用いても、上記方法と同様に基板に接触させることで、図4から図7に示す態様の本発明の有機薄膜が得られる。
【0180】
接触回数は、基板上の少なくとも隣接する領域の分子密度が異なるようになるのであれば、特に制限はなく、1回以上であればよい。少なくとも1回の工程で、基板上に隣接する領域の分子密度が異なる少なくとも2つの領域からなる薄膜を形成できるので、効率的である。また、2回以上吸着溶液を接触させる場合には、領域ごとに異方性を付与したり、架橋処理ができる。
【0181】
異なる種類の化学吸着物質(A、B)を溶解した吸着溶液を用いて、上記方法により有機薄膜を製造すると、たとえば図4のような有機薄膜が得られる。また、B以外の化学吸着物質(X)を溶解した吸着溶液を領域(II)に隣接する基板の部位に接触させて、B以外の化学吸着物質(X)分子を化学吸着させれば、図5に示すような領域(III)を有する有機薄膜を製造できる。
【0182】
1種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液と複数種の化学吸着物質を溶解した吸着溶液とを用いて、上記方法により有機薄膜を製造すると、たとえば図6のような有機薄膜が得られる。さらに、1種類の化学吸着物質(X)を溶解した吸着溶液を基板の領域(II)に隣接する部位に接触させて、化学吸着物質(X)分子を化学吸着させれば、領域(III)を有する有機薄膜を製造できる。
【0183】
複数種の化学吸着物質を溶解した吸着溶液を用いて、上記方法により有機薄膜を製造すると、たとえば図7のような有機薄膜が得られる。
【0184】
被膜形成工程は、乾燥雰囲気下(相対湿度35%以下)で行うことが好ましい。湿度が高ければ、基材に未吸着の化学吸着物質が空気中の水分子と反応して水酸化物となり、これが基材に吸着している分子と部分的に反応することがあるからである。
【0185】
基板表面に化学吸着物質を接触させる方法としては、特に制限はなく、公知の方法が適用される。具体的には、吸着溶液を基材表面にスプレーする方法、乾燥雰囲気下に吸着溶液と基板とを置き、気化した化学吸着物質を基板表面に付着させる気相吸着法、吸着溶液中に基板を一定時間浸漬し、その後乾燥雰囲気で乾燥させるディップ法、吸着溶液をスピナーによって基板表面に塗布するスピナー法、吸着溶液を印刷機によって基板表面に塗布する印刷法、吸着溶液をスリットコーターを用いて基板表面に塗布するスリットコーター法などが挙げられる。
上記方法で、1回の操作で化学吸着物質を基板上に接触させる場合は、例えばスクリーン印刷のような印刷法を用いるのが好ましい。印刷法を用いれば、1回の操作で、明確に区画された領域を形成できるからである。
【0186】
また、複数回の操作で本発明の有機薄膜を製造する場合は、2回目以降の化学吸着物質の接触方法は、1回目の接触方法と同一であっても、異なっていてもよい。
【0187】
上記の方法により有機薄膜を製造する場合、2回目以降に領域を形成する際には、先に形成した領域に分子を接触させることができない場合がある。この場合に、先に形成した領域に分子を接触させない方法としては、マスク法と直接法に大別される公知の方法を用いればよい。
どの方法を用いるかについては、特に制限されず、基板の大きさ、形状、接触させる化学吸着物質や基板の物性などにより、適宜選択すればよい。
【0188】
マスク法は、基板表面に領域を形成する物質とは別の物質で、マスクを施し、マスクされていない部分に第2以降の化学吸着物質で、領域を形成した後に、マスクを除去するものである。マスクに用いられるものとしては、例えば印刷用インク、フォトレジスト膜、穴のあいたプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0189】
直接法は、基板表面の一部を先に領域を形成した物質とは別の物質にさらす、または基板表面の一部に化学的あるいは物理的処理を施すことにより、基板表面の一部に第2以降の領域を直接形成するものである。具体的には、スクリーン印刷を用いて、化学吸着物質をパターン化して印刷する、電子線を走査させ、目的の部分にのみ電子線を照射して領域を形成する、基板表面上に化学吸着物質の薄膜を形成しておいて、これにパターン化したフォトマスクを介して紫外線を照射し、光酸化により領域を形成する方法などが挙げられる。
【0190】
上記の方法で製造された有機薄膜は、以下のような有機薄膜である。
(1)隣接する領域がそれぞれ同一種類の化学物質分子の群で構成されていることにより少なくとも隣接する領域の分子密度が異なる有機薄膜である。
(2)隣接する領域がそれぞれ異なる種類の単一の化学物質分子の群で構成されていることにより少なくとも隣接する領域の分子密度が異なる有機薄膜である。
(3)隣接する領域がそれぞれ一種類の化学物質分子の群と複数種の化学物質分子の混合物からなる群とで構成されていることにより少なくとも隣接する領域の分子密度が異なる有機薄膜である。
(4)隣接する領域がそれぞれ複数種の化学物質分子の混合物の群で構成されていることにより少なくとも隣接する領域の分子密度が異なる有機薄膜である。
上記方法によれば、少なくとも隣接する領域の分子密度が異なる有機薄膜をより効果的に製造できる。
また、領域を作成する際に、領域がパターン状に形成されるようにしてやれば、パターニングが容易である。
【0191】
本発明の製造方法は、上記のように、化学吸着物質を基板表面に化学吸着する方法に限らず、高分子材料等を公知の方法で積層しても、本発明の有機薄膜を得ることができる。
【0192】
ここで、上記被膜形成工程を通常の湿度の雰囲気中(すなわち、大気中)で行うと、基材表面に吸着した吸着分子と、基材に吸着していない未吸着分子とが3次元的に架橋したポリマーライクな構造に一部物理的に絡み合った分子も含んだ薄膜が形成される。このような膜構造を有する薄膜が形成されるのは、以下に述べる理由による。即ち、基材表面に吸着しない未吸着分子は、雰囲気中の水分と反応し、HX分子が脱離する。この結果、この未吸着分子にはOH基が導入される。そしてこのOH基が他の未吸着分子のX基と反応するなどして架橋結合して、上記のような構造の薄膜が形成されている。
一方、乾燥雰囲気中(例えば、相対湿度35%以下)で上記薄膜形成工程を行うと、単分子層状の薄膜が形成される。ここで、単分子層状の薄膜とは、概ね単分子膜と認識できる程度の薄膜をいう。具体的には、例えば基板に吸着した吸着分子の上に未吸着分子が付着して複数分子層となった部分があってもよく、また自らは直接基板と結合していないが、直接結合している分子に結合していたり、この直接基板と結合していない分子にさらに他の分子が結合する形で、複数の分子からなる層を形成している部分が含まれていてもよい。このような単分子層状の薄膜は、ナノメートルレベルの膜厚を有する膜を意味している。
【0193】
次に、この有機薄膜表面に付着した未吸着の分子を洗浄して除去する洗浄工程を行う。有機薄膜表面に付着した未吸着の分子が除去されるので、膜厚の制御された有機薄膜を得ることができる。
尚、このとき、洗浄工程を行わなければ、上記の単分子膜に付着している化学吸着物質が除去されないので、ポリマーライクな有機薄膜を形成できる。
いずれの有機薄膜にするかは、使用する目的による。
【0194】
なお、被膜形成工程が少なくとも2回化学吸着物質を化学吸着させる場合には、化学吸着物質を吸着させる毎に、上記洗浄工程を行ってもよい。各領域が各々単分子層状の被膜で形成されるので、全体として膜厚の制御された有機薄膜となる。
【0195】
上記洗浄工程で、使用できる洗浄剤としては、特に制限はなく、従来公知の洗浄剤が使用できる。好ましい洗浄剤としては、洗浄工程終了後、洗浄剤の除去が容易な点で、クロロホルム、アルキレングリコール類(例えば、ポリエチレングリコールを含むエチレングリコール類、プロピレングリコール類、ブチレングリコール類)、アルコキシアルコール類(例えば、エトキシエタノールなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなど)などが挙げられる。さらに、環境に与える負荷の少ない点から、アルキレングリコール類、アルコキシアルコール類がより好ましい。
これらの洗浄剤は、単独でも、2種以上組み合わせても使用できる。
【0196】
上記洗浄剤として、含水率が1%未満のものを用いることが好ましい。含水率が上記数値範囲を超えると、未吸着分子や吸着分子のAX基が洗浄剤に含まれる水と反応して架橋構造を形成するからである。
この、洗浄工程は、乾燥雰囲気中で行ってもよい。単分子膜上に累積膜が形成された被膜を洗浄する場合、未吸着分子や吸着分子のAX基が水と反応して架橋構造を形成することを防ぐためである。
【0197】
洗浄工程終了後、本発明の薄膜が形成された基板は、さらに水との反応工程に供してもよい。被膜を水と反応させると、薄膜を構成する分子中の例えばSiCl基などのAX基と水との間で例えばHClなどのHXの脱離反応を行い、この分子中にOH基を導入できるからである。
【0198】
水との反応工程は、薄膜が水と接する状況に置くことにより行う。具体的には、薄膜に水を塗布する、水中に浸漬するなどによって行う。なお、上記洗浄工程終了後、洗浄液を乾燥した後、通常の湿度状態にある大気中に放置することによっても、大気中の水と反応して、膜を構成する分子中にOH基を導入できる。
次に、上記薄膜を構成する分子にOH基が導入された薄膜を乾燥状態に置くと、薄膜を構成する分子間で、OH基同士が脱水反応を起こして、架橋構造が形成される。架橋構造が形成されることにより、薄膜により強固な耐久性を付加することができる。なお、上記の単分子層状膜に付着している化学吸着物質を洗浄除去していない場合は、薄膜を構成する分子と単分子層状の膜に付着している化学吸着物質との間でもOH基同士が脱水反応を起こして、三次元的に架橋したポリマー状(非単分子膜状)の有機薄膜が形成される。
【0199】
上記化学吸着物質として感光性基を有する吸着分子を含むものを使用する場合には、上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程を行ってもよい。
【0200】
また、上記被膜形成工程が複数回化学吸着物質を化学吸着させる場合には、被膜形成工程の途中に少なくとも1回及び/又は被膜形成工程終了後に上記架橋処理工程を行ってもよい。
【0201】
直線偏光光を得る方法としては、吸収型の偏光板を介して得る方法、偏向ビームスプリッターなどの非吸収型の偏向分離素子を介して得る方法など、公知の方法が用いられる。
【0202】
露光時の温度としては、特に制限はないが、通常、室温付近から100℃前後の温度である。
【0203】
照射する偏光紫外線は、300〜400nm付近に波長分布を有するものであればよい。照射量は、例えば365nmで概ね50〜3000mJ/cm2であればよい。また、照射する偏光光と基板とのなす角は、0〜90°、好ましくは、45〜90°である。
【0204】
以上、光を用いた配向について説明したが、本発明は、これに限定されるものでなく、マスクラビング法を用いて、配向分割してもよい。
【0205】
上記のようにして有機薄膜が形成された基板を液晶表示装置に用いる場合は、例えば、以下のようにする。
電極を有する基板に、上記のようにして有機薄膜(配向膜)を設ける(第1の基板)。別途電極を有する基板(配向膜を有していても有していなくてもよい)を用意する(第2の基板)。この2つの基板を、電極面を内側にして所定の間隙を保ちつつ位置合わせし、基板の周縁を接着固定した後、第1の基板と第2の基板の間に、例えばネマチック液晶を注入し、液晶セルとする。この液晶セルに定法に従って偏光板およびバックライトを配置して、本発明の液晶表示装置を作成する。
【0206】
上記化学吸着物質として少なくとも1種は、重合性を有する吸着分子を含むものを使用し、上記基板上で重合反応させて、基板上に共役系高分子層を形成し、さらにこれをドーピングして導電性を付与させることで少なくとも隣接する領域に異なる導電性を付与する導電性付与工程を行ってもよい。
【0207】
重合性を有する吸着分子についても、上記と同様に基板表面に吸着させる。その後、吸着分子同士、吸着分子と未吸着分子、吸着分子に結合している未吸着分子と未吸着分子間で、重合反応させ、基板上に共役系高分子層を形成する。
【0208】
共役系高分子の合成は、重合性モノマーの重合により直接に共役系骨格を持った高分子を合成する直接合成法と、重合性モノマーの重合により可溶性の先駆ポリマーを合成し、これを脱離反応や付加反応などにより共役系を形成する間接合成法に大別される。いずれの方法をとるかは、重合性モノマーの種類や合成される共役系高分子により異なるので、公知の方法で合成すればよい。
【0209】
直接合成法では、付加重合、開環重合、環化重合などの連鎖重合法や重縮合のような逐次重合法が利用できる。
例えば、ポリアセチレン類は、アセチレンやフェニルアセチレンのチーグラー・ナッタ触媒による付加重合(配位アニオン重合)で合成できる。また、ポリピロールやポリチオフェンは、ピロールやチオフェンの2,5位の水素の脱離に伴う重縮合反応により合成される。
【0210】
間接合成法は、2段階の反応で共役系高分子を合成しようとするものである。共役系高分子のほとんどは、あらゆる溶媒に不溶であるため、一度できると成形できない。しかし、この方法では、一般に、先駆ポリマーが可溶であるので、これを成形してから2段目の反応を行えるという利点がある。
例えば、ポリビニルアルコールの脱水反応、ポリ塩化ビニルの脱塩素化反応によりポリアセチレンなどのポリエンが合成できる。
【0211】
共役系高分子の多くは、絶縁体かこれに近い半導体である。このような共役系高分子をドーピングすることで、導電性高分子を得る。ドーピングには、ドーパントを導電性高分子と反応させる化学ドーピングと導電性高分子を電極として電気化学的に行う電気化学ドーピングとが知られている。
【0212】
共役系高分子に電子受容性ドーパントまたは電子供与性ドーパントを加えると、電荷移動を起こし、導電性を得る。ドーピングできるか否かは、導電性高分子のイオン化ポテンシャル又は電気親和力とドーパントの電気親和力またはイオン化ポテンシャルにより決まる。
【0213】
使用できるドーパントとしては、例えばハロゲン、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属ハロゲン化物、電界質アニオンなどの公知の電子受容性ドーパントやアルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド、第四級アンモニウムイオン、第四級ホスホニウムイオンなどの公知の電子供与性ドーパントなどが挙げられる。
【0214】
また、電気化学ドーピングでは、共役系高分子を正、負極両極として電界物質を溶かした電界溶液に浸して、電位をかけると、電流が流れて正極はp型に、負極はn型にドーピングされる。
【0215】
本発明の有機薄膜では、化学吸着物質として少なくとも1種は、重合性を有する吸着分子を含むものを使用している。したがって、少なくとも隣接する部分において種類、混合割合、濃度のいずれかが異なるようにして領域を形成すれば、少なくとも隣接する領域では、導電性の異なる有機薄膜が製造できる。この場合に、上記の条件に加え、ドーパントの種類、ドーパント濃度、共役性高分子とドーパントとの関係、印加電圧などを変えることによっても、少なくとも隣接する領域では、導電性の異なる有機薄膜が製造できる。
【0216】
さらに、共役結合基を有する吸着分子である場合に、感光性基を有していてもよい。感光性基により、薄膜表面の分子の配向状態を制御することで、ドーパントの配列が制御できるので、導電性を制御することもできるからである。
【0217】
上記基板としては、ガラス、金属、金属酸化物、セラミックス、プラスチック、木材、石材、紙および布等からなるいずれか1種の材料に適用できる。また、液晶配向膜の基板としては、電極は基板の片面に形成されていても良いし、両面に形成されていてもよい。電極の材質としては、アルミニウムやITOなどの公知の材質のものが使用できる。電極形状は、ストレート線状のものやくの字に屈曲したもの、TFTの配線形状など、どのような形状であってもよい。
【0218】
【実施例】
以下に、必要に応じて図面を参照して、本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている構成要素の材質や製造条件等は、特に限定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる例示に過ぎない。
【0219】
(実施例1)
図9、図10はそれぞれ紫外可視分光分析(以下、UV/VIS分光分析という)のスペクトルを表す図である。
【0220】
まず、n−へキサンに一般式(1)で表される官能群から選ばれる1種の官能基を有する分子として(チオフェニルオクチル)トリクロロシラン(本明細書中で、「チオフェニル」とは、「チオフェン環」を意味する)を1重量%となるように溶解させた(吸着溶液(a))。
【0221】
次に、n−へキサンに一般式(1)で表される官能群から選ばれる1種の官能基を有する分子としてプロピルトリクロロシランを1重量%となるように溶解させた(吸着溶液(b))。
【0222】
吸着溶液(a)と(b)とを、(a):(b)が体積比で、それぞれ1:0、1:2、1:1、2:1になるように混合し、混合溶液を調整した。
【0223】
この混合溶液を、石英ガラス上に上記各々の混合溶液を印刷法を用いて、各々の混合溶液を短冊状に配列して接触させた。その後、乾燥雰囲気中で、10分間放置乾燥させた。この薄膜を形成した石英ガラスについて、UV/VIS分光分析を行ったところ、図9に示す重合前のスペクトルを得た。
【0224】
次に、この薄膜を形成した石英ガラスを1重量%塩化第二鉄DMSO溶液に2時間浸漬し、共役系高分子を重合させた。この薄膜を形成した石英ガラスを水洗した後、UV/VIS分光分析を行ったところ、図9に示す重合後のスペクトルを得た。
図9の重合後のスペクトルから明らかなように、図9の重合前のスペクトルに比べて吸収ピークが大きくなり、しかも長波長へシフトしている。このことから、膜内において、ポリ(チオフェンオクチル)が重合したことがわかる。
【0225】
この薄膜を形成した石英ガラスを5重量%塩化第二鉄アセトニトリル溶液に30分浸漬し、共役系高分子をドーピングした。その後、アセトニトリルで洗浄し、自然乾燥させた。
【0226】
得られた導電性高分子層に導電ペーストを塗布し、電極を形成した後、四端子法にて抵抗を測定し、電導度を計測した。吸着溶液(a)と(b)との混合比率と電導度の関係を表1に示す。
【0227】
【表1】
Figure 0003809330
【0228】
表1から明らかなように、本発明の方法によれば、膜内に任意の導電性の領域を有する有機薄膜を得ることができた。
【0229】
(実施例2)
シリコーンオイル96L(信越化学(株)製、沸点約100℃)に一般式(1)で表される官能群から選ばれる1種の官能基を有する分子としてオクタデシルトリクロロシランCH3(CH217SiCl3を1重量%となるように溶解させた(吸着溶液A)。
【0230】
次に、シリコーンオイル96L(信越化学(株)製、沸点約100℃)に一般式(1)で表される官能群から選ばれる1種の官能基を有する分子としてオクタデシルトリクロロシランCH3(CH217SiCl3を10重量%となるように溶解させた(吸着溶液B)。
【0231】
オクタデシルトリクロロシランCH3(CH217SiCl3は、下記反応式(2)で示されるように反応して、基板に吸着する。
【0232】
【化6】
Figure 0003809330
次に、基板として、ガラスにITO電極が付いたOCB液晶表示素子用基板を準備した。次に、キセノンのエキシマランプを用いて、相対湿度65%の空気中で、基板とランプ間の距離を2mm離して、約50秒間照射した。ランプ直下の波長172nmの照度は、32mW/cm2であり、本実施例のように2mm離すと、照度は20mW/cm2となる。基板とランプ間の距離は、10μm以上50μm以下が実用上望ましい。
【0233】
この基板を純水流水下に約1分間放置した後、引き上げ、エアガンで水滴を完全に除去し、乾燥させて、基板を表面処理した。
【0234】
次に、スクリーン印刷で、図10に示すように、上記ガラス基板1上にインクによる第1パターン7を作成した。
【0235】
このパターン化されたインクをマスクとして、基板1を吸着溶液Aに相対湿度30%の乾燥雰囲気下で室温で1時間浸漬し、その後基板を引き上げて乾燥させることにより、インクの付着していないところに図11に示すように領域(I)3を形成した。
【0236】
その後、この基板1をアセトンで洗浄し、インクを除去した。
次に、スクリーン印刷で図12に示すように、上記領域(I)3の上にインクによる第2パターン8を作成した。
【0237】
このパターン化されたインクをマスクとして、基板1を吸着溶液Bに相対湿度30%の乾燥雰囲気下で室温で1時間浸漬し、その後基板を引き上げて乾燥させることにより、インクの付着していないところに図13に示すように領域(II)4を形成した。
【0238】
領域(I)3と領域(II)4との面積比は、領域(I):領域(II)=100:1であった。
【0239】
次に、領域(I)3と領域(II)4とが形成された基板に、500Wの高圧水銀灯を用い、波長365nmの紫外光をグランティラー型偏光子を介して1200mJ/cm2照射した。
【0240】
次に上記で作成した有機薄膜(液晶配向膜)付き基板2枚を用い、有機薄膜を対向させ、かつそれぞれの露光部分がアンチパラレル配向するようにして、スペーサーを介在させて、セルギャップが5μmの液晶セルを組み立て、OCB用液晶((株)チッソ、MJ97206)して、液晶表示素子Iを作成した。
【0241】
OCB液晶表示素子Iの領域(I)と領域(II)のプレチルト角、領域(I)と領域(II)との間のスプレー−ベンド転移電圧を測定するとともに、偏光顕微鏡を用いて、液晶の配向均一性(明るさのムラ)を観察した。結果を表2に示す。
【0242】
【表2】
Figure 0003809330
【0243】
この表から明らかなように、本発明の液晶配向膜を用いたOCB液晶表示素子は、領域(II)のプレチルト角が、領域(I)のプレチルト角より大きくなっており、領域(II)を転移発生の核としてベンド転移が発生、成長しやすくなり、スプレー−ベンド表示電圧を下げることができた。
また、液晶の配向均一性(明るさのムラ)に優れていた。
なお、OCB液晶表示素子において、配向パターンAの大きさは、5μm角以上で転移発生の核としての効果が得られることがわかった。
【0244】
実施例2と同様の方法により、1画素に対応する部分の周辺部分を高濃度に中心部分を低濃度になるようにして、液晶配向膜を作成した。
この液晶配向膜をTN型液晶表示装置に用いると、周辺部のアンカリングエネルギーが高くなり、他の画素からの横電界によるリバースチルトを有効に防止できた。
【0245】
また、実施例2と同様の方法により、IPS型液晶表示装置の電極部に対応する部分を高密度に他の部分を低濃度になるようにして、液晶配向膜を作成した。
この液晶配向膜をIPS型液晶表示装置に用いると、電極上の極角アンカリングエネルギーを高くすることができた。
【0246】
また、実施例2と同様の方法により、液晶注入口付近を液晶の注入方向に沿って、高密度になるように、液晶配向膜を作成した。
この液晶配向膜を用いた液晶パネルに液晶を注入したところ、配向ムラは起こさなかった。
【0247】
(実施例3)
n−へキサンに一般式(1)で表される官能群から選ばれる1種の官能基を有する分子としてオクタデシルトリクロロシランCH3(CH217SiCl3を0.1重量%となるように溶解させた(吸着溶液(c))。
【0248】
乾燥雰囲気(相対湿度35%以下)下で、ガラス基板を、吸着溶液(c)に1分間浸漬した後に、取り出し、乾燥雰囲気下で10分間放置乾燥させた。その後アセトンで洗浄し、ガラス基板に撥水性膜を形成した。
【0249】
この膜の臨界表面エネルギーを、4種類の有機溶媒により接触角を測定し、Zismanプロットにより求めると、24dyn/cmであった。
【0250】
n−へキサンに一般式(1)で表される官能群から選ばれる1種の官能基を有する分子としてフェニルトリクロロシランC65SiCl3を0.1重量%となるように溶解させた(吸着溶液(d))。
【0251】
この吸着溶液(d)を上記と同様に処理し、この膜の臨界表面エネルギーを求めると、37dyn/cmであった。
【0252】
吸着溶液(c)と(d)とをそれぞれ(c):(d)が1:2、1:1、2:1になるように混合し、混合溶液を調整した。
【0253】
この混合溶液を、ガラス上に上記各々の混合溶液を印刷法を用いて、各々の混合溶液を短冊状に配列して接触させた。その後、乾燥雰囲気中で、10分間放置乾燥させ、アセトンで洗浄し、薄膜を形成した。
【0254】
薄膜上の各領域の臨界表面エネルギーを求めた。吸着溶液(c)と(d)との混合比率と臨界表面エネルギーの関係を表3に示す。
【0255】
【表3】
Figure 0003809330
【0256】
表3から明らかなように、本発明の方法によれば、膜内に任意の表面エネルギーの領域を有する有機薄膜を得ることができた。
【0257】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によると、基板上に形成された有機薄膜であって、分子密度の異なる少なくとも2つの領域を有し、かつ前記分子密度の異なる2つの領域が隣接しているものを提供できる。この有機薄膜は、耐久性に優れるだけでなく、特定の領域に表面エネルギーや配向性、アンカリングエネルギー、導電性などの特性を容易に付加することができる。
【0258】
また、上記有機薄膜を液晶配向膜に使用すると、リバースチルトを有効に防止する、広い視覚特性を得る、画素に転移角を与えることができる、液晶注入時の配向ムラを防止できるなどの効果がある。
【0259】
さらにこの有機薄膜を液晶配向膜に使用すると、分子回路のパターンニングなどの利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機薄膜の一例を模式的に表した図であり、図1(a)はその斜視図、図1(b)は上記図1(a)におけるA−A'方向の断面図である。
【図2】本発明の有機薄膜の別の一例を模式的に表した図である。
【図3】本発明の一態様を模式的に表した要部拡大図である。
【図4】本発明の別の一態様を模式的に表した要部拡大図である。
【図5】領域を構成する化学物質分子が2種類以上の場合の態様を模式的に表した要部拡大図である。
【図6】本発明のさらに別の一態様を模式的に表した要部拡大図である。
【図7】本発明のさらに別の一態様を模式的に表した要部拡大図である。
【図8】基板表面の分子の占有密度の差を説明するための図である。
【図9】本発明の実施例1における重合前および重合後のUV/VIS分光分析のスペクトルを表す図である。
【図10】本発明の実施例2におけるOCB液晶表示素子用基板に作成した第1パターンを示す図である。
【図11】本発明の実施例2におけるOCB液晶表示素子用基板上に形成された領域(I)を示す図である。
【図12】本発明の実施例2におけるOCB液晶表示素子用基板に作成した第2パターンを示す図である。
【図13】本発明の実施例2におけるOCB液晶表示素子用基板上に形成された領域(II)を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 有機薄膜
3 領域(I)
4 領域(II)
5 領域(III)
6 OCB液晶表示素子用基板
7 第1パターン
8 第2パターン

Claims (54)

  1. 感光性基を有する同一の化学物質分子群が基板面に化学吸着されてなる有機薄膜であって、前記有機薄膜は、化学吸着した分子の吸着密度の異なる少なくとも2つの領域を有し、かつ前記吸着密度の異なる2つの領域が隣接していることを特徴とする有機薄膜。
  2. 上記領域がパターン状に形成されている請求項1に記載の有機薄膜。
  3. 各領域を構成する分子の群が、領域毎に同一または異なる方向に傾斜している請求項1または2に記載の有機薄膜。
  4. 分子同士が感光性基を介して結合している請求項1ないし3のいずれかに記載の有機薄膜。
  5. 前記有機薄膜は導電性を有し、かつ領域の導電性が、少なくとも隣接する領域において異なっている請求項1ないし4のいずれかに記載の有機薄膜。
  6. 領域の表面エネルギーが、少なくとも隣接する領域において異なっている請求項1ないし5のいずれかに記載の有機薄膜。
  7. 一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度のものを基板に接触させる場合に、
    上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含む有機薄膜の製造方法。
  8. 一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、異なる濃度のものを基板に接触させる場合に、
    上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含む有機薄膜の製造方法。
  9. 化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質が異なる種類のものを基板に接触させる場合に、
    上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子吸着密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含む有機薄膜の製造方法。
  10. 化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、一種類の化学吸着物質からなるものと、複数種の化学吸着物質からなるものを基板に接触させる場合に、
    上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子吸着密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含む有機薄膜の製造方法。
  11. 複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度、同一種類、かつ同一の混合割合のものを基板に接触させる場合に、
    上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含む有機薄膜の製造方法。
  12. 複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質の種類、濃度、混合割合の少なくとも一つが異なるものを基板に接触させる場合に、
    上記両吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子吸着密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を含む有機薄膜の製造方法。
  13. 領域がパターン状を形成するように化学吸着物質を接触させるものである請求項7ないし12のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  14. 上記化学吸着物質が下記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有する分子を使用するものである請求項7ないし13のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
    Figure 0003809330
    (式中、Aはケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン及びジルコニウムから選ばれる1種の原子を表しており、Xはハロゲン、アルコキシ基及びイソシアネート基から選ばれる1種の官能基を表している。)
  15. 上記有機薄膜表面に付着した未吸着の分子を洗浄剤で洗浄して除去する洗浄工程を含むことを特徴とする請求項7ないし14のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  16. 上記被膜形成工程が少なくとも2回化学吸着物質分子を化学吸着させる場合に、化学吸着物質分子を吸着させる毎に、上記洗浄工程を行うことを特徴とする請求項15に記載の有機薄膜の製造方法。
  17. 上記洗浄工程で用いる洗浄剤が、クロロホルム、アルキレングリコール類、アルコキシアルコール類及びケトン類からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項15または16に記載の有機薄膜の製造方法。
  18. 上記化学吸着物質分子として感光性基を有する吸着分子を含むものを使用し、上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程を含むことを特徴とする請求項7ないし17のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  19. 上記被膜形成工程が複数回化学吸着物質分子を化学吸着させる場合に、被膜形成工程の途中に少なくとも1回及び/又は被膜形成工程終了後に上記架橋処理工程を行うことを特徴とする請求項18に記載の有機薄膜の製造方法。
  20. 上記照射する紫外線が、偏光光である請求項18または19に記載の有機薄膜の製造方法。
  21. 上記偏光光が直線偏光光である請求項20に記載の有機薄膜の製造方法。
  22. 上記架橋処理工程が、少なくとも2回紫外線を照射する場合であって、照射する紫外線の光強度及び/又は波長を変えて照射する工程である請求項18ないし21のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  23. 上記架橋処理工程が、有機薄膜に少なくとも2回紫外線を照射する場合であって、領域ごとに照射する紫外線の基材に対する入射角を変えて照射する工程である請求項18ないし22のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  24. 上記架橋処理工程が、薄膜面に、照射ごとに偏光方向の異なる偏光光を用い、かつ照射ごとに照射区域が異なるようにして少なくとも2回の偏光照射を行い、領域ごとに薄膜構成分子の基板面に対する傾きの角度及び/又は配向方向を変える工程である請求項18ないし23のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  25. 上記化学吸着物質として少なくとも1種は、重合性を有する吸着分子を含むものを使用し、上記基板上で重合反応させて、基板上に共役系高分子層を形成し、さらにこれをドーピングして導電性を付与させることで少なくとも隣接する領域に異なる導電性を付与する導電性付与工程を含むことを特徴とする請求項7ないし17のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  26. 基板上に形成された有機薄膜よりなる液晶配向膜であって、前記有機薄膜は、分子密度の異なる少なくとも2つの領域を有し、かつ前記分子密度の異なる2つの領域が隣接し、隣接するそれぞれの領域が同一種類の化学物質分子の群で構成されていることを特徴とする液晶配向膜。
  27. 基板上に配された化学吸着物質分子よりなる有機薄膜で構成された液晶配向膜であって、1画素に対応する区画を複数かつパターン状に分割した分割領域を有し、前記分割領域の少なくとも隣合う領域を構成する前記化学吸着物質分子の分子吸着密度が異なり、前記分割領域ごとに前記化学吸着物質分子の基板面に対する傾きの角度及び/又は配向方向を変えることにより、各分割領域のプレチルト角及び/又はプレチルト方位が制御されていることを特徴とする液晶配向膜。
  28. 基板上に配された化学吸着物質分子よりなる有機薄膜で構成された液晶配向膜の製造方法において、
    一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度のものを基板に接触させる場合に、上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を有する
    ことを特徴とする液晶配向膜の製造方法。
  29. 基板上に配された化学吸着物質分子よりなる有機薄膜で構成された液晶配向膜の製造方法において、
    一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、異なる濃度のものを基板に接触させる場合に、上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を有する
    ことを特徴とする液晶配向膜の製造方法。
  30. 基板上に配された化学吸着物質分子よりなる有機薄膜で構成された液晶配向膜の製造方法において、
    化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質が異なる種類のものを基板に接触させる場合に、上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子吸着密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を有する
    ことを特徴とする液晶配向膜の製造方法。
  31. 基板上に配された化学吸着物質分子よりなる有機薄膜で構成された液晶配向膜の製造方法において、
    化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、一種類の化学吸着物質からなるものと、複数種の化学吸着物質からなるものを基板に接触させる場合に、上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子吸着密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を有する
    ことを特徴とする液晶配向膜の製造方法。
  32. 基板上に配された化学吸着物質分子よりなる有機薄膜で構成された液晶配向膜の製造方法において、
    複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度、同一種類、かつ同一の混合割合のものを基板に接触させる場合に、上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を有する
    ことを特徴とする液晶配向膜の製造方法。
  33. 基板上に配された化学吸着物質分子よりなる有機薄膜で構成された液晶配向膜の製造方法において、
    複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質の種類、濃度、混合割合の少なくとも一つが異なるものを基板に接触させる場合に、上記両吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子吸着密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程を有する
    ことを特徴とする液晶配向膜の製造方法。
  34. 前記化学吸着物質が基板面に化学吸着する化学吸着物質であり、領域がパターン状を形成するように化学吸着物質を基板面に接触させるものであることを特徴とする請求項28ないし33のいずれかに記載の液晶配向膜の製造方法。
  35. 上記化学吸着物質が下記一般式(1)で表される官能基群から選ばれる1種の官能基を有する分子を使用するものであることを特徴とする請求項28ないし34のいずれかに記載の液晶配向膜の製造方法。
    Figure 0003809330
    (式中、Aはケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン及びジルコニウムから選ばれる1種の原子を表しており、Xはハロゲン、アルコキシ基及びイソシアネート基から選ばれる1種の官能基を表している。)
  36. 有機薄膜表面に付着した未吸着の分子を洗浄剤で洗浄して除去する洗浄工程を含むことを特徴とする請求項28ないし35のいずれかに記載の液晶配向膜の製造方法。
  37. 被膜形成工程が少なくとも2回化学吸着物質分子を化学吸着させる場合に、化学吸着物質を吸着させる毎に、上記洗浄工程を行うことを特徴とする請求項36に記載の液晶配向膜の製造方法。
  38. 上記洗浄工程で用いる洗浄剤が、クロロホルム、アルキレングリコール類、アルコキシアルコール類及びケトン類からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項36または37に記載の液晶配向膜の製造方法。
  39. 上記化学吸着物質分子として感光性基を有する吸着分子を含むものを使用し、上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程を含むことを特徴とする請求項28ないし38のいずれかに記載の液晶配向膜の製造方法。
  40. 上記被膜形成工程が複数回化学吸着物質分子を化学吸着させる場合に、被膜形成工程の途中に少なくとも1回及び/又は被膜形成工程終了後に上記架橋処理工程を行うことを特徴とする請求項39に記載の液晶配向膜の製造方法。
  41. 上記照射する紫外線が、偏光光である請求項39または40に記載の液晶配向膜の製造方法。
  42. 上記偏光光が直線偏光光である請求項41に記載の液晶配向膜の製造方法。
  43. 上記架橋処理工程が、少なくとも2回紫外線を照射する場合であって、照射する紫外線の光強度及び/又は波長を変えて照射する工程である請求項39ないし42のいずれかに記載の液晶配向膜の製造方法。
  44. 上記架橋処理工程が、有機薄膜に少なくとも2回紫外線を照射する場合であって、領域ごとに照射する紫外線の基材に対する入射角を変えて照射する工程である請求項39ないし43のいずれかに記載の液晶配向膜の製造方法。
  45. 上記架橋処理工程が、薄膜面に、照射ごとに偏光方向の異なる偏光光を用い、かつ照射ごとに照射区域が異なるようにして少なくとも2回の偏光照射を行い、領域ごとに薄膜構成分子の基板面に対する傾きの角度及び/又は配向方向を変える工程である請求項39ないし44のいずれかに記載の液晶配向膜の製造方法。
  46. 少なくとも、対向する一対の基板と、前記一対の基板のうち少なくとも表示電極を有する基板の表面に形成された液晶配向膜と、前記対向する一対の基板間に封入された液晶とを備える液晶表示装置であって、
    前記液晶配向膜が、請求項26または27に記載の液晶配向膜であることを特徴とする液晶表示装置。
  47. 前記液晶表示装置が、電極を有する基板の表面に形成された液晶配向膜のプレチルトの方向が対向する一対の基板間で逆向きである光学補償ベンド配向モードの液晶表示装置である請求項46に記載の液晶表示装置。
  48. 前記液晶表示装置が、片方の基板面に一対の表示電極が形成されたイン・プレイン・スイッチングモードの液晶表示装置である請求項46に記載の液晶表示装置。
  49. 少なくとも、対向する一対の基板と、前記一対の基板のうち少なくとも表示電極を有する基板の表面に形成された液晶配向膜と、前記対向する一対の基板間に封入された液晶とを備える液晶表示装置の製造方法において、
    一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度のものを基板に接触させる場合に、上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程と、
    上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程と、
    前記液晶配向膜付き基板と、少なくとも対向電極を有する対向基板とを、表示電極の形成された面を内側にして所定のセルギャップを設けて重ね合わせた後、基板の間に液晶を配置する液晶セル形成工程と、
    を少なくとも備える液晶表示装置の製造方法。
  50. 少なくとも、対向する一対の基板と、前記一対の基板のうち少なくとも表示電極を有する基板の表面に形成された液晶配向膜と、前記対向する一対の基板間に封入された液晶とを備える液晶表示装置の製造方法において、
    一種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、異なる濃度のものを基板に接触させる場合に、
    上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数でまたは同一の接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程と、
    上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程と、
    前記液晶配向膜付き基板と、少なくとも対向電極を有する対向基板とを、表示電極の形成された面を内側にして所定のセルギャップを設けて重ね合わせた後、基板の間に液晶を配置する液晶セル形成工程と、
    を少なくとも備える液晶表示装置の製造方法。
  51. 少なくとも、対向する一対の基板と、前記一対の基板のうち少なくとも表示電極を有する基板の表面に形成された液晶配向膜と、前記対向する一対の基板間に封入された液晶とを備える液晶表示装置の製造方法において、
    化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質が異なる種類のものを基板に接触させる場合に、上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子吸着密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程と、
    上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程と、
    前記液晶配向膜付き基板と、少なくとも対向電極を有する対向基板とを、表示電極の形成された面を内側にして所定のセルギャップを設けて重ね合わせた後、基板の間に液晶を配置する液晶セル形成工程と、
    を少なくとも備える液晶表示装置の製造方法。
  52. 少なくとも、対向する一対の基板と、前記一対の基板のうち少なくとも表示電極を有する基板の表面に形成された液晶配向膜と、前記対向する一対の基板間に封入された液晶とを備える液晶表示装置の製造方法において、
    化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、一種類の化学吸着物質からなるものと、複数種の化学吸着物質からなるものを基板に接触させる場合に、上記吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子吸着密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程と、
    上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程と、
    前記液晶配向膜付き基板と、少なくとも対向電極を有する対向基板とを、表示電極の形成された面を内側にして所定のセルギャップを設けて重ね合わせた後、基板の間に液晶を配置する液晶セル形成工程と、
    を少なくとも備える液晶表示装置の製造方法。
  53. 少なくとも、対向する一対の基板と、前記一対の基板のうち少なくとも表示電極を有する基板の表面に形成された液晶配向膜と、前記対向する一対の基板間に封入された液晶とを備える液晶表示装置の製造方法において、
    複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、同一濃度、同一種類、かつ同一の混合割合のものを基板に接触させる場合に、上記吸着溶液を、基板の異なる部位に接触回数を変えて接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程と、
    上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程と、
    前記液晶配向膜付き基板と、少なくとも対向電極を有する対向基板とを、表示電極の形成された面を内側にして所定のセルギャップを設けて重ね合わせた後、基板の間に液晶を配置する液晶セル形成工程と、
    を少なくとも備える液晶表示装置の製造方法。
  54. 少なくとも、対向する一対の基板と、前記一対の基板のうち少なくとも表示電極を有する基板の表面に形成された液晶配向膜と、前記対向する一対の基板間に封入された液晶とを備える液晶表示装置の製造方法において、
    複種類の化学吸着物質を溶解した吸着溶液であって、化学吸着物質の種類、濃度、混合割合の少なくとも一つが異なるものを基板に接触させる場合に、上記両吸着溶液を、基板の異なる部位に異なる接触回数で接触させ、化学吸着物質分子を基板面に化学吸着して、基板上の少なくとも隣接する領域では分子吸着密度が異なる薄膜を形成する薄膜形成工程と、
    上記基板上に形成された有機薄膜に紫外線を照射することにより、吸着分子に異方性を付与するとともに、上記感光性基が光反応して吸着分子相互を架橋させる架橋処理工程と、
    前記液晶配向膜付き基板と、少なくとも対向電極を有する対向基板とを、表示電極の形成された面を内側にして所定のセルギャップを設けて重ね合わせた後、基板の間に液晶を配置する液晶セル形成工程と、
    を少なくとも備える液晶表示装置の製造方法。
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