JP3568728B2 - 酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、自動車などの内燃機関から排出される排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOX )、一酸化炭素(CO)、および炭化水素(HC)などを浄化する触媒を効率良く作用させるために用いられる酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車などの内燃機関から排出される排気ガス中には、NOX 、CO、HCなどの有害物質が含まれており、地球環境保護の観点から、これらの有害物質の浄化についての規制が益々厳しくなってきている。また、一方では、燃料節約の観点から、自動車のアイドリング時や加速時を除く通常走行時においては、理論空燃比率の混合気状態(以下「ストイキ状態」という)よりも燃料希薄状態(以下「リーン状態」という)で内燃機関を作動させる制御が広く行われるようになってきている。したがって、ストイキ状態のみならず、このようなリーン状態においても上述した有害物質を効果的に浄化できる触媒の開発が強く望まれている。
【0003】
排気ガスから上記有害物質を浄化するために従来から最も広く用いられている触媒としては、プラチナ、パラジウム、ロジウムなどの貴金属を活性物質とした、いわゆる三元触媒がある。この三元触媒は、NOX からN2 への還元反応、あるいはCOからCO2 およびHCからCO2 、H2 Oへの酸化反応の触媒として作用するものである。すなわち、上記三元触媒は、酸化反応および還元反応の両反応の触媒として作用することができ、NOX リッチな雰囲気下では還元反応の触媒として作用し、CO、HCリッチな雰囲気下では酸化反応の触媒として作用するため、排気ガス中含まれるNOX 、CO、HCなどの有害物質を浄化できる触媒として重要視されている。
【0004】
そのため、上記三元触媒の活性の向上を図るべく様々な研究がなされており、たとえば酸化セリウム(CeO2 )が有する気相中の酸素を結晶中に吸蔵したり、結晶中から放出する機能、いわゆる酸素ストレージ能(OSC)に着目したものがある。すなわち、上記酸化セリウムを三元触媒中に添加することにより気相雰囲気の酸素濃度を調整するものであり、NOX リッチの状態では、気相雰囲気中における過剰の酸素を酸化セリウムの結晶中に吸蔵して上記三元触媒によるNOX の還元反応を促進する一方、COおよびHCリッチの状態では、気相雰囲気中に不足する酸素を結晶中から放出して上記三元触媒による酸化反応の効率の向上を図ろうとするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジン始動直後から触媒が早く暖まり機能できるように、触媒の搭載位置を車体床下からよりエンジンに近いマニフォールド位置に変える要求が高まっている。このように、排気ガス浄化用触媒をエンジン近くに搭載して使用する場合には、上記触媒が900℃以上の高温下にさらされるようになり、このような高温下では上記酸化セリウムが粒成長(シンタリング)して比表面積が減少してしまう。このように粒成長して比表面積が減少した酸化セリウムは、酸素ストレージ能が低下してしまうため、上記三元触媒の効率の向上が図れないといった不具合が生じる。
【0006】
そこで、酸化セリウムにジルコニウム、ランタンなどを添加して酸化セリウムの粒成長を抑制することが提案されている(特開昭61−262521号公報、特開昭61−262522号公報)が、酸化セリウム粒子上にジルコニウムが偏析して酸化セリウム本来の特性が失われるなど、高温下で十分に実用に耐えうるものではなかった。
【0007】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、高い酸素ストレージ能(OSC)を有するとともに、苛酷条件下、たとえば900℃以上の高温下における使用に対しても高い酸素ストレージ能を維持することができるセリウム系複合酸化物を提供することをその課題とする。
【0008】
【発明の開示】
上記の課題を解決するために、本願発明は、一般式
【化2】
で表され、
Mはアルカリ土類金属を示し、0.2≦x+y≦0.9、0.1≦x≦0.8、0.05≦y≦0.3であり、好ましくは、0.4≦x+y≦0.8、0.35≦x≦0.7、0.05≦y≦0.15であるセリウム系複合酸化物を提供する。
【0009】
すなわち、本願発明の最大の特徴は、セリウム、ジルコニウム、およびアルカリ土類金属によって複合酸化物を形成したことにある。また、上記セリウム系複合酸化物は、少なくとも一部が固溶体であることが好ましい。より具体的には、酸化セリウムの結晶中のセリウムの一部がジルコニウムおよびアルカリ土類金属で置換固溶されていることが好ましい。酸化セリウムの結晶中のセリウムをジルコニウムによって置換固溶することにより、ジルコニウムがセリウムの物質移動を阻止してセリウム系複合酸化物が粒成長(シンタリング)してしまうことを抑制できるからである。
【0010】
また、セリウム系複合酸化物においてxで表されるジルコニウムの原子割合は、上記のように0.1から0.8の範囲とする。ジルコニウムはセリウム酸化物中のカチオンの拡散を抑制し、高温でのセリウム酸化物の粒成長を防止するが、上記ジルコニウムの原子割合がこの範囲よりも小さい場合には、セリウム系複合酸化物の粒成長を十分に抑制することが困難であり、また、上記範囲よりも大きい場合には、セリウムそのものの原子割合が小さくなって酸素吸蔵量の低下をまねくからである。この場合、より良好な効果を得るためには、xを0.35から0.7の範囲とするのが好ましい。なお、このジルコニウム中には鉱石中通常1〜2wt%含まれているハフニウム(Hf)を含有していても構わない。
【0011】
さらに、酸化セリウムの結晶中のセリウムをアルカリ土類金属によって置換固溶させるのは、セリウム系複合酸化物の結晶構造が室温においてもホタル石型の格子構造で安定化させることができるからである。上記したようにセリウム系複合酸化物におけるアルカリ土類金属の原子割合はyで表されており、0.05から0.3の範囲とする。上記アルカリ土類金属の原子割合がこの範囲よりも小さい場合には、上記セリウム系複合酸化物がセリウムとジルコニウムのイオン半径の相違に起因してジルコニウムを含んだ酸化セリウムと、セリウムを含んだ酸化ジルコニウムとに2層分離して、均一なホタル石型の結晶構造を良好に維持することが困難となる。また、上述した範囲よりも大きい場合には、上記アルカリ土類金属が所望の複合酸化物以外の化合物を副生してしまったり、セリウムやジルコニウムの原子割合が相対的に小さくなりこれらの元素が有する機能が十分に発揮できないおそれがあるからである。この場合、より良好な効果を得るためには、yを0.05から0.15の範囲とするのが好ましい。
【0012】
なお、上記アルカリ土類金属としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられるが、CaおよびMgの少なくとも一方を用いるのが好適である。
【0013】
また、セリウム系複合酸化物におけるジルコニウムの原子割合xと、アルカリ土類金属の原子割合yとを加えたx+yの範囲としては、0.2から0.9の範囲が好適である。なお、1からx+yを減じた値がセリウム系複合酸化物におけるセリウムの原子割合である。したがって、セリウム系複合酸化物におけるセリウムの原子割合1−(x+y)としては、0.1から0.8の範囲となる。セリウム系複合酸化物が酸素ストレージ能(OSC)を有するのは、セリウムが酸化あるいは還元されて価数が変化するからであり、この事実を考慮すればセリウムの原子割合を余りに小さく設定すると酸化セリウムが本来有する酸素ストレージ能を十分に発揮させることができない。また、セリウムの原子割合が小さいということは、ジルコニウムあるいはアルカリ土類金属の原子割合が大きいということであるので、上述したように、酸素吸蔵量の低下をまねいたり、セリウム系複合酸化物が2層分離してしまったり、あるいは所望の複合酸化物以外の化合物を副生してしまうといった不具合が生じる。逆に、セリウムの原子割合が大きすぎる場合には、ジルコニウムあるいはアルカリ土類金属の原子割合が不当に小さくなってしまいジルコニウムあるいはアルカリ土類金属の有する本来の機能を十分に発揮することができない。したがって、セリウムの原子割合としては上記範囲が妥当であり、より好ましくは0.2から0.6とする。
【0014】
さらに、セリウム系複合酸化物は、貴金属、あるいは遷移金属を担持させて使用することが好ましい。セリウム系複合酸化物に担持された貴金属、あるいは遷移金属は、自動車排ガスの酸化、還元による浄化反応に優れた触媒作用を示すために、気相雰囲気の条件に応じて上記セリウム系複合酸化物の酸素の吸蔵、放出を補助する役割を果たす。すなわち、セリウム系複合酸化物に貴金属、あるいは遷移金属を担持させた場合には、気相雰囲気の条件に応じて上記セリウム系複合酸化物が所定量の酸素を吸蔵して平衡に達するまでの時間を短縮させることができる。
【0015】
なお、上記貴金属としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、プラチナ(Pt)、金(Au)が挙げられ、上記遷移金属としてはFe、Co、Ni、Cuからなる群のうちの少なくとも1つを選択することが好ましい。また、これらの貴金属、あるいは遷移金属をセリウム系複合酸化物に担持させる方法としては公知の方法が採用される。
【0016】
本願発明のセリウム系複合酸化物は、公知の方法、たとえばアルコキシド法、共沈法などにより所望の組成に調製することができる。
【0017】
すなわち、本願発明のセリウム系複合酸化物は、所定の組成となるようにセリウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属を含む混合アルコキシド溶液を調製して、この混合アルコキシド溶液に脱イオン水を加えて加水分解させて、この加水分解生成物を熱処理するか、あるいはセリウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属を含む塩の溶液を調製して、この溶液にアンモニア、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性水溶液、あるいはシュウ酸、クエン酸などの有機酸を加え、セリウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属を含む塩を共沈させた後、この共沈物を熱処理することにより調製することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本願発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0019】
【実施例1】
本実施例においては、組成がCe0.60Zr0.35Mg0.05O1.95/0.1wt%Ptのセリウム系複合酸化物を用いて、このセリウム系複合酸化物が有する初期の酸素ストレージ能と、高温下における酸化還元耐久試験(エージング)を行った後の酸素ストレージ能とを比較することにより、上記セリウム系複合酸化物の苛酷条件下での耐久性(変化率)を評価した。この結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物の組成において、『/0.1wt%Pt』と表現されている部分は、Pt(プラチナ)を含まないセリウム系複合酸化物の重量に対して0.1重量%に相当する重量のPtが担持されていることを表している。
【0020】
(セリウム系複合酸化物の調製)
上記組成のセリウム系複合酸化物は、いわゆるアルコキシド法により調製した。先ず、セリウムメトキシプロピレート59.6g(0.120mol)、ジルコニウムメトキシプロピレート31.3g(0.070mol)、マグネシウムメトキシプロピレート2.0g(0.010mol)を200mlのトルエンに溶解させ、混合アルコキシド溶液を作製した。そして、この混合アルコキシド中に脱イオン水80mlを滴下してアルコキシドの加水分解を行った。さらに、加水分解された溶液から溶剤およびH2 Oを留去・蒸発乾固して前駆体を作製し、この前駆体を60℃で24時間通風乾燥した後に、電気炉にて450℃で3時間熱処理してCe0.60Zr0.35Mg0.05O1.95の組成を有するセリウム系複合酸化物の粉末を得た。なお、このときの得られたセリウム系複合酸化物の収量は、29.2gであり、収率は98.5%であった。この酸化物の粉末20.0gに脱イオン水100mlを加えてスラリー状とし、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)0.438gを加えて均一に混合した後にH2 Oを留去・蒸発乾固した。このようにして得られた粉末を60℃で24時間通風乾燥した後に、電気炉にて450℃で3時間熱処理してCe0.60Zr0.35Mg0.05O1.95/0.1wt%Ptの組成を有するセリウム系複合酸化物を得た。なお、収量は、20.0g、収率は100%であり、比表面積は142m2/gであった。
【0021】
(初期の酸素ストレージ能の評価)
上記のようにして調製されたセリウム系複合酸化物の粉末を試料として約18mg採取し、50容積%酸素(残部は窒素)気流中、500℃で15分保持した後、さらに500℃にて20容積%(残部は窒素)と50容積%酸素(残部は窒素)を交互に流し、この酸化・還元を1サイクルとして3サイクル程度繰り返してセリウム系複合酸化物の酸素吸蔵・放出能(OSC)を測定した。このときの試料の重量を経時的に熱天秤によって測定してチャートに表した。そして、チャート波形が最も安定している酸化・還元サイクルをもとにして、酸化終了時の重量と還元終了時の重量との差を計算し、この値を上記試料が吸蔵あるいは放出可能な酸素重量として見積もった。さらに、上記酸素重量および上記試料の重量をもとにして1molのセリウム系複合酸化物が吸蔵あるいは放出可能な酸素のmol数を計算し、この値を酸素ストレージ能とした。
【0022】
(酸化還元耐久試験)
この酸化還元耐久試験(エージング)は、実際の自動車の排気ガスの変化状態を単純モデル化した雰囲気中にセリウム系複合酸化物をさらすことによりセリウム系複合酸化物の耐久性を評価するために行う試験である。具体的には、不活性ガス中に5分間(パージ)、酸化ガス中に10分間、不活性ガス中に5分間(パージ)、還元ガス中に10分間を1サイクルとして4サイクルの合計2時間、試料(初期安定化済み)をさらした。上記不活性ガスは8容積%のCO2 を含み残りがN2 であり、上記酸化ガスは1容積%のO2 および8容積%のCO2 を含み残りがN2 であり、上記還元ガスは1.5容積%のCO、0.5容積%のH2 および8容積%のCO2 を含み残りがN2 である。なお、上記した何れの組成のガスにも、ガス総量の10容積%に相当する量の水分(水蒸気)を加えた。また、上記した何れの組成のガスも温度を1000℃に設定した。
【0023】
(耐久試験後の酸素ストレージ能の評価)
上記した酸化還元試験後の試料を初期の酸素ストレージ能の評価と同様に500℃における酸化・還元を繰り返し、熱天秤によって測定された重量の経時変化を示す波形が安定した酸化・還元サイクルの酸化終了時の重量と還元終了時の重量との差を計算した。さらに、この値をもとにして初期の酸素ストレージ能の評価と同様の手法によって耐久試験後の酸素ストレージ能を評価した。
【0024】
(変化率の評価)
表1における変化率は、以下の式によって計算される。
【0025】
【数1】
【0026】
すなわち、変化率とは初期の酸素ストレージ能に対する耐久試験後の上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の劣化率を表す指標である。
【0027】
【実施例2】
セリウム系複合酸化物としてCe0.60Zr0.30Mg0.10O1.90/0.1wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果も表1に示した。
【0028】
(セリウム系複合酸化物の調製)
上記組成のセリウム系複合酸化物も、アルコキシド法により調製した。先ず、セリウムブトキシド51.9g(0.120mol)、ジルコニウムブトキシド23.0g(0.060mol)、マグネシウムエトキシエチレート4.1g(0.020mol)を200mlのトルエンに溶解させ、混合アルコキシド溶液を作製した。そして、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)0.632gを脱イオン水80mlに溶かした溶液を用意し、この溶液を先の混合アルコキシド中に滴下してアルコキシドの加水分解を行った。次いで、加水分解された溶液から溶剤およびH2 Oを留去・蒸発乾固して前駆体を作製し、この前駆体を60℃で24時間通風乾燥した後に、電気炉にて450℃で3時間熱処理してCe0.60Zr0.30Mg0.10O1.90/0.1wt%Ptの組成を有するセリウム系複合酸化物の粉末を得た。なお、こときの得られたセリウム系複合酸化物の収量は、28.6g、収率は99.0%であり、比表面積は131m2/gであった。
【0029】
【実施例3】
セリウム系複合酸化物としてCe0.60Zr0.30Mg0.10O1.90/2.0wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例2と同様の方法によって調製した。ただし、実施例2とは異なったプラチナ担持量となるようにCe0.60Zr0.30Mg0.10O1.90粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0030】
【実施例4】
セリウム系複合酸化物としてCe0.60Zr0.30Mg0.10O1.90 /0.02wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例2と同様の方法によって調製した。ただし、実施例2および3とは異なったプラチナ担持量となるようにCe0.60Zr0.30Mg0.10O1.90粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0031】
【実施例5】
セリウム系複合酸化物としてCe0.60Zr0.30Mg0.10O1.90/0.002wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例2と同様の方法によって調製した。ただし、実施例2〜4とは異なったプラチナ担持量となるようにCe0.60Zr0.30Mg0.10O1.90粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0032】
【実施例6】
セリウム系複合酸化物としてCe0.80Zr0.15Mg0.05O1.95/0.2wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例1と同様の方法によって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウム、ジルコニウムおよびマグネシウムが所定の組成比で複合酸化物を形成するように実施例2とは異なった比率でセリウムメトキシプロピレート、ジルコニウムメトキシプロピレート、マグネシウムメトキシプロピレートを混合してトルエンに溶解させて混合アルコキシド溶液を作製し、また、所定量のプラチナが担持されるようにCe0.80Zr0.15Mg0.05O1.95粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0033】
【実施例7】
セリウム系複合酸化物としてCe0.40Zr0.45Mg0.15O1.95/0.5wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例1と同様の方法によって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウム、ジルコニウムおよびマグネシウムが所定の組成比で複合酸化物を形成するように実施例2とは異なった比率でセリウムメトキシプロピレート、ジルコニウムメトキシプロピレート、マグネシウムメトキシプロピレートを混合してトルエンに溶解させて混合アルコキシド溶液を作製し、また、所定量のプラチナが担持されるようにCe0.40Zr0.45Mg0.15O1.95粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0034】
【実施例8】
セリウム系複合酸化物としてCe0.50Zr0.375 Mg0.125 O1.875/1.0 wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例1と同様の方法によって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウム、ジルコニウムおよびマグネシウムが所定の組成比で複合酸化物を形成するように実施例1とは異なった比率でセリウムメトキシプロピレート、ジルコニウムメトキシプロピレート、マグネシウムメトキシプロピレートを混合してトルエンに溶解させて混合アルコキシド溶液を作製し、また、所定量のプラチナが担持されるようにCe0.50Zr0.375 Mg0.125 O1.875 粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0035】
【実施例9】
セリウム系複合酸化物としてCe0.20Zr0.60Mg0.20O1.80 /0.02wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例1と同様の方法によって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウム、ジルコニウムおよびマグネシウムが所定の組成比で複合酸化物を形成するように実施例1とは異なった比率でセリウムメトキシプロピレート、ジルコニウムメトキシプロピレート、マグネシウムメトキシプロピレートを混合してトルエンに溶解させて混合アルコキシド溶液を作製し、また、所定量のプラチナが担持されるようにCe0.20Zr0.60Mg0.20O1.80粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0036】
【実施例10】
セリウム系複合酸化物としてCe0.10Zr0.80Mg0.10O1.90/0.2wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例2と同様の方法によって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウム、ジルコニウムおよびマグネシウムが所定の組成比で複合酸化物を形成するように実施例1とは異なった比率でセリウムメトキシプロピレート、ジルコニウムメトキシプロピレート、マグネシウムメトキシプロピレートを混合してトルエンに溶解させて混合アルコキシド溶液を作製し、また、所定量のプラチナが担持されるようにCe0.10Zr0.80Mg0.10O1.90粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0037】
【実施例11】
セリウム系複合酸化物としてCe0.10Zr0.60Mg0.30O1.70 /0.05wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例2と同様の方法をよって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウム、ジルコニウムおよびマグネシウムが所定の組成比で複合酸化物を形成するように実施例1とは異なった比率でセリウムメトキシプロピレート、ジルコニウムメトキシプロピレート、マグネシウムメトキシプロピレートを混合してトルエンに溶解させて混合アルコキシド溶液を作製し、また、所定量のプラチナが担持されるようにCe0.10Zr0.60Mg0.30O1.70粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0038】
【実施例12】
セリウム系複合酸化物としてCe0.60Zr0.35Mg0.05O1.95(Ptの担持なし)の組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。
【0039】
【実施例13】
セリウム系複合酸化物としてCe0.60Zr0.30Ca0.10O1.90/0.1wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。
【0040】
(セリウム系複合酸化物の調製)
上記組成のセリウム系複合酸化物は、いわゆる共沈法により調製した。先ず、硝酸セリウム6水塩41.7g(0.096mol)、オキシ塩化ジルコニウム8水塩15.5g(0.048mol)、塩化カルシウム4水塩2.9g(0.016mol)を200mlの脱イオン水に溶解させた。この溶液の中に10%アンモニア水85g(NH3 として0.5mol)を徐々に滴下して白色沈殿を生成させた。この沈殿をろ過して取り出し、さらに水洗いして副生する無機塩を除去した後に、脱イオン水200mlを加えスラリー状とした。次いで、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)0.511gを加えて均一に混合した後H2 Oを留去・蒸発乾固して前駆体を作製した。この前駆体を60℃で24時間通風乾燥した後に、電気炉にて450℃で3時間熱処理してCe0.60Zr0.30Ca0.10O1.90/0.1wt%Ptの組成を有するセリウム系複合酸化物の粉末を得た。なお、こときの得られたセリウム系複合酸化物の収量は、23.1g、収率は98.8%であり、比表面積は114mm2/gであった。
【0041】
【実施例14】
セリウム系複合酸化物としてCe0.50Zr0.375 Ca0.125 O1.875/0.1 wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例8と同様の方法(共沈法)によって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウム、ジルコニウムおよびカルシウムが所定の組成比で複合酸化物を形成するように実施例8とは異なった比率で硝酸セリウム6水塩、オキシ塩化ジルコニウム8水塩、および塩化カルシウム4水塩を脱イオン水に溶解させて溶液を作製した。また、所定量のプラチナが担持されるように共沈物を調製して作製されたスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0042】
【実施例15】
セリウム系複合酸化物としてCe0.40Zr0.50Ca0.10O1.90/0.5wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例8と同様の方法(共沈法)によって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウム、ジルコニウムおよびカルシウムが所定の組成比で複合酸化物を形成するように実施例8とは異なった比率で硝酸セリウム6水塩、オキシ塩化ジルコニウム8水塩、および塩化カルシウム4水塩を脱イオン水に溶解させて溶液を作製した。また、所定量のプラチナが担持されるように共沈物を調製して作製されたスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0043】
【実施例16】
セリウム系複合酸化物としてCe0.20Zr0.65Ca0.15O1.85 /0.05wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例8と同様の方法(共沈法)によって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウム、ジルコニウムおよびカルシウムが所定の組成比で複合酸化物を形成するように実施例8とは異なった比率で硝酸セリウム6水塩、オキシ塩化ジルコニウム8水塩、および塩化カルシウム4水塩を脱イオン水に溶解させて溶液を作製した。また、所定量のプラチナが担持されるように共沈物を調製して作製されたスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0044】
【実施例17】
セリウム系複合酸化物としてCe0.65Zr0.30Sr0.05O1.95 /0.1 wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。
【0045】
【比較例1】
セリウム系酸化物としてCeO2 /0.1wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、このセリウム系酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例1と同様の方法をよって調製した。ただし、本比較例で用いる酸化物には、ジルコニウムおよびマグネシウムが含まれていないので、混合アルコキシド溶液ではなくセリウムアルコキシド溶液を作製し、また、所定量のプラチナが担持されるようにCeO2 粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0046】
【比較例2】
セリウム系複合酸化物としてCe0.60Zr0.4 O2 /0.1wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、実施例1と同様の方法によって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウムおよびジルコニウムが所定の量論比で複合酸化物を形成するように混合アルコキシド溶液を作製し、また、所定量のプラチナが担持されるようにCe0.6 Zr0.4 O2 粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0047】
【比較例3】
セリウム系複合酸化物としてCe0.80Zr0.2 O2 /0.1wt%Ptの組成を有するものを用いた点を除き、実施例1と同様の操作を行い、セリウム系複合酸化物が有する初期、耐久試験後の酸素ストレージ能の評価、および耐久試験の前後における上記セリウム系複合酸化物の酸素ストレージ能の変化率(劣化率)の評価を行った。このときの結果を表1に示した。なお、上記セリウム系複合酸化物は、比較例2と同様の方法によって調製した。ただし、複合酸化物の状態においてセリウムおよびジルコニウムが所定の量論比で複合酸化物を形成するように混合アルコキシド溶液を作製し、また、所定量のプラチナが担持されるようにCe0.8 Zr0.2 O2 粉末を含むスラリーに混合するジニトロジアンミン白金硝酸溶液(白金含有量は4.569wt%)の重量を調整した。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
表1から明らかなように、比較例1〜3で用いたセリウム系酸化物に比べて実施例1〜17で用いたセリウム系複合酸化物の方が格段に変化率が小さい。すなわち、本願発明のセリウム系複合酸化物、言い換えればジルコニウム酸化物とアルカリ土類金属の酸化物を複合しているセリウム系複合酸化物は、高温下において酸化還元が繰り返された場合であっても良好に酸素ストレージ能を維持していることが分かる。
【0050】
特に、実施例1〜5ならびに8の組成を有するセリウム系複合酸化物は、初期の酸素ストレージ能、耐久後の酸素ストレージ能、および耐久性のいずれの点においても優れていることがわかる。
【0051】
したがって、本願発明のセリウム系複合酸化物は、1000℃の高温下で酸化還元が繰り返された場合であっても、酸素ストレージ能を良好に維持することができるので、高温状態で気相雰囲気のガス組成が変動する自動車の排気ガスを浄化する触媒の効率化のために好適に使用することができる。
Claims (7)
- 上記一般式において、0.4≦x+y≦0.8、0.35≦x≦0.7、0.05≦y≦0.15である、請求項1に記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物。
- 少なくとも一部が固溶体である、請求項1または2に記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物。
- 上記アルカリ土類金属が、CaおよびMgの少なくとも一方である、請求項1ないし3のいずれかに記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物。
- 上記貴金属がPtである、請求項1ないし4のいずれかに記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物。
- さらに、遷移金属が担持されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物。
- 上記遷移金属は、Fe、Co、Ni、Cuからなる群のうちの少なくとも1つである、請求項6に記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物。
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