JP3556839B2 - 酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物 - Google Patents

酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気ガス雰囲気中の酸素濃度を調整する酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物に関する。より具体的には、排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、および炭化水素類(HC)などの有害物質を浄化する触媒を効率良く作用させるために用いられる酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
排気ガスから上記有害物質を浄化するために従来から最も広く用いられている排気ガス浄化用触媒としては、プラチナ、パラジウム、ロジウムなどの貴金属を活性物質としたものがある。この種の触媒は、NOに対しては主としてNOからNへの還元反応の触媒として作用し、COあるいはHCに対しては主としてCOからCOおよびHCからCO、HOへの酸化反応の触媒として作用する。
【0003】
近年においては、上記排気ガス浄化用触媒の機能を向上させるべく様々な研究がなされており、その1つとして酸化セリウム(CeO)が有する酸素ストレージ能(以下「OSC能」という)に着目したものがある。これは、酸化セリウムや酸化セリウムと酸化ジルコニウム(ZrO)などとの複合酸化物(セリウム系複合酸化物)を上記排気ガス浄化触媒と共存させ、酸化セリウムによって排気ガス雰囲気中の酸素濃度を調整しようとするものである。すなわち、酸素が相対的に多い雰囲気では、酸化セリウムの結晶内に雰囲気中の過剰な酸素を吸蔵させて上記排気ガス浄化用触媒によるNOの還元反応を促進する一方、COあるいはHCが相対的に多い雰囲気では、雰囲気中に不足する酸素を酸化セリウムの結晶から放出させて酸化反応を促進しようとするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、酸化セリウムは、能力の限界にまで酸素を吸蔵した場合には、還元雰囲気において一定量の酸素を放出して酸素を吸蔵できる状態とされない限りは酸化雰囲気でも酸素を吸蔵することができない。逆に、能力の限界まで酸素を放出した場合には、酸化雰囲気において一定量の酸素を吸蔵して酸素を放出できる状態とされない限りは還元雰囲気においても酸素を放出することができない。したがって、酸化セリウムは、酸化雰囲気と還元雰囲気が繰り返される環境下、言い換えればエンジンに供給される混合気がストイキ状態の近傍に制御され、リッチ状態とリーン状態とが繰り返される環境下においては良好に酸素ストレージ能を発揮することができる。一方、エンジンに供給される混合気がストイキ状態から比較的大きくに外れた状態に制御された場合には、酸化セリウムは混合気を燃焼させた場合に排出される排気ガスに対しては良好にOSC能を発揮することができない。このように、上記排気ガス浄化用触媒がNO、COおよびHCの3成分ともに良好に浄化できるのは、エンジンに供給される混合気の空燃比の範囲がストイキ状態の近傍のごく限られた範囲であり、この範囲(ウインドウ)は非常に狭い。このようなことから、排気ガス中の酸素濃度をOセンサで監視し、この結果を燃料系にフィードバックをかけてエンジンに供給される混合気の空燃比率を上記したウインドウ内に制御することが一般的に行われている。
【0005】
しかしながら、Oセンサが劣化した場合などには、エンジンに供給される混合気の空燃比率を上記したウインドウに制御できなくなり、たとえばストイキ状態よりもリーン状態側に制御中心がずれてしまうことがある。このとき、リーン側において空燃比率が変動するような制御(最も燃料比率が高くともストイキ状態)が行われることがあり、この場合には燃焼ガスは常に酸化雰囲気となる。このため、酸化セリウムは、酸素を吸蔵し続けることとなるが、能力の最大限にまで酸素を吸蔵した場合には、酸素を吸蔵できなくなってしまう。このように、エンジンに供給される混合気がリーン側に制御された場合には、酸化セリウムのOSC能を十分に発揮させることができず、また上記排気ガス浄化用触媒によって排気ガスを十分に浄化することができないといった不具合が生じる。
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、エンジンに供給される混合気がリーン側に制御された場合であっても、良好にOSC能を発揮することができるセリウム系複合酸化物を提供することをその課題とする。
【0007】
【発明の開示】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
すなわち、本発明では、一般式
【化2】
Figure 0003556839
で表され、RはPr(プラセオジウム)またはTb(テルビウム)であり、0.5≦x≦0.8、0≦y≦0.40.5≦x+y≦0.9であることを特徴とする、酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物が提供される。このように、本発明では、酸化セリウム、および酸化プラセオジウムまたは酸化テルビウムによって複合酸化物が形成されており、好ましくは酸化ジルコニウムが含まされる。なお、上記一般式において、『Oxide』と表記しているのは、後述するようにセリウムやプラセオジウムまたはテルビウムの価数が雰囲気条件によって変化するため、酸素の割合を一義的に表記することができないからである。
【0009】
上記したように、酸化セリウムは雰囲気状態に応じて酸素を吸蔵し、あるいは放出する。すなわち、リーン状態の混合気を燃焼させた場合に排出される排気ガスは酸化雰囲気であるので、酸化セリウムが結晶内に酸素を取り込んで吸蔵する。一方、リッチ状態の混合気が燃焼された場合に排出される排気ガス雰囲気は還元雰囲気であるので、酸化セリウムは結晶内から酸素を放出する。言い換えれば、酸化セリウムが酸素を吸蔵する状態であるか、あるいは放出する状態であるかは、燃焼される混合気状態に略対応している。すなわち、ストイキ状態を境界とし、燃焼される混合気がストイキ状態の混合気よりも燃料が希薄であれば酸化セリウムは酸素を吸蔵する状態であり、燃料がリッチであれば酸素を放出する状態であるといえる。
【0010】
ところで、セリウム原子は、価数が変化する原子であり、酸化セリウムが酸素を吸蔵する状態であるか、あるいは放出する状態であるかはセリウム原子の価数によって決定される。同様に、プラセオジウムやテルビウムも雰囲気条件に応じて価数が変化する原子である。このため、酸化プラセオジウムや酸化テルビウムもプラセオジウムやテルビウムの価数が変化することによって酸素を吸蔵したり、放出したりすることができる。すなわち、プラセオジウムやテルビウムの酸化物もOSC能を有している。ところが、酸化プラセオジウムや酸化テルビウムがOSC能を発揮できる雰囲気は、酸化セリウムがOSC能を発揮できる雰囲気とは異なることが本発明者らによって確認されている。
【0011】
上述したように、酸化セリウムは、略ストイキ状態の混合気が燃焼された場合に排出される排気ガス雰囲気において良好にOSC能を発揮することができる。一方、酸化プラセオジウムや酸化テルビウムは、ストイキ状態よりもリーン状態側を境界として、この境界の前後のA/F値を有する混合気が燃焼された場合に排出される排気ガス雰囲気において良好にOSC能を発揮することができる。すなわち、酸素を吸蔵する状態であるか、あるいは放出する状態であるかといった雰囲気状態の境界が、酸化プラセオジウムや酸化テルビウムでは混合気状態でみればストイキ状態よりもリーン状態側にある。このため、酸化プラセオジウムや酸化テルビウムは、酸化セリウムでは酸素と放出することができなかった雰囲気、すなわちストイキ状態やこれよりも若干リーン状態の混合気の燃焼ガス雰囲気においても酸素を放出することができる。つまり、酸化セリウムのように酸化雰囲気と還元雰囲気が繰り返されずとも、酸化雰囲気と不活性雰囲気が繰り返される環境下においても、酸化プラセオジウムや酸化テルビウムは酸素の吸蔵および放出を繰り返し行うことができる。
【0012】
本発明のセリウム系複合酸化物には、酸化セリウムが含まれていることから、従来のセリウム系複合酸化物と同様に略ストイキ状態の混合気が燃焼された場合に排出される排気ガス雰囲気において酸化セリウムにOSC能を発揮させることができる。しかも、従来のセリウム系複合酸化物では十分にOSC能を発揮させることができなかったリーン側に制御された混合気を燃焼させた場合に排気ガス雰囲気においても、酸化プラセオジウムや酸化テルビウムによって良好にOSC能を発揮することができる。したがって、本発明のセリウム系複合酸化物のように酸化プラセオジウムや酸化テルビウムを含んでいれば、Oセンサなどの劣化によってエンジンに供給される混合気の空燃比率が上記したウインドウに制御できなくなり、たとえばストイキ状態よりもリーン状態側に制御中心がずれてしまったとしても、酸化プラセオジウムまたは酸化テルビウムが有するOSC能によって対応することができる。
【0013】
ここで、セリウムの原子割合1−(x+y)は0.1≦1−(x+y)≦0.5とされ、プラセオジウム(Pr)またはテルビウム(Tb)の原子割合xは0.5≦x≦0.8とされている。これは、セリウムの原子割合があまりに大きい場合、あるいは小さい場合には、セリウム系複合酸化物の高温耐久性が低下してしまい、高温耐久後に十分なOSC能を発揮できないからである。この場合、より良好な効果を得るためにはセリウムの原子割合は0.2≦1−(x+y)≦0.3とされ、プラセオジウム(Pr)またはテルビウム(Tb)の原子割合は、0.5≦x≦0.6とされる。
【0014】
上述したように、本発明では、プラセオジウムまたはテルビウムが複合され、より好ましくは酸化セリウムの結晶中のセリウム原子の一部が、プラセオジウムまたはテルビウムによって置換固溶される。もちろん、セリウム原子の一部をジルコニウムによって置換固溶してもよい。ここで、ジルコニウムの原子割合yは0≦y≦0.4とされ、より好ましくは0.2≦y≦0.3とされる。なお、ジルコニウム中には、鉱石中において通常含まれている1〜2重量%のハフミウムを含有していても構わず、この場合にはハフミウムをジルコニウム成分と考えて原子割合が決定される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態においては、触媒としての貴金属をさらに担持させてセリウム系複合酸化物とされる。この場合に担持される貴金属としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、および金(Au)からなる群より選ばれる少なくとも1つが用いられる。好ましくは、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)からなる群より少なくとも1つが選ばれる。
【0016】
本発明のセリウム系複合酸化物は、公知の方法、たとえばアルコキシド法や共沈法などにより所望の組成に調整することができる。
【0017】
すなわち、たとえばアルコキシド法では、所定の化学量論比となるようにセリウムのアルコキシド溶液、およびプラセオジウムまたはテルビウムのアルコキシド溶液、場合によってはさらにジルコニウムのアルコキシド溶液を含む混合アルコキシド溶液を調整し、この混合アルコキシド溶液に脱イオン水を加えて加水分解させ、この加水分解生成物を熱処理することによって本発明のセリウム系複合酸化物が調整される。
【0018】
各成分のアルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどやこれらのエチレンオキサイド付加物などが用いられる。
【0019】
また、得られた加水分解生成物の熱処理は、加水分解生成物を濾過洗浄した後に、50〜200℃で1〜48時間程度乾燥させ、この乾燥物を350〜1000℃で1〜12時間程度焼成することによって行われる。
【0020】
一方、共沈法では、所定の化学量論比となるようにセリウム塩、およびプラセオジウム塩またはテルビウム塩、場合によってはさらにジルコニウム塩を含む溶液を調整し、この溶液にアルカリ性水溶液、あるいは有機酸を加えてセリウム、およびプラセオジウムまたはテルビウム、場合によってはさらにジルコニウムを含む塩を共沈させた後に、この共沈物を熱処理することによって本発明のセリウム系複合酸化物が調整される。
【0021】
セリウム、プラセオジウムまたはテルビウムの塩としては、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、あるいはリン酸塩などの無機塩の他、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機塩を用いることができる。また、ジルコニウム塩としては、ジルコニウムのオキシ酢酸塩、オキシ塩化物、オキシ硫酸塩などの無機塩の他、オキシ酢酸塩などの有機塩を用いることができる。
【0022】
アルカリ性水溶液としては、アンモニア、炭酸アンモニウムなどが用いられ、有機酸としては、シュウ酸、クエン酸などが用いられる。
【0023】
なお、得られた共沈物の熱処理は、上記した加水分解生成物の熱処理と同様にして行われる。
【0024】
また、貴金属を担持させる方法は、公知のいずれの方法であってもよく、たとえば貴金属を含む塩の溶液を調整し、この溶液を複合酸化物に含浸させた後に、この複合酸化物を熱処理することによって行われる。
【0025】
この場合に用いる塩の溶液としては、硝酸塩水溶液、ジニトロジアンミン硝酸塩水溶液、塩化物水溶液などが挙げられる。
【0026】
熱処理は、塩の溶液が含浸させられた複合酸化物を約50℃〜200℃で約1時間〜48時間乾燥した後に、さらに約350℃〜1000℃で約1時間〜12時間焼成することによって行われる。
【0027】
貴金属を担持させる方法としては、次の方法を採用することもできる。すなわち、セリウム塩、およびプラセオジウム塩またはテルビウム塩、場合によってはさらにジルコニウム塩とともに貴金属塩を含む溶液を調整し、この溶液を加水分解した後に、熱処理することによって貴金属を担持させてもよい。また、上記した共沈法において、貴金属のアルコキシドを含む混合アルコキシド溶液を調整し、各成分を含む塩を共沈させた後に、この共沈物を熱処理することによって貴金属を担持させてもよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に、本願発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0029】
【実施例1】
本実施例においては、組成がCe0.3 Pr0.5 Zr0.2 xideに調整されたセリウム系複合酸化物について、まず酸化還元耐久試験を行った。そして、耐久試験後のセリウム系複合酸化物について、不活性雰囲気および還元雰囲気での酸素ストレージ能(OSC能)をそれぞれ評価した。還元雰囲気での評価結果を図1に、不活性雰囲気での評価結果を図2にそれぞれ示した。
【0030】
(セリウム系複合酸化物の調整)
上記組成のセリウム系複合酸化物は、いわゆるアルコキシド法によって調整した。まず、セリウムブトキシド22.2g(0.0513mol)、プラセオジウムブトキシド37.0g(0.0855mol)、およびジルコニウムブトキシド13.1g(0.0342mol)をトルエン200mlに溶解させ、混合アルコキシド溶液を調整した。そして、この混合アルコキシド溶液を脱イオン水600ml中に約10分間かけて滴下し、混合アルコキシドの加水分解を行った。さらに、加水分解された溶液からトルエンおよびHOを留去・蒸発乾固して前駆体を作製し、この前駆体を60℃で24時間通風乾燥した後に、電子炉にて450℃で3時間熱処理してCe0.3 Pr0.5 Zr0.2 xideの組成を有するセリウム系複合酸化物を得た。
【0031】
(酸化還元耐久試験)
不活性雰囲気5分、酸化雰囲気10分、不活性雰囲気5分、および還元雰囲気10分の計30分を1サイクルとし、このサイクルを20サイクル、合計10時間繰り返してセリウム系複合酸化物を酸化雰囲気中と還元雰囲気中とに交互にさらした。不活性雰囲気、酸化雰囲気、および還元雰囲気は、ストイキ状態、リーン状態およびリッチ状態の混合気を燃焼させた場合に排出される排気ガス雰囲気にそれぞれ相当するものである。なお、各雰囲気は、高温水蒸気を含む表1に示した組成のガスを300dm/hrの流量で供給することによって達成され、また雰囲気温度は高温水蒸気によって略1000℃に維持されている。
【0032】
(還元雰囲気での酸素放出能の評価)
まず、酸素を含む酸化雰囲気に耐久試験後のセリウム系複合酸化物を40分間さらして酸素を吸蔵させ、その重量を測定した。その後、酸素を吸蔵したセリウム系複合酸化物を3分間不活性雰囲気にさらした後に、水素を含む還元雰囲気に7分間さらし、その重量を測定した。上記したように、酸化雰囲気および還元雰囲気は、リーン状態およびリッチ状態の混合気を燃焼した場合に排出される排気ガス雰囲気にそれぞれ相当するものである。したがって、酸化雰囲気にさらした後のセリウム系複合酸化物の重量から還元雰囲気にさらした後の重量を差し引くことによって還元雰囲気、すなわちリッチ状態の混合気を燃焼した排気ガス雰囲気においてセリウム系複合酸化物が酸素を放出する能力を評価した。なお、酸素放出量は、セリウム系複合酸化物1mol当たりに換算して評価した。また、各雰囲気は、表2に示した組成のガスを3dm/hrの流量で供給することによって達成され、雰囲気温度は500℃に維持されている。
【0033】
(不活性処理後の酸素雰囲気での酸素吸蔵両の評価)
まず、酸素を含む酸化雰囲気に耐久試験後のセリウム系複合酸化物を40分間さらして酸素を吸蔵させた。その後、酸素を吸蔵したセリウム系複合酸化物を3分間不活性雰囲気にさらし、その重量を測定した。さらに、酸素を含む酸化雰囲気に40分間さらし、その重量を測定した。上記したように、酸化雰囲気および不活性雰囲気は、リーン状態およびストイキ状態の混合気を燃焼した場合に排出される排気ガス雰囲気にそれぞれ相当するものである。したがって、最後に酸化雰囲気にさらした後のセリウム系複合酸化物の重量から不活性雰囲気にさらした後の重量を差し引くことによって不活性雰囲気、すなわちストイキ状態の混合気を燃焼した排気ガス雰囲気においてセリウム系複合酸化物が酸素を放出する能力を評価した。なお、酸素放出量は、セリウム系複合酸化物1mol当たりに換算して評価した。また、各雰囲気は、表2に示した組成のガスを3dm/hrの流量で供給することによって達成され、雰囲気温度は500℃に維持されている。
【0034】
【実施例2】
本実施例においては、セリウム系複合酸化物の組成をCe0.3 Pr0.2 Zr0.5 xideに調整した以外は実施例1と同様である。その結果を図1および図2になお、セリウムブトキシド、プラセオジウムブトキシド、およびジルコニウムブトキシドをそれぞれ22.2g(0.0513mol)、14.8g(0.0342mol)および32.8g(0.0855mol)として混合アルコキシドを調整し、この混合アルコキシド溶液からセリウム系複合酸化物を調整した。
【0035】
【実施例3】
本実施例においては、セリウム系複合酸化物の組成をCe0.6 Tb0.2 Zr0.2 xideに調整した以外は実施例1と同様である。その結果を図1および図2にそれぞれ示した。なお、セリウム系複合酸化物を調整するに際して、セリウムメトキシプロピレート、テルビウムメトキシプロピレート、およびジルコニウムメトキシプロピレートをそれぞれ51.0(0.1026mol)g、17.6g(0.0342mol)および15.3g(0.0342mol)として混合アルコキシド溶液を作製した。
【0036】
【実施例4】
本実施例においては、セリウム系複合酸化物の組成をCe0.2 Tb0.6 Zr0.2 xideに調整した以外は実施例1と同様である。その結果を図1および図2にそれぞれ示した。
【0037】
【実施例5】
本実施例においては、組成がCe0.8 Pr0.2 xideのセリウム系複合酸化物を調整し、このセリウム系複合酸化物について実施例1と同様の酸化還元耐久試験を行った。そして、実施例1と同様に耐久試験後のセリウム系複合酸化物について不活性雰囲気および還元雰囲気での酸素ストレージ能(OSC能)をそれぞれ評価した。還元雰囲気での評価結果を図3に、不活性雰囲気での評価結果を図4にそれぞれ示した。なお、セリウム系複合酸化物を調整するに際して、セリウムブトキシドおよびプラセオジウムブトキシドをそれぞれ59.2g(0.1368mol)および13.1g(0.0342mol)として混合アルコキシド溶液を作製した。また、本実施例では、不活性雰囲気5分、酸化雰囲気10分、不活性雰囲気5分、および還元雰囲気10分の計30分を1サイクルとし、このサイクルを10サイクル、合計5時間繰り返して酸化還元耐久試験とした。
【0038】
【実施例6】
本実施例においては、セリウム系複合酸化物の組成をCe0.5 Pr0.5 xideに調整した以外は実施例5と同様である。その結果を図3および図4に示す。
【0039】
【実施例7】
本実施例においては、セリウム系複合酸化物の組成をCe0.8 Tb0.2 xideに調整した以外は実施例5と同様である。その結果を図3および図4に示す。なお、セリウム系複合酸化物を調整するに際して、セリウムブトキシドおよびテルビウムブトキシドをそれぞれ59.2g(0.1368mol)および15.4g(0.0342mol)として混合アルコキシド溶液を作製した。
【0040】
【実施例8】
本実施例においては、セリウム系複合酸化物の組成をCe0.5 Tb0.5 xideに調整した以外は実施例5と同様である。その結果を図3および図4に示す。
【0041】
【比較例1】
本比較例においては、セリウム系複合酸化物の組成をCe0.8 Zr0.2 xideに調整した以外は実施例1と同様である。その結果を図1および図2に示す。なお、セリウムブトキシドおよびジルコニウムブトキシドをそれぞれ59.2g(0.1368mol)および13.1g(0.0342mol)として混合アルコキシドを調整し、この混合アルコキシド溶液からセリウム系複合酸化物を調整した。
【0042】
【比較例2】
本比較例においては、セリウム系複合酸化物の組成をCe0.5 Zr0.5 xideに調整した以外は実施例1と同様である。その結果を図1および図2に示す。
【0043】
【比較例3】
本実施例においては、セリウム系複合酸化物の組成をCe0.6 Zr0.4 xideに調整した以外は実施例5と同様である。その結果を図3および図4に示す。
【0044】
【比較例4】
本比較例においては、セリウム系複合酸化物の組成をCe0.6 Yb0.1 Zr0.3 xideに調整した以外は実施例5と同様である。その結果を図3および図4に示す。なお、セリウム系複合酸化物を調整するに際して、セリウムブトキシド、イッテルビウムブトキシド、およびジルコニウムブトキシドをそれぞれ44.4g(0.1026mol)、8.0g(0.0171mol)および19.7g(0.0513mol)として混合アルコキシド溶液を作製した。
【0045】
【表1】
Figure 0003556839
【0046】
【表2】
Figure 0003556839
【0047】
【発明の効果】
図1および図3から明らかなように、プラセオジウムまたはテルビウムを含み、さらにセリウムを含む二元系とされた実施例5〜8のセリウム系複合酸化物、およびジルコニウムをさらに含む三元系とされた実施例1〜4のセリウム系複合酸化物は、プラセオジウムやテルビウムを含まないセリウムとジルコニウムの二元系とされた比較例1〜3のセリウム系複合酸化物や、イッテルビウムをさらに含む三元系とされた比較例4のセリウム系複合酸化物よりも還元雰囲気における酸素放出量、すなわちストレージ能が高い。このことは、本発明のセリウム系複合酸化物は、リッチ状態の混合気を燃焼させた場合に排出される排気ガス雰囲気(還元雰囲気)において良好な酸素ストレージ能を発揮することを意味している。すなわち、従来のセリウム系複合酸化物と同様に還元雰囲気で良好に酸素を放出でき、しかもその能力が高い。
【0048】
また、図2および図4から明らかなように、プラセオジウムまたはテルビウムを含む実施例1〜8のセリウム系複合酸化物は、酸素を吸蔵させて不活性雰囲気にさらした後に、さらに酸化雰囲気にさらした場合に酸素を吸蔵している。一方、プラセオジウムやテルビウムを含まない比較例1〜4のセリウム系複合酸化物は、同様な条件では酸素を吸蔵していない。このことは、本発明のセリウム系複合酸化物は、不活性雰囲気、すなわちストイキ状態の混合気を燃焼させた場合に排出される排気ガス雰囲気において酸素を放出することを意味している。つまり、プラセオジウムやテルビウムを含むセリウム系複合酸化物は、酸素を吸蔵するか、あるいは放出するかの境界が混合気の状態でみればリーン状態側にあり、エンジンに供給される混合気がリーン側に制御された場合であっても良好に酸素ストレージ能を発揮できる。
【0049】
したがって、本発明のセリウム系複合酸化物は、従来のセリウム系複合酸化物のようにストイキ状態の近傍A/F値を有する混合気ばかりなく、リーン状態の混合気の燃焼により排出される排気ガス雰囲気においても酸素ストレージ能を発揮し、貴金属触媒などを効率良く作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜4、および比較例1〜2のセリウム系複合酸化物を酸化雰囲気にさらした後の還元雰囲気での酸素放出量を表すグラフである。
【図2】実施例1〜4、および比較例1〜2のセリウム系複合酸化物を酸化雰囲気、次いで不活性雰囲気にさらした後の酸化雰囲気での酸素吸蔵量を表すグラフである。
【図3】実施例5〜8、および比較例3〜4のセリウム系複合酸化物を酸化雰囲気にさらした後の還元雰囲気での酸素放出量を表すグラフである。
【図4】実施例5〜8、および比較例3〜4のセリウム系複合酸化物を酸化雰囲気、次いで不活性雰囲気にさらした後の酸化雰囲気での酸素吸蔵量を表すグラフである。

Claims (4)

  1. 一般式
    Figure 0003556839
    で表され、RはPrまたはTbであり、0.5≦x≦0.8、0≦y≦0.40.5≦x+y≦0.9であることを特徴とする、酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物。
  2. 上記一般式において、0.5≦x≦0.6、0.2≦y≦0.30.7≦x+y≦0.8である、請求項1に記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物。
  3. 酸化セリウムの結晶中のセリウム原子の一部が、ジルコニウム、およびPrまたはTbによって置換固溶されている、請求項1または2に記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物。
  4. 貴金属がさらに担持されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物。
JP24367998A 1998-08-28 1998-08-28 酸素吸蔵性セリウム系複合酸化物 Expired - Fee Related JP3556839B2 (ja)

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