JP3568226B2 - アルキレンカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、アルキレンカーボネートの製造方法に関するものである。更に詳しくは、アルキレンオキサイドと二酸化炭素とを陰イオン交換樹脂の存在下に反応させ、アルキレンカーボネートを製造する方法に関する。
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートは有機溶剤、アクリル繊維加工剤、ヒドロキシルエチル化剤物質として工業的に極めて重要な物質である。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルキレンオキサイドと二酸化炭素の反応によりアルキレンカーボネートを製造する方法としては、均一系の触媒が主に知られている。しかしながら、均一系触媒を使用する場合には、反応混合物と触媒の分離が必要となり、工程が複雑となるばかりでなく分離操作中に触媒が分解したり、副生成物が生成するといった問題が生じる。
一方、固体触媒としては陰イオン交換樹脂を使用する方法が知られている。米国特許第2773070号明細書では触媒として4級アンモニウムハライドを使用することを開示しており、また、米国特許第2873282号明細書では、アニオンがOH−、CO3 2−、HCO3 −の中から選ばれた1つである4級アンモニウム塩を使用する事を開示している。また特開平3−120270では水分含量を0.5重量%以下に調節した4級アンモニウム塩を交換基として有する陰イオン交換樹脂を使用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記したようにアルキレンカーボネートの製造法としてアルキレンオキサイドと二酸化炭素との反応によりアルキレンカーボネートを製造する方法は極めて経済性の高い方法であるが、均一系触媒を用いれば触媒の分離等に問題があり、また不均一触媒においては活性が低かったり、反応系内の水分量を調節しなければならないために通常の工業的な製造法による化合物を原料として用いる場合に工業的実施にあたり非常に困難を伴う等の問題があった。本発明においては、これらの問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、通常の固体触媒よりも活性が高く、また反応系内の水分量が通常の工業的な製造法による化合物中の水分量以上に存在しても、極めて高活性な触媒を見出だし本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、アルキレンオキサイドと二炭化酸素との反応により、アルキレンカーボネートを製造する方法において、珪酸根を対アニオンとする、3級アミン官能基または4級アンモニウム官能基を有する陰イオン交換樹脂の少なくとも一種の存在下に反応させることを特徴とするアルキレンカーボネートの製造方法である。本発明を実施することで極めて高い効率でアルキレンカーボネートを製造することを可能にした。
【0005】
以下、本発明による、アルキレンカーボネートの製造方法について詳細に説明する。
本発明において原料として使用するアルキレンオキサイドとは、一般式(1)[化1]
【0006】
【化1】
(上式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一の基でも異なる基でもよく、水素または置換基を有するかもしくは無置換の炭素数15以下のアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基を表す。またここで言う置換基とはハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基等である。)で表されるアルキレンオキサイドである。
【0007】
具体的に例示すれば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド類等のアルキレンオキサイド類及びこれらの、置換基を有する環状オキサイド類、シクロヘキシレンオキサイド、置換基を有するシクロヘキシレンオキサイド類等の脂環式オキサイド、スチレンオキサイド、置換基を有するスチレンオキサイド類等のアリールアルキルオキサイド類等が挙げられるが、本発明においてはこれらのアルキレンオキサイドのみに限定されるものではなく、炭素原子2つと酸素原子1つで形成される3員環を構造式の中に少なくとも1つは含むもの、いわゆるエポキシ系化合物であればさしつかえない。本発明では、これらの1種以上を反応に供する。
従って、本発明において製造されるアルキレンカーボネートとは該アルキレンオキサイドから製造されるカーボネートであり一般式(2)[化2]
【0008】
【化2】
(上式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ同一の基でも異なる基でもよく、水素または置換基を有するかもしくは無置換の炭素数15以下のアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基を表す。またここで言う置換基とはハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基等である。)で表されるカーボネートである。
【0009】
具体的にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、クロロメチルエチレンカーボネート、シクロヘキサンカーボネート、シクロペンタンカーボネート、スチレンカーボネート等が例示される。
【0010】
本発明で使用する不均一系触媒は、珪酸根を対アニオンとする3級アミン官能基または4級アンモニウム官能基を有する陰イオン交換樹脂である。ここで言う3級アミン官能基または4級アンモニウム官能基を有する陰イオン交換樹脂とは有機高分子母体に陰イオン交換機能を有する官能基を保持したものを意味する。具体的には、ポリスチレンマトリックスに3級アミン官能基または4級アンモニウム官能基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂が入手し易い陰イオン交換樹脂として例示され、更に具体的にはアンバーライトA21、同A26、同A27、IRA−401、IRA−402、IRA−402BL、IRA−400、IRA−400T、IRA−430、IRA−458、IRA−900、IRA−904、IRA−938、IRA−958等のローム アンド ハース社製陰イオン交換樹脂、またはレバチットM−500、同M−504、同MP−500、同MP−500A、同AP−246、同AP−247A、同M−600、同MP−600、同MP−62、同MP−64、同AP−49、同CA9222、同MP−35Aなどのバイエル社製3、4級アンモニウム型陰イオン交換樹脂などが入手し易い陰イオン交換樹脂として挙げられる。本発明においてはこれら陰イオン交換樹脂の少なくとも1種を用い、かつ、これらの樹脂の対アニオンを珪酸根(SiO3 2−)としたものを触媒として反応に使用する。しかしながら本発明はこれらの陰イオン交換樹脂のみに限定されるものではない。 従って、本発明において使用される触媒は上記陰イオン交換樹脂を珪酸根でアニオン交換処理したものである。
次に、本発明における陰イオン交換樹脂のイオン交換処理方法について述べる。
【0011】
本発明で言う陰イオン交換樹脂の珪酸根へのイオン交換処理方法は、特に限定される事はなく、これら陰イオン交換樹脂の対アニオンが珪酸根となる方法であるならば如何なる方法でも実施してもかまわないが、実施し易い方法として例示すれば、以下のごとく実施する事が出来る。その方法は何れでも構わない。さらに本発明はこれらの処理方法のみに限定されるものではないことは無論である。実施し易い方法として例えば、必要ならば、水酸化ナトリウム水溶液で処理洗浄した市販の3級アミン官能基または4級アンモニウム官能基を有する陰イオン交換樹脂を、珪酸根を有するアルカリ金属塩の水溶液とを接触させる事で容易に珪酸根を3級アミン官能基または4級アンモニウム官能基を有する陰イオン交換樹脂に含有させることができる。ここにおいて珪酸根を樹脂に充分に含有させるために樹脂中に存在する3級アミン官能基または4級アンモニウム官能基の等量より過剰量の珪酸根を有するアルカリ金属塩と接触させる事が好ましい。
【0012】
更に、イオン交換処理された陰イオン交換樹脂(触媒)は、そのまま使用しても差し支えないが好ましくは脱水された物として本発明の反応に使用する事が推奨される。
本発明に触媒として使用する3級アミン官能基または4級アンモニウム官能基を有し、且つ珪酸根を含有する陰イオン交換樹脂の陰イオン交換量は特に限定される事はないが、好ましくは樹脂の有する官能基の等量と同程度含有させる事が推奨される。
【0013】
次に本発明の実施態様について述べる。
本発明を実施するに際しその反応方法はバッチ式、セミバッチ式または連続流通式の何れの方法においても実施される。
反応形態は、触媒を固体状態として液相、気相、液−気混合相の何れの形態で実施する事もできる。更に常圧、加圧、減圧の何れの状態で実施する事も可能である。好ましくは反応効率的な観点から液相反応で実施する事が推奨されるが本発明はこれに限定されない。
液相状態で本発明を実施するにあたり、用いた原料または生成物の沸点以上の反応温度で実施する際には、反応原料および反応生成物に対して不活性な気体(例えばアルゴン、窒素またはヘリウムなど)により加圧状態として反応行う事もできる。
【0014】
反応温度は特に限定はされないが好ましくは0〜250℃、更に好ましくは50〜200℃の範囲である。反応温度があまりに低温であれば反応速度は極端に低下し効率の良い製造方法とはならず又、極端に高温であれば好ましくない副生物の生成が生じ、望ましい生成物の選択率を低下させ経済的な方法とはならない。更に本発明を実施するにあたり、例えばバッチ反応を実施する際には、その反応時間は特に限定される事はないが好ましくは数分から30時間程度であり、更に好ましくは0.5〜15時間程度である。又、連続流通反応において実施する場合には固定床、流動床等の方法により実施されるが、陰イオン交換樹脂(触媒)との接触時間は特に限定はされないが好ましくは0.1秒から10時間程度であり、更に好ましくは1秒から1時間の範囲である。余りに接触時間が短時間であれば反応は充分進行しないし、また余りに長時間であれば不必要な滞留となり生成物、原料等を分解する恐れがある。
【0015】
反応を実施するに際し原料であるアルキレンオキサイドと二酸化炭素の仕込み組成は特に限定はされないが、例えばアルキレンオキサイドの高い転化率を達成するにはアルキレンオキサイドに対する二酸化炭素のモル比を高くする(理論当量はアルキレンオキサイドに対し二酸化炭素は1倍当量)。
また、二酸化炭素の転化率を高くするにはアルキレンオキサイドを理論当量よりも過剰に仕込んで反応を実施する。本発明においてはアルキレンオキサイドに対する二酸化炭素のモル比は0.05〜50の範囲で実施されることが好ましく0.5〜25の範囲が更に好ましい。無論、本発明においてはこれらの範囲のみに限定されるものではない。
【0016】
ここにおいて、これらのアルキレンオキサイド及び二酸化炭素を仕込む際に、アルキレンオキサイド及び二酸化炭素を、生成物であるアルキレンカーボネートに対して不活性な媒体(溶媒等、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等)により希釈して仕込んでも差し支えない。
また本発明では、アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドである場合が好ましい。
【0017】
本発明における、触媒の使用量は特に限定されないが、例えばバッチ反応にて実施する場合には好ましくは原料であるアルキレンオキサイドと二酸化炭素の総重量にたいして重量%で0.1〜200%であり、更に好ましくは、1.0〜50%である。余りに触媒使用量が少ない場合には実質的に反応の進行が低下し、また多い場合には攪拌、接触等の効率を低下させる等のトラブルを生じる恐れがあるためである。
本発明を実施した後、生成物であるアルキレンカーボネートは原料と通常の蒸留、抽出、晶出等の分離生成方法により単離精製される。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。しかしながら本実施例は本発明を具体的に説明したものであり、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
触媒の調製方法
(a)イオン交換樹脂のイオン交換処理
表1に掲げたイオン交換樹脂それぞれ6gを予め4%水酸化ナトリウム水溶液で処理した後、充分洗浄した。これを珪酸ナトリウムの2mol/l水溶液100mlとともに200mlビーカーに入れ、1時間攪拌した後、樹脂をろ過分離し、さらに水で充分洗浄した。交換を充分に行うためさらにこの操作を2回繰り返した。
(b)イオン交換樹脂の乾燥方法
樹脂を予めエタノールに浸し撹拌した後デカンテーションを行った。これを3回繰り返した後、濾過分離した。エタノールで洗浄後トルエンを加え、共沸によりさらに水分を取り除いた。最後に室温で3時間減圧乾燥を行った。
【0019】
【表1】
【0020】
実施例1〜4
200mlの耐圧反応器にプロピレンオキサイド34.8g(600.00mmol)、表1に記載している触媒1〜4を2.00g仕込み、液体CO239.6g(900.00mmol)を圧入し、80℃で1時間、撹拌速度500回転/分で攪拌した。反応終了後、反応液を室温にまで冷却し、放圧後反応器から反応液を取り出しガスクロマトグラフ法によって分析した。結果は表2に示した。
【0021】
実施例5
実施例1でプロピレンオキサイドを等モル量のエチレンオキサイドに変えた以外は同じ条件で反応させた。結果は表2に示した。
【0022】
実施例6
実施例1で原料の液体CO2量を2倍に変えた以外は同じ条件で反応させた。結果は表2に示したように良い収率でプロピレンカーボネートが生成した。
【0023】
比較例1
実施例1で触媒1を乾燥処理したアンバーリストA26に換えた以外は同じ条件で反応させた。結果は表2に示した。
【0024】
比較例2
実施例1で触媒1を特開平3−120270に掲げられた炭酸根を有するアンバーリストA26に換えた以外は同じ条件で反応させた。結果は表2に示した。
【0025】
【表2】
【0026】
実施例7〜10
実施例1で陰イオン交換樹脂の含水分量をそれぞれ0.3、0.5、0.7、及び1.0重量%に調節したものを用いた以外は同じ条件で反応させた。結果は表3に示したように各水分量においても高い触媒活性を示した。
【0027】
【表3】
【0028】
実施例11〜12
実施例1で反応時間をそれぞれ3及び5時間とした以外は同じ条件で反応させた。結果は表4に示したように長時間の反応でアルキレンカーボネートの生成量は順調に増加し、触媒の劣化がないことがわかる。
【0029】
【表4】
【0030】
【発明の効果】
本発明によればアルキレンオキサイドと二酸化炭素を原料として、アルキレンカーボネートを穏和な反応条件下で高収率でかつ高選択率で製造することができる。
加えて触媒の劣化がほとんど無いために長時間安定して製造する事ができる等工業的利点は極めて大である。
Claims (3)
- アルキレンオキサイドと二酸化炭素との反応により、アルキレンカーボネートを製造する方法において、珪酸根を対アニオンとする、3級アミン官能基または4級アンモニウム官能基を有する陰イオン交換樹脂の少なくとも一種の存在下に反応させることを特徴とするアルキレンカーボネートの製造方法。
- アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドであり、アルキレンカーボネートがエチレンカーボネートである請求項1記載の製造方法。
- アルキレンオキサイドがプロピレンオキサイドであり、アルキレンカーボネートがプロピレンカーボネートである請求項1記載の製造方法。
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JP00390194A JP3568226B2 (ja) | 1994-01-19 | 1994-01-19 | アルキレンカーボネートの製造方法 |
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JP00390194A JP3568226B2 (ja) | 1994-01-19 | 1994-01-19 | アルキレンカーボネートの製造方法 |
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