JP3567632B2 - 円筒部品の成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動変速機用クラッチドラムのような、スプラインを周面に備えた円筒部品の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の自動変速機用クラッチドラム装置は、例えば図5に符号1で示すように、同軸的に配置された外側のドラム3と内側のドラム15との間に多数枚のリング状のクラッチ板5,17を備えている。交互に配置されたクラッチ板5,17はピストン19により軸線方向に押圧され、摩擦力により回転力を伝達する。ピストン19は、油孔20から導かれる油圧により、図の右方向へ移動するようになっている。
【0003】
一端が開口する円筒部品である外側のドラム3の外周面38は、ブレーキ部材23と接触する制動面として使用される凹凸のない平坦な円筒面となっており、ドラム3の内周面には、図6に示すように、内歯スプラインを形成する複数本の凸条7が軸線方向に沿って形成され、これら凸条7に、クラッチ板5の外周に形成された複数の切り欠きが嵌合していることにより、クラッチ板5は、外側のドラム3に対して軸線方向には移動可能に、かつ円周方向には回動不能に設けられている。
【0004】
上記クラッチ板5は、ドラム3の開口端からドラム3内に挿入配置されるが、クラッチ板5の抜け止めのためにスナップリング9が用いられる。このスナップリング9は、ドラム3の開口側端部においてその内周に沿って凸条7に形成された周方向の溝13に嵌着される。
【0005】
内側のドラム15の外周面には外歯スプラインを形成する複数本の凸条21が軸線方向に沿って形成され、これら凸条21に、クラッチ板17の内周に形成された複数の切り欠きが嵌合していることにより、クラッチ板17は、内側のドラム15に対して軸線方向には移動可能に、かつ円周方向には回動不能に設けられている。
【0006】
ところで、上述のような構成を有する自動変速機用クラッチドラム装置1の外側のドラム3において、内歯スプラインを形成する軸線方向に沿って延びる複数本の凸条7は、従来、例えば円筒状部材の外周面を径方向に押圧して成形していた。そして、これら凸条7の押し出し成形後、図6に示すように、ドラム3の開口側端部において、所定長さの凸条部分7aを残した状態で、各凸条7にスナップリング9用の溝13を研削加工等によって形成していた。
【0007】
ところが、この方法では、上記溝13を形成する際に、加工部分にバリ等が発生するため、加工後に多数箇所に対してバリ取り工程を必要とするという問題があったので、本出願人は、この問題を解決すべく、先に、特開平7−265990号公報に開示されているような円筒部品の成形方法を提案した。
【0008】
この円筒部品の成形方法は、板材をロール成形して、図7(a)に示すように、軸線方向に沿って延びる複数本の凸条7と、開口側端部において凸条を有しない平坦な内周面37とを内周面に備えた円筒状部材3′を得る工程と、この円筒状部材3′の開口側端部の平坦な内周面37を備えた部分を外周面側から径方向に押圧して、図7(b)に示すように、凸条7との間に周方向の溝13を隔てた凸部11を押し出し成形する工程とからなるものである。
【0009】
この方法によれば、溝13を形成するための切削加工等が不要で、これら加工に伴うバリ取り工程を省くことができ、円筒部品を効率良く製造することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した公報記載の方法にも問題点がある。すなわち、ロール成形したワークの端部は加工硬化を来しており、この部分に塑性加工で凸部11を成形すると、図7(b)に示すような割れCが発生するおそれがあった。
【0011】
また、凸部11の反対側、すなわちドラム3の開口端部側の外周面に凹部47が形成されるため、この部分はブレーキ部材23と接触する制動面として利用できず、その分、ブレーキ部材23との接触面が狭くなるから、ブレーキ部材23の材質を変更して摩擦力を高める必要があった。
【0012】
上述の事情に鑑み、本発明は、上述した公報記載の方法を改良することによって、上記問題点を解決した円筒部品の成形方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による円筒部品の成形方法は、軸線方向に沿って延びる複数本の凸条によって形成されたスプラインと、上記凸条の端部に形成された周方向の溝とを周面に備えた円筒部品を成形する方法であって、
上記円筒部品の凸条端部に対応する部分に凸条を有しない平坦な円筒面を備えた厚肉部を形成する態様で、上記凸条と上記厚肉部とを有する円筒状部材をロール成形する工程と、
上記厚肉部を径方向に押圧して、上記凸条との間に上記周方向の溝を隔てた凸部を押し出し成形する工程と、
を含むことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の方法は、内周面に内歯スプラインを形成した円筒部品の成形方法に適用することができる。
【0015】
その場合、上記厚肉部が、円筒状部材の外径を他の部分よりも増大させた部分よりなり、上記厚肉部の内周面に上記凸部を押し出し成形した後、上記厚肉部の外周面を切削する工程をさらに含むことが好ましい。
【0016】
本発明の方法は、自動変速機用クラッチドラムの成形方法に適用することができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、周方向の溝を形成するために塑性加工で凸部を成形しようとする円筒状部材の部分を厚肉にしたことにより、この部分におけるロール成形時における材料の変形量が少なくて済むから、その分加工硬化が抑制され、上記凸部を成形する際の割れの発生を防止することができる。
【0018】
また、内周面に内歯スプラインを形成した円筒部品を成形する場合、円筒状部材の厚肉部の内周面に上記凸部を押し出し成形した後、上記厚肉部の外周面を切削することにより、凸部の押し出し成形によって生じた外周面上の凹部を消滅させることができるから、この円筒部品が自動変速機用クラッチドラムである場合、その外周面の全面をブレーキ部材との接触面に利用することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1および図2は、本発明による円筒部品の成形方法を図5に示す自動変速機用クラッチドラム装置1の外側のクラッチドラム3の成形方法に適用した場合に、板材から円筒状部材をロール成形する工程を示す図である。
【0021】
図1に示すように、材料となる板材3Aをロール成形装置の主軸25と支持軸27との間に挟持し、この板材3Aを、支持軸27の外周に同軸的に設けたマンドレル29と、このマンドレル29に対向するように主軸25に設けた成形型31とにより挟圧する。そして、図2に示すように、成形ローラ33により板材3Aを外側から押圧してマンドレル29の表面に沿って押し伸ばし、ロール成形を行なって円筒状部材3′を得る。
【0022】
マンドレル29の表面には、円筒状部材3′の内周面に図3(a)に示す複数本の凸条7を成形するためのスプライン状成形面と、このスプライン状成形面に隣接させて、円筒状部材3′の内周面の開口側端部に平坦な内周面37を成形するための円筒状成形面とを構成する所定の凹凸35が設けられている。
【0023】
したがって、板材3Aがロール成形により凹凸35に押圧されることによって、上記凸条7や、凸条7を有しない平坦な内周面37が成形される。そしてこの場合、円筒状部材3′の開口側端部では、成形ローラ33を若干後退させて、円筒状部材3′の平坦な内周面37を備えた部分に、他部分よりも外径が増大した厚肉部10を形成する点に本発明の特徴がある。
【0024】
このようにして、所定の凸条7と、平坦な内周面37を有する厚肉部10とが成形された円筒状部材3′を、図4に示す押し出し成形装置39により加工して、図3(b)に示すように、上記厚肉部10の平坦な内周面37に、凸条7の端部との間に周方向の溝13を隔てた凸部11を成形する。そして、円筒状部材3′の軸線に垂直な断面における凸部11の形状および形成位置は、図5に示すクラッチ板5をドラム3の開口端からドラム3内に挿入し得るように凸条7とほぼ同一となっている。
【0025】
上記押し出し成形装置39は、円筒状部材3′の内周面と外周面とを挟圧する下型41と上型43とを備え、下型41は固定であり、上型43はシリンダ45により駆動されるように構成されている。なお、円筒状部材3′の厚肉部10に凸部11を押し出し成形するに先だって、厚肉部10に対して焼き戻し加工を施すことにより、押し出し成形の加工性を向上させることができる。
【0026】
このようにして、凸部11を押し出し成形した結果、厚肉部10の外周面10aには凹部47が形成されるが、次に円筒状部材3′の外周面全体を図3(b)に破線Lで示す位置まで切削することによって、図3(c)に示すように、平坦な外周面38を備えたドラム3を得ることができる。
【0027】
以上が、本発明による円筒部品の成形方法を自動変速機用クラッチドラム3の成形に適用した場合の説明であるが、本実施の形態によれば、スナップリング9を嵌着する周方向の溝13を形成するために凸部11を押し出し成形する円筒状部材3′の部分を厚肉部10にしたことにより、この部分におけるロール成形時における材料の変形量が少なくて済むから、その分加工硬化が抑制され、凸部11を成形する際の割れの発生を防止することができる。
【0028】
また、上記厚肉部10の内周面37に凸部11を押し出し成形した後、厚肉部10の外周面10aを切削することにより、凸部11の押し出し成形によって生じた外周面10a上の凹部47を消滅させることができるから、自動変速機用クラッチドラム3の外周面の全面をブレーキ部材23との接触面に利用することができる。
【0029】
なお、本発明は、上述した自動変速機用クラッチドラム3の成形のみならず、一般に、軸線方向に沿って延びる複数本の凸条によって形成されたスプラインと、上記凸条の端部に形成された周方向の溝とを有する円筒部品を成形する方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による円筒部品の成形方法における円筒状部材をロール成形する工程を示す図
【図2】図1の成形工程が進んだ状態を示す図
【図3】本発明による円筒部品の成形方法の順次の工程の説明図
【図4】本発明による円筒部品の成形方法における円筒状部材の厚肉部の内周面に凸部を押し出し成形する工程を示す図
【図5】本発明に係わる円筒部品としての自動変速機用クラッチドラムを示す縦断面図
【図6】図5のクラッチドラムの要部斜視図
【図7】従来の円筒部品の成形方法の工程説明図
【符号の説明】
1 自動変速機用クラッチドラム装置
3,15 クラッチドラム
3′ 円筒状部材
5,17 クラッチ板
7,21 凸条
9 スナップリング
10 厚肉部
11 凸部
13 周方向の溝
23 ブレーキ部材
29 マンドレル
37 平坦な内周面
39 押し出し成形装置

Claims (4)

  1. 軸線方向に沿って延びる複数本の凸条によって形成されたスプラインと、上記凸条の端部に形成された周方向の溝とを有する円筒部品を成形する方法であって、
    上記円筒部品の凸条端部に対応する部分に凸条を有しない平坦な円筒面を備えた厚肉部を形成する態様で、上記凸条と上記厚肉部とを有する円筒状部材をロール成形する工程と、
    上記厚肉部を径方向に押圧して、上記凸条との間に上記周方向の溝を隔てた凸部を押し出し成形する工程と、
    を含むことを特徴とする円筒部品の成形方法。
  2. 上記スプラインが上記円筒部品の内周面に形成された内歯スプラインよりなることを特徴とする請求項1記載の円筒部品の成形方法。
  3. 上記厚肉部が、上記円筒状部材の外径を他の部分よりも増大させた部分よりなり、上記厚肉部の内周面に上記凸部を押し出し成形した後、上記厚肉部の外周面を切削する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の円筒部品の成形方法。
  4. 上記円筒部品が、自動変速機用クラッチドラムよりなることを特徴とする請求項3記載の円筒部品の成形方法。
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