JP5065966B2 - 円筒状クラッチ部品の成形方法 - Google Patents

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本発明は、自動変速機に組み込まれるクラッチドラムやクラッチハブなどの円筒状クラッチ部品の成形方法に関する。
自動車の自動変速機に組み込まれるクラッチドラムやクラッチハブなどのクラッチ部品には、その内周面(クラッチドラムの場合)又は外周面(クラッチハブの場合)に多板クラッチをスプライン嵌合させるためのスプライン溝が形成される。
ここで、上記クラッチ部品の軽量化、高速回転化、大径化に伴い、径が拡大する方向(つまり、拡径方向)への変形が課題となっている。そこで、従来はクラッチ部品の開口端部にリブなどを形成して剛性を高めている。例えば、特許文献1には、クラッチハブのスプラインの開口端部の山部を外方向に変形させて補強面を形成する技術が記載されている。
特開2002−372072号公報
しかしながら、上記特許文献1では、補強面が山部及び谷部からなる複雑な形状であるため加工が難しく、リブを形成した後に開口端部の有効範囲以外の部分をダイスとパンチで挟み込んで切断するトリミング加工では、スプラインにリブが形成された複雑な形状部をトリミング加工するため、工具寿命が短くなるとともに、加工が難しくなる。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、クラッチ部品の開口端部に補強部を形成した後のトリミング加工の容易化及び開口端部の剛性強化を図ることができる技術を実現することである。
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る第1の形態は、板金製ワークの筒状部にスプラインを形成した円筒状クラッチ部品の成形方法において、前記筒状部に有効範囲より長いスプラインを形成するスプライン成形工程と、ダイス及びパンチにより前記筒状部の有効範囲以外のスプラインの凸部を径方向に押圧して、凹部と略同一面となる環状の平坦部と各凸部に連設した補強部とを形成する補強部成形工程と、前記環状の平坦部の一部を残して当該平坦部を切断する切断工程と、を有する。第1の形態によれば、補強部成形工程により開口端部の有効範囲以外のスプラインの凹部に平坦部及び補強部を形成し、この平坦部を切断することにより、従来の凹凸部分を切断する場合と比較して工具寿命を長期化するとともに加工を容易に行うことができ、クラッチドラムの全長を高精度に加工することができる。また、従来の製造設備の構成を変更することなく利用できるので、開発コストや設備投資、人件費などを削減できる。また、スプラインの各凸部に連設してその内周側及び外周側に形成される補強部と、トリミング加工後に残る環状の平坦部とで開口端部の剛性を高めることができる。
また、第2の形態は、前記補強部成形工程では、前記ダイス及び前記パンチにより前記筒状部の有効範囲以外のスプラインの凸部を内周側から外周側に押圧して前記平坦部と前記補強部とを形成し、前記切断工程では、前記筒状部のスプラインが形成された外周部をダイスで保持した状態でパンチを前記筒状部の内周側から外周側に移動させて前記平坦部の一部を切断する。第2の形態によれば、開口端部の外周側をダイスで保持した状態で有効範囲以外の平坦部をパンチを内周側から外周側へ向けて作動させることで切断するため、切断後に残るスプラインを傷つけたりすることを防止できる。
本発明によれば、クラッチ部品の開口端部に補強部を形成した後のトリミング加工の容易化、工具寿命の長期化及び開口端部の剛性強化を図ることができる。
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
[円筒状クラッチ部品の構成]
図1は、本発明の円筒状クラッチ部品として適用されるクラッチドラムの斜視図(a)及びP部の軸方向断面図(b)である。
図1(a)に示すように、クラッチドラム10は板金製で有底円筒状であり、その底部には軸部材を通す軸穴12が設けられている。クラッチドラム10の円筒部(筒状周面部)には、軸方向に延びるスプライン溝11が形成されている。スプライン溝11は、交互に配置された各32条の(外周側から見て)凹部11aと凸部11bとからなる。
スプライン溝11の凸部11bには径方向に貫通する1対の油穴13が計16対形成されている。油穴13は32条の凸部11bに1つおきに設けられている。油穴13は、これにATF(自動変速機油)を通すことにより、クラッチ及びその周辺の部材の潤滑性や冷却性を高める作用を有する。
クラッチドラム10の軸方向で、円筒部の開口端部15と油穴13との間に、スナップリングが嵌入されるスナップリング溝14が形成されている。スナップリング溝14はスプライン溝11の全周に亘って設けられているが、その溝深さが凸部11bにまで及ばないので、実際に溝成形加工が施されるのは図示のように凹部11aとなる。
図1(b)に示すように、上記開口端部15には、図2(c)で後述するリブ(補強部)成形工程によって、凸部11bと略同一面となる全周に亘って環状の平坦部16と各凸部11bに連設した補強リブ部(補強部)17が形成されている(以下、上記平坦部16及び補強リブ部17をリブ成形部位Pともいう。)。補強リブ部17は、凹部11aの内周面(図示では鉛直方向)に対して内周側(縮径方向)に角度θ(例えば、20°〜45°)をなす傾斜面として形成されている。
次に、図1のクラッチドラム10の製造方法および製造装置について説明する。
図2は、図1に示すクラッチドラムの製造工程を示す概略図である。
先ず、図2(a)のプレス成形工程では、1枚の金属板に不図示のプレス装置によって打ち抜き加工と絞り加工とを施し、金属板を円筒形状に成形する。即ち、クラッチドラム10の基本的な形状である有底円筒形状と軸穴12が形成される(以下、プレス成形ワークW1)。このプレス成形ワークにおける円筒部の軸方向の長さは完成寸法よりも短く、円筒部は余剰な板厚を有している。
次に、図2(b)のスプライン成形工程において、ワークW1の円筒部にスプライン溝11が形成される(以下、スプライン成形ワークW2)。スプライン成形装置20は、軸方向に沿って複数の歯形(スプライン溝11に対応)が形成された歯車状外周部21aを有するのマンドレル21と、断面梯形状の歯形を有する突部が形成された転造ローラ22とを備える。転造ローラ22は、回転ヘッド23に回転自在に支持されてローラの自身の回転軸を中心に自転するようにr1方向に回転可能であるとともに、回転ヘッド23が回転することによってマンドレル21に対して近接と離間を繰り返しながらマンドレル21の軸方向に沿って回転ヘッド23の回転軸23aのまわりを公転するようにr2方向に回転可能である。また、1つの回転ヘッド23に対して2つの転造ローラ22が支持されており、この回転ヘッド23がマンドレル21に対して上下方向又は左右方向に一対(つまり、2つ)配設され、互いに反対方向に回転可能である。
スプライン成形を行う際には、先ず、(1)マンドレル21の外周部21aにプレス成形ワークW1の内周部を装着して固定具24により固定し、(2)その後、転造ローラ22の公転周期とマンドレル21の軸方向d1及び周方向d2への送り量及び送り速度とを同期させながら、マンドレル21の外周部21aと転造ローラ22の突部との間でワークW1の外周面を押圧することによってスプライン溝11を形成していく。ここで、1回の加工ごとのマンドレル21の軸方向d1への送り量(つまり、転造ローラ22がワークW1を押圧する長さ)は、スプライン溝11の全長をいくつかに分割したときの単位長さに相当し、回転ヘッド23が1対あるのでワークW1を半回転させるごとに単位長さ分ずつスプライン溝11が軸方向に形成されていく。なお、このスプライン成形工程では、後述するリブ成形代を確保するために、設計上の有効範囲より軸方向に長いスプライン溝を形成している。
次に、図2(c)のリブ成形工程において、スプライン成形ワークW2の円筒部におけるスプライン溝11の有効範囲以外の部分に、図3で後述するリブ成形装置によって後述するトリミング加工前のリブ成形部位P’(トリミング前のリブ成形部位をP’とする)を形成する(以下、リブ成形ワークW3)。
リブ成形は、ダイス部80とパンチ部90によって行われる。リブ成形装置100は、図3に示すように、ダイス部80、パンチ部90、駆動機構110,115及びワークW2を固定し回転させるインデックステーブル120、ワーク固定治具130を備える。ダイス部80は、ダイス81及びダイス81を支持するダイス支持部82とを有する。また、パンチ部90は、パンチ91及びパンチ91を支持するパンチ支持部92とを有する。駆動機構110,115は、不図示の油圧シリンダなどからなるアクチュエータを備え、このアクチュエータがダイス支持部82及びパンチ支持部92にそれぞれ接続される。
ダイス部80は、上記アクチュエータにより往復移動可能とされ、ワークW2の外周側から軸心に向けて(矢印s1方向に)移動される。そしてダイス81がパンチ91から受ける加圧力を受け止める。また、パンチ部90は、上記アクチュエータにより往復移動可能とされ、ワークW2の内周側に向けて軸心から離れる方向(矢印s2方向)に移動される。そしてダイス81及びパンチ91によってワークW2のスプライン溝11を外周側及び内周側から協働して押圧し、リブ成形部位P’を成形する。
インデックステーブル120はワークW2の底部外面側を保持し、所定の加工単位ごとにワークW2をダイス部80及びパンチ部90に対して回転させる。
ワーク固定治具130は、ダイス部80及びパンチ部90とワークW2のリブ成形部位P’との高さを調節するためのスペーサ131を介してワークW2の内周面に固定される。
次に、リブ成形部位P’が成形されたワークW2に対して、図2(d)に示すトリミング加工を施すために別のステーションに移動する。
図2(d)のトリミング加工工程において、スプライン成形ワークW2の円筒部に、図4に示すトリミング加工装置によって油穴13とスナップリング溝14を穿設するとともに、ワークW2の開口端部15の有効範囲以外の部分を切断する。即ち、上記リブ成形部位P’の平坦部16の不要な部分をトリミング加工によって切除するのである。
トリミング加工は、ダイス部30とパンチ部40によって行われる。トリミング加工装置70は、図4に示すように、ダイス部30、パンチ部40以外の駆動機構110,115及びインデックステーブル120、ワーク固定治具130の構成は、上述したリブ成形装置と同様である。
ダイス部30は、ダイス31及びダイス31を支持するダイス支持部32とを有する。また、パンチ部40は、パンチ41〜44及びパンチ41を支持するパンチ支持部45とを有する。駆動機構110,115は、不図示の油圧シリンダなどからなるアクチュエータを備え、このアクチュエータがダイス支持部32及びパンチ支持部45に接続される。
ダイス部30は、上記アクチュエータにより往復移動可能とされ、ワークW2の外周側から軸心に向けて(矢印t1方向に)移動される。そしてダイス31がパンチ41〜44から受ける加圧力を受け止める。また、パンチ部40は、上記アクチュエータにより往復移動可能とされ、ワークW2の内周側に向けて軸心から離れる方向(矢印t2方向)移動される。そしてダイス31及びパンチ41〜44によってワークW2を外周側及び内周側から押圧し加工する。
ワーク固定治具130は、リブ成形工程とは異なり高さ調整を行う必要がないため、スペーサ131を介さずにワークW2の内周面に固定される。
ダイス部30はワークW2のスプライン溝11の外周側に嵌合するダイス31を有し、パンチ部40はパンチ41〜43を有する。パンチ41,42は、ワークW2のスプライン溝11の凸部11bを内周側から貫通し油穴13を形成する。パンチ43は、ワークW2のスプライン溝11の凹部11aに内周側から当接しスナップリング溝14を形成する。この際、ダイス部30のダイス31は、ワークW3のスプライン溝11に外周側から当接しパンチ41〜43からの負荷を受ける。
また、パンチ44は、リブ成形部位P’の平坦部16に内周側から当接、押圧し、平坦部16を1〜2mm程度残し、不要な部分Qを切断する。この際、ダイス部30のダイス31は、ワークW3のスプライン溝11に外周側から嵌合しパンチ44と協働してワークW3の平坦部16にせん断力を付与する。
なお、図4(b)は、パンチ41〜44により油穴13、スナップリング溝14、トリミング加工を全て完了した状態を示している。パンチ41〜44のワークW3に当接するまでの長さを調節することで、パンチを1回のストロークさせるごとに、油穴、トリミング加工、スナップリング溝の順で加工されていく。
上記構成により、一度の加工でワークW3の周方向の一部(例えば、スプライン溝11の2山分)が加工される(以下、加工単位)。トリミング加工装置は、ワークW3を載置するインデックステーブル120を回転させ、加工単位あたりスプライン溝11の2山分づつずらしながら、合計16回の加工単位によって全周分(32山分)の加工を行う。
図5(a),(b)は、トリミング加工前後のリブ成形部位の状態をワークW3の開口端部を上方に向けて内周側から見た図である。図6(a),(b)は、トリミング加工前後のリブ成形部位の状態をワークW3の開口端部を上方に向けて外周側から見た図である。図7は、トリミング加工前後のリブ成形部位の状態を示しワークW3の開口端部を下方に向けた状態の側断面図である。
図5及び図6に示すように、リブ成形工程により開口端部15の有効範囲以外のスプライン溝11の凹部11aにリブ成形部位P’を形成し、このリブ成形部位P’の平坦部16をトリミング加工により切断する。これにより、従来の凹凸部分をトリミングする場合と比較して工具寿命を長期化するとともにトリミング加工を容易に行うことができ、クラッチドラム10の全長を高精度に加工することができる。また、従来の製造設備を構成を変更することなく利用できるので、開発コストや設備投資、人件費などを削減できる。
よって、クラッチドラム10は、各凸部11bに連設してその内周側及び外周側に形成される補強リブ部17と、トリミング加工後に残る環状の平坦部16とで開口端側15の剛性を高めることができる。
また、図7に示すように、リブ成形部位を含む開口端部15の外周側をダイス部30で保持した状態で有効範囲以外の平坦部16をパンチ部40を内周側から外周側へ向けて作動させることで切断するため、切断後に残るパンチ部40より内側(図中上側)のスプライン溝11を傷つけたりすることを防止できる。
なお、本実施形態では、ダイス部及びパンチ部を用いたトリミング加工の例を説明したが、旋盤などを用いて切削を行っても良い。
また、本実施形態では、円筒状クラッチ部品として多板クラッチが内周面にスプライン嵌合されるクラッチドラム10を一例として説明したが、多板クラッチを外周面にスプライン嵌合させるクラッチハブであっても適用できる。即ち、クラッチドラムの場合には、多板クラッチを内周面に嵌合させるため、補強リブ部17の傾斜面を拡径方向に形成したが、クラッチハブの場合、多板クラッチを外周面に嵌合させるため、補強リブ部17の傾斜面を縮径方向に形成するようにダイス部及びパンチ部を構成すれば良い。、
また、本発明は、自動変速機のクラッチ部品に限定するものではなく、同様の機構を有するクラッチ部品にも適用可能である。
本発明の円筒状クラッチ部品として適用されるクラッチドラムの斜視図(a)及びP部の軸方向断面図(b)である。 図1に示すクラッチドラムの製造工程を示す概略図である。 図2のリブ成形装置のA−A断面図(a)及びB−B断面図(b)である。 図2のトリミング加工装置のC−C断面図(a)及びD−D断面図(b)である。 トリミング加工前後のリブ成形部位の状態をワークの内周側から見た図である。 トリミング加工前後のリブ成形部位の状態をワークの外周側から見た図である。 トリミング加工前後のリブ成形部位の状態を示す側断面図である。
符号の説明
10 クラッチドラム
11 スプライン溝
12 軸穴
13 油穴
14 スナップリング溝
15 開口端部
16 平坦部
17 補強リブ部
21 マンドレル
22 転造ローラ
23 回転ヘッド
24 固定具
30,80 ダイス部
31,81 ダイス
32,82 ダイス支持部
40,90 パンチ部
41〜44,91 パンチ
45,92 パンチ支持部
110,115 駆動機構
120 インデックステーブル
130 ワーク固定治具
131 スペーサ
W1〜W3 ワーク
P、P’ リブ成形部位

Claims (2)

  1. 板金製ワークの筒状部にスプラインを形成した円筒状クラッチ部品の成形方法において、
    前記筒状部に有効範囲より長いスプラインを形成するスプライン成形工程と、
    ダイス及びパンチにより前記筒状部の有効範囲以外のスプラインの凸部を径方向に押圧して、凹部と略同一面となる環状の平坦部と各凸部に連設した補強部とを形成する補強部成形工程と、
    前記環状の平坦部の一部を残して当該平坦部を切断する切断工程と、を有することを特徴とする成形方法。
  2. 前記補強部成形工程では、前記ダイス及び前記パンチにより前記筒状部の有効範囲以外のスプラインの凸部を内周側から外周側に押圧して前記平坦部と前記補強部とを形成し、
    前記切断工程では、前記筒状部のスプラインが形成された外周部をダイスで保持した状態でパンチを前記筒状部の内周側から外周側に移動させて前記平坦部の一部を切断することを特徴とする請求項1に記載の成形方法。
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