JP3564709B2 - 転写性に優れた金属パターン膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、転写性に優れた金属パターン膜の製造方法に関するものである。この発明によって得られた金属パターン膜は、転写することによって、たとえば、基板上の回路とされたり、電子部品の電極とされたり、表示用の金属箔とされたりすることができる。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、電子部品の電極、より特定的には積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するため、転写技術を用いることが、特開平1−42809号公報に記載されている。この転写技術は、薄い内部電極を形成するために有利な技術として評価される。
【0003】
より詳細には、内部電極となる金属薄膜が、取扱いの容易な別のフィルム上にまず形成され、このようなフィルム上に形成された金属薄膜を、セラミックグリーンシート上に転写することによって、セラミックグリーンシート上に金属薄膜が形成される。
【0004】
このように、内部電極を、転写技術を用いて金属薄膜によって形成することにより、得られた積層セラミックコンデンサを小型化、特に薄型化することが可能になるばかりでなく、セラミックグリーンシートを積層したとき、積層状態での厚みを、セラミックグリーンシートの延びる方向において、より均一にすることができる。この後者の特徴は、また、積層されたセラミックグリーンシートを焼成した後で、デラミネーションなどの不都合を招く可能性を減じることにもつながる。
【0005】
このように、積層セラミックコンデンサにおいて、いくつかの利点を与える金属薄膜からなる内部電極の形成が、転写技術により可能にされたわけであるが、転写技術を実施するためには、転写すべき金属薄膜が、たとえ一部においても欠けることなく、転写されるべき面に完全に転写されること、すなわち転写性に優れていることが望まれる。
【0006】
【関連の出願】
上述した要望を満たし得る転写性に優れた金属薄膜が、本件出願人による特願平3−144591号において提案されている。この出願では、転写性に優れた金属薄膜として、フィルム上に蒸着により形成された第1の金属層、および第1の金属層の上方に電気めっきまたは無電解めっきのような湿式めっきにより形成された第2の金属層を備える、少なくとも2層からなるものが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上述した転写性に優れた金属薄膜の製造方法について改善を図ろうとするものである。
【0008】
上述のように、フィルム上に形成された金属薄膜は、転写ステップに先立って、予めパターニングされなければならない。そのため、フィルム上に形成した金属薄膜のかなりの部分が除去されなければならないこともあり、この場合には、多くの金属材料が無駄にされる。特に、金属薄膜が貴金属のような高価な金属から構成される場合には、このような無駄がコストに及ぼす影響を無視できなくなる。
【0009】
それゆえに、この発明の目的は、無駄にされる金属材料を少なくできる、転写性に優れた金属パターン膜の製造方法を提供しようとすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明による転写性に優れた金属パターン膜の製造方法は、上述した技術的課題を解決するため、第1の実施態様では、フィルム上に第1の金属層を蒸着により形成するステップと、前記第1の金属層をパターニングするステップと、パターニングされた前記第1の金属層上に第2の金属層を化学めっきにより形成するステップとを備えることを特徴としている。
【0011】
この発明による転写性に優れた金属薄膜の製造方法は、第2の実施態様では、フィルム上に第1の金属層を蒸着により形成するステップと、前記第1の金属層にパターニングされた露出面を与えるように前記第1の金属層の表面の所定の領域を覆うステップと、前記第1の金属層の前記露出面上に第2の金属層を電気めっきまたは化学めっきにより形成するステップと、前記第2の金属層をマスクとしながら、前記第1の金属層を前記所定の領域において選択的に除去するステップとを備えることを特徴としている。
【0012】
上述した第1の金属層の表面の所定の領域を覆うステップは、レジスト膜を前記第1の金属層の表面に形成するステップを含んでいても、マスクを前記第1の金属層上に配置するステップを含んでいてもよい。
【0013】
なお、上述した第1の金属層と第2の金属層とは、互いに異種の金属からなるものであっても、互いに同種の金属からなるものであってもよい。
【0014】
【作用】
この発明の方法の実施により得られた金属パターン膜は、前述した特願平3−144591号に記載された金属薄膜と同様、フィルム上に蒸着により形成された第1の金属層と第1の金属層上に化学めっきまたは電気めっきにより形成された第2の金属層を備えているので、フィルムに対する付着力が比較的小さい、すなわち転写性に優れている、という特徴を有している。
【0015】
この発明の第1の実施態様では、第1の金属層がパターニングされた後、この第1の金属層上に第2の金属層を化学めっきにより形成するので、第2の金属層については、当初から所望のパターンに適合した状態で形成される。
【0016】
また、この発明の第2の実施態様では、第1の金属層にパターニングされた露出面を与えるように第1の金属層の表面の所定の領域を覆った状態で、第1の金属層の露出面上に第2の金属層が電気めっきまたは化学めっきにより形成されるため、この場合においても、第2の金属層については、当初から所望のパターンに適合した状態で形成される。
【0017】
【発明の効果】
したがって、この発明によれば、第1および第2の実施態様のいずれであっても、第2の金属層を構成する金属の無駄をなくし、または低減することができるので、第2の金属層の金属材料の使用効率を飛躍的に向上させることができる。そのため、金属材料の使用効率の低さからもたらされるコストの上昇を防止することができる。
【0018】
また、この発明の方法の実施により得られた金属パターン膜によれば、前述した特願平3−144591号に記載された金属薄膜と同様、第1の金属層に転写の容易性を与える機能を分担させ、第2の金属層に目的とする電子部品の電極等に必要な性質を与える機能を分担させることができる。したがって、金属パターン膜全体としては、転写性およびその他の所望の性質の双方を同時に満足させることが容易になる。たとえば、従来、転写には適さなかった金属も、転写性に優れた金属パターン膜を構成する金属として用いることができるようになり、転写に供される金属の種類を拡大することができるとともに、転写により金属パターン膜を形成する用途も拡大することができる。
【0019】
この発明によって得られた金属パターン膜は、電子部品の電極、多層基板の内部導体や外部導体、回路基板上の導体、表示用の金属箔、等として有利に用いることができる。
【0020】
【実施例】
この発明を実施するにあたり、前述した第1の金属層を構成する材料としては、たとえば、ニッケル、銅、銀などを用いることができる。また、第2の金属層を構成する材料としては、たとえば、ニッケル、銅、パラジウムなどを用いることができる。
【0021】
これら金属層を形成するために用いられるフィルムとしては、可撓性、耐熱性を有し、蒸着、めっきに対しても十分に耐え得るものが好ましく、たとえば、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルムや、ステンレス鋼、クロムなどの金属箔、などがある。
【0022】
この発明によって得られた金属パターン膜が転写される対象となる被転写物としては、セラミックグリーンシート、セラミック、樹脂、金属などがある。また、転写の条件としては、この金属パターン膜を被転写物に接する状態としておき、いわゆるホットスタンピングにより、たとえば、圧力10〜500kg/cm2 、温度60〜95℃の範囲内で実施される。
【0023】
以下に、この発明に従って実施した実験例について説明する。
実験例1
図1(a)に示すように、まず、フィルム1を用意した。フィルム1としては、100℃程度の温度では変形しないポリエチレンテレフタレートからなるものを用い、後で形成する金属パターン膜の転写性をより高めるため、そのようなフィルム1に、シリコーン・コートを施した。
【0024】
次に、図1(b)に示すように、フィルム1上に、銅からなる蒸着膜2を形成した。この蒸着膜2の形成には、加速電圧10kVのエレクトロン・ビーム加熱を用い、雰囲気圧力を5×10−4Torr以下とした。得られた蒸着膜2の厚みは、0.1μmであった。
【0025】
次に、蒸着膜2上にフォトレジストをコーティングした後、フォトエッチング法により、図1(c)に示すように、積層セラミックコンデンサの内部電極のパターンに対応するように、蒸着膜2のパターニングを行なった。
【0026】
次に、図1(d)に示すように、フィルム1上にあるパターニングされた蒸着膜2上に、ニッケルからなるめっき膜3を化学めっきにより形成した。このとき、化学めっきは、周知のごとく、触媒付与、活性化を行なった後、アルカリ性ヒドラジン浴を用い、液温80℃で実施した。このような処理を4分間行ない、厚み1μmのニッケルめっき膜3を得た。このめっき膜3は、パターニングされた蒸着膜2の表面では成長したが、シリコーン・コートされたフィルム1の表面では、まったく生成されなかった。シリコーン・コートが施してあるため、フィルム1の露出部のみ、触媒付与、活性化処理がなされず、めっき膜3が生成されなかったためであると推測される。
【0027】
なお、図1(b)に示すように、銅からなる蒸着膜2を形成した後、そのまま、その全面にニッケルからなるめっき膜を形成してから、フォトリソグラフィによりパターニングした場合のニッケルの材料使用効率は約20%であった。これに対し、前述したように、図1(c)に示すステップを経た後、図1(d)に示すようにニッケルからなるめっき膜3を形成した場合には、ニッケルの材料使用効率を100%にまで高くすることができた。
【0028】
次に、フィルム1の、蒸着膜2およびめっき膜3が形成された側の面上に、ドクターブレード法により、厚み10〜15μmのセラミックグリーンシートを成形した。このセラミックグリーンシートの成形には、非還元性誘電体セラミックのスラリーを用いた。
【0029】
次いで、上述のセラミックグリーンシートを積み重ね、積み重ねごとに、熱圧着を行ない、それぞれの熱圧着の後で、フィルム1を剥離した。このとき、蒸着膜2およびめっき膜3のいずれもがフィルム1側に残ることはなかった。
【0030】
このようにして得られた積層体を、1個の積層セラミックコンデンサを与える寸法にカットした後、焼成し、次いで外部電極を形成し、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0031】
得られた積層セラミックコンデンサは、内部電極を金属ペーストのスクリーン印刷により形成した従来の典型的な積層セラミックコンデンサに比べて、その厚みが薄く、また、その厚みがセラミックシートの延びる方向においてより均一であった。また、内部電極にポアなどの欠陥がないため、容量低下など、電気的特性の劣化も見られなかった。
【0032】
実験例2
実験例1と同様、図2(a)に示すように、フィルム1を用意し、次いで、図2(b)に示すように、蒸着により厚み0.1μmの銅からなる蒸着膜2を形成した。
【0033】
次に、蒸着膜2上にフォトレジストをコーティングした後、実験例1と同様にフォトエッチング法により、露光および現像までを行ない、図2(c)に示すように、蒸着膜2上にネガタイプのパターンを有するレジスト膜4を形成した。この状態において、蒸着膜2には、パターニングされた露出面が与えられる。
【0034】
次に、蒸着膜2に給電し、電気めっき法により、図2(d)に示すように、蒸着膜2の露出面上にニッケルからなるめっき膜3を形成した。
【0035】
その後、レジスト膜4の剥離を行なった後、蒸着膜2およびめっき膜3を形成したフィルム1を希硝酸に1〜2秒浸漬し、ただちに水洗を行なった。これによって、蒸着膜2は、めっき膜3で覆われていない領域において除去され、図2(e)に示すように、めっき膜3だけでなく、蒸着膜2もパターニングされた。
【0036】
得られた蒸着膜2およびめっき膜3からなる金属パターン膜の転写性について、実験例1と同様に、評価したところ、同様の結果が得られた。
【0037】
実験例3
実施例2と同様、図2に示すように、フィルム1上に蒸着により、厚み0.1μmの銅からなる蒸着膜2を形成した。
【0038】
次に蒸着膜2上にレジストをパターンコーティングし、図2(c)に示すように、蒸着膜2上にネガタイプのパターンを有するレジスト膜4を形成した。この状態において、蒸着膜2には、パターニングされた露出面が与えられる。これ以降は、実験例2と同様に工程を進め、蒸着膜2およびめっき膜3からなる金属パターン膜を得た。得られた金属パターン膜の転写性について、実験例1と同様に評価したところ、同様の結果が得られた。
【0039】
実験例4
上述した実験例2において、蒸着膜2を銅から銀に置換え、めっき膜3をニッケルからパラジウムに置換えたことを除いて、実験例2と同様、図2(a)から(d)までのステップを実施した。
【0040】
図2(d)のステップに続いて、レジスト膜4を溶剤で溶解することにより除去し、次いで、蒸着膜2を、めっき膜3から露出した部分において、硝酸第二鉄でエッチングし、図2(e)に示すように、蒸着膜2およびめっき膜3からなる金属パターン膜を形成した。このとき、硝酸第二鉄でパラジウムからなるめっき膜3が侵されることはなかった。
【0041】
この実験例4において、銀の材料使用効率は約10%であったのに対し、パラジウムについては、100%であった。
【0042】
実験例5
実験例1と同様、図3(a)に示すように、フィルム1を用意し、次いで、図3(b)に示すように、フィルム1上に、蒸着により厚み0.1μmの銅からなる蒸着膜2を形成した。
【0043】
次に、図3(c)に示すように、蒸着膜2の表面に厚み0.1μmのマスク5を密着させ、その状態を保ったまま、スルファミン酸ニッケル浴中へ浸漬し、電気めっきを実施した。
【0044】
次に、マスク5を除去した後、フィルム1を、希硝酸に1〜2秒浸漬し、ただちに水洗を行なった。これにより、図3(d)に示すように、めっき膜3とともにパターニングされた蒸着膜2を得た。
【0045】
実験例6
実験例5と同様、図3(a)に示すように、フィルム1を用意した。
【0046】
次に、図3(b)に示すように、フィルム1上に、蒸着により厚み0.1μmのニッケルからなる蒸着膜2を形成した。
【0047】
次に、図3(c)に示すように、厚み0.1μmのマスク5を蒸着膜2の表面に密着させ、その状態で、スルファミン酸ニッケル浴中へ浸漬し、ニッケルからなるめっき膜3を電気めっきにより形成した。
【0048】
次に、マスク5を除去した後、蒸着膜2およびめっき膜3を形成したフィルム1を、塩化第二鉄液に10秒間浸漬し、マスク5の陰となっていた部分において、ニッケルからなる蒸着膜2を除去し、ともにニッケルからなる蒸着膜2およびめっき膜3によって与えられる金属パターン膜を形成した(本発明例)。
【0049】
他方、比較例として、フィルム上に、蒸着により厚み1μmのニッケルからなる蒸着膜を形成し、フォトエッチング法によりこれをパターニングした。
【0050】
これら比較例および本発明例の各々の転写性を評価するため、紙およびプラスチック上への転写を試みた。すなわち、金属薄膜の表面に接着剤をコーティングした後、ホットスタンピング法により、紙およびプラスチックの各々に金属薄膜を転写することを行なった。ホットスタンピング処理において、100kg/cm2 の圧力を10秒間加えた。
【0051】
比較例では、ホットスタンピング処理の温度を100℃にしても転写できず、またニッケル蒸着膜のひび割れが著しく、さらには反りも大きく、平面状のものが得られにくいため、フォトエッチング法によるパターニングが困難であった。これに対して、本発明例のものは、80℃の温度で、紙およびプラスチックに金属薄膜(蒸着膜2およびめっき膜3)を転写することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に含まれるいくつかのステップを示す図解的断面図である。
【図2】この発明の他の実施例に含まれるいくつかのステップを示す図解的断面図である。
【図3】この発明のさらに他の実施例に含まれるいくつかのステップを示す図解的断面図である。
【符号の説明】
1 フィルム
2 蒸着膜(第1の金属層)
3 めっき膜(第2の金属層)
4 レジスト膜
5 マスク
Claims (6)
- フィルム上に第1の金属層を蒸着により形成し、
前記第1の金属層をパターニングし、
パターニングされた前記第1の金属層上に第2の金属層を化学めっきにより形成する、
各ステップを備える、転写性に優れた金属パターン膜の製造方法。 - フィルム上に第1の金属層を蒸着により形成し、
前記第1の金属層にパターニングされた露出面を与えるように前記第1の金属層の表面の所定の領域を覆い、
前記第1の金属層の前記露出面上に第2の金属層を電気めっきまたは化学めっきにより形成し、
前記第2の金属層をマスクとしながら、前記第1の金属層を前記所定の領域において選択的に除去する、
各ステップを備える、転写性に優れた金属パターン膜の製造方法。 - 前記第1の金属層の表面の所定の領域を覆うステップは、レジスト膜を前記第1の金属層の表面に形成するステップを含む、請求項2に記載の金属パターン膜の製造方法。
- 前記第1の金属層の表面の所定の領域を覆うステップは、マスクを前記第1の金属層上に配置するステップを含む、請求項2に記載の金属パターン膜の製造方法。
- 前記第1の金属層と前記第2の金属層とは、互いに異種の金属からなる、請求項1ないし4のいずれかに記載の金属パターン膜の製造方法。
- 前記第1の金属層と前記第2の金属層とは、互いに同種の金属からなる、請求項1ないし4のいずれかに記載の金属パターン膜の製造方法。
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