JP2005206934A - 金属メッキ膜の形成方法及び電子部品の製造方法 - Google Patents

金属メッキ膜の形成方法及び電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】剥離性の良好な金属メッキ膜を効率よく得ることができる金属メッキ膜の形成方法を提供する。また、導体層の厚みを薄くして小型の電子部品を製作することができ、しかも導体層や誘電体層に変形や破損等の不具合が生じるのを有効に防止することができる電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】基体の表面に金属メッキ膜を析出させ、該金属メッキ膜を前記基体より剥離させることによって金属メッキ膜を得る金属メッキ膜の形成方法であって、前記金属メッキ膜が析出される前記基体の表面を凸曲面状になす。
【選択図】図4

Description

本発明は、コンデンサ,インダクタ,フィルタ,回路基板等の電子部品の導体パターンとして使用される金属メッキ膜の形成方法、及び該金属メッキ膜と誘電体層とを組み合わせて構成される電子部品の製造方法に関するものである。
従来より、セラミック材料等の誘電体材料と導体材料とを用いてコンデンサ,インダクタ,フィルタ,回路基板等の電子部品が形成されている。
このような従来の電子部品として、例えば、所定の誘電率を有した複数個のセラミック層を、間に第1の内部電極と第2の内部電極とを交互に介在させて積層するとともに、該積層体の側面や主面に前記第1,第2の内部電極にそれぞれ電気的に接続される一対の外部電極を設けてなる積層コンデンサ等がよく知られている。
かかる積層コンデンサは、一対の外部電極を介して第1の内部電極と第2の内部電極との間に所定の電圧を印加し、第1の内部電極−第2の内部電極間に配されているセラミック層に所定の静電容量を形成することによってコンデンサとして機能する。
また上述した積層コンデンサは以下の工程を経て製作される(例えば、特許文献1参照。)。
まず、所定のセラミック材料粉末に有機バインダ及び有機溶剤を添加・混合してスラリー状の無機組成物を作製し、これを従来周知のドクターブレード法等を採用し、所定厚みのシートに成形加工することによりセラミックグリーンシートが形成される。
次に、得られたセラミックグリーンシートの主面に従来周知のスクリーン印刷等によってニッケル等の金属を主成分とする導体ペーストを所定パターンに印刷・塗布し、これを複数枚、積み重ねることによってセラミックグリーンシートの積層体を形成する。
続いて、前記積層体を高温で焼成することによって内部電極が介在されたセラミック層の積層体を形成し、最後に、積層体の端面等に従来周知のディッピング法等によって導体ペーストを塗布し、焼き付けて外部電極を形成することによって積層コンデンサが製作される。
特開2000−243650号公報
ところで、近年、電子機器の小型化に伴い、電子部品の小型化が求められており、上述した積層コンデンサの場合、個々のセラミック層や内部電極を薄く形成するための種々の検討がなされている。
例えば、上述した従来の積層コンデンサにおいて、内部電極の厚みを薄くするには、内部電極の形成に使用されている導体ペースト中に含まれる金属粉末の平均粒径を、例えば、0.3μm程度に極めて小さくすることが重要である。
しかしながら、導体ペースト中に含まれている金属粉末の粒径を極めて小さくした場合、導体ペースト中で金属粉末同士が凝集することに起因して金属粉末の分散性が悪くなってしまうことから、スクリーン印刷等に適した特性をもつ導体ペーストを得ることは困難であった。
また仮に、導体ペースト中に含まれている種々の成分を調整することによりスクリーン印刷等に適した特性をもつ導体ペーストを得ることができたとしても、これをセラミックグリーンシート上に薄く塗布して焼成すると、焼成の際に導体ペースト中の金属粉末が移動することによって内部電極の連続性が喪失される不都合があり、最悪の場合、内部電極が分断されてしまう欠点を有していた。
そこで上述の欠点を解消するために、厚みの薄い金属メッキ膜を用いて積層コンデンサを製作することが検討されており、その場合、金属メッキ膜が被着されたセラミックグリーンシートを複数枚、積層することによって積層体を形成し、これを高温で焼成することによって積層コンデンサが製作される。
このような積層コンデンサの内部電極となる金属メッキ膜は、内部電極と対応する形状の開口パターンを有したマスクを金属製の基板上に形成するとともに、前記基板をメッキ槽中に浸漬し、前記マスクの開口内に位置する基板の表面に従来周知の電解メッキ法にて金属を析出させることによって形成される。このような基板の主面にセラミックグリーンシート等を押圧し、マスクの開口内に形成された金属メッキ膜をセラミックグリーンシートの一主面に転写することによって金属メッキ膜がセラミックグリーンシート上に形成される。
しかしながら、金属メッキ膜を用いた上述の製造方法では、金属メッキ膜の析出時に金属メッキ膜中に大きな内部応力(引張応力)を生じるという不都合がある。それ故、金属メッキ膜の析出に使用される金属板の表面が平坦である場合、金属メッキ膜を金属板より剥離させると、金属メッキ膜が析出方向と反対側の方向に突出した形に湾曲しようとし、金属メッキ膜をセラミックグリーンシートに転写した時、セラミックグリーンシートもしくは金属メッキ膜に変形やクラックを発生したり、或いは、焼成時にデラミネーションを発生するという欠点が誘発される。
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、剥離性の良好な金属メッキ膜を効率よく得ることができる金属メッキ膜の形成方法を提供することにある。
また本発明の他の目的は、導体層の厚みを薄くして小型の電子部品を製作することができ、しかも導体層や誘電体層に変形や破損等の不具合が生じるのを有効に防止することができる電子部品の製造方法を提供することにある。
本発明の金属メッキ膜の形成方法は、基体の表面に金属メッキ膜を析出させ、該金属メッキ膜を前記基体より剥離させることによって金属メッキ膜を得る金属メッキ膜の形成方法であって、前記金属メッキ膜が析出される前記基体の表面を凸曲面状になしたことを特徴とするものである。
また本発明の金属メッキ膜の形成方法は、前記基体が円柱状の外周面を有しており、前記基体を軸周りに回転させながら、前記外周面の一部をメッキ槽のメッキ液に浸漬するとともに、前記基体と前記メッキ槽との間のメッキ液に電界を印加することによって前記金属メッキ膜が形成されることを特徴とするものである。
更に本発明の金属メッキ膜の形成方法は、前記基体の表面に前記金属メッキ膜の析出領域を規制するマスク層が形成されており、該マスク層がダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)もしくはグラファイト・ライク・カーボン(GLC)から成っていることを特徴とするものである。
また更に本発明の金属メッキ膜の形成方法は、前記金属メッキ膜中に前記基体と接する非導電性微粒子が含有されていることを特徴とするものである。
そして本発明の電子部品の製造方法は、凸曲面状をなす基体の表面に断面凸形状の金属メッキ膜を析出させる工程Aと、前記金属メッキ膜を前記基体より剥離させて誘電体シートと一体化する工程Bと、前記誘電体シート及び金属メッキ膜を同時に加熱し、前記誘電体シートを、前記金属メッキ膜を形成している金属の融点よりも低い温度で熱処理することによって誘電体層上に導体層が被着された電子部品を得る工程Cと、を含むことを特徴とするものである。
また本発明の電子部品の製造方法は、前記工程Cにおける熱処理時のピーク温度が金属メッキ膜を形成している金属の再結晶温度よりも高いことを特徴とするものである。
更に本発明の電子部品の製造方法は、前記工程Aで得た金属メッキ膜が、一旦、樹脂フィルム上に転写された後、前記工程Bにおいて前記金属メッキ膜が誘電体シートの主面に再転写されるか、もしくは、誘電体シートが前記金属メッキ膜の主面に転写されることを特徴とするものである。
また更に本発明の電子部品の製造方法は、前記基体が円柱状の外周面を有しており、前記工程Aにおいて、前記基体を軸周りに回転させながら、前記外周面の一部をメッキ槽のメッキ液に浸漬するとともに、前記基体と前記メッキ槽との間のメッキ液に電界を印加することによって前記金属メッキ膜が形成されることを特徴とするものである。
更にまた本発明の電子部品の製造方法は、前記基体の表面に前記金属メッキ膜の析出領域を規制するマスク層が形成されており、該マスク層がダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)もしくはグラファイト・ライク・カーボン(GLC)から成っていることを特徴とするものである。
また更に本発明の電子部品の製造方法は、前記メッキ液中に非導電性微粒子が含まれており、該非導電性微粒子が基体表面に析出した金属成分に付着することによって非導電性微粒子を含む金属メッキ膜が形成されることを特徴とするものである。
本発明によれば、金属メッキ膜が析出される前記基体の表面を凸曲面状になしたことから、基体の表面には断面が凸曲面状の金属メッキ膜が形成されるようになる。このようにして得られる金属メッキ膜中には内部応力(引張応力)が生じるため、金属メッキ膜を基体より剥離させて誘電体シートに転写すると、金属メッキ膜は平坦化する方向に変形する。したがって、金属メッキ膜が転写された誘電体シートや金属メッキ膜に変形や破損を発生するのが有効に防止され、生産性の向上に供することができる。
更に本発明によれば、金属メッキ膜が析出される基体を円筒状もしくは円柱状に成し、金属メッキ膜の析出工程において、前記基体を軸周りに回転させながら、その一部をメッキ槽のメッキ液に浸漬するとともに、前記基体と前記メッキ槽との間のメッキ液に電界を印加することによって金属メッキ膜を形成することにより、金属メッキ膜を連続的に形成して生産性の向上に供することができるとともに、基体とメッキ槽との間の電流密度を略均一になして、金属メッキ膜を略一定の厚みで形成することができるようになる。
また本発明によれば、前記マスク層をダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)もしくはグラファイト・ライク・カーボン(GLC)により形成しておけば、比較的厚みの薄いマスク層によって十分な電気絶縁性を得ることができる上に、金属メッキ膜を基体より剥離させる際の剥離性を良好となすことができ、しかも上記DLCやGLCは硬質であることから、金属メッキ膜を誘電体シートに直接、転写する場合には、誘電体シートがマスク層表面に付着することは殆どなく、安定した転写を繰り返すことができるという利点がある。
更に本発明によれば、非導電性微粒子を含んだメッキ液を用いて金属メッキ膜を形成することにより、非導電性微粒子が基体表面に析出した金属成分に付着することで非導電性微粒子を含む金属メッキ膜が形成されることから、金属メッキ膜と基体との密着力を弱めることができ、金属メッキ膜を基体から容易に剥離することが可能となる。このとき、金属メッキ膜の表面に露出する非導電性微粒子の露出面積が、金属メッキ膜の面積に対して0.01〜40%の範囲にすることにより、金属メッキ膜を基体から容易に剥離でき、金属メッキ膜の変形を未然に防止することができる。0.01%未満であると、基体表面に金属部分が多く析出され、基体表面と密着力が高くなり、基体表面から金属メッキ膜を剥離する際に、金属メッキ膜が変形する場合がある。一方、40%を超えると金属メッキ膜の金属部分が減少して金属メッキ膜自体の強度が低下するので、基体表面から金属メッキ膜を剥離する際に、金属メッキ膜にクラックが生じる場合がある。
また更に本発明によれば、上述した金属メッキ膜は、金属メッキ膜を形成する金属の融点より低く、且つ再結晶温度よりも高い温度で、誘電体シートと共に熱処理されることから、熱処理の際、金属メッキ膜が熔けて金属メッキ膜が分断されることはなく、連続性に優れた導体層を形成することができるとともに、金属メッキ膜を形成している金属の再結晶化が進むことで金属が適度に軟化し、誘電体層に対する密着性に優れた良好な導体層を得ることができる。
更にまた本発明によれば、金属メッキ膜を、一旦、樹脂フィルム上に転写した後、セラミックグリーンシート上に再転写するようにすれば、誘電体シートが硬質材料により形成されている基体表面のマスク層に対して直接、接触することはないことから、誘電体シートをマスク層との接触によって損傷させることなく金属メッキ膜を誘電体ンシートに対して良好に転写することができるという利点がある。
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る製造方法によって製作した電子部品としての積層コンデンサを示す断面図であり、同図に示す積層コンデンサ1は、大略的に、絶縁層2と、導体層としての内部電極3と、誘電体層4と、外部電極5とで構成されている。
積層コンデンサ1は、内部電極3と所定の誘電率を有した誘電体層4とを交互に積層して直方体形状の積層体を形成するとともに、該積層体の上下両面に誘電体層4と同一材料からなる絶縁層2を形成し、更に前記積層体の両端部に内部電極3と電気的に接続される外部電極5を被着・形成した構造を有しており、その外形は、例えば、巾1.2mm、長さ2mm、高さ1.2mmの寸法にて形成される。
また前記積層コンデンサ1を形成する誘電体層4は、セラミック材料から成る場合、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム等により形成され、有機材料から成る場合、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等により形成される。このような誘電体層4の厚みは、例えば1層あたり1.0μm〜4.0μmに設定され、その積層数は、例えば30層〜600層に設定される。尚、絶縁層2の材質としては、誘電体層4と同様のセラミック材料や有機材料が用いられる。
他方、誘電体層4間に介在される内部電極3は、例えばニッケル、銅、銀、金、プラチナ、パラジウム、クロム、これら金属の合金等から成り、その厚みは、例えば0.5μm〜2.0μmに設定される。
このような誘電体層4の材質や厚みや積層数,内部電極3の対向面積等は、所望する静電容量の大きさによって適宜、決定される。
上述した積層コンデンサ1は、外部電極5を介して隣合う内部電極間3−3に所定の電圧を印加し、内部電極間3−3に配置されている誘電体層4に所定の静電容量を形成することによってコンデンサとして機能する。
上述した積層コンデンサは、図2〜図4に示すメッキ膜形成装置を用いて製造される。
図2は本発明のメッキ膜形成方法及び電子部品の製造方法に好適に用いられるメッキ膜形成装置を模式的に示す図、図3は図2のメッキ膜形成装置に用いられる基体9を図2のA方向から見た平面図、図4は図3のメッキ膜形成装置に用いられる基体表面の構造を示す拡大断面図である。
同図に示すメッキ膜形成装置は、大略的に、基体9とメッキ槽18と転写手段とからなり、メッキ槽18の上方に基体9を回転可能に配置し、メッキ槽18に対して基体9の回転方向下流側に転写手段を配置することにより構成されている。
以下、メッキ膜形成装置の各構成要素について説明する。
−基体−
基体9はメッキ膜形成装置の陰極として機能し、例えば、ステンレス、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、タンタル、モリブデン等の導電性を備えた金属により形成されている。基体9の外表面には、その全周にわたり導電性膜6が形成されており、該導電性膜6の表面には導電性膜6を所定パターンに露出させるマスク層7が形成される。
このような基体9は、円柱状の外周面を有しており、外周面の曲率半径は、例えば50mm〜2000mmの範囲に設定され、外周面の表面粗さは、例えば、最大高さRyで0.5μm以下に設定される。
基体9の外周面に形成される導電性膜6としては、例えば、比抵抗が10−2Ωcm以下の材料が用いられ、電解メッキの際の電流密度を均一にするには、比抵抗が10−3Ωcm以下の材料、例えば、窒化チタンアルミニウム、窒化クロム、窒化チタン、窒化チタンクロム、炭窒化チタン、炭化チタン、導電性DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)等によって導電性膜6を形成する。また、金属メッキ膜8の剥離性を良好となすには、窒化チタンアルミニウム、窒化クロム、窒化チタン、窒化チタンクロム、炭窒化チタン等で導電性膜6を形成するのが好ましく、耐久性を高めるには、窒化チタン等で導電性膜6を形成するのが好ましい。尚、導電性膜6は、従来周知の薄膜形成法、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学的気相成長法(CVD)等によって形成される。
また、導電性膜6の表面に形成されるマスク層7は、金属メッキ膜8の析出領域を規制するためのものであり、十分な電気絶縁性を備え、その比抵抗は、例えば10Ω・cm以上に設定され、ビッカース硬度Hvは例えば1000以上、摩擦係数μは例えば0.3以下の材料が用いられる。このような諸特性を満足する材料としては、例えば、アモルファス構造のDLCやGLC(グラファイト・ライク・カーボン)等が挙げられる。
このように、基体9の表面に金属メッキ膜8の析出領域を規制するマスク層7を形成しておくことにより、フォトエッチング等の煩雑な工程を経ることなく、基体9をメッキ液19に浸漬して後述するメッキ槽18との間に電界を印加するだけで所望するパターンの金属メッキ膜8が容易に得られ、これによって金属メッキ膜8を効率良く形成することができる。
このようなマスク層7の厚みは、金属メッキ膜8の厚みと同じか、或いは、金属メッキ膜8の厚みよりもやや厚く形成することが好ましい。これは、マスク層7の厚みを越えて成長した金属メッキ膜8がマスク層7上に広がるのを防止するためである。
ここで、マスク層7の側面と底面との間に形成される角部の角度αは90度以下、例えば90度〜85度に設定しておくことが好ましく、このように設定しておけば、基体9と接する金属メッキ膜8の下面の面積が上面の面積よりも小さくなることから、金属メッキ膜8を樹脂フィルム20等に転写する際、金属メッキ膜8の外周部がマスク層7に引っ掛かりにくくなり、金属メッキ膜8の剥離性を良好となすことができる。
尚、マスク層7は、例えば、DLC,GLC等を従来周知のスパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の薄膜形成法によって基体9の表面に所定厚みに被着・形成し、しかる後、従来周知のフォトエッチング法等を採用して、得られた膜を金属メッキ膜8の析出領域に対応する複数個の開口部を有した所定パターンに加工することによって形成される。
このようなマスク層7の材質として用いられるDLCやGLCは、その電気抵抗が比較的高いことから、マスク層7の表面にメッキが析出することはない上に、表面の剥離性が良好で、摩擦抵抗も小さい。従って、金属メッキ膜8を被転写体である樹脂フィルム20等に対して転写する際、被転写体が損傷を受けることは少なく、基体9の耐久性が高められ、長期にわたって繰り返し使用しても高品質の金属メッキ膜8を得ることができる。
以上のような基体9は、回転軸10によって回転可能に支持されるようになっており、この回転軸10と原動機の主軸を連結して、原動機の回転運動を伝達することにより基体9を軸周りに回転させる。回転軸10は、回転ブラシを介して電源装置11に接続され、これによって基体9がメッキ膜形成装置の陰極として機能することとなる。
−メッキ槽−
メッキ槽18は、メッキ膜形成装置の陽極として機能し、また同時に、その内部でメッキ液19を保持することによりメッキ浴を形成するための容器として機能する。
このようなメッキ槽18の内面形状と基体9の外周面とは、両者間に一定の間隔が形成されるよう略同心円状に設置されており、基体9の外周面とメッキ槽18の内面との間隔は例えば2mm〜50mmに設定される。
また、基体9とメッキ槽18との間に充填されるメッキ液19は、後述する循環装置15等によって基体9−メッキ槽18間を所定の流速で流動するようになっており、かかるメッキ液19としては、ニッケルメッキ膜を形成する場合、内部応力の少ない金属メッキ膜8を得るのに適したスルファミン酸ニッケルメッキ液等が好適に用いられる。このようなスルファミン酸ニッケルメッキ液としては、例えば、塩化ニッケル30g/リットル、スルファミン酸ニッケル300g/リットル、ほう酸30g/リットルの組成を有した水溶液等が用いられ、そのpH値は、例えば3.0〜4.2に設定され、内部応力の小さな金属メッキ膜8を得るには、pH値を3.5〜4.0に設定するとともに、メッキ液19の温度を45℃〜50℃に設定しておくことが好ましい。
そして、このようなメッキ液19にはセラミックや樹脂等から成る非導電性微粒子30が添加される。
また、上述したメッキ液19には、必要に応じて、ホウ酸、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル等から成るpH緩衝剤やラウリル硫酸ナトリウム等から成るピット防止剤、ベンゼンやナフタレン等の芳香族炭化水素にスルフォン酸、スルフォン酸塩、スルフォンアミド、スルフォンイミド等を付与した化学物質等から成る応力減少剤、芳香族スルフォン酸やその誘導体から成る硬化剤、ブチンジオール、2ブチン1.4ジオール、エチレンシアンヒドリン、ホルムアルデヒド、クマリン、ピリミジン、ピラゾール、イミダゾール等から成る平滑剤等を適宜、添加して用いてもよい。応力減少剤としては、例えば、サッカリン、パラトルエンスルフォンアミド、ベンゼンスルフォンアミド、ベンゼンスルフォンイミド、ベンゼンジスルフォン酸ナトリウム、ベンゼントリスルフォン酸ナトリウム、ナフタレンジスルフォン酸ナトリウム、ナフタレントリスルフォン酸ナトリウム等が用いられる。
上述したメッキ槽18と基体9とを用いて従来周知の電解メッキ法、即ち、陰極である基体9と陽極であるメッキ槽18の間に電位を加えることによって、基体9の外周面のうち、マスク層7の存在しない領域に金属メッキ膜8が析出することとなる。
また、メッキ槽18内のメッキ液19は、上述したように基体9とメッキ槽18との間を常に所定の方向に流動するようになっているため、金属メッキ膜8の膜質を均質なものとなすことができる利点がある。
−転写手段−
転写手段は、金属メッキ膜8を樹脂フィルム20の一主面に転写する樹脂フィルム転写手段と、樹脂フィルム20上の金属メッキ膜8をセラミックグリーンシート26の一主面に転写するセラミックグリーンシート転写手段とで構成されている。
樹脂フィルム転写手段は、送り出し部22と、加圧ロール23と、巻き取り部24とで構成されている。送り出し部22は、ロール状に巻かれた粘着層付きの樹脂フィルム20を固定する軸を原動機に連結して、この軸を所定の量だけ回転させて送り出すためのものであり、加圧ロール23は、基体9に粘着層付きの樹脂フィルム20を回転しながら加圧するためのものであり、巻き取り部24は、加圧ロール23を通過して金属メッキ膜8が転写された粘着層付きの樹脂フィルム20を一定の力で巻き取るためのものである。
加圧ロール23は、樹脂フィルム20を基体9に対して均等に加圧することができるように、少なくとも表面部分がウレタンゴムコート、ネオプレーンゴムコート、天然ゴムコート等の弾力材料によって形成されており、原動機に連結されない回転自在のものであってもよいし、原動機を連結して回転動作を行うようにしたものであってもよい。
樹脂フィルム20としては、例えば、厚み20μm〜50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)等の主面に厚み0.05μm〜10μmの粘着層21を形成したものが用いられる。粘着層21は、例えば、アクリル系(溶剤系)、アクリルエマルジョン系(水系)、ブチラール系、フェノール系、シリコン系、エポキシ系等の粘着剤(溶剤系)をPETフィルム等の主面に塗布して乾燥することによって得られ、乾燥後の粘着力が例えば、0.1N/cmとなるように調整されたものを用いるのが好ましい。
また前記粘着層21は、比較的低温で確実に熱分解される材料により形成され、具体的には、金属メッキ膜8に付着した場合であっても焼成に際して熱分解するアクリル系(溶剤系)、アクリルエマルジョン系(水系)、ブチラール系の粘着剤を用いるのが好ましく、これらの中でも剥離性の良好なアクリル系粘着剤を用いるのが特に好ましい。このような粘着層21の粘着力は、例えば、0.005N/cm〜1.0N/cmに設定され、また転写性を良好とするには0.01N/cm〜1.0N/cmに設定することが好ましく、剥離性を良好とするには0.01N/cm〜0.2N/cmに設定することが好ましい。
このような樹脂フィルム20は送り出し部22によって基体9側へ順次供給され、粘着層21が形成されている側を金属メッキ膜8が形成されている基体9の表面に対して、例えば、10Nの押圧力で加圧ローラ23にて加圧することにより樹脂フィルム20上に金属メッキ膜8が転写される。その後、樹脂フィルム20は、巻き取り部24によって、基体9の外周面の周速度と同じ速度で巻き取られる。
他方、セラミックグリーンシート転写手段は、供給部28と、加圧ロール27と、収納部29とで構成されている。供給部28は、ロール状に巻かれたセラミックグリーンシート26付きの樹脂フィルム25を固定する軸を原動機に連結して、この軸を所定の量だけ回転させて送り出し、樹脂フィルム20上の金属メッキ膜8とセラミックグリーンシート26とを当接させる。収納部29は、加圧ロール27を通過した樹脂フィルム25を一定の力で巻き取る。
また、加圧ロール27としては、先に述べた加圧ローラ23と同様の材質、構造のものが用いられる。
−洗浄手段−
洗浄手段12は、メッキ槽18より引き上げられた基体9の表面、具体的には、金属メッキ膜8やマスク層7の表面に残存するメッキ液19を除去するためのものである。この洗浄手段12は、金属メッキ膜8とマスク層7の表面に洗浄液を供給する給液手段と、洗浄中の洗浄液を収容する洗浄用箱体と、洗浄に供した洗浄液を回収する回収手段とで構成されており、基体9の表面に近接して配された洗浄用箱体に給液手段から洗浄液を供給し、その洗浄用箱体内で洗浄液を金属メッキ膜8やマスク層7の表面に吹き付けることにより残存メッキ液を基体9上より除去する。
洗浄液としては、例えば水、アルコール、アセトン、トルエン等が用いられ、不純物は1000ppm以下に抑えることが好ましい。また、より一層高い洗浄効果を得るために、基体9の表面に空気を吹きつける空気供給手段を別途設けても構わない。
−洗浄液吸引手段−
洗浄液吸引手段13は、洗浄手段12に対し、基体9の回転方向下流側に配置されており、洗浄手段12によってメッキ液19を除去した後、金属メッキ膜8およびマスク層7の表面に残った洗浄液を完全に除去するためのものである。
かかる洗浄液吸引手段13はステンレス等によって形成されており、その表面には吸引用の複数の穴が設けられ、これらの穴より吸引器を用いて吸引することにより、基体9の表面に残存した洗浄液を除去するようになっている。洗浄液吸引手段13の表面部分は、例えばウレタンスポンジや人工皮革等のように微細な孔が形成されたものが用いられる。なお、洗浄液吸引手段13の形状は円筒状、円柱状、平板状のいずれであっても構わない。
−メッキ液吸引手段−
メッキ液吸引手段14は、洗浄手段12に対して、基体9の回転方向上流側に配置されており、金属メッキ膜8やマスク層7の表面に残存するメッキ液19を除去するためのものである。
かかるメッキ液吸引手段14はステンレス等によって形成されており、その表面には、先に述べた洗浄液吸引手段13と同様に、複数の穴が設けられ、これらの穴よりメッキ液19を吸引するようになっている。メッキ液吸引手段14の表面部分も、洗浄液吸引手段13と同様の構造が採用される。なお、メッキ液吸引手段14の形状は円筒状、円柱状、平板状のいずれであっても構わない。
−循環装置−
循環装置15は、メッキ槽18に注入されているメッキ液19を循環させるためのものである。メッキ液19は、基体9の最下端部と対向する部位であるメッキ槽18の底面中央に配置されたメッキ液19の供給口16より供給されるようになっており、基体9の回転方向下流側では基体9の外周面に沿って基体9の回転方向と同じ方向に流動し、基体9の回転方向上流側では基体9の外周面に沿って基体9の回転方向と逆の方向に流動し、メッキ槽18の両端より溢れ出すメッキ液19は、その外側に配置された循環槽に排出される。そして、この循環槽に溜まったメッキ液19は、その底部に設けられた吸出し口17より吸出され、再び供給口16よりメッキ槽18に供給される。
なお、このようにメッキ液19が循環する過程にろ過フィルタを設けて異物を除去するようにしても良いし、メッキ液19のpH値やメッキ液19の流量,非導電性微粒子の濃度等を必要に応じて調整するようにしても良い。
次に、上述したメッキ膜形成装置を用いて積層コンデンサを製造するための方法について工程毎に説明する。
<工程1>
まず、電解メッキ法にて、上述した基体9の表面に断面が凸曲面状の金属メッキ膜8を形成する。
ここでは、基体9の下部領域が、メッキ槽18に注入されているスルファミン酸ニッケルメッキ液19等に浸漬されるようにして、基体9を所定の回転速度で回転軸10の軸周りに回転させながら、基体9の電流密度が、例えば、2A/dm〜15A/dmとなるようにメッキ槽18との間に所定の電位差を設け、前述した基体9の各矩形状領域に電解メッキを施すことにより基体9の凸曲面に沿って金属メッキ膜8が形成される。
このようにして形成される金属メッキ膜8は、ニッケル、銅、銀、金、プラチナ、パラジウム、クロム等やこれら金属の合金からなり、これらの金属材料の中でも耐熱性に優れたニッケルが積層コンデンサの内部電極3を形成する材料として特に好ましい。
以上のように、基体9を軸周りに回転させながら、メッキ槽18のメッキ液19に浸漬するとともに、基体9とメッキ槽18との間のメッキ液19に電界を印加して金属メッキ膜8を形成することにより、金属メッキ膜8を連続的に形成することができ、これによって積層コンデンサの生産性が向上される。しかもこの場合、基体9とメッキ槽18との間の電流密度は略均一になることから、金属メッキ膜8を略一定の厚みで形成することもできるようになる。
またこの場合、メッキ液19中には、セラミックや樹脂からなる多数の非導電性微粒子30が多数添加されているため、これらの非導電性微粒子30は基体9の表面に析出した金属成分に付着することとなり、その結果、非導電性微粒子30を含んだ金属メッキ膜8が形成される。このような非導電性微粒子30は、その一部が基体9と接するようにして金属メッキ膜8中に埋設される。
そして、上述のような基体9の表面に形成された金属メッキ膜8は、基体9の回転によってメッキ液19中より引き上げられた後、メッキ液吸引手段14、洗浄手段12及び洗浄液吸引手段13によって洗浄され、乾燥される。
<工程2>
次に、工程1により得た金属メッキ膜8を、一旦、樹脂フィルム20上に転写する。
このような樹脂フィルム20は送り出し部22によって基体9側へ順次供給され、粘着層21が形成されている側を金属メッキ膜8が形成されている基体9の表面に対し加圧ローラ23によって、例えば、10Nの押圧力で加圧することによって樹脂フィルム20上に金属メッキ膜8を転写させる。その後、樹脂フィルム20は巻き取り部24によって巻き取られる。
このとき、金属メッキ膜8は、工程1において、凸曲面を有した基体9の外周面上に断面が凸曲面状をなすように形成されることから、金属メッキ膜8を析出させる際、金属メッキ膜8中に内部応力(引張応力)が生じても、得られた金属メッキ膜8を基体9より剥離させると、凸曲面状の金属メッキ膜8は平坦化する方向に変形する。
また、基体9上の金属メッキ膜8には、上述した如くセラミックや樹脂からなる多数の非導電性微粒子30が添加されており、これらの非導電性微粒子30は基体9との密着性に乏しいことから、金属メッキ膜8を基体9より比較的容易に剥離させることができる。
なお、金属メッキ膜8の剥離性を向上させるには、メッキ析出面(基体9と接する部位)に非導電性微粒子30が数多く配置されるように非導電性微粒子30を分布させておくことが好ましく、特に、金属メッキ膜8の表面に露出する非導電性微粒子30の露出面積が、金属メッキ膜8の総面積に対して0.01%〜40%の割合となるようになしておくことが好ましい。なお、この値が0.01%未満であると、金属メッキ膜8における金属成分の析出割合が多くなって基体9との密着力を十分に低下させることが困難になり、また40%を超えると、金属メッキ膜8中の金属成分が少なくなることによって金属メッキ膜自体の機械的強度が低下する不都合がある。
このような非導電性微粒子30としてセラミック材料を用いる場合は、誘電体シートとして用いられるセラミックグリーンシート26のセラミック材料と同材質のものが好適に用いられる。
他方、非導電性微粒子30として樹脂の微粒子を用いる場合は、セラミックグリーンシート26に含まれる有機バインダと同材質のものが好適に用いられる。
なお、非導電性微粒子30の大きさとしては、金属メッキ膜8の厚みよりも小さい平均粒径のものを用いることが好ましい。このようになしておけば、金属メッキ膜8を基体9から剥離させる際、金属メッキ膜8が変形するのを有効に防止することができる。
また、このような非導電性微粒子30として、セラミック材料から成る非導電性微粒子30と樹脂材料から成る非導電性微粒子30とを混合して用いても構わない。
<工程3>
次に、金属メッキ膜8が転写されている樹脂フィルム20上に、更に誘電体シートとしてのセラミックグリーンシート26を転写することにより金属メッキ膜8とセラミックグリーンシート26とを一体化する。
セラミックグリーンシート26は、例えば、厚み12μm〜100μmのPETフィルム等から成る樹脂フィルム25上に支持された状態で樹脂フィルム20との合流位置まで供給され、セラミックグリーンシート26が樹脂フィルム20上の金属メッキ膜8と接するようにして双方の樹脂フィルム20,25を重ね合わせ、この部分を加圧ローラ27に内設しておいたヒータによって約70℃の温度で加熱しつつ、樹脂フィルム25を加圧ローラ27によって約100Nの押圧力で樹脂フィルム20側へ加圧することによりセラミックグリーンシート26が金属メッキ膜8側に転写される。その後、セラミックグリーンシート26が剥ぎ取られた樹脂フィルム25は収納部29によって巻き取られる。
このように、金属メッキ膜8を、一旦、樹脂フィルム20上に転写した後、セラミックグリーンシート26上に転写するようにすれば、セラミックグリーンシート26が硬質材料により形成されている基体表面のマスク層8に対して直接、接触することはないことから、セラミックグリーンシート26をマスク層7との接触により損傷させることなく金属メッキ膜8をセラミックグリーンシート26に対して良好に転写することができる。
また、金属メッキ膜8は、基体9より剥離させたとき、平坦化する方向に変形していることから、かかる金属メッキ膜8をセラミックグリーンシート26の主面に転写しても、セラミックグリ−ンシート26や金属メッキ膜8に変形やクラックが発生するのが有効に防止され、積層コンデンサ1の生産性向上に供することができる。
尚、樹脂フィルム25上に支持されたセラミックグリーンシート26は、例えば、1μm〜20μmの厚みに形成され、セラミック材料粉末に有機溶媒、有機バインダ等を添加・混合して得た所定のセラミックスラリーを、焼成後の厚さが2μm程度となるように従来周知のコーティング法または印刷法等によって樹脂フィルム25の主面に塗布した後、これを乾燥させることによって得られる。
ここで樹脂フィルム25としては、厚み38μmのPETフィルムが用いられ、このような樹脂フィルム25の一主面に、焼成後の厚みが、例えば2μmとなるようにセラミックスラリーを塗布及び乾燥させて、セラミックグリーンシート26付きの樹脂フィルム25を用意する。次に、樹脂フィルム25のセラミックグリーンシート26を樹脂フィルム20上の金属メッキ膜8に接するように当接させて、この当接部を半径100mm、長さ250mmの加圧ローラ27にて100N、70℃の加圧条件で挟み込み、セラミックグリーンシート26を金属メッキ膜8付き樹脂フィルム20に圧着させる。その後、樹脂フィルム25はセラミックグリーンシート26より剥離される。
<工程4>
次に、前述の工程3で得た金属メッキ膜8付きのセラミックグリーンシート26を複数枚準備して、これらを相互に圧着・積層することにより積層体を形成する。
このような積層体は、例えば、60℃の温度で加熱しながら0.9MPaの圧力で仮圧着され、その後、従来周知の静水圧プレス等によって70℃の温度、50MPaの圧力で圧着させることによって形成される。
<工程5>
そして最後に、工程4で得た積層体を所定形状に切断し、得られた個片を高温で焼成する。
積層体の焼成は、金属メッキ膜8を形成している金属の融点よりも低く、かつ該金属の再結晶温度よりも高い温度にピーク温度を設定して行われ、これによってセラミックグリーンシート26は積層コンデンサの誘電体層4となり、金属メッキ膜8は内部電極3となる。
ここで、金属の再結晶とは、加工した金属材料を加熱するとある温度を境に急激に軟化して、内部歪みを軽減するように安定化する現象のことであり、この再結晶が開始する温度のことを再結晶温度という。例えばニッケルの場合、再結晶温度は530℃〜660℃、融点は1458℃、また銅の場合、再結晶温度は200℃〜250℃、融点は1083℃、また金の場合、再結晶温度は約200℃、融点は1060℃である。従って、金属メッキ膜8がニッケルから成る場合、積層体の焼成は、例えば、1300℃の温度で行われる。
このように金属メッキ膜8を、該金属メッキ膜8を形成する金属の融点より低い温度で焼成することにより、焼成時に金属メッキ膜8が熔けて金属メッキ膜8が分断されるといった不都合が確実に防止され、連続性に優れた内部電極3を形成することができる。
またこの場合、積層体を焼成する際のピーク温度は、金属メッキ膜8を形成している金属の再結晶温度よりも高く設定されているため、焼成時に金属メッキ膜8を形成している金属の再結晶化が進むことで金属が適度に軟化し、セラミックグリーンシート26中のセラミック粒子が金属メッキ膜8の表面に入り込むことによって金属メッキ膜8とセラミックグリーンシート26との密着力を向上せしめ、その結果、構造欠陥の少ない積層コンデンサが得られるようになる。
しかもこの場合、金属メッキ膜8中には非導電性微粒子30が一部を埋設されているため、非導電性微粒子30としてセラミック材料を用いた場合には、非導電性微粒子30がセラミックグリーンシート26の焼成時に同時焼成され、セラミックグリーンシート26に含まれるセラミック成分と焼結して一体化される。その結果、金属メッキ膜8とセラミックグリーンシート26との密着性が向上する。また、非導電性微粒子30として樹脂材料を用いた場合には、非導電性微粒子30がセラミックグリーンシート26の焼成時に焼失して空隙を形成し、この空隙にセラミックグリーンシート26中のセラミック成分が拡散することから、この場合も金属メッキ膜8とセラミックグリーンシート26との密着性が向上する。
<工程6>
そして最後に、積層体の両端部に外部電極用の導体ペーストを従来周知のディッピング法等によって塗布し、これを焼成した後、その表面にメッキ処理を施すことによって外部電極5が形成され、これによって製品としての積層コンデンサ1が完成する。
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態に係る製造方法について図5を用いて説明する。尚、先に述べた第1実施形態と同様の工程については重複する説明を省略し、また製造装置の構成についても同一の参照符を付して重複する説明を省略することとする。
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、樹脂フィルム20に、一旦、転写した金属メッキ膜8を、樹脂フィルム25上に保持されているセラミックグリーンシート26の表面に転写させることようにした点である。
この場合、金属メッキ膜8が転写されたセラミックグリーンシート26は収納部29によって樹脂フィルム26ごと巻き取られ、以後の工程に使用される。
このような第2実施形態においても、先に述べた第1実施形態と全く同様の効果が得られる。
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について図6を用いて説明する。尚、先に述べた第1実施形態と同様の工程については重複する説明を省略し、また製造装置の構成についても同一の参照符を付して重複する説明を省略することとする。
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、基体9上に析出させた金属メッキ膜8を、樹脂フィルム25上で保持されているセラミックグリーンシート26の主面に直接、転写するようにした点である。
このような第3実施形態においても、先の実施形態と全く同様の効果が得られる。
またこの場合、メッキ膜形成装置に用いられる基体9のマスク層7をDLCやGLC等により形成しておけば、セラミックグリーンシート26がマスク層8の表面に付着することは殆どないため、安定した転写を繰り返すことができる。
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、上述の第1〜第3実施形態においては、積層コンデンサを製造する場合を例にとって説明したが、積層コンデンサ以外の電子部品、例えば、インダクタ,フィルタ,回路基板等の他の電子部品を製造する場合においても本発明が適用可能であることは言うまでもない。
本発明の第1実施形態に係る製造方法によって製作した電子部品としての積層コンデンサを示す断面図である。 本発明のメッキ膜形成方法及び電子部品の製造方法に好適に用いられるメッキ膜形成装置を模式的に示す図である。 図2のメッキ膜形成装置に用いられる基体9を図2のA方向から見た平面図である。 図3のメッキ膜形成装置に用いられる基体表面の構造を示す拡大断面図である。 本発明の第2実施形態に係る製造方法に用いられるメッキ膜形成装置の構成を模式的に示す図である。 本発明の第3実施形態に係る製造方法に用いられるメッキ膜形成装置の構成を模式的に示す図である。
符号の説明
1・・・積層コンデンサ(電子部品)
2・・・絶縁層
3・・・内部電極(導体層)
4・・・セラミック層(誘電体層)
5・・・外部電極
6・・・導電性膜
7・・・マスク層
8・・・金属メッキ膜
9・・・基体
12・・・洗浄手段
18・・・メッキ槽
19・・・メッキ液
20、25・・・樹脂フィルム
26・・・セラミックグリーンシート(誘電体シート)
30・・・非導電性微粒子

Claims (10)

  1. 基体の表面に金属メッキ膜を析出させ、該金属メッキ膜を前記基体より剥離させることによって金属メッキ膜を得る金属メッキ膜の形成方法であって、
    前記金属メッキ膜が析出される前記基体の表面を凸曲面状になしたことを特徴とする金属メッキ膜の形成方法。
  2. 前記基体が円柱状の外周面を有しており、前記基体を軸周りに回転させながら、前記外周面の一部をメッキ槽のメッキ液に浸漬するとともに、前記基体と前記メッキ槽との間のメッキ液に電界を印加することによって前記金属メッキ膜が形成されることを特徴とする請求項1に記載の金属メッキ膜の形成方法。
  3. 前記基体の表面に前記金属メッキ膜の析出領域を規制するマスク層が形成されており、該マスク層がダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)もしくはグラファイト・ライク・カーボン(GLC)から成っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属メッキ膜の形成方法。
  4. 前記金属メッキ膜中に前記基体と接する非導電性微粒子が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の金属メッキ膜の形成方法。
  5. 凸曲面状をなす基体の表面に断面凸形状の金属メッキ膜を析出させる工程Aと、
    前記金属メッキ膜を前記基体より剥離させて誘電体シートと一体化する工程Bと、
    前記誘電体シート及び金属メッキ膜を同時に加熱し、前記誘電体シートを、前記金属メッキ膜を形成している金属の融点よりも低い温度で熱処理することによって誘電体層上に導体層が被着された電子部品を得る工程Cと、を含む電子部品の製造方法。
  6. 前記工程Cにおける熱処理時のピーク温度が金属メッキ膜を形成している金属の再結晶温度よりも高いことを特徴とする請求項5に記載の電子部品の製造方法。
  7. 前記工程Aで得た金属メッキ膜が、一旦、樹脂フィルム上に転写された後、前記工程Bにおいて前記金属メッキ膜が誘電体シートの主面に再転写されるか、もしくは、誘電体シートが前記金属メッキ膜の主面に転写されることを特徴とする請求項5に記載の電子部品の製造方法。
  8. 前記基体が円柱状の外周面を有しており、前記工程Aにおいて、前記基体を軸周りに回転させながら、前記外周面の一部をメッキ槽のメッキ液に浸漬するとともに、前記基体と前記メッキ槽との間のメッキ液に電界を印加することによって前記金属メッキ膜が形成されることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
  9. 前記基体の表面に前記金属メッキ膜の析出領域を規制するマスク層が形成されており、該マスク層がダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)もしくはグラファイト・ライク・カーボン(GLC)から成っていることを特徴とする請求項8に記載の電子部品の製造方法。
  10. 前記メッキ液中に非導電性微粒子が含まれており、該非導電性微粒子が基体表面に析出した金属成分に付着することによって非導電性微粒子を含む金属メッキ膜が形成されることを特徴とする請求項8に記載の電子部品の製造方法。
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