JP3562729B2 - ラテックス製ゴム膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ゴム系ラテックスの加工特性を改善したラテックス製ゴム膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
ゴム系ラテックスは、植物の代謝作用による天然の生産物である天然ゴム(NR)ラテックスと、エマルション重合によって相応する単量体から製造されたスチレンーブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴムラテックスと、固形高分子を水性媒質中に分散したイソプレンゴム(IR)、イソブテンーイソプレンゴム(IIR)等の人工ゴムラテックスとの3種類に分類される。
【0003】
これらのゴム系ラテックスは、フォームラバー等の発泡製品、手袋、コンドーム等の浸漬製品、さらに粘着剤や接着剤の原料等として工業的に用いられる。
ラテックスは、熱力学的に準安定状態にある分散系であり、常にその高い界面エネルギーを低下させようとするポリマー粒子ー水間の界面張力の作用によって粒子の凝集体を形成し、粒子の界面面積を縮小して安定な状態に移行しようとする傾向を有している。
【0004】
しかしながら、実際には、このラテックス粒子の凝集傾向は、粒子の電気二重層の作用ならびに界面活性剤または高分子保護コロイドが形成する吸着層の保護作用によって妨げられている。
ラテックスは、最終用途に供されるまでには、上述の熱力学的凝集傾向に加えて、さらに凝集体の形成傾向を促進する破壊作用が加えられる。この破壊作用に耐えうる度合いが安定性である。破壊作用には種々の作用があり、それに対応するラテックスの安定性は貯蔵安定性、化学的安定性、機械的安定性、凍結安定性等と呼ばれる。
【0005】
これらの安定性の中で、機械的安定性はラテックスが製造されてから輸送・配合されて最終用途に供せられるまでに、いろいろな形で受ける機械的操作による分散破壊ショックに対する抵抗力であり、ラテックスの重要な基本的性質の一つである。
また、化学的安定性は、ラテックスの加工時に受ける電解質および溶媒等による分散破壊作用に対する抵抗力であり、これもラテックスの重要な基本的性質の一つである。ラテックスは成形までの段階で凝集してしまうと実用に供し得ないが、成形段階では意図的に凝集させて成膜する必要がある。即ち、機械的安定性は出来るだけ高いほうが良いが、化学的安定性があまり高いと成形時に成膜が出来なくなるため、適当なバランスが必要となる。
【0006】
天然ゴムラテックスは、ゴム粒子に結合した親水性の蛋白質が水中での安定性に寄与すると同時に、ラテックスに含まれている天然の脂肪酸も、腐敗防止のために添加されたアンモニアと反応して両性のイオン性界面活性剤である脂肪酸アンモニウムとなり、ラテックスの安定化に寄与している。そのため、機械的安定性と化学的安定性のバランスが良く、さらに乾燥・加硫工程において膜の強度が強く、収縮も少ないため亀裂のない均一な膜を容易に成形することができる。
【0007】
一方、合成ゴムラテックスにおいては、ゴム粒子に結合した保護層を有しないため、主として界面活性剤の添加によってその安定性を保つ必要がある。界面活性剤の濃度を上げれば機械的安定性は増すが、成膜特性を損なう等の加工性に悪影響を及ぼすことが多い。
ラテックスからの膜形成過程は、大まかに粒子の充填、融着および拡散の過程に分けられる。すなわち、ラテックスを乾燥すると、水の蒸発とともにラテックス粒子は相互に近接して最密状態またはそれに近い状態に充填され、その空隙には界面活性剤および無機塩を溶解した水が残される(充填過程)。さらに、乾燥が進むと、粒子界面の吸着保護層が破壊されて、露出したゴム粒子自体の接触が起こる。通常乾燥温度が最低成膜温度よりも高いので、乾燥の進行とともに粒子は変形し且つ融着して膜を形成する(融着過程)。次いで粒子間隙および融着粒子間の水溶性物質がゴム中に溶解拡散されると、同時に融着粒子間においてゴム分子鎖自由端の相互拡散が進行して膜の機械的性質が向上する(拡散過程)。
【0008】
安定性を向上させるための界面活性剤がゴムとの相溶性の悪い場合やその量を多くすると、上記融着過程におけるゴム粒子の融着が阻害される。
一般に合成ゴムラテックスは天然ゴムラテックスに比べて、乾燥・加硫の工程で、膜の強度が弱い、収縮が起こる、フィルム表面に亀裂が入るなど成膜特性に劣っているが、その主たる原因は上記要因によるものと推測される。
【0009】
合成ゴムラテックスにおいて、界面活性剤の添加に依らずにその機械的安定性を向上させる技術としては、分散ゴム粒子をカルボキシル化変性することが一般的である。しかしながら、この技術をもってしても十分な効果がなく、合成ゴムラテックスの加工特性は、天然ゴムラテックスに比較して格段に劣るのが現実である。
【0010】
また、高分子保護コロイドの添加は化学的安定性を向上させても、機械的安定性の向上には殆ど効果はないが、ラテックス粒子に高分子保護コロイドをグラフト重合にて結合させるような条件で使用すると、著しく高い安定性が得られることが知られている。しかし、この手法は合成が多段階になることで経済的に容易に行えるものではなく実用化されていない。
【0011】
本発明の主たる目的は、合成ゴムラテックスの加工性を改善し、特に成形および加硫時における収縮が少なく亀裂のないゴム膜を容易に得ることができるラテックス製ゴム膜の製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、成膜特性の悪い合成ゴムラテックスに、天然ゴム微粒子を添加すると、合成ゴムラテックスの成膜特性を顕著に改善できるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに到ったものである。
【0013】
すなわち、本発明のラテックス製ゴム膜の製造方法は、平均粒径0.1〜0.5μmの天然ゴム微粒子を合成ゴムに対して1.0〜10重量%の割合で合成ゴムラテックスに添加した後、成膜することを特徴とする。
前記天然ゴム微粒子としては、脱蛋白天然ゴム微粒子が特に好適に使用可能である。また、天然ゴム微粒子は、ラテックスの形態で合成ゴムラテックスに添加するのが、取扱い性のうえから好ましい。
【0014】
本発明に用いられる脱蛋白天然ゴム微粒子には、例えばヘビアブラジリエンス等より産出するフィールドラテックスを遠心分離で濃縮して精製ラテックスを製造する際に発生するしょう液に含まれるゴム分を回収利用することが出来る。上記しょう液には平均粒径0.1〜0.5μmの微細ゴム粒子が4〜8%含まれ、通常酸を添加後沈澱させて固形ゴムとして回収されるが、不純物が多く低品質低価格のグレードとして利用されている。本発明においては、このしょう液に蛋白分解酵素と界面活性剤を加えて蛋白分解処理後、精製濃縮して、脱蛋白天然ゴム微粒子のラテックスとして使用する。すなわち、しょう液に蛋白分解酵素を添加して蛋白質を分解させた後、界面活性剤によって繰り返し洗浄して精製する。洗浄には遠心分離法が好適に採用される。
【0015】
蛋白分解用酵素としては、例えば細菌由来のもの、糸状菌由来のもの、酵母由来のものなどのいずれであってもよく、特に限定されるものではないが、細菌由来のプロテアーゼを使用するのが好ましい。かかる蛋白分解用酵素による分解処理は、通常、しょう液に蛋白分解用酵素を0.01〜10重量%の割合で添加し、数分間ないし1週間静置または攪拌することにより行うことができる。蛋白分解処理は、5〜90℃、好ましくは20〜60℃の温度で行うのが適当である。
【0016】
前記界面活性剤は蛋白分解処理時または処理後のいずれに添加してもよい。界面活性剤としては、例えば陰イオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤が使用可能である。陰イオン性界面活性剤としては、例えばカルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系などがあげられる。非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、アルキルポリグリコシド系などがあげられる。界面活性剤の添加量は、天然ゴムラテックスの0.001〜10重量%であるのが適当である。
【0017】
また、本発明に用いられる他の脱蛋白天然ゴム微粒子としては、本発明者らによって特開平6−56902号公報に開示された脱蛋白天然ゴムラテックスの遠心分離による濃縮精製工程で発生するしょう液に含まれるゴム分を濃縮して利用することも出来る。このしょう液には平均粒径0.1〜0.5μmのゴム分が2〜5重量%含まれている。濃縮の手法は、蛋白分解残渣のアミノ酸類を除去するために、遠心分離による精製濃縮、限外ロ過法による精製濃縮等が採用される。なお、前記脱蛋白天然ゴムラテックスの調製は、前記と同様に蛋白分解酵素と界面活性剤を加えて蛋白分解処理後、精製濃縮して行う。
【0018】
前述の遠心分離による精製濃縮では、遠心分離の効率を高めるために、比重の高い水溶性化合物をしょう液にその総量に対して5〜10重量%の割合で添加し溶解させた上で遠心分離することが必要である。添加する化合物はラテックスを凝固させず、ラテックスの特性を低下させないもので且つ最終製品に微量が残留しても悪影響の無いものであれば、無機化合物であっても有機化合物であっても良い。通常、硫酸アンモニウム、炭酸ソーダ等の無機塩類やポリエチレングリコール等の水溶性高分子が好適に利用される。
【0019】
遠心分離の手法は特に限定されないが、アミノ酸類の蛋白分解残渣やしょう液の比重を高めるために添加した水溶性化合物の混入を下げるために、回転数を高めるか、遠心分離時の滞留時間を長くする等の手法で、ゴム分濃度が60%以上となるように出来るだけ高く濃縮することが望ましい。
一方、限外ロ過による濃縮精製では、平膜法、チューブ法の他、回転平膜法も用いることができ、特に限定されないが、平膜法やチューブ法では凝固させずに高濃度に濃縮することが困難であるため、通常固形分濃度を20重量%以下に押さえる必要がある。
【0020】
また、脱蛋白天然ゴムの製法として、本発明者らが特願平6−52989号で提案した回転平膜法では、固形分を65%以上に濃縮することも可能である。また、限外ロ過膜としては分画分子量70万程度以上のものが好適に使用されるが、ゴム粒子を通過させずに蛋白分解残渣を通過させるものであれば良く、膜材の種類も特に限定されない。
【0021】
前記回転平膜法とは、蛋白分解処理したまたは蛋白分解処理用の天然ゴムラテックスに水および/または界面活性剤を添加後、回転式平膜分離装置にて精製処理する方法をいう。
ここで、回転式平膜分離装置は、図1、図2に示すように、支持板2の両側面にスペーサ3を介して分離膜1を配設し、支持板2と分離膜1との間に透過流体通路4を形成してなるプレート状膜ユニットを、中空回転軸6の内部に連通接続したものからなる。矢印5は、分離膜1に対する加圧方向を示している。前記プレート状膜ユニットの複数個を中空回転実施例6に沿って併設したものが一般的な実用装置である。かかる装置においては、天然ゴムラテックス中に装置を浸漬して、回転軸6を介して支持板2を矢印7方向に回転させることにより、矢印で示すように、分離膜1を通って、分解した蛋白質や蛋白分解酵素を含有する廃液が透過流体通路4に浸入し、それが回転軸6の中空内部を通って系外に排出され、精製された天然ゴムラテックスが装置の浸漬槽内に残留して分離処理が達成される。
【0022】
本発明における合成ゴムラテックスとしては、例えば、前記したNBR,CR,SBRの他、EPM,EPDM,ウレタンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴムなどのラテックスがあげられ、とくに制限されるものではないが、NBRまたはCRのラテックスにおいて、特に成膜特性の改善が著しい。
【0023】
前記天然ゴム微粒子は合成ゴムに対して1.0〜10重量%の割合で合成ゴムラテックスに添加されることが必要であって、この範囲より添加量が少ないときは成膜特性の改善を図ることができない。一方、添加量がこの範囲を超えると、合成ゴムの特徴(耐油性、気体の透過を防止する能力、耐熱性など)に悪影響を与えることになり、好ましくない。
【0024】
このようにして天然ゴム微粒子を添加した合成ゴムラテックスは、通常の成膜手段、例えば浸漬、塗布などを用いて、成膜することができる。
【0025】
【実施例】
以下、参考例および実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
参考例1
マレーシアFELDA社より入手したフィールドラテックス(ゴム固形分30重量%)に、ゴム固形分に対してノニオンアニオン複合系界面活性剤(花王(株)製のネオペレックスF−25と同社製のエマルゲン109Pとを重量比で60:38で混合したもの)を1重量%、蛋白分解酵素(花王(株)製のアルカリプロテアーゼ)を0.02重量%の濃度となるように添加した。これを、40℃、24時間の条件で酵素処理後、ゴム固形分濃度が10重量%になるように水で希釈した後、デラバル型連続遠心分離機(約10,000G)を用い、固形ゴム分濃度65重量%になるまで濃縮精製した。得られたクリームは再度ゴム固形分濃度が10重量%になるように水で希釈し、再度遠心分離してゴム固形分濃度65%、機械的安定性120秒(JIS K 6381に準拠した条件で測定)、ケルダール法により測定した生ゴム中の窒素含有量が0.007%の脱蛋白天然ゴムラテックスを得た。上記工程中、最初の遠心分離の際に副生したゴム固形分約5%のしょう液を濃縮して、脱蛋白天然ゴム微細粒子のラテックスとして使用した。
【0026】
上記しょう液に硫酸アンモニウムを10重量%になるように添加し溶解させた後、デラバル型連続遠心分離機(約10,000G)を用い濃縮してゴム固形分約50重量%のクリームを得た。このクリームを5重量%の硫酸アンモニウムを溶解させた水でゴム固形分が10重量%になるよう希釈した後、再度遠心分離してゴム固形分50重量%のクリーム(以下クリームAという)を得た。クリームAは粒径0.1〜1μmのゴム粒子のラテックスであり、ゴム粒子の平均粒子径は0.38μmであった。
参考例2
参考例1で得たしょう液を回転平膜法で濃縮精製した。即ち、公称分画分子量70万のポリスルホン限外ろ過膜(平膜径200mm)を装着した回転式平膜装置を配置した槽に上記しょう液を加えて装置を稼働させ、ゴム固形分濃度が約25重量%まで、即ち全量が元の1/5になるよう濃縮した。これを水で元の濃度まで希釈した後、再度1/4に濃縮した。次いで同様に希釈後、固形分が60重量%になるまで濃縮した。ここに得たラテックス(以下クリームBという)は粒径0.05〜1μmのゴム粒子のラテックスであり、ゴム粒子の平均粒子径は0.30μmであった。
参考例3
参考例1で用いたと同じフィールドラテックス(ゴム固形分30重量%)を、デラバル型連続遠心分離機(約10,000G)を用いて固形ゴム分濃度が60重量%になるまで濃縮精製した。その際に最大粒径1μm以下ゴム粒子を約6重量%含むしょう液が副生した。このしょう液に、その全量に対してノニオンアニオン複合系界面活性剤(花王(株)製のネオペレックスF−25と同社製のエマルゲン109Pとを重量比で60:38で混合したもの)が0.5重量%、蛋白分解酵素(花王(株)製のアルカリプロテアーゼ)が0.01重量%の濃度となるように添加した。これを、40℃、24時間の条件で酵素処理後、硫酸アンモニウムを10重量%になるように添加して溶解させ、以下参考例1と同様にしてゴム固形分52重量%のクリーム(以下クリームCという)を得た。このクリームCは粒径0.1〜1μmのゴム粒子のラテックスであり、ゴム粒子の平均粒子径は0.30μmであった。
実施例1
日本ゼオン社製のカルボキシル変性NBRラテックス(LXー520、固形分濃度40重量%)100gに脱蛋白天然ゴム微粒子のラテックスであるクリームAを5g添加して、ラテックスNー1を調製した。ついで、このラテックスN−1を固形分量が21.5gに相当する量にて18cm×12cmのガラス板全面に流延し、室温下で放置して乾燥させ、生ゴムフィルムを得た。
実施例2
実施例1で用いたと同じNBRラテックス100gにクリームBを5g添加してラテックスN−2を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
実施例3
実施例1で用いたと同じNBRラテックス100gにクリームCを5g添加したラテックスN−3を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
実施例4
日本ゼオン社製のNBRラテックス(Nipolー1551、固形分濃度51重量%)100gにクリームBを8g添加してラテックスNー4を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
実施例5
電気化学工業社製のCRラテックス(LMー61、固形分濃度60重量%)100gにクリームAを5g添加してラテックスCー1を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
実施例6
実施例5で用いたと同じCRラテックス100gにクリームBを5g添加してラテックスC−2を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
実施例7
実施例5で用いたと同じCRラテックス100gにクリームCを5g添加したラテックスC−3を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例1
ラテックスN−1に代えて、カルボキシ変性NBRラテックス(前出のLXー520B)を単独で用いたほかは実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例2
ラテックスN−4に代えて、NBRラテックス(前出のNipolー1551)を単独で用いたほかは実施例4と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例3
ラテックスC−1に代えて、CRラテックス(前出のLMー61)を単独で用いたほかは実施例5と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例4
ラテックスNー1に代えて、日本ゼオン社製のSBRラテックス(Nipol4850A、固形分濃度70重量%)100gにクリームAを5g添加して調製したラテックスを用いたほかは実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例5
ラテックスNー1に代えて、住友精化社製のIRラテックス(Maxprene、固形分濃度65重量%)100gにクリームAを5g添加して調製したラテックスを用いたほかは実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例6
クリームAに代えて、市販の高アンモニア処理天然ゴムラテックス(固形分60重量%)5gをNBRラテックス(前出のLXー520B)100gに添加したラテックスを用いたほかは実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例7
クリームAに代えて、市販の高アンモニア処理天然ゴムラテックス(固形分60重量%)5gをCRラテックス(前出のLMー61)100gに添加したラテックスを用いたほかは実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
〔評価試験〕
上記各実施例および比較例で得た生ゴムフィルムの出来具合を観察して成膜特性を評価した。
(1) 成膜特性
成膜時にクラック発生などの理由で成膜が困難なものを成膜性が不良とし、均一な膜成形が可能であったものを良とした。
(2) 生ゴム強度
乾燥したフィルムはガラス板から剥がして、ガラス面に接していた面を1日乾燥させた。次いで、真空下で乾燥して生ゴム試験用フィルム試料とした。得られた試験用試料である生ゴムフィルムの強度をJIS 4号ダンベルを用いて試験速度500mm/分で測定した。
(3) 加硫ゴムの特性
上記各ラテックスのゴム固形分100gに、標準的な加硫系であるジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、亜鉛華および硫黄を各1gの割合で添加した後、50℃で19時間熟成し前加硫させた。ついで、上記生ゴムフィルムの成形と同様にしてガラス板上で流延フィルムを成形し乾燥後、100℃オーブン中で30分間、後加硫をした。得られた加硫フィルムについて収縮の状態を観測し、収縮の大きいものを大、小さいものを小として評価した。また、引っ張り試験を生ゴム試験と同条件で行った。
【0027】
それらの試験結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、SBRラテックスやIRラテックスでは効果が認められなかったが、NBRラテックスおよびCRラテックスの成膜特性は脱蛋白天然ゴム微粒子成分の添加で大幅に改善された。NBRラテックスおよびCRラテックスの成膜特性は、天然ゴムラテックスの添加でも改善されるが、その場合加硫時の収縮が大きいという欠点がある。
【0030】
また、脱蛋白天然ゴム微粒子成分を添加したNBRラテックスおよびCRラテックスは、加流ゴム特性において引っ張り強さが若干低下し、伸びが大きくなる傾向にあり、ゴムが柔らかくなっていることを示している。これは、手袋製品等における合成ゴムラテックス製品の欠点の一つである固い風合いを改善する好適な手段を提供する。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、合成ゴムラテックスの成形・加硫工程における成膜特性が大幅に向上し、その結果、亀裂がなく均一な膜をつくることが容易になり、手袋製造等における製品品質の向上に寄与することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する回転式平膜分離装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す装置の縦断面図である。
【符号の説明】
1 分離膜
2 支持板
3 スペーサ
4 透過流体通路
5 中空回転軸
【産業上の利用分野】
本発明は、ゴム系ラテックスの加工特性を改善したラテックス製ゴム膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
ゴム系ラテックスは、植物の代謝作用による天然の生産物である天然ゴム(NR)ラテックスと、エマルション重合によって相応する単量体から製造されたスチレンーブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴムラテックスと、固形高分子を水性媒質中に分散したイソプレンゴム(IR)、イソブテンーイソプレンゴム(IIR)等の人工ゴムラテックスとの3種類に分類される。
【0003】
これらのゴム系ラテックスは、フォームラバー等の発泡製品、手袋、コンドーム等の浸漬製品、さらに粘着剤や接着剤の原料等として工業的に用いられる。
ラテックスは、熱力学的に準安定状態にある分散系であり、常にその高い界面エネルギーを低下させようとするポリマー粒子ー水間の界面張力の作用によって粒子の凝集体を形成し、粒子の界面面積を縮小して安定な状態に移行しようとする傾向を有している。
【0004】
しかしながら、実際には、このラテックス粒子の凝集傾向は、粒子の電気二重層の作用ならびに界面活性剤または高分子保護コロイドが形成する吸着層の保護作用によって妨げられている。
ラテックスは、最終用途に供されるまでには、上述の熱力学的凝集傾向に加えて、さらに凝集体の形成傾向を促進する破壊作用が加えられる。この破壊作用に耐えうる度合いが安定性である。破壊作用には種々の作用があり、それに対応するラテックスの安定性は貯蔵安定性、化学的安定性、機械的安定性、凍結安定性等と呼ばれる。
【0005】
これらの安定性の中で、機械的安定性はラテックスが製造されてから輸送・配合されて最終用途に供せられるまでに、いろいろな形で受ける機械的操作による分散破壊ショックに対する抵抗力であり、ラテックスの重要な基本的性質の一つである。
また、化学的安定性は、ラテックスの加工時に受ける電解質および溶媒等による分散破壊作用に対する抵抗力であり、これもラテックスの重要な基本的性質の一つである。ラテックスは成形までの段階で凝集してしまうと実用に供し得ないが、成形段階では意図的に凝集させて成膜する必要がある。即ち、機械的安定性は出来るだけ高いほうが良いが、化学的安定性があまり高いと成形時に成膜が出来なくなるため、適当なバランスが必要となる。
【0006】
天然ゴムラテックスは、ゴム粒子に結合した親水性の蛋白質が水中での安定性に寄与すると同時に、ラテックスに含まれている天然の脂肪酸も、腐敗防止のために添加されたアンモニアと反応して両性のイオン性界面活性剤である脂肪酸アンモニウムとなり、ラテックスの安定化に寄与している。そのため、機械的安定性と化学的安定性のバランスが良く、さらに乾燥・加硫工程において膜の強度が強く、収縮も少ないため亀裂のない均一な膜を容易に成形することができる。
【0007】
一方、合成ゴムラテックスにおいては、ゴム粒子に結合した保護層を有しないため、主として界面活性剤の添加によってその安定性を保つ必要がある。界面活性剤の濃度を上げれば機械的安定性は増すが、成膜特性を損なう等の加工性に悪影響を及ぼすことが多い。
ラテックスからの膜形成過程は、大まかに粒子の充填、融着および拡散の過程に分けられる。すなわち、ラテックスを乾燥すると、水の蒸発とともにラテックス粒子は相互に近接して最密状態またはそれに近い状態に充填され、その空隙には界面活性剤および無機塩を溶解した水が残される(充填過程)。さらに、乾燥が進むと、粒子界面の吸着保護層が破壊されて、露出したゴム粒子自体の接触が起こる。通常乾燥温度が最低成膜温度よりも高いので、乾燥の進行とともに粒子は変形し且つ融着して膜を形成する(融着過程)。次いで粒子間隙および融着粒子間の水溶性物質がゴム中に溶解拡散されると、同時に融着粒子間においてゴム分子鎖自由端の相互拡散が進行して膜の機械的性質が向上する(拡散過程)。
【0008】
安定性を向上させるための界面活性剤がゴムとの相溶性の悪い場合やその量を多くすると、上記融着過程におけるゴム粒子の融着が阻害される。
一般に合成ゴムラテックスは天然ゴムラテックスに比べて、乾燥・加硫の工程で、膜の強度が弱い、収縮が起こる、フィルム表面に亀裂が入るなど成膜特性に劣っているが、その主たる原因は上記要因によるものと推測される。
【0009】
合成ゴムラテックスにおいて、界面活性剤の添加に依らずにその機械的安定性を向上させる技術としては、分散ゴム粒子をカルボキシル化変性することが一般的である。しかしながら、この技術をもってしても十分な効果がなく、合成ゴムラテックスの加工特性は、天然ゴムラテックスに比較して格段に劣るのが現実である。
【0010】
また、高分子保護コロイドの添加は化学的安定性を向上させても、機械的安定性の向上には殆ど効果はないが、ラテックス粒子に高分子保護コロイドをグラフト重合にて結合させるような条件で使用すると、著しく高い安定性が得られることが知られている。しかし、この手法は合成が多段階になることで経済的に容易に行えるものではなく実用化されていない。
【0011】
本発明の主たる目的は、合成ゴムラテックスの加工性を改善し、特に成形および加硫時における収縮が少なく亀裂のないゴム膜を容易に得ることができるラテックス製ゴム膜の製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、成膜特性の悪い合成ゴムラテックスに、天然ゴム微粒子を添加すると、合成ゴムラテックスの成膜特性を顕著に改善できるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに到ったものである。
【0013】
すなわち、本発明のラテックス製ゴム膜の製造方法は、平均粒径0.1〜0.5μmの天然ゴム微粒子を合成ゴムに対して1.0〜10重量%の割合で合成ゴムラテックスに添加した後、成膜することを特徴とする。
前記天然ゴム微粒子としては、脱蛋白天然ゴム微粒子が特に好適に使用可能である。また、天然ゴム微粒子は、ラテックスの形態で合成ゴムラテックスに添加するのが、取扱い性のうえから好ましい。
【0014】
本発明に用いられる脱蛋白天然ゴム微粒子には、例えばヘビアブラジリエンス等より産出するフィールドラテックスを遠心分離で濃縮して精製ラテックスを製造する際に発生するしょう液に含まれるゴム分を回収利用することが出来る。上記しょう液には平均粒径0.1〜0.5μmの微細ゴム粒子が4〜8%含まれ、通常酸を添加後沈澱させて固形ゴムとして回収されるが、不純物が多く低品質低価格のグレードとして利用されている。本発明においては、このしょう液に蛋白分解酵素と界面活性剤を加えて蛋白分解処理後、精製濃縮して、脱蛋白天然ゴム微粒子のラテックスとして使用する。すなわち、しょう液に蛋白分解酵素を添加して蛋白質を分解させた後、界面活性剤によって繰り返し洗浄して精製する。洗浄には遠心分離法が好適に採用される。
【0015】
蛋白分解用酵素としては、例えば細菌由来のもの、糸状菌由来のもの、酵母由来のものなどのいずれであってもよく、特に限定されるものではないが、細菌由来のプロテアーゼを使用するのが好ましい。かかる蛋白分解用酵素による分解処理は、通常、しょう液に蛋白分解用酵素を0.01〜10重量%の割合で添加し、数分間ないし1週間静置または攪拌することにより行うことができる。蛋白分解処理は、5〜90℃、好ましくは20〜60℃の温度で行うのが適当である。
【0016】
前記界面活性剤は蛋白分解処理時または処理後のいずれに添加してもよい。界面活性剤としては、例えば陰イオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤が使用可能である。陰イオン性界面活性剤としては、例えばカルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系などがあげられる。非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、アルキルポリグリコシド系などがあげられる。界面活性剤の添加量は、天然ゴムラテックスの0.001〜10重量%であるのが適当である。
【0017】
また、本発明に用いられる他の脱蛋白天然ゴム微粒子としては、本発明者らによって特開平6−56902号公報に開示された脱蛋白天然ゴムラテックスの遠心分離による濃縮精製工程で発生するしょう液に含まれるゴム分を濃縮して利用することも出来る。このしょう液には平均粒径0.1〜0.5μmのゴム分が2〜5重量%含まれている。濃縮の手法は、蛋白分解残渣のアミノ酸類を除去するために、遠心分離による精製濃縮、限外ロ過法による精製濃縮等が採用される。なお、前記脱蛋白天然ゴムラテックスの調製は、前記と同様に蛋白分解酵素と界面活性剤を加えて蛋白分解処理後、精製濃縮して行う。
【0018】
前述の遠心分離による精製濃縮では、遠心分離の効率を高めるために、比重の高い水溶性化合物をしょう液にその総量に対して5〜10重量%の割合で添加し溶解させた上で遠心分離することが必要である。添加する化合物はラテックスを凝固させず、ラテックスの特性を低下させないもので且つ最終製品に微量が残留しても悪影響の無いものであれば、無機化合物であっても有機化合物であっても良い。通常、硫酸アンモニウム、炭酸ソーダ等の無機塩類やポリエチレングリコール等の水溶性高分子が好適に利用される。
【0019】
遠心分離の手法は特に限定されないが、アミノ酸類の蛋白分解残渣やしょう液の比重を高めるために添加した水溶性化合物の混入を下げるために、回転数を高めるか、遠心分離時の滞留時間を長くする等の手法で、ゴム分濃度が60%以上となるように出来るだけ高く濃縮することが望ましい。
一方、限外ロ過による濃縮精製では、平膜法、チューブ法の他、回転平膜法も用いることができ、特に限定されないが、平膜法やチューブ法では凝固させずに高濃度に濃縮することが困難であるため、通常固形分濃度を20重量%以下に押さえる必要がある。
【0020】
また、脱蛋白天然ゴムの製法として、本発明者らが特願平6−52989号で提案した回転平膜法では、固形分を65%以上に濃縮することも可能である。また、限外ロ過膜としては分画分子量70万程度以上のものが好適に使用されるが、ゴム粒子を通過させずに蛋白分解残渣を通過させるものであれば良く、膜材の種類も特に限定されない。
【0021】
前記回転平膜法とは、蛋白分解処理したまたは蛋白分解処理用の天然ゴムラテックスに水および/または界面活性剤を添加後、回転式平膜分離装置にて精製処理する方法をいう。
ここで、回転式平膜分離装置は、図1、図2に示すように、支持板2の両側面にスペーサ3を介して分離膜1を配設し、支持板2と分離膜1との間に透過流体通路4を形成してなるプレート状膜ユニットを、中空回転軸6の内部に連通接続したものからなる。矢印5は、分離膜1に対する加圧方向を示している。前記プレート状膜ユニットの複数個を中空回転実施例6に沿って併設したものが一般的な実用装置である。かかる装置においては、天然ゴムラテックス中に装置を浸漬して、回転軸6を介して支持板2を矢印7方向に回転させることにより、矢印で示すように、分離膜1を通って、分解した蛋白質や蛋白分解酵素を含有する廃液が透過流体通路4に浸入し、それが回転軸6の中空内部を通って系外に排出され、精製された天然ゴムラテックスが装置の浸漬槽内に残留して分離処理が達成される。
【0022】
本発明における合成ゴムラテックスとしては、例えば、前記したNBR,CR,SBRの他、EPM,EPDM,ウレタンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴムなどのラテックスがあげられ、とくに制限されるものではないが、NBRまたはCRのラテックスにおいて、特に成膜特性の改善が著しい。
【0023】
前記天然ゴム微粒子は合成ゴムに対して1.0〜10重量%の割合で合成ゴムラテックスに添加されることが必要であって、この範囲より添加量が少ないときは成膜特性の改善を図ることができない。一方、添加量がこの範囲を超えると、合成ゴムの特徴(耐油性、気体の透過を防止する能力、耐熱性など)に悪影響を与えることになり、好ましくない。
【0024】
このようにして天然ゴム微粒子を添加した合成ゴムラテックスは、通常の成膜手段、例えば浸漬、塗布などを用いて、成膜することができる。
【0025】
【実施例】
以下、参考例および実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
参考例1
マレーシアFELDA社より入手したフィールドラテックス(ゴム固形分30重量%)に、ゴム固形分に対してノニオンアニオン複合系界面活性剤(花王(株)製のネオペレックスF−25と同社製のエマルゲン109Pとを重量比で60:38で混合したもの)を1重量%、蛋白分解酵素(花王(株)製のアルカリプロテアーゼ)を0.02重量%の濃度となるように添加した。これを、40℃、24時間の条件で酵素処理後、ゴム固形分濃度が10重量%になるように水で希釈した後、デラバル型連続遠心分離機(約10,000G)を用い、固形ゴム分濃度65重量%になるまで濃縮精製した。得られたクリームは再度ゴム固形分濃度が10重量%になるように水で希釈し、再度遠心分離してゴム固形分濃度65%、機械的安定性120秒(JIS K 6381に準拠した条件で測定)、ケルダール法により測定した生ゴム中の窒素含有量が0.007%の脱蛋白天然ゴムラテックスを得た。上記工程中、最初の遠心分離の際に副生したゴム固形分約5%のしょう液を濃縮して、脱蛋白天然ゴム微細粒子のラテックスとして使用した。
【0026】
上記しょう液に硫酸アンモニウムを10重量%になるように添加し溶解させた後、デラバル型連続遠心分離機(約10,000G)を用い濃縮してゴム固形分約50重量%のクリームを得た。このクリームを5重量%の硫酸アンモニウムを溶解させた水でゴム固形分が10重量%になるよう希釈した後、再度遠心分離してゴム固形分50重量%のクリーム(以下クリームAという)を得た。クリームAは粒径0.1〜1μmのゴム粒子のラテックスであり、ゴム粒子の平均粒子径は0.38μmであった。
参考例2
参考例1で得たしょう液を回転平膜法で濃縮精製した。即ち、公称分画分子量70万のポリスルホン限外ろ過膜(平膜径200mm)を装着した回転式平膜装置を配置した槽に上記しょう液を加えて装置を稼働させ、ゴム固形分濃度が約25重量%まで、即ち全量が元の1/5になるよう濃縮した。これを水で元の濃度まで希釈した後、再度1/4に濃縮した。次いで同様に希釈後、固形分が60重量%になるまで濃縮した。ここに得たラテックス(以下クリームBという)は粒径0.05〜1μmのゴム粒子のラテックスであり、ゴム粒子の平均粒子径は0.30μmであった。
参考例3
参考例1で用いたと同じフィールドラテックス(ゴム固形分30重量%)を、デラバル型連続遠心分離機(約10,000G)を用いて固形ゴム分濃度が60重量%になるまで濃縮精製した。その際に最大粒径1μm以下ゴム粒子を約6重量%含むしょう液が副生した。このしょう液に、その全量に対してノニオンアニオン複合系界面活性剤(花王(株)製のネオペレックスF−25と同社製のエマルゲン109Pとを重量比で60:38で混合したもの)が0.5重量%、蛋白分解酵素(花王(株)製のアルカリプロテアーゼ)が0.01重量%の濃度となるように添加した。これを、40℃、24時間の条件で酵素処理後、硫酸アンモニウムを10重量%になるように添加して溶解させ、以下参考例1と同様にしてゴム固形分52重量%のクリーム(以下クリームCという)を得た。このクリームCは粒径0.1〜1μmのゴム粒子のラテックスであり、ゴム粒子の平均粒子径は0.30μmであった。
実施例1
日本ゼオン社製のカルボキシル変性NBRラテックス(LXー520、固形分濃度40重量%)100gに脱蛋白天然ゴム微粒子のラテックスであるクリームAを5g添加して、ラテックスNー1を調製した。ついで、このラテックスN−1を固形分量が21.5gに相当する量にて18cm×12cmのガラス板全面に流延し、室温下で放置して乾燥させ、生ゴムフィルムを得た。
実施例2
実施例1で用いたと同じNBRラテックス100gにクリームBを5g添加してラテックスN−2を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
実施例3
実施例1で用いたと同じNBRラテックス100gにクリームCを5g添加したラテックスN−3を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
実施例4
日本ゼオン社製のNBRラテックス(Nipolー1551、固形分濃度51重量%)100gにクリームBを8g添加してラテックスNー4を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
実施例5
電気化学工業社製のCRラテックス(LMー61、固形分濃度60重量%)100gにクリームAを5g添加してラテックスCー1を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
実施例6
実施例5で用いたと同じCRラテックス100gにクリームBを5g添加してラテックスC−2を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
実施例7
実施例5で用いたと同じCRラテックス100gにクリームCを5g添加したラテックスC−3を調製し、以下実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例1
ラテックスN−1に代えて、カルボキシ変性NBRラテックス(前出のLXー520B)を単独で用いたほかは実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例2
ラテックスN−4に代えて、NBRラテックス(前出のNipolー1551)を単独で用いたほかは実施例4と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例3
ラテックスC−1に代えて、CRラテックス(前出のLMー61)を単独で用いたほかは実施例5と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例4
ラテックスNー1に代えて、日本ゼオン社製のSBRラテックス(Nipol4850A、固形分濃度70重量%)100gにクリームAを5g添加して調製したラテックスを用いたほかは実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例5
ラテックスNー1に代えて、住友精化社製のIRラテックス(Maxprene、固形分濃度65重量%)100gにクリームAを5g添加して調製したラテックスを用いたほかは実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例6
クリームAに代えて、市販の高アンモニア処理天然ゴムラテックス(固形分60重量%)5gをNBRラテックス(前出のLXー520B)100gに添加したラテックスを用いたほかは実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
比較例7
クリームAに代えて、市販の高アンモニア処理天然ゴムラテックス(固形分60重量%)5gをCRラテックス(前出のLMー61)100gに添加したラテックスを用いたほかは実施例1と同様にして生ゴムフィルムを得た。
〔評価試験〕
上記各実施例および比較例で得た生ゴムフィルムの出来具合を観察して成膜特性を評価した。
(1) 成膜特性
成膜時にクラック発生などの理由で成膜が困難なものを成膜性が不良とし、均一な膜成形が可能であったものを良とした。
(2) 生ゴム強度
乾燥したフィルムはガラス板から剥がして、ガラス面に接していた面を1日乾燥させた。次いで、真空下で乾燥して生ゴム試験用フィルム試料とした。得られた試験用試料である生ゴムフィルムの強度をJIS 4号ダンベルを用いて試験速度500mm/分で測定した。
(3) 加硫ゴムの特性
上記各ラテックスのゴム固形分100gに、標準的な加硫系であるジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、亜鉛華および硫黄を各1gの割合で添加した後、50℃で19時間熟成し前加硫させた。ついで、上記生ゴムフィルムの成形と同様にしてガラス板上で流延フィルムを成形し乾燥後、100℃オーブン中で30分間、後加硫をした。得られた加硫フィルムについて収縮の状態を観測し、収縮の大きいものを大、小さいものを小として評価した。また、引っ張り試験を生ゴム試験と同条件で行った。
【0027】
それらの試験結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、SBRラテックスやIRラテックスでは効果が認められなかったが、NBRラテックスおよびCRラテックスの成膜特性は脱蛋白天然ゴム微粒子成分の添加で大幅に改善された。NBRラテックスおよびCRラテックスの成膜特性は、天然ゴムラテックスの添加でも改善されるが、その場合加硫時の収縮が大きいという欠点がある。
【0030】
また、脱蛋白天然ゴム微粒子成分を添加したNBRラテックスおよびCRラテックスは、加流ゴム特性において引っ張り強さが若干低下し、伸びが大きくなる傾向にあり、ゴムが柔らかくなっていることを示している。これは、手袋製品等における合成ゴムラテックス製品の欠点の一つである固い風合いを改善する好適な手段を提供する。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、合成ゴムラテックスの成形・加硫工程における成膜特性が大幅に向上し、その結果、亀裂がなく均一な膜をつくることが容易になり、手袋製造等における製品品質の向上に寄与することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する回転式平膜分離装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す装置の縦断面図である。
【符号の説明】
1 分離膜
2 支持板
3 スペーサ
4 透過流体通路
5 中空回転軸
Claims (3)
- 平均粒径0.1〜0.5μmの天然ゴム微粒子を合成ゴムに対して1.0〜10重量%の割合で合成ゴムラテックスに添加した後、成膜することを特徴とするラテックス製ゴム膜の製造方法。
- 前記天然ゴム微粒子が脱蛋白天然ゴム微粒子である請求項1記載のラテックス製ゴム膜の製造方法。
- 前記合成ゴムラテックスがアクリロニトリルーブタジエンゴムラテックス,クロロプレンゴムラテックスである請求項1または2記載のラテックス製ゴム膜の製造方法。
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