JP3562140B2 - 送りねじ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじや角ねじ等の送りねじ装置に係り、特に、潤滑剤の供給に特徴を有する送りねじ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば,送りねじ装置の一種であるボールねじには、実開平6−47762号公報等に記載されているものがある。
【0003】
この種のボールねじは、図12に示すように、ねじ軸50の外周面に設けた螺旋状のねじ溝50aと、ナット部材51の内周面に設けた螺旋状のねじ溝51aとが、複数のボール52を介して螺合するように構成され、ナット部材51に対するねじ軸50の相対回転を、ボール52を介してナット部材51の軸方向への相対変位に変換するものである。
【0004】
また、ナット部材51の内径面両端部には、それぞれ環状の凹部53が形成され(図12では右端側のみを図示している)、その凹部53にシール部材54が装着されている。
【0005】
シール部材54は、潤滑剤を含有したプラスチックでリング状に成形されたものであり、その内周面から、ねじ軸50のねじ溝50aに嵌合可能な凸部54aが突出している。
【0006】
また、上記シール部材54の外周面とナット部材51の凹部53との間には、周方向全周にリング状のガータスプリング55が介挿されている。そのガータスプリング55は、シール部材54の外周面全周をねじ軸50外周面に向けて,即ちシール部材54を内径方向に弾圧するものである。
【0007】
さらに、ナット部材51における凹部53位置には、径方向に貫通するねじ穴56が形成され、そのねじ穴56に止めねじ57が取り付けられることで、シール部材54をナット部材51に固定している。
【0008】
そして、上記ガータスプリング55によってシール部材54の内周面とねじ軸50の外周面との間の隙間をゼロ以下として、ボールねじ内に充填した潤滑剤が外部に漏れることを防止すると共に外部からの異物の侵入を防止するものである。
【0009】
さらに、シール部材54から滲み出る潤滑剤によって、シール部材54の内周面とねじ軸50外周面との間の摺動部分の摩擦抵抗,つまり摺動トルクを低減すると同時に、ねじ軸50のねじ溝50a、さらにはボール52やナット部材51のねじ溝51aに対して潤滑剤が供給される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような構成の従来の送りねじ装置では、シール部材54の寸法誤差を吸収してシール部材54の内周面がねじ軸50の外周面に摺接するように、シール部材54の外周とナット部材51の凹部53との間にガータスプリング55を介挿する必要があり、その分だけ送りねじ装置の外径が大きくなるおそれがある。
【0011】
また、従来では、シール部材54を径方向に押圧することで当該シール部材54をねじ軸50外周面に当接させる構造であるため、上述のようにシール部材54外周の周方向全周にバネを設ける必要がある。
【0012】
また、シール部材54のガータスプリング55で押圧している側と反対側(ガータスプリングで押圧されていない部分)の内径部は、ねじ軸の外周面に対して浮上りぎみとなり、その部分からは潤滑剤が十分に供給されないおそれがある。
【0013】
なお、従来、上記ガータスプリング55の代わりに、上記止めねじ57の先端部とシール部材54との間にバネを介挿させたものもあるが、やはり径方向にのみ押圧しているために、例えば上記止めねじ57の配設位置と90度ずれた部分等では、シール部材54の内周面とねじ軸50の外周面とが非接触状態となったり止めねじで押圧している部分のねじ軸との摺接部分が偏摩耗したりするおそれがある。
【0014】
本発明は、以上のように問題点に着目してなされたもので、送りねじ装置の外径を大きくすることなく且つ簡単な構造で潤滑剤を含有した部材をねじ軸の外周面に均一に接触可能な送りねじ装置を提供することを課題としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の送りねじ装置は、ねじ軸と、そのねじ軸の外周に螺合するナット部材と、上記ナット部材に固定されてねじ軸外周面に接触し且つ所定の弾性力を有する潤滑剤供給装置とを備え、上記潤滑剤供給装置のうち少なくとも上記ねじ軸と対向する部分は潤滑剤を含有するゴム又は合成樹脂であって当該潤滑剤供給装置の外周側に切欠き部が形成され、その切欠き部には、当該切欠き部を少なくとも潤滑剤供給装置の周方向に押圧した状態で組み付けられる拡張部材が挿入されることを特徴としている。
【0016】
この発明においては、潤滑剤供給装置の切欠き部に拡張部材を挿入すると、当該拡張部材によって切欠き部が少なくとも潤滑剤供給装置の外周側を周方向に押し広げられる。
【0017】
これによって、潤滑剤供給装置の外周側内部には、周方向に沿った圧縮力が作用し、少なくとも内周面全面が内径方向に変形する。この結果、潤滑剤供給装置の内径は縮径して潤滑剤供給装置の寸法誤差を吸収し、もって当該潤滑剤供給装置の内周面はねじ部材の外周面に接触する。
【0018】
また、送りねじ装置の駆動に追従して、潤滑剤供給装置に含有された潤滑剤が経時的に徐々に滲み出ることで、ねじ部材の外周面と潤滑剤供給装置の内周面との間の摺動抵抗が低減されると共に、送りねじ装置の駆動に追従して、ねじ部材の外周面に潤滑剤が供給される。
【0019】
ここで、上記拡張部材は、潤滑剤供給装置内の一部(切欠き部)のみに挿入されるだけ、つまり、従来のように潤滑剤供給装置の外周全周に設置することなく、潤滑剤供給装置の内周面全面をねじ軸外周面に接触させることができるようになる。
【0020】
また、上記拡張部材を、潤滑剤供給装置外面の一部から突出する突出部分を設けておくと、その突出部分をナット部材等に嵌合させることで、当該拡張部材は、潤滑剤供給装置の回り止め防止の働きも併せ持つようになる。
【0021】
また、潤滑剤を含有する潤滑剤供給装置としては、例えば潤滑剤含有ポリマ部材が採用できる。
その潤滑剤含有ポリマ部材としては、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブチレン,ポリメチルペンテン等の基本的に同じ化学構造を有するポリオレフィン系ポリマーの群から選定したポリマに、潤滑剤としてポリα−オレフィン油のようなパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、ジアルキルジフェニルエーテル油のようなエーテル油、フタル酸エステルやトリメリット酸エステルのようなエステル油等の何れかを混合して加熱溶融した後、所定の型に注入して加圧しながら冷却固化させて成形したものを用いることができる。
【0022】
なお、上記混合したものに予め酸化防止剤,錆止め剤,摩耗防止剤,あわ消し剤,極圧剤等の各種の添加剤を加えたものでもよい。
また、上記潤滑剤含有ポリマの組成比は、全重量に対してポリオレフィン系ポリマーが20〜80重量%、潤滑剤80〜20重量%に設定するとよい。これは、ポリオレフィン系ポリマーが20重量%未満の場合には、潤滑剤供給装置として必要な硬さ・強度等を得ることができず、また、ポリオレフィン系ポリマーが80重量%を越える場合(潤滑剤が20重量%未満の場合)には、潤滑剤の供給が少なくなり、摺動トルク低減や潤滑剤供給の効果が小さくなることによる。
【0023】
上記ポリマーの群は、基本構造は同じでその平均分子量が異なっており、1×103 〜5×106 の範囲に及んでいる。その中で、平均分子量1×103 〜1×106 という比較的低分子量のものと、1×106 〜5×106 という超高分子量のものとを、単独もしくは必要に応じて混合して用いる。
【0024】
また、潤滑剤供給装置の機械的強度を向上させるため、上述のポリオレフィン系ポリマーに、以下のような熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を添加したものでもよい。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド,ポリカーボネート,ポリブチレンテレフタレート,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルスルホン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリアミドイミド,ポリスチレン,ABS樹脂等の各樹脂を使用することができる。
【0026】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,フェノール樹脂,ポリイミド樹脂,エポキシ樹脂等の各樹脂を使用することができる。
【0027】
これらの樹脂は、単独または混合して用いても良い。
更に、ポリオレフィン系ポリマーとそれ以外の樹脂とを、より均一な状態で分散させるために、必要に応じて適当な相溶化剤を加えてあっても良い。
【0028】
潤滑剤含有ポリマとして、上述のようなポリオレフィン系ポリマーと潤滑剤との組合せの他に、グリースを含有した状態で硬化したポリウレタンゴムも使用することもできる。以下に詳説する。
【0029】
ポリウレタンゴムは、ポリイソシアネートと活性水素化合物との反応により生成する化合物である。
ポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(MDI)と、TDI及びMDIと活性水素化合物(例えば、ヒマシ油)が反応したプレポリマー(MW1000〜2000)等を使用できる。
【0030】
活性水素化合物としては、ポリブタジエン等の炭化水素・ポリオキシプロピレン等のポリエーテル・ヒマシ油及びヒマシ油系ポリオール・ポリエステル・ポリカーボネート等の長鎖活性水素化合物、さらには、水、エチレングリコース等のポリヒドロキシ化合物、アミノアルコール、ポリアミノ化合物等の短鎖活性水素化合物を使用できる。
【0031】
グリースとしては、鉱油リチウム石鹸グリース等の通常のグリースが使用できる。
この場合、潤滑剤含有ポリマの組成比は、全重量に対してポリウレタンゴムが80〜40重量%、グリース20〜60重量%とすることが好ましい。ポリウレタンゴムが40重量%未満の場合には、必要な硬さ・強度等を得ることができない。また、ポリウレタンゴムが80重量%を越える場合(グリースが20重量%未満の場合)には、潤滑剤の供給が少なくなり、摺動トルクの低減の効果が小さくなる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。本実施の形態では、送りねじ装置としてボールねじを例に挙げて説明する。勿論、角ねじ等の他の送りねじ装置であっても下記に説明する構成と同様な構成により採用することができる。
【0033】
ここで、図1は、第1の実施の形態に係るボールねじの要部を示すための分解斜視図、図2は、要部断面図である。
まず、第1の実施の形態の全体構成を説明すると、ボールねじは、螺旋状のねじ溝1aを外周面に有するねじ軸1に、ナット部材2が多数のボール3を介して螺合されることで構成される。ナット部材2は、ねじ軸1のねじ溝1aに対応したねじ溝2aが内周面に形成されていると共に、両ねじ溝1a,2a内を転動するボール3を導いて循環させるための図示しないボール循環路を肉厚の胴部分に有している。
【0034】
また、ナット部材2の内径側両端面には、それぞれ潤滑剤供給装置取付け用の凹部4が、ナット部材2と同軸に且つ環状に形成されている。また、ナット部材2の両端面には、それぞれ軸をナット部材2の軸と平行にして、ねじ穴5が各2個設けられている。そして、上ナット部材2の記凹部4に潤滑剤供給装置6が同軸に取り付けられている。
【0035】
その潤滑剤供給装置6は、図3に示すように、外径が上記凹部4に嵌合可能な径をもったリング状の部材であり、例えば,ゴム部材や合成樹脂等の材質から構成されることで撓み可能な所定の弾性力を備えると共に、グリースや鉱物油等の潤滑剤を含有している。
【0036】
また、その潤滑剤供給装置6には、その周方向の一か所に組付け用の切断部6aを有すると共に、その切断部6aから90度だけ周方向にずれた外周部の各位置に、それぞれ切欠き部7が形成されている。これにより、2個の切欠き部7が、相互に周方向へ180度ずれた対称な位置に形成される。本実施の形態では、上記切欠き部7は、潤滑剤供給装置6の厚さ方向に延びる断面円形形状に成形されている。
【0037】
さらに、潤滑剤供給装置6の内周面には、ねじ軸1のねじ溝1aに嵌合可能な凸部6bが内径方向に突出している。
また、上記潤滑剤供給装置6の各切欠き部7に嵌入可能な拡張部材を構成する管部材8を備える。その管部材8は、上記切欠き部7の径よりも若干大きな外径を有すると共に、上記潤滑供給装置の厚さよりも若干だけ長い管状の部材から構成される。
【0038】
さらに、上記潤滑剤供給装置6をナット部材2に取り付けるための止め輪9を備える。
この止め輪9は、図4に示すように、ナット部材2と同径の外径を有すると共にねじ軸1の外周面に接触しないだけの内径を有する。また、止め輪9におけるナット部材2と対向する面には、上記ナット部材2に設けたねじ穴5に対応する位置にそれぞれ貫通孔9aが形成されていると共に、上記潤滑剤供給装置6の切欠き部7と対応する位置にそれぞれ管部材8を嵌合可能な凹部9bが形成されている。
【0039】
そして、先ず、潤滑剤供給装置6を上記凹部4に嵌め込み、ねじ軸1とナット部材2との間に介挿させたのち、上記潤滑剤供給装置6の切欠き部7に上記管部材8をそれぞれナット部材2の軸と平行に嵌入する。または、切欠き部7に管部材8を嵌入した後に、潤滑剤供給装置6を上記凹部4に嵌め込む。この状態では、切欠き部7に嵌入した管部材8の端部は、それぞれ外方に突出した状態となっている。
【0040】
続いて、止め輪9の凹部9bに上記突出している管部材8の端部を嵌めるようにして、当該止め輪9をナット部材2の端部に当てた後、止め輪9の貫通孔9aに通した止めねじ10を、ナット部材2のねじ穴5に螺合させる。このようにして、上記潤滑剤供給装置6はナット部材2に固定される。
【0041】
ここで、上記潤滑剤供給装置6は、例えば、潤滑剤含有ポリマのみで形成されたものであり、かかる潤滑剤供給装置6の製造方法は、例えば,潤滑剤含有ポリマを加熱溶融した後、所定の金型に注入して加圧しながら冷却固化させて成形することができる。この場合、射出成形が可能である。また、例えば,潤滑油含有ポリマ部材として、低分子量ポリエチレン(分子量1×103 〜5×105 )20重量%と超高分子量ポリエチレン(分子量1×106 〜5×106 )10重量%からなるポリエチレンに、潤滑剤としてパラフィン系鉱油70重量%を混合したものを用いる。
【0042】
次に、上記ボールねじの動作や効果等を説明する。
ねじ軸1がナット部材2に対して相対回転すると、ナット部材2内のボール3は相対するねじ溝1a,2aで形成された螺旋状空間をねじ軸1の回転方向に転動し、図外のボール循環路を経て循環移動する。そのボール3の転動を介してナット部材2はねじ軸1に沿い直線方向に送られる。また、上記潤滑剤供給装置6の凸部6bによって、ボールねじ内に充填した潤滑剤の外部への漏洩を防止すると共に外部からの塵埃等の異物の侵入が防止され、当該潤滑剤供給装置6はシール部材を兼ねるようになっている。
【0043】
ここで、潤滑剤供給装置6は、寸法誤差を有することで、内周面とねじ軸1の外周面との間に、そのままでは微小な隙間が形成されるおそれがあるが、本実施の形態では、図5に示すように、切欠き部7に当該切欠き部7より大きな管部材8を挿入することで、当該切欠き部7は、潤滑剤供給装置6の外周側を周方向に押し広げる。
【0044】
即ち、潤滑剤供給装置6の外周側内部に周方向に向かう圧縮力が作用し、その圧縮力によって内周面全面が内径側に変位する。この結果、内径が縮径し、寸法誤差があっても、潤滑剤供給装置6の内周面全周は、確実にねじ軸1の外周面に接触するようになる。
【0045】
このとき、本実施の形態では、従来のように潤滑剤供給装置6を径方向に押圧して内周面をねじ軸1外周面に接触させるのではなく、周方向に沿った圧縮力によって内周面をねじ軸1外周面に接触させる構造であるので、上記切欠き部7は、潤滑剤供給装置6の全周に設ける必要がない。しかも、潤滑剤供給装置6内に拡張部材である管部材8を挿入するだけであるので、ナット部材2の径、つまり送りねじ装置の外径を大きくすることも回避される。
【0046】
また、潤滑剤供給装置6は潤滑剤を含有しているので、潤滑剤供給装置6の内周面から徐々に滲み出る潤滑剤によって、潤滑剤供給装置6の内周面とねじ軸1外周面との間の摺動時の摩擦抵抗が大幅に低減されることで摺動トルクが小さくなり、ボールねじの駆動の妨げとなることが防止される。
【0047】
さらに、ボールねじが駆動されると、ねじ軸1の相対回転に伴って潤滑剤供給装置6の内周面から潤滑剤が徐々に滲み出して、ねじ軸1のねじ溝1aに供給され、そのねじ溝1a内を転動するボール3及びナット部材2のねじ溝1aへと均一にくまなく行き渡り長期間にわたり安定した潤滑が行われる。
【0048】
従って、殊更に潤滑剤を外部からナット部材2内に供給しなくても、ボールねじは、低トルクで良好な運転を長時間続けることができる。なお、以上のようにナット部材2内に外部から潤滑剤を供給しなくても済むため、潤滑剤をごく少量しか使用できない装置、例えば半導体製造装置での潤滑手段として用いると効果的である。
【0049】
さらに、上述のように切欠き部7に管部材8を挿入することで、潤滑剤供給装置6の内部に周方向に向かう圧縮力が作用することで、当該潤滑剤供給装置6に設けた切断部6aの対向面同士を接触若しくはその間隙を小さくする効果も持つようになる。
【0050】
また、潤滑剤供給装置6の内周面をねじ軸1外周に押圧させるための管部材8の端部を止め輪9の凹部9bに嵌めるだけで、ボールねじの駆動の際の潤滑剤供給装置6の回転を防止できるようになる。つまり、拡張部材である管部材8は、潤滑剤供給装置6の回り止めの役割も併せもつようになる。
【0051】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様な部材には同一の符号を付して説明する。
本実施の形態のボールねじの基本構成は、図6に示すように、上記第1の実施の形態と同様な構成を備えている。
【0052】
即ち、潤滑剤供給装置6の外周部には、図7に示すように、切欠き部7が90度ずつ周方向にずらして3か所に設けると共に、内周面にねじ軸1のねじ溝1aの嵌合する凸部6bを設けていない。
【0053】
また、上記切欠き部7に挿入する拡張部材12は、当該拡張部材12を組み付け易くするために、図8に示すように、軸方向に沿ったスリット12aを有するバネ部材から構成している。
【0054】
また、止め輪9は、図9に示すように、その外径をナット部材2に設けた凹部4に嵌合可能な外径とし、貫通孔9aの代わりに周面に径方向に軸を向けたねじ穴9cを設けたものである。また、ナット部材2にも径方向に軸を向けた対応する取付け穴13を設けておく。ここで、図6中、17は、上記ねじ穴9c及び取付け穴13に取り付けられる止めねじを表している。
【0055】
他の構成は上記第1の実施の形態と同様である。
そして、上記第1の実施の形態と同様な作用・効果を持つ。
ここで、上記潤滑剤供給装置6の内周面には、ねじ軸1のねじ溝1aの嵌合可能な凸部6bを持たないが、拡張部材の作用により潤滑剤供給装置6の内径が縮径して当該潤滑剤供給装置6の内周面がねじ軸1の外周面に押しつけられることで接触するため問題はない。
【0056】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様な部材には同一の符号を付して説明する。
本実施の形態のボールねじの基本構成は、図10及び図11に示すように、上記第1の実施の形態と同様な構成を備えている。
【0057】
但し、ナット部材2に潤滑剤供給装置6を嵌合する凹部を設けることなく、ナット部材2の端面に、同軸に当該潤滑剤供給装置6を当接するようにしたものである。
【0058】
また、潤滑剤供給装置6に設けた切欠き部7の位置に対応するナット部材2の端面の位置には、ねじ穴15が設けてある。
また、止め輪9は、上記潤滑剤供給装置6を収納可能なキャップ状に成形し、また、上記貫通孔9aを設けることなく、管部材8を嵌め込む凹部9bの底面から外部に向かう小径のねじ穴16を設ける。
【0059】
そして、上記ねじ穴16、凹部9b、管部材8内部を同軸にして通した止めねじ10の先端部をナット部材2のねじ穴15に螺合することで固定する。
これにより、ナット部材2に凹部4を設けることなく、しかも、拡張部材である管部材8の設置位置と同位置に潤滑剤供給装置6を固定するための止めねじ10をレイアウトさせることが可能となる。
【0060】
なお、潤滑剤供給装置6は、少なくともねじ軸1の外周面と接触する部分、即ち内周面側だけを潤滑剤を含有した部材から構成してあればよい。
また、潤滑剤供給装置6は、内径側だけを軟らかく構成させてもよい。このようにすると、潤滑剤供給装置6として要求される形状保持のための硬度を外周部側に持たせると共に、周方向に沿った圧縮力による内周側の内径方向への変位量を大きく且つねじ軸1外周面への押圧力を小さく設定することが可能となる。
【0061】
また、上記実施の形態では、切欠き部7を2箇所又は3箇所設けた例で説明しているが、切欠き部7は1箇所でもよいし4箇所以上設けてもよい。また、複数の切欠き部7の形状も同一にする必要もない。
【0062】
また、その形状も断面円形に限定されず断面角状でも良いし、その切欠き部7の軸もナット部材2の軸と必ずしも平行に設定する必要はない。
また、上記実施の形態は、切欠き部7を潤滑剤供給装置6の外周に開放しているが、外周側が閉じた孔形状に切欠き部7を形成してもよい。但し、外周に開放した方が効果が大きい。
【0063】
また、拡張部材として、中空の管形状を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、中軸の円柱状でも良いし、断面形状も円形に限定されるものではない。
【0064】
さらに、本実施の形態では、拡張部材の端部を止め輪9側に突出されているが、ナット部材2側に突出させ、ナット部材2側に対応する凹部を設けてもよい。また、拡張部材の外周部に潤滑剤供給装置6の外周方向に突出する部分を設けて、その突出部分を回り止めに使用してもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、潤滑剤供給装置6にシール部材の役割を兼ねさせているが、別途シール部材を設けてもよい。
【0066】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の送りねじ装置においては、送りねじ装置が駆動されると、潤滑剤供給装置内の潤滑剤がねじ軸の回転に従って徐々に滲み出して、潤滑剤が送りねじ装置内に自動的に供給され、この結果、外部から潤滑剤を供給しなくても、低トルクで良好な運転を、長期間にわたり良好に続けることができるという効果がある。
【0067】
特に、ナット部材内に外部から潤滑剤を供給しなくても済むため、潤滑剤をごく少量しか使用できない装置、例えば半導体装置での潤滑手段として用いると効果的である。
【0068】
しかも、本発明の送りねじ装置においては、上記効果を持つ潤滑剤供給装置の内周面を、簡易な手段でねじ軸の外周面に確実に接触させると共に送りねじ装置の外径を大型化することもなく設けることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るボールねじの要部を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るボールねじの要部を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る潤滑剤供給装置を示す図であり、(a)は断面図を、(b)は正面図をそれぞれ表している。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る止め輪を示す図であり、(a)は側面図を、(b)は外方からみた正面図を表している。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る切欠き部と拡張部材の作用を説明するための図であり、(a)は拡張部材を挿入する前を、(b)は挿入した後の状態を表している。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るボールねじの要部を示す断面図である。る。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る潤滑剤供給装置を示す図であり、(a)は断面図を、(b)は正面図をそれぞれ表している。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る拡張部材を示す図であり、(a)は側面図を、(b)は正面図を表している。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る止め輪を示す図であり、(a)は側面図を、(b)は外方からみた正面図を示している。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るボールねじの要部を示す分解斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係るボールねじの要部を示す部分断面図である。
【図12】従来のボールねじの要部を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 ねじ軸
1a ねじ溝
2 ナット部材
2a ねじ溝
3 ボール
4 凹部
5 ねじ穴
6 潤滑剤供給装置
7 切欠き部
8 管部材(拡張部材)
9 止め輪
9a 貫通孔
9b 凹部
10 止めねじ
12 拡張部材
Claims (1)
- ねじ軸と、そのねじ軸の外周に螺合するナット部材と、上記ナット部材に固定されてねじ軸外周面に接触し且つ所定の弾性力を有する潤滑剤供給装置とを備え、上記潤滑剤供給装置のうち少なくとも上記ねじ軸と対向する部分は潤滑剤を含有するゴム又は合成樹脂であって当該潤滑剤供給装置の外周側に切欠き部が形成され、その切欠き部には、当該切欠き部を少なくとも潤滑剤供給装置の周方向に押圧した状態で組み付けられる拡張部材が挿入されることを特徴とする送りねじ装置。
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