JP3508402B2 - ボールねじ - Google Patents

ボールねじ

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JP3508402B2
JP3508402B2 JP18598596A JP18598596A JP3508402B2 JP 3508402 B2 JP3508402 B2 JP 3508402B2 JP 18598596 A JP18598596 A JP 18598596A JP 18598596 A JP18598596 A JP 18598596A JP 3508402 B2 JP3508402 B2 JP 3508402B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工作機械、産業機
械等に用いられるボールねじの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種のボールねじとしては、図
19,図20に示すものが知られている。このボールね
じは、ねじ軸aの外周面に設けた螺旋状のねじ溝bと、
ボールねじナットcの内周面に設けた螺旋状のねじ溝d
との間に複数のボールeを介在させ、ねじ軸b(又はボ
ールねじナットc)の回転をボールeを介してボールね
じナットc(又はねじ軸b)の軸方向の変位に変換する
ものである。ボールねじナットcの端部には、該ボール
ねじナットcの内部に充填された潤滑剤の洩出及び外部
からの異物の侵入を防止するため、シール部材fが装着
されている。
【0003】シール部材fは、ポリアセタール樹脂等の
樹脂材でリング状に形成されたものが一般的であり、そ
の内周面にねじ軸aのねじ溝bに嵌合する凸部gを有す
ると共に、そのリングを切断する径方向の切欠き(切
割)jが1ヵ所設けてある。そして、当該切割jを開き
リングを拡開させてねじ軸aに嵌め合わせた後、ボール
ねじナットcの端部外周面からシール取付けねじhをね
じ込み、シール部材fの外径面を内側に強く圧迫するこ
とにより固定されている。
【0004】しかしながら、リング状のシール部材fを
ねじ軸aに嵌め込んだ後、止めねじhによってボールね
じナットcに固定しているので、ねじ軸aのねじ溝bと
シール部材の凸部gとの嵌合すき間は、ねじ軸aとシー
ル部材fとの寸法関係に依存することになる。このた
め、嵌合すき間は常にゼロになるとは限らず、ボールね
じの使用条件によっては十分なシール性が得られない場
合がある。
【0005】このような不都合を解消するために、例え
ば図21〜図23に示すようなシール部材mを有するボ
ールねじが提案されている。このものは、リング状のシ
ール部材mの外側の端面から軸方向の途中までの部分を
切欠きkにより周方向の複数箇所で分割し、かつ、周方
向の一カ所をリングを切断する径方向のスリットoで切
り離してボールねじナットcの端部に装着し、分割され
た部分をガータスプリングn等で内径側に弾性的に押圧
することにより、ねじ軸aのねじ溝bとシール部材mの
凸部gとの嵌合すき間をゼロ以下にしている。さらに、
シール部材mをプラスチックグリースで形成して、嵌合
すき間をゼロ以下にしたことによって増大するねじ軸a
のねじ溝bと凸部gとの間の摩擦抵抗を、シール部材m
から滲み出る潤滑剤によって小さくしたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】シール部材mをガータ
スプリングn等で締めつけると共に、シール部材自体に
潤滑剤を含有させて摩擦抵抗の低減を図った前記従来の
ボールねじにあっては、確かに嵌合すき間を常にゼロ以
下に保ってシール性を確保することができる。しかしシ
ール部材mの固定については、依然としてシール取付け
ねじhでシール部材mを内側に押圧するものであり、プ
ラスチックグリースからなるシール部材mの潤滑剤含有
量を多くすると軟らかくなり過ぎてしまい、シール取付
けねじhを締め付けて固定することが難しくなる。それ
ゆえシール部材の潤滑剤含有量を十分に多くしてシール
寿命を延長することができないという問題点がある。
【0007】本発明は、このような従来のボールねじの
問題点に着目してなされたものであり、ねじ軸のねじ溝
とシール部材とのシール性をより向上させると共に、シ
ール部材の潤滑剤含有量を十分に多くしても確実に固定
して取付けることができ、その結果長期間にわたり十分
なシール性能を維持して良好な機能を発揮できるボール
ねじを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の請求項1に係るボールねじは、螺旋状の
ねじ溝を外周面に有するねじ軸と、該ねじ軸のねじ溝に
対応するねじ溝を内周面に有して前記ねじ軸に多数のボ
ールを介し螺合されるボールねじナットと、前記ねじ軸
のねじ溝に嵌合する凸部を内周面に有するシール部材と
を備え、前記ボールねじナットの端部外周面からねじ込
まれたシール取付けねじにより前記シール部材を前記ボ
ールねじナットの端面に形成された環状の凹部内に固定
して構成されるボールねじにおいて、前記シール部材を
潤滑剤含有ポリマから形成するとともに、前記シール部
材の外周面に形成された複数の凹所に円筒状の補強部材
を設け、これらの補強部材内に前記シール取付けねじの
先端部を係合させて前記シール部材を前記凹部内に固定
したことを特徴とするものである。
【0009】ここで、上記潤滑剤含有ポリマは、例え
ば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブチレン,ポ
リメチルペンテン等の基本的に同じ化学構造を有するポ
リオレフィン系ポリマーの群から選定したポリマに、潤
滑剤としてポリα−オレフィン油のようなパラフィン系
炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、ジアルキル
ジフェニルエーテル油のようなエーテル油、フタル酸エ
ステルやトリメリット酸エステルのようなエステル油等
のいずれかを混合したものを用いることができる。尚、
混合したものに予め酸化防止剤,錆止め剤,あわ消し
剤,極圧剤等の各種の添加剤を加えたものでもよい。
【0010】上記潤滑剤含有ポリマの組成比は、全重量
に対してポリオレフィン系ポリマーが20〜90重量
%、潤滑剤80〜10重量%より好ましくは潤滑剤70
〜40重量%である。ポリオレフィン系ポリマーが20
重量%未満の場合は、シール部材として必要な硬さ、強
度等が得られない。また、ポリオレフィン系ポリマーが
90重量%を超える場合(潤滑剤が10重量%未満の場
合)は、潤滑剤の供給が少なくなり、ボールねじ自体の
潤滑不良が生じる。
【0011】上記ポリマーの群は、基本構造は同じでそ
の平均分子量が異なっており、1×103 〜5×106
の範囲におよんでいる。その中で、平均分子量1×10
3 〜1×106 という比較的低分子量のものと、1×1
6 〜5×106 という超高分子量のものとを、単独も
しくは必要に応じて混合して用いる。
【0012】また、シール部材の機械的強度を向上させ
るため、上述のポリオレフィン系ポリマーに、以下のよ
うな熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を添加したもので
もよい。
【0013】熱可塑性樹脂としては、ポリアミド,ポリ
カーボネート,ポリブチレンテレフタレート,ポリフェ
ニレンサルファイド,ポリエーテルスルホン,ポリエー
テルエーテルケトン,ポリアミドイミド,ポリスチレ
ン,ABS樹脂等の各樹脂を使用することができる。
【0014】熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステ
ル樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,フェノール樹脂,ポ
リイミド樹脂,エポキシ樹脂等の各樹脂を使用すること
ができる。
【0015】これらの樹脂は、単独または混合して用い
てもよい。さらに、ポリオレフィン系ポリマーとそれ以
外の樹脂とをより均一な状態で分散させるために、必要
に応じて適当な相溶化剤を加えてあってもよい。
【0016】また、シール部材の潤滑剤含有ポリマとし
ては、上記のようなポリオレフィン系ポリマーと潤滑剤
との組み合わせの他に、潤滑剤を含有した状態で硬化し
たポリウレタンゴムからなるものとすることができる。
【0017】ポリウレタンゴムは、ポリイソシアネート
と活性水素化合物との反応により生成する化合物であ
り、ポリイソシアネートとしてはトリレンジイソシアネ
ート,ヘキサメチレンジイソシアネート等を使用でき
る。活性水素化合物としては、ポリブタジエン等の炭化
水素,ポリオキシプロピレン等のポリエーテル,ひまし
油,ポリエステル,ポリカーボネート等の長鎖活性水素
化合物,水,エチレングリコール等のポリヒドロキシ化
合物,アミノアルコール,ポリアミノ化合物等の短鎖活
性水素化合物を使用できる。
【0018】含有される潤滑剤はグリースであり、鉱油
リチウム石けんグリース等の通常のグリースが使用でき
る。ポリウレタンゴムとグリースとの配合比としては、
ポリウレタンゴム40〜90重量%、グリースは60〜
10重量%で好ましくは50〜30重量%である。ポリ
ウレタンゴムが40重量%未満ではシール部材として必
要な強度が出ない。一方、グリースが10重量%未満で
は潤滑剤の供給量が少な過ぎる。
【0019】本発明のシール部材に用いる補強部材は、
例えばアルミニウム,SPCC,SECC等の金属製、
または耐油性の大きいポリアミド(ナイロン66)樹脂
やPPS樹脂等のプラスチック製とすることができる。
形状は円環状ないし円弧状とされ、潤滑剤含有ポリマか
らなるシール部材の外周側に圧入,接着,一体成形(イ
ンサート成形)等の手段で固着される。
【0020】本発明の請求項に係るボールねじにあっ
ては、シール部材の材料として潤滑剤含有ポリマを用い
ており、シール部材自体から潤滑剤が徐々に滲みだして
自己潤滑を行う。そのため、外部から潤滑剤を供給する
ことなくボールねじの機能を長期間にわたり良好に維持
できる。
【0021】上記潤滑剤含有ポリマは、潤滑剤含有量が
多い程潤滑剤の滲みだし期間が長いから、長期にわたり
潤滑機能を発揮することができる。しかし反面、潤滑剤
含有量が多い程シール部材は軟らかくなり、取付けねじ
を締め付けても締め付け個所の局部的変形で締め付け力
が吸収されてしまい、ボールねじナットへの固定が困難
になってくる。ところが、本発明にあっては、潤滑剤含
有ポリマにより形成したシール部材の外周側に設けた補
強部材が、シール取付けねじの締め付け力を周方向に広
く分散させて当該シール部材の局部的変形を防止する。
したがって、たとえ潤滑剤含有量が多い軟らかいシール
部材であっても、外周側からほぼ平均した押圧力で安定
に取りつけられる。したがって、潤滑剤含有量を多くし
た寿命の長いシール部材の使用が可能である。
【0022】本発明の請求項に係るボールねじは、請
求項記載のボールねじにおけるシール部材を、周方向
に連続したリング状とし、その内周面の凸部がねじ軸の
ねじ溝にゼロ以下の嵌合すき間で嵌合するようにした。
【0023】ここで、嵌合すき間がゼロ以下とは、嵌合
すき間がゼロの状態或いは締代をもった状態(マイナス
すき間)をいい、具体的には例えばすき間0〜−0.1
mm程度を意味する。
【0024】通常、シール部材の嵌合すき間がマイナス
になるとシールトルクが大きくなり、シールに摩耗が発
生してシール性が低下するのであるが、請求項2に係る
発明にあっては、シール部材の材料として潤滑剤含有ポ
リマを用いており、シール部材自体から潤滑剤が徐々に
滲みだして自己潤滑を行う。そのため、シールトルクが
小さくなり、その結果シール部材の摩耗が少なくて済み
長期間にわたり高いシール性を維持できる。
【0025】また、請求項に係る発明は、シール部材
を周方向に連続したリング状としたため、リングの収縮
につれてシール部材の内径面が自動的にねじ軸を締めつ
けることとなり、その結果高いシール性が維持される。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。図1,図2は本発明の一実施形態
例であり、図1はボールねじの要部断面図、図2はシー
ル部材の正面図である。
【0027】まず、図1に従って全体構成を説明する
と、ボールねじは、螺旋状のねじ溝1aを外周面に有す
るねじ軸1に、ボールねじナット2が多数のボール3を
介して螺合されている。ボールねじナット2はねじ軸1
のねじ溝1aに対応するねじ溝2aを内周面に有する。
ボール3はねじ溝1a,2aによって形成された螺旋状
空間をねじ軸1の回転方向に転動しつつボールねじナッ
ト2の胴部に設けられたボール循環路(図示せず)に導
かれて循環移動する。そして、ねじ軸1が回転すると、
ボール3の転動を介してボールねじナット2がねじ軸1
に沿って直線方向に送られる。
【0028】前記ボールねじナット2の端面には環状の
凹部4が形成されており、この凹部4に潤滑剤含有ポリ
マからなる周方向に連続したリング状のシール部材5が
嵌め込まれている。当該シール部材5は、ねじ軸1のね
じ溝1aに嵌合する凸部5aを内周面に有すると共に、
外周面には、全周にわたり環状の溝7が形成されてお
り、この溝7内には例えば冷延鋼板(SPCC)製のリ
ング状の補強部材8が、嵌合されている。そして、ボー
ルねじナット2の端部外周面からねじ込み、先端を前記
補強部材8に当てたシール取付けねじ6の締め付けによ
って凹部4内に固定されている。
【0029】前記補強部材8は本発明において重要な要
素である。すなわち、補強部材8が無い場合には、シー
ル部材5を凹部4内に固定するにあたり、シール取付け
ねじ6の先端を直接にシール部材5の外周面に当てて押
圧することとなる。そのため、シール部材5があまりに
軟らかいとシール取付けねじ6に当たる箇所のみが局部
的に変形してしまい、締付け力がシール部材全体には及
ばず確実な固定が困難になる。一方、潤滑剤含有ポリマ
は潤滑剤含有量の割合が多くなるほど軟らかくなる。換
言すると、シール部材5の確実な固定を保証するために
シール部材5の潤滑剤含有量が規制されてしまい、潤滑
剤含有量を十分に多くしてシール寿命を延長することが
できない。ところが実施形態例においては、補強部材8
でシール部材5の外周を補強したため、潤滑剤含有ポリ
マの含油量を多くしても、シール取付けねじ6の締付け
力は補強部材8を介してシール部材5のほぼ全体に及ぶ
こととなり、確実な固定が実現できる。このため、シー
ル部材5からの潤滑剤供給期間を大幅に延長することが
可能である。
【0030】前記シール部材5について更に詳細に説明
すると、潤滑剤含有ポリマで周方向に連続して形成され
ており、従来のシール部材のように切欠きで不連続のリ
ングとしたものとは異なる。その連続した内周面の凸部
5aをねじ軸のねじ溝1aに嵌合してねじ軸1に取り付
けた状態での嵌合すき間はゼロ以下即ち−0.1mmに
なっている。
【0031】このシール部材5は、潤滑剤含有ポリマを
加熱溶融した後、所定の金型に注入して加圧しながら冷
却固化させて成形される。成形法は圧縮成形もしくは射
出成形等が可能である。
【0032】本実施形態例の潤滑剤含有ポリマとして
は、低分子量ポリエチレン(分子量1×103 〜5×1
5 )45重量%と超高分子量ポリエチレン(分子量1
×10 6 〜5×106 )5重量%からなるポリエチレン
に、潤滑剤としてパラフィン系鉱油50重量%を混合し
たものを用いており、潤滑剤の含有量が潤滑剤含有ポリ
マ全体の半分と非常に大きな割合を占めている。
【0033】かかる構成のボールねじにおいては、シー
ル部材5の凸部5aの内径を予めねじ軸1のねじ溝1a
に対して嵌合すき間ゼロ以下となるように設定したもの
を嵌合させているので、嵌合後に更に従来のようなガー
タスプリング等の押圧部品を用いないで済む。この結
果、ボールねじの製造コストの低減を図ることができ
る。
【0034】また、シール部材5を潤滑剤含有ポリマで
形成しているので、嵌合すき間をゼロ以下にすることに
よって増大するねじ軸1のねじ溝1aとシール部材5の
凸部5aとの間の摩擦抵抗を、シール部材5から滲み出
た潤滑剤によって小さくすることができる。この結果、
摩擦によるトルクの上昇及びシール部材5の発熱を抑制
することができる。
【0035】また、シール部材5から経時的に徐々に滲
み出た潤滑剤は、ねじ軸1の回転に伴ってねじ溝1aに
供給され、その後、ねじ溝1aを介して該ねじ溝1a内
を転動するボール3及びボールねじナット2のねじ溝2
aへと均一にくまなく供給されるので、ボールねじナッ
ト2内に外部から潤滑剤を供給しなくても、低トルクで
良好な運転を長期間続けることができる。しかも、本実
施形態例の潤滑剤含有ポリマの潤滑剤含有量の割合は、
低分子量ポリエチレン45重量%,超高分子量ポリエチ
レン5重量%,潤滑剤としてのパラフィン系鉱油50重
量%を混合してなる潤滑剤含有ポリマ全体の半分と非常
に多くしてあるから一層長期間にわたり自己潤滑が可能
で、ボールねじナット2の外部からの潤滑剤供給がなく
ても済む。そのため、潤滑剤をごく少量しか使用できな
い装置、例えば半導体製造装置での潤滑手段として用い
ると効果的である。
【0036】さらに、シール部材5をその周方向に連続
して形成しているので、シール部材5から潤滑剤が滲み
出て該シール部材5が収縮してきても、その収縮力がね
じ軸1を押圧する力は、ねじ軸1のねじ溝1aと凸部5
aとの嵌合すき間を小さくする力として作用する。この
結果、ねじ溝1aと凸部5aとの嵌合すき間を長期間に
わたってゼロ以下に維持することができる。
【0037】図3,図4にシール部材5の他の実施形態
例を示す。この場合の補強部材8の構造は、前記第1の
実施形態例における補強部材8が単純な鉄製の薄肉円環
状であるのに対して、例えばガラス繊維を10重量%含
有するポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂製でそ
の内面の全周にわたる逆台形状の嵌合突起9を有し、こ
の補強部材8をコアにしてインサート成形でシール部材
5を形成して、シール部材5と補強部材8との両者を一
体化してある点が前、第1の実施形態例とは異なってい
る。
【0038】この実施形態例における潤滑剤含有ポリマ
としては、低分子量ポリエチレン20重量%と超高分子
量ポリエチレン10重量%からなるポリエチレンに、潤
滑剤としてパラフィン系鉱油を70重量%とさらに多量
の割合で混合したものを用いている。このように多量の
潤滑剤を含有したことで軟らかさを増しても、潤滑剤含
有ポリマと補強部材8とが嵌合突起9を介して強固に一
体化されており、そのためシール取付けねじ6の締付け
力は補強部材8を介してシール部材5の全体に確実に伝
達されて確実に固定できる利点がある。このため、シー
ル部材5からの潤滑剤供給期間をより大幅に延長するこ
とが可能である。
【0039】その他の作用効果は、上記第1の実施形態
例の場合と同様である。図5,図6にシール部材5の第
3の実施形態例を示す。この実施形態例における潤滑剤
含有ポリマとしては、上記第2の実施形態例と同じ組成
のものを用いている。このシール部材5は、その外径面
の円周3等分の位置に、シール部材5の厚みを軸平行に
貫く断面U形の溝10を設けてある。一方で、各溝10
の溝径よりそれぞれ直径が0.1〜0.12mmと僅か
に大きい補強部材としてのアルミニウム製の円管11を
用意しておく。この円管11の側面には、取付けねじ6
の先端が嵌入する穴11hが開けてある。そして、予め
ボールねじのねじ軸1に嵌め込んだシール部材5を、ボ
ールねじナット2の凹部4に挿入してから、外周3ヵ所
のU溝10に前記円管11をそれぞれ圧入する(その円
管11の側面の穴11hがシール取付けねじ6に対向す
る位置にする)。その後、ボールねじナット2に螺合し
たシール取付けねじ6締め付けていき、そのねじ先端を
円管11の側面の穴11hに進入させて各円管11ひい
てはシール部材5を固定する。
【0040】すなわち、この場合はシール外周に円周等
分に配した円管状の補強部材(11)を介して、シール
取付けねじ6により軟らかいシール部材5を確実に固定
している。補強部材をアルミニウム製の円管としたこと
で軽量且つ低コストのシール部材5を提供できる利点が
ある。その他の作用効果は、上記第1の実施形態例の場
合と同様である。
【0041】なお、この実施形態例における潤滑剤含有
ポリマは、第1の実施形態例と同一組成のものを使用し
ている。図7,図8にシール部材5の第4の実施形態例
を示す。
【0042】この実施形態例は、シール部材の潤滑剤含
有ポリマとして、グリース50重量%含有ポリウレタン
ゴムを使用している点が上記各実施形態例とは異なって
いる。当該グリース含有ポリウレタンゴム製シール部材
5の潤滑剤含有ポリマは、ポリイソシアネートとしての
2,4−トルレンジイソシアネート及び2,6トルレン
ジイソシアネートの混合物(混合比65:35、日本ポ
リウレタン工業株式会社製,コロネートT−65,)
と、活性水素化合物としてのポリエステルポリオール
(日本ポリウレタン工業株式会社製,ニッポラン403
2,)と、グリースとしての鉱油リチウム石けんグリー
ス(昭和シェル株式会社製,アルバニアグリースNo.
2,)とを、反応により生成するポリウレタンゴムとグ
リースの比率が1:1になるように混合し、その混合物
を適当な金型中で加熱硬化させて成形したものである。
【0043】このようにグリース含有ポリウレタンゴム
を使用した潤滑剤含有ポリマを用いたシール部材5は、
弾力性に富むので締め代を設定し易く、シール性も向上
する利点がある。
【0044】また、このように潤滑剤含有ポリマ自体が
弾力性に富んでいるものであっても、シール部材5の全
周を補強部材8で補強する必要もない。この場合の補強
部材8は、シール部材5の幅と同じ幅とした1/4円弧
状のSPCC製またはPPS製の補強部材8を2枚、シ
ール部材5の外周面の凹部12に対向配置して、吸油性
接着剤で面一に接着している。
【0045】このシール部材5の装着にあたっては、上
記2枚の補強部材8のうちのいずれか一方のほぼ中心部
近くをシール取付けねじ6で押圧する。その押圧力は各
補強部材8及び潤滑剤含有ポリマ自体の弾性によってシ
ール部材5の全体にいき渡り、平均に分配されて均一な
シールが行われる。
【0046】その他の作用効果は、上記第1の実施形態
例の場合と同様である。図9にシール部材5の第5の実
施形態例を示す。この場合は、上記第4の実施形態例に
おける補強部材8の両端を内径側に折り曲げて突起を設
けた点が異なっている。この突起13で補強部材8の端
部の接着面積を増やすことにより、剥がれやすい端部の
接着強度が向上する利点がある。潤滑剤含有ポリマとし
ては、上記第4の実施形態例と同じくグリース50重量
%含有ポリウレタンゴムを使用しており、作用効果は第
4の実施形態例と同様である。
【0047】図10にシール部材5の第6の実施形態例
を示す。この場合も、上記第5の実施形態例と同じく補
強部材8の接着強度を増大させたものであるが、但し補
強部材8の裏面全体に多数の突起14を設けて、両端部
のみでなく補強部材全体の接着強度を高めている点が第
5の実施形態例とは異なっている。これにより、補強部
材8が剥がれにくくなる利点がある。その他の作用効果
は上記第4,第5の実施形態例と同様である。
【0048】図11,図12にシール部材5の第7の実
施形態例を示す。この場合も、上記第4〜第6の実施形
態例と同様に、潤滑剤含有ポリマにはグリース50重量
%含有ポリウレタンゴムを使用している。
【0049】補強部材8については、上記第4の実施形
態例と同様、シール部材5の幅と同じ幅とした1/4円
弧状のSPCC製またはPPS製の補強部材8を2枚、
対向配置して用いているが、但しその取り付け方が異な
っている。すなわち、この実施形態例のシール部材5
は、補強部材8の表面に吸油性接着剤を塗布した後に所
定の金型に挿入し、インサート成形で形成されている。
【0050】したがって、補強部材8はシール部材5の
表面に露出することなく潤滑剤含有ポリマ内部に埋め込
まれており、両者の接合は非常に強固で、剥離する恐れ
は全くないという利点がある。
【0051】その他の作用効果は上記第4の実施形態の
場合と同様である。なお、上記各実施形態では、シール
部材のボールねじナットへの固定は補強板の外面に取付
けねじの押圧力を加えて行っているものを示したが、こ
れに限らず、図13に示すように補強部材8にシール取
付けねじ6の貫通孔を設けてシール取付けねじ6を通
し、ねじ先端をシール部材5の外周部に設けた穴15に
係合させるようにしてもよい。
【0052】図14,図15にシール部材5の第8の実
施形態例を示す。この実施形態例は、補強部材8が円筒
状(スリーブ状)であり、これをシール部材5の外周面
に形成した半径方向の凹所16に嵌め込んで装着してあ
る点が、上記各実施形態の場合と異なっている。この場
合、二個の円筒状の補強部材8を、シール部材5の外周
面に180°の位相で配設しているが、これに限らず、
補強部材8は一個でも良く、または円周等分に三個以上
を配設しても良い。
【0053】このシール部材5の潤滑剤含有ポリマに
は、低分子量ポリエチレン20重量%と超高分子量ポリ
エチレン10重量%からなるポリエチレンに、潤滑剤と
してパラフィン系鉱油を70重量%の割合で混合して軟
らかさを増したものを用いている。
【0054】このシール部材5をボールねじナット2へ
固定するには、ナット端面の環状の凹部4にシール部材
5を嵌め込む。その時、ボールねじナット2に予め形成
してある取付けねじ孔6aに補強部材8の位置を合わせ
る。次いで、取付けねじ孔6aにシール取付けねじ6を
螺合し、ねじ先端が円筒状の補強部材8の孔に係合する
までねじ込み固定する。
【0055】この実施形態例では、潤滑剤含有ポリマか
らなる周方向に連続したリング状のシール部材5が、ね
じ軸に対して垂直な方向から嵌着した円筒状の補強部材
8を介してシール取付けねじ6で固定されており、シー
ル取付けねじ6の締付け力が直接シール部材5に加わる
ことがない。すなわち、多量の潤滑剤を含有させた軟ら
かい潤滑剤含有ポリマからなるシール部材5であって
も、ねじ締付け力で変形させることなく確実に且つ容易
に固定することができる利点がある。このため、シール
部材5からの潤滑剤供給期間を大幅に延長することが可
能である。
【0056】その他の作用効果は、上記第1の実施形態
例の場合とほぼ同様である。図16,図17にシール部
材5の第9の実施形態例を示す。この実施形態例は、切
割20を有するシール部材5に、上記の円筒状(スリー
ブ状)の補強部材8を適用したものである。潤滑剤含有
ポリマからなるシール部材5は、軸方向の長さがやや長
いリング状に形成され、その内周面にねじ軸1のねじ溝
1aに嵌合する凸部5aを有すると共に、ねじ軸に対し
て平行な方向にリングを切断する切割20が1ヵ所設け
てある。シール部材5の外周面には環状の周溝21が形
成されており、その周溝21内にガータスプリング22
が嵌合されている。更に、ガータスプリング22と干渉
しない位置に、円筒状の補強部材8が嵌着されている
(1ヵ所のみ図示)。
【0057】この切割付きのシール部材5は、切割20
を開いてリングを拡開させてねじ軸1に嵌め合わせた
後、ボールねじナット2の端面の凹部4に嵌入され、ナ
ット側面からねじ込んだ取付けねじ6の先端を補強部材
8に係合させることにより固定されている。
【0058】この実施形態例では、切割20で拡開して
取り付けたシール部材5を、ガータスプリング22で弾
性的に締めつけることにより、ねじ軸1のねじ溝1aと
シール部材5の内周の凸部5aとの嵌合すき間をゼロ以
下に保っている。嵌合すき間をゼロ以下にしても、シー
ル部材5から滲み出る潤滑剤で摩擦抵抗の増大は抑制さ
れ、長寿命が保証できる。また、シール取付けねじ6の
締付け力が直接シール部材5に加わることがないから、
多量の潤滑剤を含有させた軟らかい潤滑剤含有ポリマか
らなるシール部材5を使用することが可能であり、シー
ル部材5からの潤滑剤供給期間を大幅に延長することが
できる利点がある。
【0059】その他の作用効果は、上記第1の実施形態
例の場合とほぼ同様である。図18にシール部材5の第
10の実施形態例を示す。この実施形態例は、上記第9
の実施形態におけるシール部材5の外側に、合成樹脂製
のラビリンスシール23を重ねて取り付けたもので、特
に塵埃の多い雰囲気中で使用されるボールねじの場合
に、大きな防塵機能を発揮する利点がある。その他の作
用効果は、上記第1及び第9の実施形態例とほぼ同様で
ある。
【0060】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明の請求項
に係るボールねじによれば、シール部材から滲み出た
潤滑剤をボールねじのねじ溝、ボール及びボールねじナ
ットのねじ溝にくまなく供給することができるので、ボ
ールねじナット内に外部から潤滑剤を供給しなくても、
低トルクで良好な運転を長期間続けることができるとい
う効果が得られる。
【0061】また、補強部材でシール外周を補強したこ
とで、潤滑剤含有量の多い軟らかいシール部材を使用し
ても確実に固定することができ、従来よりはるかに多量
の潤滑剤を含有させた合成樹脂や合成ゴム材を潤滑剤含
有ポリマとして用いることが可能となり、その結果、従
来より遙に長寿命のシール部材を備えたボールねじを提
供できるという効果を奏する。
【0062】本発明の請求項に係るボールねじによれ
ば、請求項におけるシール部材を周方向に連続させ、
且つシール部材内周面の凸部とねじ軸のねじ溝との嵌合
すき間をゼロ以下にしたため、上記請求項の効果に加
えて、さらに次の効果が得られる。
【0063】シール部材が周方向に連続しているから、
シール部材自体の収縮力がねじ軸のねじ溝とシール部材
との嵌合すき間を小さくする力として作用する。したが
ってガータスプリングのような押圧部品を用いずにシー
ルすき間をゼロ以下にすることが可能で、ボールねじの
部品削減、コスト低減ができる。
【0064】また、含有潤滑剤の消耗に伴いシール部材
が収縮するにつれて、シール部材の内径面が自動的にね
じ軸を締めつけるので、高いシール性が維持される。ま
た、嵌合すき間をゼロ以下にすることによって増大する
ねじ軸のねじ溝とシール部材の凸部との間の摩擦抵抗
を、シール部材から滲み出た潤滑剤によって小さくする
ことができるので、摩擦によるトルクの上昇及びシール
部材の発熱を抑制することができる。
【0065】また、切割付きシール部材のように、潤滑
剤の滲み出しによる収縮で切割が開き、そのすき間から
塵埃がボールねじ内部に侵入するおそれもなく、長期間
にわたって良好なシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例の要部断面図である。
【図2】図1に示すもののシール部材の正面図である。
【図3】本発明の他の実施形態例の要部断面図である。
【図4】図3に示すもののシール部材の正面図である。
【図5】本発明の他の実施形態例の要部断面図である。
【図6】(a)は図4に示すもののシール部材の正面
図、(b)は円管の斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態例の要部断面図である。
【図8】図7に示すもののシール部材の正面図である。
【図9】本発明の他の実施形態例のシール部材の正面図
である。
【図10】本発明の他の実施形態例のシール部材の正面
図である。
【図11】本発明の他の実施形態例の要部断面図であ
る。
【図12】図11に示すもののシール部材の正面図であ
る。
【図13】本発明のシール部材の他の固定態様を説明す
る要部断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態例の要部断面図であ
る。
【図15】図14に示すもののシール部材の一部を切り
欠いて示す正面図である。
【図16】本発明の他の実施形態例の半断面図である。
【図17】図16に示すもののシール部材の一部を切り
欠いて示す側面図である。
【図18】本発明の他の実施形態例の半断面図である。
【図19】従来のボールねじの一例を示す要部断面図で
ある。
【図20】図19に示すもののシール部材の正面図であ
る。
【図21】従来のボールねじの他の例を示す要部断面図
である。
【図22】図21に示すもののシール部材の正面図であ
る。
【図23】図22の左側面図である。
【符号の説明】
1 ねじ軸 1a ねじ溝(ねじ軸の) 2 ボールねじナット 2a ねじ溝(ボールねじナットの) 3 ボール 4 凹部(ナットの) 5 シール部材 5a 突部 6 シール取付けねじ 7 (補強部材嵌合用)溝 8 補強部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 植木 史雄 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (56)参考文献 特開 昭55−47045(JP,A) 特開 昭58−146753(JP,A) 特開 平6−213299(JP,A) 実開 平7−4952(JP,U) 実開 昭53−47476(JP,U) 実開 昭59−172811(JP,U) 実開 昭59−172812(JP,U) 実開 平2−91253(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 19/00 - 37/16 F16H 49/00 F16C 29/00 - 29/10

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 螺旋状のねじ溝を外周面に有するねじ軸
    と、該ねじ軸のねじ溝に対応するねじ溝を内周面に有し
    て前記ねじ軸に多数のボールを介し螺合されるボールね
    じナットと、前記ねじ軸のねじ溝に嵌合する凸部を内周
    面に有するシール部材とを備え、前記ボールねじナット
    の端部外周面からねじ込まれたシール取付けねじにより
    前記シール部材を前記ボールねじナットの端面に形成さ
    れた環状の凹部内に固定して構成されるボールねじにお
    いて、 前記シール部材を潤滑剤含有ポリマから形成するととも
    に、前記シール部材の外周面に形成された複数の凹所に
    円筒状の補強部材を設け、これらの補強部材内に前記シ
    ール取付けねじの先端部を係合させて前記シール部材を
    前記凹部内に固定したことを特徴とするボールねじ。
  2. 【請求項2】 請求項記載のボールねじにおいて、シ
    ール部材は周方向に連続したリング状で、その内周面の
    凸部が前記ねじ軸のねじ溝にゼロ以下の嵌合すきまで嵌
    合する特徴とするボールねじ。
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