JP3561855B2 - 放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネル - Google Patents
放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネル Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、高画質の放射線増感スクリーン及び高画質の放射線画像変換パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医療診断用放射線像および各種物体の非破壊での放射線像を得、これを診断、放射線探傷検査などに用いる手法として、主にハロゲン化銀等の写真感光材料と放射線増感スクリーンの組み合わせである放射線写真法や、放射線エネルギーを吸収した後、可視光や赤外線などの電磁波で励起することにより蓄積していた放射線エネルギーを蛍光の形で放出する輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換法が挙げられる。
【0003】
放射線写真法は、被写体を透過した、或いは被写体から発せられた放射線を放射線増感スクリーンの蛍光体に照射して励起することにより可視光に変換せしめてハロゲン化銀写真感光材料に放射線画像を形成せしめて診断、検査するものである。これらの放射線画像は、支持体の両面または片面にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料(以下、感光材料と言う)に放射線増感スクリーンを両面または片面に密着せしめ、被写体を介して放射線を照射して画像が形成される。
【0004】
蛍光体は発光輝度が高く、比較的少ない放射線量で放射線画像を形成せしめるため、被検体の放射線被曝線量を低減できるが、画像の鮮鋭性や粒状性は蛍光体粒子の大小に左右されることが知られている。
【0005】
そのため、放射線増感スクリーンの画質を向上させるための、様々な手段がとられている。即ち、特開昭63−179300号には、放射線増感スクリーン表層側の蛍光体の粒子径を小さくし鮮鋭性及び粒状性を改良する技術が開示されている。
【0006】
しかし蛍光体の粒径を小さくすると、蛍光体そのものの発光量が低下、発光体による発光の散乱が増加し、蛍光体層内部の発光光が表面に届きにくく感度が低下する。
【0007】
一方、輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線画像変換パネル(輝尽性パネルとも称する)を利用するもので、被写体を透過した、或いは被写体から発せられた放射線を前記パネルの輝尽性蛍光体に吸収させ、その後、輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(輝尽励起光)で時系列的に励起することにより、前記輝尽性蛍光体に蓄積されている放射線エネルギーを可視光(輝尽発光光)として放出させ、この蛍光を電気的に読み取り電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体、或いは被検体の放射線画像を可視像として再生するものである。一方、読み取りを終えた前記パネルは、残存する画像の消去が行われた後、次の撮影に備えられる、即ち、放射線画像変換パネルは繰り返し使用される。
【0008】
放射線画像変換パネルも、鮮鋭性及び粒状性を改良するために蛍光増感スクリーン同様に蛍光体の粒径を小さくすると、蛍光体そのものの輝尽発光量が低く、かつ発光体による輝尽発光の散乱が増加し、蛍光体層内部の輝尽発光光が表面に届きにくく感度が低下する。
【0009】
従って、蛍光体粒子による散乱光による感度の低下がなく、鮮鋭性、粒状性に優れた放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルが求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、感度、鮮鋭性、粒状性に優れた放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題点は、下記の本発明により解決された。即ち、
1.支持体上に蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光層を有する放射線増感スクリーンにおいて、該蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/2以下であることを特徴とする放射線増感スクリーン。
【0012】
2.前記蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/4以下であることを特徴とする1記載の放射線増感スクリーン。
【0013】
3.前記蛍光体層に結合剤として平均分子量が3000以上70000以下である熱可塑性エラストマーの少なくとも1種を含有することを特徴とする1又は2記載の放射線増感スクリーン。
【0014】
4.支持体上に蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光体層を有する放射線増感スクリーンにおいて、該蛍光体層が2層以上の重層構成となっており、かつ支持体から最も遠い蛍光体層に用いられる蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/2以下であることを特徴とする放射線増感スクリーン。
【0015】
5.前記蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/4以下であることを特徴とする4記載の放射線増感スクリーン。
【0016】
6.前記蛍光体層に結合剤として平均分子量が3000以上70000以下である熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする4又は5記載の放射線増感スクリーン。
【0017】
7.支持体上に輝尽性蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/2以下であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0018】
8.前記輝尽性蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/4以下であることを特徴とする7記載の放射線画像変換パネル。
【0019】
9.前記輝尽性蛍光体層に結合剤として平均分子量が3000以上70000以下である熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする7又は8記載の放射線画像変換パネル。
【0020】
10.支持体上に輝尽性蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体層が2層以上の重層構成となっており、かつ支持体から最も遠い輝尽性蛍光体層に用いられる輝尽性蛍光体粒子の平均粒子径が、0.01μm以上、該輝尽性蛍光体の主発光波長の1/2以下であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0021】
11.前記輝尽性蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/4以下であることを特徴とする10記載の放射線画像変換パネル。
【0022】
12.前記輝尽性蛍光体層に結合剤として平均分子量が3000以上70000以下である熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする10又は11記載の放射線画像変換パネル。
【0023】
以下、本発明を詳述する。
【0024】
本発明の放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルは、支持体上に蛍光体粒子又は輝尽性蛍光体を結合剤中に分散含有する蛍光体層を有し、蛍光体層に用いられる蛍光体粒子又は輝尽性蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/2以下であり、好ましくは0.01μm以上、該蛍光体主発光波長の1/4以下である。
【0025】
本発明の蛍光体の主発光波長とは、蛍光体の発光スペクトルの主蛍光体スペクトルを言い、発光強度の最も高いピークのピーク波長を指す。
【0026】
例えば、CaWO4では420nm(0.42μm)であり、Gd2O2S:Tbでは544nm(0.54μm)となる。しかし強度が似たピークが多数存在する蛍光体、例えばLaOBr:Tbは380nm、440nm、451nmに似た強度のピークが存在するため、最も短い波長の380nm(0.38μm)とする。これは長波長のピークに蛍光体の平均粒径を合わせると、短波長の発光の透過率が低下しやすく、効果が低減する場合があるからである。
【0027】
一般的には、放射線増感スクリーン、輝尽性プレート用蛍光体の発光波長は300〜700nm程度であり、本発明の蛍光体粒子又は輝尽性蛍光体粒子の平均粒径は350nm(0.35μm)が上限である。
【0028】
以下に主な蛍光体の主発光波長を示す。
【0029】
CaWO4 420nm
Gd2O2S:Tb 544nm
LaOBr:Tb 380nm
YTaO4 338nm
これら蛍光体粒子又は輝尽性蛍光体粒子の平均粒子径は、該粒子径を小さくすることによって鮮鋭性が向上することが分かっている。しかし粒子径を小さくすると発光光の蛍光体粒子による散乱が増加するため、蛍光体層の支持体に近い層からの発光が蛍光体層の表面に届きにくくなり、感度が低下することが分かっている。
【0030】
しかし蛍光体粒子又は輝尽性蛍光体粒子を微粒子化し、該粒子の平均粒径を蛍光体又は輝尽性蛍光体の発光波長の1/2以下にすると、蛍光体層の発光に対する透過率が向上し、散乱光が減少し、感度を落とさず画質を向上せしめることが分かった。即ち光が波の性質を有するため、粒子が波長より十分小さくなると光の透過性が高くなるためである。
【0031】
しかし、蛍光体粒子の平均粒径が0.01μm未満では、蛍光体の単位体積あたりの表面積が増加するため、蛍光体表面に多く存在する格子欠陥や不純物等の発光を阻害する要因の影響を受けやすくなる。また、粒子が小さいために、蛍光体の結晶化が不完全であり、微量賦活物の存在状態も不均一になりやすく、蛍光体の発光輝度が急激に低下する。そのために放射線増感スクリーンや放射線画像変換パネルとしては用いられない。
【0032】
また、支持体に近い層に発光強度の高い粒子径0.05〜0.35μmの大きな粒径の蛍光体を塗布することによって、更に発光強度を向上せしめることができる。
【0033】
蛍光体粒子径の測定は、ミクロトーム等を使用して放射線増感スクリーンや放射線画像変換パネルの蛍光層断面を露出させ、蛍光層よりプラズマ低温灰化処理法(例えば、ヤマト科学〔株〕PR−503型)で蛍光体表面の結合剤を除去し、粒子を露出させる。処理条件は結合剤は除去されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これを走査型電子顕微鏡で観察し、粒子の画像を画像処理装置(例えばピアス〔株〕製LA−555)に接続して観察箇所を変え粒子数3000個以上で次式の処理を行い、これにより得られた数平均粒子径Dを平均粒子径とした。 D=ΣDi/N
ここでDiは粒子の等価円直径、Nは個数である。
【0034】
本発明の放射線増感スクリーン又は放射線画像変換パネルに用いられる主発光波長の1/2以下である微粒子蛍光体は、難分散性であるため蛍光体の分散性の低下を招き、鮮鋭性、粒状性が低下しやすい。そのため、蛍光体用結合剤としては熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーの分子量を制御することで蛍光体の分散性を向上させ、画像の鮮鋭性、粒状性を向上せしめることができる。大粒径の蛍光体では、易分散性のため結合剤の分子量の影響はうけにくい。
【0035】
本発明の放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルに用いられる蛍光体の結合剤としては、熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は3000以上70000以下であり、この場合には微粒子蛍光体の分散性を向上させることができる。
【0036】
熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が3000以下では、対屈曲性が悪く、特に折り曲げで曲げ跡、ひび割れが発生する。重量平均粒子量が70000以上では、延性が高く、蛍光体の分散性が低下する。
【0037】
結合剤の分子量は、東ソー〔株〕製分子量測定器GPC、HLC−8020、UV検出器UV−8010(オートサプラーAS−8000、データ処理SC−8010)を用い、カラムはGMHXL2本(THF用)を使用し、溶媒にTHFを用いて、流速1ml/min、inlet temp40℃、Overtemp40℃、RI temp40℃に設定し、披検結合剤をTHFに溶解し0.5(wt/vl)%に調整した。測定サンプル量は100μlとした。予め分子量既知のポリスチレンにより作成された検量線から、試料結合剤の分子量をポリスチレンの分子量に換算して求めることができる。
【0038】
熱可塑性エラストマーの種類としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、これらエラストマーは蛍光体との結合力が強いため、分散性が良好である。また、延性にも富み放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルにしたときの対屈曲性が良好である。
【0039】
本発明に用いられる結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂の他、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブタジェン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、天然ゴム、フッ素ゴム、ポリイソプレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、スチレン−ブタジェンゴム、セルロース樹脂及びシリコンゴム等が挙げられる。
【0040】
本発明の放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルに用いられる結合剤と後述の蛍光体との混合比は、1:1乃至1:100(重量比)の範囲から選ばれたのが好ましく、さらに1:8乃至1:40(重量比)の範囲から選ばれるのが好ましい。
【0041】
本発明の放射線増感スクリーンに用いられる好ましい蛍光体としては、以下に示すものが挙げられる。
【0042】
タングステン酸塩系蛍光体(CaWO4、MgWO4、CaWO4:Pb等)、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体〔Y2O2S:Tb、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、(Y.Gd)2O2S:Tb、(Y.Gd)O2S:Tb.Tm等〕、テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体(YPO4:Tb、GdPO4:Tb、LaPO4:Tb等)、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tb、LaOBr:Tb.Tm、LaOCl:Tb、LaOCl:Tb.Tm、LaOCl:Tb.Tm.LaOBr:Tb GdOBr:Tb GdOCl:Tb等)、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tm、LaOCl:Tm等)、硫酸バリウム系蛍光体〔BaSO4:Pb、 BaSO4:Eu2+、(Ba.Sr)SO4:Eu2+等〕、2価のユーロビウム賦活アルカリ土類金属燐酸塩系蛍光体〔(Ba2PO4)2:Eu2+、(Ba2PO4)2:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体〔BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、BaFCl:Eu2+.Tb、BaFBr:Eu2+.Tb、BaF2・BaCl・KCl:Eu2+、(Ba・Mg)F2・BaCl・KCl:Eu2+等〕、沃化物系蛍光体(CsI:Na、 CsI:Tl、NaI、KI:Tl等)、硫化物系蛍光体〔ZnS:Ag(Zn.Cd)S:Ag、(Zn.Cd)S:Cu、(Zn.Cd)S:Cu.Al等〕、燐酸ハフニウム系蛍光体(HfP2O7:Cu等)、タンタル酸塩系蛍光体(YTaO4、YTaO4:Tm、YTaO4:Nb、〔Y,Sr〕TaO4:Nb、〔Y,Sr〕TaO4:Gd、GdTaO4:Tm、Gd2O3・Ta2O5・B2O3:Tb等)、ただし本発明に用いられる蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線の照射によって可視又は近紫外領域の発光を示す蛍光体であれば使用できる。
【0043】
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる好ましい輝尽性蛍光体としては、以下に示すものが挙げられる。
【0044】
アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体(BaFBr:Eu、BaFI:Eu、BaFBr1−xIx:Eu、BaFCl:Eu、BaFBr:Ce、BaBrI:Eu、BaBrCl:Eu、SrFBr:Eu、BaBr2:Eu等)、アルカリハライド系蛍光体(RbBr:Tl、RbI:Tl、CsI:Na、RbBr:Eu、RbI:Eu、CsI:Eu)等、硫化物系蛍光体(SrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、CaS:Eu,Sm等)、アルミン酸バリウム系蛍光体(BaO・xAl2O3:Eu等)、アルカリ土類金属珪酸塩系蛍光体(MgO・xSiO2:Eu等)、希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Bi,Tb,Pr等)、燐酸塩系蛍光体(3Ca3(PO4)2CaF2:Eu等)、ただし、本発明に用いられる輝尽性蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線エネルギーを吸収した後、可視光や赤外線などの電磁波(輝尽励起光)で励起することにより、蓄積していた放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光)の形で放出する蛍光体であれば使用できる。
【0045】
放射線増感スクリーン又は放射線画像変換パネルの製造法は、
第1の製造法として、
結合剤と蛍光体とからなる蛍光体塗布液(以下蛍光体塗料、又は輝尽性蛍光体塗料)を支持体上に塗布し、蛍光体層を形成する。
【0046】
また、第2の製造法として、
▲1▼結合剤と蛍光体とからなる蛍光体塗料又は輝尽性蛍光体塗料とからなるシートを形成し、▲2▼該シートを支持体上に載せ、好ましくは前記結合剤の軟化温度もしくは融点以上の温度で、支持体に接着する工程で製造する。
【0047】
蛍光体層の支持体への形成方法としては、上記2種が考えられるが、支持体上に均一に蛍光体層を形成する方法であればどのような方法でもよく、吹き付けによる形成等でもよい。
【0048】
第1の製造法の蛍光体層は、結合剤溶液中に蛍光体を均一に分散せしめた蛍光体塗料又は輝尽性蛍光体塗料を支持体上に塗布、乾燥することにより製造できる。
【0049】
また、第2の製造法の蛍光体層となる蛍光体シートは、蛍光体塗料又は輝尽性蛍光体を蛍光体シート形成用仮支持体上に塗布し、乾燥した後、仮支持体から剥離することで製造できる。
【0050】
即ち、まず適当な有機溶媒中に、結合剤と蛍光体粒子を添加し、ディスパーやボールミルを使用し撹拌混合して結合剤中に蛍光体が均一に分散した蛍光体塗料又は輝尽性蛍光体塗料を調製する。
【0051】
蛍光体塗料又は輝尽性蛍光体塗料調製用の溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0052】
なお、蛍光体塗料又輝尽性蛍光体塗料には塗料中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、又は形成後の蛍光体層又は輝尽性蛍光体層中における結合剤と蛍光体又は輝尽性蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤など種々の添加剤が混合されてもよい。
【0053】
分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。
【0054】
可塑剤の例としては、燐酸トリフェニール、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸エステル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタルブチルなどのグリコール酸エステル、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールと琥珀酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0055】
上記のようにして調製された蛍光体又は輝尽性蛍光体と結合剤とを含有する蛍光体塗料を、支持体若しくはシート形成用の仮支持体の表面に均一に塗布することにより塗料の塗膜を形成する。
【0056】
この塗布手段としては、例えばドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータ、押し出しコータなどを用いることにより行うことができる。
【0057】
支持体及び仮支持体としては、例えばガラス、ウール、コットン、紙、金属などの種々の素材から作られたものが使用され得るが、情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシート或いはロールに加工できるものが好ましい。この点から、例えばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスティックフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔などの金属シート、一般紙及び例えば写真用原紙、コート紙、もしくはアート紙のような印刷用原紙、バライタ紙、レジンコート紙、ベルギー特許784,615号明細書に記載されているようなポリサッカライド等でサイジングされた紙、二酸化チタンなどの顔料を含むピグメント紙、ポリビニールアルコールでサイジングした紙等の加工紙が特に好ましい。
【0058】
第2の製造法では、仮支持体上に蛍光体塗料又は輝尽性蛍光体を塗布し乾燥した後、仮支持体から剥離して蛍光体又は輝尽性蛍光体層となる蛍光体シートとする。従って仮支持体の表面は、予め剥離剤を塗布しておき、形成された蛍光体シートが仮支持体から剥離し易い状態にしておくのが好ましい。
【0059】
支持体と蛍光体層の結合を強化するため支持体表面にゼラチンなどの高分子物質を塗布して接着性を付与する下塗り層を設けたり、感度、画質(鮮鋭性、粒状性)を向上せしめるために二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収物質からなる光吸収層などが設けられてよい。それらの構成は目的、用途などに応じて任意に選択することができる。
【0060】
また、本発明の蛍光体層は圧縮してもよい。蛍光体層を圧縮することによって蛍光体の充填密度を向上させ、更に鮮鋭性、粒状性を向上することができる。圧縮の方法としてはプレス機やカレンダーロール等が挙げられる。
【0061】
第1の製造法の場合、蛍光体及び支持体をそのまま圧縮するのが良い。第2の製造法の場合、前記▲1▼によって得られた蛍光体シートを支持体上に載せ、結合剤の軟化温度または融点以上の温度で圧縮しながら蛍光体シートを支持体上に接着することもできる。
【0062】
このようにして、蛍光体シートを支持体上に予め固定することなく圧着する方法を利用することによりシートを薄く押し広げることができる。
【0063】
通常、放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルには、前述した支持体に接する側と反対側の蛍光体層の表面に、蛍光体層を物理的、化学的に保護するための透明な保護膜が設けられる。このような透明保護膜は、本発明についても設置することが好ましい。保護膜の膜厚は一般に2〜20μmの範囲にある。
【0064】
透明保護膜は例えば酢酸セルロース、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体、或いはポリメチールメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマーなどの合成高分子物質を適当な溶剤に溶解して調製した溶液を蛍光体層の表面に塗布する方法により形成することができる。これらの高分子物質は、単独でも混合しても使用できる。また、保護膜を塗布で形成する場合は塗布の直前に架橋剤を添加することが望ましい。
【0065】
或いはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどからなるプラスチックシート、及び透明なガラス板などの保護膜形成用シートを別に調製して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて接着するなどの方法で形成することができる。
【0066】
本発明で用いられる保護膜としては、特に有機溶媒に可溶性の弗素系樹脂を含む塗布膜により形成されることが好ましい。弗素系樹脂とは、弗素を含むオレフィン(フルオロオレフィン)の重合体、もしくは弗素を含むオレフィンを共重合体成分として含む共重合体をいう。弗素系樹脂の塗布膜により形成された保護膜は架橋されていてもよい。弗素系樹脂による保護膜は、触手や感光材料などとの接触で脂肪分、感光材料などから出る可塑剤などの汚れが保護膜内部に染み込みにくいので、拭き取りなどによって容易に汚れを除去することができる利点がある。
【0067】
また、膜強度の改良等の目的で、弗素系樹脂と他の高分子物質を混合してもよい。
【0068】
また、保護膜は蛍光体層上に形成された厚さ1μm以上10μm以下の透明な合成樹脂層であることが好ましい。このような薄い保護膜を用いることにより、特に放射線増感スクリーンの場合は蛍光体からハロゲン化銀乳剤までの距離が短くなるため、得られる放射線画像の鮮鋭度の向上に寄与することになる。
【0069】
【実施例】
実施例1
放射線増感スクリーンの製造
上記処方において、表1記載の粒径の蛍光体及び表1記載のポリウレタン樹脂を結合剤として塗料粘度が20〜30ps(ポイズ)となるようにメチルエチルケトンを添加した。ボールミルにて6時間混合分散し、蛍光体塗料a〜qを得た。次にガラス板上に水平にセットした厚さ250μmの二酸化チタンを練り込んだポリエチレンテレフタレート支持体上に上記の蛍光体塗料を乾燥時に表2に示す膜構成及び膜厚になるように、塗布し、乾燥して蛍光体層を形成後、片面にポリエステル系接着剤が塗布されている厚さ8μmの透明のポリエチレンテレフタレートシートを接着剤面を蛍光層面に接着して保護層を設け、放射線増感スクリーン1〜31を得た。なお、蛍光塗料には塗布直前にイソシアネート2重量部を添加混合し、塗布した。
【0070】
放射線増感スクリーンの画像の評価
a)鮮鋭性
得られた放射線増感スクリーン試料をX線撮影用フィルムSR−G(コニカ[株]製)を用い、フンクテストチャートSMS−5853(コニカメディカル[株]販売)矩形波チャートを撮影し、自動現像機SRX−502、処理液SR−DF(共にコニカ[株]製)を用い現像温度35℃、定着温度33℃で45秒処理を行い、コントラスト法によりMTFを測定した。MTF値は空間周波数2.0サイクル/mmの値で示した。従ってMTF値が高いほど鮮鋭性が高いことを示す。
【0071】
b)粒状性
得られた放射線増感スクリーン試料をMTF測定と同様にX線撮影用フィルムSR−G(コニカ[株]製)を用い、現像処理後の光学濃度が1.0±0.1になるような距離で80kVpでX線を照射し、現像処理は前記MTFと同様の処理を行った。粒状性は48μmのアパチュアー径で測定したRMS粒状性で評価した。RMS粒状性についてはT.H.James編:The Theory of thePhotographic Process 619−620頁 (1977年、Macmillan社)に記載されている。なお、RMS値は値が小さいほど粒状性がよいことを示す。
【0072】
c)発光強度
得られた放射線増感スクリーン試料を1cm2に切断し、管電圧80kVp、管電流50mA、管球から放射線増感スクリーンまでの距離を1.5mで照射時間0.1秒間X線を照射した。其の際発生する励起発光を光ファイバーで集光し、光電子増倍管で光電変換した出力値を試料No.1の値を100とした相対値で表した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表1、2から明らかなように、平均粒子径が0.01μm以上、蛍光体の主発光波長の1/2以下の蛍光体粒子を含有する蛍光体層を有する本発明の放射線増感スクリーンNo.6〜12、15〜17、20〜26、29〜31は比較試料No.1〜5、13、14、18、19、22〜24、27、28に比して明らかに鮮鋭性、粒状性、発光強度の3点の総合特性において優れていることが分かる。
【0076】
実施例2
(1)放射線画像変換パネルの製造
表3記載の粒径の蛍光体及び表3記載のポリウレタン樹脂を結合剤として塗料粘度が20〜30psとなるようにメチルエチルケトンを添加し、ボールミルにて6時間混合分散し、また塗布の前にイソシアネート1重量部を添加し、表3に示されるような蛍光体塗料A〜Qを得た。次にガラス板上に水平にセットした厚さ250μmの二酸化チタンを練り込んだポリエチレンテレフタレート支持体上に上記の蛍光体塗料をナイフコーターを用いて表4に示す構成、膜厚になるように塗布、乾燥して蛍光体層を得た。
【0077】
塗布、乾燥後、片面にポリエステル系接着剤が塗布されている厚さ8μmの透明のポリエチレンテレフタレートシートを接着剤面を蛍光体層面に接着して保護膜を設け、放射線画像変換パネル32〜62を得た。
【0078】
放射線画像変換パネルの画像評価
a)鮮鋭性
放射線画像変換パネルにCTFチャートを貼り付けた後、管電圧80kVp、管電流50mA、管球からパネルまでの距離1.5mで照射時間0.1秒のX線を照射した後、半導体レーザ光(発振波長680nm、ビーム径100μmφ)で走査して輝尽励起し、CTFチャート像を輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を読み取り、検出器(光電子増倍管)で光電変換して信号を得た。この信号値より、画像の変調伝達関数(MTF)を調べ、画像の鮮鋭性を評価した。なお、鮮鋭性は空間周波数が2.0サイクル/mmのときのMTF値で示した。
【0079】
b)粒状性
得られた放射線画像変換パネル試料を管電圧80kVp、管電流50mA、管球からパネルまでの距離1.5mで照射時間0.1秒のX線を照射した後、半導体レーザ光(発振波長680nm、ビーム径100μmφ)で走査して輝尽励起し、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を25μmのピッチに相当するタイミングで読み取り、検出器(光電子増倍管)で光電変換して得た信号からRMS粒状性を評価した。RMS粒状性についてはT.H.James編:The Theory of thePhotographic Process 619−620頁 (1977年、Macmillan社)に記載されている方法を本発明の放射線画像変換パネルに適用した。なお、RMS値は値が小さいほど粒状性が良いことを示す。
c)発光強度
得られた放射線画像変換パネル試料に、管電圧80kVp、管電流50mA、管球からパネルまでの距離1.5mで照射時間0.1秒のX線を照射した後、半導体レーザ光(発振波長680nm、ビーム径100μmφ)で走査して輝尽励起し、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を光ファイバーで集光し、光電子増倍管で光電変換した出力値を試料No.32の値を100とした相対値で表した。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
表4から明らかなように、平均粒子径が0.01μm以上、蛍光体の主発光波長の1/2以下の輝尽性蛍光体粒子を含有する蛍光体層を有する本発明の放射線画像変換パネルNo.37〜43、46〜48、51〜57、60〜62は比較試料No.32〜36、44、45、49、50、58、59に比して明らかに鮮鋭性、粒状性、発光強度の3点の総合特性において優れていることが分かる。
【0083】
【発明の効果】
本発明により感度、鮮鋭性、粒状性に優れた放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルが得られた。
Claims (12)
- 支持体上に蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光層を有する放射線増感スクリーンにおいて、該蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/2以下であることを特徴とする放射線増感スクリーン。
- 前記蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/4以下であることを特徴とする請求項1記載の放射線増感スクリーン。
- 前記蛍光体層に結合剤として平均分子量が3000以上70000以下である熱可塑性エラストマーの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の放射線増感スクリーン。
- 支持体上に蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光体層を有する放射線増感スクリーンにおいて、該蛍光体層が2層以上の重層構成となっており、かつ支持体から最も遠い蛍光体層に用いられる蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/2以下であることを特徴とする放射線増感スクリーン。
- 前記蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/4以下であることを特徴とする請求項4記載の放射線増感スクリーン。
- 前記蛍光体層に結合剤として平均分子量が3000以上70000以下である熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする請求項4又は5記載の放射線増感スクリーン。
- 支持体上に輝尽性蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光層体を有する放射線画像変換パネルにおいて、該蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/2以下であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
- 前記輝尽性蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/4以下であることを特徴とする請求項7記載の放射線画像変換パネル。
- 前記輝尽性蛍光体層に結合剤として平均分子量が3000以上70000以下である熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする請求項7又は8記載の放射線画像変換パネル。
- 支持体上に輝尽性蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、該輝尽性蛍光体層が2層以上の重層構成となっており、かつ支持体から最も遠い輝尽性蛍光体層に用いられる輝尽性蛍光体粒子の平均粒子径が、0.01μm以上、該輝尽性蛍光体の主発光波長の1/2以下であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
- 前記輝尽性蛍光体粒子の平均粒子径が0.01μm以上、該蛍光体の主発光波長の1/4以下であることを特徴とする請求項10記載の放射線画像変換パネル。
- 前記輝尽性蛍光体層に結合剤として平均分子量が3000以上70000以下である熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする請求項10又は11記載の放射線画像変換パネル。
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