JP3561830B2 - 車両用サンルーフ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のルーフに形成した開口に、スライド開閉可能なスライドリッドを設けた車両用サンルーフ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用サンルーフ装置は、車両のルーフに形成した開口を開閉するスライドリッドを、開口の両側部に固定されたガイドレールに前、後スライダを介して車両前後方向に開閉可能に取り付け、全閉位置から開き動作するとき、最初に、後スライダによりスライドリッドの後端を下降させるとともに、それとほぼ同時に、前スライダによりスライドリッドの前端を下降させた後、スライドリッドを後方にスライドさせるようになっていた(例えば、特開平5−319099号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来のサンルーフ装置は、スライドリッドの開き動作時に、スライドリッドの前端が開口の周縁、特に前縁に取り付けられたシール部材を擦りながら下降動作するため、シール部材の早期損傷を招くおそれがある。
【0004】
このようなおそれをなくすため、スライドリッドの後端部だけでなく、前端部を、後端部と独立して、スライドリッドの開閉途中で昇降させるようにすることが考えられるが、このようにすると、スライドリッドの前後の端部の支持が不安定となり、スライドリッドが左右方向にぐらつくおそれがある。
また、上述のような従来のものにおいては、各種の案内手段を、ガイドレールの左右方向に並列させて設けていたので、ガイドレールの横幅を大としなければならず、その分、ルーフに形成する開口を狭くしなければならないという問題がある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有する上述のような問題点に鑑み、スライドリッドの前後の端部を互いに独立して昇降し得るようにしたものにおいて、スライドリッドの前後の端部の支持を安定させ、特に、左右方向のぐらつきを防止し得るようにするとともに、レールの横幅を小として、ルーフに形成する開口を広くしうるようにした車両用サンルーフ装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 車両のルーフに形成した開口の両側縁部に、前記開口側の側壁と車外側の側壁とを有する断面ほぼU字状の前後方向を向くガイドレールを配設し、該ガイドレールに、前記開口を開閉するスライドリッドの前後の端部を支持する前後1対のスライダを、前後方向に摺動可能として装着し、かつ各スライダとスライドリッドとの間に、スライドリッドの端部を上下動させる起倒可能なリンクを設け、駆動手段により前記スライダを前後動させることにより、スライドリッドを、前記開口を閉塞する全閉位置と、そこから下降して後方にスライドし、かつルーフの下方に収納される開放位置との間を移動させるようにした車両用サンルーフ装置において、前記ガイドレールの開口側の側壁と、車外側の側壁との対向面のいずれか一方に、スライドリッドの前端部を上下動させるリンクの側面に突設した摺動子を案内する案内手段を設け、かつ他方の対向面に、スライドリッドの後端部を上下動させるリンクの側面に突設した摺動子を案内する案内手段を設ける。
【0007】
(2) 上記(1)項において、ガイドレールの開口側の側壁と、車外側の側壁との対向面のいずれか一方に、下側から順次、スライダを案内するガイド溝、スライダと駆動手段とを連結するワイヤが挿通するワイヤ溝、スライダに装着したスライドリッド昇降機構作動用の摺動子を案内する制御溝を設ける。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1〜図10は、本発明の装置の一実施形態を示す。
図中(1)はチルトリッド、(2)は、車両のルーフ(R)に形成された開口(R1)の前部に固定されたフロント枠体である。
【0009】
チルトリッド(1)は、前端部が、開口(R1)前縁のルーフインナーパネルにヒンジ(3)により枢支されるとともに、後端部が、後述する昇降機構(4)に連結され、この昇降機構(4)により上下方向に移動させられるようになっている。(5)はスライドリッドであり、開口(R1)の両側縁部に配設される前後方向を向く左右1対のガイドレール(6)に沿って移動する前、後スライダ(7)(8)及び支持ブラケット(9)に支持され、車両の前後方向に移動可能である。
【0010】
スライドリッド(5)は、図3及び図4に示す全閉位置と、ルーフ(R)と天井との間に収納される全開位置との間を移動可能である。全閉位置にあるときは、開口(R1)の周縁に設けられたシール部材(R2)に圧接して、開口(R1)をシールする。
【0011】
左右のガイドレール(6)は、左右方向を向く前、中央、後横桟(10)(11)(12)により連結され、図8及び図10に示すような横断面形状をなしている。
すなわち、ガイドレール(6)は、ルーフ開口側の側壁(6j)とそれに対向する車外側の側壁(6k)とから構成され、両側壁(6j)(6k)の下部には対向して開口するガイド溝(6b)(6b)が形成されている。開口寄りの側壁(6j)の車外側の面の中位部でガイド溝(6b)の上方には、後述する駆動ワイヤ(20)を挿通させるワイヤ溝(6a)が設けられている。一方、車外側の側壁(6k)のガイド溝(6b)の上方には、側壁(6k)の上面を形成する上片(6e)により内方に向かって開口する断面形が方形の溝(6c)が設けられ、ワイヤ溝(6a)の上方には、側壁(6j)の上面を形成する上片(6f)により車外側に向かって開口する制御溝(6d)が設けられている。上片(6e)(6f)は、互いに対向する方向に向かって延出するが、車外側の上片(6e)は、開口寄りの上片(6f)より低位としてある。また、図10に示すように、ガイドレール(6)の長手方向のやや前端部寄りにおいて、両上片(6e)(6f)には、左右1対の係合溝(6g)が対向して設けられている。さらに同じく長手方向の中間部において開口寄りの側壁(6j)には、制御溝(6d)の底壁と上片(6f)とを連絡する切換路(6h)が、またそれよりさらに後方の車外側の側壁(6k)には、上片(6e)に連続し、かつ前下方に向かって傾斜するストッパー溝(6i)が、それぞれガイドレール(6)に固着した別部材により形成されている。なお、切換路(6h)及びストッパー溝(6i)は、別部材によらず、ガイドレール(6)に直接形成してもよい。
【0012】
上記のガイドレール(6)の構成のうち、開口側の側壁(6j)に設けられた制御溝(6d)の底面と切換路(6h)の底面と上片(6f)の上面とにより、後述する前スライダ(7)側の昇降機構をなすリンク(22)の摺動子(23)を案内する案内手段であるカム面が形成され、また、車外側の側壁(6k)に設けられたストッパー溝(6i)と上片(6e)の上面とにより、後述する後スライダ(8)側の昇降機構をなすリンク(25)の摺動子(25a)を案内する案内手段であるカム面が形成されている。
【0013】
後横桟(12)には、減速器付きモータを備えた駆動手段(13)が設けられている。駆動手段(13)と各ガイドレール(6)は、左右のパイプ(14)により連結され、パイプ(14)内には、撓曲かつ押し引き可能な左右の駆動ワイヤ(15)が挿通されている。駆動ワイヤ(15)は、それぞれのパイプ(14)を介して各ガイドレール(6)のワイヤ溝(6a)に挿通されて、後スライダ(8)に止着されるとともに、モータ駆動により前後方向に移動可能で、最前端の端末には、ガイドレール(6)にスライド可能に嵌合した駆動係脱部材(16)が止着されている。
【0014】
各ガイドレール(6)の前端部には、撓曲かつ押し引き可能な従動ワイヤ(17)が挿通されたパイプ(18)が連結されている。従動ワイヤ(17)は、各ガイドレール(6)のワイヤ溝(6a)に挿通され、端末には、駆動係脱部材(16)に係脱可能な従動係脱部材(19)が止着されている。駆動係脱部材(16)と従動係脱部材(19)とにより、チルトリッド(1)の上昇動作完了後に離脱し、かつチルトリッド(1)の下降開始時に連結される係脱手段が形成され、チルトリッド(1)およびスライドリッド(5)の一連の開閉作動が駆動ワイヤ(15)で行われるようになっている。
【0015】
駆動手段(13)により駆動ワイヤ(15)が後方に牽引されると、連結状態にある係脱手段及び従動ワイヤ(17)を介して昇降機構(4)が上昇移動して、チルトリッド(1)は、図3に示す全閉位置から図4に示す後端が持ち上げられたチルトアップ位置まで開く。その位置で、駆動係脱部材(16)は、従動係脱部材(19)から離脱する。
【0016】
図7〜図9に示すように、前スライダ(7)は、ガイドレール(6)のガイド溝(6b)にスライド可能に嵌合する摺動体(7a)と、上端部が軸(20)により支持ブラケット(9)に枢着され、かつ下端部が軸(21)により摺動体(7a)に枢着されたリンク(昇降機構)(22)とを有している。リンク(22)は、図7に示す起立位置と、図9に示す倒伏位置とに移動可能であり、また、その前部には、ガイドレール(6)の制御溝(6d)及び上片(6f)上を移動可能なローラ状の摺動子(23)が軸(24)により枢支されている。
【0017】
摺動子(23)は、スライドリッド(5)が図3及び図4に示す全閉位置にあるときの位置と、切換路(6h)に到達する所定の位置との間の区間は、制御溝(6d)内を移動してリンク(22)を起立位置に保持するとともに、スライドリッド(5)がさらに所定量後方に移動して、切換路(6h)を通って上片(6f)上に移動することにより、リンク(22)を倒伏位置に移動させて、スライドリッド(5)の前端を下降させた位置に保持する。
【0018】
図7に示すように、後スライダ(8)は、駆動ワイヤ(15)に止着されてガイドレール(6)にスライド可能に嵌合する摺動体(8a)を有している。その摺動体(8a)には、前端部に前上方を向く傾斜部を有するガイド溝(8b)と直線のガイド溝(8c)とが形成されている。
ガイド溝(8b)には、リンク(25)の後端部に植設され、かつガイドレール(6)のストッパー溝(6i)に係脱可能なピン状の摺動子(25a)がスライド可能に嵌合され、また、ガイド溝(8c)には、リンク(25)の中間部に植設されたピン(25b)がスライド及び回動可能に嵌合されている。リンク(25)の上端部は、支持ブラケット(9)に枢着されている。
リンク(25)は、スライドリッド(5)の開閉方法として以下に詳述するように、摺動子(25a)とピン(25b)とガイド溝(8b)(8c)との係合位置関係により、図3、図4、及び図7に示す起立位置と、図5、及び図6に示す倒伏位置とに移動制御される。なお、後スライダ(8)の構造は、本出願人により出願された特公平6−462号公報の第4図に開示した技術と基本的に同一である。
【0019】
次に、本発明のスライドリッド(5)の開閉方法について説明する。なお、チルトリッド(1)の開閉動作は、本発明に直接関係しないので、説明は省略する。
スライドリッド(5)が図4に示す全閉位置にあるとき、駆動手段(13)により駆動ワイヤ(15)が牽引されて、後スライダ(8)が後方に移動すると、図7における水平なガイド溝(8c)がピン(25b)に対して後方に移動させられるが、ピン(25b)は移動することはなく、またガイド溝(8b)が摺動子(25a)に対して後方に移動することにより、摺動子(25a)は、ガイド溝(8b)の前部の傾斜部により上方に持ち上げられて、ストッパー溝(6i)から抜け出し、ガイドレール(6)の上片(6e)の上面に移動する。それによって、リンク(25)は、起立位置から倒伏位置まで前方に倒れるように回動して、図5に示すように、スライドリッド(5)は、後端が下降したチルトダウン状態になる。
【0020】
その後、ピン(25b)が案内溝(8c)の前端に係合して、スライドリッド(5)が、後スライダ(8)及び駆動ワイヤ(15)とともに所定量後方に移動し、スライドリッド(5)の前端がシール部材(R2)から離れた後、前スライダ(7)の摺動子(23)が切換路(6h)を介して、ガイドレール(6)の制御溝(6d)から上片(6f)の上面に移動する。これによって、リンク(22)は、起立位置から倒伏位置に移動して、スライドリッド(5)の前端を下降させ、図6に示すように、スライドリッド(5)は、前後端とも下降した状態となる。その後、スライドリッド(5)は、下降した状態のまま、後方にスライドして全開状態になる。
【0021】
スライドリッド(5)の閉作動は、駆動手段(13)により駆動ワイヤ(15)を前方に押動することにより、上述の開作動と逆の経路をたどって行なわれる。すなわち、スライドリッド(5)が全開位置から前方に移動して、所定位置で、摺動子(23)が切換路(6h)を介して上片(6f)の上面から制御溝(6d)に移動することにより、リンク(22)が起立位置に変位させられ、スライドリッド(5)の前端が上昇し、さらに、スライドリッド(5)が前方に移動し、摺動子(25a)がガイド溝(8b)の傾斜部により押し下げられて、ストッパ溝(6i)に下降すると、リンク(25)が上向きに回動させられて、スライドリッド(5)の後端が上昇させられ、完全な全閉状態になる。
【0022】
この実施形態によると、スライドリッドが開くとき、スライドリッドの前端が、開口の前縁のシールラバーを避けてから下降するので、シールラバーとの擦れによる早期損傷を防止することができる。また、スライドリッドの前、後端の昇降動作が同時に行われることがないので、一度に高負荷が駆動手段に掛かることがない。
【0023】
さらに、ガイドレールの開口側の側壁と、車外側の側壁との対向面のいずれか一方に、スライドリッドの前端部を上下動させるリンクの側面に突設した摺動子を案内する案内手段を設け、かつ他方の対向面に、スライドリッドの後端部を上下動させるリンクの側面に突設した摺動子を案内する案内手段を設けたので、前後いずれか一方のリンクは、開口側、すなわち車内側への倒れが阻止され、また、他方のリンクは、車外側への倒れが阻止され、スライドリッドの前後の端部の支持が安定する。
【0024】
【発明の効果】
(a) 請求項1記載の発明によると、ガイドレールの開口側の側壁に設けた案内手段により、前後いずれか一方のリンクの開口側、すなわち車内側への倒れが阻止され、また、ガイドレールの車外側の側壁に設けた案内手段により、他方のリンクの車外側への倒れが阻止されるので、スライドリッドの前後の端部の支持が安定するとともに、スライドリッドの前後の昇降機構及びスライド機構にかかる負荷のバランスがよく、特に、スライドリッドの左右方向のぐらつきを効果的に防止することができる。
【0025】
(b) 請求項2記載の発明によると、各種の案内手段を、ガイドレールの側壁に沿って、上下方向に重ねて設けることができるので、レールの横幅を小とすることができ、その分、ルーフに形成する開口を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の一実施形態の分解斜視図である。
【図2】同じく、内部機構を示す斜視図である。
【図3】同じく、チルトリッド及びスライドリッドが全閉位置にあるときの概略縦断側面図である。
【図4】同じく、チルトリッドがチルトアップ状態、スライドリッドが全閉位置にあるときの概略縦断側面図である。
【図5】同じく、スライドリッドの後端が下降したときの概略縦断側面図である。
【図6】同じく、スライドリッドがスライド状態にあるときの概略縦断側面図である。
【図7】スライドリッドが全閉状態にあるときの前、後スライダの側面図である。
【図8】図7におけるA−A線断面図である。
【図9】リンクが倒伏状態にあるときの前スライダの側面図である。
【図10】一方のガイドレールの斜視図である。
【符号の説明】
(5)スライドリッド
(6)ガイドレール
(6d)制御溝(案内手段)
(6e)上片(案内手段)
(6f)上片(案内手段)
(6h)切換路(案内手段)
(6i)ストッパー溝(案内手段)
(7)前スライダ
(7a)摺動体
(8)後スライダ
(13)駆動手段
(15)駆動ワイヤ
(22)リンク(昇降機構)
(23)摺動子
(25)リンク(昇降機構)
(25a)摺動子

Claims (2)

  1. 車両のルーフに形成した開口の両側縁部に、前記開口側の側壁と車外側の側壁とを有する断面ほぼU字状の前後方向を向くガイドレールを配設し、該ガイドレールに、前記開口を開閉するスライドリッドの前後の端部を支持する前後1対のスライダを、前後方向に摺動可能として装着し、かつ各スライダとスライドリッドとの間に、スライドリッドの端部を上下動させる起倒可能なリンクを設け、駆動手段により前記スライダを前後動させることにより、スライドリッドを、前記開口を閉塞する全閉位置と、そこから下降して後方にスライドし、かつルーフの下方に収納される開放位置との間を移動させるようにした車両用サンルーフ装置において、
    前記ガイドレールの開口側の側壁と、車外側の側壁との対向面のいずれか一方に、スライドリッドの前端部を上下動させるリンクの側面に突設した摺動子を案内する案内手段を設け、かつ他方の対向面に、スライドリッドの後端部を上下動させるリンクの側面に突設した摺動子を案内する案内手段を設けたことを特徴とする車両用サンルーフ装置。
  2. ガイドレールの開口側の側壁と、車外側の側壁との対向面のいずれか一方に、下側から順次、スライダを案内するガイド溝、スライダと駆動手段とを連結するワイヤが挿通するワイヤ溝、スライダに装着したスライドリッド昇降機構作動用の摺動子を案内する制御溝を設けた請求項1記載の車両用サンルーフ装置。
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