JP3561761B2 - マシニングセンターによる歯車形削り加工方法 - Google Patents

マシニングセンターによる歯車形削り加工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マシニングセンターによる歯車形削り加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
マシニングセンターの加工自由度を向上しようとする試みとしては、例えば特開平8−118101号公報を挙げることができる。この特開平8−118101号公報に開示されている技術は、マシニングセンターの回転角度制御可能な主軸にバイト工具を取り付け、主軸の円弧補間運動と主軸の回転角を同期させることにより、多角形加工を可能にしたものである。しかしながらこの提案のものにおいては、特定の円筒内周面加工は行えるものの、歯車加工を行うには至っていない。
【0003】
上記歯車加工は、ピニオンカッターを用いるが、このピニオンカッターによる加工法は歯車形削り盤に限定されているため、被加工物に穴あけ加工と歯車加工が併存する場合には、被加工物を完成させるためには、マシニングセンターと歯車形削り盤の2台の工作機械が必要となる。このように上記複合加工においては、複数の装置、その設置スペース、装置間の搬送、各装置の段取り替え等に多大のコストを要することになり、そのため上記複合加工が、多品種少量生産における大きなネックとなっている。
【0004】
ところでピニオンカッターによる歯車加工は、回転テーブル上に被加工物を載置し、この回転テーブルに垂直で該回転テーブルの回転数と一定の公比で同期回転する主軸にピニオンカッターを取り付け、このピニオンカッターを軸線方向に前後運動させることにより行われる。
【0005】
このピニオンカッターによる歯車加工においては、ピニオンカッターの切削送りはクランク機構で行なわれる。加工ストロークにおいては、切削速度の大きな変動を避けるような工夫が行なわれているが、クランク機構を採用しているため、図8において実線サイン波形で示すように、切削開始端から切削終端にかけて切削速度に大きな変動が生じるのをどうしても避けることができない。図8の実線に示すように、歯幅の中程に最大切削速度が得られ、切削開始端及び切削終端では切削速度は極めて小さくなる。しかしながらこのように大きな切削速度変化の生じる加工においても、切削工具は、その耐磨耗性と剛性とは、切削速度の最も高いポイントに合わせて選定する必要がある。
【0006】
したがって切削工具からみれば、従来のピニオンカッターによる歯車加工は、工具性能に見合った速度での加工が行われておらず、その作業能率が悪いという欠点があり、またこれとは逆に平均切削速度からすれば、過剰性能の切削工具を使用しているという問題を有することになる。
【0007】
本発明は上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、マシニングセンターの機能にピニオンカッターによる歯車形削り加工機能を付加して工程の集約を図ることを可能にし、しかもそれに加えてピニオンカッターの切削速度と工具性能とのマッチングを図り、切削能率の向上、工具コストの低減を図ることが可能なマシニングセンターによる歯車形削り加工方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び効果】
そこで、本発明の請求項1記載のマシニングセンターによる歯車形削り加工方法では、マシニングセンターの回転角度制御可能な主軸10にピニオンカッター12を装着し、上記主軸10の被加工物Wに対する相対的な円弧補間運動と主軸10の回転数とを一定の公比で同期回転させながら、同時に主軸10を軸線方向に前後の往復運動をさせることにより、被加工物Wを回転させることなくピニオンカッター12にて歯車加工を行なうようにしていることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載のマシニングセンターによる歯車形削り加工方法では、基台1と、この基台1上にY軸方向に駆動可能に設けられているYテーブル2と、このYテーブル2上にX軸方向に駆動可能に設けられているXテーブル3と、このXテーブル3上に固定される被加工物Wと、コラム6に設けられXY平面に対して直交するZ軸方向に駆動可能なZ軸スライダ7と、このZ軸スライダ7に取り付けられている主軸ヘッド9と、この主軸ヘッド9に装着され上記Z軸と同一方向の軸線周りに回転角度制御可能な主軸10と、この主軸10に装着されているピニオンカッター12とでマシニングセンターを構成し、上記被加工物WはXテーブル3とYテーブル2の駆動制御によりX座標とY座標による任意の座標位置に軸制御され、上記主軸10の被加工物Wに対する相対的な円弧補間運動と主軸10の回転数とを一定の公比で同期回転させながら、同時に主軸10をZ軸方向に往復運動をさせることにより、ピニオンカッター12にて歯車加工を行なうようにしていることを特徴としている。
【0010】
請求項1及び請求項2記載のマシニングセンターによる歯車形削り加工方法によれば、マシニングセンターの回転角度制御可能な主軸10にピニオンカッター12を装着し、上記主軸10の被加工物Wに対する相対的な円弧補間運動と主軸10の回転数とを一定の公比で同期回転させながら、同時に主軸10を軸線方向に前後の往復運動をさせることにより、歯車形削り加工を可能とすることができる。そのため、穴あけ加工と歯車加工の両方が必要な被加工物をマシニングセンター1台で完成品に仕上げることができることになり、多品種少量の場合でも対応でき、また加工日数を短縮できる。さらにはマシニングセンターでは、切削開始端から切削終端まで一定の切削速度を付与することができるため、切削速度に応じた性能の切削工具を選定することができる。したがってピニオンカッター12からみれば、工具性能に見合った最大の切削速度での加工が行え、その作業能率を向上することができる。またこれとは逆に切削速度に見合う性能のピニオンカッター12を使用可能となるので工具コストを低減できることにもなる。
【0011】
このように請求項1及び請求項2のマシニングセンターによる歯車形削り加工方法によれば、工程の集約を図ることを可能にし、しかもそれに加えてピニオンカッターの切削速度と工具性能とのマッチングを図り、切削能率の向上、工具コストの低減を図ることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明のマシニングセンターによる歯車形削り加工方法の実施例に使用するマシニングセンターの一例を示している。このマシニングセンターは、基台1と、この基台1上にY軸方向に移動可能に設けられたYテーブル2と、このYテーブル2上にX軸方向に移動可能に設けられたXテーブル3とを有し、このXテーブル3上に被加工物Wが固定されている。
【0013】
上記Yテーブル2はY軸モータ4によってY軸方向の駆動され、Xテーブル3はX軸モータ5によってX軸方向に駆動される。そしてXテーブル3上の被加工物Wは、このXテーブル3とYテーブル2のX−Y平面内での移動により、水平面に沿ってX座標とY座標による任意の座標位置に軸制御されるようになっている。
【0014】
一方、マシニングセンターのコラム6には、Z軸スライダ7が上下方向、すなわちZ軸方向に移動可能に装着されており、Z軸スライダ7はZ軸モータ8によってZ軸方向に駆動される。また、Z軸スライダ7には主軸ヘッド9が取り付けられており、主軸ヘッド9には主軸10がZ軸と同一方向の軸線周り、すなわちC軸周りに回転可能に装着されている。この主軸10は主軸モータ11により回転駆動され、主軸10にはピニオンカッター12が装着されている。
【0015】
上記X軸モータ5、Y軸モータ4、Z軸モータ8、主軸モータ11は、いずれもサーボモータであるが、これらモータ5、4、8、11のそれぞれにはロータリー式のエンコーダ13、14、15、16が装着されており、このエンコーダ13、14、15、16は各軸モータ5、4、8、及び主軸モータ11の回転角を検出し、その回転角度についての情報を制御装置20へ出力するようになっている。
【0016】
この制御装置20は、図2に示すようにNC加工プログラムを実行して各軸指令と主軸回転指令を出力する主制御部21と、この主制御部21より軸指令を入力して補間演算を行なう演算部22とを有している。この演算部22は、X、Y、Zの各軸の移動量を指令値として各軸の位置制御部23、24、25、26へ出力するようになっている。これら位置制御部23、24、25、26は、それぞれ同軸に設けたロータリー式のエンコーダ13、14、15、16より回転角情報を入力し、位置フィードバック補償制御により演算される各軸の操作量をもって各軸のモータ5、4、8、11の駆動を制御するものである。
【0017】
次にNC工作機械に設けたピニオンカッター12による歯車形削り加工の方法について説明する。図3は主軸10にピニオンカッター12を取り付けた状態を示すものであり、図4はそのピニオンカッター12の詳細図である。ここでは、モジュールm、歯数z1のピニオンカッター12で、モジュールm、歯数z2の標準外歯車の加工方法について以下に説明する。
【0018】
所定の旋削加工が終わった被加工物Wとピニオンカッター12をZ軸方向から見ると図5に示すようになる。ここで、ピニオンカッター12をC軸周りに回転数nで自転させながら、この主軸10が被加工物Wを中心として相対的に半径(m・z1+m・z2)/2の円周上を公転するようにX軸テーブル5とY軸テーブル3を軸制御する。この時、公転の周期Nと自転の回転数nとは、N/n=z1 z2の関係を保つものとする。
【0019】
さらに、この自転・公転と同時にZ軸方向には、図6に示すように被加工物Wに対して、ピニオンカッター12が上下動作をするようにZ軸制御をすることによって歯車形削り加工を行なうことができる。なお、ピニオンカッター12の上昇時はピニオンカッター12の戻しツールマークを防止するために、最下点で被加工物Wからdだけ離して上昇させ、最上点で元に戻すサイクルを繰り返せば良い。
【0020】
図7は内歯車の加工を行なう場合を示しており、外歯車の加工の場合と同様に公転の半径を(m・z2−m・z1)/2とし、被加工物Wのピッチ円の半径より小とすれば、内歯車が加工でき、公転半径を無限大とすれば、ラック加工を行なうこともできる。
【0021】
ところで、図8は本発明による歯車形削り加工と通常のピニオンカッターによる加工との差異を示す概念図である。通常のNC駆動装置も含め、ピニオンカッターの切削送りはクランク機構で行なわれる。加工ストロークにおいては、切削速度の大きな変動を避けるような工夫が行なわれているが、クランク機構を採用しているため、図8において実線サイン波形で示すように、切削開始端から切削終端にかけて切削速度に大きな変動が生じるのをどうしても避けることができない。図8の実線に示すように、歯幅の中程に最大切削速度が得られ、切削開始端及び切削終端では切削速度は極めて小さくなる。このような加工において、切削工具は、その耐磨耗性と剛性とは、切削速度の最も高いポイントに合わせて選定する必要がある。したがって切削工具からみれば、従来のピニオンカッターによる歯車加工は、工具性能に見合った速度での加工が行われておらず、その作業能率が悪いということになり、またこれとは逆に平均切削速度からすれば、過剰性能の切削工具を使用しているということになる。
【0022】
これに対して上記実施形態のマシニングセンターでは、図8の破線の台形波に示すように、切削開始端から切削終端まで一定の切削速度を付与する機能を備えている。そのため切削速度に応じた切削工具を選定することができる。したがってピニオンカッター12からみれば、工具性能に見合った最大の切削速度での加工が行え、その作業能率を向上することができるということになる。またこれとは逆に切削速度に見合う性能のピニオンカッター12を使用可能となるので工具コストを低減できることにもなる。
【0023】
このように上記実施形態では、マシニングセンターにピニオンカッター12を装着することで、歯車形削り加工を可能とすることができ、そのため、穴あけ加工と歯車加工の両方が必要な被加工物をマシニングセンター1台で完成品に仕上げることができることになり、多品種少量の場合でも対応でき、また素材から完成品になるまでの加工日数を短縮できる。さらには、マシニングセンターでは、切削開始端から切削終端まで一定の切削速度を付与することができるため、ピニオンカッター12の切削速度と工具性能とのマッチングを図り、切削能率の向上、工具コストの低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のマシニングセンターの一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態のマシニングセンターの制御系を示すブロック構成図である。
【図3】本発明の実施の形態の主軸にピニオンカッターを取り付けた状態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】(a)(b)は本発明の実施の形態のピニオンカッターの断面図及び底面図である。
【図5】本発明の実施の形態の被加工物とピニオンカッターを自転と公転を行なわせて歯車形削り加工をする場合の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態のピニオンカッターをZ軸制御を行なわしめる場合の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態の内歯車の加工を行なう場合の断面図である。
【図8】本発明による歯車形削り加工と通常のピニオンカッターとの差異を示す概念図である。
【符号の説明】
1 基台
2 Yテーブル
3 Xテーブル
6 コラム
7 Z軸スライダ
9 主軸ヘッド
10 主軸
12 ピニオンカッター
W 被加工物

Claims (2)

  1. マシニングセンターの回転角度制御可能な主軸(10)にピニオンカッター(12)を装着し、上記主軸(10)の被加工物(W)に対する相対的な円弧補間運動と主軸(10)の回転数とを一定の公比で同期回転させながら、同時に主軸(10)を軸線方向に前後の往復運動をさせることにより、ピニオンカッター(12)にて歯車加工を行なうようにしていることを特徴とするマシニングセンターによる歯車形削り加工方法。
  2. 基台(1)と、この基台(1)上にY軸方向に駆動可能に設けられているYテーブル(2)と、このYテーブル(2)上にX軸方向に駆動可能に設けられているXテーブル(3)と、このXテーブル(3)上に固定される被加工物(W)と、コラム(6)に設けられXY平面に対して直交するZ軸方向に駆動可能なZ軸スライダ(7)と、このZ軸スライダ(7)に取り付けられている主軸ヘッド(9)と、この主軸ヘッド(9)に装着され上記Z軸と同一方向の軸線周りに回転角度制御可能な主軸(10)と、この主軸(10)に装着されているピニオンカッター(12)とでマシニングセンターを構成し、上記被加工物(W)はXテーブル(3)とYテーブル(2)の駆動制御によりX座標とY座標による任意の座標位置に軸制御され、上記主軸(10)の被加工物(W)に対する相対的な円弧補間運動と主軸(10)の回転数とを一定の公比で同期回転させながら、同時に主軸(10)をZ軸方向に往復運動をさせることにより、ピニオンカッター(12)にて歯車加工を行なうようにしていることを特徴とするマシニングセンターによる歯車形削り加工方法。
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