JP3560701B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動モータによりアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8、9に示す従来の電動パワーステアリング装置では、車輪に連係するラック軸と、ハンドルに連動するピニオン軸とを、ギヤケース1内でかみ合わせている。そして、このギヤケース1に電動モータ3を設け、その出力軸をラック軸に連係させている。
また、車室にコントローラー5を設け、このコントローラー5を上記電動モータ3に電気的に接続している。この電動モータ3は、その電源7としてバッテリ又はオルタネータに接続している。
そして、コントローラー5は、ハンドルからの入力トルクなどに応じて電動モータ3への電流値を演算する制御回路2と、その演算値に対応する電流を電動モータに供給する駆動回路4とを備えている。
【0003】
駆動回路4は、図9に示すように、電動モータ3に接続した4つのスイッチング素子6から構成されている。そして、制御回路2がこれら4つのスイッチング素子6を周期的に開閉して、いわゆるPWM変調をし、電動モータ3の出力を制御する。また、その開閉するスイッチを選択することによって、電動モータ3を正転させたり逆転させたりする。
なお、符号38は、これらスイッチング素子6に接続した電流検出抵抗である。
このようにした制御回路2と駆動回路4とは、コントローラー5内で別々に設けられている。
制御回路2と駆動回路4とをコントローラー5内で別々に設けている理由は、駆動回路4のスイッチング素子6を高い周波数で開閉させると、それが発熱してしまうが、その熱により制御回路2に悪影響を及ぼすということがあった。そのために、両回路を別々にして、駆動回路4の熱が制御回路2に影響を及ぼさないようにしている。
【0004】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の電動パワーステアリング装置では、コントローラー5を、エンジンルームから離して車室に設置している。したがって、これらを接続する長い配線が複数必要となり、コストが高くなるとともに、電動パワーステアリング装置が大型化してしまう。しかも、配線が長くなれば、それだけ電力ロスも多くなる。
この発明の目的は、駆動回路で発生するによる影響を少なくでき、しかも、コストダウン及び装置の小型化を可能にする電動パワーステアリング装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、操舵機構を組み込んだギヤケースと、上記操舵機構に連係させた電動モータと、電動モータに電流を供給する駆動回路と、駆動回路に制御信号を出力する制御回路と、電動モータの電源とを備えた電動パワーステアリング装置を前提とする。
そして、表面に駆動回路を設けた金属基板と、この金属基板を組み込んだアルミ製のケースとを備え、上記金属基板とギヤケースとをネジで締め付けて密着させ、しかも、このネジを駆動回路上の電流検出抵抗のアース端子として使用したことを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、アルミ製のケースを、蓋と金属基板を組み込んだ本体とから構成するとともに、上記蓋の内面には、その蓋を本体に取り付けたとき、先端が金属基板を押し付けてそれをケースに密着させる突起を設けたことを特徴とする。
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【作用】
第1の発明では、駆動回路を設けた金属基板を、アルミ製のケースに組み込んでいる。したがって、駆動回路が発熱しても、その熱を金属基板及びケースを介して放熱させることができる。
また、金属基板とケースとをネジで締め付けて密着させているので、さらに放熱効果を高めることができる。
しかも、このネジを駆動回路上の電流検出抵抗のアース端子としても利用するので、電流検出抵抗から直接あるいは最短でアースへ接続でき、回路パターンでの電力損失をなくすことができる。さらに、このネジを介して電流検出抵抗で発生する熱を逃せられるので、放熱性を高めることができる。したがって、空中に放熱するために大きくしていた電流検出抵抗の大きさを小さくでき、それだけ基板も小型化できる。
第2の発明では、第1の発明において、蓋の内面に設けた突起で金属基板を押し付け、金属基板をケースに密着させている。そして、これらを密着させれば、さらに放熱効果を高めることができる。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【発明の実施の形態】
図1〜3に示すこの発明の第1実施例では、基板として金属基板8を用いている。つまり、基板をアルミなどの熱伝導率の高い材質で形成し、その表面に絶縁層を設けている。そして、この金属基板8に出力軸孔9を形成し、その両隣に一対の配線孔10を形成している。
この一枚の金属基板8上には、次ように、制御回路2と駆動回路4と設けている。
つまり、出力軸孔9を形成した側における金属基板8上に、駆動回路4を設けている。特に、スイッチング素子6は出力軸孔9の周囲に配置し、その配置間隔をできるだけ小さくしている。そして、これらスイッチング素子6を互いにプリント配線によって接続している。
また、他方の側における金属基板8上に制御回路2を設け、これら両回路2、4をプリント配線により接続している。
このようにした金属基板8を、本体11と蓋12とからなるケースC内に組み込んでいる。
【0015】
本体11は、アルミなどの熱伝導率の高い材質で形成され、図2に示すようにブロック形状となっている。そして、この本体11には、金属基板8と同形の収容穴13を形成し、その底部に、後述する電動モータ3を組み付けるための組み付け孔14を形成している。したがって、収容孔13に金属基板8をはめ込むと、上記出力軸孔9及び配線孔10が組み付け孔14に重なることになる。
このようにして、金属基板8を収容孔13にはめ込んだら、この金属基板8をネジ37で締め付け、本体11にできるだけ密着させる。
なお、この実施例では、ネジ37を駆動回路4上の電流検出抵抗のアース端子として利用している。したがって、コストダウンが可能である。
しかも、このネジ37を介して、電流検出抵抗38で発生する熱を逃すことができ、コストダウン及び小型化が可能となる。つまり、一般的に、抵抗の線路が細く小さくなると、そこでの発熱量は大きくなってしまう。しかし、ここでは、電流検出抵抗38から直接あるいは最短でアースへ接続できるので、電流検出抵抗38からアースまでの回路パターンが不要あるいは最短にでき、その回路パターンで生じる電力損失を防ぐことができる。また、電流検出抵抗38の発熱をネジ37を介して放熱できるので、電流検出抵抗38の線路を細く小さくでき、コストダウン及び小型化が可能となる。
なお、このネジ37の材質としては、例えば、銅や真鍮を用いればよい。
【0016】
上記本体11には、同じくアルミなどの熱伝導率の高い材質で形成された蓋12を、Oリング15とともに取り付けている。そして、図示しないボルトで本体11と蓋12とを締め付ければ、それら両者を密封させることができる。
この蓋12には、本体11の組み付け孔14に対向する位置に、シャフト孔16を形成し、その内部に軸受17を設けている。
また、蓋12の内面には、複数の押え棒18を設けている。そして、蓋12をボルトで本体11に締め付けると、この押え棒18の先端が金属基板8に当接し、この金属基板8を本体11に押し付けることになる。
【0017】
この押え棒18の先端には樹脂製のクッション部材19を設けている。これは、押え棒18の長さの誤差を吸収するためである。つまり、押え棒18が長過ぎると、蓋12が完全に閉まらなかったり、金属基板8を傷つけたりすることがある。反対に、短すぎると、蓋12を本体11に取り付けても押え棒18の先端が金属基板8に当接せず、押え棒18を設けた意味がなくなってしまう。そこで、押え棒18を少し短めにしておいて、その先端にクッション部材19を設けておけば、確実に先端を金属基板8に当接させることができる。
なお、蓋12の内面には、蓋12と本体11とを位置決めするため、所定の箇所に位置決め突起31を形成している。そして、例えば、これら位置決め突起31を、前記した押え棒18の代わりに、金属基板8を押さえつける突起として用いてもよい。つまり、この位置決め突起31を長くして、その先端部を金属基板8に押し付け、金属基板8を本体11に密着させてもよい。
ただし、いずれの場合も、金属基板8上の回路を構成する各素子がない箇所に、押え棒18あるいは位置決め突起31の先端を押し付けるようにしなければならない。
【0018】
金属基板8をケースCに組み込んだら、図3に示すように、ケースCをギヤケース1と電動モータ3との間に機械的に組み込み、本体11側に電動モータ3を組み付ける。つまり、電動モータ3を組み付け孔14に組み付けて、その出力軸20を、出力軸孔9を通してケースC内を貫通させている。
ケースCの外側である電動モータ3の出力軸20には整流子21を固定し、この整流子21に隣接してブラシホルダ23を設けている。
つまり、金属基板8の裏面、すなわち駆動回路4を設けた側とは反対側における組み付け孔14内に、絶縁性を有するスペーサ24を設け、このスペーサ24の上にブラシホルダ23を固定している。そして、このブラシホルダ23にブラシ22を組み込んで、そのブラシ22を整流子21に接触させている。
なお、ブラシホルダ23内に図示しないスプリングを設けておけば、ブラシ22を常に整流子21に接触させることができるので、出力軸20の回転を安定させることができる。
【0019】
このようにしてブラシホルダ23を設けると、ブラシホルダ23は駆動回路4とは反対面である外側に位置することになる。そして、これらブラシ22とスイッチング素子6とを、配線孔10に通したピグテール線25で接続している。
上記のようにスイッチング素子6とブラシホルダ23とを、金属基板8を挟んで互いに反対側に設けたので、それらを同一面に設ける場合よりも、それらの配置間隔を小さくできる。そして、配置間隔を小さくできるので、当然のこととしてピグテール線25の長さを短くできる。
なお、配線孔10を形成すると、金属基板8のアルミがこの配線孔10の側面に露出してしまう。そして、ピグテール線25がこのアルミに触れるとショートしてしまうので、配線孔10の内面にも絶縁層を設けておく必要がある。
【0020】
一方、蓋12側に、アルミなどで形成したギヤケース1を組み付けている。このギヤケース1内では、車輪を連係させたラック軸と、ハンドルに連動するピニオン軸とがかみ合って操舵機構を構成している。
そして、蓋12に設けた軸受17により出力軸20を支持する一方、この出力軸20をギヤケース1内で上記操舵機構に連係させている。
なお、駆動回路4側におけるケースCの端部には、バッテリ7に接続するためのコネクタ26を設けている。コネクタ26は、端子27と、その周囲に設けた樹脂製のショート防止用の保護ケース28とからなり、この端子27を駆動回路4に接続している。そして、端子27は保護ケース28と相対回転しないように、キー29で止められている。また、端子27と保護ケース28との間、及び保護ケース28と本体11との間にOリング30を組み込み、ケースC内に水等が侵入するのを防止している。
【0021】
次に、第1実施例の電動パワーステアリング装置の動作を説明する。
図示しないハンドルを切ると、その入力トルクや車速などに応じて、制御回路2がアシストに必要な電動モータの出力トルクを計算し、駆動回路4を作動させる。そして、駆動回路4のスイッチング素子6が、周期的に開閉してPWM変調し、電動モータ3の出力を制御するとともに、その出力軸20を正転あるいは逆転させる。出力軸20が回転すれば、その出力がギヤケース1内のラック軸に伝えられ、操舵力をアシストすることになる。
【0022】
この第1実施例の電動パワーステアリング装置では、金属基板8及びケースCを熱伝導率の高いアルミ製にしたので、ギヤケース1をアルミ製にしたことと相まって、放熱性が極めて良好になる。このように放熱性が良くなるので、例えば、制御回路2を駆動回路4に隣接して設けても、駆動回路4の熱が制御回路2に悪影響を及ぼさなくなる。また、このケースCの熱は、ギヤケース1や電動モータ3を介して拡散するので、制御回路2や駆動回路4をエンジンルーム内に隣接して設けることができた。
そして、両回路2、4を車室外、例えばエンジンルーム内に設けることができれば、それだけ配線を短くすることができ、コストダウン、及び電動パワーステアリング装置の小型化が可能となる。また、配線が短くなれば、電力ロスを少なくでき、しかも、PWM変調による放射ノイズの発生も抑えられる。
【0023】
さらに、この第1実施例では、制御回路2と駆動回路4とを同一の金属基板8上に設けられるようになったが、その理由は次の通りである。
つまり、駆動回路4を構成するスイッチング素子6とブラシ22とを、これまで説明した構成としたので、短いピグテール線25で接続し、しかも、スイッチング素子6の配置間隔をできるだけ小さくできる。そして、スイッチング素子6とブラシ22とを短い配線で接続でき、スイッチング素子6の配置間隔を小さくできれば、駆動回路4においてPWM変調による放射ノイズはほとんど発生しない。
【0024】
また、基板を熱伝導率の高いアルミなどの金属製にしているので、駆動回路4が発熱しても、その熱を金属基板8やケースCを介して放熱させることができる。しかも、この実施例では、ネジ37や突起(押え棒18)により、金属基板8をできるだけケースCに密着させたので、さらに放熱効果を高めることができる。
このようにして、PWM変調による放射ノイズをなくし、また、放熱させることができるので、制御回路2と駆動回路4とを同一の基板8上に設けても、なんら不都合が生じない。
このような理由から、この実施例では、両回路2、4を同一の基板8上に設けたが、同一基板8上に両回路2、4を設けることによって、それらを接続する配線をなくすことができ、小型化及びコストダウンが可能となる。
【0025】
図4〜7に示す第2実施例は、第1実施例におけるブラシホルダ23を樹脂製とするとともに、その下端部に一対の突部32を設けている。この一対の突部32は、基板8に形成した配線孔10にはめ込むことができ、基板8の配線孔10を覆うことができる。
さらに、このブラシホルダ23の内部には、スプリングガイド40を一体に形成している。つまり、図5に示すように、ブラシ22の背面にスプリングガイド41を設け、また、ホルダ23内にも、ブラシ22背面に対向する面にスプリングガイド40を設けている。そして、これらスプリングガイド40、41に沿ってスプリング42を設ければ、スプリング42が傾くことなく、電動モータ3の出力を安定させることができる。
また、ブラシホルダ23には、複数の放熱孔33を形成している。したがって、放熱性をさらに高めることができる。
そして、上記以外の構成は、第1実施例と同様である。
【0026】
この第2実施例では、ブラシホルダ23を樹脂製にしたので、ブラシホルダ23自体が絶縁性を有する。したがって、ブラシホルダ23と金属基板8の裏面との間に、絶縁性を有するスペーサ24を設ける必要がなく、それだけ部品点数を少なくできる。このように部品点数を少なくできれば、コストダウン及び小型化が可能となるだけでなく、組み付け工数も少なくできる。
しかも、突部32で配線孔10を覆うことができるので、この配線孔10に絶縁層を設けなくても、ピグテール線25がショートしてしまうことがない。
さらに、突部32をはめ込むだけで、ブラシホルダ23の位置を決めることができるので、組み付け性も向上する。
なお、図6に示すように突部32の先端に爪部34を形成しておけば、この爪部34を基板8の表面に引っ掛けることができる。そして、例えば、突部32が弾性を有すれば、この突部32を配線孔10にはめ込むだけで、ブラシホルダ23をしっかり固定させることができる。
もちろん、図7に示すように、突部32とは別に固定用突起39を設けてもよい。そして、突部32とは別に固定用突起39を設ければ、このブラシホルダ23をさらにしっかりと固定することができる。ただし、この場合は、金属基板8側にも、この固定用突起39をはめるための固定用孔を形成する必要がある。
【0027】
【発明の効果】
第1の発明では、駆動回路や駆動回路に接続したピグテール線が発熱しても、その熱を金属基板及びケースを介して放熱させることができる。
したがって、駆動回路と制御回路とを同一の基板上に設けることができる。そして、これら両回路を同一の基板上に設けることができれば、コストダウン及び装置の小型化が可能となる。
また、ネジで基板とケースとを密着させたので、さらに放熱性を高めることができる。しかも、このネジをアース端子として利用するので、コストダウンが可能である。また、ネジを介して電流検出抵抗で発生する熱を逃すことができるので、抵抗を小さくでき、さらにコストダウン及び小型化が可能となる。
第2の発明では、第1の発明において、突起の先端を基板に押し付け、基板をケースに密着させたので、さらに放熱性を高めることができる。
【0028】
【0029】
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】制御回路2と駆動回路4とを設けた基板8を示す図である。
【図2】蓋12と本体11とからなるケースCの斜視図である。
【図3】第1実施例の電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図4】第2実施例の電動パワーステアリング装置でブラシホルダを示す一部断面図である。
【図5】ブラシホルダの内部を示す断面図である。
【図6】第2実施例でブラシホルダの一例を示す一部断面図である。
【図7】第2実施例でブラシホルダの一例を示す斜視図である。
【図8】従来例の電動パワーステアリング装置を示す図である。
【図9】従来例の電動パワーステアリング装置の回路図である。
【符号の説明】
1 ギヤケース
2 制御回路
3 電動モータ
4 駆動回路
6 スイッチング素子
金属基板
9 出力軸孔
10 配線孔
11 本体
12 蓋
18 押え棒
22 ブラシ
23 ブラシホルダ
37 ネジ
38 電流検出抵抗
C ケース

Claims (2)

  1. 操舵機構を組み込んだギヤケースと、上記操舵機構に連係させた電動モータと、電動モータに電流を供給する駆動回路と、駆動回路に制御信号を出力する制御回路と、電動モータの電源とを備えた電動パワーステアリング装置において、表面に駆動回路を設けた金属基板と、この基板を組み込んだアルミ製のケースとを備え、上記金属基板とギヤケースとをネジで締め付けて密着させ、しかも、このネジを駆動回路上の電流検出抵抗のアース端子として使用したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. アルミ製のケースを、蓋と金属基板を組み込んだ本体とから構成するとともに、上記蓋の内面には、その蓋を本体に取り付けたとき、先端が金属基板を押し付けてそれをケースに密着させる突起を設けたことを特徴とする請求項記載の電動パワーステアリング装置。
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