JP3716231B2 - 電動式パワーステアリング回路装置及びその製造方法 - Google Patents
電動式パワーステアリング回路装置及びその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、モータの回転力によって車両のステアリング装置に補助付勢する電動式パワーステアリング回路装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は、一般的な電動式パワーステアリング回路装置の構成を一部ブロック図で示す回路図である。この図において、40は車両のハンドル(図示せず)に対して補助トルクを出力するモータ、41はモータ40を駆動するためのモータ電流IMを供給するバッテリである。42はモータ電流IMのリップル成分を吸収するための大容量(3600μF程度)のコンデンサ、43はモータ電流IMを検出するためのシャント抵抗器、44はモータ電流IMを補助トルクの大きさおよび方向に応じて切り換えるための複数の半導体スイッチング素子(例えば、FET)Q1〜Q4からなるブリッジ回路、49は電磁ノイズを除去するためのコイルである。
【0003】
L1はコンデンサ42の一端をグランドに接続する接続線、P1およびP2は半導体スイッチング素子Q1〜Q4をブリッジ接続すると共にシャント抵抗器43およびブリッジ回路44を接続する配線パターン、P3はブリッジ回路44の出力端子となる配線パターンである。45はモータ40およびバッテリ41をブリッジ回路44に接続するための複数のリード端子からなるコネクタ、L2はモータ40およびバッテリ41とコネクタ45とを接続するための外部配線、46はモータ電流IMを必要に応じて通電遮断するための常開リレー、P4はリレー46、コンデンサ42およびシャント抵抗器43を接続する配線パターン、P5はコネクタ45をグランドに接続する配線パターンである。ブリッジ回路44の出力端子となる配線パターンP3はコネクタ45に接続されている。
【0004】
47はブリッジ回路44を介してモータ40を駆動すると共に、リレー46を駆動する駆動回路、L3は駆動回路47をリレー46の励磁コイルに接続する導電線、L4は駆動回路47をブリッジ回路44に接続する接続線、48はシャント抵抗器43の一端を介してモータ電流IMを検出するモータ電流検出手段であり、駆動回路47およびモータ電流検出手段48は後述するマイクロコンピュータの周辺回路素子を構成している。50はハンドルの操舵トルクTを検出するトルクセンサ、51は車両の車速Vを検出する車速センサである。55は操舵トルクTおよび車速Vに基づいて補助トルクを演算すると共にモータ電流IMをフィードバックして補助トルクに相当する駆動信号を生成するマイクロコンピュータ(ECU)であり、ブリッジ回路44を制御するための回転方向指令D0および電流制御量I0を駆動信号として駆動回路47に入力する。
【0005】
マイクロコンピュータ55は、モータ40の回転方向指令D0および補助トルクに相当するモータ電流指令Imを生成するモータ電流決定手段56と、モータ電流指令Imとモータ電流IMとの電流偏差ΔIを演算する減算手段57と、電流偏差ΔIからP(比例)項、I(積分)項およびD(微分)項の補正量を算出してPWMデューティ比に相当する電流制御量I0を生成するPID演算手段58とを備えている。また、図示しないが、マイクロコンピュータ55はAD変換器やPWMタイマ回路等の他に周知の自己診断機能を含み、システムが正常に動作しているか否かを常に自己診断しており、異常が発生すると駆動回路47を介してリレー46を開放し、モータ電流IMを遮断するようになっている。L5はマイクロコンピュータ55を駆動回路47に接続するための接続線である。
【0006】
一般に、モータ40とバッテリ41との間に介在された回路要素42〜44、49、配線パターンP1〜P5、接続線L1および外部配線L2は、大電流のモータ電流IMに対応するため、後述するように放熱性(耐熱性)および耐久性等を考慮して大型に構成されている。一方、マイクロコンピュータ55、駆動回路47およびモータ電流検出回路48を含む周辺回路素子ならびに接続線L3〜L5は、小電流に対応するうえ高密度が要求されるため小型に構成されている。
図5は、一般的な電動式パワーステアリング回路装置の構成を示す平面図である。この図において、Q1〜Q4、42、43、45、46、49および55は図4に示したものと同様のものである。この場合、半導体スイッチング素子Q1〜Q4は樹脂で被覆された各一対のFETにより構成され、大容量のコンデンサ42は3個のコンデンサにより構成され、マイクロコンピュータ55は1チップのICにより構成されている。また、図面の煩雑さを防ぐために、周辺回路素子、配線パターンおよび導電線等を省略し、代表的な構成要素のみを示す。
【0007】
1はシールド板および放熱板の機能を兼ねた箱形の金属フレーム、2は金属フレーム1の底面上に載置された絶縁プリント基板、3は金属フレーム1の内側面に一端面が接合された例えばアルミニウム性の放熱板である。絶縁プリント基板2には、各回路要素42、43、46、49および55等が載置されており、また、放熱板3の他端面には各半導体スイッチング素子Q1〜Q4が接合されている。4a〜4eは配線パターンP1〜P5等に相当する配線板であり、大電流に専用に対応するために絶縁プリント基板2上の配線パターンとは別に幅および厚さの大きい導電板が用いられている。
【0008】
次に、図4を参照しながら、図5に示した従来の電動式パワーステアリング回路装置の動作について説明する。マイクロコンピュータ55は、トルクセンサ50および車速センサ51から操舵トルクTおよび車速Vを取り込むと共に、シャント抵抗器43からモータ電流IMをフィードバック入力し、パワーステアリングの回転方向指令D0と、補助トルク量に相当する電流制御量I0とを生成し、導電線L5を介して駆動回路47に入力する。
駆動回路47は、定常駆動状態では接続線L3を介した指令により常開リレー46を閉成しており、回転方向指令D0および電流制御量I0が入力されるとPWM駆動信号を生成し、接続線L4を介してブリッジ回路44の各半導体スイッチング素子Q1〜Q4に印加する。
【0009】
これによりモータ40は、バッテリ41から外部配線L2、コネクタ45、コイル49、リレー46、配線パターンP4、シャント抵抗器43、配線パターンP1、ブリッジ回路44、配線パターンP3、コネクタ45および外部配線L2を介して供給されるモータ電流IMにより駆動され、所要方向に所要量の補助トルクを出力する。このときモータ電流IMは、シャント抵抗器43およびモータ電流検出手段48を介して検出され、マイクロコンピュータ55内の減算手段57にフィードバックされることにより、モータ電流指令Imと一致するように制御される。また、モータ電流IMはブリッジ回路44のPWM駆動時のスイッチング動作によりリップル成分を含むが、大容量のコンデンサ42により平滑されて抑制される。さらに、コイル49は、上記ブリッジ回路44がPWM駆動時に、スイッチング動作することにより発生するノイズが外部へ放出されてラジオノイズとなることを防止する。
【0010】
ところで、この種の電動式パワーステアリング回路装置で制御されるモータ電流IMの値は、軽自動車であっても25A程度であり、小型自動車では60A〜80A程度にも達する。従って、ブリッジ回路44を構成する半導体スイッチング素子Q1〜Q4は、モータ電流IMの大きさに対応して大型化すると共に、図示したように複数個を並列接続して、オン時およびPWMスイッチング時の発熱を抑制する必要がある。また、半導体スイッチング素子Q1〜Q4の発熱量を放熱するために放熱板3が必要であり、モータ電流IMが大きくなればなるほど半導体スイッチング素子Q1〜Q4の個数も増加し、同時に放熱板3も大型化することになる。さらに、コネクタ45の端子から、コイル49、リレー46、シャント抵抗器43およびブリッジ回路44を経由したグランドまでの配線パターンP1、P2およびP4、ならびにブリッジ回路44からモータ40までの配線パターンP3の長さは、モータ電流IMの大電流化、半導体スイッチング素子Q1〜Q4の個数の増加、ならびに放熱板の大型化に比例して物理的に長くなる。
【0011】
この結果、各配線パターンP1〜P4での電圧降下に起因する発熱量により温度上昇が大きくなると、配線パターンP1〜P4の耐熱性および耐久性を損なうおそれがあるので、これを防止するため、図5のように幅や厚さの大きい大電流専用の配線板4a〜4eが用いられている。従って、絶縁プリント基板2の大型化を招くことになる。また、コンデンサ42、シャント抵抗器43、リレー46、およびコイル49は、モータ電流IMの大電流化に伴い大型化するが、これらを絶縁プリント基板2上に搭載しようとすると、搭載スペースの増大により、さらに絶縁プリント基板2の大型化を招くことになる。
【0012】
これらの問題を解決するための改良案として、例えば特開2000−43740号公報に記載されているものが知られている。図6は、2000−43740号公報に記載された電動式パワーステアリング回路装置を示す分解斜視図である。この図において、図4、図5と同一または相当部分にはそれぞれ同一符号を付している。なお、この装置の回路構成は、図4に示したものと同様であり、通常の回路動作についても上述と同様である。
【0013】
図6において、1Bはシールドカバーであって、組み付けられた状態(図示せず)では回路装置を取り囲み、回路に対する電磁ノイズを遮断するものである。64はマイクロコンピュータ55やその周辺回路等の小電流部品を搭載する制御基板であり、絶縁プリント基板により構成されている。65は半導体スイッチング素子Q1〜Q4、シャント抵抗器43等の大電流部品を搭載するパワー基板であり、熱伝導性に優れた金属基板にて構成されている。即ち、小電流部品を絶縁プリント基板に搭載し、大電流部品を金属基板に搭載することによって2枚基板構造とし、各基板の面積を小さくし、これらを上下方向に重ね合わせることによって小型化すると共に、大電流部品による発熱を熱伝導に優れた金属基板を通して後述する放熱板3Bへ伝えることによって外部への熱放出を促進し、回路装置の信頼性を向上させている。
【0014】
62はケースであり、コネクタ45が一体的に形成されている。また、ケース62はコネクタ45のリード端子をインサートモールド成型しており、このリード端子はケース62内に延長され、後述するケース凹部66の底面66Aに配線パターンP6を形成しており、さらに延長されパワー基板65と接続するための延長端子67を形成している。3Bは放熱板であり、上記金属基板によって構成されるパワー基板65と接触するように取り付けられ、パワー基板65に搭載された電気部品によって発生した熱を外部に放出するものである。また、放熱板3Bには、ケース62の凹部66と対向する部分に凹状の切り欠き部3Cが形成されている。なお、この放熱板3Bを備えない場合には、ケース62の凹部66に蓋をする図示しない保護カバーを設ける。
【0015】
次に、以上のような回路装置の組み立てについて説明する。各電極にクリーム半田を塗布したパワー基板65上に、半導体スイッチング素子Q1〜Q4、シャント抵抗器43等の電気部品、およびケース62を配置する。このとき、ケース62から延びた延長端子67と、この延長端子67に対向するパワー基板65上の電極65Aの位置決めを行うが、延長端子67の位置を電極65Aに合わせることで位置決めが可能なので容易に位置決めができる。このように、部品を配置したパワー基板65を下側から、または周囲の雰囲気全体を熱し、先に塗布したクリーム半田を溶かし各部品を半田付けする。これによって、各種電気部品の接続とコネクタ45からの端子とパワー基板との接続を一度の半田付け作業により完了させることができ、製造工程を簡略化することができる。
【0016】
図7(a)は、ケース62の下側平面図であり、図7(b)は、側面図である。これらの図に示すように、ケース62の一部に凹部66を設け、その底面66Aにコネクタ45のリード端子を延長した延長端子によって形成された配線パターンP6が配設されている。回路構成部品のうち、コンデンサ42、リレー46、コイル49等のスペース的に大きな部品をこの凹部に挿入して取り付け、配線パターンP6によって接続することによって、大きな部品をスペース効率よく収納できると共に、コネクタ45のリード端子は元々絶縁プリント基板等に配置される配線パターンよりも厚く、これを延長して設けた配線パターンP6によって電気的に接続できるため、大電流に対応するために配線パターンの幅を広くする必要がなく、回路装置全体を小型化することができる。
【0017】
マイクロコンピュータ55や周辺回路素子等の小電流が通電される部品を搭載した制御基板64と、ブリッジ回路44やシャント抵抗器43等の大電流が通電される部品を搭載したパワー基板65を接続する接続線L5は、図6に示されるように、ケース62とは独立して設けられており、接続線L5をパワー基板65へ接続する際には単なる電気部品の1つとして基板に搭載することができるので、位置決めが容易であり、制御基板64と接続する際にもケース62に固定されていないので、位置決めが比較的容易にできる。このように、接続線L5をケース62と独立して設けることによって制御基板64およびパワー基板65への接続が容易に行える。
【0018】
各部品を接続し組み立てて、最終的には、シールドカバー1B、ケース62および放熱板3Bを取付ネジ61によって結合することにより回路装置を完成させる。このシールドカバー1Bによってケース62を取り囲むことにより、電磁ノイズによる回路装置の誤作動を防止し、回路装置の信頼性を向上させている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように構成された従来の電動式パワーステアリング回路装置は、延長端子による配線パターンをケースに設け、その配線パターンにコンデンサ、リレー、コイルを搭載するため、その配線パターンにコンデンサ、リレー、コイルを取り付けるための半田付けと、パワー基板に延長端子と電気部品を取り付けるための半田付けを分けて行わなければならず、製造工程が煩雑になるという問題点があった。
【0020】
また、コネクタ延長端子が、コンデンサ、リレー、コイルを搭載するために長くなり、更なる回路装置の小型化が困難であるという問題点があった。
また、コイルに振動が加わった場合、そのリード線や半田付け部にストレスが加わり、耐振性が低下するという問題点があった。
さらに、回路装置の高さを低くするとシールドカバーと制御基板から突出した接続線とのギャップが小さくなり、シールドカバーの少しの凹みで接続線とシールドカバーが電気的にショートするという問題点があった。
さらにまた、ケースグランドを取るためには、回路装置内でコネクタのグランド端子を車体に接触するもの(図示せず)に固定する工程が必要であり、製造の工程が煩雑になるという問題点があった。
【0021】
この発明は、上述した問題点に対処するためになされたもので、半田付けの工程を簡略化し、回路装置を薄型化すると共に、信頼性を向上することができる電動式パワーステアリング回路装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、車両のハンドルに対して補助トルクを出力するモータと、上記モータに駆動電流を供給するバッテリと、上記ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、上記ハンドルに対する上記補助トルクに応じて上記モータの上記駆動電流を切り換える複数の半導体スイッチング素子からなるブリッジ回路と、上記駆動電流のリップルを吸収するコンデンサと、上記バッテリから上記モータに供給される上記駆動電流を開閉するリレーと、上記ブリッジ回路のスイッチング動作時に発生するノイズの外部流出を防止するコイルと、上記駆動電流が流れる配線パターンが形成されたパワー基板と、上記ハンドルの操舵トルクに基づいて上記ブリッジ回路を制御する駆動信号を生成するマイクロコンピュータおよびその周辺回路素子を搭載する制御基板と、上記バッテリ、上記モータおよび上記トルクセンサと電気的に接続されるコネクタと、上記パワー基板および上記制御基板を保持すると共に、上記コネクタと絶縁性樹脂で一体に成型されたケースとを備えた電動式パワーステアリング回路装置において、上記ケースには、対向する2辺を接続してケース内を2区画に分割する接続部材が一体に形成され、上記接続部材には、上記パワー基板と上記制御基板を電気的に接続する導電性の接続線がインサート成型されると共に、上記パワー基板には、少なくとも上記ブリッジ回路、上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルが搭載されているものである。
【0023】
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記ケースの高さ方向の両端がそれぞれ開口部とされ、一端側開口部に上記パワー基板が配置され,他端側開口部に上記制御基板が配置されたものである。
【0024】
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記パワー基板に搭載された少なくとも上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルを上記ケースの一方の区画側に配置したものである。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記制御基板に、マイクロコンピュータ及びその周辺回路等の小電流部品を搭載し、これらを上記ケースの他方の区画側に配置すると共に、上記一方の区画側に配置された少なくとも上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルと高さ方向で重ならないように配置したものである。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記パワー基板を高熱伝導率の金属基板で構成したものである。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記パワー基板をアルミニウムベースの金属基板で構成したものである。
【0025】
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記コイルが上記パワー基板と電気的に接続されると共に、機械的固定手段により上記パワー基板に固定されたものである。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記機械的固定手段をネジ止めとしたものである。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記ケースに、上記制御基板を覆って電磁シールドするシールドカバーを装着したものである。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記接続部材に、上記シールドカバーを支持する突起部を設けたものである。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記ケースが車両に取り付けられる取り付け部を形成し、上記バッテリのグランド側に接続されるコネクタの端子が上記取り付け部に延長された端子延長部を形成すると共に、上記シールドカバーの一部が上記取り付け部に位置し得るシールドカバー延長部を形成したものである。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置は、また、上記端子延長部が、上記シールドカバー延長部および車両のグランドと、上記ケースを車両に取り付ける固定手段により互いに電気的に接続されたものである。
【0026】
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置の製造方法は、請求項1に記載した電動式パワーステアリング回路装置において、少なくとも上記ブリッジ回路、上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルが上記パワー基板上に搭載される部品実装工程と、上記実装工程の後に上記ケースが機械的に固定されるケース固定工程と、上記ケース固定工程の後にリフロー炉で半田溶融させることにより上記パワー基板と搭載部品との電気的接続を行う半田付け工程とを有するものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図にもとづいて説明する。図1は、この発明の実施の形態1の構成を示す分解斜視図である。この図において、図4〜図7と同一または相当部分には同一符号を付している。また、この実施の形態の回路構成は、図4と同様であり、その動作も同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0028】
図1において、1Bはシールドカバーであって、組み付けられた状態(図示せず)では回路装置を取り囲み、回路に対する電磁ノイズを遮断するものである。62はケース(図2に延長端子67と接続線L5の形状をさらに分かりやすく示す)であり、コネクタ45A〜45Cが一体的に形成されており、そのリード端子をインサートモールド成型している。コネクタ45A〜45Cのリード端子は、ケース62内に延長され、パワー基板65と接続するための延長端子67A、67B、制御基板64と接続するための延長端子67Cを形成している。
また、ケース62には、対向する2辺を接続する接続部材62Aが一体的に成型され、接続部材62Aで2つの区画に分割されている。さらに、ケース62は高さ方向の両端がそれぞれ開口部とされている。65は半導体スイッチング素子Q1〜Q4、シャント抵抗器43、コンデンサ42、リレー46、コイル49等の大電流部品を搭載するパワー基板であり、熱伝導性に優れた金属基板にて構成され、上述したケース開口部の一端側、即ち図1において下端側に配置され、ケース62の一方の区画側にコンデンサ42、リレー46、コイル49が配置されるようになっている。64はマイクロコンピュータ55やその周辺回路等の小電流部品を搭載し、絶縁プリント基板から構成される制御基板であり、ケース開口部の他端側、即ち図1において上端側に配置され、搭載部品がケース62の他方の区画側に配置されると共に、上記コンデンサ42、リレー46、コイル49と高さ方向で重ならないように配置されている。これによって、回路装置内のスペースの有効活用を可能にし、回路装置を薄型化すると共に、大電流部品による発熱を熱伝導に優れた金属基板を通してコラム等(図示せず)へ伝えることによって、外部への熱放出を促進し回路装置の信頼性を向上させている。
【0029】
図3は、コイル49の取り付けの状態を示す断面図である。コイル49は、固定治具49Aを介してネジ49Bによりパワー基板65に固定されている。
これによって、振動によるストレスがコイル49のリード線や半田付け部に直接加わることを防止でき、コイル49の耐振性が改善され、回路装置の信頼性を向上させている。
【0030】
ケース62は接続部材62Aにシールドカバー1Bを支える突起部62Bを設けている。これにより、シールドカバー1Bの外力による凹みでシールドカバー1Bと接続線L5が電気的にショートすることを防止し、回路装置の信頼性を向上させている。
【0031】
ケース62は車両に取り付けられる取り付け部62Cを形成し、バッテリのグランド側に接続されるコネクタの端子が取り付け部62Cに延長された端子延長部62Dを形成すると共に、シールドカバー1Bの一部が上記取り付け部上に位置し得るようにされたシールドカバー延長部1Cを形成している。端子延長部62Dは、シールドカバー延長部1Cおよび車両のグランドとケース62を車両に取り付ける固定手段(図示せず)により互いに電気的に接続されている。
これにより、ケースグランド接続のために回路装置側で何かを接続するといった工程が不要になり、製造工程を簡略化することができる。
【0032】
次に、以上のような回路装置の組み立てについて説明する。各電極にクリーム半田を塗布したパワー基板65上に半導体スイッチング素子Q1〜Q4、シャント抵抗器43等の電気部品、ケース62、および従来はケースの配線パターン上に搭載されていたコンデンサ42、リレー43、コイル49を配置する。
このとき、延長端子67は制御基板65上の電極65Aと位置決めされて配置される。このようにケース62と部品を配置したパワー基板65を一括してリフロー炉を通し、先に塗布したクリーム半田を溶かして各部品を半田付けする。
これによって、従来、延長端子と半導体スイッチング素子Q1〜Q4、シャント抵抗器43等の電気部品の半田付けと、コンデンサ42、リレー46、コイル49の半田付けの2回に分けていた半田付けが1回で済むようになり、製造工程を簡略化することができる。
【0033】
以上説明したように、各部品を接続し組み立てて、最終的には、シールドカバー1Bをケース62にはめ込むことによって回路装置を完成させる。このシールドカバー1Bによってケース62を取り囲むことにより、電磁ノイズによる回路装置の誤作動を防止し、回路装置の信頼性を向上させている。
【0034】
以上説明したこの発明の実施の形態では、回路基板を2枚構成とし、また、電気回路にて発生した熱の放出はコラム等に直接行う構成としたが、これに限られるものではなく、回路基板を1枚構成とする、または放熱板を設ける等、この発明の主旨に適合する範囲で種々の実施形態を含むことは言うまでもない。また、ラジオノイズの影響がわずかである場合、ラジオノイズ除去用のコイル49を省略しても良い。
【0035】
【発明の効果】
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置によれば、車両のハンドルに対して補助トルクを出力するモータと、上記モータに駆動電流を供給するバッテリと、上記ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、上記ハンドルに対する上記補助トルクに応じて上記モータの上記駆動電流を切り換える複数の半導体スイッチング素子からなるブリッジ回路と、上記駆動電流のリップルを吸収するコンデンサと、上記バッテリから上記モータに供給される上記駆動電流を開閉するリレーと、上記ブリッジ回路のスイッチング動作時に発生するノイズの外部流出を防止するコイルと、上記駆動電流が流れる配線パターンが形成されたパワー基板と、上記ハンドルの操舵トルクに基づいて上記ブリッジ回路を制御する駆動信号を生成するマイクロコンピュータおよびその周辺回路素子を搭載する制御基板と、上記バッテリ、上記モータおよび上記トルクセンサと電気的に接続されるコネクタと、上記パワー基板および上記制御基板を保持すると共に、上記コネクタと絶縁性樹脂で一体に成型されたケースとを備え、少なくとも上記ブリッジ回路、上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルを上記パワー基板上に搭載したため、従来、2回に分けていたコンデンサ、リレー、コイルを取り付けるための半田付けと、金属基板に延長端子と電気部品を取り付けるための半田付けが1回の半田付けで完了することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0036】
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置によれば、また、上記ケースが対向する2辺を接続する接続部材と一体に成型され、上記接続部材で2つの区画に分割され、また、上記ケースの上記接続部材に、上記パワー基板と上記制御基板を電気的に接続する導電性の接続線を配置し、さらに、上記接続線を上記ケースにインサート成型し、また、上記ケースの高さ方向の両端がそれぞれ開口部とされ、一端側開口部に上記パワー基板が配置され、他端側開口部に上記制御基板が配置され、さらにまた、上記パワー基板に搭載された少なくとも上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルを上記ケースの一方の区画側に配置し、また、上記制御基板にマイクロコンピュータ及びその周辺回路等の小電流部品を搭載し、これらを上記ケースの他方の区画側に配置すると共に、上記一方の区画側に配置された少なくとも上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルと高さ方向で重ならないように配置したため、上記コンデンサ、上記リレー、上記コイルの搭載に必要なスペースを効率よく確保でき、回路装置を薄型化することができる。
【0037】
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置によれば、また、上記パワー基板を高熱伝導率の金属基板で構成し、また、上記パワー基板をアルミニウムベースの金属基板で構成したため、回路装置内部の熱を効率よく外部へ放出することができ、回路装置の信頼性を向上することができる。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置によれば、また、上記コイルが上記パワー基板と電気的に接続されると共に、機械的固定手段により上記パワー基板に固定され、また、上記コイルがネジ止めにより上記パワー基板に固定されているため、振動によるストレスがコイルのリード線や半田付け部に直接加わることを防止でき、コイルの耐振性が改善され、回路装置の信頼性を向上することができる。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置によれば、また、上記ケースに上記制御基板を覆って電磁シールドするシールドカバーを装着したため、電磁ノイズによる回路装置の誤作動を防止でき、回路装置の信頼性を向上することができる。
【0038】
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置によれば、また、上記接続部材に、上記シールドカバーを支持する突起部を設けたため、上記シールドカバーの外力による凹みで上記シールドカバーと上記接続線が電気的にショートすることを防止でき、回路装置の信頼性を向上することができる。
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置によれば、また、上記ケースが車両に取り付けられる取り付け部を形成し、上記バッテリのグランド側に接続されるコネクタの端子が上記取り付け部に延長された端子延長部を形成すると共に,上記シールドカバーの一部が上記取り付け部に位置し得るシールドカバー延長部を形成している。また、上記端子延長部が上記シールドカバー延長部および車両のグランドと、上記ケースを車両に取り付ける固定手段により互いに電気的に接続されているため、ケースグランド接続のために回路装置側で何かを接続するといった工程が不要になり、製造工程を簡略化できる。
【0039】
この発明にかかる電動式パワーステアリング回路装置の製造方法によれば、少なくとも上記ブリッジ回路、上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルが上記パワー基板上に搭載される部品実装工程と、上記実装工程の後に上記ケースが機械的に固定されるケース固定工程と、上記ケース固定工程の後にリフロー炉で半田溶融させることにより上記パワー基板と搭載部品との電気的接続を行う半田付け工程とを有するため、パワー基板と上記ブリッジ回路、上記コンデンサ、上記リレー、上記コイル、上記ケースの延長端子及び接続端子の電気的接続を1回の半田付けで完了することができ、製造工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1の構成を示す分解斜視図である。
【図2】 この発明の実施の形態1の部分的な構成を示す詳細図である。
【図3】 この発明の実施の形態1におけるコイルの取り付け状態を示す断面図である。
【図4】 一般的な電動式パワーステアリング回路装置の回路構成を一部ブロック図で示す回路図である。
【図5】 一般的な電動式パワーステアリング回路装置の構成を示す平面図である。
【図6】 従来の電動式パワーステアリング回路装置の構成を示す分解斜視図である。
【図7】 従来の電動式パワーステアリング回路装置の部分的な構成を示す詳細図で、(a)はケースの下側平面図、(b)は同じく側面図である。
【符号の説明】
1B シールドカバー、 40 モータ、 41 バッテリ、
44 ブリッジ回路、 45A、45B、45C コネクタ、
49 コイル、 62 ケース、 62A 接続部材、
62B 突起部、 62C 取り付け部、 64 制御基板、
65 パワー基板。
Claims (13)
- 車両のハンドルに対して補助トルクを出力するモータと、上記モータに駆動電流を供給するバッテリと、上記ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサと、上記ハンドルに対する上記補助トルクに応じて上記モータの上記駆動電流を切り換える複数の半導体スイッチング素子からなるブリッジ回路と、上記駆動電流のリップルを吸収するコンデンサと、上記バッテリから上記モータに供給される上記駆動電流を開閉するリレーと、上記ブリッジ回路のスイッチング動作時に発生するノイズの外部流出を防止するコイルと、上記駆動電流が流れる配線パターンが形成されたパワー基板と、上記ハンドルの操舵トルクに基づいて上記ブリッジ回路を制御する駆動信号を生成するマイクロコンピュータおよびその周辺回路素子を搭載する制御基板と、上記バッテリ、上記モータおよび上記トルクセンサと電気的に接続されるコネクタと、上記パワー基板および上記制御基板を保持すると共に、上記コネクタと絶縁性樹脂で一体に成型されたケースとを備えた電動式パワーステアリング回路装置において、上記ケースには、対向する2辺を接続してケース内を2区画に分割する接続部材が一体に形成され、上記接続部材には、上記パワー基板と上記制御基板を電気的に接続する導電性の接続線がインサート成型されると共に、上記パワー基板には、少なくとも上記ブリッジ回路、上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルが搭載されていることを特徴とする電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記ケースは、高さ方向の両端がそれぞれ開口部とされ、一端側開口部に上記パワー基板が配置され、他端側開口部に上記制御基板が配置されていることを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記パワー基板に搭載された少なくとも上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルは、上記ケースの一方の区画側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記制御基板には、マイクロコンピュータ及びその周辺回路等の小電流部品を搭載し、これらを上記ケースの他方の区画側に配置すると共に、上記一方の区画側に配置された少なくとも上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルと高さ方向で重ならないように配置されたことを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記パワー基板は、高熱伝導率の金属基板で構成されていることを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記パワー基板は、アルミニウムベースの金属基板で構成されていることを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記コイルは、上記パワー基板と電気的に接続されると共に、機械的固定手段により上記パワー基板に固定されていることを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記機械的固定手段は、ネジ止めであることを特徴とする請求項7記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記ケースは、上記制御基板を覆って電磁シールドするシールドカバーが装着されていること特徴とする請求項1または請求項2記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記接続部材に、上記シールドカバーを支持する突起部を設けたことを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記ケースは、車両に取り付けられる取り付け部を形成し、上記バッテリのグランド側に接続されるコネクタの端子が上記取り付け部に延長された端子延長部を形成すると共に、上記シールドカバーの一部が上記取り付け部に位置し得るシールドカバー延長部を形成したことを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 上記端子延長部は、上記シールドカバー延長部および車両のグランドと、上記ケースを車両に取り付ける固定手段により、互いに電気的に接続されることを特徴とする請求項11記載の電動式パワーステアリング回路装置。
- 請求項1記載の電動式パワーステアリング回路装置において、少なくとも上記ブリッジ回路、上記コンデンサ、上記リレーおよび上記コイルが上記パワー基板上に搭載される部品実装工程と、上記実装工程の後に上記ケースが機械的に固定されるケース固定工程と、上記ケース固定工程の後にリフロー炉で半田溶融させることにより上記パワー基板と搭載部品との電気的接続を行う半田付け工程とを有することを特徴とする電動式パワーステアリング回路装置の製造方法。
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