JP3560150B2 - 有機el素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネセンス)素子に関し、特に、発光立上時間の差による複数の発光部における発光輝度の差を改善することを可能とする有機EL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3で示すように、特開平5−234681号公報等には、透光性絶縁基板1上に、透明電極2、有機層3、背面電極4を順次形成した有機EL素子が開示されており、有機層3は、例えば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層から構成されている。
【0003】
斯かる有機EL素子は、透明電極2と背面電極4との間に、数十ボルトの直流電源を接続して両電極間2,4に電流を供給することにより、有機層3が発光して、その発光を基板1を通して外部へ照射するものであり、その発光部は、ドット・マトリクス・タイプを除いては透明電極2のパターンにより定めるのが一般的である。
【0004】
すなわち、図4で示すように、ガラス板等の基板1の上に、ITO等の透光性導電材料を用いて表示部Dとこれに電流を供給するための配線部Lとをパターン化して蒸着等の手段により形成する。表示部Dは、発光形状に相当するセグメント部(図4の点線で指示している範囲)Sよりも一回り大きめに形成してあり、図3で示すように、この透明電極2と有機層3との間には、ポリイミド系、アクリル系、フェノール系等の絶縁材料をスピンコートやロールコート等の適宜手段により成膜形成した絶縁層5が位置しており、表示部Dのセグメント部S以外の部分(絶縁層5がカバーしている部分)は、配線部Lの一部となっており、前記発光形状を除いて絶縁層5を形成する、すなわち、セグメント部S上の絶縁層5を除去することにより、セグメント部Sの形状を所望する前記発光形状としていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる有機EL素子において、例えば図4で示すように、7個のセグメント部S1〜S7を日の字形状に配置して、数字の0〜9を表示する場合、セグメント部S1〜S7を含む表示部D1〜D7とこれらの夫々に繋がる配線部L1〜L7とが形成され、配線部L1〜L7には個別に電流供給源(図示しない)が接続される。
【0006】
ところで、セグメント部S1〜S6を時計回りに配置すると共に中央にセグメント部S7を配置し、これらに繋がる配線部L1〜L7を全て下方へ引き出すパターンとした場合、上方に位置するセグメント部S1,S2,S6の配線部L1,L2,L6(前者)は、下方に位置するセグメント部S3〜S5,S7の配線部L3〜L5,L7(後者)に比べて、引き回し距離が長くなり、静電容量は大きくなる。
【0007】
これにより、セグメント部S1〜S7の静電容量と配線部L1〜L7の静電容量の比が、前記前者と前記後者とでは大きく異なる場合があり、発光立上時間はこれら静電容量に大きく依存することが知られていることから(例えば、特開平5−29080号公報の段落番号0026を参照)、セグメント部S1〜S7において発光立上時間に差が生じることがある。
【0008】
この発光立上時間の差は、セグメント部S1〜S7における発光輝度の差となり、表示品位の低下を招く。特に、パルス駆動にて電流が供給されてセグメント部S1〜S7における発光/非発光が制御される構成の場合、パルスの周波数やデューティー比を変化させて発光輝度を所望の値に調整する際、周波数が高かったりパルス幅が短かい場合においては、発光立上時間が長い前記前者に繋がるセグメント部S1,S2,S6が発光しなくなることがある。
【0009】
本発明は、このような問題に着目して、発光立上時間の差による複数の発光部における発光輝度の差を改善することを可能とする有機EL素子の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の有機EL素子は、請求項1に記載のように、透明電極と背面電極との間に有機層を配置して発光個所としての複数個のセグメント部を有し、前記セグメント部での個別発光を可能とするために定電流源と繋がる配線部を前記透明電極の一部として形成する有機EL素子であって、前記セグメント部それぞれでの発光立上時間を一定にするように前記セグメント部の静電容量と前記配線部の静電容量との比を前記セグメント部それぞれにおいて一定にすることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載のように、透明電極と背面電極との間に有機層を配置して発光個所としての複数個のセグメント部を有し、前記セグメント部での個別発光を可能とするために定電流源と繋がる配線部を前記透明電極の一部として形成する有機EL素子であって、前記セグメント部を日の字形状に配置し、前記セグメント部それぞれでの発光立上時間を一定にするように発光輝度が高い前記セグメント部の前記配線部を前記セグメント部の前記日の字の表示内側へ延在してこの配線部の面積を大きくすることで前記セグメント部の静電容量と前記配線部の静電容量との比を前記セグメント部それぞれにおいて一定にすることを特徴とする。
【0013】
また、請求項に記載のように、透明電極と背面電極との間に有機層を配置して発光個所としての複数個のセグメント部を有し、前記セグメント部での個別発光を可能とするために定電流源と繋がる配線部を前記透明電極の一部として形成する有機EL素子であって、前記セグメント部それぞれでの発光立上時間を一定にするように前記セグメント部の面積と前記配線部の面積との比を前記セグメント部それぞれにおいて一定にすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項に記載のように、透明電極と背面電極との間に有機層を配置して発光個所としての複数個のセグメント部を有し、前記セグメント部での個別発光を可能とするために定電流源と繋がる配線部を前記透明電極の一部として形成する有機EL素子であって、前記セグメント部を日の字形状に配置し、前記セグメント部それぞれでの発光立上時間を一定にするように発光輝度が高い前記セグメント部の前記配線部を前記セグメント部の前記日の字の表示内側へ延在してこの配線部の面積を大きくすることで前記セグメント部の面積と前記配線部の面積との比を前記セグメント部それぞれにおいて一定にすることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明を、添付図面に示した実施形態に基づき説明するが、前記従来技術と同一若しくは相当個所には、同一の符号を付してその詳細な説明を省く。
【0019】
図1は、図2で示すセグメント部S1〜S7の一つであるセグメント部Sn(n=1〜7、以下同じ)の等価回路を示しており、Csnは任意のセグメント部Snの静電容量、Clnは任意の配線部Ln(表示部Dnのセグメント部Sn以外の絶縁層5がカバーしている部分を含む、以下同じ)の静電容量、Inは配線部Lnに接続される定電流源より供給される電流値であり、Jは電流値Inをセグメント部Snの面積Ssnで除して求まる電流密度であって、この電流密度Jは、各セグメント部Snにおいて一定値となるように電流値Inが定められている。なお、配線部Lnの面積をSlnとする。
【0020】
そして、セグメント部Snの電極2,4間距離ds、配線部Lnの電極2,4間距離dl、セグメント部Snの比誘電率ers、配線部Lnの比誘電率erl、セグメント部Snの単位面積当たりの静電容量Cs(=Csn/Ssn)、配線部Lnの単位面積当たりの静電容量Cl(=Cln/Sln)、セグメント部Snの発光電圧Vem、真空誘電率e0、セグメント部Sn全体の静電容量Ctn(=Csn+Cln)によれば、発光立上時間t=Ctn・Vem/In=(Csn+Cln)・Vem/J・Ssn=(1+(Cln/Csn))・Vem/(J・Ss/Cdn)=(1+(Cln/Csn))・Vem/(J・Ss/(Ssn・Cs))=(1+(Cln/Csn))・Vem/(J/Cs)となる。
【0021】
発光電圧Vemと電流密度Jは、発光輝度が決まればセグメント部Snの面積Ssnに関係なく一定であり、静電容量Csnは有機EL素子の構造が決まればその素子内では一定となることから、Vem/(J/Cs)を定数αとする。
【0022】
以上より、発光立上時間tは、セグメント部Snの静電容量Csn、配線部Lnの静電容量Clnとの比であるCln/Csn=(erl・e0・(Sln/dl))/(erd・e0・(Sdn/ds))=erl・ds・Sln/ers・dl・Ssnによって変化することが分かる。すなわち、Cln/Csnの値が大きい程発光立上時間tは長くなり、Cln/Csnの値が小さい程発光立上時間tは短くなる。
【0023】
ここで、比誘電率ers,erlや距離ds,dlは、有機EL素子で一定であるから、erl・ds/ers・dlを定数βとすれば、Cln/Cdn=β・(Sln/Ssn)となり、発光立上時間tは、α・(1+β・(Sln/Ssn))となる。
【0024】
上記関係式において、後半部分であるβ・(Sln/Ssn)が1より充分小さな値であるならば、発光立上時間tの差は殆ど生じないことになるが、実際には上記のような関係を生じにくく、よって発光立上時間tに差を生じてしまい、前記従来技術で述べたような問題を生じることとなる。
【0025】
斯かる問題を解決するには、セグメント部Snの面積Ssnと配線部Lnの面積Slnとの比を一定にすることで、理論的にはセグメント部Snにおける発光立上時間tを一定にすることができる。
【0026】
ところで、発光立上時間tの差が発光輝度に差を生じることは前述した通りであるが、人間光学的には、発光輝度が最小輝度(最大輝度)に対して20〜30%程度大きい(小さい)範囲内では、視覚的に認識されにくい。従って、本実施形態のように、セグメント部S1〜S7の面積Ss1〜Ss7に大きな差がない場合には、発光時立上時間tの差による発光輝度の差の問題は、配線部Lnに大きな差を有することが大きく影響することとなり、上方に位置するセグメント部S1,S2,S6(前者)と、下方に位置するセグメント部S3〜S5,S7(後者)との間での問題となる。
【0027】
前述の通り、Cln/Csnの値が大きい程発光立上時間tは長くなり、Cln/Csnの値が小さい程発光立上時間tは短くなり、この実施形態では、セグメント部Snの面積Ssnが略同じであるとするとその静電容量Csnは略同じになり、前記前者の静電容量Cl1,Cl2,Cl6は、前記後者の静電容量Cl3〜Cl5,Cl7に比べて大きくなり、これに伴い前記前者の発光立上時間t1は、前記後者の発光立上時間t2よりも遅くなる。
【0028】
従って、セグメント部Snにおける発光立上時間tnを揃えるため、発光立上時間t1へ発光立上時間t2を近づける、あるいは反対に、発光立上時間t2へ発光立上時間t1を近づけることが考えられるが、発光立上時間t2へ発光立上時間t1を近づけることは、発光立上時間t1を短くすることであり、これを実現するには、Cln(Sln)を小さくする、及び/又は、Csn(Ssn)を大きくすることであるが、面積Slnを小さくすることは、配線部Lnを短くすることであるが、これはセグメント部Snの配置で制約を受け容易ではなく、また、面積Ssnを大きくすることは、デザインでセグメント部Snの形状が決まることから自由には行えない。
【0029】
従って、発光立上時間tを揃えるには、発光立上時間t1へ発光立上時間t2を近づける、すなわち発光立上時間t2を長くすることが必要となり、これを実現するには、Cln(Sln)を大きくする、及び/又は、Csn(Ssn)を小さくすることであるが、前述の通り面積Ssnを大きくすることは、デザインでセグメント部Snの形状が決まることから自由には行えない。
【0030】
そこで、面積Slnを大きくすることが唯一残された途であって、本実施形態では、前記後者の配線部L3〜L5,L7の面積Sl3〜Sl5,Sl7を大きくしている。
【0031】
面積Sl3〜Sl5,Sl7を大きくするには、それらの長さを延ばしたり、幅を広くするなど、適宜方策が可能である。
【0032】
図2は、一例として、表示部D3〜D5,D7の形状を、セグメント部S1〜S7の表示内側であって前記絶縁層がカバーする個所へ延在して、すなわち、セグメント部S1〜S7や配線部L1〜L7を設けない領域であるセグメント部S3〜S5,S7で囲まれた内側領域へ拡張して、表示部D3〜D5,D7の面積を増やすことにより、面積Sl3〜Sl5,Sl7を大きくしている。つまり、表示部D3〜D5,D7は、セグメント部S3〜S5,S7を含むものであるが、セグメント部S3〜S5,S7の形状を変えずに表示部D3〜D5,D7の面積を増やすことは、この部分が配線部L3〜L5,L7の一部として機能していることから、実質的には配線部L3〜L5,L7の面積Sl3〜Sl5,Sl7を増やすことになっている。
【0033】
このように、発光立上時間tが小さい(発光輝度が高い)セグメント部Snの配線部Lnの面積Slnを、発光輝度が最小輝度に対して30%(望ましくは20%)大きい範囲内に収まるように、大きくすることにより、有機EL素子の全体における発光輝度の差を視覚的に認識できない程度の範囲に収めることができ、表示品位を向上させることが可能となる。
【0034】
【発明の効果】
この発明によれば、発光立上時間の差による複数の発光部における発光輝度の差を改善する有機EL素子を提供することが可能となり、有機EL素子の表示品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における有機EL素子の等価回路を説明する回路図。
【図2】同上の透明電極を説明する平面図。
【図3】有機EL素子の構造を説明する要部断面図。
【図4】同上の透明電極を説明する平面図。
【符号の説明】
1 基板
2 透明電極
3 有機層
4 背面電極
5 絶縁層
D 表示部
S セグメント部(発光個所)
L 配線部

Claims (4)

  1. 透明電極と背面電極との間に有機層を配置して発光個所としての複数個のセグメント部を有し、前記セグメント部での個別発光を可能とするために定電流源と繋がる配線部を前記透明電極の一部として形成する有機EL素子であって、
    前記セグメント部それぞれでの発光立上時間を一定にするように前記セグメント部の静電容量と前記配線部の静電容量との比を前記セグメント部それぞれにおいて一定にすることを特徴とする有機EL素子。
  2. 透明電極と背面電極との間に有機層を配置して発光個所としての複数個のセグメント部を有し、前記セグメント部での個別発光を可能とするために定電流源と繋がる配線部を前記透明電極の一部として形成する有機EL素子であって、
    前記セグメント部を日の字形状に配置し、
    前記セグメント部それぞれでの発光立上時間を一定にするように発光輝度が高い前記セグメント部の前記配線部を前記セグメント部の前記日の字の表示内側へ延在してこの配線部の面積を大きくすることで前記セグメント部の静電容量と前記配線部の静電容量との比を前記セグメント部それぞれにおいて一定にすることを特徴とする有機EL素子。
  3. 透明電極と背面電極との間に有機層を配置して発光個所としての複数個のセグメント部を有し、前記セグメント部での個別発光を可能とするために定電流源と繋がる配線部を前記透明電極の一部として形成する有機EL素子であって、
    前記セグメント部それぞれでの発光立上時間を一定にするように前記セグメント部の面積と前記配線部の面積との比を前記セグメント部それぞれにおいて一定にすることを特徴とする有機EL素子。
  4. 透明電極と背面電極との間に有機層を配置して発光個所としての複数個のセグメント部を有し、前記セグメント部での個別発光を可能とするために定電流源と繋がる配線部を前記透明電極の一部として形成する有機EL素子であって、
    前記セグメント部を日の字形状に配置し、
    前記セグメント部それぞれでの発光立上時間を一定にするように発光輝度が高い前記セグメント部の前記配線部を前記セグメント部の前記日の字の表示内側へ延在してこの配線部の面積を大きくすることで前記セグメント部の面積と前記配線部の面積との比を前記セグメント部それぞれにおいて一定にすることを特徴とする有機EL素子。
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