JP3559791B2 - シュー皮用のミックス粉 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、形状、食感や味覚等に優れたシュー皮の製造を容易に可能にするシュー皮用のミックス粉に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シュークリーム等の外皮を構成するシュー皮は、水と油脂を加えて沸騰させておき、これに小麦粉を加えて糊化させ、卵を徐々に加えて適度な硬さに調整し、天板に絞り出してオーブンに入れ、焼成する方法によって製造されている。
【0003】
しかし、加熱操作による小麦粉中の澱粉を糊化する際の糊化状態のバラツキ、糊化後の卵の添加量や添加速度等による生地温度のバラツキ等によって、常に一定の状態を有する生地を得がたく、焼成後のシュー皮は形や大きさが不揃いになり、熟練者の経験と勘にたよることのみで良質のシュー皮を得ることができた。
【0004】
これに対して、生地の調製時に加熱を必要とせずにシュー皮の製造を容易にしようとする為に種々の提案がなされ、例えば、特開昭51ー88666号、特開昭55ー77850号、特開昭63ー24842号、特開平6ー38666号、特開平6ー315338号等が開示されている。
【0005】
特開昭51ー88666号は、小麦粉の重量に対し、90%以下量の粉末油脂と90%以下量の粉末卵、60%以下量のα化澱粉及びカラギーナンを主原料に加え、これと水とを均質に混合し、得られたドウを焼成するものである。しかし乍ら、水溶性物質の添加によりドウの粘りの調整に改良は見られるものの小麦粉が充分に糊化されておらず、このためシュー生地の進展性が悪く、膨化も悪い。また使用する油脂も粉末油脂の為風味に劣るものであった。
【0006】
特開昭55ー77850号には、酵素処理によって還元糖含有量が高々15%で且つ高α化された澱粉分解物と、食用油脂、全卵粉及びナトリムカゼネートやゼラチン等の水親和性蛋白からなる即席シューミックスが開示され、α化小麦粉の代わりにα化された澱粉分解物とナトリウムカゼネートを使用することにより加水時のダマを少なくし、加熱不要のシュー生地の製造を容易にしたり、シュー皮の形状等を良好にしようとしているが、α化小麦粉が皆無或いはその使用量が少ないほど該発明の効果が発揮されるものであって、それだけ穀粉由来の風味に欠けるものであった。
【0007】
特開平6ー38666号ではα化澱粉75〜50重量部、末α化澱粉25〜50重量部、カゼインナトリウム1〜10重量部及び全卵粉2〜25重量部を含有するミックスに、水及び油脂を加えて混和し、次いで攪拌下に卵を加え、生成した生地または必要に応じてこれを冷凍したシュー生地を焼成する方法が示されているが、これも同様に小麦粉等の穀粉由来の風味に欠けるものであった。
【0008】
特開平6ー315338に於いては、α化小麦粉、α化澱粉および親水性蛋白質からなる粉末基剤とミックス粉末の総重量に対して、油分換算で25重量%以下の粉末油脂、ならびにミックス粉末の総重量に対して少なくとも20重量%以上の溶融油脂、およびポリオールを加えて、粉末状シュー皮原料ミックスを得ることや該ミックスを使用する方法が提案されている。しかしこの発明の発明者も指摘しているように、風味的に好ましくない噴霧乾燥等の方法によって得られる粉末油脂を使用し、カゼインナトリウム等の親水性蛋白を必須成分とする為、シュー皮としての形状形成等に優れていても口溶け等に問題があった。
【0009】
上記以外にα化小麦粉やα化澱粉を使用した例として、α化度85%以上のα化小麦粉に油脂、水または熱湯を加えて混和し、卵を添加したシュー生地を冷凍する冷凍シュー生地(特開昭62ー11045号)や、小麦粉、油脂および水からなるシュー生地配合物に、α化澱粉及び遅効性の化学膨張剤を加えてシュー生地を作り、これを所定の大きさに裁断して冷凍するシュー生地(特開62ー155041号)等が開示されている。しかし、特開昭62ー11045号のシュー生地では焼成後のシュー皮の形が悪く、特開62ー155041号では冷凍前のシュー生地調製に小麦粉を加熱糊化する必要があった。
【0010】
このように上記の技術では、必ずしも満足のいくものでなく、熟練者でのみ可能であった形状が良く、形状、食感、味覚等に優れたシュー皮を容易に得る方法の開発が強く望まれている。
【0011】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする議題は、家庭、或いは特別な技術を有しない事業所でも、形状、食感、味覚等の品質に優れたシュー皮を製造することを可能にするシュー皮用のミックス粉を開発することである。
【0012】
【課題を解決する為の手段】
シュー皮の製造に関して、本発明者等は鋭意研究の結果、α化澱粉とα化架橋澱粉の重量比率が15〜85:85〜15であり、且つその合計量40〜80重量部とα化穀粉60〜20重量部からなる粉末組成物をシュー皮用のミックス粉として使用するときは、形状、食感、味覚等の品質に優れたシュー皮が容易に得られることを見いだして本発明を完成した。
【0013】
本明細書でいうシュー皮とは、シュークリーム、エクレア、スワン、バリプレスト、リングシュー、揚げシュー等の洋菓子の外皮を構成する内部が中空で表面がキャベツ状を呈するもの及びシュー生地をパン生地など別の生地の上に乗せて焼成して得られる層の内、表面に作られる層を指称する。
【0014】
本発明で用いるα化という名称を付与する物質は、澱粉を含有する原料に水を添加後α化処理、例えばドラムドライヤーで乾燥するか、エクストルーダ等で処理して、原材料中の澱粉の大部分又は一部が常温の水に溶解するように製造されるもので次のα化澱粉、α化架橋澱粉及びα化殻粉の3種類に大別する。
【0015】
α化澱粉は、原料としてタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、コーンスターチ、米澱粉等の澱粉、及びそれらに酸化、エーテル化やエステル化等の通常の加工処理をした加工澱粉を用い、α化処理して製造されるものであり、このなかでもタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチ及びそれらの加工澱粉を原料とするものは、膨化する作用が大きくより好ましい。
【0016】
α化架橋澱粉は、澱粉又は澱粉に酸化、エーテル化、エステル化等の通常の加工処理をした加工澱粉にオキシ塩化リンやトリメタリン酸ソーダ等の燐酸塩やエピクロルヒドリンのような常用の架橋剤で処理して澱粉分子間を橋架けした架橋澱粉を用い、α化処理して製造されるものを意味し、本発明にはα化物の膨潤度が8〜30、より好ましくは10〜20にしたものを使用することが重要である。
【0017】
尚、膨潤度とは、試料1gを水100ccに分散せしめ、30分間30℃の恒温槽の中で攪拌して膨潤させた後、3000rpmで10分間遠心分離し、ゲル層と上澄液に分け、ゲル層の重量をA、ゲル層を105℃で恒量になるまで乾固して重量を測定したものをBとし、A/Bで表示する。
α化穀粉とは小麦粉、コーンフラワー、米粉等の穀粉をα化して製造されるもので、穀粉中の澱粉が常温の水で容易に溶解又は分散できるようにしたものである。
【0018】
通常シュー生地は小麦粉、油脂、卵と水から構成され、小麦粉中の澱粉が適度に糊化され、しかも粘性が適性な状態に保持されて初めて焼成後に良好なシュー皮が得られるものであり、煩雑な加熱なしで良好なシュー皮を得るために小麦粉に相当する部分を水のみで粘性を与える物質を使用することを必須とする。しかし、本発明者の研究によると、小麦粉のような穀粉をα化したα化穀粉を単独で用いると、シュー生地としての粘性が不足したり、シュー皮としての膨らみが悪くなり、これにα化澱粉を併用すると、シュー生地に粘度を付与することができても、シュー生地の曵糸性が強くなりすぎたり、長時間安定した粘度が維持できず、シュー皮に膨らみをもたせることはできてもシュー皮の表面の割れの形成や形が必ずしも好ましいものでなかった。
【0019】
本発明者等は、α化架橋澱粉を水に溶解すると、溶解後の粘度が長時間安定で、曵糸性も少なくてショートな粘性を有する点に着目し、α化架橋澱粉の内でも膨潤度が8〜30、好ましくは10〜20のものを使用し、α化澱粉とα化穀粉を特定の比率で混在させるときは、シュー生地の状態をスムーズに出来、形状等がより良好なシュー皮が得られることを見い出した。
【0020】
本発明は、α化澱粉とα化架橋澱粉の重量比率が15〜85:85〜15であり、且つその合計量40〜80重量部とα化穀粉60〜20重量部を混合したシュー皮用のミックス粉であり、α化澱粉とα化架橋澱粉の重量比率やその合計量が上記範囲を逸脱するとシュー生地の状態が悪くなったり、シュー皮の形が悪くなったり、シュー皮の皮膜が適度な厚みにならなかったり、食感や味覚等を悪くする。
【0021】
上記のミックス粉において、α化澱粉とα化架橋澱粉の重量比率を25〜75:75〜25にすると適度な大きさと深さを有する割れをシュー皮の表面に数多く形成出来、シュー皮の形状が一層良くなり、口当り等の食感がより優れたものになる。
【0022】
このようにして得られたシュー皮用のミックス粉を用いて、加熱工程がなく常温下で攪拌するだけで良好なシュー生地が容易に調製でき、この生地を焼成してシュークリーム等の洋菓子の外皮やパン生地の表面加工用等に好適のシュー皮の製造が可能になった。尚、本発明のシュー生地は必要に応じて冷凍シュー生地としても保存可能で、解凍後焼成すると同じように良好なシュー皮を得ることができる。
【0023】
穀粉由来の風味や食感を強める目的で、小麦粉、コーンフラワー、米粉等の穀粉及びそれらを100〜180℃の温度で焙焼して得られる焙焼穀粉を本発明のシュー皮用のミックス粉に添加しても良いが、ミックス粉に対して20重量%を越えるとシュー生地の状態やシュー皮の膨らみが悪くなるので20重量%程度までにとどめるべきである。
【0024】
本発明によって得られるシュー皮用ミックス粉を用いるシュー皮の製造は、例えば次のようにして行える。
【0025】
上記のシュー皮用ミックス粉100重量部に要すればシュー皮の風味を損なわない程度に重炭酸ソーダ、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の膨張剤を添加後、油脂120〜160重量部を加えて混練する。油脂としては、ラード油、天然バター、ヤシ油、パーム油、綿実油、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリシード油、大豆油、マーガリン、ショートニング等液状、固体状いずれを使用しても良いが、液状の方が混合性が良好である。固体状のものは溶融して液状にしてから用いることが好ましく、より美味しくする為には、バター、マーガリン、ショートニング等を用いると良い。
【0026】
次に希釈した全卵液(全卵250〜400重量部と水150〜200重量部)を加えていき、適宜な硬さに調整してシュー生地を得る。この生地の所定量を天板に絞り出し、オーブンに入れて焼きあげると形状が良く、食感等に優れた美味なシュー皮を得ることができる。尚、パン生地等の表面を加工する目的には、工程中の攪拌を強くして粘性を低くしたシュー生地を上記の生地に上乗せして焼成するとよい。
以上のように極めて容易な作業により良好なシュー皮の製造を可能にすることが出来る。
【0027】
【実施例】
以下に参考例、実験例と実施例をもって、本発明の詳細を具体的に説明するが、これらの例における部は重量部を示す。
【0028】
【参考例1】
水130部にタピオカ澱粉100部を加えてスラリーを調製し、このスラリーをダブルドラムドライヤ−(蒸気内圧;5.0kg/cm2 )に供給し、解砕機で粗砕後粉砕してα化タピオカ澱粉を得た。これを試料No.1とした。
【0029】
【参考例2】
水140部に、硫酸ソーダ10部を溶解し、表1に示す澱粉100部を加えたスラリーを調製し、これらに攪拌下3%カセイソーダ液を加えてPH11.1−11.3に維持しながら、表1に示すトリメタリン酸ソーダ(TMP)を加え、39℃で10時間反応せしめ後、塩酸で中和し、水洗、脱水後、水に再分散してスラリーとし、参考例1と同じようにドラムドライヤーで処理して試料No.2〜No.5のα化架橋澱粉を得た。
【0030】
【表1】
【0031】
【参考例3】
水130部に硫酸ソーダ15部を溶解し、表2に示す澱粉100部を加えたスラリーを2点調製し、これらに攪拌下3%カセイソーダ液33部を添加後、表2に示すトリメタリン酸ソーダ(TMP)とプロピレンオキサイド(PO)を加え、41℃で20時間反応せしめ後、塩酸で中和し、水洗、脱水後、水に再分散してスラリーとし、参考例1と同じように処理してNo.6〜No.7のα化架橋澱粉を得た。
【0032】
【表2】
【0033】
【実験例1】
ホバートミキサー(ホバート社、カナダ)に参考例1の試料No. 1のα化澱粉(α化タピオカ澱粉)30部、参考例2の試料No.2〜No.5と参考例3の試料No.6〜No.7のα化架橋澱粉30部、マツノリンMWH(松谷化学工業製のアルファー化小麦粉)40部を投入して攪拌混合して均一化する。次にショートニング140部を添加して混和後、予め希釈していた全卵液(全卵340重量部と水170重量部 )を数回に分けて投入し、ペースト状になるまで2分間攪拌してシュー生地とする。このシュー生地を絞り袋に入れ、薄く油を引いた鉄板に適量(25g程度)ずつ絞り出し、上火180〜190℃、下火200℃に調整していた三幸機械株式会社製のオーブン(商品名;コンポミニ)に入れ、25分間焼成してシュー皮を製造した。使用したα化架橋澱粉の膨潤度と得られたシュー皮の形状を表3に記載した。
【0034】
【表3】
【0035】
【実施例1】
α化澱粉に試料No.1のα化架橋澱粉に試料No.6のα化穀粉及びマツノリンMWHを使用し、表4の割合で混合し、実験例1に準じてシュー皮を製造した。その結果を表4に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
<形状> 但し、表4の形状等の特性の評価は、以下の基準に従った。
◎:適度な大きさと深さとの割れが数多く見られ、膨らみや形が良好。
○:幾分割れの大小や深さにバラツキはあるが、割れの数も多く、膨らみや形が良好。
△:割れの数が多くても膨らみがやや小さいもの、膨らみは大きくても割れの数がかなり少ないもの、或いはやや形が悪い。。
×:形が悪い。
【0038】
<膜と空洞>
◎:膜の厚みが適当で均一な内層を有する空洞がみられる。
○:空洞の一部に僅かに巣(クモの巣状の部分)がみられるが、膜の厚みは適当である。
△:巣の部分がかなり多かったり、膜が厚かったり、薄かったりする。
×:巣の部分が多く、膜も厚い。
【0039】
<食感>
◎:口当りが非常に良くて歯切れも良好。
○:口当りがよくて歯切れも良好。
△:歯切れがやや悪かったり、もちゃつき感が幾分感じられる。
×:歯切れが悪く口当りも悪い。
【0040】
<味覚>
◎:非常に良好。
○:良好。
△:幾分悪い
×:悪い
【0041】
【実施例2】
α化澱粉に試料No.1、α化架橋澱粉に試料No.4のα化穀粉及びマツノリンMWHを使用し、表5の割合で混合し、実験例1に準じてシュー皮を製造した。その結果を表5に示す。但し特性の評価は、表4と同じ。
【0042】
【表5】
【0043】
【実施例3】
試料No. 1のα化澱粉35部、No. 6のα化架橋澱粉35部、マツノリンMWH30部とNXー10(松谷化学工業製の焙焼小麦粉)15部を使用し、実験例1に準じて製造したシュー皮は形状等の品質に優れ、喫食すると小麦粉由来の風味が感じられて非常に美味しいものであった。
【0044】
【実施例4】
試料No. 1のα化澱粉25部、試料No. 6のα化架橋澱粉25部、マツノリンMWH25部とマツノリン930(松谷化学工業製のα化コーンフラワー)25部を使用し、実験例1に準じて製造したシュー皮は形状等の品質に優れ、喫食すると非常に美味しいものであった。
【0045】
【実施例5】
マツノリンA(松谷化学工業製のα化ワキシーコーンスターチ)20部、No. 4のα化架橋澱粉30部とマツノリンMWH40部を使用し、実験例1に準じて製造したシュー皮は形状等の品質に優れ、喫食すると非常に美味しいものであった。
【0046】
【実施例5】
試料No. 1のα化澱粉30部、試料No. 4のα化架橋澱粉30部とマツノリンMWH40部を使用し、実験例1に於いて、卵添加後の攪拌を15分間にすること以外は、実験例1に従ってシュー生地を製造した。流動性のよいオーバーラン状態(乳白色の艶ややかで滑らかな状態)のシュー生地が得られた。
【0047】
一方、強力粉100部、イーストフード0.12部、砂糖15部、食塩2部、脱粉3部、イースト3部、卵10部、水50部、ショートニング15部を混捏した生地を27℃で60分間発酵、30分間ガス抜し、20分間靜置後70gずつ分取し、容器に入れて成型する。次いでこの容器を温度38℃、湿度85%のホイロに入れて40分間本発酵させてパン生地とする。
【0048】
ホイロより取り出したパン生地一個当り上記のシュー生地を約30gずつ乗せて、上火190℃、下火170℃に調整しておいた実験例1のオーブンに入れ12分間焼成してパン生地とシュー生地の2層よりなる特有のパンが得られた。喫食したところ、パンの食感とシュー特有の食感が同時に感じることのできる非常に美味しいものであった。
Claims (2)
- α化澱粉とα化架橋澱粉の重量比率が15〜85:85〜15であり、且つその合計量40〜80重量部とα化穀粉60〜20重量部からなることを特徴とするシュー皮用のミックス粉。
- α化澱粉とα化架橋澱粉の重量比率が25〜75:75〜25である請求項1に記載のシュー皮用のミックス粉。
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