JP3559195B2 - 表面窒化改質部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は表面窒化改質部材に関し、さらに詳しくは、半導体製造装置及び液晶パネル製造装置などの耐食性が要求される部材として好適に使用することのできる表面窒化改質部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体や液晶パネルなどの配線の微細化に伴い、ドライプロセスによる微細加工化技術の開発が盛んに進められている。これに伴って、前記半導体などの成膜ガス及びエッチングガスなどにはハロゲン系腐食性ガスが用いられるようになってきている。
一方、このようなハロゲン系腐食性ガスに対しては、窒化アルミニウムが高い耐腐食性を示すことが知られている。したがって、半導体製造装置や液晶パネル製造装置などには、窒化アルミニウムを表面に有する部材が用いられつつある。
【0003】
アルミニウムは、空気と接するとその表面が酸化されて薄い酸化膜を形成する。この酸化膜は極めて安定な不動態相であるため、簡易な窒化法ではアルミニウム表面を窒化することができないでいた。そこで、アルミニウム表面を改質して窒化アルミニウムを形成する方法としては、特に以下のような方法が開発されてきた。
【0004】
特開昭60−211061号公報には、チャンバー内を所定の圧力にまで減圧した後、水素ガスなどを導入して放電を行ってアルミニウムなどの部材の表面を所定の温度にまで上昇させ、さらにアルゴンガスを導入して放電を行うことにより前記部材の表面を活性化させ、次いで、窒素ガスを導入することによりアルミニウム部材の表面をイオン窒化する方法が開示されている。
また、特開平7−166321号公報では、アルミニウム粉末からなる窒化処理用助剤をアルミニウムの表面に接触させ、窒素ガス雰囲気中で加熱処理することによって、窒化アルミニウムを前記アルミニウムの表面に形成する方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開昭60−211061号公報に記載された方法は、放電を利用して窒化アルミニウムを形成するために装置全体が複雑となってコスト高を生じるという問題があった。さらには、複雑な形状のもの、及び大型のものへの窒化は困難であるという問題もあった。
【0006】
また、特開平7−166321号公報に記載された方法は、窒化処理用助剤を用いているため、得られた窒化アルミニウム表面層には気孔が存在し、緻密性が十分ではなかった。そのため、ハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性が十分ではなく、実用上十分とは言えないのが現状であった。
【0007】
本発明は、ハロゲン系腐食性ガスに対して高い耐腐食性を有する窒化改質部を表面に具えた表面窒化改質部材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
アルミニウム金属、アルミニウム合金、又はアルミニウムを含んでなる複合材料からなら基材と、この基材の表面部分を窒化することによって形成された窒化改質部とを有する表面窒化改質部材であって、前記窒化改質部はアルミニウムを除く周期律表第2A族、第3A族、第4A族、及び第4B族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するとともに、前記元素の濃度が、前記窒化改質部中で、前記窒化改質部の前記基材側から表面側にかけてステップ状に変化し、前記窒化改質部は、前記基材側に位置して前記元素を高濃度に含有する高濃度領域と、窒化改質部の表面側に位置して前記元素を低濃度に含有する低濃度領域とからなり、前記元素の前記濃度は前記窒化改質部の表面側において前記窒化改質部の前記基材側よりも少なくなっており、前記低濃度領域の厚さが前記窒化改質部の厚さの1/3以上であることを特徴とする、表面窒化改質部材に関する。
【0009】
本発明者らは、ハロゲン系腐食性ガスに対して高い耐腐食性を有する窒化改質部を形成すべく、鋭意検討を行った。
その結果、アルミニウム金属などからなる基材を真空中において加熱処理した後、周期律表第2A族、第3A族、第4A族、及び第4B族の元素の共存下において、前記基材を真空中において加熱窒化処理することにより、前記基材表面の窒化が促進され、極めて緻密な窒化アルミニウムを形成できることを見出し、出願を行っている(特願平11−27924号)。
【0010】
しかしながら、上記発明の製造方法によって作製された部材においても、基材表面に形成された窒化アルミニウムからなる窒化改質部の厚さがある一定の値以下になったり、アルミニウム以外の元素を比較的高濃度に含有する基材を用いたりした場合においては、ハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性が劣化する場合が生じていた。
【0011】
本発明者らは、この原因を解明すべくさらなる検討を行った。
そして、窒化アルミニウムからなる窒化改質層が比較的厚く形成された部材と比較的薄く形成された部材との構造上の差異、及び窒化改質部の組成分布などを詳細に調べ、検討を行った。
【0012】
その結果、窒化改質部が比較的厚く形成されている場合においては、周期律表第2A族元素であるマグネシウム又は周期律表第4B族であるシリコンなどの元素が前記窒化改質部の基材側に局在していることが判明した。また、窒化改質部が比較的薄く形成されている場合においては、前記元素が窒化改質部の厚さ方向の全体に亘ってほぼ均一に分布していることが判明した。
【0013】
これらの結果から、窒化アルミニウムからなる窒化改質部に含有される周期律表第2A族元素であるマグネシウム又は周期律表第4B族であるシリコンなどが、窒化改質部のハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性を劣化させているという、驚くべき原因を見出した。
すなわち、基材の窒化促進させるために加熱窒化処理工程において共存させている周期律表第2A族の元素などが窒化改質部中に取り入れられると、この窒化改質部のハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性を劣化させてしまうという矛盾した結果を生じさせてしまうことを見出した。
【0014】
そこで、本発明者らはかかる事実の発見に基づいて、窒化改質部の表面部分における前記周期律表第2A族元素などの濃度を少なくすることによって、前記窒化改質部のハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性を向上させることを想到するに至った。
【0015】
図1は本発明の表面窒化改質部材の断面をEPMAによって組成分析した結果をマッピングしたものである。
図1から分かるように、アルミニウム基材上に厚さ85μmの窒化アルミニウムを主相とする窒化改質部が形成されていることが分かる。また、窒化改質部のアルミニウム基材から25μmの部分にマグネシウムを高濃度に含有した高濃度領域が形成され、窒化改質部の表面側にはマグネシウムを低濃度に含有した低濃度領域が形成されていることが分かる。
【0016】
そしてこのような表面窒化改質部材は、以下の実施例で示すように、窒化改質部の厚さ方向の全体に亘って、マグネシウムがほぼ均一に含有されている表面窒化改質部材に比較して、ハロゲン系腐食性ガスに対して高い耐腐食性を示す。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の表面窒化改質部材は、アルミニウムを除く周期律表第2A族、第3A族、第4A族、及び第4B族から選ばれる少なくとも1種の元素の濃度が、窒化改質部の表面側で少なく、基材側で多いことが必要である。
【0018】
図1に示すように、前記元素の濃度は、窒化改質部中において基材側から表面側にかけてステップ状に変化し、前記窒化改質部が基材側に位置する高濃度領域と、表面側に位置する低濃度領域とからなる。これによって、ハロゲン系腐食性ガスと接触する窒化改質部の表面側における前記元素の濃度をより低減することができるため、これらのガスに対する耐腐食性をさらに高めることができる。
【0019】
なお、「ステップ状」とは厚さ約10μmの領域において前記元素が階段状に急激変化して存在していることをいう。
【0020】
但し、前記元素が必ずしも窒化改質部の厚さ方向においてステップ状に存在している必要はなく、例えば、基材側から表面側に連続的に濃度が変化するようにして存在していてもよい。これによっても本発明の目的を十分に達成することができる。
【0021】
また、前記低濃度領域の厚さは窒化改質部全体の厚さの1/3以上であることが必要であり、さらには1/2以上であることが好ましい。これによって、前記窒化改質部のハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性をさらに高くすることができる。
【0022】
さらに、低濃度領域における前記元素の濃度は0.5重量%以下であることが好ましく、さらには0.3重量%以下であることが好ましい。これによって、前記同様に窒化改質部のハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性をさらに高めることができる。
【0023】
なお、低濃度領域における前記元素の濃度の下限は、以下に示す本発明の表面窒化改質部材の製造方法に起因して0.01重量%程度である。
【0024】
また、高濃度領域と低濃度領域との濃度差は、0.1重量%以上であることが好ましく、さらには0.3重量%以上であることが好ましい。窒化改質部の高濃度領域及び低濃度領域が周期律表第2A族の元素をこのような濃度で含有することにより、特願平11−27924号記載の発明の効果を十分に発揮して、緻密な窒化改質部を形成することができる。さらには、本発明の目的をもより効果的に達成することができる。
【0025】
本発明の表面窒化改質部材のハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性を高め、本発明を実行在らしめるようにするためには、窒化改質部の厚さが10μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。
【0026】
また、窒化改質部の厚さの上限については特に限定されない。しかしながら、窒化改質部を形成する際の諸条件によって発生する窒化改質部内応力に起因する、窒化改質部の剥離などを考慮すると200μm以下であることが好ましい。また、窒化改質部の厚さをこれより厚くしてもハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性は向上しない。
【0027】
同様の理由から、窒化改質部中におけるアルミニウムを除く前記周期律表第2A族、第3A族、第4A族、及び第4B族から選ばれる少なくとも1種の元素の濃度は、1重量%以下であることが好ましく、さらには0.5重量%以下であることが好ましい。
【0028】
また、本発明の表面窒化改質部材における窒化改質部は、前記元素を含有することが必要であって、前記元素の濃度の下限値が存在する。しかしながら、前記元素の下限値は以下に説明する製造方法に起因するものであって、本発明にとって本質的なものではない。すなわち、窒化改質部においては前記元素の濃度が少ないほど好ましく、理想的には全く含まないことが好ましい。
かかる観点より、前述した低濃度領域における前記元素の下限値も、本来的には少ないほど好ましく、理想的には全く含まないことが好ましい。
【0029】
本発明の表面窒化改質部材の表面に形成された窒化改質部の表面粗さは、中心線平均粗さで表した場合において1.6μm以下であることが好ましく、さらには0.8μm以下であることが好ましい。このように平滑で緻密な表面の窒化改質部を基材表面に形成することによって、本発明の表面窒化改質部材のハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性をさらに高めることができる。
【0030】
また、窒化改質部の表面粗さの下限値は以下に示す製造方法に起因して中心線平均粗さで0.05程度である。
【0031】
本発明の表面窒化改質部材で使用する基材は、アルミニウム、アルミニウム合金、又はアルミニウムを含有してなる複合材料からなることが必要である。これによって、窒化改質部をハロゲン系腐食性ガスに対して高い耐腐食性を示す窒化アルミニウムから構成することができる。
【0032】
アルミニウム合金としては、A1050及びA1100を例示することができる。
【0033】
アルミニウムを含有する複合材料としては、アルミニウム/アルミナ、アルミニウム/窒化アルミニウム、アルミニウム/炭化ケイ素、アルミニウム/窒化ケイ素、及びアルミニウム/酸化ケイ素などの金属/セラミックス複合材料、又はアルミニウム/ニッケル、アルミニウム/チタニウム、及びアルミニウム/マグネシウムなどの金属複合材料を例示することができる。
【0034】
さらには、金属、セラミックス、及びこれらの複合材料などからなる基材の表面を、アルミニウム又はアルミニウム合金により被覆して複合材料としたものをも使用することができる。
【0035】
本発明の表面窒化改質部材は、例えば以下のようにして形成する。
所定の基材を真空装置を具えたチャンバー内のサンプル台上に設置する。次いで、このチャンバー内を真空ポンプで10−3torr、好ましくは5×10−4torr以上の真空度になるまで排気する。次いで、前記チャンバー内に設置された抵抗発熱体や赤外線ランプなどの加熱装置により、前記部材を500℃以上、好ましくは540〜600℃まで加熱する。そして、この温度において1〜10時間保持して加熱処理する。
【0036】
加熱処理が終了した後、真空状態を維持したままで前記チャンバー内にNガス、NHガス、若しくはこれらの混合ガスなどを導入してチャンバー内を窒素雰囲気にする。そしてチャンバー内の圧力を、2kg/cm以上、好ましくは5〜10kg/cmの値に設定する。さらにこの時、アルミニウムを除く周期律表第2A族、第3A族、第4A族、第4B族から選ばれる少なくとも1種の元素を導入して共存させる。
【0037】
前記元素としては、マグネシウム、ストロンチウムなどの金属単体の他、A6061(Mg−Si系合金)、A7075(Zn−Mg系合金)、及びA5083(Mg系合金)などを使用することができる。
中でもマグネシウム金属単体、あるいはマグネシウムを含んだ合金系を用いることが好ましい。これによって、基材表面の窒化が促進され、比較的短時間で厚く緻密な窒化改質部を形成することができる。したがってこの場合、本発明の表面窒化改質部材における窒化改質部はマグネシウムを有するようになる。
【0038】
次いで、前記基材を500℃以上、好ましくは540〜600℃で、1〜30時間保持することによって加熱窒化処理する。そして、この保持過程において所定の時間が経過した後に、前記元素を窒化処理炉内の温度の低い部分へと移動させる。この場合においても、基材表面に形成された窒化アルミニウムの形成が連続的に行われるため、緻密で厚い窒化アルミニウムを主成分とする窒化改質部を形成することができる。
【0039】
また、前記元素を窒化処理炉内の温度の低いところへ移動させた後は、加熱窒化処理を行っているチャンバー内に前記元素が存在しないために、窒化改質部の表面部分における前記元素の濃度は減少する。
【0040】
これにより、前記元素が窒化改質部中にステップ状に存在するようになる。そして、窒化改質部を基材側に位置して前記元素を高濃度に含有する高濃度領域と、窒化改質部の表面側に位置して前記元素を低濃度に含有する低濃度領域から構成することができる。
【0041】
さらに、窒化改質部を20μm程度に厚く形成する場合は、前記元素を別室に移動させなくても、窒化改質部の表面側において前記元素の濃度を少なくすることができる。これは、前記元素の金属単体や合金系の表面が窒化され、表面状態が安定になって前記元素の蒸発が防止されるためである。そして、このような場合においては、一般に前記元素がステップ状に存在した窒化改質部を形成することができる。
【0042】
この場合、窒化した金属単体などの表面は、次の表面窒化改質部材を作製する際の真空中での加熱処理において除去される。したがって、前記金属単体などは、本発明の表面窒化改質部材の作製において連続して使用することができる。
【0043】
所定の時間が経過した後、加熱を中止するともに窒素ガスの導入を中止して加熱窒化処理を終了する。その後、炉内冷却して、前記部材を外部に取り出す。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実施例1
(表面窒化改質部材の作製)
基材として、大きさ50×50×2mmのアルミニウム(A1050:Al含有量>99.5%)を用いた。また、アルミニウムを除く周期律表第2A族、第3A族、第4A族、及び第4B族から選ばれる少なくとも1種の元素として、前記基材と同形状のMg−Si系アルミニウム合金(A6061)を用いた。
前記基材と前記合金とを黒鉛ヒータ製の電気炉内の黒鉛サヤ内に設置した後、真空ポンプによって前記電気炉内の真空度が2×10−4torrになるまで排気した。次いで、ヒータに通電することによって前記基材を540℃まで加熱し、この温度において2時間保持して加熱処理した。
【0045】
次いで、前記電気炉内に、Nガスを炉内圧力が9.5kg/cmになるように導入した。その後、2L/分の割合でNガスを導入し、炉内圧力が設定圧力の±0.05kg/cmとなるように制御した。その後、前記基材を540℃で1時間保持することによって加熱窒化処理し、前記基材の表面に窒化アルミニウムからなる窒化改質部を形成した。
その後、炉内温度が50℃以下になったところで、得られた部材を前記電気炉から取り出した。
【0046】
(表面窒化改質部材の特性評価)
得られた部材の表面は黒色を呈していた。また、XRDにより前記部材の構造を調べたところ、窒化アルミニウムからなるピークが得られた。すなわち、本実施例によって得られた部材は窒化アルミニウムからなる窒化改質部を有することが判明した。
また、前記部材の断面をSEM観察し、窒化改質部の厚さを実測したところ、85μmであった。さらに、前記部材の断面をEPMAによって組成分析を行い、組成分布のマッピングを行ったところ、図1に示すようなチャートが得られた。
【0047】
図1から分かるように、マグネシウムの濃度は窒化改質部中においてステップ状に変化しており、窒化改質部の表面側にはマグネシウムがほとんど存在していないことが分かる。すなわち、窒化改質部は前記マグネシウムなどを高濃度に含有した高濃度領域と、前記マグネシウムなどを低濃度に含有した低濃度領域とからなることが分かる。また、低濃度領域の厚さは60μmであった。
【0048】
そして、EDSによりマグネシウム量を定量したところ窒化改質部全体におけるマグネシウムの濃度は、0.41重量%であり、低濃度領域におけるマグネシウムの濃度は、0.20重量%であることが判明した。
さらに、得られた部材の表面の中心線平均粗さを、ランクテーラーホブソン社製表面粗さ計によって調べたところ、0.7μmであることが判明した。
以上の結果をまとめて表1にしめす。
【0049】
(耐腐食性試験)
上記部材を高温の腐食性ガス雰囲気下に曝露し耐腐食性試験を実施した。
腐食性ガスとしては、NFガス75sccm/Nガス100sccmの混合ガスを用い、これを0.1torrの圧力下において550℃に加熱するとともに、1000WのRFパワーを印加して励起させたものを用いた。
この腐食性ガスに前記部材を5時間接触させたところ、試験前後の重量変化は+0.18g/cmであった。
【0050】
実施例2
本実施例においては、実施例1における加熱処理の真空度を1.9×10−4torrとし、加熱温度を540℃とし、加熱窒化処理における炉内圧力が5.0kg/cmとなるようにし、加熱時間を2時間にした以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0051】
得られた部材の特性を実施例1と同様にして調べたところ、表1に示すような結果が得られた。なお、本実施例においても部材の表面には窒化アルミニウムを主成分とする窒化改質部が形成されていた。さらに、この窒化改質部はマグネシウムを高濃度に含有した高濃度領域と、マグネシウムとシリコンとを低濃度に含有した低濃度領域とからなっていた。
さらに、実施例1と同様にして耐食性試験を実施したところ、試験前後の重量変化は+0.25g/cmであった。
【0052】
実施例3
本実施例においては、実施例1における加熱処理の真空度を3.5×10−4torrとし、加熱温度を600℃とし、加熱窒化処理における加熱時間を2時間にした以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0053】
得られた部材の特性を実施例1と同様にして調べたところ、表1に示すような結果が得られた。なお、本実施例においても部材の表面には窒化アルミニウムを主成分とする窒化改質部が形成されていた。さらに、窒化改質部はマグネシウムを高濃度に含有した高濃度領域と、マグネシウムを低濃度に含有した低濃度領域とからなっていた。
さらに、実施例1と同様にして耐食性試験を実施したところ、試験前後の重量変化は+0.15g/cmであった。
【0054】
比較例1
本比較例においては基材表面に窒化改質部を形成せずに、基材自体に耐食性試験を実施し、前記基材の耐腐食性を評価した。基材には、大きさ50×50×2mmのアルミニウム(A1050)を用いた。
耐食性試験は実施例1と同じであり、試験前後の重量変化は3.21g/cmであった。
【0055】
比較例2
本比較例においては、基材として大きさ50×50×2mmのMg−Si系アルミニウム合金(A6061)を用い、その他にアルミニウムを除く周期律表第2A族などから選ばれる少なくとも1種の元素を共存させなかった以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0056】
実施例1と同様、得られた部材の表面は黒色を呈していた。またXRDにより部材表面の構造を調べたところ、窒化アルミニウムからなるピークが得られた。
さらに、断面をSEMにより観察したところ、窒化改質部の厚さは20μmであった。また、断面をEPMA及びEDSで組成分析したところ、窒化改質部には均一にマグネシウムが存在していることが判明した。窒化改質部におけるマグネシウム量は、4.6重量%であった。
さらに、実施例1と同様にして耐食性試験を実施したところ、試験前後の重量変化は+0.62g/cmであった。
【0057】
【表1】
Figure 0003559195
【0058】
以上、実施例及び比較例から明らかなように、本発明にしたがって窒化改質部をマグネシウム及びシリコンを高濃度に含有する高濃度領域と、前記元素を低濃度に含有する低濃度領域とから構成し、窒化改質部の表面における前記マグネシウムなどの濃度を少なくすることにより、極めて高い耐腐食性を示すことが分かる。
【0059】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲内においてあらゆる変形や変更も可能である。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の表面窒化改質部材は、表面部分においてアルミニウムを除く周期律表第2A族、第3A族、第4A族、及び第4B族から選ばれる少なくとも1種の元素の濃度が少なくなった窒化改質部を有している。したがって、前記元素を共存させることによって緻密で厚い窒化改質部を形成できるとともに、ハロゲン系腐食性ガスに対する耐腐食性が低い前記元素の、窒化改質部の表面部分における濃度が減少する。このため、本発明の表面窒化改質部材は、ハロゲン系腐食性ガスに対して極めて高い耐腐食性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面窒化改質部材の、EPMAによる断面組成分析マップを示す図である。

Claims (6)

  1. アルミニウム金属、アルミニウム合金、又はアルミニウムを含んでなる複合材料からなら基材と、この基材の表面部分を窒化することによって形成された窒化改質部とを有する表面窒化改質部材であって、前記窒化改質部はアルミニウムを除く周期律表第2A族、第3A族、第4A族、及び第4B族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するとともに、前記元素の濃度が、前記窒化改質部中で、前記窒化改質部の前記基材側から表面側にかけてステップ状に変化し、前記窒化改質部は、前記基材側に位置して前記元素を高濃度に含有する高濃度領域と、窒化改質部の表面側に位置して前記元素を低濃度に含有する低濃度領域とからなり、前記元素の前記濃度は前記窒化改質部の表面側において前記窒化改質部の前記基材側よりも少なくなっており、前記低濃度領域の厚さが前記窒化改質部の厚さの1/3以上であることを特徴とする、表面窒化改質部材。
  2. 前記低濃度領域における前記元素の濃度が0.5重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の記載の表面窒化改質部材。
  3. 前記窒化改質部の厚さが10μm以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の表面窒化改質部材。
  4. 前記窒化改質部における前記元素の濃度が1重量%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の表面窒化改質部材。
  5. 前記窒化改質部の表面の中心線平均粗さが1.6μm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の表面窒化改質部材。
  6. 前記元素はマグネシウムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の表面窒化改質部材。
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