JP3556200B2 - 小動物脱出用のu形側溝 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路・宅地・農地・山林などの排水路又は用水路に用いる例えばU形側溝(以下、側溝と呼ぶ)において、付近に生存する例えばヘビ、カエル、カメ、ねずみ、沢蟹、リス、又は例えば断面寸法が1m×1mの比較的大きなU形側溝の場合は、犬、猫、小猿など(以下、小動物と総称する)が側溝に落下した場合の脱出手段の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
側溝に小動物が落下すると、壁が垂直に近く、又、壁面がコンクリートの滑らかな面となっているため、小動物が脱出できずに側溝内を右往左往し、最後には餓死や水死することが多く、生態系や環境に悪影響を及ぼしていた。
【0003】
このような事態を受けて、最近は小動物が脱出できるような構造を備えた側溝が開発されている。
【0004】
現在開発されている側溝をまとめると次の4種類に分けられる。
1)側溝の片側壁の一部を外側に突出させ、その空間に斜面又は階段状の脱出部を設けた側溝。図1(A)参照。
2)側溝の側壁の一部に開口部を設け、その外部に斜面又は階段状の脱出部を設けた側溝。図1(B)参照。
3)側溝に簡易的な蓋を設置し、その蓋から下流側の底部に向かって、水に浮く板状の斜面を設けた側溝。図1(C)参照。
4)側溝内部に斜面又は階段状の脱出部を設けた側溝。図1(D)参照。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
側溝は道路・宅地・農地・山林などの排水路又は用水路に用いるための構造物であるが、併せて隣接する用地と用地の境界を兼ねる場所に使用されることがほとんどである。
【0006】
日本国内においては、大多数が図2(A)に示すように国・県・市町村の公有地の端に側溝を設置し、その側溝の一番端が民間の用地との境を表す。
【0007】
従って、図2のB図に示すように、側溝の一部に凹凸が有る場合は、凸部の端が用地の境界となる。
【0008】
以上のことを考慮して、現在開発されている側溝の問題点をまとめると次の4種類に分けられる。
1)側溝の片側壁の部を外部に突出させ、その空間に斜面又は階段状の脱出部を設けた場合は、突出した部分の端が用地境界となるため、この側溝を採用することにより、全体幅が広くなり、大幅な用地を必要とするため、実用化において困難なところがある。
又、側溝の一方向に斜面又は階段状の脱出部が設けられるため、小動物の生息域が分断される。
なお、生息域の分断を避けるため、脱出部を数本おきに互い違いに設置した場合は、側溝の全体幅がさらに広がり、必要とする用地はより多くなる。
さらに、道路の端に設置した場合は、側溝による空間が凹凸状になるため、自動車の運転に悪影響を与える。
2)側溝の側壁の一部に開口部を設け、その外部に斜面又は階段状の脱出部を設けた場合も1)と同様に側溝の全体幅が広くなり、大幅な用地を必要とするため、実用化において困難なところがある。又、開口部の大きさによっては、側溝の強度低下をまねき、付近が危険にさらされることになる。
3)側溝に簡易的な蓋を設置し、その蓋から下流側の底部に向かって板状の斜面を設けた場合は、板状の斜面が流水の浮力により上下し、落ち葉等の浮流物を通過させるような構造となっているため、おのずから、脱出用斜面の方向が限定される。
4)側溝内部に斜面又は階段状の脱出部を設けた場合は、あらかじめ、その地域を対象とした流量計算により求められた側溝の必要通水断面積を小さくするため、実用化において困難なところがある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上の問題点を解決するために考えた手段を下記に示す。
1)側溝は用地境界に設置される場合がほとんどであるため、片側壁の一部を外部に突出させず、側溝の外幅は既設の側溝と同じとする。
2)側溝は用地境界に設置される場合がほとんどであるため、側壁の外部に付属の構造物を設けないものとする。
3)脱出用斜面又は階段の向きは特定しないものとする。
4)側溝内部に脱出用斜面又は階段を設けた場合でも、あらかじめ、その地域の流量計算で決定された側溝の通水を阻害させないものとする。
【0010】
上記の1)から4)を解決するために、この発明では側溝の内部に小動物の脱出用斜面又は階段を設け、それにより阻害される排水又は用水は、側溝底部の一部を他の部分よりも深くして十分な通水空間を確保することにより、所定量の通水を保証させる構造とした。
【0011】
【実施の形態】
本発明の小動物脱出用のU形側溝は、通常のU形側溝を複数個、直列に並べて溝路を構築する際に、それらの所望の位置における通常のU形側溝に代えて配置して使用するものであるが、現場打ちで構築される溝溝路の一部として直列的に挿間配置して使用されても良い。
【0012】
まず、本発明の小動物脱出用の側溝1を、平面図3(A)によって示す。そのa−a断面図(B)を用いて説明すると、図3(B)は側溝の長さ方向に沿って切断した断面を表す図であって、同図の両端部にあるA区間の側溝底部2は、既設の側溝と同じ深さとし、それから徐々に底が傾斜して深さを増すB区間7、8を経て、底が一番深くなったC区間からなっている。
【0013】
図3(C)に示すb−b断面図は、A区間の断面を表したもので、すでに敷設されている(通常の)側溝と同じ断面である。
【0014】
図3(D)に示すc−c断面図は、B区間の断面を表したもので、徐々に深くなるように、底が傾斜している部分の途中を示す。底の傾斜をどのようにするかは、U形側溝で構築された溝路全体の傾斜又は勾配との兼ね合いで決めて良い。場合によっては、急激に深くなるようにしても良い。
【0015】
図3(E)に示すd−d断面図は、C区間の断面を表したもので、バイパス底部が一番深くなっている部分の断面図である。
【0016】
ここで、B区間及びC区間の両側壁にA区間の側溝底部2よりも所定の寸法だけ下がった位置に平場を設け、蓋受け部10とする。
【0017】
図4(A)ないし(F)は、本発明の側溝に用いる透水蓋6の一例を示す平面図及び断面図であって、金属製のグレーチングやエクスパンドメタル、金属・樹脂・木又は竹等で製作された網状板、金属・樹脂又は木等で製作された開孔板などがある。
【0018】
図3に示す本発明の側溝において、上流と下流のB区間にそれぞれ存在する「蓋受け部10」に図4に示す透水蓋6を載せる(図6参照)。上流から水が流れると、この透水蓋6を通過してバイパス底部5aに溜まり、上流と同じ流水勾配になった位置で下流の透水蓋から流れ出る。
【0019】
ここで、透水蓋6は流されたりする恐れがあるときは、側溝の蓋受け部10とボルト等により固定しておいても良く、安心できる。
【0020】
図5(A)は、本発明の側溝に用いる「蓋」例えばコンクリート蓋9の平面図、同(B)は断面図で、例示したものは1枚のコンクリート製の蓋であるが、長さ方向に数枚に分割したり、場所によっては金属や木製を用いてもよい。
【0021】
図3に示す本発明の側溝において、上記のコンクリート蓋9をC区間の蓋受け部10に載せ、その後この蓋の上に小動物脱出用の斜面又は階段を配置又は製作する。
【0022】
このコンクリート蓋9も流されたりする恐れがあるため、側溝の蓋受け部10に対してボルト等により固定しておけば安心できる。
【0023】
図6(A)ないし(E)は、本発明の側溝に透水蓋6とコンクリート蓋9を設置した場合の例を示す図である。側溝内を流れる水は、脱出用斜面の上流側の透水蓋を通過して側溝底部に溜まり、上流と同じ流水勾配になった位置で下流側の透水蓋から流れ出る。
【0024】
図7は、本発明の側溝の斜視図であって、側溝底部及びバイパス底部の状態をわかりやすくするため、透水蓋6及びコンクリート蓋9を設置しない場合(A)と、設置した場合(B)の縦断面図をそれぞれ示している。
【0025】
図8(A)ないし(E)は、本発明の側溝の使用例を示し、施工場所に本発明の側溝を据え付け、透水蓋6とコンクリート蓋9を蓋受け部に設置した後に、場所打ちコンクリートで脱出用斜4aを製作した場合の例を示す図である。
【0026】
側溝に落下した小動物は、例えば透水蓋6の上を通り脱出用斜面4aをつたって地上に戻ることができる。
【0027】
さらに、他の実施例として図8(E)のd−d断面図に示すように、脱出部の片側と側壁との間に空間を設けた場合には、落ち葉などの浮遊物はこの空間を通過して下流へ流れるので、流水を阻害しない。
【0028】
ここで、脱出用斜面4aは、コンクリートの代わりに現場にある小石等を積み重ねて製作してもよく、又はコンクリート蓋と一体的に製作しても良い。本発明の技術的思想に従えば、側溝の細部は適宜設計変更可能であって、流水を阻害することがない。
【0029】
図9(A)ないし(E)は、本発明の側溝の更に他の実施例であって、透水蓋6と透水蓋6の間に設置するコンクリート蓋があらかじめ脱出用斜面となるよう山状に膨らみをもたせた構造体にしたもの9aである。
【0030】
図9(A)に示す平面図を観察すると、脱出用斜面の頂上(向って右側)の手前は側溝の縁に接続されていないので、若干のギャップが存在することが分かる。このギャップを跨いで超すことが出来ない比較的小さい小動物のためには、このギャップが流れに向って右側又は左側となるように、交互に配置するのが望ましい。
【0031】
図10は、図9に示す実施例の斜視図であって、コンクリート蓋9の上に現場でコンクリートの脱出用斜面4aを形成した場合(A)と、あらかじめ脱出用斜面4aが一体的に構成されたコンクリート蓋9aを設置した場合(B)を示している。
【0032】
図11(A)ないし(C)は、図9及び図10に例示した脱出部付きコンクリート蓋を示す三面図である。
【0033】
このコンクリート蓋は、側溝の施工場所で製作することはほとんど無いと思われ、実際問題としては別の場所で製作されたものを運んで来て、側溝の蓋受け部に載せることになるであろう。しかし、現場施工を排除するものではない。
【0034】
何れにしても、側壁との間に隙間ができる可能性があるので、その場合は隙間にモルタルを充填してもよい。
【0035】
通常、コンクリート蓋として例示した蓋は、コンクリート製が主であるが、金属・樹脂・石・木竹等で製作しても問題はない。
【0036】
又、多孔質コンクリート等で製作すれば昆虫等の住処にもなり、さらなる生態系の保護に役立つ。
【0037】
【発明の効果】
本発明の側溝を用いることによる効果を下記に箇条書きする。
1)側壁の外部に余分な構造物や突出物を必要としないため、用地境界が明確になり、又、施工のための余分な用地を必要としない。
2)従来の側溝であれば、内部に小動物の脱出部を設けると、この部分で側溝を流れる水量が阻害され側溝の機能が低下するが、本発明の側溝では上流から流れる水は透水蓋を通過して側溝底部を経由し、下流の透水蓋から流れ出るので、本来の流量を阻害しない。
3)脱出用斜面の向きを下流向き又は上流向き、流れに向かって右側又は左側、となるようにランダムに設置するか、または両側に設置すると、落下した小動物は側溝のどちら側にも行くことができるので、生態系の維持にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1の(A)−(D)は、従来技術の(現在利用されている)小動物脱出用側溝を示す図である。
【図2】図2は、通常の側溝を用いた場合(A)(B)及び側方突出部のある側溝を用いた場合(C)(D)の、用地境界を表す図である。
【図3】図3(A)−(E)は、本発明の側溝を示す図である。
【図4】図4(A)−(F)は、本発明の側溝に用いる透水蓋を例示した図である。
【図5】図5(A)及び(B)は、本発明の側溝に用いるコンクリート蓋の平面図及び断面図である。
【図6】図6(A)−(E)は、本発明の側溝に透水蓋とコンクリート蓋を設置した状態を示す図である。
【図7】図7(A)及び(B)は、本発明の側溝の斜視図である。
【図8】図8は(A)−(E)、本発明の側溝の他の実施例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の側溝の他の実施例を示す図である。
【図10】図10は、図9に示す本発明の側溝の例を示す斜視図である。
【図11】図11は、本発明の側溝に用いる脱出用斜面と蓋とが一体的に構成されたコンクリート蓋の例を示す図である。
【符号の説明】
1 側溝部材
2 側溝底部
3 側溝上部
4 脱出用斜面部材
4a 脱出用斜面
5 バイパス路
5a バイパス底部
6 透水
7 立ち下がり部
8 立ち上がり部
9 コンクリート蓋
9a コンクリート蓋と脱出用斜面とが一体的の構成
10 蓋受け部

Claims (4)

  1. U形側溝で構成される開架側溝路中に、直列的に配置し得る小動物脱出用の側溝部材(1)であって、
    上記小動物脱出用の側溝部材の溝内に、側溝底部(2)近辺から少なくとも側溝上部(3)近辺に至る、脱出用斜面部材(4)が配置されることと、
    上記脱出用斜面部材が溝内に配置されることによって阻害される流水を迂回させるためのバイパス路(5)が、上記脱出用斜面部材の底部の真下に設けられることと、
    上記バイパス路は、上記側溝部材の上流側及び下流側の両端部から一定長さ位置の底部(2)に入口及び出口を有し、流水の実質的に全量が通過するように相互に連続した連通区間を形成するように配置されることとを特徴とする、小動物脱出用のU形側溝部材。
  2. 上記バイパス路が、上記脱出用斜面部材の底部の真下に配置される、方形、円形又は楕円形を含む多角形の断面を有することを特徴とする請求項1に記載の、小動物脱出用のU形側溝部材。
  3. 上記バイパス路の入口及び出口に、流水の実質的に全量が通過することを許し、しかも小動物が吸い込まれることを阻止し得る透水蓋(6)を配置したことを特徴とする、請求項1又は2の何れかに記載の小動物脱出用のU形側溝部材。
  4. U形側溝で構成される開架側溝路中に、直列的に配置し得る小動物脱出用の側溝部材であって、
    上記小動物脱出用の側溝部材の溝内に側溝底部(2)近辺から少なくとも側溝上部(3)近辺に至る、脱出用斜面部材(4)が配置されることと、
    上記小動物脱出用の側溝部材の溝内に上記側溝路中に流れる流水の実質的に全量を迂回させうるバイパス(5)が、上記脱出用斜面部材の底部の真下に設けられ上記側溝部材の両端から一定長さ位置の側溝底部(2)に入口及び出口を有し上記入口及び出口を結んで相互に連通するように形成され、
    上記バイパスの入口及び出口に上記バイパスへの流水の出入りを阻害しないが小動物が吸い込まれることを阻止し得る透水蓋)を配置してなり
    上記脱出用斜面部材(4)は、上記の両透水蓋間にコンクリート蓋(9)を並置してその上に脱出用斜面が構築されてなるもの、又はコンクリート蓋と脱出用斜面とが一体的に構成された一体的コンクリート蓋(9a)であることを特徴とする、小動物脱出用のU形側溝部材。
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