JP3556027B2 - 含硫(メタ)アクリレート化合物およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な含硫(メタ)アクリレート化合物、その化合物を含有するプラスチックレンズ用組成物およびその組成物を重合させて得られる含硫樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。
現在、これらの目的に広く用いられる樹脂としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(以下、D.A.C と称す)をラジカル重合させたものがある。この樹脂は、耐衝撃性に優れていること、軽量であること、染色性に優れていること、切削性および研磨性等の加工性が良好であること等、種々の特徴を有している。
しかしながら、この樹脂は、屈折率が無機レンズ(nD =1.52 )に比べ、nD = 1.50と小さく、ガラスレンズと同等の光学特性を得るためには、レンズの中心厚、コバ厚、および曲率を大きくする必要があり、全体的に肉厚になることが避けられない。このため、より屈折率の高いレンズ用樹脂が望まれていた。
【0003】
D.A.C 樹脂よりも屈折率が高いレンズとして、ポリウレタン系レンズが知られている。本発明者らは、このポリウレタン系レンズとして、例えば、特開昭63−46213号公報において、キシリレンジイソシアネート化合物とポリチオール化合物との重合物からなるポリウレタン系レンズを提案しており、眼鏡用レンズなどの光学用レンズとして広く普及している。また、特開平2−270859号公報には、特定のポリチオール化合物とイソシアネート化合物の組合せにより、高屈折率で、軽量、耐衝撃性に優れたポリウレタン系レンズが提案されている。
しかしながら、これらの樹脂によるレンズは、耐擦傷性が十分でなくレンズの表面が傷つきやすいという欠点を有している。また、光学的に均質なレンズを得るためには重合時間が長くなり、作業性が煩雑になることがあった。このため、これらの問題点を解決すべくさらなる改良が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、短時間重合で得られ、かつ、良好な光学物性、特に高い屈折率、および、非常に優れた耐擦傷性をもつ光学材料用の含硫樹脂を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、鋭意検討した結果、新規な含硫(メタ)アクリレート化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記式(1)(化2)で表される含硫(メタ)アクリレート化合物、式(1)で表される含硫(メタ)アクリレート化合物を含有するプラスチックレンズ用組成物、および、該組成物を重合させて得られる含硫樹脂に関するものである。
【0006】
【化2】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す)
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の含硫(メタ)アクリレート化合物は、下記式(2)(化3)で表される4官能のポリチオール化合物を出発原料として製造することができる。
式(2)で示されるポリチオール化合物は、特開平7−252207号公報に記載の方法、即ち、エピクロルヒドリンと2−メルカプトエタノールを反応させ、得られたジオール体をさらに硫化ナトリウムと反応させテトラオール体を得る。次いで、このテトラオール体を塩酸中、チオ尿素と反応させ、アンモニア水で加水分解する方法により容易に製造される。
【0008】
【化3】
【0009】
含硫(メタ)アクリレート化合物は、
▲1▼式(2)で示されるポリチオール化合物1モルに対して、4〜6モルの(メタ)アクリル酸クロライド等を、−20℃〜60℃で反応させる方法、あるいは、▲2▼式(2)で示されるポリチオール化合物1モルに対して、4〜6モルのβ−クロロプロピオニルクロライドまたはβ−クロロ−α−メチルプロピオニルクロライドを、−20℃〜80℃で反応させ、次いで、4〜8モルの塩基を−20℃〜60℃で反応させることによって製造される。
【0010】
上記の反応では、反応の際に発生する塩化水素を除くために、反応系内に塩化水素補足剤として塩基を共存させておくことも出来る。塩化水素補足剤としての塩基は特に限定されないが、一般に使用される塩基として、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンや、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。前記▲2▼の後段の反応で用いる塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンがより好ましい。
また、高収率で、高純度の含硫(メタ)アクリレート化合物を得るために、前記▲2▼の前段の反応では、反応系内に塩化水素補足剤として塩基を共存させずに、発生する塩化水素を系外に除去しながら直接反応させることが好ましい。
【0011】
また、この反応の際、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。使用される有機溶媒は、特に限定されないが、反応に必要な原料類との反応性を有していないものが使用できる。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン等の脂肪族、又は芳香族炭化水素類あるいはハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0012】
本発明のプラスチックレンズ用組成物は、前記式(1)で表される含硫(メタ)アクリレート化合物を含有するものであり、また、式(1)で表される含硫(メタ)アクリレート化合物、および、これと共重合可能な単量体あるいはポリチオール化合物の少なくとも1種とを含有するものである。他の単量体あるいはポリチオール化合物を含有するプラスチックレンズ用組成物の場合、式(1)で表される含硫(メタ)アクリレート化合物は、含硫(メタ)アクリレート化合物と他の単量体あるいはポリチオール化合物の全量に対し、20重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。
本発明の含硫(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な単量体、あるいはポリチオール化合物は、屈折率等の光学物性の調整や、耐衝撃性、比重等の諸物性を調整するためや、モノマーの粘度、その他の取扱いを調整するためなど、目的に応じて選択され、特に限定はされない。またこれらの共重合可能な単量体、あるいはポリチオール化合物は、単独で使用することも、また、2種以上を混合して使用することもできる。
【0013】
共重合可能な単量体としては、例えば、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ブチキシエチルアクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレート、メチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等が挙げられる。
【0014】
また、ポリチオール化合物としては、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、4,4’−チオビスベンゼンチオール、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)3−メルカプトプロパン、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン等が挙げられる。
【0015】
本発明の含硫樹脂は、前記組成物を重合させて得られるものであり、本発明の含硫(メタ)アクリレート化合物を単独で重合させたもの、あるいは、含硫(メタ)アクリレート化合物を他の共重合可能な単量体、あるいはポリチオール化合物と共重合させたものである。本発明の含硫樹脂を得るための重合方法としては、特に限定されることはなく、公知のラジカル重合方法をとることができる。
この場合の重合開始手段としては、種々の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤の使用、あるいは、紫外線、可視光線、α線、β線、γ線、電子線等の照射、あるいはこれらの併用が挙げられる。
【0016】
ラジカル開始剤としては、公知のものが使用でき、代表的なものとしては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0017】
紫外線等を照射して重合を開始させる場合には、公知の増感剤等を使用することもできる。増感剤の代表的なものとしては、ベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0018】
本発明の含硫樹脂(例えば、プラスチックレンズ)を得る際の代表的な重合方法としては、注型重合が挙げられる。即ち、ガスケットまたはテープ等で保持されたモールド間に、ラジカル開始剤または増感剤、あるいはこの両方を含む本発明のプラスチックレンズ用組成物(モノマー混合物ともいう)を注入する。この時、必要に応じて、脱泡等の処理を行っても何ら差し支えはない。
次いで、紫外線等を照射するか、または、オーブン中で加熱するか、あるいは、これらを併用して硬化させ、重合物を取り出すことができる。
【0019】
本発明の含硫樹脂を得るための重合法、重合条件等は、用いる開始剤等の種類や量、単量体の種類や割合によって、一概に限定することはできない。
例えば、紫外線等を照射する場合、モノマー混合物の過熱を防ぐために冷却等の処理を行うこともあり、また、オーブン中で加熱する場合には、最適な温度条件を選択するため、温度制御することもある。オーブン中で加熱する場合、一般的には、低温から徐々に加熱し、高温で保持して重合を完結させる方法が採用される。また、重合の時間についても、使用する開始剤等の種類や量、単量体の種類や割合により影響を受けるため、一概には限定することはできない。一般的には、紫外線等の照射により重合時間の短縮を図ることは可能である。
【0020】
本発明の含硫樹脂の成形の際には、目的に応じて、公知の成形法におけると同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤などの種々の物質を添加してもよい。
また、取り出した含硫樹脂については、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
【0021】
本発明の含硫(メタ)アクリレートを用いて得られた含硫樹脂は、高屈折率で低分散であり、耐熱性、耐候性に優れ、特に耐擦傷性に非常に優れた特徴を有している。本発明の含硫樹脂は、注型重合時のモールドを変えることにより、種々の形態の成形体として得ることができ、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子素材、透明樹脂としての各種の用途に使用することができる。特に、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子素材として好適である。
さらに、本発明の含硫樹脂を用いたレンズでは、必要に応じ、反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいは、ファッション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的あるいは化学的処理を施すことができる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。尚、得られたレンズ用樹脂の性能試験のうち、屈折率、アッベ数、耐擦傷性、外観、耐衝撃性は以下の試験法により評価した。
・屈折率、アッベ数:プルフリッヒ屈折計を用い20℃で測定した。
・耐擦傷性:樹脂の表面を#0000のスチールウールで摩擦して、表面の傷つき難さを調べ、次のように判定した。
○:強く摩擦しても全く傷つかない
△:強く摩擦すると少し傷つく
×:弱い摩擦でも傷つく
・外 観:目視により観察した。
・耐衝撃性:作製したレンズの中心部分に、127cmの高さから鉄球を落下させて耐衝撃性を評価した。
【0023】
実施例1
攪拌機、温度計、滴下ロート、気体の導入管および排出管を備えた反応フラスコに、β−クロロプロピオニルクロライド53.3g(0.42モル)を仕込み、窒素ガスを緩やかに流通させながら50℃に加温した。式(2)で示される4官能のポリチオール化合物36.7g(0.10モル)を、攪拌しながらゆっくりと滴下した。この際に発生する塩化水素ガスは系外の水酸化ナトリウム水溶液のトラップに吸収した。滴下終了後、50℃で6時間攪拌して反応を進めた。次に、トルエン300mlを加えて、冷却しながら10%NaOH水溶液を滴下して系内をアルカリ性にして十分に攪拌した。有機層を分液し、水で洗浄した。
有機層を、攪拌機、温度計、滴下ロートを備えた反応フラスコに仕込み、10℃以下に冷却して攪拌しながら、トリエチルアミン44.5g(0.44モル)を徐々に滴下した。滴下終了後、さらに25℃で、7時間攪拌した。
その後、反応混合物を水にあけ、分液してから、有機層を希塩酸、希重炭酸ソーダ水溶液、水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、トルエンを減圧下に留去して、目的の無色透明の含硫アクリレート化合物50.7g(0.087モル)を得た。
【0024】
実施例2
攪拌機、温度計、滴下ロートを備えた4つ口の反応フラスコに、式(2)で示される4官能のポリチオール化合物36.7g(0.10モル)とアセトン300mlを仕込み、10℃以下に冷却して攪拌しながら20%NaOH水溶液88gを滴下し、十分に攪拌したのち、メタクリル酸クロライド46.0g(0.44モル)を徐々に滴下した。滴下終了後、さらに4時間攪拌した。
その後、トルエン300mlと水200mlを加えて、反応生成物を有機層に抽出した。分液して水層を除いたのち、有機層を希重炭酸ソーダ水溶液、水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、トルエンを減圧下に留去して、目的の無色透明の含硫メタクリレート化合物48.3g(0.079モル)を得た。
【0025】
実施例3
実施例1で得られた含硫アクリレート化合物50gに対して、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート25mg、増感剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン50mgを添加してよく混合した。これを十分に脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。冷却しながら、紫外線を5分間照射した後、30℃から130℃まで1時間かけて昇温し、更に130℃で1時間加熱し、重合を行った。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。
得られた成形体(レンズ)は無色透明であり、屈折率nd =1.642、アッベ数νd =33であった。また、耐擦傷性にも非常に優れており、評価は「○」であった。
【0026】
実施例4
実施例2で得られた含硫メタクリレート化合物50gに対して、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート50mgを添加してよく混合した。これを十分に脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。30℃から130℃まで2時間かけて昇温し、更に130℃で1時間加熱し、重合を行った。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。
得られた成形体(レンズ)は無色透明であり、屈折率nd =1.622、アッベ数νd =36であった。また、耐擦傷性にも非常に優れており、評価は「○」であった。
【0027】
実施例5
特開平7−252207号公報の実施例1に準じて、下記式(A)〜(C)(化4)で示される4官能のポリチオール化合物の混合物を得た。
これらの式で示される4官能のポリチオール化合物の混合物36.7g(0.10モル)を使用して、実施例1と同様にして、下記式(A’)〜(C’)(化5)で示される無色透明の含硫アクリレート化合物の混合物49.6g(0.085モル)を得た。この含硫アクリレート混合物40gに対して、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート20mg、増感剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン40mgを添加してよく混合した。これを十分に脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。冷却しながら、紫外線を5分間照射したのち、30℃から130℃まで1時間かけて昇温し、更に130℃で1時間加熱し、重合を行った。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。
得られた成形体(レンズ)は無色透明であり、屈折率nd =1.642、アッベ数νd =33であった。また、耐擦傷性にも非常に優れており、評価は「○」であった。
【0028】
【化4】
【0029】
【化5】
【0030】
実施例6
実施例1で得られた含硫アクリレート化合物35gに対して、テトラエチレングリコールジメタクリレート〔新中村化学工業(株)製、NKエステル4G〕とポリエチレングリコールジメタクリレート〔新中村化学工業(株)製、NKエステル14G〕の1:1の等量混合物15gとラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート50mg、増感剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン100mgを添加してよく混合した。これを十分に脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。実施例3と比較すると、モノマー混合物の粘度が低いため注入が容易であった。
冷却しながら、紫外線を5分間照射したのち、30℃から130℃まで1時間かけて昇温し、更に130℃で1時間加熱し、重合を行った。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。
得られた成形体(レンズ)は無色透明であり、屈折率nd =1.592、アッベ数νd =40、比重は1.31であった。耐擦傷性にも非常に優れており、評価は「○」であった。実施例3で得られた樹脂よりも耐衝撃性は向上していた。
【0031】
実施例7
実施例1で得られた含硫アクリレート化合物40gに対して、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)3−メルカプトプロパン10gとラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート50mg、増感剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン100mgを添加してよく混合した。これを十分に脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。冷却しながら、紫外線を5分間照射したのち、30℃から130℃まで1時間かけて昇温し、更に130℃で1時間加熱し、重合を行った。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。得られた成形体(レンズ)は無色透明であり、屈折率nd =1.652であり、実施例3で得られた樹脂より屈折率がかなり向上していた。
また、アッベ数νd =35、比重は1.37であった。耐擦傷性にも非常に優れており、評価は「○」であった。実施例3で得られた樹脂よりも耐衝撃性は向上していた。
【0032】
【発明の効果】
本発明の含硫(メタ)アクリレート化合物は新規な化合物であり、また、本発明の組成物は短時間での重合が可能であり、良好な光学物性、特に高い屈折率、および、非常に優れた耐擦傷性をもつ含硫樹脂を与える。
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