JP3554485B2 - 流体動圧軸受モータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体駆動装置におけるハードディスク等の記録媒体を回転駆動させるために用いられる流体動圧を利用した流体動圧軸受モータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の流体動圧軸受モータとして、上端近傍にスラスト板が同心状に固設された軸体と、スラスト板と軸体とに微小間隙を有して周設された二重円筒状のスリーブ体と、スラスト板とスリーブ体との微小間隙及び軸体とスリーブ体との微小間隙に充填された潤滑油等の潤滑流体とを備えたものがある。
【0003】
このような流体動圧軸受モータでは、スラスト板の上面に動圧発生溝が形成されて上部スラスト動圧軸受が構成されると共に、スラスト板の下面に動圧発生溝が形成されて下部スラスト動圧軸受が構成される一方、スリーブ体の軸体に対向する面に動圧発生溝が形成されてラジアル動圧軸受が構成され、スリーブ体が軸体の周りを回転可能となっている。
【0004】
なお、各動圧軸受を形成する動圧発生溝は、動圧が動圧発生溝の中央に生成されるバランスがとれた構造となっている。また、スラスト動圧軸受の潤滑流体とラジアル動圧軸受の潤滑流体とは互いに分離した状態で充填した構造のものや互い連続した状態で充填した構造のものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記構成の流体動圧軸受モータでは、微小間隙に充填された潤滑流体は、その充填作業時に空気が混入したり、スリーブ体の回転時に動圧発生溝により潤滑流体が撹拌されることにより空気が混入したりするため、気泡が不可避的に含まれたものとなる。ところが、潤滑流体中に気泡が含まれていると、その気泡がモータの温度上昇等により熱膨張する結果、潤滑流体が外部に漏出されて流体動圧軸受モータを短寿命化させる虞がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成でスラスト動圧軸受やラジアル動圧軸受等の潤滑流体中の気泡を効率的に外部に放出させることができる流体動圧軸受モータを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、軸体と、該軸体に同心状に固設されたスラスト板と、前記軸体及びスラスト板に対し微小間隙を有して周設されたスリーブ体と、前記微小間隙の少なくとも一部に充填された潤滑流体とを備え、該潤滑流体が充填された箇所に流体動圧軸受が形成されて前記スリーブ体が前記軸体の回りに相対的に回転可能にされた流体動圧軸受モータであって、前記スラスト板の一面と前記スリーブ体の前記一面との対向面間に形成され、潤滑流体をスラスト板の内周側から外周側に向けて流動させる第1のスラスト動圧軸受と、前記スラスト板の他面と前記スリーブ体の前記他面との対向面間に形成され、潤滑流体をスラスト板の外周側から内周側に向けて流動させる第2のスラスト動圧軸受と、前記スラスト板の内周側に該スラスト板の両面を貫通して形成された流体循環孔とを有することを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、スラスト板の一面とスリーブ体との間に形成された第1のスラスト動圧軸受やスラスト板の他面とスリーブ体との間に形成された第2のスラスト動圧軸受等によりスリーブ体が軸体に軸支され、スリーブ体が軸体の回りを相対的に回転する。この回転時に、第1のスラスト動圧軸受の潤滑流体はスラスト板の内周側から外周側へ流動すると共に、第2のスラスト動圧軸受の潤滑流体はスラスト板の外周側から内周側へ流動し、この内周側に流動した潤滑流体は流体循環孔を介して第1のスラスト動圧軸受側へ流動する。
【0009】
すなわち、スラスト板の周囲の潤滑流体は、スラスト板の外周側の端面と内周側の流体循環孔とを介してスラスト板の一面と他面との間で循環することになり、流体循環孔を通過するとき等に潤滑流体中に含まれている気泡が軸体とスリーブ体間の微小間隙を介して外部に放出されることになる。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1に係るものにおいて、前記スラスト板の他面は、前記ラジアル動圧軸受に近い側の面であることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、流体循環孔内を通過する潤滑流体はスラスト板の他面側から一面側に向けて流動することになる。スラスト板の一面側には外部に通じる微小間隙が存在しているため、潤滑流体中の気泡は流体循環孔内の通過時等に上記の微小間隙を介して外部に放出されることになる。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に係るものにおいて、前記流体循環孔は、前記スラスト板の外周側の間口が内周側の間口に比べて狭い断面形状を有しているものであることを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、間口の狭い外周側部分での表面張力が大きくなるため、潤滑流体はこの間口の狭い部分を通過することになる。このため、内周側部分は空気の通路となる呼吸孔となる結果、間口の狭い部分での潤滑流体の通過が容易になる一方、潤滑流体中の気泡の放出が容易となる。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに係るものにおいて、前記スラスト板に隣接する箇所であって前記軸体と前記スリーブ体との対向面間に形成されたラジアル動圧軸受を有し、前記第1,第2のスラスト動圧軸受の潤滑流体と前記ラジアル動圧軸受の潤滑流体とは前記微小間隙を介して連続するようにされていることを特徴としている。
【0015】
この構成によれば、ラジアル動圧軸受の潤滑流体は第1,第2のスラスト動圧軸受の潤滑流体と連続しているので、ラジアル動圧軸受の潤滑流体中の少なくともスラスト板に近い箇所の気泡はスラスト動圧軸受の潤滑流体に取り込まれる等して外部に放出されることになる。また、スラスト動圧軸受とラジアル動圧軸受間で一方の潤滑流体が他方の潤滑流体に取り込まれることがないので各動圧軸受の潤滑流体10が枯渇することがない。
【0016】
また、請求項5の発明は、請求項4に係るものにおいて、前記ラジアル動圧軸受は、潤滑流体に対し前記スラスト板側に向けて流動させる方向の力が加わるように形成されていることを特徴としている。
【0017】
この構成によれば、スラスト動圧軸受の潤滑流体がラジアル動圧軸受側に取り込まれることが効果的に抑制され、スラスト動圧軸受の潤滑流体が枯渇することが阻止される。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項4又は5に係るものにおいて、前記軸体の前記ラジアル動圧軸受を挟む前記スラスト板とは反対側の箇所に前記軸体と前記スリーブ体との対向面間の間隙により構成された気体介在部を有し、該気体介在部は前記ラジアル動圧軸受との境界部における前記軸体と前記スリーブ体とのなす角が前記ラジアル動圧軸受の潤滑流体界面を該気体介在部側に移動不能とする大きさに形成されていることを特徴としている。
【0019】
この構成によれば、ラジアル動圧軸受の潤滑流体中の少なくとも気体介在部に近い箇所の気泡はこの気体介在部に放出されることになる。また、スラスト動圧軸受及びラジアル動圧軸受の潤滑流体は所定位置に保持され、一方が他方に取り込まれて潤滑流体が枯渇することが阻止される。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態に係るスピンドルモータとして用いるのに適した流体動圧軸受モータの縦断面図である。この図において、流体動圧軸受モータは、基盤2と、基盤2に下端部が固定された軸体4と、軸体4の上部に同心状に固設されたスラスト板6と、軸体4及びスラスト板6に微小間隙を有して周設され、軸体4の回りを回転可能にされたスリーブ体8と、軸体4とスリーブ体8との微小間隙及びスラスト板6とスリーブ体8との微小間隙に充填された潤滑流体10と、基盤2に固設されたステータ12と、スリーブ体8のステータ12に対向する位置に固設されたマグネット14とを備えている。
【0021】
基盤2は、中央部に軸体4の下端部を嵌合して固定する貫通孔21が形成された円環状を有している。
【0022】
軸体4は、上部側であってスラスト板6が固設される箇所の上方に周方向に沿って形成された第1の環状溝41、軸心方向の略中央部に形成された第2の環状溝42、下部側であって基盤2の上方に形成された第3の環状溝43、及び内部に軸心方向に沿って形成され、第2の環状溝42と第3の環状溝43とを連通する通気孔(呼吸孔)44を備えている。
【0023】
第1の環状溝41は、径方向外方に開口する断面凹形状を有し、後述するカバー板85の切欠き部852とにより環状空間を形成して潤滑流体10が外部に流出するのを阻止する流出阻止部411を構成する。
【0024】
第2の環状溝42は、外径が下方に向かって比較的急激に減少し、軸心方向の距離が短い上傾斜壁421と、外径が上方に向かって比較的緩やかに減少し、軸心方向の距離が長い下傾斜壁422とを有しており、スリーブ体8の後述する環状溝86とで後述する第1のラジアル動圧軸受880と第2のラジアル動圧軸受890の潤滑流体10を分離する気体介在部423を構成する。
【0025】
第3の環状溝43は、外径が下方に向かって比較的緩やかに減少し、軸心方向の距離が長い上傾斜壁431を有しており、スリーブ体8とで後述する第2のラジアル動圧軸受の潤滑流体10のシール部を構成する。
【0026】
通気孔44は、軸体4の外周面に開口する上開口部441が第2の環状溝42の上傾斜壁421と下傾斜壁422との境界部に位置し、軸体4の外周面に開口する下開口部442が第3の環状溝43の上傾斜壁431の上部(軸体4とスリーブ体8間の隙間のできるだけ狭い箇所)に位置している。
【0027】
スラスト板6は、中央に上下面6a,6bを貫通するように形成された取付孔61を有する円環状をなし、取付孔61の周囲の180°毎の対称位置に形成された上下面6a,6bを貫通する2個の流体循環孔62、上面6aに形成された第1の動圧発生溝63、及び下面6bに形成された第2の動圧発生溝64を備えている。
【0028】
図2は、スラスト板6の平面図で、(a)は上面6a側を示し、(b)は下面6b側を示している。この図において、流体循環孔62は、略三角形状を有し、間口の広い底辺部621が内周側に位置するように形成されて取付孔61に開放され、間口の狭い頂部622が外周側に位置するように形成されている。この間口の広い底辺部621は後述するように空気の呼吸孔を形成し、間口の狭い頂部622は潤滑流体10の循環孔を形成する。このため、間口の狭い頂部622は、小さな鋭角にして潤滑流体10に対する表面張力が大きくなるようにされ、循環孔における潤滑流体10の通過が容易になるようになっている。
【0029】
第1の動圧発生溝63は、ヘリングボーン溝からなり、内周側の傾斜溝631と外周側の傾斜溝632とを径方向両側から中間部で合流するようにした「く」の字状に伸びる複数の傾斜溝633を周方向に所定の間隔で配列したもので、スラスト板6の上面6aとこの上面6aとのスリーブ体8の対向面間に第1のスラスト動圧軸受630を形成するものである。
【0030】
この第1の動圧発生溝63は、内周側の傾斜溝631の径方向寸法が外周側の傾斜溝632の径方向寸法よりも長くなるように設定されたもので、スリーブ体8が軸体4の回りを回転するときに傾斜溝631における潤滑流体10に加えられる外周側への加圧力と傾斜溝632における潤滑流体10に加えられる内周側への加圧力とにより動圧が生成される一方、傾斜溝631における外周側への加圧力が傾斜溝632における内周側への加圧力よりも大きくなってスラスト板6(上面6a)とスリーブ体8間に存在する潤滑流体10が内周側から外周側へ流動(移動)するようになっている。
【0031】
第2の動圧発生溝64は、第1の動圧発生溝63と同様にヘリングボーン溝からなり、内周側の傾斜溝641と外周側の傾斜溝642とを径方向両側から中間部で合流するようにした「く」の字状に伸びる複数の傾斜溝643を周方向に所定の間隔で配列したもので、スラスト板6の下面6bとこの下面6bとのスリーブ体8の対向面間に第2のスラスト動圧軸受640を形成するものである。
【0032】
この第2の動圧発生溝64は、内周側の傾斜溝641の径方向寸法が外周側の傾斜溝642の径方向寸法よりも短くなるように設定されたもので、スリーブ体8が軸体4の回りを回転するときに傾斜溝641における潤滑流体10に加えられる外周側への加圧力と傾斜溝642における潤滑流体10に加えられる内周側への加圧力とにより動圧が生成される一方、傾斜溝641における外周側への加圧力が傾斜溝642における内周側への加圧力よりも小さくなってスラスト板6(下面6b)とスリーブ体8間に存在する潤滑流体10が外周側から内周側へ流動(移動)するようになっている。
【0033】
図1に戻り、スリーブ体8は、軸体4よりも幾分大径で軸体4が嵌合される中央部に形成された貫通孔81、上部に形成された二重段差を有する環状溝82及び下部に形成された二重筒状部83を有するハブ84と、環状溝82の後述する上溝822に固設されたカバー板85とからなるものである。
【0034】
環状溝82は、スラスト板6が収納されるスラスト板6よりも幾分大径の下溝821と、下溝821よりも大径の上溝822とからなり、カバー板85が上溝822に固設されることにより下溝821がスラスト板収納部を構成する。
【0035】
このスリーブ体8(ハブ84)は、貫通孔81の軸心方向における略中央位置で軸体4の第2の環状溝42に対向する箇所に環状溝86が形成されている。この環状溝86は、外径が下方に向かって比較的急激に増大し、軸心方向の距離が短い上傾斜壁861と、外径が上方に向かって比較的緩やかに増大し、軸心方向の距離が長い下傾斜壁862とを有しており、上述のように軸体4の第2の環状溝42とで気体介在部423を形成している。
【0036】
すなわち、気体介在部423は、軸体4とスリーブ体8(ハブ84)との対向面間に形成された間隙により構成され、後述する第1のラジアル動圧軸受880と第2のラジアル動圧軸受890とを分離するもので、第1のラジアル動圧軸受880との境界部となる箇所の軸体4とスリーブ体8とのなす角(上開口角)が第1のラジアル動圧軸受880の潤滑流体10の下側界面を気体介在部423側に移動不能な大きさに形成されている。すなわち、第1のラジアル動圧軸受880側の上開口角を大きくすることにより潤滑流体10の下側界面の表面張力を大きくし、第1のラジアル動圧軸受880の潤滑流体10が気体介在部423側に流出不能になっている。これにより、第1,第2のスラスト動圧軸受630,640及び第1のラジアル動圧軸受880の潤滑流体10が定位置に保持されることになる。
【0037】
また、気体介在部423は、後述する第2のラジアル動圧軸受890との境界部となる箇所の軸体4とスリーブ体8とのなす角(下開口角)が第2のラジアル動圧軸受890の潤滑流体10の上側界面を気体介在部423側に移動可能な大きさに形成されている。すなわち、第2のラジアル動圧軸受890側の下開口角を小さくすることにより潤滑流体10の上側界面の表面張力を小さくし、第2のラジアル動圧軸受890の潤滑流体10が気体介在部423側に移動可能になっている。
【0038】
また、スリーブ体8(ハブ84)は、その貫通孔81における内周面であって、下溝821と環状溝86との間に形成された第3の動圧発生溝88、及び環状溝86と貫通孔81の下端部近傍位置(軸体4の第3の環状溝43と対向する箇所の上端位置)との間に形成された第4の動圧発生溝89を備えている。
【0039】
図3は、スリーブ体8(ハブ84)の貫通孔81における内周面の展開図である。この図において、第3の動圧発生溝88は、ヘリングボーン溝からなり、軸心方向上部側の傾斜溝881と軸心方向下部側の傾斜溝882とを軸心方向両側から中間部で合流するようにした「く」の字状に伸びる複数の傾斜溝883を周方向に所定の間隔で配列したもので、軸体4とスリーブ体8との対向面間に第1のラジアル動圧軸受880を形成するものである。
【0040】
この第3の動圧発生溝88は、軸心方向上部側の傾斜溝881の軸心方向寸法が軸心方向下部側の傾斜溝882の軸心方向寸法よりも少し短くなるように設定されたもので、スリーブ体8が軸体4の回りを回転するときに傾斜溝881における潤滑流体10に加えられる軸心方向下部側への加圧力と傾斜溝882における潤滑流体10に加えられる軸心方向上部側への加圧力とにより動圧が生成される一方、傾斜溝881における軸心方向下部側への加圧力が傾斜溝882における軸心方向上部側への加圧力よりも少し小さくなって潤滑流体10に対し、軸心方向下部側から軸心方向上部側へ流動(移動)させる方向の力が加えられるようになっている。
【0041】
また、第4の動圧発生溝89は、第3の動圧発生溝88と同様にヘリングボーン溝からなり、軸心方向上部側の傾斜溝891と軸心方向下部側の傾斜溝892とを軸心方向両側から中間部で合流するようにした「く」の字状に伸びる複数の傾斜溝893を周方向に所定の間隔で配列したもので、軸体4とスリーブ体8との対向面間に第2のラジアル動圧軸受890を形成するものである。
【0042】
この第4の動圧発生溝89は、各傾斜溝891,892が第3の動圧発生溝88と同様に形成されており、スリーブ体8が軸体4の回りを回転するときに傾斜溝891における潤滑流体10に加えられる軸心方向下部側への加圧力と傾斜溝892における潤滑流体10に加えられる軸心方向上部側への加圧力とにより動圧が生成される一方、傾斜溝891における軸心方向下部側への加圧力が傾斜溝892における軸心方向上部側への加圧力よりも少し小さくなって軸体4とスリーブ体8間に存在する潤滑流体10に対し、軸心方向下部側から軸心方向上部側へ流動(移動)させる方向の力が加えられるようになっている。
【0043】
図1に戻り、カバー板85は、軸体4よりも幾分大径で軸体4が嵌合される中央部に形成された貫通孔851を有し、下面の内周側角部が切除されて切欠き部852が形成されたもので、上述のように切欠き部852と軸体4の第1の環状溝41とで潤滑流体10の流出阻止部411を構成している。また、このカバー板85の上方には、オイルトラップを構成するシール板87がハブ84に固設されている。
【0044】
潤滑流体10は、潤滑油等からなり、スラスト板6の周囲の微小間隙G1、軸体4の外周面と第3の動圧発生溝88の形成されたスリーブ体8(ハブ84)の内周面間の微小間隙G2、及び軸体4の外周面と第4の動圧発生溝89の形成されたスリーブ体8(ハブ84)の内周面間の微小間隙G3に充填されている。なお、スラスト板6の周囲の微小間隙G1に充填される潤滑流体10と、軸体4の外周面と第3の動圧発生溝88の形成されたスリーブ体8の内周面間の微小間隙G2に充填される潤滑流体10とは、それらの微小間隙を介して連続するようになっている。
【0045】
また、軸体4の外周面と第4の動圧発生溝89の形成されたスリーブ体8の内周面間の微小間隙G3に充填される潤滑流体10は、スリーブ体8の回転停止時ではその下側界面が通気孔44の下開口部442よりも下方に位置し、下開口部442を塞いだ状態になるようになっている。
【0046】
ステータ12は、基盤2に取り付けられた支持部22に固設された円筒状のコア121に導線が巻回されて構成され、スリーブ体8(ハブ84)の二重筒状部83の空間部内側に収納配置されている。
【0047】
マグネット14は、円筒状を有し、スリーブ体8の二重筒状部83の空間部外側に固設された円筒状のヨーク141内周面であってステータ12に対向する位置に固設されている。
【0048】
上記のように構成された本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータは、ステータ12に通電されると、スリーブ体8が第1,第2のスラスト動圧軸受630,640及び第1,第2のラジアル動圧軸受880,890に軸支されて軸体4の回りを高速回転する。このとき、スラスト板6の上面6aとこの上面6aとのスリーブ体8の対向面間に形成された第1のスラスト動圧軸受630における潤滑流体10が第1の動圧発生溝63に生じる差圧により内周側から外周側に流動する一方、スラスト板6の下面6bとこの下面6bとのスリーブ体8の対向面間に形成された第2のスラスト動圧軸受640における潤滑流体10が第2の動圧発生溝64に生じる差圧により外周側から内周側に流動する。
【0049】
この結果、スラスト板6の上面6aの潤滑流体10はスラスト板6の端面6cを介してスラスト板6の下面6b側に流動する一方、スラスト板6の下面6bの潤滑流体10はスラスト板6の内周側の流体循環孔62を介してスラスト板6の上面6b側に流動する。すなわち、スラスト板6の周囲に充填されている潤滑流体10は、上面6aと下面6b間を端面6cと流体循環孔62とを介して循環することになる。
【0050】
このとき、流体循環孔62の内周側には呼吸孔が形成されるので、潤滑流体10の循環がスムーズに行われる一方、潤滑流体10が流体循環孔62からスラスト板6の上面6aに流動するときに潤滑流体10中に含まれている気泡が流体循環孔62の上方に位置する流出阻止部411に放出され、この放出された気泡は流出阻止部411上方の軸体4とカバー体85及び軸体4とシール板87との微小間隙G4を介して外部に放出されることになる。なお、スラスト板6表面のコーナ部等には気泡が付着し易くなるが、仮にコーナ部等に気泡が付着したとしても潤滑流体10が循環するときにその気泡が潤滑流体10中に取り込まれ、流出阻止部411に放出されることになる。
【0051】
また、軸体4とスリーブ体8との対向面間に形成された第1のラジアル動圧軸受880の潤滑流体10中に含まれている気泡のうち上部側の傾斜溝881にあるものは、その箇所の潤滑流体10にスラスト板6側への力が作用していること等からスラスト板6側に移動し、スラスト板6の周囲を循環する潤滑流体10に取り込まれる等して流出阻止部411に放出される。
【0052】
また、第1のラジアル動圧軸受880の潤滑流体10中に含まれている気泡のうち下部側の傾斜溝882にあるものは、気体介在部423側に移動して気体介在部423内に放出され、通気孔44を介して外部に放出される。勿論、下部側の傾斜溝882にある気泡でもスラスト板6側に移動して流出阻止部411に放出されるものも存在する。
【0053】
また、スリーブ体8が軸体4の回りを回転すると、第2のラジアル動圧軸受890の潤滑流体10は、図4に示すように、第4の動圧発生溝89の上部側の傾斜溝891と下部側の傾斜溝892とに生じる差圧により僅かに気体介在部423側に移動して下側界面が通気孔44の下開口部442の位置にまで上昇する。これにより、通気孔44の下開口部442が外部に開口する。なお、気体介在部423は、上述したように下開口角が小さく設定されて第2のラジアル動圧軸受890の潤滑流体10の上側界面が気体介在部423側に移動可能になっているので、その潤滑流体10の下側界面が通気孔44の下開口部442の位置にまで容易に上昇することになる。
【0054】
第2のラジアル動圧軸受890の潤滑流体10中に含まれている気泡のうち上部側の傾斜溝891にあるものは、その箇所の潤滑流体10に気体介在部423側への力が作用していること等から気体介在部423側に移動し、気体介在部423に放出される。この気体介在部423に放出された気泡は第1のラジアル動圧軸受880から放出された気泡と共に、通気孔44を介して外部に放出されることになる。また、下部側の傾斜溝882にある気泡は、下側界面側に移動して通気孔44の下開口部442近傍において外部に放出される。勿論、下部側の傾斜溝892にある気泡でも気体介在部423側に移動し、気体介在部423に放出されるものもある。
【0055】
以上のように本発明の実施形態に係る流体動圧軸受モータは、特にスラスト板6に気泡を排出させるための複雑な形状の孔加工を施したりする必要がないので、簡単な構成で第1,第2のスラスト動圧軸受630,640や第1,第2のラジアル動圧軸受880,890等の潤滑流体10中の気泡を効率的に外部に放出させることができる。
【0056】
また、スラスト板6の周囲の微小間隙G1に充填される潤滑流体10と、軸体4とスリーブ体8の内周面間の微小間隙G2に充填される潤滑流体10とは連続した状態で充填されているので、それらが分離されている場合のように第1,第2のスラスト動圧軸受630,640と第1のラジアル動圧軸受880間で一方の潤滑流体10が他方の潤滑流体10に取り込まれるという現象が生じることはない。このため、長期に亘る使用によっても各動圧軸受の潤滑流体10が枯渇することがなく、長期間に亘って性能が維持されることになる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態の構造のものに限定されるものではなく、次のような種々の変形態様を採用することができる。
【0058】
(1)上記実施形態では、第1のラジアル動圧軸受880は、そこに充填されている潤滑流体10に対してスラスト板6側に流動する方向の力が作用にするように形成されているが、潤滑流体10にはスラスト板6側に流動する方向の力が作用しないようにすることもできる。この場合は、第3の動圧発生溝88の上部側の傾斜溝881と下部側の傾斜溝882の軸心方向寸法を等しくする等して各傾斜溝881,882に作用する力のバランスがとれるようにすればよい。
【0059】
(2)上記実施形態では、第2のラジアル動圧軸受890は、そこに充填されている潤滑流体10に対し、気体介在部423側に流動する方向の力が作用にするように形成されているが、潤滑流体10には気体介在部423側に流動する方向の力が作用しないようにすることもできる。この場合、第4の動圧発生溝89の上部側の傾斜溝891と下部側の傾斜溝892の軸心方向寸法を等しくする等して各傾斜溝891,892に作用する力のバランスがとれるようにすればよい。
【0060】
(3)上記実施形態では、第1,第2の動圧発生溝63,64は、スラスト板6の上下面6a,6bに形成されているが、その一方又は両方をスリーブ体8のスラスト板6の上下面6a,6bとの対向面に形成してもよい。また、第3,第4の動圧発生溝88,89は、スリーブ体8の軸体4との対向面に形成されているが、その一方又は両方を軸体4の外周面に形成することも可能である。
【0061】
(4)上記実施形態では、スラスト板6の周囲に充填されている潤滑流体10の循環方向が、スラスト板6の上面6aでは内周側から外周側に向けて流動し、下面6bでは外周側から内周側に向けて流動するようになっているが、上面6aでは外周側から内周側に向けて流動し、下面6bでは内周側から外周側に向けて流動するようにするようにすることも可能である。この場合は、第1,第2の動圧発生溝63,64の内周側の傾斜溝631,641と外周側の傾斜溝632,642の長短の関係を上記実施形態のものと逆にすればよい。
【0062】
(5)上記実施形態では、スリーブ体8が軸体4の回りを回転するように構成されているが(この場合、スリーブ体8やマグネット14がロータ側を構成し、軸体4やスラスト板6がステータ側を構成する。)、軸体4がスリーブ体8の内部で回転するように構成することもできる(この場合、軸体4やスラスト板6がロータ側を構成し、スリーブ体8がステータ側を構成する。)。
【0063】
(6)上記実施形態では、スラスト板6の取付孔61の周囲に2個の流体循環孔62が形成されているが、この流体循環孔62は1個又は3個以上とすることも可能である。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1及び2の発明は、潤滑流体をスラスト板の内周側から外周側に向けて流動させる第1のスラスト動圧軸受と、潤滑流体をスラスト板の外周側から内周側に向けて流動させる第2のスラスト動圧軸受と、スラスト板の内周側にスラスト板の両面を貫通して形成された流体循環孔とを有しているので、簡単な構成でスラスト動圧軸受等の潤滑流体中の気泡を効率的に外部に放出させることができる。
【0065】
また、請求項3の発明は、流体循環孔が、スラスト板の外周側の間口が内周側の間口に比べて狭い断面形状を有しているものであるので、潤滑流体は外周側の間口の狭い部分を通過し、内周側部分は空気の通路となる呼吸孔となる結果、間口の狭い部分での潤滑流体の通過が容易になる一方、潤滑流体中の気泡の放出が容易となる。
【0066】
また、請求項4の発明は、スラスト板に隣接する箇所であって軸体とスリーブ体との対向面間に形成されたラジアル動圧軸受を有し、第1,第2のスラスト動圧軸受の潤滑流体とラジアル動圧軸受の潤滑流体とは微小間隙を介して連続するようにされているので、ラジアル動圧軸受の潤滑流体中の少なくともスラスト板に近い箇所の気泡はスラスト動圧軸受の潤滑流体に取り込まれる等して外部に放出されると共に、一方の潤滑流体が他方の潤滑流体に取り込まれることがないので各動圧軸受の潤滑流体が枯渇することが効果的に抑制される。
【0067】
また、請求項5の発明は、ラジアル動圧軸受が潤滑流体に対しスラスト板側に向けて流動させる方向の力が加わるように形成されているので、スラスト動圧軸受の潤滑流体がラジアル動圧軸受側に取り込まれることが阻止される。
【0068】
また、請求項6の発明は、軸体のラジアル動圧軸受を挟むスラスト板とは反対側の箇所に軸体とスリーブ体との対向面間の間隙により構成された気体介在部を有し、該気体介在部はラジアル動圧軸受との境界部における軸体とスリーブ体とのなす角がラジアル動圧軸受の潤滑流体界面を該気体介在部側に移動不能とする大きさに形成されているので、スラスト動圧軸受及びラジアル動圧軸受の潤滑流体が所定位置に保持され、一方が他方に取り込まれて潤滑流体が枯渇することが阻止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る流体動圧軸受モータの縦断面図である。
【図2】図1に示す流体動圧軸受モータを構成するスラスト板に形成された動圧発生溝を説明するための平面図で、(a)は上面側を示し、(b)は下面側を示す図である。
【図3】図1に示す流体動圧軸受モータを構成するスリーブ体に形成された動圧発生溝を説明するための展開図である。
【図4】図1に示す流体動圧軸受モータの回転動作時における第2のラジアル動圧軸体の潤滑流体の流動状態を説明するための要部断面図である。
【符号の説明】
4 軸体
6 スラスト板
8 スリーブ体
10 潤滑流体
12 モータ巻線
14 マグネット
6a 上面(一面)
6b 下面(他面)
62 流体循環孔
423 気体介在部
630 第1のスラスト動圧軸受
640 第2のスラスト動圧軸受
880 第1のラジアル動圧軸受
890 第2のラジアル動圧軸受
Claims (6)
- 軸体と、該軸体に同心状に固設されたスラスト板と、前記軸体及びスラスト板に対し微小間隙を有して周設されたスリーブ体と、前記微小間隙の少なくとも一部に充填された潤滑流体とを備え、該潤滑流体が充填された箇所に流体動圧軸受が形成されて前記スリーブ体が前記軸体の回りに相対的に回転可能にされた流体動圧軸受モータであって、前記スラスト板の一面と前記スリーブ体の前記一面との対向面間に形成され、潤滑流体をスラスト板の内周側から外周側に向けて流動させる第1のスラスト動圧軸受と、前記スラスト板の他面と前記スリーブ体の前記他面との対向面間に形成され、潤滑流体をスラスト板の外周側から内周側に向けて流動させる第2のスラスト動圧軸受と、前記スラスト板の内周側に該スラスト板の両面を貫通して形成された流体循環孔とを有することを特徴とする流体動圧軸受モータ。
- 前記スラスト板の他面は、前記ラジアル動圧軸受に近い側の面であることを特徴とする請求項1記載の流体動圧軸受モータ。
- 前記流体循環孔は、前記スラスト板の外周側の間口が内周側の間口に比べて狭い断面形状を有しているものであることを特徴とする請求項1又は2記載の流体動圧軸受モータ。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の流体動圧軸受モータにおいて、前記スラスト板に隣接する箇所であって前記軸体と前記スリーブ体との対向面間に形成されたラジアル動圧軸受を有し、前記第1,第2のスラスト動圧軸受の潤滑流体と前記ラジアル動圧軸受の潤滑流体とは前記微小間隙を介して連続するようにされていることを特徴とする流体動圧軸受モータ。
- 前記ラジアル動圧軸受は、潤滑流体に対し前記スラスト板側に向けて流動させる方向の力が加わるように形成されていることを特徴とする請求項4記載の流体動圧軸受モータ。
- 請求項4又は5記載の流体動圧軸受モータにおいて、前記軸体の前記ラジアル動圧軸受を挟む前記スラスト板とは反対側の箇所に前記軸体と前記スリーブ体との対向面間の間隙により構成された気体介在部を有し、該気体介在部は前記ラジアル動圧軸受との境界部における前記軸体と前記スリーブ体とのなす角が前記ラジアル動圧軸受の潤滑流体界面を該気体介在部側に移動不能とする大きさに形成されていることを特徴とする請求項5記載の流体動圧軸受モータ。
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