JP3930762B2 - 動圧軸受装置及びこれを備えたスピンドルモータ - Google Patents

動圧軸受装置及びこれを備えたスピンドルモータ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動圧軸受装置及び動圧軸受装置を備えたスピンドルモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハードディスク等の記録ディスクを駆動するディスク駆動装置において使用されるスピンドルモータの軸受として、シャフトとスリーブとの間に介在させたオイル等の潤滑流体の流体圧力を利用して両者を相対回転自在に支持する動圧軸受装置が種々提案されている。
【0003】
このような動圧軸受装置を使用するスピンドルモータの一例を図6に示す。この従来の動圧軸受装置を使用するスピンドルモータは、ロータハブaと一体をなす軸部材bの外周面と、この軸部材bが回転自在に挿通されるスリーブ部材cの内周面との間に、一対のラジアル軸受部d,dが軸方向に離間して構成され、また軸部材bの一方の端部外周面から半径方向外方に突出するディスク状のスラストプレート部eの上面とスリーブ部材cに形成された段部の平坦面との間並びにスラストプレート部eの下面とスリーブ部材cの一方の開口を閉塞するスラストブッシュ部材fとの間に、一対のスラスト軸受部g,gが構成されている。
【0004】
軸部材b並びにスラストプレート部eとスリーブ部材c並びにスラストブッシュ部材fとの間には、一連の微小間隙が形成され、これら微小間隙中には、潤滑流体としてオイルが途切れることなく連続して保持されており、軸部材bの外周面とスリーブ部材cの内周面との間に形成される間隙の上端部開口(スリーブ部材cの他方の開口)に設けられたテーパシール部h内でのみ空気に露出している(このようなオイル保持構造を、以下「フルフィル構造」と記す)。
【0005】
また、ラジアル軸受部d,d及びスラスト軸受部g,gには、一対のスパイラル溝を連結してなるヘリングボーン溝d1,d1及びg1,g1が形成されており、軸部材bの回転に応じて、スパイラル溝の連結部が位置する軸受部の中央部で最大動圧を発生させ、軸部材bに作用する荷重を支持している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようなスピンドルモータでは、動圧軸受面を形成するスリーブ部材cや軸部材b及びスラストプレート部e並びにスラストブッシュ部材fの表面を精密加工する表面加工工程を行った後、切削やコイニング等によって所定位置にヘリングボーン溝d1,d2及びg1,g2を設けるための溝加工を行い、更に溝加工時に発生するバリ等の部材表面のあれを修正するために仕上げ加工し、前記各加工で発生した切削粉を洗浄し除去する洗浄工程を経て加工が完了する。
【0007】
従って、上記したような多くの工程を要する動圧軸受装置では、製造コストを低減できない懸念がある。
【0008】
また、フルフィル構造の動圧軸受装置では、軸部材bが回転を始めると、オイルは動圧発生溝d1,d1及びg1,g1によるポンピングで、各ラジアル軸受部d,d及びスラスト軸受部g,gの中心部側に引き込まれ、軸受の中心部で流体動圧が極大となる反面、軸受の端部側ではオイルの内圧が低下する。すなわち、軸部材bの外周面とスリーブ部材cの内周面との間の領域のうち一対のラジアル軸受部d,d間に保持されるオイル、及びスラストプレート部eの周囲の領域のうちスラスト軸受部g,g間に位置するスラストプレート部eの外周部付近に保持されるオイルは、動圧発生溝d1,d1及びg1,g1のポンピングに応じてオイルの内圧が低下し、やがて大気圧以下まで低下して負圧となる。
【0009】
オイル内に負圧が生じると、例えばオイルの充填作業時等にオイル内に溶け込んだ空気が気泡化して現れ、やがて温度上昇等によって気泡が体積膨張し、オイルを軸受外部へと漏出させるといったスピンドルモータの耐久性や信頼性に影響する問題、あるいは動圧発生溝が気泡と接触することによる振動の発生や非繰り返し性振れ成分(NRRO;Non Repeatable Run-Out)の悪化といったスピンドルモータの回転精度に影響する問題が発生する。
【0010】
加えて、加工誤差等に起因してスリーブ部材の内周面と軸部材の外周面との間に形成される微小間隙の半径方向の隙間寸法が、軸方向下方側が上方側よりも広く形成された場合、オイルに軸方向下方側へと向かうオイルの流動が誘起され、スラストプレート部の下面とスラストブッシュ部材との間に保持されるオイルの内圧が必要以上に高まり、軸部材が所定量以上浮上する過浮上が発生する。
【0011】
軸部材に過浮上が発生すると、スラストプレート部とスリーブ部材との接触による摩耗が発生し、軸受の耐久性並びに信頼性を損なう原因となる。加えて、ハードディスク駆動用のスピンドルモータの場合、ハードディスクの高容量化にともない、ハードディスクの記録面と磁気ヘッドとが極めて近接配置されていることから、ハードディスクと磁気ヘッドとの接触による破壊が発生するおそれがある。
【0012】
本発明は、低コスト化が可能で、負圧に起因する気泡及び軸部材の過浮上の発生を防止することができる動圧軸受装置及びこの動圧軸受装置を用いたスピンドルモータを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、軸部と該軸部から半径方向外方に突出するスラストプレート部とを有する軸部材と、前記軸部に対し微小間隙を有して対向配置された、多孔質焼結体からなるスリーブ部材と、このスリーブ部材を内周面に支持するスリーブ支持部材と、前記スラストプレート部下面に対し微小間隙を有して対向配置され、前記スリーブ支持部材の下側開口を封止するスラストブッシュ部材と、前記軸部を装通させる孔を有し、前記スリーブ支持部材の上側開口に嵌装されるキャップ部材と、前記微小間隙全体に充填された潤滑流体とを備え、
前記軸部及びこの軸部と対向する前記スリーブ部材の内周面の少なくとも一方に、ラジアル荷重を支持するためのラジアル動圧発生溝を設け、また前記スラストプレート部の下側面及びこの下側面と対向する前記スラストブッシュ部材の内側面の少なくとも一方と、前記スリーブ部材の下端面及びこの下端面と対向する前記スラストプレート部の上側面の少なくとも一方とにスラスト荷重を支持するためのスラスト動圧発生溝を設け、前記スリーブ部材と前記軸部材とを相対的に回転可能に支持する動圧軸受装置であって、
前記スリーブ部材の外周面には、その上端面と下端面とを連通する縦溝が、また前記スリーブ部材の上端面には、前記縦溝とスリーブ部材の内周面とを連通する横溝が形成されていることを特徴とする動圧軸受装置が提供される。
【0014】
この縦溝及び横溝に微小間隙に充填される潤滑流体に連続して潤滑流体を保持し、また微小間隙に充填される潤滑流体と縦溝及び横溝に保持される潤滑流体とを循環させることで、潤滑流体の内圧が調整され、負圧の発生や軸部材の過浮上の発生が防止される。
【0015】
更に、横溝のスリーブ部材の内周面側の開口に隣接してテーパシール部を設け、このテーパシール部内にのみ潤滑流体の液界面が形成されるようにしておくことで、潤滑流体の充填時等に混入した気泡を外気に円滑に解放することが可能になる。
【0016】
ここで、振れ精度を高く維持するためにはラジアル動圧発生溝は2つ以上設けるのが望ましい。また、潤滑流体の循環を一層円滑にできると共に、潤滑流体における負圧の発生を防止するためには、軸部又はスリーブ部材に形成された軸方向最も上側のラジアル動圧発生溝を、軸方向下方に潤滑流体を流動させる、軸方向に不平衡に形成されたヘリングボーン状溝とするのが望ましい。このように軸方向に不平衡なラジアル動圧発生溝により潤滑流体に生じる軸方向下方への流動によって、縦溝及び横溝を通じての潤滑流体の循環が発生する。
【0017】
また本発明によれば、前記記載の動圧軸受装置を備えたことを特徴とするスピンドルモータが提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者等は前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、まずスリーブ部材を多孔質焼結体で成形すれば、成形用型に動圧発生溝パターンを予め設けることによりスリーブ部材の成形と同時に動圧発生溝も形成でき、従来は必要であった切削工程や洗浄工程を省くことができ低コスト化が図れることを見出した。また、テーパシール部付近の潤滑流体と、スラストプレート部付近の潤滑流体とを循環させるようにすれば、潤滑流体中に混入している気泡を潤滑流体と共に循環させてテーパシール部の液界面から外部に排出することができ、潤滑流体に混入している気泡による悪影響を防止できるを見出した。またこのように潤滑流体を循環させると、潤滑流体の内圧が必要以上に高くなることが回避され、軸部材の過浮上も合わせて防止できることを見出した。
【0019】
すなわち、本発明の動圧軸受装置の大きな特徴の一つは、多孔質焼結体を用いてスリーブ部材を形成したことにある。またもう一つの大きな特徴は、スリーブ部材の外周面の軸方向に縦溝を形成すると共に、スリーブ部材の上端面にこの縦溝とスリーブ部材の内周面とを連通する横溝を形成して、潤滑流体の循環路を形成したことにある。
【0020】
以下、図に基づいて本発明の動圧軸受装置について詳述する。図1は本発明に係る動圧軸受装置の一例を示す縦断面図である。図1の動圧軸受装置では、スリーブ支持部材13の中心に軸方向に貫通孔131が形成され、スリーブ支持部材13の下端には貫通孔131の内径よりも大径に形成された嵌合溝部132が形成されている。そしてこの貫通孔131の内周面には、軸方向長さがスリーブ支持部材13よりも短い多孔質焼結体からなる中空円筒状のスリーブ部材12が固着されている。このスリーブ部材12には、2つのラジアル動圧発生溝121a,121bが軸方向に離隔して内周面に形成されると共に、スラスト動圧発生溝121cが下端面に形成されている。また、スリーブ部材12の外周面には軸方向に上端面から下端面まで縦溝123a,123bが形成されていると共に、その上端面にはこの縦溝123a,123bとスリーブ部材12の内周面とを連通するように横溝124a,124bが形成されている。
【0021】
図2にスリーブ部材の平面図を示す。図2のスリーブ部材では外周面に軸Aに対象に2本の縦溝123a,123bが形成され、その上端面にはこれらの縦溝123a,123bとスリーブ部材12の内周面とを連通する2本の横溝124a,124bが形成されている。縦溝及び横溝の形状や本数については、潤滑流体が円滑に流動できるものであれば特に限定はない。また、これらの溝の形成位置としては軸心Aを中心として周方向等角度に形成するのが好ましい。
【0022】
図3に、スリーブ部材上端面に形成する横溝の他の形態を示す。図3のスリーブ部材では上端面に、軸Aを中心とする同心円状の断面V字状の周回溝125が形成され、この周回溝125によって外側と内側とに断面台形状の周回突部126,127が形成されている。そして内側の周回突部127は外側の周回突部126よりも高く形成されている。このため、内側の周回突部127にのみ横溝124を形成し、縦溝123とスリーブ部材12の内周面とを潤滑流体が流動できるようにしている。
【0023】
スリーブ部材は多孔質焼結体からなり、その材質については特に限定はなく、各種金属粉末や金属化合物粉末、非金属粉末を原料として成形、焼結したものが使用できる。原料としてはFe−CuやCu−Sn、Cu−Sn−Pb、Fe−Cなどが挙げられる。
【0024】
一方、図1において軸部材11は、軸部111と、軸部111の下端に形成されたスラストプレート部112とからなる。そして、スラストプレート部112の上面がスリーブ部材12の下端面に当接するまで、スリーブ部材12の中空部に軸部材11の軸部111が一定の間隙を介して挿入され、スリーブ支持部材13に形成された貫通孔131の下側開口を封止するように、スラスト動圧発生溝141が上面に形成されたスラストブッシュ部材14が嵌合溝部132に嵌装されている。他方、貫通孔131の上側開口には、中央に孔151が穿設されたキャップ部材15が、その孔151に軸部111を挿通させた状態で、その上面とスリーブ支持部材13の上端面とが同一面となるように嵌装されている。
【0025】
そして、スリーブ支持部材13とスラストブッシュ部材14、キャップ部材15とで囲まれた貫通孔131の内部は潤滑流体(不図示)で充填される。充填された潤滑流体は、キャップ部材15と軸部テーパ面117とで構成されるテーパシール部Sで外気圧とバランスし、装置外に漏出しないようにシールされている。
【0026】
このような構造の動圧軸受装置において、軸部材11が回転を始めると、スリーブ部材12の内周面に形成されたヘリングボーン型の2つのラジアル動圧発生溝121a,121bで発生する流体動圧により軸部材11のラジアル荷重が支持され、他方スリーブ部材12の下端面及びスラストブッシュ部材14の表面に形成されたスパイラル型のスラスト動圧発生溝121c、141で発生する流体動圧により軸部材11のスラスト荷重が支持される。
【0027】
このとき各動圧発生溝の端部側では潤滑流体の内圧が低下するが、潤滑流体における負圧の発生を防止するためには、ラジアル動圧発生溝121aを軸方向下方に潤滑流体を流動させる、軸方向に不平衡なヘリングボーン状溝とするのが好ましい。図4に、軸方向に不平衡なヘリングボーン状溝121aが内周面に形成されたスリーブ部材12の一例を示す。この場合、ラジアル動圧発生溝121aを構成する一対のスパイラル溝部121a1、121a2のうち、軸方向上側に位置する方のスパイラル溝部121a1の軸方向寸法を、軸方向下側に位置する方のスパイラル溝部121a2の軸方向寸法よりも幾分大きく設定することで、軸方向上側のスパイラル溝部121a1による潤滑流体に対するポンピング力が軸方向下側のスパイラル溝部121a2のポンピング力を上回り、潤滑流体は軸方向下側へと流動する。なお、溝の上下の長さ比や本数など具体的条件は、用いる潤滑流体の種類や微小間隙の幅などを考慮して適宜決定すればよい。
【0028】
このように、軸方向に不平衡なラジアル動圧発生溝121aにより潤滑流体を軸方向下方へと流動させることで、軸方向下方へと押し込まれた潤滑流体は、縦溝123a、123bを通じて、スリーブ部材12の上端部側、すなわち、スリーブ部材12の内周面と軸部111との間に形成される微小間隙のうち、ラジアル動圧発生溝121aによる軸受部とテーパシール部Sとの間へと環流され、またラジアル動圧発生溝121aによるポンピング力で軸方向下方へと押し込まれて潤滑流体の循環が生じる。
【0029】
スリーブ部材12に形成された縦溝123a,123bと横溝124a,124bとによって潤滑流体の循環路が形成されているので、潤滑流体全体の圧力バランスが調整され、潤滑流体の内圧は負圧にまで低下することはない。また、たとえ加工誤差などに起因して負圧が発生し、潤滑流体中に気泡が発生したとしても、横溝124a、124bのスリーブ部材12の内周面側開口部に隣接してテーパシール部Sが位置しており、テーパシール部S内における潤滑流体の内圧は外気圧と実質上同一に保たれている、すなわち、循環路を通じて流動する潤滑流体の内圧よりも低い圧力に保たれていることから、潤滑流体と共に循環路を流動しテーパシール部Sから外気に円滑に解放されるので、気泡による悪影響は完全に防止される。
【0030】
なお、縦溝123a、123bと横溝124a、124bとを通じて潤滑流体が循環し、全体の圧力バランスが調整されるので、軸部材11の過浮上の発生も同時に防止される。
【0031】
図1において潤滑流体の循環路を説明する。潤滑流体は主として次のような循環経路を流動する。まずスラストプレート部112の外周部付近から、縦溝123a,123bを通ってスリーブ部材12の上端面に至り、そして横溝124a,124bを通ってスリーブ部材12の内周面に至る。ここで、ラジアル動圧発生溝121aの作用により潤滑流体は軸方向下方に引き込まれる。一方、テーパシール部S付近はラジアル動圧発生溝121aからある程度離れているので軸受方向への流動圧力が比較的低く、テーパシール部Sの下方に流動してきた潤滑流体中の気泡は、軸受方向に流動せずに界面から外部に抜ける。そして潤滑流体は、スリーブ部材12と軸部111との微小間隙を、動圧発生溝121a,121b,121cにより途中動圧を発生させながら流下し、スラストプレート部112の外周部に戻る。
【0032】
次に、本発明に係るスピンドルモータについて説明する。本発明のスピンドルモータの大きな特徴は前記説明した動圧軸受装置を搭載した点にある。以下、図5に基づいて本発明のモータを詳述する。
【0033】
図5はフルフィル構造の動圧軸受装置を搭載したHDDスピンドルモータの縦断面図である。ブラケット2は中心部に設けられた基部21と、この基部21の外周方向に設けられた周壁22と、この周壁22からさらに外方向に延設された鍔部23とからなり、これらが一体且つ同軸的に形成されている。
【0034】
基部21の中心部には環状突部24が形成され、そこに図1に示した動圧軸受装置1が嵌合固定されている。そして動圧軸受装置1の軸部材11の上端は、略円筒状のロータハブ3の上面中央部に形成された孔部31に嵌合固定されている。ロータハブ3の内周面には、周方向に多極着磁されたロータマグネット32が全周にわたり配設されている。またロータマグネット32の半径方向内方には、ロータマグネット32に対向してステータ4がブラケット2の基部22に形成された環状突部24に配設されている。ステータ4と環状突部24との固定は、圧入による嵌合固定の他、接着剤による固定でもよい。
【0035】
ロータハブ3の外周下側には鍔部33が形成され、ここにハードディスク(不図示)が装着される。具体的にはロータハブ3の外周部34により位置決めされて、鍔部33の上に1又は複数のハードディスクが装着された後、クランプ部材(不図示)などにより孔部35にネジ止めされて、ハードディスクはロータハブ3に対して保持固定される。
【0036】
【発明の効果】
本発明の動圧軸受装置ではスリーブ部材を多孔質焼結体で成形したので、成形用型に動圧発生溝パターンを予め設けることができ、成形と同時に動圧発生溝も形成できる。このため従来は必要であった切削工程や洗浄工程を省くことができ低コスト化が図れる。また、本発明の動圧軸受装置ではスリーブ部材の外周面にその上端面と下端面とを連通する縦溝を形成すると共に、スリーブ部材の上端面にこの縦溝とスリーブ部材の内周面とを連通する横溝を形成して、潤滑流体の循環路を形成したので、潤滑流体の内圧が負圧にまで低下することはない。また、たとえ加工誤差などに起因して負圧が発生し、潤滑流体中に気泡が発生したとしても、潤滑流体と共に気泡は循環路を流動しテーパシール部から外気に解放されるので、気泡による悪影響は完全に防止される。加えて、このように潤滑流体を循環させることにより、スラストプレート部下面とスラストブッシュ部材上面との間に保持される潤滑流体の内圧が必要以上に高くなることが回避され、軸部材の過浮上も合わせて防止できる。
【0037】
また、循環路のスリーブ部材内周面側の開口に隣接してテーパシール部を配置し、このテーパシール部内にのみ潤滑流体の液界面が形成されるようにすることで、潤滑流体の充填時等に微小間隙内に残留した気泡をより円滑に外気へと解放することができる。
【0038】
更に、ラジアル動圧発生溝を2つ以上設けると振れ精度を高く維持することができる。更に、軸方向最も上側のラジアル動圧発生溝を、軸方向下方に潤滑流体を流動させる、軸方向に不平衡に形成されたヘリングボーン状溝とすることで、潤滑流体に循環を生じさせ、潤滑流体における負圧の発生や気泡の排除並びに軸部材の過浮上の発生を防止できる。
【0039】
また、本発明のスピンドルモータでは前記動圧軸受装置を用いるので、優れた耐久性と高い信頼性が得られ、また振動が発生せずNRROが悪化しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の動圧軸受装置の一例を示す側断面図である。
【図2】 本発明に用いるスリーブ部材の一例を示す上面図である。
【図3】 本発明に用いるスリーブ部材の他の例を示す斜視図である。
【図4】 ラジアル動圧発生溝の一例を示すスリーブ部材の側断面図である。
【図5】 本発明のスピンドルモータの一例を示す側断面図である。
【図6】 従来のスピンドルモータを示す側断面図である。
【符号の説明】
1 動圧軸受装置
2 ブラケット
3 ロータハブ
4 ステータ
11 軸部材
12 スリーブ部材
13 スリーブ支持部材
14 スラストブッシュ部材
15 キャップ部材
111 軸部
112 スラストプレート部
121a,121b ラジアル動圧発生溝
121c,141 スラスト動圧発生溝
123a,123b 縦溝
124a,124b 横溝

Claims (3)

  1. 軸部と該軸部から半径方向外方に突出するスラストプレート部とを有する軸部材と、前記軸部に対し微小間隙を有して対向配置された、多孔質焼結体からなるスリーブ部材と、このスリーブ部材を内周面に支持するスリーブ支持部材と、前記スラストプレート部下面に対し微小間隙を有して対向配置され、前記スリーブ支持部材の下側開口を封止するスラストブッシュ部材と、前記軸部を装通させる孔を有し、前記スリーブ支持部材の上側開口に嵌装されるキャップ部材と、前記微小間隙全体に充填された潤滑流体とを備え、
    前記軸部及びこの軸部と対向する前記スリーブ部材の内周面の少なくとも一方に、ラジアル荷重を支持するためのラジアル動圧発生溝を設け、また前記スラストプレート部の下側面及びこの下側面と対向する前記スラストブッシュ部材の内側面の少なくとも一方と、前記スリーブ部材の下端面及びこの下端面と対向する前記スラストプレート部の上側面の少なくとも一方とにスラスト荷重を支持するためのスラスト動圧発生溝を設け、前記スリーブ部材と前記軸部材とを相対的に回転可能に支持する動圧軸受装置であって、
    前記スリーブ部材の上端面は前記キャップ部材の下面に当接し、前記キャップ部材の内周面と前記軸部との間にはテーパシール部が設けられ、このテーパシール部内にのみ潤滑流体の液界面が形成され、
    前記スリーブ部材の外周面にはその上端面と下端面とを連通する縦溝が、また前記スリーブ部材の上端面には前記縦溝とスリーブ部材の内周面とを連通する横溝が形成され
    前記縦溝と前記横溝には、前記微小間隙に充填された潤滑流体に連続し且つ循環可能な潤滑流体が保持されていることを特徴とする動圧軸受装置。
  2. 前記ラジアル動圧発生溝は2つ以上設けられていると共に、該2つ以上設けられたラジアル動圧発生溝のうち軸方向最も上側のラジアル動圧発生溝が、軸方向下方に潤滑流体を流動させる、軸方向に不平衡に形成されたヘリングボーン状溝である請求項1記載の動圧軸受装置。
  3. 請求項1又は2記載の動圧軸受装置を備えたことを特徴とするスピンドルモータ。
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