JP3554182B2 - 温度測定装置および基板熱処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱放射を基に半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板(以下「基板」という。)の温度を測定する温度測定装置および基板の温度を測定しつつ当該基板に熱処理を施す基板熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からランプアニール装置等の基板熱処理装置においては基板の温度制御の精度が重要な問題であり、そのため、最近では非接触方式の温度測定装置を設け、それによって基板の温度の測定を行っている。すなわち、特開平6−341905号公報や特開平8−255800号公報の技術においては基板を反射板の近くに対向して保持しつつ加熱し、基板からの熱放射をそれらの間で多重反射させ、その多重反射の熱放射を基板に向けて設けた石英ロッド等よりなるプローブから放射温度計(パイロメータ)等に供給して基板の温度を算出している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来技術では反射板からの熱放射を影響が少ないとして無視し、多重反射の熱放射の全てが基板の熱放射に由来するものとして基板の温度を算出しているが、実際には反射板もその温度は有限値をとり、それに応じた熱放射が行われている。そのため上記従来技術では、基板の温度測定の精度が低かった。そして、それに基づいて熱制御を行っていたため、基板を加熱し過ぎるといったことが生じ、それにより熱効率が悪くなり、消費電力も余分に必要となっていた。
【0004】
この発明は、従来技術における上述の問題の克服を意図しており、温度測定精度の高い温度測定装置および、それを用いることにより熱効率がよく、消費電力の少ない基板熱処理装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の装置は、基板の温度を測定する温度測定装置において、基板に対向するとともに基板に熱を供給する加熱板の温度を測定する加熱板温度測定手段と、加熱板に設けられるとともに、基板と加熱板との間の熱放射を受けて、その放射強度を測定する放射強度測定手段と、加熱板の温度と放射強度とに基づいて基板の温度を算出する基板温度算出手段と、を備え、前記放射強度測定手段は、個別に前記熱放射の放射強度を測定する第1の放射強度測定手段および第2の放射強度測定手段を備え、前記加熱板における前記第1の放射強度測定手段および第2の放射強度測定手段の周囲の部分の反射率が互いに異なることを特徴とする
【0007】
また、この発明の請求項に記載の装置は、請求項1の温度測定装置を温度測定部として備え、さらに、加熱板に対して基板と反対側の位置において基板に対向するとともに基板を加熱する加熱ランプを備える。
【0008】
また、この発明の請求項に記載の装置は、請求項の基板熱処理装置であって、さらに、基板温度算出手段により算出された基板の温度に基づいて、加熱ランプおよび加熱板へ供給される加熱用電力を制御する制御手段を備える。
【0009】
また、この発明の請求項に記載の装置は、請求項の基板熱処理装置において、加熱ランプおよび加熱板が複数の加熱領域に分割されているとともに、当該複数の加熱領域のそれぞれに対して加熱板温度測定手段および放射強度測定手段が設けられているものであって、複数の加熱領域ごとに算出された基板の温度をもとに、複数の加熱領域ごとに加熱ランプおよび加熱板へ供給される加熱用電力を制御することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
〔1.発明の原理〕
各実施の形態の説明の前に、以下においてこの発明に使用する温度測定方法について説明していく。
【0012】
一般に、黒体から放射される電磁波の放射発散度の分光密度はプランクの放射公式で与えられるが、放射温度計(パイロメータ)により黒体を測定する場合には、そのプランクの放射公式を用いて、放射温度計により測定される特定の波長領域における黒体の温度Tと測定される熱放射の放射強度Lb(T)との関係は放射温度計の光学系等によって決まる測定器定数Aを用いて次式で近似される。
【0013】
【数1】
Figure 0003554182
【0014】
ここで放射指数nは一般に波長λ、プランクの第2定数C2を用いて次式で近似される。
【0015】
【数2】
Figure 0003554182
【0016】
なお、放射指数nおよび測定器定数Aは放射温度計に固有の値として予め求められており、さらに、放射温度計は黒体炉を用いて予め温度Tと黒体炉の放射強度Lb(T)の関係が校正されている。
【0017】
また、数1の式を温度Tについて解くと次式となる。
【0018】
【数3】
Figure 0003554182
【0019】
さらに、一般に、温度Tの灰色体の放射強度L(T)と黒体の放射強度Lb(T)の関係は次式で表される。
【0020】
【数4】
Figure 0003554182
【0021】
ここで、εは灰色体の放射率であり、一般にε<1である。
【0022】
以下、このような放射温度計を用いて加熱板270に近接して対向した状態において加熱された基板Wの温度を測定する場合について考える。図1は基板Wと加熱板270との間の多重反射を説明するための図である。図示のように、基板Wからの熱放射は、熱放射のみならず反射も行う加熱板270の上面により反射された後、再度、基板Wに至り、反射される。以下同様にして基板Wと加熱板270とにより反射されて、それらの間を熱放射が往復する多重反射が発生する。
【0023】
基板温度TWの基板Wから放射された熱放射が加熱板270(その上面の放射率εr、反射率ρr)に至り再び基板Wに戻り、さらに基板W(放射率εW、反射率ρW)により反射された後に加熱板270上面に入射する際の放射強度は元の熱放射の放射強度L(TW)に対してρrρW倍となる。同様にして、この熱放射が基板Wと加熱板270により多重反射した後に加熱板270表面に入射する(すなわち、放射温度計に接続されたプローブに入射する)最終的な放射強度は初項L(TW)、公比ρrρWの無限等比級数として表わされ、さらに、数4の式を用いて放射強度L(TW)の代わりに基板Wの放射強度Lb(TW)で表わすと次式となる。
【0024】
【数5】
Figure 0003554182
【0025】
また、この発明の装置では後述するように加熱板270がその下方に設けられたヒータ260により加熱されて、その温度Trも高温となるため、その加熱板270からも熱放射(放射強度L(Tr))が発生する。そして、上記と同様に加熱板270と基板Wとの間で多重反射を起こすが、この場合にも基板Wで反射するとその放射強度はρWL(Tr)となり、その熱放射がその後、加熱板270および基板Wにより1度ずつ反射された後に加熱板270に入射する際の放射強度は、そのρrρW倍となる。したがって、この熱放射が基板Wと加熱板270により多重反射した後、最終的にプローブに入射する際の放射強度は初項ρWL(Tr)、公比ρrρWの無限等比級数として表わされ、数4の式を用いて放射強度L(Tr)の代わりに黒体の放射強度Lb(Tr)を用いると次式となる。
【0026】
【数6】
Figure 0003554182
【0027】
ここで、基板Wおよび加熱板270における熱放射の透過がないとする次式を用いた。
【0028】
【数7】
Figure 0003554182
【0029】
【数8】
Figure 0003554182
【0030】
以上より、最終的に加熱板270上面における多重反射の放射強度Iは数5および数6の式の和として次式となる。
【0031】
【数9】
Figure 0003554182
【0032】
また、これを基板Wの放射強度Lb(TW)について解くと次式となる。
【0033】
【数10】
Figure 0003554182
【0034】
ここで係数αは次式で表わされる。
【0035】
【数11】
Figure 0003554182
【0036】
そして、この発明では放射温度計で測定した多重反射の放射強度I、加熱板270の温度Trおよび予め数1の式により関数形が与えられている黒体の放射強度Lbを数10の式に用いて基板Wの基板温度TWを求めるのである。
【0037】
以下、この温度測定方法を第1および第2の実施の形態のそれぞれに即して説明する。
【0038】
<<1−1.第1の実施の形態の基板温度測定方法>>
以下、後述する第1の実施の形態のランプアニール装置1(「基板熱処理装置」に相当)における温度測定部50(「温度測定装置」に相当)による基板温度TWの測定方法について説明する。
【0039】
上記から数10の式における未知数は基板温度TWおよび係数αであるが、数11の式において加熱板270の反射率ρrはその温度Trにのみ依存するため後述のように予め求めておくことができ、したがって、数10の式の未知数は基板温度TWおよび放射率εWの2つとなる。
【0040】
そこで第1の実施の形態であるランプアニール装置1は後に詳述するように温度測定部50に多重反射の放射強度を測定するための第1および第2放射温度計532,533と加熱板270の温度を測定するための加熱板放射温度計530を備え、さらに、第1および第2放射温度計532,533に熱放射を導く第1および第2プローブ522,523の周囲の部分の加熱板270上面の反射率ρr1,ρr2を異なるものとしている(図3参照)。それにより後述のように第1および第2放射温度計532,533のそれぞれにより測定される多重反射の放射強度I1,I2のそれぞれについて数10の式を立て、それらを連立させて基板温度TWを求めている。
【0041】
その説明の前に、基板Wの加熱処理に先だって行われる加熱板270の反射率ρr1,ρr2の測定方法について説明する。
【0042】
<1−1−1.加熱板の反射率ρr1,ρr2の測定>
第1の実施の形態の装置は、上記構成以外にさらに、図3に示すように基板Wに近接するとともに加熱板270から離隔した位置に基板Wから直接の(上述の多重反射が生じていない)熱放射を測定するための基準放射温度計531を備えている。そして、後に詳述するが基板Wの加熱処理の前に基板Wの代わりに予めその放射率εrefが求められている基準黒体板を加熱しつつ、基準放射温度計531によりその基準黒体板からの直接の熱放射の放射強度Irefと、第1および第2放射温度計532,533により加熱板270表面において基準黒体板と加熱板270との間の多重反射の放射強度I1,I2と、加熱板放射温度計530により加熱板270の温度Trとをそれぞれ測定する。これらのうち、基準黒体板の放射強度Irefはその温度Trefを用いて次式で表わされる。
【0043】
【数12】
Figure 0003554182
【0044】
また、多重反射の放射強度I1,I2は基準黒体板の温度Trefおよび加熱板270の温度Trとの間に次の2式の関係を有する。
【0045】
【数13】
Figure 0003554182
【0046】
【数14】
Figure 0003554182
【0047】
ここで係数α1,α2は加熱板270表面における第1および第2放射温度計532,533の熱放射の測定位置(すなわち、第1および第2プローブ522,523の周囲)の加熱板270の反射率ρr1,ρr2を用いてそれぞれ次式で表わされる。
【0048】
【数15】
Figure 0003554182
【0049】
【数16】
Figure 0003554182
【0050】
また、数12の式を用いて数13、数14の式の黒体の放射強度Lb(Tref)を消去すると次の2式が得られる。
【0051】
【数17】
Figure 0003554182
【0052】
【数18】
Figure 0003554182
【0053】
この2式に測定された基準黒体板の放射強度Irefおよび多重反射の放射強度I1,I2ならびに加熱板270の温度Tr、さらに予め求められている基準黒体板の放射率εrefおよび数1の式のように予めその温度関数が求められている黒体の放射強度Lb(T)を用いると係数α1,α2が求まる。なお、これら係数α1,α2は加熱板270の温度Trを常温から加熱処理時の温度まで変化させて、予め求めておく。
【0054】
また、数15、数16の式を加熱板270の反射率ρr1,ρr2について解くと次式となる。
【0055】
【数19】
Figure 0003554182
【0056】
【数20】
Figure 0003554182
【0057】
これらの式に、上記のようにして求められた係数α1,α2を用いることによって加熱板270の反射率ρr1,ρr2が予め求まるのである。
【0058】
<1−1−2.加熱処理時の基板温度TWの測定>
つぎに、第1の実施の形態における実際の基板Wの加熱処理時の温度測定部50による基板温度TWの測定について説明する。
【0059】
基板Wの加熱処理では第1および第2放射温度計532、533により加熱板270上面において基板Wと加熱板270との間の多重反射の放射強度I1,I2、加熱板放射温度計530により加熱板270の温度Trがそれぞれ測定される。なお、その際には後述するように基準放射温度計531に接続された基準プローブ521はこの装置から除去され、したがって基準基板の放射強度Irefの測定は行われない。
【0060】
まず、数10の式に多重反射の放射強度I1,I2を用いて表わすと次式となる。
【0061】
【数21】
Figure 0003554182
【0062】
【数22】
Figure 0003554182
【0063】
ここで係数α1,α2は数11の式より次式で表わされる。
【0064】
【数23】
Figure 0003554182
【0065】
【数24】
Figure 0003554182
【0066】
加熱処理時においては多重反射の放射強度I1,I2および加熱板270の温度Trは測定され、加熱板270の反射率ρr1,ρr2および黒体の放射強度Lb(T)は予め求められているので、これらの式において未知数は基板温度TWおよび基板Wの放射率εWである。
【0067】
そこで、数23、数24を数21、数22の式の係数α1,α2に代入して2式を辺々引き、基板Wの放射強度Lb(TW)を消去すると基板Wの放射率εWは次式のように求まる。
【0068】
【数25】
Figure 0003554182
【0069】
ここで係数ΔJ1,ΔJ2は次式で表わされる。
【0070】
【数26】
Figure 0003554182
【0071】
【数27】
Figure 0003554182
【0072】
これらの式に前述の既知の値を用いて基板Wの放射率εWを求め、さらにそれを数21または数22の式に戻して基板Wの放射強度Lb(TW)を求め、数3の式を基板温度TWについて用いると基板温度TWが求まるのである。
【0073】
<<1−2.第2の実施の形態の基板温度測定方法>>
つぎに、後述する第2の実施の形態のランプアニール装置2における温度測定部50による基板温度TWの測定方法について説明する。
【0074】
前述のように数10の式における未知数は基板温度TWおよび係数αであるが、第2の実施の形態ではこの係数αを予め見積もられた定数係数αfで近似する。これにより、未知数は基板温度TWのみとなるので多重反射の放射強度Iと加熱板270の温度Trのみの測定で基板温度TWの近似値である近似基板温度TWが求まるため、第2の実施の形態の装置では温度測定部50に加熱板270の温度Trを測定するための加熱板放射温度計530のほかに多重反射の放射強度Iを測定するための放射温度計535を後述する1つの加熱ゾーンにつき1つのみ備えるものとなっている。
【0075】
以下、基板Wの加熱処理に先だって行われる定数係数αfの見積もりおよび加熱処理時の近似基板温度TWの測定方法について順に説明していく。
【0076】
<1−2−1.定数係数αfの見積もり>
上記のように第2の実施の形態では定数係数αfを予め見積もっているが、そのために加熱処理時の基板温度の近似のために適当と考えられる所定温度における加熱板270の定数反射率ρrfを測定している。すなわち、第2の実施の形態の装置でも第1の実施の形態と同様に、基板Wからの直接の熱放射の放射強度を測定するための、着脱自在の基準プローブ521とそれに接続された基準放射温度計531とを備えている。そして、基板Wの加熱処理の前にその放射率εrefが求められている基準黒体板を加熱しつつ、基準放射温度計531により基準黒体板からの直接の熱放射の放射強度Iref、放射温度計535により加熱板270表面において基準黒体板と加熱板270との間の多重反射の放射強度I、加熱板放射温度計530により加熱板270の温度Trをそれぞれ測定する。
【0077】
ところで、数11の式において係数αに対して基準黒体板の係数αrefを用い、加熱板270の反射率ρrに対して所定温度における加熱板270の定数反射率ρrfを用い、その定数反射率ρrfについて解くと次式となる。
【0078】
【数28】
Figure 0003554182
【0079】
ここで、基準黒体板の係数αrefは数10の式から次式で与えられる。
【0080】
【数29】
Figure 0003554182
【0081】
これら2式に、測定された基準黒体板の放射強度Iref、その温度Trefおよび黒体の放射強度Lb(T)ならびに既知の基準黒体板の放射率εrefを用いて加熱板270の定数反射率ρrfが求まる。
【0082】
さらに、数11の式より加熱板270の定数反射率ρrfを用いた場合の定数係数αfは次式で表される。
【0083】
【数30】
Figure 0003554182
【0084】
この式に定数反射率ρrfを用いれば定数係数αfが基板Wの放射率εWのみの関数となる。
【0085】
そして、この基板Wの放射率εWを適当な定数放射率εWfで近似すればよい精度で基板温度TWの近似値である近似基板温度TWを求めることができる。
【0086】
<1−2−2.加熱処理時の基板温度TWの測定>
つぎに、第2の実施の形態における加熱処理時の温度測定部50による近似基板温度TWの測定方法について説明する。
【0087】
第2の実施の形態では前述のように多重反射の放射強度Iと加熱板270の温度Trのみを測定し、それらの測定値を用いて近似基板温度TWを算出している。
【0088】
すなわち、数30の式において基板Wの放射率εWとして妥当な数値を用い、既に求められていた加熱板270の定数反射率ρrfを用いることによって定数係数αfが求まる。そして、数10の式において係数αを予め求められていた定数係数αfで近似すると次式となる。
【0089】
【数31】
Figure 0003554182
【0090】
この式より基板Wの放射強度Lb(TW)が求まるので、予め求められている黒体の放射強度Lb(T)を用いて近似基板温度TWが求まるのである。
【0091】
<1−2−3.近似の有効性>
以下に、上記の近似の有効性について基板処理温度より加熱板温度を低く設定する場合と、加熱板温度を基板処理温度に設定する場合とに分けて説明する。
【0092】
i)加熱板温度を基板処理温度より低く設定する場合
数10および数31の式から多重反射の放射強度Iを消去すると次式となる。
【0093】
【数32】
Figure 0003554182
【0094】
ところで、ウィーンの近似式は次式で与えられる。
【0095】
【数33】
Figure 0003554182
【0096】
ここで、Tは放射体の温度、λは熱放射の波長、C1,C2はプランクの第1および第2定数である。この式を数32の式の各黒体の放射強度Lb(T)に用いて整理すると次式となる。
【0097】
【数34】
Figure 0003554182
【0098】
図2は数34の式を用いた基板Wの様々な放射率εWに対する温度測定誤差(TW−TW)のシミュレーション結果を示した図である。この例では処理対象の基板WがSiウエハであって測定する波長λを0.95μm、加熱板270の温度Trを500℃(773K)、加熱板270をSiC製とした場合を想定している。
【0099】
図示のように、800K程度の温度における現実の基板Wが有する放射率εWの範囲は0.7〜0.8であり、この範囲にある場合には図示のように基板温度TWが773K以上の広い温度範囲に渡って温度測定誤差(TW−TW)が基板温度TWに比して小さな値となっている(例えば、1320K近傍で5K程度の誤差)。
【0100】
ところで、加熱板270のプローブ525の周囲の定数反射率ρrf=0.1、定数係数αf=1.3と近似する場合、これらの数値を数30の式に代入すると基板Wの放射率εWは0.75となり、この近似はかなり正確な温度測定結果を与えることが分かる。
【0101】
ii)加熱板温度を基板処理温度に設定する場合
長時間加熱した定常状態では近似基板温度TWと加熱板270の温度Trとが等しくなることが考えられるので、数32の式は次式となる。
【0102】
【数35】
Figure 0003554182
【0103】
この式は数31の式において上記の条件を課しても同様の結果となり、この式は係数αを含んでいないので係数αの値に無関係に成立する。すなわち測定される係数α(または定数係数αf)とは無関係となり、基板温度TW(または近似基板温度TW)は加熱板270の温度Trの測定結果そのままとなる。これは、第2の実施の形態の基板温度測定の精度の高さを物語っている。
【0104】
〔2.第1の実施の形態〕
<<2−1.機構的構成と装置配列>>
図3はこの発明の第1の実施の形態であるランプアニール装置1の縦断面図である。以下、図3を参照しつつこの装置の構成を説明していく。
【0105】
第1の実施の形態であるランプアニール装置1は主に炉体10、上部加熱部20、下部加熱部25、基板昇降部30、基板保持回転部40、温度測定部50、制御部60、ランプドライバ70、ヒータドライバ75、エア供給源80、モータドライバ90とを備えている。
【0106】
炉体10は後に詳述するが上部をリフレクター110、下部をハウジング120とする箱状の炉体であり、その側面の基板・ガス供給口110aを通じて加熱処理の際に図示しない外部搬送装置により基板Wの搬出入が行われるとともに処理ガスの供給が行われ、また、その側面のガス排出口110bを通じて加熱処理後に処理ガスが排出される。
【0107】
上部加熱部20は後に詳述するがランプ210および石英ガラス板220から成っており、そのうち、ランプ210はリフレクター110の下面に多数設けられ(図3、図5には一部にのみ参照番号を記載)、加熱処理時には点灯され、その熱放射は石英ガラス板220を透過し、基板Wに至ってそれを加熱する。
【0108】
下部加熱部25は後に詳述するがハウジング120の上面に設けられた断熱板250の上面にヒータ260が設けられ、さらにその上面に加熱板270が設けられており、加熱板270は加熱処理時には高温となり、その熱放射は上方に保持された基板Wに至って前記ランプ210とともに基板Wを加熱する。なお、ヒータ260と加熱板270を併せたものが「加熱板」に相当する。
【0109】
基板昇降部30はハウジング120の3箇所(図3には2つのみ図示)に設けられた昇降自在のリフタピン310とそれらを駆動するエアシリンダ320を備えており、基板・ガス供給口110aを通じて搬出入される基板Wをリフタピン310の先端で保持して昇降させることによって受け渡しを行う。
【0110】
基板保持回転部40は、基板Wの周縁部分を保持する保持リング410が円筒の支持脚420により支持されるとともにその支持脚420の下方にはベアリング430が設けられている。そして、ベアリング430の外周に設けられたギアに基板回転モータ440の回転軸のギア441がかみ合っており、その駆動により保持リング410がその中心において鉛直方向を軸として回転可能となっている。
【0111】
温度測定部50は後に詳述するが、基板Wからの熱放射強度等を測定し、それを基に基板温度TW等を求め、それらの信号を制御部60に送る。
【0112】
制御部60は内部にメモリとCPUを備えるとともに、図3に示すように各部に電気的に接続されており、それら各部を各種制御信号を送ることによって制御する。
【0113】
ランプドライバ70およびヒータドライバ75はそれぞれ後述する各加熱ゾーンZ1〜Z5のランプ210およびヒータ260に電気的に接続されており、制御部60からの温度制御信号を受けて、それに応じた電力をそれらのランプ210およびヒータ260に供給する。
【0114】
エア供給源80はエア供給管ASにより各エアシリンダ320に接続されており、制御部60からの制御信号を受けて、各エアシリンダ320にエアを供給してそれを駆動する。
【0115】
モータドライバ90は制御部60からの駆動信号を受けて、それに応じた電力を基板回転モータ440に供給する。
【0116】
つぎに、要部についてさらに詳細に説明していく。
【0117】
温度測定部50は、上端から入射する熱放射を伝える4本のプローブ、すなわち加熱板プローブ520、基準プローブ521、第1および第2プローブ522,523と、それらの下端にそれぞれ光ファイバを介して接続された加熱板放射温度計530、基準放射温度計531、第1および第2放射温度計532,533を備えた放射強度測定部51ならびにそれら各放射温度計に電気的に接続された演算部550(「基板温度算出手段」に相当)を備えている。さらに、演算部550はその内部にCPUとメモリを備えている。なお、加熱板プローブ520、加熱板放射温度計530、演算部550を併せたものが「加熱板温度測定手段」に、第1および第2プローブ522,523、第1および第2放射温度計532,533を併せたものが「第1および第2の放射強度測定手段」にそれぞれ相当している。
【0118】
また、図示しないが、加熱板270において第1および第2プローブ522,523のうちの一方、この装置では第1プローブ522の周囲の上面(反射面)は黒化処理がなされており、他方、この装置では第2プローブ523の周囲の上面は黒化処理がなされていない。すなわち、第1プローブ522の周囲の反射率ρr1と第2プローブ523の周囲の反射率ρr2とは互いに異なるものとなっている。これにより、第1および第2プローブ522,523に接続された第1および第2放射温度計532,533により測定される多重反射の放射強度I1,I2は互いに異なるものとなる。
【0119】
図4は図3のうち各プローブを拡大した図である。図示のように加熱板プローブ520は断熱板250、ヒータ260を貫通してその先端が加熱板270の内部に位置するように、基準プローブ521は断熱板250、ヒータ260、加熱板270を貫通してその先端が基板Wの下面近傍に位置するように、第1および第2プローブ522,523は断熱板250、ヒータ260、加熱板270を貫通してその先端が加熱板270の上面とほぼ同一の高さに位置するようにいずれもハウジング120に設けられている。このうち、各プローブは石英ロッドやサファイアロッド等を用いることができるが、この装置では加熱時には下部加熱部25は高温になるため、高温で透明度の低下を来す石英ロッドよりも高温においてもそのようなことのないサファイアロッドを用いることが望ましい。また、各放射温度計は各プローブにより導かれた基板Wからの熱放射を受けて、その放射強度信号を生成する。
【0120】
図5および図6はそれぞれランプアニール装置1の上部加熱部20および下部加熱部25の平面的な構成を示す図である。図5に示すように、上部加熱部20のランプ210は長尺のタングステンハロゲンランプであり、それらは、その長手方向を平行として複数本並設された加熱ゾーンZ1〜Z5(「複数の加熱領域」に相当)に分割されている。また、図6に示すように下部加熱部25も同様にそれぞれ高純度SiC製のヒータ260を備え、上部加熱部20の各加熱ゾーンZ1〜Z5のそれぞれに対応して下部加熱部25のヒータ260および加熱板270も加熱ゾーンZ1〜Z5に分割されている。そして各加熱ゾーンZ1〜Z5にはそれぞれ放射強度測定部51が1組ずつ設けられている(図3においては放射強度測定部51を1組のみ図示)。そして、各加熱ゾーンZ1〜Z5毎に基板温度TWを測定して、それぞれの測定結果に応じてランプ210およびヒータ260に供給する電力を調節するPIDフィードバック制御を行っている。これにより、より精密な基板Wの温度制御を行うことができる。
【0121】
また、基準プローブ521はハウジング120の各加熱ゾーンZ1〜Z5のそれぞれに設けられた取付け口120aに着脱自在となっている。この取付け口120aには基準放射温度計531につながる光ファイバが設けられており、取付け口120aに基準プローブ521が取り付けられると前述のように基準プローブ521と基準放射温度計531とがその光ファイバにより接続されるようになっている。そして、後述する加熱板270の反射率ρr1,ρr2の測定処理の際には基準プローブ521は作業者により取付け口120aに取り付けられるとともに、それ以外の基板Wの加熱処理時等には取り外される。そして、取付け口120aに取り付けられる基準プローブ521も加熱ゾーンZ1〜Z5の数(この装置では5個)だけ準備されている。
【0122】
図7は各加熱ゾーンZ1〜Z5の加熱板プローブ520、基準プローブ521、第1および第2プローブ522,523の設置位置関係を示す図である。図示のように、各加熱ゾーンZ1〜Z5の加熱板プローブ520、基準プローブ521(およびその取付け口120a)、第1および第2プローブ522,523はそれぞれ基板Wの回転中心を中心とした円周上に位置するように設けられている。そして、これにより、後述する加熱板270の反射率ρr1,ρr2の測定および基板Wの加熱処理時の各放射強度の測定において制御部60が基板Wの回転と同じ速度でそれぞれの測定タイミングをずらすことによって基板Wの同じ位置に対してそれぞれ放射強度を捉えることができるようになっている。すなわち、基板W上の測定対象位置を共通にしている。そのため、より精度の高い温度測定を行うことができる。
【0123】
<<2−2.処理手順>>
第1の実施の形態であるランプアニール装置1は前述の発明の原理の第1の実施の形態の場合の温度測定方法に基づいて加熱する基板温度TWを求め、その結果に基づいてランプ210およびヒータ260のフィードバック制御を行いつつ、基板Wの加熱処理を行っている。そのため、この装置では、基板Wの加熱処理の前に、実際に加熱処理を施す基板Wとほぼ同寸、同形状であってほぼ黒体と見なせるC(炭素)や黒体塗料を塗布された素材からなる放射率εrefが既知である基準黒体板を、炉体10内で加熱して、予め加熱板270の第1および第2プローブ522,523周囲の反射率ρr1,ρr2を求めている。なお、基準黒体板は放射率εrefが既知で0.1〜1の範囲であれば他の素材でもよい。
【0124】
また、基準放射温度計は事前に黒体炉により校正を受けたものを使用している。
【0125】
図8は加熱板270の反射率ρr1,ρr2の測定処理手順を示すフローチャートである。以下、図8を用いてその測定処理手順について説明する。
【0126】
まず、作業者がランプアニール装置1の各加熱ゾーンZ1〜Z5の取付け口120aに基準プローブ521を取り付ける(ステップS1)。
【0127】
つぎに、図示しない外部搬送装置により基準黒体板が炉体10内に搬入される(ステップS2)。
【0128】
つぎに、制御部60はランプドライバ70およびヒータドライバ75に制御信号を送り、ランプドライバ70およびヒータドライバ75はそれぞれ各加熱ゾーンZ1〜Z5のランプ210およびヒータ260に電力を供給することによってそれらにより基板Wの加熱を開始する(ステップS3)。それと同時にモータドライバ90に制御信号を送り、基板回転モータ440を駆動して基板保持回転部40を回転させることによって基準黒体板を回転させる。なお、以下の加熱板270の反射率ρr1,ρr2の測定処理中において基準黒体板の回転は続けられる。
【0129】
そして、ランプ210および加熱板270から発せられた放射熱は基準黒体板に至り、それにより基準黒体板は加熱され、その温度Trefに対応する熱放射が発生する。
【0130】
つぎに、各加熱ゾーンZ1〜Z5において基準黒体板からの熱放射は第1および第2プローブ522,523、基準プローブ521に入射し、加熱板270内部の熱放射は加熱板プローブ520に入射する。そしてそれらはそれぞれ各加熱ゾーンZ1〜Z5の第1および第2放射温度計532,533、基準放射温度計531ならびに加熱板放射温度計530に導かれ、そこでそれぞれ多重反射の放射強度I1,I2、基準黒体板の放射強度Iref、加熱板270の放射強度が測定され、それらの信号は演算部550に送られる。さらに演算部550において加熱板270の温度Trがその放射強度を基に算出され、また、その加熱板270の温度Trのデータは制御部60に送られる。(ステップS4)。
【0131】
つぎに、各加熱ゾーンZ1〜Z5の演算部550において発明の原理の第1の実施の形態の場合の反射率ρr1,ρr2の測定方法により加熱板270の反射率ρr1,ρr2が算出され、それらと加熱板270の温度Trとが、その内部のメモリに記憶される(ステップS5)。これにより、反射率ρr1,ρr2の測定処理が終了する。
【0132】
以下において、基板Wの加熱処理手順を示すフローチャートである図9を用いて、基板Wの処理手順について説明していく。
【0133】
まず、図示しない外部搬送装置により基板Wが炉体10内に搬入される(ステップS11)。
【0134】
つぎに、基板Wの加熱処理が開始される(ステップS12)。すなわち、前述の加熱板270の反射率ρr1,ρr2の算出処理と同様に各加熱ゾーンZ1〜Z5のランプ210およびヒータ260に電力を供給して基板Wを加熱しつつ、基板保持回転部40を回転させることによって基板Wを回転させる。これにより、加熱された基板Wから基板温度TWに対応する熱放射が発生する。さらに、加熱処理時には処理ガスが炉体10内に供給される。なお、以下の加熱処理中においてランプ210およびヒータ260への電力の供給、処理ガスの供給および基板Wの回転は続けられる。
【0135】
つぎに、各加熱ゾーンZ1〜Z5において第1および第2放射温度計532,533は第1および第2プローブ522,523を介して基板Wと加熱板270との間の多重反射の熱放射を捉え、それぞれ放射強度I1,I2を測定してその放射強度信号を演算部550に送る。それと同時に、各加熱ゾーンZ1〜Z5において加熱板放射温度計530は加熱板プローブ520を介して加熱板270からの直接の熱放射を捉えてその放射強度を測定し、その放射強度信号を演算部550に送り、そこでそれに基づいて加熱板270の温度Trが算出される(ステップS13)。
【0136】
つぎに、各加熱ゾーンZ1〜Z5の演算部550は発明の原理の第1の実施の形態の場合の基板温度TWの測定方法によりステップS13で測定されたその加熱ゾーンの放射強度I1,I2および加熱板270の温度Trおよび前述の加熱板270の反射率ρr1,ρr2の測定処理により求められたその加熱ゾーンにおけるそれらの値を用いて基板Wの放射率εWを算出し、それを用いてその加熱ゾーンにおける基板温度TWを算出する(ステップS14)。
【0137】
つぎに、演算部550で求められた各加熱ゾーンZ1〜Z5における基板温度TWは温度信号として制御部60に送られ、それらを基に制御部60は得られた基板温度TWと予め設定された加熱処理時の基板Wの目標温度とを比較して、両者が一致するように各加熱ゾーンZ1〜Z5ごとに温度制御信号をランプドライバ70およびヒータドライバ75に送り、ランプドライバ70およびヒータドライバ75はそれぞれそれらの温度制御信号に応じた電力を対応する加熱ゾーンのランプ210およびヒータ260に供給してPIDフィードバック制御を行う(ステップS15)。
【0138】
つぎに、制御部60は処理時間の終了の判定を行い(ステップS16)、設定されていた処理時間が経過するまでステップS13〜ステップS15の処理を継続して行う。そして、処理時間が経過すると加熱処理を終了し、外部搬送装置によりその基板Wが炉体10外に搬出される(ステップS17)。
【0139】
つぎに、制御部60は外部搬送装置からの信号により準備されていた全基板Wの加熱処理の終了の判定を行い(ステップS18)、全基板Wの加熱処理が終了していなければステップS11に戻り、外部搬送装置により次の基板Wが搬入され、逆に終了していれば一連の加熱処理が終了する。
【0140】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、ランプ210に対して基板Wと反対側の位置に加熱板270を備えるため、基板Wのランプ210に対向した面の裏面をも加熱するので加熱処理の熱効率がよく、したがって、消費電力を抑えることができる。これを数量的に示すと以下のようになる。従来技術に示したように、従来のランプアニール装置において基板Wの下方に冷却される反射板を設けた装置と本発明の第1の実施の形態の装置との熱効率を比較するには、熱ロス量Qを与える次式を用いることができる。
【0141】
【数36】
Figure 0003554182
【0142】
この式において基板温度TWを1000℃(1273K)とし、本発明の加熱板270の温度Trを500℃(773K)、従来装置の反射板の温度Trを25℃(298K)と想定して両者を比較すると、10数%程度熱ロスが軽減されることが分かる。
【0143】
また、ランプアニール装置1の温度測定部50は、加熱板放射温度計530により測定した加熱板270の温度Trと、第1および第2放射温度計532,533により測定した多重反射の熱放射の放射強度I1,I2とを用いて演算部550において基板温度TWを精密に算出することができ、また、ランプアニール装置1の制御部60はそれに基づいてランプ210およびヒータ260に供給する電力を制御するため、精密な基板Wの温度制御を行うことができ、したがって、基板ごとの処理温度を均一にすることができ、また、基板Wを加熱しすぎるといったことがないので、より熱効率がよく、消費電力を抑えることができる。
【0144】
さらに、各加熱ゾーンZ1〜Z5ごとにランプ210およびヒータ260に供給する電力を制御するので、より精密な基板Wの温度制御を行うことができる。
【0145】
〔3.第2の実施の形態〕
図10はこの発明における第2の実施の形態であるランプアニール装置2の縦断面図である。第1の実施の形態であるランプアニール装置1では加熱処理時の多重反射の放射強度を測定する手段としてプローブおよび放射温度計を各加熱ゾーンZ1〜Z5に2組ずつ備えていたのに対して、第2の実施の形態であるランプアニール装置2では各加熱ゾーンZ1〜Z5のそれぞれにプローブ525および放射温度計535を1組のみ備える点が異なっており、その他の装置構成は第1の実施の形態と全く同様である。なお、プローブ525も第1の実施の形態と同様、断熱板250、ヒータ260、加熱板270を貫通し、その先端が加熱板270の上面に位置するように設けられている。なお、プローブ525と放射温度計535を併せたものが「放射強度測定手段」に相当している。
【0146】
図11および図12はそれぞれランプアニール装置2の上部加熱部20および下部加熱部25の平面的な構成を示す図である。上記のようにこの装置でも第1の実施の形態と同様にランプ210ならびにヒータ260および加熱板270は加熱ゾーンZ1〜Z5に分割され(ランプ210は図10および図11においてその一部にのみ参照符号を記載)、各加熱ゾーンZ1〜Z5にはそれぞれに放射強度測定部51が設けられている。なお、これらは図10においては1組のみ表示されている。そして、これら各プローブもそれぞれ基板Wの回転中心を中心とした円周上に位置するように設けられている。これにより、第2の実施の形態でも後述する加熱板270の定数反射率ρrfの測定および基板Wの加熱処理時の放射強度の測定においてそれぞれの測定タイミングをずらして、基板W上の測定対象位置を共通にして、より精度の高い温度測定を行えるものとしている。
【0147】
そして、第2の実施の形態では発明の原理の第2の実施の形態の温度測定方法に基づいて、近似基板温度TWを求め、その結果に基づいてランプ210およびヒータ260のPIDフィードバック制御を行いつつ、基板Wの加熱処理を行っている。
【0148】
図13は定数係数αfの見積り処理の手順を示すフローチャートである。以下、図13を用いてその処理手順について説明する。
【0149】
第2の実施の形態の定数係数αfの見積り処理のステップS21〜ステップS23までは第1の実施の形態における図8の加熱板270の反射率ρr1,ρr2の測定処理のステップS1〜ステップS3と全く同様であるので説明を省略する。
【0150】
つぎに、各加熱ゾーンZ1〜Z5において基準黒体板からの熱放射はプローブ525、基準プローブ521に入射し、加熱板270内部の熱放射は各加熱ゾーンZ1〜Z5の加熱板プローブ520に入射する。そしてそれらはそれぞれ放射温度計535、基準放射温度計531および加熱板放射温度計530に導かれ、そこでそれぞれ多重反射の放射強度I、基準黒体板の放射強度Iref、加熱板270の放射強度が測定され、それらの信号は演算部550に送られる。さらに演算部550はその加熱ゾーンにおける加熱板270の温度Trをその放射強度に基づいて算出し、そのデータを制御部60に送信する(ステップS24)。
【0151】
つぎに、各加熱ゾーンZ1〜Z5の加熱板270の温度Trが近似のために適当と考えられる所定温度に達するとその加熱ゾーンの演算部550において発明の原理の第2の実施の形態の場合の定数係数αfの見積もり方法によりその温度での加熱板270の定数反射率ρrfが算出され、そのデータはその内部のメモリに記憶される(ステップS25)。
【0152】
以上の処理により反射率ρrfが求められ、近似的な基板Wの放射率εWを見積もることで、定数係数αfが見積もられた。この定数係数αfを用いて以下に示すように近似基板温度TWを求めつつ基板Wの加熱処理が行われる。
【0153】
図14は基板Wの加熱処理手順を示すフローチャートである。以下、図14を用いて、基板Wの加熱処理手順について説明していく。
【0154】
第2の実施の形態の基板Wの加熱処理のステップS31およびS32は第1の実施の形態における図9の基板Wの加熱処理のステップS11およびS12と全く同様であるので説明を省略する。
【0155】
つぎに、各加熱ゾーンZ1〜Z5において放射温度計535はプローブ525を介して基板Wと加熱板270との間の多重反射の熱放射の、放射強度Iを測定してその放射強度信号を演算部550に送る。それと同時に、各加熱ゾーンZ1〜Z5において加熱板放射温度計530は加熱板プローブ520を介して加熱板270からの直接の熱放射の放射強度を測定し、その放射強度信号を演算部550に送り、そこでそれをもとに加熱板270の温度Trが算出される(ステップS33)。
【0156】
つぎに、各加熱ゾーンZ1〜Z5の演算部550は発明の原理の第2の実施の形態の近似基板温度TWの測定方法によりステップS33で測定されたその加熱ゾーンの放射強度I、加熱板270の温度Trおよび上述の定数係数αfの見積もり処理において求められたその加熱ゾーンの定数係数αfを用いてその加熱ゾーンにおける近似基板温度TWを算出する(ステップS34)。
【0157】
つぎに、演算部550で求められた各加熱ゾーンZ1〜Z5における近似基板温度TWは温度信号として制御部60に送られ、それを基に制御部60は得られた近似基板温度TWと予め設定された加熱処理時の基板Wの目標温度とを比較して、両者が一致するように各加熱ゾーンZ1〜Z5ごとに温度制御信号をランプドライバ70およびヒータドライバ75に送り、ランプドライバ70およびヒータドライバ75はそれぞれそれらの温度制御信号に応じた電力を対応する加熱ゾーンのランプ210およびヒータ260に供給してPIDフィードバック制御を行う(ステップS35)。
【0158】
つぎに、制御部60は処理時間の終了の判定を行い(ステップS36)、設定されていた処理時間が経過するまでステップS33〜ステップS35の処理を継続して行う。そして、処理時間が経過すると加熱処理を終了し、外部搬送装置によりその基板Wが炉体10外に搬出される(ステップS37)。
【0159】
つぎに、制御部60は外部搬送装置からの信号により準備されていた全基板Wの加熱処理の終了の判定を行い(ステップS38)、全基板Wの加熱処理が終了していなければステップS31に戻り、外部搬送装置により次の基板Wが搬入され、逆に終了していれば一連の加熱処理が終了する。
【0160】
以上の説明から、第2の実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果を有している。
【0161】
さらに、第2の実施の形態のランプアニール装置2では各加熱ゾーンの温度測定部50において多重反射の放射強度を測定する手段としてプローブ525および放射温度計535を1組のみ備えるため、第1の実施の形態の装置に比べて装置構成が簡素化されているので製造コストを抑えることができる。
【0162】
〔4.変形例〕
上記の第1の実施の形態の装置では加熱板270において第1プローブ522の周囲の上面と第2プローブ523の周囲の上面では黒化処理の有無によって反射率ρr1と反射率ρr2とを互いに異なるものとしたが、この発明はこれに限られず、いずれかの上面を粗くすること等のその他の方法により反射率ρr1と反射率ρr2とを互いに異なるものとしてもよい。
【0163】
上記の第2の実施の形態では予め加熱板270の定数反射率ρrfを測定し、それに基づいて定数係数αfを見積もり、それを用いて近似基板温度TWを算出することは必須ではなく、要は数31の式に用いる定数係数αfが予め用意できればよい。したがって、予め妥当と思われる定数係数αfが何らかの方法で知られていれば、加熱板270の定数反射率ρrfの測定を行うことなく、その値を直接用いることもできる。
【0164】
また、第1および第2の実施の形態の装置は加熱板放射温度計530により加熱板270の温度を測定するものとしたが、この発明はこれに限られず、加熱板放射温度計の代わりに熱電対や測温抵抗体等の接触式の温度測定手段により加熱板270の温度Trを測定することができる。この場合にはそれにより求めた加熱板の温度Trを発明の原理の温度測定方法に用いればよい。
【0165】
また、第1および第2の実施の形態の装置では各加熱ゾーンZ1〜Z5のそれぞれの放射強度測定部51に電気的に接続された演算部550を1つ設けて全加熱ゾーンの演算を全て演算部550によって行うものとしたが、この発明はこれに限られず、各加熱ゾーンZ1〜Z5のそれぞれに温度測定部50を備えるものとしてもよく、さらには、演算部550を設けないでその代わりに制御部60がそれらの演算を行うものとしてもよい。
【0166】
また、第1および第2の実施の形態の装置では加熱の制御領域を加熱ゾーンZ1〜Z5の5つに分けるものとしたが、この発明はこれに限られず、加熱ゾーンに分けないで炉体10全体に1つの温度測定部50を設けて基板温度を求めるものとしてもよく、または「2」以上かつ「5」以外の数に分割してもよい。
【0167】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜請求項の発明によれば、加熱板温度測定手段により測定した加熱板の温度と、放射強度測定手段により測定した基板と加熱板との間の熱放射の放射強度とに基づいて、基板温度算出手段により基板の温度を算出するので、基板の温度を精密に測定することができる。
【0168】
とくに、請求項〜請求項の発明によれば、そのようにして算出された基板の温度に基づいて、加熱ランプおよび加熱板へ供給される加熱用電力を制御するため、基板を加熱し過ぎるといったことがないので、熱効率がよく、消費電力を抑えることができる。
【0169】
さらに、請求項〜請求項の発明によれば、基板の加熱ランプに対向した面の裏面をも加熱板により加熱するので加熱処理の熱効率をよくすることができ、したがって、消費電力を抑えることができる。

【図面の簡単な説明】
【図1】基板と加熱板との間の多重反射を説明するための図である。
【図2】基板の様々な放射率に対する温度測定誤差のシミュレーション結果を示した図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態であるランプアニール装置の縦断面図である。
【図4】図3の各プローブの拡大図である。
【図5】上部加熱部の平面的な構成を示す図である。
【図6】下部加熱部の平面的な構成を示す図である。
【図7】各加熱ゾーンの加熱板プローブ、基準プローブ、第1および第2プローブの設置位置関係を示す図である。
【図8】加熱板の反射率の測定処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第1の実施の形態の基板の加熱処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施の形態であるランプアニール装置の縦断面図である。
【図11】上部加熱部の平面的な構成を示す図である。
【図12】下部加熱部の平面的な構成を示す図である。
【図13】加熱板の近似反射率の測定処理手順を示すフローチャートである。
【図14】第2の実施の形態の基板の加熱処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1,2 ランプアニール装置
20 加熱部
50 温度測定部(温度測定装置)
60 制御部
260 ヒータ
270 加熱板(ヒータ260と併せて「加熱板」)
530 加熱板放射温度計(「加熱板温度測定手段」)
531 基準放射温度計
532,533 第1および第2の放射温度計
535 放射温度計
550 演算部
I,I1,I2 多重反射の放射強度
TW 基板温度
Tr 加熱板の温度
W 基板
Z1〜Z5 加熱ゾーン
ρr,ρr1,ρr2 加熱板の反射率

Claims (4)

  1. 基板の温度を測定する温度測定装置において、
    基板に対向するとともに基板に熱を供給する加熱板の温度を測定する加熱板温度測定手段と、
    前記加熱板に設けられるとともに、基板と前記加熱板との間の熱放射を受けて、その放射強度を測定する放射強度測定手段と、
    前記加熱板の温度と前記放射強度とに基づいて基板の温度を算出する基板温度算出手段と、
    を備え
    前記放射強度測定手段は、個別に前記熱放射の放射強度を測定する第1の放射強度測定手段および第2の放射強度測定手段を備え、
    前記加熱板における前記第1の放射強度測定手段および第2の放射強度測定手段の周囲の部分の反射率が互いに異なることを特徴とする温度測定装置。
  2. 請求項1の温度測定装置を温度測定部として備え、さらに、
    前記加熱板に対して基板と反対側の位置において基板に対向するとともに基板を加熱する加熱ランプを備えることを特徴とする基板熱処理装置
  3. 請求項2の基板熱処理装置であって、さらに、
    前記基板温度算出手段により算出された基板の温度に基づいて、前記加熱ランプおよび前記加熱板へ供給される加熱用電力を制御する制御手段を備えることを特徴とする基板熱処理装置。
  4. 請求項3の基板熱処理装置において、
    前記加熱ランプおよび前記加熱板が複数の加熱領域に分割されているとともに、当該複数の加熱領域のそれぞれに対して前記加熱板温度測定手段および前記放射強度測定手段が設けられているものであって、
    前記複数の加熱領域ごとに算出された基板の温度をもとに、前記複数の加熱領域ごとに前記加熱ランプおよび前記加熱板へ供給される加熱用電力を制御することを特徴とする基板熱処理装置。
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