JP3594792B2 - 熱処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板(以下、単に「基板」という。)に熱処理を施す熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から基板に熱処理を施すランプアニール等の熱処理装置では、処理精度を上げるため処理対象の基板の温度を計測して温度を制御しつつ熱処理を施している。そのうち、放射温度計により基板の温度を計測する熱処理装置では水平に保持された基板の上方にランプ等の熱源を備え、下方に基板に対向するように反射板を備え、その反射板に2つの口径または形状の異なる(したがって、実効反射率の異なる)キャビティ(空洞)を設け、それらキャビティ内のそれぞれに、基板に向けて石英ロッド製等のプローブを設け、さらに、それらにより捉えた熱放射をそれぞれ異なる放射温度計に導いて、基板の温度を求めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の従来装置においては、基板温度の計測のためのプローブおよび放射温度計を2つずつ以上備えるため、それぞれに個体誤差が発生して温度計測精度を低下させるとともに、装置の製造コストがかさむ原因となっていた。
【0004】
この発明は、従来技術における上述の問題の克服を意図しており、温度計測の精度が高く、装置の製造コストを抑えた熱処理装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明の請求項1の装置は、基板に熱処理を施す熱処理装置であって、基板を保持する保持手段と、前記保持手段に保持された基板を加熱する熱源と、前記保持手段に保持された基板に対向して配置されるとともに、穴を備え、かつ基板からの熱放射を反射する反射板と、前記基板と前記反射板との間の熱放射であって、前記穴の開口部に配置された石英ガラス板を透過した熱放射の放射強度を計測する放射強度計測手段と、前記保持手段に保持された基板に対向する前記穴の開口部の前記石英ガラス板と前記放射強度計測手段との間に設けられるとともに、前記穴の実効反射率を複数の実効反射率の間で切り替える実効反射率切り替え手段と、前記放射強度計測手段によって前記複数の実効反射率のそれぞれについて計測された複数の放射強度に基づいて基板の温度を算出する温度算出手段と、を備え、前記保持手段と、前記保持手段によって保持された前記基板と、前記反射板との間に閉空間を形成し、前記放射強度計測手段および前記実行反射率切り替え手段は、前記穴の下方に設けられたケーシングに収容されていることを特徴とする。
【0006】
また、この発明の請求項2の装置は、請求項1に記載の熱処理装置であって、前記実効反射率切り替え手段が、前記保持手段に保持された基板に対向して設けられ、開孔と熱放射を反射する部分とを備える反射板と、前記反射板を回転させる駆動手段と、を備える。
【0008】
また、この発明の請求項3の装置は、請求項1または請求項2に記載の熱処理装置であって、前記放射強度計測手段によって計測される熱放射の、ほぼ計測波長のみを透過するフィルタを前記石英ガラス板と前記放射強度計測手段との間に備える。
【0009】
また、この発明の請求項の装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の熱処理装置であって、前記温度算出手段により算出された基板の温度に基づき前記熱源へ供給される加熱用電力を制御する制御手段を備える。
【0010】
また、この発明の請求項の装置は、請求項4に記載の熱処理装置であって、前記熱源が複数の加熱領域に分割されているとともに、当該複数の加熱領域のそれぞれに対して前記反射板に前記穴および前記放射強度計測手段が設けられているものであって、前記複数の加熱領域ごとに算出された基板の温度に基づいて、前記熱源における前記複数の加熱領域ごとに供給される加熱用電力を制御することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
<1.実施の形態の機構的構成>
図1はこの発明の第1の実施の形態である熱処理装置1の縦断面図である。以下、図1を参照しつつこの装置の構成を説明していく。
【0015】
第1の実施の形態である熱処理装置1は主に炉体10、ランプ20、石英ガラス30、基板保持回転部40、温度計測部50、制御部60、ランプドライバ80、モータドライバ90を備えている。
【0016】
炉体10は上部をリフレクタ110、下部をハウジング120とする円筒形状の炉体10であり、それらの内部等には冷媒を通して冷却する多数の冷却管130が設けられている。また、炉体10の側面には基板搬出入口EWが設けられており、加熱処理の際には図示しない外部搬送装置により基板Wまたは基準基板SWの搬出入が行われる。
【0017】
ランプ20は「熱源」に相当し、リフレクタ110の下面に多数設けられ(図1,図5には一部にのみ参照番号を記載)点灯時にはその熱放射により基板Wまたは基準基板SWを加熱する。
【0018】
石英ガラス30はランプ20の下方に設けられ、それによる熱放射を透過する。
【0019】
基板保持回転部40は、基板Wまたは後述する基準基板SWの周縁部分を全周に渡って保持する保持リング410が、その直径より大きな内径の円筒の支持脚420により支持されるとともに、それら支持脚420の下端には、その外周に沿ってベアリング430が設けられている。そして、ベアリング430の外周に設けられたギアに基板回転モータ440の回転軸のギア441がかみ合っており、その駆動により保持リング410が鉛直方向を軸として回転可能となっている。
【0020】
温度計測部50は後に詳述するが基板Wまたは基準基板SWからの熱放射の多重反射を考慮した放射強度(放射エネルギー)を計測し、それを基に基板温度等を求め、それらの信号を制御部60に送る。
【0021】
制御部60は内部にCPUおよびメモリを備え、後に詳述するように、後述のランプドライバ80にランプ20の温度制御信号を送ったり、後述のモータドライバ90に所定のタイミングで駆動信号を送ったりする。
【0022】
ランプドライバ80は制御部60からの温度制御信号を受けて、それに応じた電力をランプ20に供給する。
【0023】
モータドライバ90は制御部60からの駆動信号を受けて、それに応じた電力を基板回転モータ440に供給する。
【0024】
つぎに、主要部についてさらに詳細に説明していく。
【0025】
図1に示すように、温度計測部50は主に、反射板510、計測ユニット520、モータドライバ530、基準プローブ540、基準ディテクタ545、演算部550を備えている。
【0026】
図2は温度計測部50における計測ユニット520付近の断面模式図である。温度計測部50においてハウジング120上面には反射板510が設けられており、その反射板510には、それを貫通する円筒形状の穴510aが設けられている。さらに、その穴510aの下方のハウジング120内には計測ユニット520のケーシング521が取り付けられ、そのケーシング521の上部には穴510a内面に密着して円筒状の空洞部CPが設けられている。
【0027】
また、ケーシング521内面は全面にアルミニウム等の金属を蒸着することにより反射率が高められているとともに、ケーシング521の外周にはハウジング120内部に設けられているものと同様の冷却管130が設けられており、これらによりケーシング521内部の温度上昇を抑えて、基板温度の測定精度を高めている。
【0028】
また、ケーシング521内には反射板の穴510aの開口部OPに石英ガラス板522が設けられ、その石英ガラス板522の下面にフィルタ523が密着して設けられている。フィルタ523は石英ガラス板522の下面全体にTiO2等の金属酸化物を蒸着したものである。
【0029】
図3はフィルタ523の波長による分光特性を示す図であり、図3(a)は反射率の、図3(b)は透過率の特性を表している。図示のようにフィルタ523は、後に詳述するディテクタ526による測定波長の近傍の波長域の熱放射のみ透過し、(図3(b)参照)他の波長域の熱放射はほぼ完全に反射する(図3(a)参照)特性を持ったものとなっている。これにより、熱放射のケーシング521内への進入を必要最小限とすることができるので、ケーシング521内部およびディテクタ526が熱せられにくく、高い測定精度を実現することができる。
【0030】
なお、前述のように、基板保持回転部40の支持脚420は円筒状であるので、保持リング410により基板Wまたは基準基板SWを保持する際には、それらと反射板510との間に閉空間を形成する。そのため、ランプ20からの熱放射が直接またはハウジング120の内面等により反射して、基板W等を経ないで穴510aに進入してディテクタ526に至るのを防いでいる。これにより、ディテクタ526による放射強度の計測を正確なものにしている。
【0031】
また、図2に示すようにケーシング521内において反射板510の穴510a部分の下端近傍には回転式セクタ524がその板面をほぼ水平にして、図示しない支持部材によりケーシング521内に支持されたモータ525に取り付けられている。なお、回転式セクタ524とモータ525とを併せたものが「実効反射率切り替え手段」に相当する。
【0032】
図4は回転式セクタ524の平面図である。この実施の形態における回転式セクタ524は円盤のうち、直交する2本の直径で4等分されたうちの隣り合わない2つの扇形部分である反射部RPに弧状のスリットSLが設けられるとともに、他の扇形部分は除去され、切り欠き部NPとなった形状となっている。そして、その中心CEがモータ525の回転軸525aに取り付けられている(図2参照)。そのため、モータ525の回転により回転式セクタ524は、その板面に平行な平面内で回転自在となっている。
【0033】
また、回転式セクタ524表面にはアルミニウム等の金属が蒸着され、その面に入射した放射光を反射する。そのため、モータ525の駆動により回転式セクタ524が回転すると、穴510aに進入した放射光は回転式セクタ524の反射部RPが空洞部CPの下部に位置するときと、切り欠き部NPが位置するときとで、放射光の下方への透過および上方への反射の状況が異なる、すなわち後述するように実効反射率が異なるものとなる。
【0034】
このように、この実施の形態における回転式セクタ524は回転対称の形状であるため回転の安定性が高い。
【0035】
また、図2に示すように、ディテクタ526は、ケーシング526a内に結像レンズ526b、Siホトセル526c、増幅回路526dを備え、結像レンズ526bに入射した放射光を電圧すなわち、後述する多重反射を考慮した放射強度L1,L2を表す電気信号に変換し、演算部550に送る。そして、演算部550はCPUおよびメモリを備えており、後に詳述するように主に多重反射を考慮した放射強度L1,L2をもとに基板温度TWおよび基準基板SWの温度Trefを算出する。なお、ディテクタ526は演算部550とともに放射温度計を形成している。
【0036】
図6および図7により後に詳述するように、矢印のように基板Wまたは基準基板SWからの下方への熱放射のうちの一部が反射板510の穴510aあるいはその近傍の反射板510上面に入射すると穴510aの内周面または近傍の反射板510上面により反射され基板Wまたは基準基板SWとの間で多重反射した後、回転式セクタ524を通過して、その下方のディテクタ526の結像レンズ526bに入射する。
【0037】
また、図1に示すように、反射板510の穴510aに隣接する位置には反射板510およびハウジング120を貫通するように基準プローブ540を取り付けるための取付け穴AHが設けられている。
【0038】
また、基準プローブ540は入射する熱放射を伝えるための石英ロッドあるいはサファイアロッドおよび、それに接続された光ファイバーからなり、基準基板SWからの熱放射をディテクタ526と同様の構造の基準ディテクタ545に送る。
【0039】
なお、基準プローブ540は取付け穴AHに着脱自在となっているとともに、基準ディテクタ545も図示しない支持部材に対して着脱自在となっている。そして、後述の実効反射率ρr1,ρr2の計測の際には作業者により基準プローブ540がハウジング120に取り付けられ、基準ディテクタ545が基準プローブ540に接続された光ファイバーに接続されるとともに、演算部550に電気的に接続された状態でこの装置に取り付けられる。逆に、基板Wの加熱処理時には、それらは取り外される。そして、図示のように基準プローブ540は取付け穴AHに取り付けられた状態では基準基板SWの下面近傍にその先端が位置するようになっている。これにより基準ディテクタ545により放射強度を測定する際には基準基板SWとの間に多重反射を起こさないで直接熱放射を捉えられるようになっている。なお、基準プローブ540、基準ディテクタ545および演算部550を併せたものが「基準基板温度計測手段」に相当する。
【0040】
そして、基準ディテクタ545も基準プローブ540を介して入射する基準基板から発せられた熱放射を直接受けて、電圧すなわち基準放射強度を表す電気信号に変換し、演算部550に送り、そこで基準基板の温度が算出される。すなわち、基準ディテクタ545と演算部550は放射温度計を形成する。
【0041】
図5はこの実施の形態の熱処理装置1の平面的な構成を示す図である。ランプ20は長尺のタングステンハロゲンランプがその長手方向を平行として複数本並設された加熱ゾーンZ1〜Z5に分割されている。そして各加熱ゾーンZ1〜Z5には、それぞれ穴510a、取付け穴AHとともに、図示しない計測ユニット520、モータドライバ530、および着脱自在に基準プローブ540、基準ディテクタ545、が設けられている。なお、これらは図1においては1組のみ表示している。さらに、各加熱ゾーンZ1〜Z5におけるディテクタ526および基準ディテクタ545は演算部550に電気的に接続され、モータドライバ530は制御部60に接続されている。そして、各加熱ゾーンZ1〜Z5毎に後述のような基板Wまたは基準基板SWの温度計測を行うとともに、それを基に各加熱ゾーンごとにランプ20に供給する加熱用電力の制御(温度制御)を行っている。
【0042】
<2.発明の原理>
以下においてこの発明に使用する温度計測方法について、実施の形態に即して説明していく。
【0043】
一般に、黒体から放射される電磁波の放射発散度の分光密度はプランクの放射公式で与えられるが、放射温度計(パイロメータ)により黒体を計測する場合には、そのプランクの放射公式をもとに、放射温度計により計測される特定の波長領域における黒体の温度Tと計測される熱放射の放射強度Lb(T)との関係は放射温度計の光学系等によって決まる計測器定数Aを用いて次式で近似される。
【0044】
【数1】
Figure 0003594792
【0045】
ここで放射指数nは一般に波長λ、プランクの第2定数C2を用いて次式で近似される。
【0046】
【数2】
Figure 0003594792
【0047】
なお、放射指数nおよび計測器定数Aは放射温度計に固有の値として予め求められており、さらに、放射温度計は黒体炉を用いて予め温度Tと黒体炉の放射強度Lb(T)の関係が校正されている。
【0048】
また、数1の式を温度Tについて解くと次式となる。
【0049】
【数3】
Figure 0003594792
【0050】
さらに、一般に、温度Tの灰色体の放射強度L(T)と黒体の放射強度Lb(T)の関係は次式で表される。
【0051】
【数4】
Figure 0003594792
【0052】
ここで、εは灰色体の放射率であり、一般にε<1である。
【0053】
以下、このような放射温度計として、ディテクタ526および演算部550または基準プローブ540、基準ディテクタ545および演算部550を用い、上記のような装置構成により、反射板510の近くに対向した状態で位置する基板Wの温度を計測する場合について考える。図6および図7はそれぞれ穴510aが両端開口状態および一端開口状態の反射板510等と基板Wとの間の多重反射を説明するための図である。なお、図6の穴510aの上下両端が光学的に開口の状態となった両端開口状態には、回転式セクタ524の切り欠き部NPが穴510aの下方に位置する状態が相当しており、図7の穴510aの上端が光学的に開口の状態となり、下端は一部のみ光学的に開口の状態となった一端開口状態には、回転式セクタ524の反射部RPが穴510aの下方に位置する状態が対応している。また、基板Wまたは基準基板SWと反射板510との間の空間および石英ガラス板522と回転式セクタ524との間の空間を以下において多重反射空洞と呼ぶ。
【0054】
図6において、基板Wからの熱放射は、多重反射空洞内の反射板510等により反射された後、再度、基板Wに至って反射される。以下同様にして基板Wと反射板510、ケーシング521の空洞部CPの内壁面および回転式セクタ524の反射部RPの上面等とによる反射により、多重反射空洞内を熱放射が往復する多重反射が発生する。なお、この多重反射の間に熱放射は石英ガラス板522によりほぼ完全に透過され、前述のようにディテクタ526の測定波長域の熱放射はフィルタ523によりほぼ完全に透過されている。以下、この様な多重反射の後に、穴510aの下方のディテクタ526により捉えられる熱放射の放射強度について考える。
【0055】
基板温度TWの基板Wから放射された熱放射が反射板510、穴510aの内壁面および回転式セクタ524の上面等(これらによる実質的な反射率を実効反射率ρr1と表す)に至り再び基板Wに戻り、さらに基板W(基板放射率εW、基板反射率ρWと表す)により反射された後の放射強度は基板Wによる元の熱放射の放射強度L(TW)に対してρr1ρW倍となる。同様にして、この熱放射が多重反射空洞内において多重反射した後に穴510aの下方に至る(すなわち、ディテクタ526に入射する)。その際の多重反射後の最終的な放射強度は初項L(TW)、公比ρr1ρWの無限等比級数として表わされ、公比ρr1ρWは「1」未満であるので収束し、次式となる。
【0056】
【数5】
Figure 0003594792
【0057】
さらに、数4の式を用いて基板Wの放射強度L(TW)の代わりに基板温度TWにおける黒体の放射強度Lb(TW)で表わすと次式となる。
【0058】
【数6】
Figure 0003594792
【0059】
ただし、ここで、基板Wにおける熱放射の透過がないとして次式を用いた。
【0060】
【数7】
Figure 0003594792
【0061】
数6の式で多重反射後の放射強度L1(TW)に計測値を用いることにし、実効反射率ρr1および黒体の放射強度Lb(T)の関数形は既知であるとすると、未知数は基板放射率εWと基板温度TWである。したがって、この式のみでは基板温度TWを求めることはできない。そこで、この発明では上記と実効反射率が異なる状態を人為的に作り、その実効反射率のもとに数6の式と同様の式を立て、両式を連立することにより、基板温度TWを求めている。具体的には、この実施の形態では図7のように一端開口状態における多重反射空洞による(すなわち、反射板510、ケーシング521の空洞部CPの内壁面および回転式セクタ524の反射部RPの上面等による)実質的な反射率を実効反射率ρr2と表し、この状態でディテクタ526により得られた多重反射後の放射強度L2(TW)とにより、次式が得られる。
【0062】
【数8】
Figure 0003594792
【0063】
これにより、この発明では実効反射率ρr1およびρr2のそれぞれのもとに生ずる多重反射後の放射強度L1(TW),L2(TW)を求めて、数6および数8の式を連立して基板温度TWを求めている。
【0064】
(2−1.実効反射率の決定)
ところで、上記の方法で基板温度TWを求める際に、両端開口状態および一端開口状態のそれぞれにおける実効反射率ρr1,ρr2を基板温度TWの計測に先だって予め求めておく必要がある。
【0065】
そこで、この発明では予め基板放射率εWが既知の値、すなわち放射率εrefである基準基板SWを加熱して、それによる熱放射の多重反射後の放射強度L1(Tref),L2(Tref)および、直接の熱放射に基づく基準基板温度Trefを計測して実効反射率ρr1,ρr2を求めている。
【0066】
具体的には、基準基板SWを加熱しつつ、回転式セクタ524を回転しながら、ディテクタ526により放射強度L1(Tref),L2(Tref)を計測して数6および数8の式に代入する。それとともに、基準基板SWの温度を多重反射後の熱放射ではなく、基準基板SWからの直接の熱放射の放射強度である基準放射強度を基準プローブ540および基準ディテクタ545により計測し、それに基づいて基準基板温度Trefを求め、それを基準基板SWの真温度であるとして数6および数8の式の基板温度TWとして代入し、さらに、基板放射率εWに基準基板SWの放射率εrefを代入することによって、実効反射率ρr1,ρr2が求められる。なお、ここで温度Trefにおける黒体の放射強度Lb(Tref)は数1の式により求めたものを用いる。
【0067】
(2−2.基板温度計測)
つぎに、実際の基板処理時の基板Wの温度計測について説明する。実際の加熱処理時には基板Wを加熱しつつ、回転式セクタ524を回転させながらディテクタ526で多重反射後の放射強度を計測する。これによって得られた2種類の多重反射後の放射強度L1(TW),L2(TW)を用いて基板放射率εWおよび基板温度TWを求めるのであるが、その際のより具体的な手順は以下の通りである。
【0068】
まず、数6および数8の式を辺々割り、その比率βを定義すると次式となる。
【0069】
【数9】
Figure 0003594792
【0070】
この比率βを用いて基板放射率εWを表すと、数9の式より次式となる。
【0071】
【数10】
Figure 0003594792
【0072】
したがって、計測された放射強度L1(TW),L2(TW)を数9に用いて比率βを求め、さらに、その比率βと予め求められていた実効反射率ρr1,ρr2とを数10の式に用いて基板放射率εWを求める。
【0073】
つぎに、数6および数8の式から次式が得られる。
【0074】
【数11】
Figure 0003594792
【0075】
この式に計測された放射強度L1(TW)またはL2(TW)と、それに対応する予め求められていた実効反射率ρr1またはρr2と、得られた基板放射率εWを用いて温度TWにおける黒体の放射強度Lb(TW)が求まり、さらにそれを数3の式に用いることにより最終的に基板温度TWが求まる。
【0076】
<3.実施の形態の処理および制御>
この実施の形態の熱処理装置1は、前述の発明の原理に基づいて加熱する基板Wの温度を求め、その結果に基づいてランプ20のフィードバック制御を行いつつ、基板Wの加熱処理を行う。
【0077】
そのため、この装置では基板Wの加熱処理の開始前や、複数の基板Wを順に加熱処理する場合における、ある程度の枚数の処理の後に、基準基板SW(基準黒体板)を炉体10内で加熱して、実効反射率ρr1,ρr2を求めている。ここで、基準基板SWとは、実際に加熱処理を施す基板Wとほぼ同寸、同形状であって、ほぼ黒体と見なせるC(炭素)や放射率既知のSiC製円板や黒体塗料を塗布された素材からなるものであって、放射率εrefが既知であるものを意味している。なお、基準基板SWは放射率εrefが既知で0.1〜1の範囲であれば他の素材でもよい。
【0078】
また、上記のように、ある程度の枚数の処理の後に実効反射率ρr1,ρr2を求めるのは、ある程度の枚数の加熱処理が行われると反射板510やケーシング521の空洞部CPの内壁面の表面状態が変化する可能性があるため、計測精度を高く保つために行うものである。そのため、あまり高い計測精度が要求されない場合や、処理温度が低いため上記反射板510等の表面状態の変化があまりない場合等には、必ずしも行わなくともよい。
【0079】
また、基準ディテクタ545は事前に黒体炉により校正を受けたものを使用している。
【0080】
図8は実効反射率計測処理の手順を示すフローチャートである。以下、図8を用いて実効反射率ρr1,ρr2の計測処理手順について説明する。なお、以下に説明する実効反射率計測処理において、各種演算および制御は演算部550や制御部60によりソフトウエア的に行われる。また、基準プローブ540、基準ディテクタ545および演算部550よりなる放射温度計は事前に黒体炉により校正を受けたものを使用している。
【0081】
まず、熱処理装置1の各加熱ゾーンZ1〜Z5において、基準ディテクタ545を取り付けるとともに、取付け穴AHに基準プローブ540を取り付ける(ステップS1)。
【0082】
つぎに、図示しない外部搬送装置が基準基板SWを炉体10内に搬入する(ステップS2)。
【0083】
つぎに、基準基板SWの加熱を開始する(ステップS3)。
【0084】
すなわち、制御部60はランプドライバ80に制御信号を送り、各加熱ゾーンZ1〜Z5のランプ20に電力を供給することによって、それらを点灯して基準基板SWの加熱を開始する。それと同時にモータドライバ90に駆動信号を送り、基板回転モータ440を駆動して基板保持回転部40を回転させることによって基準基板SWを回転させる。なお、以下の加熱処理中において基準基板SWの加熱および回転は続けられる。
【0085】
そして、ランプ20から発せられた放射熱は石英ガラス30を透過して基準基板SWに至り、それにより基準基板SWは加熱され、その温度に対応する熱放射が発生する。
【0086】
以上のような加熱を全加熱ゾーンZ1〜Z5の基準ディテクタ545による基準基板SWの温度Trefの計測結果が目標温度に達するまで続ける(ステップS4)。
【0087】
すなわち、各加熱ゾーンZ1〜Z5における基準プローブ540に入射した熱放射は各基準ディテクタ545に捉えられ、その電気信号はそれぞれ演算部550に送られ、そこで各加熱ゾーンZ1〜Z5ごとに基準基板温度Trefが、加熱処理の間、常時求められ、制御部60に送られる。すると、制御部60は得られた基準基板温度Trefと目標温度とを各加熱ゾーンZ1〜Z5ごとに比較し、全加熱ゾーンZ1〜Z5が目標温度に達するまで基準基板SWの加熱を続ける。なお、この目標温度は後に実際の基板加熱処理における目標温度と同じ値であり、その温度での実効反射率ρr1,ρr2を求めておくことによって、実際の加熱処理における基板温度TWの計測結果を、より正確なものとすることができる。
【0088】
つぎに、各加熱ゾーンZ1〜Z5において、回転式セクタ524を回転させつつ放射強度L1(Tref),L2(Tref)および基準放射強度を計測し、実効反射率ρr1,ρr2を算出して、演算部550内のメモリに加熱ゾーンZ1〜Z5ごとに記憶する(ステップS5)。
【0089】
すなわち、基準基板SWからの熱放射は各加熱ゾーンZ1〜Z5の計測ユニット520、基準プローブ540に入射し、それぞれディテクタ526、基準ディテクタ545に導かれる。その際、モータドライバ530を通じてモータ525が駆動され、回転式セクタ524は回転される。そして、ディテクタ526は放射強度の電気信号を演算部550に送る。すると、演算部550はその電気信号を時系列的に一時記憶して、その放射強度の最大値および最小値を抽出するピーク検出を行い、それぞれ放射強度L1(Tref)、L2(Tref)とする。同様に、基準ディテクタ545は基準放射強度の電気信号をそれぞれ演算部550に送る。すると、演算部550はそれをもとに加熱ゾーンZ1〜Z5ごとに基準基板の温度Trefを求めるとともに、それと放射強度L1(Tref)、L2(Tref)とを数6および数8の式に用いて実効反射率ρr1,ρr2を算出して、演算部550内のメモリに加熱ゾーンZ1〜Z5ごとに記憶し、この実効反射率計測処理を終了する。
【0090】
以上の処理により基板Wの加熱処理の準備が終了したので、つぎに、実際の基板Wの加熱処理に移る。
【0091】
図9は基板加熱処理の手順を示すフローチャートである。以下、図9を用いて処理手順の説明を行う。なお、以下の基板加熱処理において、各種演算および制御は演算部550や制御部60によりソフトウエア的に行われる。また、ディテクタ526および演算部550よりなる放射温度計は事前に黒体炉により校正を受けたものを使用している。
【0092】
まず、図示しない外部搬送装置により、基板Wが炉体10内に搬入される(ステップS11)。
【0093】
なお、この処理にあたり予め基準プローブ540および基準ディテクタ545は作業者により除去されている。
【0094】
つぎに、基板Wの熱処理を開始する(ステップS12)。
【0095】
すなわち、前述の実効反射率ρr1,ρr2の算出処理と同様に全加熱ゾーンZ1〜Z5のランプ20を点灯して基板Wを加熱しつつ、基板保持回転部40を回転させることによって基板Wを回転させる。これにより、加熱された基板Wから基板温度TWに対応する熱放射が発生する。なお、以下の加熱処理中において基板Wの加熱および回転は続けられる。
【0096】
つぎに、各加熱ゾーンZ1〜Z5において、回転式セクタ524を回転させつつ放射強度L1(TW),L2(TW)が計測される(ステップS13)。
【0097】
すなわち、基板Wからの熱放射は多重反射の後、各加熱ゾーンZ1〜Z5の計測ユニット520において石英ガラス板522、フィルタ523を透過し、さらに、回転されている回転式セクタ524を通過してディテクタ526に入射し、それにより得られた放射強度L1(TW),L2(TW)を表す電気信号がそれぞれ演算部550に送信される。
【0098】
つぎに、演算部550は加熱ゾーンZ1〜Z5ごとに基板放射率εWを算出し、それを用いて基板温度TWを算出する(ステップS14)。
【0099】
すなわち、演算部550は加熱ゾーンZ1〜Z5ごとにディテクタ526からの電気信号に対して実効反射率計測処理と同様にピーク検出を行って放射強度L1(TW),L2(TW)を求め、それらを数9の式に用いて比率βを求め、さらに、得られた比率βおよび既に得られている実効反射率ρr1,ρr2を数10の式に用いることにより基板放射率εWを求める。そして得られた基板放射率εWと放射強度L1(TW)またはL2(TW)と、それに対応する実効反射率計測処理で求めた実効反射率ρr1またはρr2とを数11の式に用いて黒体の放射強度Lb(TW)を求め、それを数3の式に用いて加熱ゾーンZ1〜Z5ごとに基板温度TWを求める。
【0100】
つぎに、得られた基板温度TWと目標温度とを加熱ゾーンZ1〜Z5ごとに比較して、両者が一致するようにそれぞれに加熱ゾーンZ1〜Z5のランプ20のフィードバック制御を行う(ステップS15)。
【0101】
すなわち、演算部550で求められた各加熱ゾーンZ1〜Z5の基板温度TWは温度信号として制御部60に送られ、それを基に制御部60は基板温度TWを目標温度に保つようにPIDフィードバック制御のための制御信号をランプドライバ80に送り、ランプドライバ80はその温度制御信号に応じた加熱用電力を対応する加熱ゾーンZ1〜Z5のランプ20に供給する。
【0102】
そして、制御部60は処理時間の終了の判定を行い(ステップS16)、設定されていた処理時間が経過するまでステップS11〜ステップS15の処理を継続して行う。そして、処理時間が経過すると、外部搬送装置がその基板Wを搬出する(ステップS17)。
【0103】
つぎに、制御部60は外部の基板搬送装置からの信号により準備されていた全基板Wの加熱処理の終了の判定を行い(ステップS18)、全基板Wの加熱処理が終了していなければステップS11に戻り、外部搬送装置が次の基板Wを搬入し、逆に終了していれば一連の基板加熱処理を終了する。
【0104】
以上で、1枚の基板Wの加熱処理が終了したことになるが、複数枚の基板Wを加熱処理する場合には、さらに、上記の基板加熱処理を各基板Wに対して繰り返し行う。その際、前述のように必要ならば、数枚の基板Wの加熱処理の後に再び実効反射率計測処理を行った後、さらに基板Wの加熱処理を続けて行ってもよい。
【0105】
以上説明したように、この実施の形態によれば、反射板510の穴510aに対して基板Wと反対側(穴510aの下方)にディテクタ526を備えるとともに、穴510aの開口部OPとディテクタ526との間に図4のような回転式セクタ524を備えるので、回転式セクタ524を回転することにより容易に2種の実効反射率ρr1,ρr2の状態を実現することができる。そのため、単一のディテクタ526により実効反射率ρr1,ρr2に対する放射強度L1,L2を計測することができるので、基板温度TWの計測精度を高くすることができ、それにより良質な熱処理を行うことができ、さらに、装置の製造コストを抑えることができる。
【0106】
また、ディテクタ526によって計測される熱放射の、ほぼ計測波長のみを透過するフィルタ523を基板Wとディテクタ526との間に備えるので、ディテクタ526の温度上昇を抑えることができ、それにより基板温度TWの計測精度をさらに高くすることができる。
【0107】
また、上記のようにして算出された基板温度TWに基づいてランプ20へ供給される加熱用電力を制御するため、基板Wを加熱しすぎるといったことがないので、熱効率がよく、消費電力を抑えることができる。
【0108】
また、上記のようにして算出された基板温度TWに基づいてランプ20に供給する加熱用電力を制御するため、精密な基板Wの温度制御を行うことができ、したがって、複数の基板Wを順次処理していく場合にも基板Wごとの処理温度を均一にすることができるので、基板処理品質が均一になる。
【0109】
また、各加熱ゾーンZ1〜Z5ごとにランプ20に供給する加熱用電力を制御するので、より精密な基板Wの温度制御を行うことができる。
【0110】
さらに、複数の基板Wを順次熱処理していく場合においても基板放射率εWを求めつつ加熱処理を行うので、基板Wごとに予め基板放射率εWを求める必要がないので処理工程を少なくすることができ、処理コストを抑えることができる。
【0111】
<4.変形例>
この実施の形態の熱処理装置1では回転式セクタ524を図4のようなものとしたが、この発明はこれに限られない。図10は回転式セクタの変形例を示す図である。例えば、図10(a)のようにスリットSLを備えた反射部RPを半円部分とし、他の半円部分を切り欠き部NPとしたり、図10(b)のように、円板を6等分し、スリットSLを備えた反射部RPと切り欠き部NPとを交互に設けたり、また、図10(c)のように円板を4等分し、そのうちの隣り合わない2つの扇形部分をスリットSLを備えた反射部RPとし、その他の部分を反射性および透過性のあるハーフミラー等の素材により形成し、スリットを設けない半透過部HPとしたり、図10(d)のように円板を4等分し、そのうちの隣り合わない2つの扇形部分の組のそれぞれをスリットSLを備えた反射部RP1およびRP2とし、反射部RP1と反射部RP2それぞれの表面に蒸着する金属を異なるものとしたり、一方には黒体塗料を塗って反射しないものとするなど反射率を異なるもの等としてもよい。なお、これらの反射率の異なる部分の面積は必ずしも等しくなくてもよい。さらに、ディテクタ526の上面を反射面とし、図10(e)のように円板を4等分し、スリットSLを備えた非反射部NRPと切り欠き部NPとを交互に設けてもよい。
【0112】
また、この実施の形態では、2種の実効反射率ρr1,ρr2について放射強度を求めるものとしたため、反射部RPのスリットSLの幅を同じものとしたが、この発明はこれに限られず、3種以上の実効反射率を用いる場合には例えば図4の回転式セクタ524の2つの反射部RPのそれぞれにおけるスリットSLの幅を互いに異なるものとする等により3種以上の実効反射率を実現してもよい。
【0113】
また、この実施の形態の熱処理装置1では、穴510aの形状を円筒状としたが、この発明はこれに限られず、穴510aの形状を逆円錐台形状としたり、底面が多角形の柱状等のものとしてもよい。
【0114】
また、この実施の形態の熱処理装置1では、各加熱ゾーンZ1〜Z5のそれぞれにおいて基板Wの温度を計測し、それぞれ独立にランプ20の制御を行うものとしたが、この発明はこれに限られず、加熱ゾーンを設けず、温度計測部50を一つだけ設けて、全ランプをそれにより得られた基板温度に基づいて制御したり、各加熱ゾーンに計測ユニット520を設けて、それらにより得られた基板温度を平均して全ランプを制御する等、熱源の制御をその他の方法により行ってもよい。
【0115】
また、この実施の形態の熱処理装置1では、穴510aの下方に回転式セクタ524を設けるものとしたが、この発明はこれに限られず、穴510a、すなわち、空洞内に実効反射率切り替え手段を設けるものとしてもよい。
【0116】
また、この実施の形態の熱処理装置1では、多重反射空洞からの熱放射の放射強度をディテクタ526により直接捉えて計測するものとしたが、この発明はこれに限られず、基準プローブ540と基準ディテクタ545のようにロッド状の導光部材と計測ユニット外で熱放射を直接受けない位置に設けられたディテクタとを光ファイバー等で接続して、導光部材に入射する熱放射をディテクタに導いて計測する等としてもよい。同様に、この実施の形態では計測ユニット520内にモータ525を設けるものとしたが、この発明はこれに限られず、計測ユニット外にモータを設け、その回転軸を長尺のものとし、計測ユニット内において回転式セクタを取り付けるもの等としてもよい。これらにより、熱に弱いディテクタおよびモータの温度の上昇を一層抑え、それらの機器の保護を図り、より高い測定精度を得ることができる。
【0117】
また、この実施の形態の熱処理装置1では、実効反射率計測処理における基準基板温度Trefの計測は基準プローブ540および基準ディテクタ545によるものとしたが、この発明はこれに限られず、熱電対を基準基板に取り付けて直接温度を求めるもの等、その他の手段によるものでもよい。
【0118】
また、この実施の形態の熱処理装置1では、フィルタ523は石英ガラス板522の下面に金属酸化物を蒸着して設けるものとしたが、この発明はこれに限られず、石英ガラス上面に蒸着したり、石英ガラス板に密着しないで、その下方近傍等、石英ガラス板内部からディテクタまでの熱放射の通過経路中に設けてもよい。
【0119】
さらに、この実施の形態の熱処理装置1では、熱源をランプ20としたが、この発明はこれに限られず、電熱線ヒータ等その他のものを用いてもよい。
【0120】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項の発明によれば、穴に対して基板と反対側または穴の内部に放射強度計測手段を備えるとともに、穴の開口部と放射強度計測手段との間に実効反射率切り替え手段を備えるので、単一の放射強度計測手段により複数の実効反射率に対する放射強度を計測することができるので、基板の温度計測精度を高くすることができ、それにより良質な熱処理を行うことができ、さらに、製造コストを抑えることができる。
【0121】
また、請求項の発明によれば、放射強度計測手段によって計測される熱放射の、ほぼ計測波長のみを透過するフィルタを基板と放射強度計測手段との間に備えるので、放射強度計測手段の温度上昇を抑えることができ、それにより基板の温度計測精度をさらに高くすることができる。
【0122】
また、請求項4の発明によれば、上記のようにして算出された基板の温度に基づいて熱源へ供給される加熱用電力を制御するため、基板を加熱しすぎるといったことがないため、より熱効率がよく、消費電力を抑えることができる。
【0123】
また、請求項1ないし請求項の発明によれば、実効反射率切り替え手段により切り替えられる複数の実効反射率のそれぞれについて穴における熱放射の放射強度を放射強度計測手段によって計測し、それら計測された放射強度に基づいて基板の温度を算出するため、単一の放射強度計測手段によって複数の実効反射率に対する放射強度を計測することができるので、基板の温度計測精度を高くすることができ、それにより良質な熱処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である基板処理装置の縦断面図である。
【図2】温度計測部における計測ユニット付近の断面模式図である。
【図3】フィルタの波長による分光特性を示す図である。
【図4】回転式セクタの平面図である。
【図5】実施の形態の熱処理装置の平面的な構成を示す図である。
【図6】穴が両端開口状態での基板と反射板等との多重反射を説明するための図である。
【図7】穴が一端開口状態での基板と反射板等との多重反射を説明するための図である。
【図8】実効反射率計測処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】基板加熱処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】変形例における回転式セクターの平面図である。
【符号の説明】
1 熱処理装置
20 ランプ(熱源)
60 制御部
510 反射板
510a 穴
523 フィルタ
524 回転式セクタ(反射板、実効反射率切り替え手段)
525 モータ(駆動手段、実効反射率切り替え手段)
526 ディテクタ(放射強度計測手段)
540 基準プローブ(基準温度計測手段)
545 基準ディテクタ(基準温度計測手段)
550 演算部(温度算出手段、基準温度計測手段)
L1,L2 放射強度
RP 反射部
SL スリット(開孔)
TW 基板温度
Tref 基準基板温度
W 基板
Z1〜Z5 加熱ゾーン(加熱領域)
ρr1,ρr2 実効反射率

Claims (5)

  1. 基板に熱処理を施す熱処理装置であって、
    基板を保持する保持手段と、
    前記保持手段に保持された基板を加熱する熱源と、
    前記保持手段に保持された基板に対向して配置されるとともに、穴を備え、かつ基板からの熱放射を反射する反射板と、
    前記基板と前記反射板との間の熱放射であって、前記穴の開口部に配置された石英ガラス板を透過した熱放射の放射強度を計測する放射強度計測手段と、
    前記保持手段に保持された基板に対向する前記穴の開口部の前記石英ガラス板と前記放射強度計測手段との間に設けられるとともに、前記穴の実効反射率を複数の実効反射率の間で切り替える実効反射率切り替え手段と、
    前記放射強度計測手段によって前記複数の実効反射率のそれぞれについて計測された複数の放射強度に基づいて基板の温度を算出する温度算出手段と、
    を備え、
    前記保持手段と、前記保持手段によって保持された前記基板と、前記反射板との間に閉空間を形成し、
    前記放射強度計測手段および前記実行反射率切り替え手段は、前記穴の下方に設けられたケーシングに収容されていることを特徴とする熱処理装置。
  2. 請求項1に記載の熱処理装置であって、
    前記実効反射率切り替え手段が、
    前記保持手段に保持された基板に対向して設けられ、開孔と熱放射を反射する部分とを備える反射板と、
    前記反射板を回転させる駆動手段と、
    を備えることを特徴とする熱処理装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の熱処理装置であって、
    前記放射強度計測手段によって計測される熱放射の、ほぼ計測波長のみを透過するフィルタを前記石英ガラス板と前記放射強度計測手段との間に備えることを特徴とする熱処理装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の熱処理装置であって、
    前記温度算出手段により算出された基板の温度に基づき前記熱源へ供給される加熱用電力を制御する制御手段を備えることを特徴とする熱処理装置。
  5. 請求項4に記載の熱処理装置であって、
    前記熱源が複数の加熱領域に分割されているとともに、当該複数の加熱領域のそれぞれに対して前記反射板に前記穴および前記放射強度計測手段が設けられているものであって、
    前記複数の加熱領域ごとに算出された基板の温度に基づいて、前記熱源における前記複数の加熱領域ごとに供給される加熱用電力を制御することを特徴とする熱処理装置。
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