JP4186365B2 - 温度測定方法、温度制御方法及び熱処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体(被測定体)の温度を測定するための温度測定方法、温度制御方法及び熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、半導体集積回路を製造するためには、半導体ウエハ等のシリコン基板に対して成膜処理、アニール処理、酸化拡散処理、スパッタ処理、エッチング処理等の各種の熱処理を複数回に亘って繰り返し行なわれる。
この場合、例えば目的とする膜厚になるように堆積膜を精度良く形成するなど、精度の良い熱処理を行なうためには、熱処理プロセス時の半導体ウエハの温度を厳密に管理し、これを所望のプロセス温度に安定的に維持する必要がある。
従来の一般的な枚葉式の熱処理装置にあっては、半導体ウエハを支持する円板状、或いは円柱状のサセプタの載置面の近傍に温度検出素子として例えば熱電対を埋め込み、ウエハの温度を間接的に測定し、この測定結果に基づいて加熱ヒータをフィードバック制御して所望の温度を維持するようになっている。
【0003】
ところで、このような温度測定方法にあっては、実際には、サセプタ温度と半導体ウエハの真の温度とは、プロセス時の圧力にもよるが10〜40℃程度も差があってウエハ温度が低く、ウエハ温度を正確に求めることが困難である。
そこで、プロセス中の半導体ウエハに直接、熱電対を接触させて温度を測定することも考えられるが、プロセス中のウエハに熱電対を直接接触するのは困難であり、特に、プロセス中にウエハを回転させるような熱処理装置では、熱電対をウエハに直接接触させて温度測定することは不可能である。
そこで、最近にあっては、被測定体に対して非接触で比較的精度の高い温度を測定できる装置として放射温度計を用いることが行なわれている。この放射温度計は、被測定体、すなわちこの場合には半導体ウエハからの放射輝度を測定し、これよりウエハの熱を求めるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、通常の半導体ウエハを熱処理する場合には、ウエハの表面状態(ウエハの上面及び下面を含む)によって、その放射率がかなり変化することが知られており、従って、ウエハ表面の膜種によってもその放射率が変化する。一般的には、ウエハの表面には多層に亘って異なる膜種の堆積膜が形成されるので、熱処理装置には、種々異なった表面状態のウエハが導入されることになり、従って、膜種に対応させて予め求めた放射率を固定的に使用すると共に、入射輝度を一部補正する等して温度制御を行なうようになっている。
しかしながら、放射温度計が設置される熱処理装置内は一般的に多重反射環境となっており、このため系内で多重反射した光が外乱となって放射温度計に入射することになるので、従来の温度測定方法では、十分に高い精度でウエハの真の温度を検出することが困難であるという、問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、多重反射環境において高い精度で被測定体(被処理体)の温度を測定することができる温度測定方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、被処理体の真の温度を精度良く求めることにより、複数の被処理体間に亘って熱処理の再現性を高めることができる温度制御方法及び熱処理装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に規定する発明は、多重反射環境に設置された被測定体の温度を、前記被測定体から放射される光或いは熱線を捕捉する検出子を有して、放射率を利用した放射温度計を用いて測定する温度測定方法において、前記放射率として下記式で定まる実効放射率εeff を用いるようにしたことを特徴とする温度測定方法である。
εeff =(1−α)・ε+α・ε/[1−F・r・(1−ε)]
ここでFは形態係数(View Factor)、εは被測定値の放射率、rは放射温度計側の反射板の反射率、αは多重反射の重み係数である。
また前記形態係数Fは下記式で定義され、この式中の”θ”は”検出子の入射面の直径と、この入射面に直交する被測定体の一点とがなす角度の1/2”である。
F=(1+cos2θ)/2
上述のように、多重反射の重みを考慮することにより、被測定体の真の温度を精度良く求めることが可能となる。
【0007】
請求項2に規定する発明は、処理容器内で被処理体支持具により支持された被処理体に所定の熱処理を施すために前記被処理体を加熱手段により所定の温度に加熱し、前記被処理体の温度を、前記被測定体から放射される光或いは熱線を捕捉する検出子を有する放射温度計により測定して前記加熱手段をフィードバック制御するようにした温度制御方法において、前記被処理体の温度を求めるために下記式により定まる実効放射率εeff を用いるようにしたことを特徴とする温度制御方法である。
εeff =(1−α)・ε+α・ε/[1−F・r・(1−ε)]
ここでFは形態係数(View Factor)、εは被処理体の放射率、rは放射温度計側の反射板の反射率、αは多重反射の重み係数である。
また前記形態係数Fは下記式で定義され、この式中の”θ”は”検出子の入射面の直径と、この入射面に直交する被測定体の一点とがなす角度の1/2”である。
F=(1+cos2θ)/2
上述のように、多重反射の重みを考慮することにより、被処理体の真の温度を精度良く求めることができるので、複数の被処理体間に亘って熱処理の再現性を向上させることができる。
【0008】
請求項3に規定する発明は、被処理体に所定の熱処理を施す熱処理装置において、前記被処理体を収容する処理容器と、前記被処理体を支持する被処理体支持具と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記被処理体の温度を、前記被測定体から放射される光或いは熱線を捕捉する検出子を有して非接触で測定するために下記式で定まる実効放射率εeff を用いる放射温度計と、この放射温度計で得られる結果に基づいて前記加熱手段を制御する温度制御部とを備えたことを特徴とする熱処理装置である。
εeff =(1−α)・ε+α・ε/[1−F・r・(1−ε)]
ここでFは形態係数(View Factor)、εは被処理体の放射率、rは放射温度計側の反射板の反射率、αは多重反射の重み係数である。
また前記形態係数Fは下記式で定義され、この式中の”θ”は”検出子の入射面の直径と、この入射面に直交する被測定体の一点とがなす角度の1/2”である。
F=(1+cos2θ)/2
上述のように、多重反射の重みを考慮することにより、被処理体の真の温度を精度良く求めることができるので、複数の被処理体間に亘って熱処理の再現性を向上させることができる。
【0009】
この場合、請求項4に規定するように、前記被処理体支持具は、前記被処理体を回転するように構成してもよい。
また、請求項5に規定するように、例えば前記処理容器には、処理ガスを導入するための処理ガス導入手段が設けられる。
また、請求項6に規定するように、例えば前記処理容器には、前記被処理体の放射率を測定してその結果を前記放射温度計へ与えるための放射率測定手段が設けられるようにしてもよい。
これによれば、熱処理中においてリアルタイムで被処理体の放射率を求めることができるので、膜種などの放射率を予め記憶するなどの操作を不要にでき、しかも、この放射率を制御パラメータとして用いることにより、被処理体の真の温度を一層精度良く求めることが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る温度測定方法、温度制御方法及び熱処理装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る熱処理装置の一実施例を示す構成図、図2は多重反射環境のモデルを説明するための説明図、図3は放射温度計に対する形態係数(View Factor)を説明するための説明図である。
まず、本発明方法である温度測定方法と温度制御方法が実施される本発明の熱処理装置について説明する。
図示するように、この熱処理装置2は、例えばステンレススチール等により円筒体状に成形された処理容器4を有している。この処理容器4の上部側壁には、この処理容器4内へ必要な処理ガスを導入するための処理ガス導入手段として処理ガスノズル6が設けられ、これに対向する容器側壁には排気口8が設けられており、この排気口8には図示しない真空ポンプ等を介設した真空排気系を接続して処理容器4内を真空引き可能としている。
【0011】
上記処理容器4の底部には、被処理体支持具として例えばSiC製の円筒体よりなるガードリング10が設置されている。このガードリング10の上部は、内側へ僅かに直角に屈曲されて、その内側上端部を断面L字状にその周方向に沿ってリング状に切り欠くことによって、ウエハ保持部12を形成しており、このウエハ保持部12に被処理体としての半導体ウエハWの裏面周縁部を当接させてこれを支持するようになっている。
このガードリング10の下端部は、軸受、例えばスラスト軸受14を介して容器底部17に設置されており、従って、このガードリング10はその周方向へ自転可能になされている。そして、この処理容器4の下部の外側には、処理容器4の隅部をこれより僅かに離間させて覆うようにして断面L字状になされた案内リング16が設けられている。この案内リング16の下部内側端部は、軸受、例えばスラスト軸受18を介して上記容器底部17の下面周縁部に取り付けられており、従って、この案内リング16自体もその周方向へ自転可能になされている。そして、この案内リング16の上端の内側面には、その周方向に沿って適宜間隔ずつ離間させて例えば永久磁石よりなる磁石手段20が設けられると共に、これに対向する上記ガードリング10の上部外側面には、上記磁石手段20と反対の極性となる永久磁石22がその周方向に沿って適宜間隔ずつ離間させて設けられている。尚、上記磁石手段20として電磁石コイルを用いてもよい。
【0012】
これにより、上記磁石手段20と永久磁石22とは磁気的に結合して磁気カップリングを形成するようになっている。図示例ては磁石手段20のN極と永久磁石22のS極が磁気結合している。従って、この案内リング16を処理容器4の周方向へ回転させることによって、磁気カップリングされているガードリング10もこれに追従して回転(自転)することになる。この場合、上記案内リング16の下部側面には、その周方向に沿ってラック22が形成されており、このラック22には駆動モータ26によって回転するピニオン28が歯合されて、上述のように案内リング16を回転し得るようになっている。
【0013】
一方、処理容器4の天井部は開放されており、この部分には、例えばOリング等のシール部材30を介して透明な石英製の透過窓32が気密に取り付けられている。そして、この透過窓32の外側にはランプ箱34が設けられると共に、このランプ箱34内には、加熱手段として複数、図示例では3個の加熱ランプ36A、36B、36Cが設置されており、これからの熱線により処理容器4内の半導体ウエハWを加熱するようになっている。
そして、このように形成された処理容器4の底部に本発明の特徴とする放射温度計40が設けられる。具体的には、この放射温度計40は、処理容器4の底部17にその先端を内部に露出させて設けた3つの検出子42A、42B、42Cと、各検出子42A、42B、42Cとそれぞれ例えばグラスファイバ43により接続された温度計本体44とよりなる。各検出子42A〜42Cは、例えば透明な円柱状の石英ロッドよりなり、上記ウエハWの裏面より放射される光或いは熱線を捕捉するようになっており、この熱線等を、各ファイバ43を介して温度計本体44へ導入するようになっている。この温度計本体44では、導入された光或いは熱線の輝度と、本発明において特徴とする後述する式によって定まる有効放射率とによってウエハWの真の温度を求めるようになっている。そして、この温度計本体44には、ここで得たウエハWの真の温度値に基づいて、上記各加熱ランプ36A〜36Cの温度をフィードバック制御する温度制御部46が接続されている。
【0014】
一般的には、各加熱ランプ36A〜36Cは、ウエハ表面を複数に区分したゾーン毎にそれぞれ対応しているので、各検出子42A〜42Cもそれに対応させて設けてあり、各加熱ランプ36A〜36Cを個別に制御できるようになっている。また、ここで、ウエハWの裏面48と容器底部17の上面50は所定の反射率を有する反射面となっており、従って、ウエハ裏面48と底部上面50とで多重反射環境が形成されていることになる。
尚、図中、52は、半導体ウエハWを搬出入する際に開閉されるゲートバルブであり、また容器底部17には、ウエハWの搬入搬出時に昇降される図示しないリフタピンも設けられる。
【0015】
次に、以上のように構成された本発明装置の動作について説明する。
まず、予め真空状態に維持された処理容器4内へ、図示しないロードロック室等から開放されたゲートバルブ52を介して半導体ウエハWを搬入し、このウエハWを図示しないリフタピンを駆動することによってガードリング10の上端のウエハ保持部12に載置して保持させる。
そして、ウエハWの搬入が完了したならば、ゲートバルブ52を閉じて処理容器4内を密閉すると共に、処理容器4内を真空引きしつつ処理ガスノズル6から処理すべきプロセスに対応した所定の処理ガスを処理容器4内へ導入し、所定のプロセス圧力を維持する。例えば熱処理として成膜処理を行なうならば、成膜ガスをN2 等のキャリアガスと共に処理容器4内の処理空間Sへ導入する。
【0016】
この時、容器底部の外側に設置した案内リング16の回転駆動を開始し、これにより、この案内リング16の磁石手段20は容器内部の永久磁石22と磁気的に結合されているので、案内リング16の回転に従って、ガードリング10も回転し始めることになって、ウエハWも回転する。このウエハWの回転は処理期間中、継続して行なわれる。
これと同時に、温度制御部46の制御により容器天井部に設けてある加熱ランプ36を駆動し、これにより加熱ランプ36から放射された熱線は天井部に設けた透過窓32を介して処理空間Sに入射し、更に、半導体ウエハWの上面に照射されてこれを所定の温度まで加熱昇温し、その温度に維持されることになる。
【0017】
ここでウエハWの温度制御について説明すると、ウエハWの裏面48から放射される熱線等の光は容器底部17に設けた石英ロッドよりなる各検出子42A〜42Cに入射し、各グラスファイバ43を介して温度計本体44に導かれる。この温度計本体44では、入射した光の輝度と、本発明の特徴とする後述するような実効放射率εeff を用いてウエハWの温度を算出することになる。ここで算出した温度値は、後述するようにウエハWの真の温度に精度良く非常に近い値であり、この算出値に基づいて温度制御部46は、各加熱ランプ36A〜36Cへの投入電力を個別に制御する。この場合、上記ウエハWの裏面48と容器底部17の上面50とは共に鏡面に類似することから多重反射環境を形成しており、各検出子42A〜42Cには、ウエハWの裏面48からの直接光のみならず、ウエハ裏面48と容器底部上面50との間で複数回反射した多重反射光も外乱として入射するが、上記実効放射率は外乱として入射する多重な反射光の寄与率を動的に加味した放射率となっているので、ウエハの真の温度に非常に近い温度を算出することができ、従って、ウエハ温度を高い精度で目標とする温度に維持することが可能となる。
【0018】
ここで、図2に示す多重反射環境のモデルを用いて実効反射率について説明する。図2において、54は平板状の被測定体であり、図1中の半導体ウエハWに対応し、この被測定体54の温度を、検出子42と温度計本体44とを有する放射温度計40により検出する。この検出子42を設置した部分には、被測定体54と平行に反射板56を設置しており、上記被測定体54の下面と上記反射板56の上面との間で多重反射環境が形成される。従って、検出子42には、被測定体54からの直接光58Aのみならず、この多重反射環境内で反射した多重反射光56Bも入射することになる。ある物体の輝度Eは、周知のようにその物体の放射率εと温度(絶対温度)Tに依存して次の式のように定まる。
E=ε・f(T) … (1)
尚、f(T)は温度Tの関数を示す。
ここで、本発明では、上記放射率εに替えて下記式で定まる実効放射率εeff を用いる。
【0019】
εeff =(1−α)・ε+α・ε/[1−F・r・(1−ε)]
ここでF:形態係数(View Factor)
ε:被測定値54(半導体ウエハ裏面48)の放射率
r:放射温度計側の反射板56(容器底部17の上面50)の反射率
α:多重反射の重み係数
上記形態係数Fは、図3に示すように検出子42の入射面の直径の両端と、この入射面に直交する被測定体54の一点とがなす角度の1/2の角度θとすると、下記式のように定義される。
F=(1+cos2θ)/2 … (3)
また、多重反射の重み係数αは、計測される全輝度に対して多重反射光の輝度がどの程度寄与しているかを示す寄与率を示しており、このαは0〜1の範囲内の値を取る。例えば、反射面56の面積が大きくなれば、このαの値は大きくなり、逆に反射面56の面積が小さくなれば、このαの値も小さくなる。この多重反射の重み係数αは、熱処理装置毎に及び検出子42の開口数(NA)毎に依存して定まる値である。
【0020】
上述のように、実効放射率εeff を定めることによって、被測定体54の真の温度と非常に近い温度を算出することができる。上記した検出子42は、図1中の各検出子42A〜42Cに対応しており、それぞれの対応するゾーン毎に精度の高い温度を検出することができる。
また、処理容器4内へ搬入されるウエハWの裏面に付着している膜種に対応する放射率εは、予め温度計本体44へ記憶させてこれを処理の進み具合に応じて順次引き出すようにしてもよいし、外部より順次入力するようにしてもよい。
ここで、本発明方法を用いて放射温度計により温度を測定するシミュレーションを行なったので、その時の評価結果について説明する。
図4は被処理体(被測定体)の放射率εと実効放射率εeff との関係を示すグラフである。ここでFは0.96、rは0.9、αは0.66(NA=0.2)にそれぞれ設定されている。比較例1、2としてα=1の場合と、α=0の場合をそれぞれ示している(前記式2を参照)。
【0021】
このグラフから明らかなように、α=1の比較例1の場合及びα=0の比較例2の場合は、共に、シミュレーション結果の実効放射率から大きくずれており、好ましくない。これに対して、α=0.66に設定した本発明の場合の実効放射率は、シミュレーション結果の実効放射率と高い精度で一致しており、良好な結果を示していることが判明した。
図5は図4に示した測定結果を実際のウエハ温度に反映させた時の放射率とウエハ温度との関係を示すグラフである。ここでは、設定温度としてウエハ温度を1100℃に設定している。このグラフから明らかなように、α=1の比較例1場合は、放射率εが小さい時は設定温度1100℃よりも100℃以上もかなり低い値となっており、放射率εが大きくなるに従って設定温度1100℃との差が次第に小さくなってきている。
また、α=0の比較例2の場合は、放射率εが小さい時は設定温度1100℃よりも200℃以上も大幅に高くなっており、放射率εが大きくなるに従って設定温度1100℃との差が急に小さくなってきている。このように、両比較例1、2は、共に放射率εが小さい程、設定温度との温度差が大きくなり、好ましくない。
【0022】
これに対して、本発明方法の場合には、ウエハ温度は、放射率εの大小に関係なく、設定温度である1100℃を略維持しており、高い精度でウエハ温度を検出できることが判明した。
図1に示す装置例では、3つの加熱ランプ36A〜36Cが設けられているが、実際には更に多数の加熱ランプを加熱ゾーン毎に対応させて設けてあり、従って、検出子42もそのゾーンに対応させた数だけ少なくとも設けるようにする。
また、ここでは各膜種のそれぞれの放射率εを予め温度計本体44に記憶させるなどして、プロセスの進行に従って必要に応じて特定の膜種の放射率εを選択して用いるようにしているが、これに限定されず、ウエハWの裏面48の放射率εをリアルタイムで測定し、この測定結果を温度計本体44へ導入するようにしてもよい。
【0023】
図6は、上記したような本発明装置の変形例を示す構成図である。尚、この図6において、図1中の構成部分と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。図6に示すように、ここでは、処理容器4の容器底部17に、放射率測定手段60を設けている。具体的には、この放射率測定手段60は、発光素子と受光素子とを組み込んでなる送受光部62A、62B、62Cをそれぞれ各検出子42A、42B、42Cに隣接させて設け、ここで得られた反射光の出力をリード64を介して放射率測定部66へ入力するように構成されている。このような構成により、各送受光部62A〜62Cより、所定の波長の照射光68A〜68Cをウエハ裏面48に向けて照射し、その時の各反射光70A〜70Cを同じ送受光部62A〜62Cで受ける。この時、各反射光70A〜70Cと照射光68A〜68Cのそれぞれの比を認識することによってウエハ裏面の対応する部分の各反射率rが判明し、1からこの反射率rを引き算することでこの部分における放射率εが判明する。ここで得られた各放射率εは、上記温度計本体44へ入力されて、前述したようにこの放射率εを基にして式2に示すように実効放射率εeff が算出されることになる。
【0024】
この場合には、予め膜種に対応する放射率を記憶等させる必要もなく、リアルタイムでその放射率を測定して、ウエハの温度制御に反映させることが可能となる。
また、ここでは、加熱手段として加熱ランプ36を設けたが、これに限定されず、抵抗加熱ヒータを用いてもよい。
図7は上記したように加熱手段として抵抗加熱ヒータを用いた時の被処理体支持具の一例を示す構成図である。この実施例の場合には、被処理体支持具として例えば窒化アルミ等よりなる円柱状のサセプタ72を設け、この中に加熱手段として絶縁された抵抗加熱ヒータ74を例えば同心円状にゾーン毎に電力制御可能に埋め込む。そして、更に、このサセプタ72の上部に、先端を処理容器4内へ臨ませた状態で検出子42A〜42Cを埋め込むようにすればよい。
【0025】
また、ウエハWをプロセス中に回転させない形成の熱処理装置の場合には、図1に示したようなサイドフロー形式の処理ガス導入手段に替えて、例えば熱線を透過する透明な石英ガラスよりなるシャワーヘッド構造の処理ガス導入手段を容器天井部に設ければよい。
更に、図7に示すようにサセプタ72に抵抗加熱ヒータ74を設けた場合には、透明でない例えばアルミニウム製の通常のシャワーヘッド構造を用いることができる。
また、ここでは熱処理として成膜処理を例にとって説明したが、これに限定されず、本発明はアニール処理、スパッタ処理、エッチング処理等の他の熱処理を行なう装置にも適用できるのは勿論である。
更には、被処理体としては、半導体ウエハに限定されず、LCD基板、ガラス基板等を処理する場合にも本発明を適用することができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
請求項1に規定する発明によれば、放射温度計により被測定体の温度を測定する場合、本発明で規定する実効放射率を用いることにより、被測定体の真の温度を精度良く求めることができる。
請求項2に規定する発明によれば、放射温度計により被処理体の温度を測定する場合、本発明で規定する実効放射率を用いることにより、被処理体の真の温度を精度良く求めることができる。従って、被処理体の熱処理の再現性を大幅に向上させることができる。
請求項3、4、5に規定する発明によれば、放射温度計により被処理体の温度を測定する場合、本発明で規定する実効放射率を用いることにより、被処理体の真の温度を精度良く求めることができる。従って、被処理体の熱処理の再現性を大幅に向上させることができる。
請求項6に規定する発明によれば、熱処理中においてリアルタイムで被処理体の放射率を求めることができるので、膜種などの放射率を予め記憶するなどの操作を不要にでき、しかも、この放射率を制御パラメータとして用いることにより、被処理体の真の温度を一層精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る熱処理装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】多重反射環境のモデルを説明するための説明図である。
【図3】放射温度計に対する形態係数を説明するための説明図である。
【図4】被処理体(被測定体)の放射率εと実効放射率εeff との関係を示すグラフである。
【図5】図4に示した測定結果を実際のウエハ温度に反映させた時の放射率とウエハ温度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明装置の変形例を示す構成図である。
【図7】加熱手段として抵抗加熱ヒータを用いた時の被処理体支持具の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
2 熱処理装置
4 処理容器
6 処理ガスノズル(処理ガス導入手段)
10 ガードリング(被処理体支持具)
32 透過窓
36A〜36C 加熱ランプ(加熱手段)
40 放射温度計
42A〜42C 検出子
43 グラスファイバ
44 温度計本体
46 温度制御部
54 被測定体
56 反射板
60 放射率測定手段
62 送受光部
66 放射率測定部
68A〜68C 照射光
70A〜70C 反射光
W 半導体ウエハ(被処理体)
Claims (6)
- 多重反射環境に設置された被測定体の温度を、前記被測定体から放射される光或いは熱線を捕捉する検出子を有して、放射率を利用した放射温度計を用いて測定する温度測定方法において、前記放射率として下記式で定まる実効放射率εeff を用いるようにしたことを特徴とする温度測定方法。
εeff =(1−α)・ε+α・ε/[1−F・r・(1−ε)]
ここでF:形態係数(View Factor)
ε:被測定値の放射率
r:放射温度計側の反射板の反射率
α:多重反射の重み係数
また前記形態係数Fは下記式で定義され、この式中の”θ”は”検出子の入射面の直径と、この入射面に直交する被測定体の一点とがなす角度の1/2”である。
F=(1+cos2θ)/2 - 処理容器内で被処理体支持具により支持された被処理体に所定の熱処理を施すために前記被処理体を加熱手段により所定の温度に加熱し、前記被処理体の温度を、前記被測定体から放射される光或いは熱線を捕捉する検出子を有する放射温度計により測定して前記加熱手段をフィードバック制御するようにした温度制御方法において、前記被処理体の温度を求めるために下記式により定まる実効放射率εeff を用いるようにしたことを特徴とする温度制御方法。
εeff =(1−α)・ε+α・ε/[1−F・r・(1−ε)]
ここでF:形態係数(View Factor)
ε:被処理体の放射率
r:放射温度計側の反射板の反射率
α:多重反射の重み係数
また前記形態係数Fは下記式で定義され、この式中の”θ”は”検出子の入射面の直径と、この入射面に直交する被測定体の一点とがなす角度の1/2”である。
F=(1+cos2θ)/2 - 被処理体に所定の熱処理を施す熱処理装置において、前記被処理体を収容する処理容器と、前記被処理体を支持する被処理体支持具と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記被処理体の温度を、前記被測定体から放射される光或いは熱線を捕捉する検出子を有して非接触で測定するために下記式で定まる実効放射率εeff を用いる放射温度計と、この放射温度計で得られる結果に基づいて前記加熱手段を制御する温度制御部とを備えたことを特徴とする熱処理装置。
εeff =(1−α)・ε+α・ε/[1−F・r・(1−ε)]
ここでF:形態係数(View Factor)
ε:被処理体の放射率
r:放射温度計側の反射板の反射率
α:多重反射の重み係数
また前記形態係数Fは下記式で定義され、この式中の”θ”は”検出子の入射面の直径と、この入射面に直交する被測定体の一点とがなす角度の1/2”である。
F=(1+cos2θ)/2 - 前記被処理体支持具は、前記被処理体を回転するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の熱処理装置。
- 前記処理容器には、処理ガスを導入するための処理ガス導入手段が設けられることを特徴とする請求項3または4記載の熱処理装置。
- 前記処理容器には、前記被処理体の放射率を測定してその結果を前記放射温度計へ与えるための放射率測定手段が設けられることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の熱処理装置。
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