JP3553707B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤに関し、特にキャップ/ベーストレッド構造からなる空気入りタイヤのベーストレッドゴムの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、空気入りタイヤの使用条件の過酷化につれてトレッドゴムに要求される性能が多岐に亘り、また、その要求も高度化してきている。
そのため、これを解決する手段の一つとしてトレッドゴムを二層構造として各々のゴム層に重要な特性を発揮させるようにし、しかも、相互に不足する性能を補完させるようにしたキャップ/ベーストレッド構造が使用されている。
【0003】
特に、最近では、空気入りタイヤの耐摩耗性の更なる向上の要求が増大して、キャップトレッドゴムに耐摩耗性の良い合成ゴムが使用されたり、または、粒径の小さいカーボンブラック種、即ち、高級カーボンブラック種が使用されるようになってきている。
【0004】
このため、キャップトレッドゴムの発熱が増加するので、低発熱のベーストレッドゴムの体積を可能な限り増加しようとする結果、ベーストレッドゴムに対してキャップトレッドゴムの肉厚が減少し、比較的短時間の走行によってキャップトレッドゴムが摩耗し尽くし下層のベーストレッドゴムがタイヤ踏面部に露出することからベーストレッドゴムの耐摩耗性がキャップトレッドゴムの耐摩耗性に近いレベルに設定されることが要求されてきており、現状では一般に、ベーストレッドゴムの耐摩耗性はキャップトレッドゴムの75%以上必要とされている。
【0005】
従って、ベーストレッドゴムのカーボンブラック種として耐摩耗性の良い前記高級カーボンブラック種が使用される一方で、ベーストレッドゴムの更なる低発熱化を図るためにカーボンブラックの一部量をシリカ/シラン混合充填剤に置き換え、カーボンブラックの使用量を減ずることが行われている。
【0006】
しかしながら、シリカ/シラン混合充填剤がベーストレッドゴムに混入されると、ベーストレッドとキャップトレッドとの弾性率の差が大きくなり、このためにゴム片がキャップゴムより剥離する現象(一般にチッピングと称する)が起こり易くなる不都合があった。
【0007】
また、ベーストレッドゴムの低発熱性を向上させるために、シリカ/シラン混合充填剤を混入せずに、単にカーボンブラック量を減少することも試みられているが、ベーストレッドゴムの耐破壊性が低下するために、やはり引き裂き破壊の発生が起こりやすくなると共に、ベーストレッドゴムに発熱耐久性の低下をもたらし実用化が困難であった。
【0008】
一方、キャップ/ベーストレッド構造の空気入りタイヤにおいて、ベーストレッドゴムの耐破壊性を向上させるためには、低歪みで硬く、高歪みで比較的軟らかくなることが必要である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決するためのものであり、キャップ/ベーストレッド構造の空気入りタイヤにおいて、ベーストレッドゴムの耐チッピング性、耐カット性及び発熱耐久性等に優れた空気入りタイヤを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ベーストレッドゴムに特定のゴム強化熱可塑性樹脂を配合することにより、上記目的のキャップ/ベーストレッド構造の空気入りタイヤを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の構成は以下の通りである。
(1)キャップ/ベーストレッド構造からなる空気入りタイヤにおいて、前記ベーストレッドに使用されるベーストレッドゴムに、10重量%以上の共役ジエン系ゴム成分と残部がガラス転移温度(Tg)100〜140℃の樹脂成分とよりなるゴム強化熱可塑性樹脂を、ゴム分100重量部に対して2〜50重量部配合したゴム組成物を使用したことを特徴とする。
(2)前記共役ジエン系ゴム成分が40〜65重量%であることを特徴とする。
(3)前記ゴム強化熱可塑性樹脂の形成に使用される共役ジエン系ゴム成分が、5%以下のトルエン不溶分を有するポリブタジエンまたはスチレン−ブタジエン共重合体であることを特徴とする。
(4)前記ゴム強化熱可塑性樹脂の樹脂成分が、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレンよりなる群から選択される少なくとも1種のビニル系単量体を含んでなる重合体であることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
図1を参照して、本発明にかかる空気入りタイヤ1を例示する。円環形状の一層のスチールカーカス層2と、その頭頂部に配設されたリング状の四層のベルト層3と、該ベルト層3の上部に配設されたキャップトレッド4とベーストレッド5からなるキャップ/ベーストレッド構造のトレッド部6とを備えており、該ベーストレッド5のゴムを本発明にかかるゴム組成物により作製する。
【0013】
また、本発明に係るゴム組成物のゴム成分(マトリックスゴム)としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴムまたはスチレンブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム単独またはこれらの混合ゴムが用いられる。混合ゴムとしては、天然ゴムおよび/またはポリイソプレンゴムとスチレンブタジエン共重合体ゴムとのブレンドが常用される。
【0014】
なお、本発明に係るゴム組成物には、カーボンブラック、シリカ等の無機充填剤、アロマ油、スピンドル油等の軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等、通常配合される適当量の配合剤を適宜配合することができるのは勿論のことである。
【0015】
以下に、本発明の作用を説明する。
共役ジエン系ゴム成分が10重量%未満では、マトリックスゴムとの相溶性・共加硫性が低下するため、破断伸びが著しく低下し、耐チッピング性が劣る。
共役ジエン系ゴム成分が40〜65重量%が好ましく、この範囲で上記特性が著しく向上する。また、65重量%より多い場合は、樹脂成分の割合が小さくなるため、十分な硬度が得られず、樹脂としての機能が低くなり、ゴム組成物としての機能の向上が顕著でなくなる。
【0016】
また、ゴム強化熱可塑性樹脂の形成に使用される共役ジエン系ゴム成分のトルエン不溶分が5%よりも多い、高い架橋状態にある場合は、ゴムマトリックスとの界面の補強性が十分でなく、このために全体の破壊特性が低下傾向となる。
また、ゴム強化熱可塑性樹脂の形成に使用される共役ジエン系ゴム成分の平均粒子径としては、600〜3500Åの範囲が好ましい。
600Å未満では、通常のタイヤ使用条件において、樹脂としての特性をゴムコンパウンドに伝えるのに十分な大きさでなく、3500Åを超える場合は、異物効果が大きくなり、破壊特性が低下傾向となる。
また、ゴム強化熱可塑性樹脂の樹脂成分のTgが100℃未満の場合、高温時の耐カット性、耐チッピング性が劣り、また140℃を超える場合、ゴムに混合した場合の分散性が著しく低下するため、耐チッピング性が劣る。
【0017】
更に、ゴム強化熱可塑性樹脂は、ゴム分100重量部に対して、2重量部未満では効果が認められず、50重量部を超えると破断伸びが低下し、耐チッピング性が劣る。
【0018】
本発明によると、ゴム強化熱可塑性樹脂中の共役ジエン系ゴム成分によって、該樹脂とマトリックスゴムとの相溶性・共加硫性を得ると共に、樹脂の硬さによってゴム全体の低歪みでの硬さを上げ、樹脂の高歪みでの柔らかさによって、ゴム全体の高歪みでの軟らかさを得ることにより、ベーストレッドゴムの耐チッピング性、耐カット性及び発熱耐久性等を向上させることができる。
【0019】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0020】
表1記載のゴム強化熱可塑性樹脂A〜Gを使用して、表2および表3記載の配合処方にてベーストレッドゴム組成物を調製した。
次いで、表2および表3記載の配合処方のゴム組成物をタイヤのベーストレッドに使用し、常法に従いサイズ10.00R20の各種試験タイヤを作製して、各種測定を下記の方法に従って行った。
【0021】
表1における共役ジエン系ゴム成分含量、ガラス転移温度(Tg)およびトルエン不溶分の測定は下記のとおりである。
(1)共役ジエン系ゴム成分含量の測定
(ア)樹脂A〜E
試料のゴム強化熱可塑性樹脂を下記の熱分解装置で分解して後、ガスクロマトグラフィー(GC)にて各イオンを分離し、水素炎イオン化検出器(Flame lonization Detector:FDI)を用いて、予めブタジエンゴムを用いて用意した検量線にてブタジエンの量を定量した(従って、ゴムがSBRの場合は、予めゴム成分中のスチレン量が分かっていることを要する。)
熱分解装置 日本分析工業社製JHP−3型
分解条件 590℃、3秒
GC HP5890A
カラム DB1(J&W Scientific社製 長さ 30m)
測定温度範囲 70℃〜300℃
昇温速度 15℃/分
(イ)樹脂F,G
樹脂成分の単量体とゴム成分との仕込み比、および重合度より計算した。
【0022】
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
Tgは、セイコー電子工業(株)製の示差熱分析装置(DSC200)を用いて窒素流量20ml/min で10℃/min の昇温速度にて−120〜180℃について測定した。
【0023】
(3)トルエン不溶分の測定
共役ジエン系ゴム成分1gをトルエン100ml中に加え、48時間室温にて放置する。不溶分を100メッシュ金網にて濾過分別した後、濾液をとり、トルエンを除去、乾燥し、トルエン可溶分(Xg)を得て、下記式からトルエン不溶分を算出した。
トルエン不溶分(%)={(1−X)(g)/1(g)}×100
【0024】
表3における耐チッピング性、耐カット性および発熱耐久性の測定方法については、以下の通りである。
なお、耐チッピング性および耐カット性については、1000R20のタイヤを試作し、10トントラックに装着し、JIS規格正規内圧荷重で悪路を完摩(最大残溝3mm以下の状態)まで走行させた後の状態において測定した。
【0025】
(4)耐チッピング性
タイヤ踏面内で、1cm以上のもげ欠けが生じている部分の個数を測定した。
【0026】
(5)耐カット性
タイヤトレッドおよびベースゴムを剥がし、ベルトまで到達しているカットの数を測定した。
【0027】
(6)発熱耐久性(指数表示)
JIS D 4230に示された耐久性試験に従って評価した。この際、試験の最終段階は、規定時間を延長し、タイヤが走行不能になるレベルの破壊を起こすまで試験を継続した。破壊までの走行距離を用いて、発熱耐久性を評価し、コントロールタイヤを100として指数表示した。数値が高いほど発熱耐久性が良好なことを示す。
【0028】
【表1】
Figure 0003553707
1)ABS10:ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)
2)UT30B、XT400:ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂で、耐熱部分を含む)
3)カリフレックス1101:スチレン・ブタジエン−ブロック共重合体
4)AS230:AS樹脂(アクリロニトリル・スチレン樹脂)
5)樹脂FおよびGの製法は、以下の通りである。
【0029】
すなわち、還流冷却器、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、あらかじめ乳化重合で合成したゴム成分(SBR)、不均化ロジン酸石鹸3部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、および単量体成分(α−メチルスチレン/アクリロニトリルマレイミド)を仕込み、ピロリン酸ナトリウム0.25部、ぶどう糖0.35部、硫酸第一鉄0.005部、およびキュメンハイドロパーオキサイド0.6部を加えて重合を開始し、4時間反応を行った。得られた共重合体ラテックスに硫酸を加えて凝固し、水洗、乾燥して樹脂FおよびGを得た。
【0030】
【表2】
Figure 0003553707
【0031】
【表3】
Figure 0003553707
【0032】
表3の結果から明らかなように、実施例1〜8は耐チッピング性、耐カット性及び発熱耐久性に優れた空気入りタイヤとなることがわかる。
これに対し、比較例1(コントロール)、比較例2〜比較例7に見られるようにゴム強化熱可塑性樹脂およびその配合量が本発明の要件を満たしていない場合、タイヤの耐チッピング性、耐カット性及び発熱耐久性の三者を同時に改善することができないことがわかる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、耐チッピング性、耐カット性及び発熱耐久性に優れた空気入りタイヤを具現化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 空気入りタイヤ
4 キャップトレッド
5 ベーストレッド
6 トレッド部

Claims (4)

  1. キャップ/ベーストレッド構造からなる空気入りタイヤにおいて、前記ベーストレッドに使用されるベーストレッドゴムに、
    10重量%以上の共役ジエン系ゴム成分と残部がガラス転移温度(Tg)100〜140℃の樹脂成分とよりなるゴム強化熱可塑性樹脂を、
    ゴム分100重量部に対して2〜50重量部配合したゴム組成物を使用したことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記共役ジエン系ゴム成分が40〜65重量%であることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記ゴム強化熱可塑性樹脂の形成に使用される共役ジエン系ゴム成分が、5%以下のトルエン不溶分を有するポリブタジエンまたはスチレン−ブタジエン共重合体であることを特徴とする請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記ゴム強化熱可塑性樹脂の樹脂成分が、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレンよりなる群から選択される少なくとも1種のビニル系単量体を含んでなる重合体であることを特徴とする請求項1、2または3記載の空気入りタイヤ。
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