JP3553090B2 - 青果物鮮度保持包装袋 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は花卉、果実、野菜等の青果物の鮮度低下を抑制するための鮮度保持包装袋に関する。更に詳しくは青果物を密封包装し、系内のガス組成を適正に維持するための鮮度保持包装袋に関する。
【0002】
【従来の技術】
青果物の鮮度低下を抑制する方法の1つとして、青果物の雰囲気環境ガス組成を変更する方法が一般に行われており、CA貯蔵としてリンゴの長期貯蔵等で実用化さている。
また、フィルム密封包装と青果物の呼吸作用を利用して包装内を低酸素、高炭酸ガス濃度に保つ、いわゆるMA貯蔵も広く行われている。このとき使用されるフィルムはポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が主に使用されており、また、大谷石、ゼオライト等の無機物をこれらの熱可塑性樹脂に混入したものも使用されている。
【0003】
これらのフィルムは産地から市場までの流通段階では段ボール箱に内袋として使用する場合が多く、密封または折込みの形で使用されMA効果を得ている。また、近年はスーパー等の小売店での棚持ちまで考慮し、産地で小分け、少量包装してそのまま消費者まで販売されることも多く、この場合にはMA効果を得るために適度な酸素透過度を有するフィルムで少量密封包装し、ニラの包装等で実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の包装用フィルムの23℃での酸素透過度は、たとえば厚さ30μのポリエチレンで5,000 〜10,000cc/m2・24hr・atm 程度であり、この程度の酸素透過度のフィルムで常温での呼吸量が大きい青ウメ、ブロッコリー等を密封包装して常温保存すると、酸素濃度が急激に低下し、呼吸傷害が発生して異臭、傷害等を発生して商品性を失うため、これらのフィルムを使用してのフィルム密封によるMA貯蔵は非常に困難であった。
【0005】
また、ポリエチレン、ポリプロピレンより酸素透過度の高いエチレン・酢酸ビニル共重合フィルムやポリブタジエンフィルムを使用する例も見られるが、これらの23℃での酸素透過度は厚さ30μに換算してやはり15,000cc/m2・24hr・atm 以下であり、夏期の高温流通時には包装袋内の酸素不足による呼吸傷害の恐れがある。
【0006】
更に、現在多く見られる無機物混入フィルムは無機多孔質の混入によりガス透過性は若干向上するものの、通常の混入量である50wt%以下ではいずれもその酸素透過度は23℃で厚さ30μに換算して15,000cc/m2・24hr・atm 以下であり、これ以上混入量を上げるとフィルムの製膜が困難であり、混入量の増加による酸素透過度の向上は期待できない。
【0007】
さらに、フィルムの膜厚を薄くして酸素透過度を向上させることも考えられるが、フィルム強度の点からもフィルム厚みは最低20μ程度は必要であり、この厚み以上で23℃での酸素透過度15,000〜300,000 cc/m2・24hr・atm を得ることは従来非常に困難であった。
さらに、従来の袋は平パウチの形態がほとんどであり、特に産地で段ボールの内袋として使用するにはパウチ装着の作業性が非常に悪いという欠点を有していた。
【0008】
本発明は前記の問題点を解消し、青果物の鮮度保持を確実にする包装袋を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来技術の問題点を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、低温でヒートシール可能な不織布に熱可塑性樹脂であるポリメチルペンテンを積層した包材を包装袋の一部もしくは全面に使用することにより、従来より酸素透過度を飛躍的に向上させた包装袋が作成可能であることを見出した。しかもポリメチルペンテン層の厚みを変えることにより、自由に酸素透過度をコントロール可能であり、この包装袋で青果物を密封包装することにより、呼吸量が多く、常温でのMA貯蔵が従来困難であった青果物に対しても適切なMA貯蔵が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
(1) 23℃における酸素透過度が15,000〜300,000 cc/m2・24hr・atm であるシートより形成されていることを特徴とする青果物鮮度保持包装袋、
(2) シートが低温でヒートシール可能な不織布に熱可塑性樹脂を積層したものである前記1記載の青果物鮮度保持包装袋、
(3) 熱可塑性樹脂がポリメチルペンテンである前記(1) または(2) 記載の青果物鮮度保持包装袋、
(4) 折り部および胴部より構成されるガセット袋において、折り部が低温でヒートシール可能な不織布上にポリメチルペンテンを積層したシートから成る前記(1)、(2)または(3)記載の青果物鮮度保持包装袋を要旨としている。
【0010】
【作 用】
本発明の構成と作用を説明する。
本発明の青果物鮮度保持包装袋は、その一部もしくは全面に、低温でヒートシール可能な不織布に熱可塑性樹脂であるポリメチルペンテンを積層した包材を使用することにより得られる。
【0011】
ポリメチルペンテンは立体規則性ポリオレフィンの一種で、4−メチルペンテン−1をモノマーとする重合体である。オレフィン系の熱可塑性樹脂の中では最も酸素透過度が高く本発明に必要な23℃における酸素透過度15,000〜300,000 cc/m2・24hr・atm を得ることが可能である。ポリメチルペンテンフィルムは単独ではヒートシール性がなく、パウチ形態での使用が困難であるが、低温でヒートシール可能な不織布と積層することにより、パウチ形態での使用が可能となる。
【0012】
積層は従来公知の方法であるTダイ法を用いて、不織布上にポリメチルペンテンを押し出すことにより可能であり、接着力は不織布との物理的な絡み合いによってのみ生じ、これのみでも十分な接着力が得られるが、必要に応じて、コロナ処理、オゾン処理を併用することも可能である。
また、本発明の青果物鮮度保持包装袋は、パウチ密封形態でその効果が発揮されるため、内面は低温でヒートシール性のある不織布が必要であり、このような不織布としては、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維からなる不織布や、芯鞘構造を有するポリエステル/ポリエチレン繊維、ナイロン/ポリエチレン繊維、ポリプロピレン/ポリエチレン繊維、ポリエステル/ポリプロピレン繊維、ナイロン/ポリプロピレン繊維等から成る不織布が望ましく、例えばユニチカ(株)のオレフィン系スパンボンド不織布であるエルベス(登録商標)、あるいは三井石油化学(株)のオレフィン系スパンボンド不織布であるシンテックス(登録商標)等が使用できる。
【0013】
本発明の青果物鮮度保持包装袋の酸素透過度は積層するポリメチルペンテンの厚みを変化させることによりコントロールすることもできるが、不織布にポリメチルペンテンを積層した包材部分の面積を変化させることによっても可能である。
例えば、図1から図3に示されるような種々の包装形態への応用が可能であり、通常の平パウチ以外にもピロー、ガセット形態等への応用が可能である。この場合、不織布にポリメチルペンテンを積層した包材部分は図1から図3に示すようにパウチの一部分に使用することができ、内容物が見えないという欠点が解消される。
【0014】
上述の各種包装形態の中でも、段ボールの内装として使用して、流通時の鮮度保持に用いる場合には作業性および内容物が確認しやすいという点から、特にガセット形態が望ましい。
本発明の青果物鮮度保持用ガセット袋は図1に示すような折り部1および胴部2より構成されるガセット袋である。
【0015】
折り部1は低温でヒートシール可能な不織布上にポリメチルペンテンを積層したシートから成り、胴部2は折り部1とヒートシール可能な通常の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0016】
このようなガセット形態にした場合には、不透明な部分は折り部1に限定され、胴部2は透明な熱可塑性樹脂を使用できるため内容物は非常に見やすい。
【0017】
また、ガセット形態の為、段ボールに内装しやすく産地での作業性が向上するという効果が得られる。更に折り部、胴部共に通常のヒートシールが可能であるため、ガセット製袋機での連続生産が可能であるという効果も有する。
【0018】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0019】
【実施例1】
従来公知のTダイ法を用いて、ポリメチルペンテン(三井石油化学製 MX−021)を不織布(ユニチカ エルベス(登録商標)S0303WDO30g/m2)上に厚さ40μで押し出し、本発明の積層フィルムを得た。
【0020】
【実施例2】
従来公知のTダイ法を用いて、ポリメチルペンテン(三井石油化学製 MX−021)を不織布(ユニチカ エルベス(登録商標)S0303WDO30g/m2)上に厚さ60μで押し出し、本発明の積層フィルムを得た。
〔比較例1〕
線状低密度ポリエチレン(出光石油化学製 モアテック0238N)をインフレーション法により製膜して厚み30μのフィルムを得た。
【0021】
〔試験例1〕
上記の本発明の実施例1、2および比較例1のフィルムについて23℃における酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
この結果から明らかなように、本実施例の包材は比較例に比べて高い酸素透過度を有している。また、ポリメチルペンテンの厚さを変化させることにより、酸素透過度の値をコントロールすることが可能である。
【0022】
【表1】
【0023】
〔試験例2〕
実施例1、2および比較例1のフィルムで内寸190×245mmのパウチを作成した。また、片面に比較例1のフィルムを片面に実施例1、2のフィルムを使用して同様にパウチを作成し、パウチあたりの酸素透過度を測定した結果を表2に示す。
【0024】
表2より、片面に通常のポリエチレンフィルムを用いることにより、パウチあたりの酸素透過度をさらに細かくコントロールすることが可能となる。
【0025】
【表2】
【0026】
〔試験例3〕
試験例2で作成したパウチのうち、パウチ▲3▼(パウチあたりの酸素透過度700cc/24hr・atm )およびパウチ▲5▼(パウチあたりの酸素透過度1,900 cc/24hr・atm )の2種類のパウチを用いて青ウメ500gを密封包装し、22℃で6日間保存した後に内部ガス組成および青ウメの品質変化を調べた。その結果を表3および表4に示す。
【0027】
表3および表4から明らかなように本発明の青果物鮮度保持包装袋の一例であるパウチ▲5▼を使用することによりパウチ内を最適な内部ガス組成に保つことが可能であり、青ウメの緑色保持、異臭防止に効果的である。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【実施例3】
実施例1と同一方法で本発明の折り部に使用する積層フィルムを得た。
次に従来公知のTダイ法を用いて、下記仕様の本発明の胴部に使用する積層フィルムを得た。
ナイロン15μ/低密度ポリエチレン20μ/直鎖低密度ポリエチレン40μ
上記2種類の積層フィルムを用いてガセット製袋を行い、折り部の巾 270mm、胴部巾400×流れ600mmサイズの本発明の青果物鮮度保持用ガセット袋を得た。
【0031】
〔比較例2〕
厚さ30μのポリエチレン(三井石油化学製 ミラソン16P)を用い、実施例と同様にガセット製袋を行い、折り部の巾 270mm、胴部巾400×流れ600mmサイズのガセット袋を得た。
〔試験例4〕
上記の本発明の実施例3および比較例2のガセット袋の23℃におけるパウチあたりの酸素透過度を測定した結果を表5に示す。
【0032】
この結果から明らかなように、本発明のガセット袋は比較例2に比べて高い酸素透過度を有している。
【0033】
【表5】
【0034】
〔試験例5〕
実施例3および比較例2のガセット袋を用い、縦 250mm、横400mm、高さ250mm の段ボール箱の内袋として、ブロッコリー4kgを密封包装し、22℃で3日間保存した後に内部ガス組成および品質変化を調べた。また、対照として無包装のまま22℃で3日間保存して実施例3、比較例2と鮮度保持効果を比較した。その結果を表6および表7に示す。
【0035】
【表6】
【0036】
【表7】
【0037】
表6および表7から明らかなように本発明の青果物鮮度保持用ガセット袋を使用することによりパウチ内を最適な内部ガス組成に保つことが可能であり、ブロッコリーの緑色保持、異臭防止に効果的である。
【0038】
【発明の効果】
本発明は以上説明したとおり構成されているので、従来のフィルム密封包装に比べて大きな酸素透過度が得られ、内容物の呼吸量が大きいため包装袋内が低酸素、高炭酸ガス濃度に成りやすく、異臭、障害が発生し易かった青ウメ、ブロッコリー等の常温流通におけるMA貯蔵が可能となり、産業上益するところ極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の青果物鮮度保持包装袋の斜視図を示す。
【図2】本発明の青果物鮮度保持包装袋の斜視図を示す。
【図3】本発明の青果物鮮度保持包装袋の斜視図を示す。
【符号の説明】
1 折り部 2 胴部
1′低温でヒートシール可能な不織布にポリメチルペンテンを積層したシート
2′通常の熱可塑性樹脂
Claims (1)
- 折り部および胴部より構成されれるガセット袋からなり、更に、上記の折り部が、低温でヒ−トシ−ル可能な不織布に熱可塑性樹脂であるポリメチルペンテンを積層し、23℃における酸素透過度が15、000〜300、000cc/m 2 ・24hr・atmであり、かつ、上記のポリメチルペンテン層の厚みを変えることにより、その酸素透過度をコントロ−ル可能であるシ−トからなり、また、上記の胴部は、上記の折り部とヒ−トシ−ル可能な熱可塑性樹脂からなることを特徴とする青果物鮮度保持包装袋。
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