JP3551319B2 - 多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,シート状材料等の多孔質材料表面をプラズマを用いて親水性化する多孔質材料表面の乾式表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,疎水性材料の例としてのポリエチレンでは,その表面の親水性化は,混酸を塗布することによって行われたり,又は材料表面を火炎処理によって行われている。また,シート状材料は,コロナ放電処理によって材料表面が親水性化されている。
【0003】
従来,プラズマCVD膜の形成方法は,例えば,特開平5−287007号公報に開示されている。該公報に開示されたものは,大気圧近傍の圧力下でグロー放電を発生させる第1領域とモノマーガスを導入し,基体上にプラズマCVD膜を形成させる第2領域とを別個に画成し,第1領域で不活性ガス雰囲気下でグロー放電を発生させ,グロー放電により活性化したガスをモノマーガス雰囲気下の第2領域に導入して該第2領域においてプラズマCVD膜を形成させるものであり,大気圧グロー放電を用いて放電電極の電極間距離に制約されることなく,所望の大きさの立体的な基体上にプラズマCVD膜を形成させるものである。
【0004】
また,特開平6−41214号公報に開示されたプラズマ開始重合法は,モノマーを含む蒸気にイオン化ガスプラズマを発生させることにより,該モノマーの重合を開始させ,プラズマの非存在下で重合の大部分を完結させるものであり,イオン化ガスプラズマの発生を0.2〜3気圧の圧力で行うものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,シート状多孔質表面を親水性化するため,媒体を用いた混酸溶液を用いる場合には,必然的に乾燥工程と廃水処理が必要になる。水を用いる場合には,蒸発熱は非常に大きいため,膨大な熱量が必要となる。従って,シート状多孔質表面を親水性化した材料を乾燥させるのに,多量のエネルギーを必要とし,また,廃液が生じるので,その廃液処理に多大なコストがかかることになる。また,シート状多孔質表面を親水性化するのに,火炎処理を行う場合には,火災等の危険性が非常に大きい。更に,コロナ放電処理の場合には,その処理効果の持続性が短いため,処理後の経過時間の影響が非常に大きくなる。
【0006】
ところで,プラズマは,正電気を帯びた粒子と,負電気を帯びた粒子とがほぼ同じ密度で,ほぼ電気的中性を保って分布している粒子集団のことであり,気体プラズマは,熱電離プラズマ,直流放電プラズマ,高周波加熱プラズマ等があり,加熱により発生する。プラズマを発生させる最も容易な方法は,気体放電であり,発生したプラズマは,電子温度と気体温度の平衡状態から大別して,平衡プラズマと非平衡プラズマに分かれる。平衡プラズマは,電子温度と気体温度が一致したプラズマであり,また,非平衡プラズマは,低温プラズマと称され,気体温度が常温に近く,高い電子温度にもかかわらず,化学的に利用されている。
【0007】
一般的な気体モノマーであるエチレンを放電雰囲気とし,プラズマ処理を行うと,エチレン重合膜が堆積することは既に知られている。プラズマCVDは,反応性ガスの放電によって薄膜を合成する方法であり,一般的に減圧下で行われることが多く,これは生成ラジカルの寿命及び活性種の平均自由行程の関係から,CVDの効率を上げるためである。しかしながら,減圧CVDでは,高価な密封減圧装置を必要とする設備的な問題がある。大気圧CVDは,アーク放電への移行の頻度が高く,電極板の改良等によるアーク放電への移行回避法が発表され,安定したグロー放電下での処理が可能になった。また,プラズマCVDの電源周波数は,数kHzから数百MHzのラジオ波がほとんどである。周波数の増加により処理気体温度が上昇するため,高温で劣化する有機材料では低い周波数が望ましいと考えられる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,シート状の多孔質材料の表面を親水性化するため,大気圧プラズマ重合を利用した乾式法を用いて多孔質材料表面に被覆層を形成させ,従来のような湿式法での乾燥工程を不要にし,廃液を生じさせることなく廃液処理を不要にすると共に,乾燥に要するエネルギーを不要にした多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法を提供することである。
【0009】
この発明は,酸化エチレン,メタクリル酸等の親水性ビニルモノマーを大気圧プラズマ重合法によって多孔質材料表面上でそのポリマーを生成させ,前記多孔質材料表面上に前記ポリマーの被覆層を生成して前記多孔質材料表面を親水性化にすることから成る多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法であって,この乾式表面処理方法は,前記大気圧プラズマ重合に商用交流電源周波数を使用するものである。
【0011】
また,この乾式表面処理方法は,二酸化炭素,窒素ガス等の不活性ガスを用いることにより,ペニング効果を利用するものである。
【0012】
前記多孔質材料は,疎水性のポリエチレンフィルムあるいは不織布である。
【0013】
この乾式表面処理方法は,上記のように構成したので,二枚の上下の電極板を平行に配置して,その間に処理される材料を設置し,気相にて反応物質を送ることにより大気圧プラズマ重合を行い,材料表面にポリエチレンオキシド等の親水性高分子の被覆層を形成し,材料表面の親水性化を行うことができる。
【0014】
また,この乾式表面処理方法は,表面処理の方法を根本的に変更し,水等の液媒体を使用しない方法で,材料表面を親水性化するので,乾燥のための消費熱量を低減すると共に,廃液の発生を防止して廃液処理工程を排除し,製造コストを低減できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して,この発明による多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法を説明する。図1はこの発明による乾式表面処理方法を達成するための乾式表面処理を示す概略説明図,及び図2は処理時間に対する表面自由エネルギーの変化を示すグラフである。
【0016】
この多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法は,酸化エチレン,メタクリル酸等の親水性ビニルモノマーを大気圧プラズマ重合法によって多孔質材料表面上でそのポリマーを生成させ,前記多孔質材料表面上に前記ポリマーの被覆層を生成して前記多孔質材料表面を親水性化することから成るものである。また,この乾式表面処理方法は,前記大気圧プラズマ重合に商用交流電源周波数を使用するものである。更に,この乾式表面処理方法は,二酸化炭素,窒素ガス等の不活性ガスを用いることにより,ペニング効果を利用するものである。
【0017】
この乾式表面処理方法は,シート状のポリエチレンの表面を親水性化に応用した実施例であり,酸化エチレンの大気圧プラズマ重合を9〜15kV,60Hzで,10分まで行うことにより,ポリエチレン表面での水の接触角を80度から50度に下げることができた。
【0018】
図2には,酸化エチレンと二酸化炭素の混合ガス雰囲気中でのポリエチレンフィルムの表面自由エネルギーの変化を示したグラフであり,処理電圧としては,三角印が9.0kVであり,四角印が13.5kVであり,また,丸印が15.0kVの場合を示している。
【0019】
この乾式表面処理方法によって生成させた親水性化の多孔質材料表面について,処理後24時問を経過した試料に対して,液滴法によって20°Cで接触角を測定した。プラズマ処理電圧は,短時問で処理効率を上げるために,なるべく高い電圧で処理したかったが,高電圧ほど処理時間の経過と共に,火花放電に移行した。そのため,60分まで処理可能な最高電圧を試験した結果,上記表面処理装置では,12.75kVが可能な最高電圧であることが分かった。接触角測定の結果,処理時問とともに材料による湿潤性は,大きく減少した。また,材料表面自由エネルギーは,処理時間に伴い減少した。この変化は,水素結合成分と極性力成分の減少に起因している。親水性要因である水素結合成分の大きな減少は,材料表面が処理により疎水性表面に変化していることを示している。
【0020】
この乾式表面処理方法は,大気圧プラズマ重合を行い,疎水性のポリエチレンフィルム等の多孔質材料表面上で生成させることによって,その材料表面にポリエチレンオキシド,ポリアクリル酸等の親水性被膜層が形成され,親水性化にすることができる。
【0021】
この乾式表面処理方法を達成するための乾式表面処理装置としての電極部は,図1に示すように構成した。電極部は,上側電極板1と下側電極板2との間の電極間の距離Lを5.5mm〜6mm程度に設定し,上側電極板1に上側のガラス板3を接して配置し,下側電極板2に下側のガラス板4を接して配置した。下側のガラス板4上には,試料としてシート状の多孔質材料5を設置した。本試験では,バッチ式で行った。試料幅は,電極幅に規制されるが,試料を定速で移動させれば,長さ方向の制限はほとんど無いものである。
【0022】
この乾式表面処理装置は,具体的には,電極板としてSUS304製平板(110×80mm)を使用し,電極1,2の間の距離を5.5mm〜6mm程度に設定した。上下の電極板1,2を板厚0.5mmの上下のガラス板3,4で覆い,上側電極板1と下側電極板2の間にプラズマ放電領域6を形成して放電セルを構成した。上記放電セルを横置きガラス円筒(図示せず)内に入れ,雰囲気を不活性ガスで調整した。電源トランス等の設備は,従前のコロナ放電装置をそのまま利用した。CVDガスには,酸化エチレンを用いた。
【0023】
また,混合ガスの場合に,酸化エチレン濃度低下にもかかわらず親水性化がより進行したことには,放電プラズマによって活性化されたCO2 ,N2 等の不活性ガスが酸化エチレン分子に励起,電離エネルギーを受け渡すこと(即ち,ペニング効果)によって,酸化エチレン分子の不飽和結合がより容易に開裂したためであり,二酸化炭素又は窒素混合で挙動が異なるのは,二酸化炭素,窒素ガスのイオン化ポテンシャルの違いによるものであると考えられた。
【0024】
【発明の効果】
この発明による乾式表面処理方法は,上記のように構成したので,多孔質材料の表面を親水性化させるのに,大気圧プラズマ重合法によって乾式で行うことができ,湿式法での乾燥工程及び廃液処理が不要となり,それらの設備投資が不要になり,コストダウンをはかることができる。また,この乾式表面処理方法は,従来のような火炎を用いて親水性化するものでないので,火災の危険性がなく,処理後の効果が経過時間と共に変化することがない。更に,この乾式表面処理方法は,大気圧プラズマを用いるので,高真空設備を必要とせず,設備コストを大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による紙等の多孔質材料表面を乾式親水性化する表面処理方法を達成するための表面処理装置における電極部の一実施例を示す概略説明図である。
【図2】多孔質材料表面を親水性化した時の表面自由エネルギーの変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 上側電極板
2 下側電極板
3 上側のガラス板
4 下側のガラス板
5 試料(多孔質材料)
6 プラズマ放電領域
【発明の属する技術分野】
この発明は,シート状材料等の多孔質材料表面をプラズマを用いて親水性化する多孔質材料表面の乾式表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,疎水性材料の例としてのポリエチレンでは,その表面の親水性化は,混酸を塗布することによって行われたり,又は材料表面を火炎処理によって行われている。また,シート状材料は,コロナ放電処理によって材料表面が親水性化されている。
【0003】
従来,プラズマCVD膜の形成方法は,例えば,特開平5−287007号公報に開示されている。該公報に開示されたものは,大気圧近傍の圧力下でグロー放電を発生させる第1領域とモノマーガスを導入し,基体上にプラズマCVD膜を形成させる第2領域とを別個に画成し,第1領域で不活性ガス雰囲気下でグロー放電を発生させ,グロー放電により活性化したガスをモノマーガス雰囲気下の第2領域に導入して該第2領域においてプラズマCVD膜を形成させるものであり,大気圧グロー放電を用いて放電電極の電極間距離に制約されることなく,所望の大きさの立体的な基体上にプラズマCVD膜を形成させるものである。
【0004】
また,特開平6−41214号公報に開示されたプラズマ開始重合法は,モノマーを含む蒸気にイオン化ガスプラズマを発生させることにより,該モノマーの重合を開始させ,プラズマの非存在下で重合の大部分を完結させるものであり,イオン化ガスプラズマの発生を0.2〜3気圧の圧力で行うものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,シート状多孔質表面を親水性化するため,媒体を用いた混酸溶液を用いる場合には,必然的に乾燥工程と廃水処理が必要になる。水を用いる場合には,蒸発熱は非常に大きいため,膨大な熱量が必要となる。従って,シート状多孔質表面を親水性化した材料を乾燥させるのに,多量のエネルギーを必要とし,また,廃液が生じるので,その廃液処理に多大なコストがかかることになる。また,シート状多孔質表面を親水性化するのに,火炎処理を行う場合には,火災等の危険性が非常に大きい。更に,コロナ放電処理の場合には,その処理効果の持続性が短いため,処理後の経過時間の影響が非常に大きくなる。
【0006】
ところで,プラズマは,正電気を帯びた粒子と,負電気を帯びた粒子とがほぼ同じ密度で,ほぼ電気的中性を保って分布している粒子集団のことであり,気体プラズマは,熱電離プラズマ,直流放電プラズマ,高周波加熱プラズマ等があり,加熱により発生する。プラズマを発生させる最も容易な方法は,気体放電であり,発生したプラズマは,電子温度と気体温度の平衡状態から大別して,平衡プラズマと非平衡プラズマに分かれる。平衡プラズマは,電子温度と気体温度が一致したプラズマであり,また,非平衡プラズマは,低温プラズマと称され,気体温度が常温に近く,高い電子温度にもかかわらず,化学的に利用されている。
【0007】
一般的な気体モノマーであるエチレンを放電雰囲気とし,プラズマ処理を行うと,エチレン重合膜が堆積することは既に知られている。プラズマCVDは,反応性ガスの放電によって薄膜を合成する方法であり,一般的に減圧下で行われることが多く,これは生成ラジカルの寿命及び活性種の平均自由行程の関係から,CVDの効率を上げるためである。しかしながら,減圧CVDでは,高価な密封減圧装置を必要とする設備的な問題がある。大気圧CVDは,アーク放電への移行の頻度が高く,電極板の改良等によるアーク放電への移行回避法が発表され,安定したグロー放電下での処理が可能になった。また,プラズマCVDの電源周波数は,数kHzから数百MHzのラジオ波がほとんどである。周波数の増加により処理気体温度が上昇するため,高温で劣化する有機材料では低い周波数が望ましいと考えられる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,シート状の多孔質材料の表面を親水性化するため,大気圧プラズマ重合を利用した乾式法を用いて多孔質材料表面に被覆層を形成させ,従来のような湿式法での乾燥工程を不要にし,廃液を生じさせることなく廃液処理を不要にすると共に,乾燥に要するエネルギーを不要にした多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法を提供することである。
【0009】
この発明は,酸化エチレン,メタクリル酸等の親水性ビニルモノマーを大気圧プラズマ重合法によって多孔質材料表面上でそのポリマーを生成させ,前記多孔質材料表面上に前記ポリマーの被覆層を生成して前記多孔質材料表面を親水性化にすることから成る多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法であって,この乾式表面処理方法は,前記大気圧プラズマ重合に商用交流電源周波数を使用するものである。
【0011】
また,この乾式表面処理方法は,二酸化炭素,窒素ガス等の不活性ガスを用いることにより,ペニング効果を利用するものである。
【0012】
前記多孔質材料は,疎水性のポリエチレンフィルムあるいは不織布である。
【0013】
この乾式表面処理方法は,上記のように構成したので,二枚の上下の電極板を平行に配置して,その間に処理される材料を設置し,気相にて反応物質を送ることにより大気圧プラズマ重合を行い,材料表面にポリエチレンオキシド等の親水性高分子の被覆層を形成し,材料表面の親水性化を行うことができる。
【0014】
また,この乾式表面処理方法は,表面処理の方法を根本的に変更し,水等の液媒体を使用しない方法で,材料表面を親水性化するので,乾燥のための消費熱量を低減すると共に,廃液の発生を防止して廃液処理工程を排除し,製造コストを低減できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して,この発明による多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法を説明する。図1はこの発明による乾式表面処理方法を達成するための乾式表面処理を示す概略説明図,及び図2は処理時間に対する表面自由エネルギーの変化を示すグラフである。
【0016】
この多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法は,酸化エチレン,メタクリル酸等の親水性ビニルモノマーを大気圧プラズマ重合法によって多孔質材料表面上でそのポリマーを生成させ,前記多孔質材料表面上に前記ポリマーの被覆層を生成して前記多孔質材料表面を親水性化することから成るものである。また,この乾式表面処理方法は,前記大気圧プラズマ重合に商用交流電源周波数を使用するものである。更に,この乾式表面処理方法は,二酸化炭素,窒素ガス等の不活性ガスを用いることにより,ペニング効果を利用するものである。
【0017】
この乾式表面処理方法は,シート状のポリエチレンの表面を親水性化に応用した実施例であり,酸化エチレンの大気圧プラズマ重合を9〜15kV,60Hzで,10分まで行うことにより,ポリエチレン表面での水の接触角を80度から50度に下げることができた。
【0018】
図2には,酸化エチレンと二酸化炭素の混合ガス雰囲気中でのポリエチレンフィルムの表面自由エネルギーの変化を示したグラフであり,処理電圧としては,三角印が9.0kVであり,四角印が13.5kVであり,また,丸印が15.0kVの場合を示している。
【0019】
この乾式表面処理方法によって生成させた親水性化の多孔質材料表面について,処理後24時問を経過した試料に対して,液滴法によって20°Cで接触角を測定した。プラズマ処理電圧は,短時問で処理効率を上げるために,なるべく高い電圧で処理したかったが,高電圧ほど処理時間の経過と共に,火花放電に移行した。そのため,60分まで処理可能な最高電圧を試験した結果,上記表面処理装置では,12.75kVが可能な最高電圧であることが分かった。接触角測定の結果,処理時問とともに材料による湿潤性は,大きく減少した。また,材料表面自由エネルギーは,処理時間に伴い減少した。この変化は,水素結合成分と極性力成分の減少に起因している。親水性要因である水素結合成分の大きな減少は,材料表面が処理により疎水性表面に変化していることを示している。
【0020】
この乾式表面処理方法は,大気圧プラズマ重合を行い,疎水性のポリエチレンフィルム等の多孔質材料表面上で生成させることによって,その材料表面にポリエチレンオキシド,ポリアクリル酸等の親水性被膜層が形成され,親水性化にすることができる。
【0021】
この乾式表面処理方法を達成するための乾式表面処理装置としての電極部は,図1に示すように構成した。電極部は,上側電極板1と下側電極板2との間の電極間の距離Lを5.5mm〜6mm程度に設定し,上側電極板1に上側のガラス板3を接して配置し,下側電極板2に下側のガラス板4を接して配置した。下側のガラス板4上には,試料としてシート状の多孔質材料5を設置した。本試験では,バッチ式で行った。試料幅は,電極幅に規制されるが,試料を定速で移動させれば,長さ方向の制限はほとんど無いものである。
【0022】
この乾式表面処理装置は,具体的には,電極板としてSUS304製平板(110×80mm)を使用し,電極1,2の間の距離を5.5mm〜6mm程度に設定した。上下の電極板1,2を板厚0.5mmの上下のガラス板3,4で覆い,上側電極板1と下側電極板2の間にプラズマ放電領域6を形成して放電セルを構成した。上記放電セルを横置きガラス円筒(図示せず)内に入れ,雰囲気を不活性ガスで調整した。電源トランス等の設備は,従前のコロナ放電装置をそのまま利用した。CVDガスには,酸化エチレンを用いた。
【0023】
また,混合ガスの場合に,酸化エチレン濃度低下にもかかわらず親水性化がより進行したことには,放電プラズマによって活性化されたCO2 ,N2 等の不活性ガスが酸化エチレン分子に励起,電離エネルギーを受け渡すこと(即ち,ペニング効果)によって,酸化エチレン分子の不飽和結合がより容易に開裂したためであり,二酸化炭素又は窒素混合で挙動が異なるのは,二酸化炭素,窒素ガスのイオン化ポテンシャルの違いによるものであると考えられた。
【0024】
【発明の効果】
この発明による乾式表面処理方法は,上記のように構成したので,多孔質材料の表面を親水性化させるのに,大気圧プラズマ重合法によって乾式で行うことができ,湿式法での乾燥工程及び廃液処理が不要となり,それらの設備投資が不要になり,コストダウンをはかることができる。また,この乾式表面処理方法は,従来のような火炎を用いて親水性化するものでないので,火災の危険性がなく,処理後の効果が経過時間と共に変化することがない。更に,この乾式表面処理方法は,大気圧プラズマを用いるので,高真空設備を必要とせず,設備コストを大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による紙等の多孔質材料表面を乾式親水性化する表面処理方法を達成するための表面処理装置における電極部の一実施例を示す概略説明図である。
【図2】多孔質材料表面を親水性化した時の表面自由エネルギーの変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 上側電極板
2 下側電極板
3 上側のガラス板
4 下側のガラス板
5 試料(多孔質材料)
6 プラズマ放電領域
Claims (3)
- 酸化エチレン,メタクリル酸等の親水性ビニルモノマーを大気圧プラズマ重合法によって多孔質材料表面上でそのポリマーを生成させ,前記多孔質材料表面上に前記ポリマーの被覆層を生成して前記多孔質材料表面を親水性化にすることから成る多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法であって, 前記大気圧プラズマ重合に商用交流電源周波数を使用することから成る多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法。
- 二酸化炭素,窒素ガス等の不活性ガスを用いることにより,ペニング効果を利用することから成る請求項1に記載の多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法。
- 前記多孔質材料は,疎水性のポリエチレンフィルムであることから成る請求項1又は請求項2に記載の多孔質材料表面を親水性化する乾式表面処理方法。
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JP2003064207A JP2003064207A (ja) | 2003-03-05 |
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KR100529209B1 (ko) * | 2002-08-28 | 2005-11-17 | 한국과학기술연구원 | 세포 친화성이 향상된 생분해성의 조직 공학용 다공성고분자 지지체의 제조방법 |
KR100682346B1 (ko) | 2003-05-15 | 2007-02-15 | 충남대학교산학협력단 | 대기압 플라즈마 연속 표면 처리 공정으로 개질한 거대다공성 고분자 이온 교환체, 이의 제조방법 및 용도 |
DE102004033196A1 (de) * | 2004-07-09 | 2006-01-26 | Carl Freudenberg Kg | Funktionalisierte Vliesstoffe, Verfahren zu deren Herstellung und deren Verwendung |
KR101171835B1 (ko) * | 2009-07-03 | 2012-08-14 | 한국생산기술연구원 | 친수성 고분자로 표면개질된 폴리올레핀 미세다공성막, 그의 표면개질방법 및 표면개질된 폴리올레핀 미세다공성막을 구비한 리튬이온폴리머전지 |
WO2012169507A1 (ja) * | 2011-06-10 | 2012-12-13 | 富士フイルム株式会社 | プラズマ重合性組成物、これを用いたプラズマ重合膜、構造体及び表面改質方法 |
US9214335B2 (en) | 2014-04-24 | 2015-12-15 | International Business Machines Corporation | Surface plasma modification of porous thin-films to optimize pore filling |
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2001
- 2001-08-23 JP JP2001252559A patent/JP3551319B2/ja not_active Expired - Lifetime
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KR100777214B1 (ko) | 2007-02-23 | 2007-11-28 | 한국과학기술연구원 | 폴리올레핀계 발포 입자의 제조 방법 |
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JP2003064207A (ja) | 2003-03-05 |
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