JP3550923B2 - 電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品、特に表面実装用プラスチックパッケージICの封止用成形材料として好適な耐リフロークラック性に優れた電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりトランジスタ、IC等の電子部品封止用成形材料には、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性及びインサート品との接着性等に優れるエポキシ樹脂成形材料が用いられている。特に、IC封止用成形材料では、高耐熱性が求められるため、多官能エポキシ樹脂であるO−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を多価フェノール類化合物であるフェノールノボラック樹脂により硬化させるエポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。
【0003】
近年、プリント配線板の高密度実装化に伴ない、電子部品のパッケージは従来のピン挿入型から表面実装型が主流になってきている。更に表面実装型ICでは高密度化及び実装高さを低くするため、パッケージが年々小型及び薄型になってきており、パッケージ中の素子の占有体積は相対的に大きくなり、パッケージの肉厚は非常に薄くなってきている。
【0004】
また、従来のピン挿入型パッケージでは、配線板に挿入後配線板裏面からはんだ付けを行なうため、パッケージが直接高温に曝されることはなかったが、表面実装型ICでは配線板表面に仮止めされた後に、はんだバスやはんだリフロー装置等で処理されるため、パッケージが高温のはんだ付け温度に直接曝されることになる。この結果、表面実装型ではICパッケージが吸湿している場合、吸湿水分がはんだ付けの時に急激に膨脹してパッケージにクラックを生じさせるという不良が起こり、表面実装型ICの大きな問題点になっている。
【0005】
これまでに、はんだリフロー時のパッケージクラックを防ぐ目的で、ICを防湿梱包で保護したり、配線板に実装する前にICを予め十分に乾燥する等の方法が提案されているが、これらはいずれもコストアップになるという問題点があり、低吸湿性で耐クラック性が良好な表面実装型IC封止用エポキシ樹脂成形材料の開発が要望されていた。
【0006】
この要望に答えるため、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料の吸湿性と耐クラック性を改善するものとして以下の提案がなされている。
【0007】
すなわち、高吸水性樹脂を配合したエポキシ樹脂成形材料(特開昭62−100522号公報参照)、含フッ素フェノール類を用いるもの(特開平1−118524号公報参照)、高アルキル化されたエポキシ樹脂及びノボラック樹脂を用いるもの(特開平3−128918号公報参照)、特定の3官能フェノール樹脂を用いるもの(特開平3−243616号公報参照)、シクロペンタジエニル変性ノボラック樹脂等の疎水性の高い硬化剤を用いるもの(特開平4−139210号公報参照)等である。
【0008】
また、ナフタレン変性のエポキシ樹脂及びノボラック樹脂を用いるもの(特開平3−43412号公報参照)、ナフトール類ポリマを原料とするエポキシ樹脂を用いるもの(特開平4−337314号公報参照)、ビスナフチルメタン型多価エポキシ樹脂(特開平4−337316号公報参照)のように樹脂骨格にナフタレン構造を導入した樹脂組成物を用いるものも提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭62−100522号公報に示されているように、エポキシ樹脂成形材料に高吸水性樹脂を配合すると、エポキシ樹脂成形材料の耐熱性を低下させるという問題点がある。
【0010】
また、特開平3−128918号公報に示されている高アルキル化されたエポキシ樹脂やノボラック樹脂を用いるもの、特開平1−118524号公報に示されている含フッ素フェノール類を用いるもの、特開平3−243616号公報に示されている特定の3官能フェノール樹脂を用いるもの、及び特開平4−139210号公報に示されているシクロペンタジエニル変性ノボラック樹脂等を硬化剤に用いるものは、エポキシ樹脂に疎水性を持たせることによりパッケージの吸湿性は若干改善されるものの、はんだリフロー時のクラックを防止するには不十分であった。
【0011】
更に、特開平3−43412号公報、特開平4−337314号公報及び特開平4−337316号公報に示されているように、組成物の樹脂骨格にナフタレン構造を導入するものにおいても、はんだリフロー時のクラックを防止するには不十分であった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、従来のエポキシ樹脂成形材料の耐熱性を損なうことなく、ICパッケージの吸湿性を改善し、はんだリフロー時にクラックが発生しない電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、エポキシ樹脂の硬化剤として活性エステル基を有する化合物を用いた場合に、得られた樹脂硬化物の吸水率が著しく低下することを見出し、先に、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノール性水酸基をアリールエステル化した多価フェノール類化合物及び無機充填剤を必須成分とする電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料を発明した(特開平7−53675号公報)。
【0014】
そして、本発明者らは、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料に特定の活性エステル基を有する化合物を配合することにより、更に吸水特性や耐熱性にも優れた樹脂硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料は、主たる成分として、
(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
(B)1分子中に1個以上の活性エステル基を持つ化合物(以下、単に活性エステル基化合物という)
(C)硬化促進剤
(D)60〜85体積%の無機充填剤を含有することを特徴とする電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料を提供するものである。さらに、本発明は、前記(A)〜(D)に加え(E)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を持つ化合物を含有する電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料に用いられる(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂は、電子部品封止用として一般に用いられるエポキシ樹脂をそのまま用いることができる。(A)のエポキシ樹脂の具体的例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール変性ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、、ジアミノジフェニルメタン等のポリアミンを原料にしたグリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂及びそれらの混合物が挙げられるが、電子部品封止用樹脂として良好な耐熱性を得るため、エポキシ当量が230以下のフェノールノボラック型、あるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール変性ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂から選ばれるエポキシ樹脂の単独又は二種以上の混合物が好ましい。 本発明のエポキシ樹脂の純度に関しては、IC等素子上のアルミ配線腐食の原因となる加水分解性塩素量は少ない方が良く、耐湿性の良好な電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料を得るためには500ppm以下であることが好ましいが、特に制限するものではない。
【0017】
本発明の特徴とするところは、(B)1分子中に1個以上の活性エステル基を持つ化合物をエポキシ樹脂の硬化剤として用いることにある。本発明の(B)1分子中に1個以上の活性エステル基を持つ化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物を塩基性触媒下、酸触媒下、あるいは無触媒下で有機酸、酸塩化物、酸無水物のいずれかを用いてアシル化することで得られる。例えば、多価フェノール類化合物を用いて、塩化ベンゾイルによるベンゾイル化、又は無水酢酸によるアセチル化によって活性エステル基化合物を得ることができる。
【0018】
活性エステル基化合物の原料となる化合物には、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロール、ビスフェノール類等の単量体化合物の他に、フェノール類とアルデヒド類との縮合樹脂、フェノール・アラルキル樹脂及びヒドロキシフェニル基を持つ重合体等を用いることができる。
【0019】
活性エステル基化合物の原料に用いられるフェノールとアルデヒド類との縮合樹脂としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフエノール類、又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サルチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂が挙げられる。また、フェノール・アラルキル樹脂としては、フェノール樹脂とジメトキシ化パラキシレンの縮合樹脂、ジシクロペンタジン変性フェノール樹脂、テトラヒドロインデン変性フェノール樹脂等が挙げられる。更に、フェノール性水酸基を持つ重合体としては、パラビニルフェノール重合体、フェノール付加ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0020】
(B)の活性エステル基化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂及びフェノール付加ポリブタジエン樹脂などの多価フェノール類化合物をエステル化した化合物が好ましい。
(B)の1分子中に1個以上の活性エステル基を持つ化合物の具体例としては、
【0021】
【化1】
【0022】
(化1)(式中、R1及びR2は水素、ハロゲンまたは低級アルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。R3は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。また、n及びmは、正の整数を表わす)で表わされる脂肪酸エステル化フェノール類ノボラック樹脂等が挙げられる。具体的には、アセチル化フェノールノボラック樹脂、プロピオニル化フェノールノボラック樹脂、ブチリル化フェノールノボラック樹脂、アセチル化クレゾールノボラック樹脂、プロピオニル化クレゾールノボラック樹脂、ブチリル化クレゾールノボラック樹脂などが挙げられる。(化1)に示すように、フェノール性水酸基の全部をエステル化せずに残存させても良く、エステル化しない多価フェノール類化合物が残存していても良い。これらの活性エステル基化合物は単独で、又は混合物として用いられる。
【0023】
活性エステル基化合物の配合量は、エステル基の含有量やエステル化せずに残存しているフェノール性水酸基の含有量によって異なる。すなわち、活性エステル基化合物は、アリレート基と残存するフェノール性水酸基の両者において、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応すると考えられ、両者の含有量から導かれる当量が硬化剤としての当量に相当する。従って、活性エステル基化合物の配合量は、エステル化しない多価フェノール類化合物と同様に、エポキシ樹脂のエポキシ当量に対して、0.6から1.4当量比が望ましく、通常は、エポキシ樹脂100重量部に対して活性エステル基化合物の配合量が50〜200重量部の範囲で配合するのが望ましい。活性エステル基化合物の配合量が50重量部以下でも、200重量部以上でも、十分な強度や耐熱性をもった硬化物を得ることが困難である。
【0024】
活性エステル基化合物とともに、必要に応じて従来からエポキシ樹脂用硬化剤として用いられているフェノールノボラック等のフェノール系硬化剤、ジエチレントリアミンやジアミノジフェニルメタン等のアミン系硬化剤、テトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤、ジシアンジアミド等のグアニジン系硬化剤、ベンゾグアナミン等のグアナミン系硬化剤を用いることができる。しかしながら、樹脂の吸水性を低く抑えるためには活性エステル基化合物以外の硬化剤はエポキシ樹脂100重量部に対して50重量部以下にすることが望ましい。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂成形材料では、活性エステル基化合物とエポキシ樹脂との硬化反応を促進し、樹脂の吸水性を低下させるため、(C)の硬化促進剤が用いられる。従来からエポキシ樹脂と各種硬化剤との硬化反応に用いられている硬化促進剤は、そのほとんどの化合物が本発明のエポキシ樹脂成形材料の活性エステル基化合物とエポキシ樹脂との硬化反応も促進することが確認されている。このような硬化促進剤の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン等の塩基性触媒、ピリジン、N−ジメチルアミノピリジン、4−ベンジルピリジン、2,5−ジメチルピラジン、4−メチルピリミジン等のピリジン同族体、トリエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミンやトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール及びその誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン、メチルジフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート等のテトラフェニルボロン塩やホスホニウムボロン塩が挙げられる。これらのうち1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン7、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール及びN−ジメチルアミノピリジンから選ばれる硬化促進剤の単独または二種以上の混合物は、硬化促進効果が高く好ましい。
硬化促進剤の配合量はエポキシ樹脂と活性エステル化フェノール基を持つ化合物及びその他の硬化剤の総重量部の100重量部に対して0.1〜10.0重量部用いられる。
【0026】
(E)の1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を持つ化合物は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールまたはクレゾールベースの3官能型樹脂硬化剤、フェノールとアラルキルエーテル重縮合物による樹脂硬化剤、ナフタレン骨格またはジシクロペンタジエン骨格を有するフェノール樹脂硬化剤などの多価フェノール類が好ましい。この配合は、(A)の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基に対し、(B)との合計量で0.6〜1.4当量が望ましい。配合量がエポキシ基に対して0.6当量未満であると、エポキシ樹脂の硬化が完全に行われないため、耐熱性、耐湿性、電気特性に劣り、1.4当量を越えると逆に硬化剤の有する水酸基が存在するようになり、電気特性、耐湿性が低下する。
【0027】
本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料では、吸湿性の低減と強度向上のため(D)60〜85体積%の無機充填剤が用いられる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、マグネシア、ジルコニア、ジルコン等の粉体で、又は、球形化ビーズとしたもの等が挙げられ、1種類又は複数種類混合して用いられる。充填剤の配合量は、吸湿性の低減と強度向上のため60〜85体積%が必要であり、好ましくは68体積%以上〜85体積%が望ましい。充填剤の配合量が85体積%を越えると流動性が失われてしまうので成形材料として好ましくない。
【0028】
その他の添加剤として、液状又は固形のシリコーン化合物、テレケリックゴム及び熱可塑性エラストマ等の可撓化剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩及びエステル系ワックス等の離型剤、カーボンブラック等の着色剤、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、有機チタネート、アルミニウムアルコレート等のカップリング剤並びに難燃剤等を用いることができる。
【0029】
以上のような原材料を用いて本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料を作製する際の一般的な方法としては、所定配合量の原材料をミキサ等で十分に混合した後、ミキシングロールや押出機等を用いて混練りし、冷却、粉砕することによって成形材料とする方法が挙げられる。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂成形材料を用いて電子部品を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法や圧縮成形法によっても可能である。
【0031】
通常の多価フェノール類化合物とエポキシ樹脂との反応の場合、エポキシ基の開環に伴なって親水性の水酸基が副生するが、活性エステル基化合物がエポキシ樹脂と反応する場合には、エポキシ基の開環とともに活性エステル基化合物のアシル基が水酸基と反応して親水性の低いエステルが生成すると考えられる。すなわち、活性エステル基化合物を硬化剤に用いることでエポキシ樹脂硬化物の吸水特性が良好となる理由は、通常のエポキシ樹脂と多価フェノールとの硬化反応と異なり、水酸基を生成しないので、樹脂硬化物の親水性を低く抑えることができるためと推定される。
【0032】
以下、具体例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【実施例】
<合成例1>
温度計、冷却管、窒素導入管、撹拌棒を備えた5リットルの4つ口フラスコにHP−850N(フェノールノボラック樹脂、日立化成工業株式会社製商品名)370gを投入し、メチルイソブチルケトン(MIBK)2リットルを加え窒素気流下で撹拌して溶解させた。次いで、無水酢酸429gを加え均一になるまで撹拌した後、無水酢酸ナトリウム5.7gを加え完全に溶解させた。その後油浴にて昇温し、還流温度で4時間反応させた。
【0034】
冷却後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液1リットルを投入し、更に水層が中性になるまで炭酸水素ナトリウムを加え中和した。水層を分離後、蒸溜水で十分に水洗し、減圧下で濃縮して生成物を得た。
【0035】
得られた生成物の1H−NMRスペクトル(機種:ブルカー製AC300P、溶媒:CDC13、濃度:10重量%)を図1に示す。図1より、2.0〜2.1ppmにアセチル基のメチルプロトンのシグナルが見られた。また、その積分値と芳香環プロトン(6.9〜7.2ppm)及びメチレンプロトン(3.7〜3.9ppm)の積分値の和との比が3:5であった。以上のことから、生成物がフェノール性水酸基がアセチル化されたフェノールノボラック樹脂であることが確認できた。得られたアセチル化フェノールノボラック樹脂(以下APNという)は270gであった。
【0036】
<合成例2>
合成例1において、HP−850Nの代わりにクレゾールノボラック樹脂(数平均分子量=1010)420gを用いた以外、合成例1と同様に合成反応を行ない、アセチル化クレゾールノボラック樹脂(以下ACNという)515gを得た。
【0037】
<合成例3>
合成例1において、無水酢酸の代わりに無水プロピオン酸550gを用いた以外、合成例1と同様に合成反応を行ない、プロピオニル化フェノールノボラック樹脂(以下PPNという)505gを得た。
【0038】
<合成例4>
合成例1において、HP−850Nの代わりにPP−700−300(フェノール付加ポリブダジエン樹脂、日本石油化学株式会社製商品名)475gを用い、無水酢酸及び無水酢酸ナトリウムの配合量をそれぞれ185g及び2.5gとした以外は、合成例1と同様に合成反応を行ない、アセチル化フェノール付加ポリブタジエン樹脂(以下APPという)455gを得た。
【0039】
<合成例5>
合成例1においてHP−850Nの代わりにDPP−600(ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、日本石油化学株式会社製商品名)425gを用い、無水酢酸及び無水酢酸ナトリウムの配合量をそれぞれ305g及び4.1gとした以外は、合成例1と同様に合成反応を行ない、アセチル化ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂(ADPという)450gを得た。
【0040】
<実施例1>
1分子中に2個以上のエポキシ樹脂として、ESCN195(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量=200、住友化学工業株式会社製商品名)80部(重量部、以下同じ)及びESB−400(臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量=395、住友化学工業株式会社製商品名)20部に、本発明の活性エステル基を持つ化合物であるAPN 65部及び硬化促進剤としてN−メチルイミダゾール1.3部を配合し、無機充填剤として石英ガラス粉60体積%を加え、更にカルナバワックス2部、カーボンブラック1部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2部を配合して、直径254mm(10インチ)の加熱ロールを用いて温度80〜90℃、時間7〜10分の条件で混練し、エポキシ樹脂成形材料を作製した。
【0041】
<実施例2>
エポキシ樹脂として、ESCN195 80部及びESB−400 20部、本発明の活性エステル基を持つ化合物であるACN 75部、硬化促進剤としてジメチルアミノピリジンを1.2部、石英ガラス粉60体積%を加え、その他は実施例1と同様に配合して同じ条件でエポキシ樹脂成形材料を作製した。
【0042】
<実施例3>
エポキシ樹脂として、ESCN195 80部及びBREN−S(臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量=285、日本化薬株式会社製商品名)20部、本発明の活性エステル基を持つ化合物であるPPN 85部、硬化促進剤として1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1.5部、石英ガラス粉60体積%を加え、その他は実施例1と同様に配合して同じ条件でエポキシ樹脂成形材料を作製した。
【0043】
<実施例4>
エポキシ樹脂として、YX−4000H(ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量=195、油化シェルエポキシ株式会社製商品名)80部及びBREN−S 20部、本発明の活性エステル基を持つ化合物であるAPP 170部、硬化促進剤としてジメチルアミノピリジンを1.2部、石英ガラス粉68体積%を加え、その他は実施例1と同様に配合して同じ条件でエポキシ樹脂成形材料を作製した。
【0044】
<実施例5>
エポキシ樹脂として、YX−4000H 80部及びESB−400 20部、本発明の活性エステル基を持つ化合物であるADP 95部、硬化促進剤として2−メチルイミダゾールを1.5部、石英ガラス粉68体積%を加え、その他は実施例1と同様に配合して同じ条件でエポキシ樹脂成形材料を作製した。
【0045】
<実施例6>
硬化剤として本発明の活性エステル基を持つ化合物であるAPN44部とフェノールノボラック樹脂HP−850N16部を併用した以外は実施例1と同様に配合して同じ条件でエポキシ樹脂成形材料を作製した。
【0046】
<比較例>
実施例1において本発明の活性エステル基を持つ化合物であるAPNに代えて通常のフェノールノボラック樹脂であるHP−850Nを48部、硬化促進剤としてN−メチルイミダゾールに代えて1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7を1.5部用いた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂成形材料を作製した。
【0047】
得られたエポキシ樹脂成形材料の特性は以下に示す方法で評価した。
【0048】
スパイラルフロー;EMMI 1−66に準拠した金型を使用し、180℃、90秒、6.9MPaの条件で測定した。
【0049】
ガラス転移温度(Tg);理学電機株式会社製熱機械分析装置(TMA)で線膨張曲線を得、その屈曲点から求めた。
【0050】
高温強度;JIS K6911に準拠した3点支持型曲げ試験方法で215℃で測定した。
【0051】
吸水率;JIS K6911に準拠して、直径50mm、厚さ3mmの円板を作製し、85℃、85%RHの条件で加湿を行ない、重量変化を求めた。
【0052】
表1に測定結果を示した。表1から、本発明になる成形材料(実施例)は、従来の成形材料(比較例)と同等な流動性(スパイラルフロー)及び耐熱性(ガラス転移温度、高温強度)を示し、吸水率は比較例の成形材料よりも大幅に低いことがわかる。
【0053】
【表1】
【0054】
また、180℃、90秒、6.9MPaの条件でICパッケージを成形し、成形後、180℃で5時間の後硬化を行ない、以下に示す方法ではんだリフロー時の耐クラック性及びはんだリフロー後の耐湿性の評価を行なった。
【0055】
耐クラック性;8×10×0.4mmの素子を搭載した80ピン、42アロイリードのフラットパッケージ(外形寸法;19×14×2.0mm)を評価用ICとして用い、このパッケージを85℃、85%RHで所定時間加湿した後、215℃のベーパフェーズリフロー炉で90秒加熱し、パッケージクラック発生の有無を顕微鏡観察で判定した。
【0056】
はんだリフロー後の耐湿性;10μm幅のアルミ配線を施した5×10×0.4mmのテスト素子を搭載し、25μmの金線でワイヤボンディングした350mil、28ピンのアウトラインパッケージを評価用ICとして用い、
このパッケージを85℃、85%RHで72時間加湿し、215℃のベーパフェーズリフロー炉で90秒加熱した後、更に2気圧、121℃、100%RHの条件で所定時間加湿し、アルミ配線腐食による断線不良の発生状況を調べた。
【0057】
表2にこれらの試験結果を示す。表2から、本発明になる成形材料(実施例)は、従来の成形材料(比較例)に比し、はんだリフロー時の耐クラック性及びはんだリフロー後の耐湿性が大幅に改善されていることが判る。
【0058】
【表2】
【0059】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料は、従来の成形材料に比べ吸水性が低く、はんだリフロー時の耐クラック性及びはんだリフロー後の耐湿性が良好であり、表面実装用プラスチックパッケージICの封止用成形材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の活性エステル基を持つ化合物の一実施形態を示す活性エステル化フェノールノボラック樹脂(APN)の1H−NMRスペクトル。
Claims (9)
- 主たる成分として、(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)1分子中に1個以上の活性エステル基を持つ化合物、(C)硬化促進剤、(D)60〜85体積%の無機充填剤、(E)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を持つ化合物を含有し、前記(B)の化合物がフェノール性水酸基を脂肪酸エステル化した多価フェノール類化合物であることを特徴とする電子部品封止用固形エポキシ樹脂成形材料。
- (B)の化合物がフェノール性水酸基をアセチル化した多価フェノール類化合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品封止用固形エポキシ樹脂成形材料。
- 多価フェノール類化合物がフェノールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品封止用固形エポキシ樹脂成形材料。
- 多価フェノール類化合物がクレゾールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品封止用固形エポキシ樹脂成形材料。
- 多価フェノール類化合物がフェノール付加ポリブタジエン樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品封止用固形エポキシ樹脂成形材料。
- 多価フェノール類化合物がジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品封止用固形エポキシ樹脂成形材料。
- (A)の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール変性ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂の単独又は二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の電子部品封止用固形エポキシ樹脂成形材料。
- (C)の硬化促進剤が1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール及びN−ジメチルアミノピリジンから選ばれる単独又は二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の電子部品封止用固形エポキシ樹脂成形材料。
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