JP3548446B2 - 熱交換器用伝熱管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼却炉等の燃焼炉から排出される1000℃以上の高温ガスから熱を回収するのに適した熱交換器用伝熱管に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、家庭や会社から出されたゴミは地方自治体の焼却炉で燃やされ、燃焼後の焼却灰及び排煙中の飛灰には重金属成分やダイオキシン、フラン等の有害物質が含まれている。
【0003】
また、上記焼却灰は最終処分場にそのまま埋められていたが、最終処分場の立地条件は厳しく、場所の確保も難しくなっており、加えてダイオキシンやフラン等の有害物質の規制が法律や条令でかなり厳しくなりつつあるため、焼却灰や飛灰を回収し、これを再溶融することにより有害物質を無害化する大型の溶融炉の必要性が年々高まっている。
【0004】
上記焼却灰は高温加熱処理でスラグ化すれば、焼却灰の1/2から1/4程度にその体積を小さくすることができる。また、ダイオキシン等の有害物質を高熱により分解し無害化できる。これらの理由により、前記溶融炉での高温加熱処理が有望視されている。
【0005】
一方、都市ゴミ用の焼却炉は、都市ゴミを焼却して廃棄物の威容化を行うことを目的として設置されるものであるが、エネルギーの有効利用の観点から焼却時の排ガスのもつ熱エネルギーを回収し、発電、燃焼用空気の予熱、暖房等に利用している。そして、前記熱エネルギーを最大限回収するためには、まず熱交換器で熱を回収することにより排ガス温度を可能な限りの低温となるまで冷却することが重要である。従来の熱交換器は、500〜600℃程度の温度環境で使用されていたが、近年の焼却炉や溶融炉では1200〜1300℃で運転される。
【0006】
伝熱管は、このようなゴミ焼却炉や溶融炉に設置される熱交換器に使用され、伝熱管内外を流通する雰囲気や媒体の熱エネルギーを交換する。図3において、従来の熱交換器を設けた焼却炉の概略を説明すると、熱交換器用伝熱管(以下、伝熱管という)101、燃焼用の圧送空気を通すための空気管103、熱交換器110で加熱された空気を発電用のタービンヘ送るための空気管104、熱交換器110で加熱された空気を分岐し焼却炉106へ予熱空気として送る空気管105、焼却炉106からの排ガスを通す排気ダクト107、排気ダクト107の中途に挿入し、設置された熱交換器110が設置されている。伝熱管101は、このようなゴミ焼却炉や溶融炉に設置される熱交換器110で系内外の雰囲気熱エネルギーを交換するもので、ここで、置換された熱エネルギーは焼却炉内106に導入される空気の予熱や、発電用の蒸気発生用に使用される。従来、このような1000度をこえる熱交換機110では、ステンレス鋼またはCr−Ni合金鋼管体の外面もしくは内面に普通鋼製の被覆層を形成し使用していた。(特公昭60ー216192公報参照)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、1200℃を超える高温で運転される近年の焼却炉では、腐食性の強いダストやHClガスが発生し、そのため、上記従来のステンレス鋼又はCr―Ni合金鋼からなる管体の外面若しくは内面に、普通鋼製の被覆層を介してA1メツキ層を形成したものの場合、熱や腐食性ガスにより腐食し、実用に耐えるものではなかった。
【0008】
また、高温強度に優れる炭化珪素質セラミックを熱交換器に利用することが提案されているが(特開昭59−466492号参照)、実際には、焼却炉のような大型の炉では、セラミックの伝熱管と金属製の熱交換器本体との熱膨張差を考慮した設計が必要である。従来の伝熱管はパイプ状であり、その両端を熱交換器本体で保持した形状をしている。この場合、セラミック製の伝熱管を使用すると、1200℃程度の高温では、伝熱管の両端部分が熱交換器本体との熱膨張差で破損してしまうおそれがあった。又、炉内に投入するゴミの量や燃焼の状態の変化により、炉内温度が急激に変化する場合があり、このときの熱衝撃に耐えられず、破損してしまうことがあった。
【0009】
従って、本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は1000℃以上の高温環境でも破損や腐食をなくして長期間使用でき、熱効率に優れる熱交換器用伝熱管とすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、これらに鑑みて行われたもので、一端が開口され他端が閉塞した筒状体、又は両端が開口した筒状体から成り、その外周面が高温雰囲気に晒され、内部で熱交換用の流体を流通させるようにした熱交換器用伝熱菅であって、平均粒径が5〜50μmの粗大なSiC結晶粒子を10〜30重量%、平均粒径が0.5〜5μmのSiC結晶粒子又はSi3N4結晶粒子を60〜85重量%、Al2O3を1〜5重量%、Y2O3を0.1〜5重量%含有するセラミックスを用いることにより、意識的に焼結性を低下させ好的な多孔質体を得ることができる。
【0011】
さらに、上記セラミックスの気孔率が10〜35%で、熱衝撃温度500℃での初期室温強度からの劣化率が40%以下であることにより、耐熱衝撃性を高めるとともに、気孔率を上記範囲とすることにより、リークの恐れを防止するようにした。
【0012】
さらに、上記セラミックスの熱伝導率が15W/mk以上で、かつ室温での抗折強度が50MPa以上で、伝熱菅の表面粗さが、Ra50μm以下である多孔質熱交換器用伝熱菅を用いたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施形態】
以下に、本発明の実施形態について詳述する。
【0014】
図1(a)、(b)は熱交換器用伝熱管の断面図、図2は熱交換器を設けた焼却炉の概略を表すブロック図である。
【0015】
図2において、本発明の熱交換器を設けた焼却炉の概略を説明すると、熱交換器用伝熱管(以下、伝熱管という)1、燃焼用の圧送空気を通すための空気管3、熱交換器10で加熱された空気を発電用のタービンヘ送るための空気管4、熱交換器10で加熱された空気を分岐し焼却炉6へ予熱空気として送る空気管5、焼却炉6からの排ガスを通す排気ダクト7、排気ダクトアの中途に挿入し、設置された熱交換器10が設置されている。伝熱管1は、このようなゴミ焼却炉や溶融炉に設置される熱交換器10で系内外の雰囲気熱エネルギーを交換するもので、ここで、置換された熱エネルギーは焼却炉内6に導入される空気の予熱や、発電用の蒸気発生用に使用される。
【0016】
図1において、1は熱交換器用伝熱管(以下、伝熱管という)、2は伝熱管1の開口の周囲に設けられたフランジである。図1(a)に示すようにフランジ2を一体的に形成したり、あるいは図1(b)に示すように、熱交換器用伝熱管とフランジを別々に作製して組み付けても良い。
【0017】
このように、本発明の伝熱管1は、焼却炉6等の燃焼炉の排気ダクト7中に設置され晒された状態で使用されるものであり、一端が開口され他端が閉塞している筒状体を成し、前記閉塞部側が燃焼炉の排気ダクト7中に晒され、その内部を熱交換用の流体が流通する伝熱管である。そして、この伝熱管1の材質に気孔率10〜35%以上のセラミックスを用いた。これは気孔率が10%未満では、耐熱衝撃の緩和効果が得られにくく、逆に35%をこえる場合は、チューブ内を循環し熱交換されるAirが内圧が高いためリークしてしまい効率が悪くなる問題があるためである。
【0018】
又、伝熱管1をなすセラミックスの熱衝撃温度500℃での初期室温強度からの劣化率を40%以下とした。熱衝撃温度500℃での初期室温強度からの劣化率が40%をこえると、1200〜1300℃近傍で運転される焼却炉内近傍で多量の焼却灰や外気が入った場合、炉内温度が700〜800℃レベル迄急速に低下する可能性がある。その際炉内にセットされたセラミック伝熱管にも熱衝撃が加わり、最悪の場合破損に至る。
【0019】
ここで熱衝撃試験については、所定温度に加熱したテストピースを、水中に投下することによって行う。このとき、水に接した面は水に冷やされて温度が下がり縮もうとし、水に接していない部分は暖かいままで膨張した状態である。すると内部に引っ張り応力がはたらき、テストピースに熱衝撃によるクラック等がはいることとなる。なお、このときの条件は、以下の通りである。
【0020】
(イ)テストピースサイズ:3×4×35mm、テストピース温度:500℃
(ロ)水中温度:室温(30℃)
そして上記耐熱衝撃試験後の強度を測定し、初期の室温強度に対する劣化率を求める。本発明ではこの劣化率が40%以下であるようなセラミックスを用いるのである。
【0021】
更に、伝熱管1をなすセラミックス2の熱伝導率を15W/mk以上とすることが好ましい。熱伝導率が15W/mk以下であると、伝熱管として使用する為、所定の熱交換機能が得られないためである。
【0022】
又、上記セラミックスは室温での抗折強度が50MPa以上のものを用いることが好ましい。これが室温での抗折強度が50MPa未満であると、炉内への伝熱管の搬入、セット、メンテナンス時の取り外し等の必要性があり、また、作業時に人為的なミスも加わり、カケ、割れ、クラックなどが生じる為である。
【0023】
又、伝熱管の外周面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)50μmをこえると、明らかにダストの付着が見られ、伝熱管の熱交換効率を阻害する。
【0024】
上記を満たすセラミックスとしては、平均粒径が5〜50μmの粗大なSiC結晶粒子を10〜30重量%、平均粒径が0.5〜5μmのSiC結晶粒子又はSi3 N4 結晶粒子を60〜85重量%、Al2 O3 を1〜5%、Y2 O3 を0.1〜5%含有する多孔質複合セラミックスを用いる。
【0025】
これらの製法としては、アルミナ、イットリアと混合された平均粒径5〜50μmの粗大なSiC結晶粉体と0.5〜5μmのSiC結晶粉体、又はSi3 N4 結晶粉体を、乾式混合機を用いて混合し、その後湿式ミキサーを用いてバインダーと混合し、これを用いて、金型プレス、冷間静水圧加圧成形(SIP)等を用いて、成形後、1700〜2000゜C、還元雰囲気中で焼成する。このとき粗大なSiC結晶粉体を含有させることで、焼結性が低下し、上述したような適度な気孔を形成することができる。
【0026】
又、本発明は上記の片封じ管に限定されることなく、U字管構造、両端解放構造等の他の形状での使用が可能である。
【0027】
【実施例】
本発明の実施例について以下に説明する。
【0028】
本発明の各種多孔質セラミックス焼結体、即ち平均粒径の大きなSiC結晶粒子と、平均粒径の小さなSiC結晶粒子又はSi3 N4 結晶粒子及び、アルミナ、イットリア等の焼結助剤を調合した原料を作製し、これに成形バインダー5重量%を加えて造粒し、成形圧1t/cm2 で金型プレス成形し、その後1800℃、2時間、還元雰囲気で焼成して、多孔質焼結体を得た。
【0029】
実験例1
本試験では、上記各種配合の試験片を成形、焼成して試験片を作製した。サイズは3×4×50mmとした。これら用いて、表1、2の各種特性を測定し、熱交換器用伝熱管として使用できるかどうかの適否を判定した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
この結果より、その材質に平均粒径が5〜50μmの粗大なSiC結晶粒子を10〜30重量%、平均粒径が0.5〜5μmのSiC結晶粒子又はSi3 N4 結晶粒子を60〜85重量%、Al2 O3 を1〜5%、Y2 O3 を0.1〜5%含有する多孔質複合材料を用い、気孔率が10〜35%としたものは、熱衝撃温度500℃での初期室温強度からの劣化率が40%以下、熱伝導率が15W/mk以上となり、熱交換器用伝熱管として適することがわかる。
【0033】
実験例2
次に、前記表1.2において、No.7の組成を用い、φ100×1500Lチューブを作製、表面切削加工条件を変え、表面粗さの異なった伝熱管を成形後焼成した。これを溶融炉内に500Hr設置し、取り出した後の表面ダストの付着状況を確認した。結果は表3の通りである。
【0034】
表3より伝熱管の外周面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)50μm以下において、ダストの付着は見られてなかった。
【0035】
【表3】
【0036】
【発明の効果】
本発明により、気孔率が10〜35%で、熱衝撃温度500゜Cでの初期室温強度からの劣化率が40%以下のセラミックスからなる熱交換器用伝熱管を用いることにより、1200〜1300゜Cで運転される焼却炉や溶融炉用の熱交換器伝熱管として、高温下での熱衝撃による破損が無く、又、ダスト付着が少なく、HClガス等からの耐腐食性に優れ、最終的には熱交換性能に優れた伝熱管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)(b)は本発明の熱交換器用熱伝管を示す断面図である。
【図2】本発明の熱交換器用熱伝管を備えた焼却炉の概略を示すブロック図である。
【図3】従来の熱交換器用熱伝管を備えた焼却炉の概略を示すブロック図である。
【符号の説明】
1、101、熱交換器用伝熱管
2、2a、フランジ
3、103、空気管
4、104、空気管
5、105、空気管
6、106、焼却炉
7、107、排気ダクト
10、110、熱交換器
Claims (3)
- 一端が開口され他端が閉塞した筒状体、又は両端が開口した筒状体から成り、その外周面が高温雰囲気に晒され、内部で熱交換用の流体を流通させるようにした熱交換器用伝熱菅であって、平均粒径が5〜50μmの粗大なSiC結晶粒子を10〜30重量%、平均粒径が0.5〜5μmのSiC結晶粒子又はSi 3 N 4 結晶粒子を60〜85重量%、Al 2 O 3 を1〜5重量%、Y 2 O 3 を0.1〜5重量%含有するセラミックスを用いることを特徴とする熱交換器用伝熱菅。
- 上記セラミックスの気孔率が10〜35%で、熱衝撃温度500℃での初期室温強度からの劣化率が40%以下であることを特徴とする請求項1記載の熱交換器用伝熱菅。
- 上記セラミックスの熱伝導率が15W/mk以上で、かつ室温での抗折強度が50MPa以上で、伝熱菅の表面粗さが、Ra50μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器用伝熱菅。
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