JP4285755B2 - クリンカ付着防止構造用のフェライト系耐熱合金 - Google Patents
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Description
図3に廃棄物焼却炉の例として、ストーカ式焼却炉11を示した。廃棄物15は投入ホッパ20から供給され、ストーカ13上で一次空気16に接して燃焼、かつ熱分解する。さらに、気化した燃焼成分は二次燃焼部14で二次空気17に接して、さらに燃焼し、高温の燃焼排ガスは熱回収部19で放熱して外部に排出される。燃焼残渣(灰)は受槽18に落下し取り出される。ここで、12は炉壁であって、耐火・断熱材とそれを支持する構造材で構成されている。
一般に、高温且つ腐食ガス雰囲気下で用いられる合金材料としては、耐食性と高温強度に優れるオーステナイト系耐熱合金が多く使われていた。しかし、オーステナイト系耐熱合金はフェライト系耐熱合金に比べて線膨張係数が高いことから高温燃焼設備等で利用すると大きな熱応力が発生して熱疲労による損傷を受けやすいという問題があり、また材料費や製造費が高く、実用化が困難なものであった。そこで、近年は比較的安価で製造性に優れるとともに物理的特性値が良好であるフェライトの研究・開発が行なわれ、従来のフェライト系耐熱合金にCr含有量を増加するなどして高温強度の改善を図った合金が広く用いられるようになった。例えば発電プラントのボイラ管や焼却炉の火格子等に適用されるフェライト系耐熱合金として、特許文献1(特開平8−85848号公報)、特許文献2(特開平11−106870号公報)等が挙げられる。
また、特許文献4(特開2000−199621号公報)には、成分がC:0.05〜0.4重量%、Si:0.1〜2.0重量%、Mn:1.0〜2.2重量%、Cr:22.0〜28.0重量%、Ni:4.0〜12.0重量%、Al0.3〜1.5重量%、残部が実質的にFeで該成分中Ni+Cr+Mnが少なくとも28.0重量%以上である耐熱鋳鋼材などが前記用途に適した材質として開示されている。
本発明者らはこれら従来の耐熱鋳鋼材を再検討し、更に高いクリンカ付着防止性能を有し、合わせて耐食性、高強度の炉壁内貼り材料に適した鋳物材料を開発するために鋭意研究を行なった。
これによれば、酸化物層36に対して不利益をもたらすMn成分は極力抑え、しかし皮膜にアルカリ性を付与する利益は残る程度の濃度としたため、酸化物層36がポーラス構造を形成することを防止し、耐酸化腐蝕防止機能を高く維持することが可能となる。またAlとSiの比率と含有量を調整したため、酸化物層36にAl、Si、Crの酸化物からなる皮膜の酸素不透過性を大きく向上させ、かつ高温強度を高めることが可能となった。
そこで、特許文献5に記載のごとく、Fe、Mnにより耐熱合金に付着したクリンカの表層が容易に剥離するように構成するとともに、Mn含有量を最小限に抑えることにより、表層の酸化物層がポーラス構造を形成することを防止し、耐酸化腐蝕防止機能を高く維持することが可能となった。さらに、AlとSiを含有させることにより内層の酸素不透過性を大きく向上させ、かつ高温強度を高め、酸化腐食による損耗を防止することが可能となった。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、800℃を越える高温燃焼ガス中で優れたクリンカ付着防止性能を有するとともに、Alを含有せず、且つMnの含有量を極力抑えることにより良好な高温耐食性、高温強度特性、組織安定性、耐脆化、劣化性を有するフェライト系耐熱合金を提供することを目的とする。
炉壁を形成する無機質耐火断熱材に内張りされるクリンカ付着防止構造用のフェライト系耐熱合金において、
重量%で、Mn:0.50以下、Si:2.0〜4.0、Cr:15.0〜25.0、Ni:2.0以下、及び不可避的不純物を含有し、残部がFeであることを特徴とする。
本発明らは、上層のクリンカ剥離機能はFe2O3の組織により充分クリンカの剥離が可能なことを見出したため、下層に対して不利益をもたらすMn成分は極力抑え、しかし皮膜にアルカリ性を付与する利益は残る程度の含有量とした。
Cr、Ni、Feの主要成分は合金の耐食性、耐酸化性の向上、及びクリンカ剥離性能に直接関係する合金元素であり、これらを上記範囲内とすることにより、それぞれの最適組成における複合添加効果および低Mn化の効果によりこれらの性能の大幅な向上が期待できる。800℃を超える超高温度での使用及び起動、停止時などの中温域において付着ダストによる塩化、硫化腐食に対する耐食性、さらには耐脆化、製造性などを総合的に良好な状態に保持する適切な値となる。
クリンカの剥離に際してはクリンカと反応した酸化スケール上層部が上層/下層の境界で剥がれて脱落する。残された材料表面のスケール下層は上記合金元素の複合酸化物で構成され、プレートの耐食性維持に寄与する。このような安定した耐久性を有するスケールは、Mnの低減と、含有量を夫々上記範囲内としたSi、Cr、Ni、Feの複合添加効果により形成できる。
尚、本発明におけるフェライト系耐熱合金は、P、S等の不可避的不純物を含有していても良い。
本実施例に係るフェライト系耐熱合金は、800℃を越える廃棄物燃焼炉の高温燃焼ガス中で優れたクリンカ付着防止性能を有し、さらに良好な高温耐食性、高温強度特性、組織安定性、材料の耐脆化、劣化性を有する低Mn含有組成を特徴とするフェライト系Cr−Fe−Si含有耐熱合金である。
Mnは、鋳造性、組成加工性を改善するが、保護性酸化スケールの特性、付着性などを低下させるため高温下での耐食性を劣化させ、またσ相など脆化相の析出を促進し、材質劣化の原因となる。そのため本実施例では0.5重量%以下とし、好適には0.3重量%以下とする。
Siは、鋳造性に必要な元素であり、また、CrとFeとの複合添加効果によりフェライト系合金の耐食性を向上する。しかし、多量の添加は脆化を促し、融点を低下させて耐熱性を損なうため上限値を4.0重量%とした。鋳造性、耐食性を良好に保ち、且つ耐熱性を維持するためにSi含有量を2.0重量%〜4.0重量%とした。
クリンカの剥離に際してはクリンカと反応した酸化スケール上層部が上層/下層の境界で剥がれて脱落する。残された材料表面のスケール下層は上記合金元素の複合酸化物で構成され、プレートの耐食性維持に寄与する。このような安定した耐久を有するスケールはMnの低減とSi、Cr、Ni、Feの複合添加効果により形成できる。
炉壁のような高温での使用に際し、本実施例の耐熱合金は耐クリープ性、高温強度の確保および結晶粒成長などの材質劣化を抑えることが必要である。そのため使用温度に応じてC、N、Ta+Nbの材質強化元素を少量加えることができる。これら元素の多量添加は材質の脆化、劣化を促進するため、夫々の添加量は、C:0.20重量%以下、N:0.2重量%以下、Ta+Nb:0.20〜1.20重量%とした。
これらの耐熱合金は成分比率のバランスが良好であり複合添加効果が最大限に引き出されるため、クリンカ付着防止性能において特に優れた性能を有する。
これらのうち、試験材R〜Tは本実施例で、該本実施例に係る成分比率の範囲を満たすフェライト系耐熱合金である。
試験材E〜Gは比較例で何れもSiの含有量が2.0重量%未満である。さらに試験材Gは、Mnの含有量が0.5重量%より大きく、且つNi、Crの含有量も本実施例の範囲より大きい。
試験材X〜Zは従来材或いは既存材である比較例であり、Si、Mn、Niの何れの値も本実施例の範囲を越える値である。
各評価試験の方法を以下に示す。
(1)高温酸化試験
図1(a)に示すように、乾燥空気中に設置した磁性ルツボ1内に試験材2を置き、温度900℃、1000℃、1100℃、1200℃の4段階において200時間保持して、重量減少量或いは重量増加量を測定した。
図1(b)に示すように、磁性ルツボ1内に充填した灰3の中に試験材2を埋没し、塩化腐食試験では1000ppm濃度のHClガスで満たされた酸化性雰囲気として550℃で100時間保持し、重量減少量を測定した。一方、硫化腐食試験では、50ppm濃度のSO2ガスで満たされた還元性雰囲気として550℃で100時間保持し、重量減少量を測定した。塩化腐食試験及び硫化腐食試験の何れの場合も、前記灰3は実機灰とし、NaCl、KCl、Na2SO4:等モル+Al2O3:30重量%を含有する。
前記高温硫化腐食試験は、乾燥空気中にて900℃で100時間保持し、重量減少量を測定した。前記灰3は、Na2SO4、K2SO4+Al2O3:30重量%を含有する。
図1(c)に示すように、磁性ルツボ1に溶融クリンカ4を充填し、該溶融クリンカ4に試験材2が半分程度浸漬するように設置する。磁性ルツボ1内に設置された試験材2を乾燥空気中にて1200℃で100時間保持し、局部減肉量を測定した。
(4)クリンカ剥離試験
図1(d)に示すように、試験材2として、予め1200℃で50時間保持して予備酸化し、一面側にクリンカ2aが付着した材を用いた。本試験では、磁性ルツボ1内にアルミナ粉5を充填し、前記クリンカ2a側が露出するように前記アルミナ粉5に試験材2を埋没し、1200℃で50時間保持して冷却時の試験材2表面のクリンカ2aの剥離状況を観察した。
高温引張試験は、600℃、1000℃の2段階において夫々引張強度σB、降伏強度σY、及び伸び率(%)を測定した。
シャルピー衝撃試験は、2mmVノッチ試験片を用い、0℃、600℃の2段階において吸収エネルギー、脆性破面率を測定した。
硬さ試験では、ビッカース硬度計を用いてビッカース硬さを測定した。
即ち、表2に示した高温耐食性評価結果より、1200℃の高温酸化試験にて、比較例F、G、Zの重量増加量が大きく、これより耐酸化性が低いことが判る。これに対して実施例R〜Tは耐酸化性が良好であることが判る。
また、高温塩化腐食試験にて、比較例Gの重量減少量が大きく耐塩化性が低く、実施例R〜Tでは良好な値が得られ、耐塩化性が高いことが判る。混合ガスでは比較例Eの重量減少量が大きかった。
さらに、高温硫化腐食試験では、比較例Xの重量減少量が極めて大きく、耐高温硫化性が低いことが明らかとなった。これに対して実施例R〜Tでは、重量減少量が少なく、耐高温硫化性が良好であることが判る。
また、クリンカの剥離性については、実施例R〜Tが良好であることから、低Mnほどクリンカの剥離性が優れていることが判る。
さらに、表3に示した機械特性評価結果より、本実施例R、S、Tは高温引張特性、シャルピー値、硬さともに良好であり、実用上問題のない範囲の値を示している。また、吸収エネルギー値が比較例X〜Zに比べて高く、硬さが同等である。
3 灰
4 溶融クリンカ
5 アルミナ粉
11 ストーカ式焼却炉
12 炉壁
13 ストーカ
14 二次燃焼室
25 耐火材
Claims (1)
- 炉壁を形成する無機質耐火断熱材に内張りされるクリンカ付着防止構造用のフェライト系耐熱合金において、
重量%で、Mn:0.50以下、Si:2.0〜4.0、Cr:15.0〜25.0、Ni:2.0以下、及び不可避的不純物を含有し、残部がFeであることを特徴とするクリンカ付着防止構造用のフェライト系耐熱合金。
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