JP2000213721A - 耐食性に優れた焼却炉体および焼却炉付帯設備 - Google Patents

耐食性に優れた焼却炉体および焼却炉付帯設備

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JP2000213721A
JP2000213721A JP11013541A JP1354199A JP2000213721A JP 2000213721 A JP2000213721 A JP 2000213721A JP 11013541 A JP11013541 A JP 11013541A JP 1354199 A JP1354199 A JP 1354199A JP 2000213721 A JP2000213721 A JP 2000213721A
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incinerator
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corrosion resistance
incinerator body
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Inventor
Toshiro Nagoshi
敏郎 名越
Nobukazu Fujimoto
延和 藤本
Yukihiro Kawabata
幸寛 川畑
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
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Nisshin Steel Co Ltd
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  • Waste-Gas Treatment And Other Accessory Devices For Furnaces (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温腐食環境下で使用され、とくに塩化物溶
融塩や塩化水素ガスに対して優れた耐食性を有する焼却
炉体およびその付帯設備を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.06%以下、Mn:
0.1〜1.5%、Cr:15〜30%、Ni:12.
5〜30.0%、Mo:2〜8%、Si:0.3〜3
%、Al:0.01〜0.3%を含有し、必要に応じ
て、Cu:0.2〜1.0%、N:0.3%以下、希土
類元素を1種または2種以上合計で0.01〜0.20
%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる
ステンレス鋼から構成され、焼却環境においてステンレ
ス鋼表面にMoの濃化層を生成することを特徴とする耐
食性に優れた焼却炉体および焼却炉付帯設備。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、家庭ごみ,医療廃
棄物,食品廃棄物等の塩化物を多量に含有した廃棄物を
焼却する焼却炉の焼却炉体および焼却炉付帯設備に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】近年、環境意識の高揚とともに、都市ご
みや産業廃棄物を代表とした焼却処理設備への関心が高
まっている。これに伴い焼却処理設備の長寿命化,小型
化,多機能化等の要求も高まってきた。
【0003】焼却処理設備は一般に、焼却炉体,熱交換
器,排ガス処理装置を備え、これらは各種ダクトや配管
で結ばれている。このうち焼却炉体は、直接燃焼に曝さ
れ、炉体内部や周辺の排ガスダクト、配管、熱交換器等
の付帯設備の材料温度は700〜1000℃にもなる。
しかも都市ごみや産業廃棄物を燃焼するとNaCl等の
塩化物を多量に含んだ高温の焼却灰や排ガスが発生し、
それらに接触する炉体材料や付帯設備の材料は特に激し
く腐食される。
【0004】焼却炉体は主に、炉壁,火格子,およびそ
の付帯部品から構成される。従来、これらの炉体構成部
材やその付帯設備には炭素鋼にキャスタブルを被覆した
ものが多く用いられている他、SUS309SやSUS
310S等の耐熱ステンレス鋼をそのまま(キャスタブ
ルで被覆せずに)用いている例もある。また、炉壁に水
冷帯を設けて炉材温度を下げ、腐食の低減を図る場合も
多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、キャスタブ
ルを設けた場合には炉体自体のサイズや重量が大きくな
ってしまうことが避けられず、また冷却帯を設けた場合
には冷却水等のユーティリティーが必要となるので、い
ずれの場合も焼却炉の設置場所や付帯設備の面で大きな
制約を受ける。
【0006】一方、前述の耐熱ステンレス鋼を炉体材料
またはその付帯設備材として使用する場合にも「耐食
性」の観点で問題が残る。家庭ごみや産業廃棄物は塩化
物を多量に含んでおり、燃焼環境において溶融塩が生成
したり、熱分解によって塩化水素ガスが発生したりする
ことによって焼却炉体およびその付帯設備は厳しい腐食
環境に曝されるからである。つまり、廃棄物の燃焼環境
は、高温の塩化物や塩化水素ガスによる激しいアタック
を受ける点で、一般的な燃料(重油,軽油,ガソリン,
天然ガス等)の燃焼環境や電気ヒーターによる高温環境
とは著しく異なるのである。
【0007】前述の耐熱ステンレス鋼は、一般の高温酸
化環境下では表面にCr酸化物を主体とする耐熱性スケ
ールを形成し、これが保護膜となって金属母材がそれ以
上高温酸化(腐食)するのを防ぐ。しかし、焼却炉内の
燃焼環境下では事情が異なる。高温酸化現象に加え、塩
化物溶融塩や塩化水素ガスが腐食を加速させるので、C
rやNiを多量に添加した耐熱ステンレス鋼といえど
も、その表面に生成したCr酸化スケールでは保護作用
が不足し、早期に金属材料内部まで腐食が進行してしま
うのである。また、排ガスダクトや高温熱交換器などの
焼却炉の付帯設備中でも高温の燃焼排ガスにさらされる
部位があり、このような部位でも炉体内と同様、高温酸
化現象に加え、塩化物溶融塩や塩化水素ガスが腐食を加
速される。
【0008】そこで本発明は、キャスタブル被覆や特別
な炉体冷却手段に頼ることなく、燃焼雰囲気に直接曝さ
れる部位に耐久性の高い金属材料を配設した耐食性に優
れた焼却炉体および焼却炉付帯設備を提供することを目
的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、質量%で、
C:0.06%以下、Mn:0.1〜1.5%、Cr:
15〜30%、Ni:12.5〜30.0%、Mo:2
〜8%、好ましくは3%を超え〜8%、Si:0.3〜
3%、好ましくは0.3〜0.6%、Al:0.01〜
0.3%を含有し、さらに場合によっては、Cu:0.
2〜1.0%、N:0〜3%(無添加を含む)、希土類
元素:1種または2種以上合計で0.20%以下、好ま
しくは0.01〜0.20%を含有し、S:0.001
5%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物から
なるステンレス鋼を用いて炉体内部の燃焼雰囲気に曝さ
れる部位を構成し、該ステンレス鋼表面にMoの濃化層
を有する酸化スケールを形成した焼却炉体および焼却炉
付帯設備によって達成できる。
【0010】また、該ステンレス鋼表面に形成した酸化
スケール中のMo濃化層は、下記定義に従うMo濃化度
が2以上、好ましくは3.5以上のものである焼却炉体
および焼却炉付帯設備を提供する。 Mo濃化度:ステンレス鋼表面に形成した酸化スケール
中のMo濃化層におけるMoの特性X線測定強度と、該
ステンレス鋼母材中央部の腐食されていない部分におけ
るMoの特性X線測定強度の相対比。Moの特性X線強
度は、例えばEPMAによって測定することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らの研究によれば、ステ
ンレス鋼表面にMo濃化層を有する酸化スケールを形成
させたとき、そのステンレス鋼は廃棄物処理用の焼却炉
における燃焼環境下で非常に優れた耐食性を示すことが
わかった。その耐食性向上のメカニズムは必ずしも明ら
かではないが、本発明者らの調査の結果、Mo濃化層の
存在しない酸化スケールを形成した耐熱ステンレス鋼
(従来材)では高温塩化物によって金属母材内部まで腐
食が進行したのに対し、一定濃度以上のMo濃化層を生
成させた特定組成のステンレス鋼においては同一の高温
塩化物環境下で腐食の進行が顕著に抑えられたのであ
る。この事実から、Mo濃化層は外部からの塩素の侵入
を阻止する作用を呈すると考えることができる。本発明
はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0012】本発明に係る焼却炉体および焼却炉付帯設
備は、炉体全体をMo濃化層の生成したステンレス鋼で
構成したものであっても良いが、各焼却炉の使用状況に
応じて、直接燃焼雰囲気に曝される部位であって特に腐
食の激しいところに選択的に該ステンレス鋼を適用した
ものであってもかまわない。選択的に適用した場合であ
っても、結果的に炉体および焼却炉付帯設備の寿命を最
大限に延ばすことができれば十分だからである。例え
ば、炉の内壁のうち最も温度の上昇する部分およびその
周辺や、火格子に、Mo濃化層を有する酸化スケールを
形成させたステンレス鋼を適用すれば、耐久性の高い焼
却炉体が構成できる。
【0013】ステンレス鋼表面にMo濃化層を有する酸
化スケールを形成させるためには、母材鋼の合金成分と
してMoを含有させる必要がある。また、一般的な耐高
温酸化性や、低温(約100℃程度)での基本的な耐食
性も十分に確保しなくてはならないので、Cr,Niお
よび他の元素の配合バランスも考慮する必要がある。各
合金元素の作用について次に説明する。
【0014】Moは、ステンレス鋼表面の酸化スケール
中にMo濃化層を生成させるために重要な元素である。
本発明者らの調査で次のことがわかった。すなわち、鋼
中のMo含有量が2質量%未満では酸化スケール中には
Moの濃化がほとんど起こらず、高温塩化物に対する抵
抗力は低い。ところがMo含有量が2質量%以上になる
と酸化スケール中のMo濃化度が急激に高まり、高温塩
化物による腐食の加速現象を有効に抑えることができる
ようになる。Mo含有量が3質量%を超えると非常に高
い耐高温塩化物腐食性を示し、Mo含有量が4%以上で
さらに耐高温塩化物腐食性は向上する。そして、Mo含
有量が5質量%以上になるとMo濃化度の変化は緩やか
になり、それに伴って耐高温塩化物腐食性の向上も緩や
かになる。しかし、Mo含有量が8質量%を超えると素
材の製造性(熱間加工性等)が劣化し、またMoは高価
であるため素材の原料コストも高くなりすぎる。したが
って、本発明ではMoを2〜8質量%含有するステンレ
ス鋼を使用する。特に優れた耐高温塩化物腐食性を付与
するためには、鋼中のMo含有量は3質量%を超える
量、さらに好ましくは4質量%以上の量とするのが良
い。またMoは、燃焼終了後に炉体温度が100℃付近
まで低下した際のいわゆる酸露点環境下における鋼の耐
食性、特に耐孔食性の向上に非常に有効である。
【0015】Crは、15質量%以上の含有量を確保し
ないと焼却炉の燃焼環境で良好な耐高温酸化性を維持で
きない。しかし、Cr含有量が30質量%を超えると鋼
の加工性が劣化するとともに、オーステナイト相を維持
するうえで高価なNiを多量に添加する必要が生じる。
したがって、Cr含有量は15〜30質量%とした。
【0016】Niは、上記Crとのバランスにより1
2.5質量%以上の含有量を確保しないとオーステナイ
ト相を維持することが難しく、焼却炉の燃焼環境で良好
な耐高温酸化性が得られない恐れがある。しかし、多量
の添加はコスト上昇を招くので上限は30質量%とし
た。
【0017】Cは、高温強度の確保およびオーステナイ
ト相の安定化に有効であり、反面、高温で粒界にCr炭
化物を生成してその近傍にCr欠乏層を形成し、粒界腐
食の原因となる。これらを考慮すると、焼却炉体および
焼却炉付帯設備においてはC含有量は0.06質量%以
下とするのが良い。
【0018】Mnは、脱酸,熱間加工性改善,オーステ
ナイト相安定化のために、0.1質量%以上含有させる
が、過剰に添加すると耐高温腐食性が劣化するので上限
を1.5質量%とした。
【0019】Siは、耐応力腐食割れ性,耐高温酸化性
の向上に有効であるとともに、塩素による高温腐食を抑
制する作用もある。これらの作用を焼却炉体や焼却炉付
帯設備において発揮させるためには0.3質量%以上の
Siが必要である。しかし、Siは加工性を劣化させ、
過剰に添加すると溶接性をも劣化させる。このため、S
i含有量の上限は3質量%とする必要がある。なお、M
oを比較的多量に添加する場合には塩素に対する抵抗力
が高まるので、その分、Si含有量を減らすことができ
る。検討の結果、Moを3質量%を超えて添加する場合
には、Si含有量が0.6質量%以下でも十分耐久性の
ある焼却炉体が得られることがわかった。そしてこの場
合、Si低減により加工性が改善するので、熱交換器
等、比較的複雑な形状の部材に加工するうえで有利とな
る。
【0020】Alは、製鋼での脱酸のために必要であ
り、また別途希土類元素を添加する場合には希土類元素
の酸化を防止してその歩留りを確保するうえでも必要で
ある。そのため、Alは0.01質量%以上含有させる
が、多量の添加はAl23系介在物を生成して表面疵や
加工性劣化の原因となるので、上限を0.3質量%とし
た。
【0021】Cuは、焼却炉運転停止後の炉内環境、す
なわち塩化物の存在する酸露点環境における耐食性を非
常に改善する元素であることがわかった。Cuを0.2
質量%以上含有させるとその効果は顕著になり、0.3
質量%以上含有させるのがさらに好ましい。したがっ
て、断続的に稼働することが多いような焼却設備に適用
する場合には、特にCuの添加は有効である。ただし、
過剰のCuは熱間加工性を阻害するので、Cu含有量の
上限は1.0質量%とするべきである。
【0022】Nは、耐高温酸化性や熱間加工性を劣化さ
せることがあるので添加しなくてもよい。しかし、塩化
物環境で問題となる孔食を抑制する有利な作用もあるの
で、添加する場合には、0.3質量%以下の含有量範囲
で行う。
【0023】希土類元素は、熱間加工性,耐高温酸化性
の改善に有効である。La,Ce等の希土類元素には、
鋼表面に形成される酸化スケールを安定化し、また、金
属母材と酸化スケールの密着性を高める作用があると考
えられている。このような効果は、希土類元素を合計で
0.01質量%以上含有させたときに現れる。しかし、
過剰に添加すると加工性や靱性が劣化したり、異常酸化
の起点となる介在物が生成しやすくなる。したがって、
希土類元素を添加する場合の含有量の上限は0.20質
量%に規制した。
【0024】Sは、耐高温酸化性に有害であり、またオ
ーステナイト粒界に偏析して鋼の熱間加工性や溶接高温
割れ性を劣化させる。これらを考慮すると、焼却炉体も
しくはその付帯設備に用いるステンレス鋼ではS含有量
を0.0015質量%以下に抑える必要がある。
【0025】以上のような成分組成を有するステンレス
鋼は、耐食性・加工性・高温強度・耐高温酸化性等にお
いて焼却炉体および焼却炉付帯設備に適した基本的特性
を具備するとともに、高温塩化物・塩化水素ガスによる
腐食の進行を顕著に抑制する酸化スケール、すなわちM
o濃化層を有する酸化スケールを表面に生成する能力を
有している点で、焼却炉体および焼却炉付帯設備に非常
に適していると言える。
【0026】このようなMo濃化層を有する酸化スケー
ルを形成させるには、例えば、本発明で規定する成分組
成の鋼を酸素の存在する雰囲気中で約400℃程度に加
熱すればよい。したがって、本発明に係る焼却炉体およ
び焼却炉付帯設備を作るには、炉体組立後に炉の付帯設
備であるバーナー等の熱源を利用していわゆる「空だ
き」を行えばよく、それによって耐高温塩化物腐食性に
優れたMo濃化層を有する酸化スケールが形成し、耐食
性に優れた焼却炉体および焼却炉付帯設備ができあが
る。ところがさらに良いことに、本発明者らが実際に廃
棄物処理用焼却炉の施工に際して試したところ、上記の
ような空だきを行わずに、炉体および焼却炉付帯設備組
立後直ちに廃棄物を装入して焼却を開始した場合におい
ても、十分に耐久性のあるMo濃化層が生成していたの
である。つまり、本発明で規定する成分組成のステンレ
ス鋼を使用する限り、炉体および付帯設備組立後の1回
目の焼却処理を実施することにより、耐食性に優れた本
発明の焼却炉体および付帯設備を完成させることもでき
るのである。
【0027】また、本発明者らが酸化スケール中に濃縮
したMoの濃度と高温塩化物・塩化水素ガスに対する抵
抗力の関係を調査したところ、先に定義した「Mo濃化
度」の値が2以上である酸化スケールを形成することに
よって廃棄物の燃焼雰囲気に対する抵抗力が有効に得ら
れることがわかった。焼却炉体および焼却炉付帯設備の
曝される高温環境は被処理物の種類や炉の使用状況によ
ってさまざまであるが、Mo濃化度をさらに3.5以上
にまで高めた酸化スケールを形成すればプラスチックの
ように塩素を多く含む廃棄物の処理を主体とする焼却炉
体もしくは焼却炉付帯設備としても非常に効果的な抵抗
力を示すようになる。
【0028】
【実施例】〔実施例1〕表1に示す化学組成の鋼を溶製
し、圧延、焼鈍を繰り返して板厚2mmの試験片を作製
した。焼却炉灰を模擬した合成灰(組成:36%NaC
l−27%K2SO4−27%CaSO4・2H2O−5%
PbCl2−5%ZnCl2(wt%))を調合し、これ
をアセトン中に分散させたものを試験片表面に均一に塗
布した。そして、これら合成灰を塗布した試験片を大気
中で400℃×50時間加熱し、加熱後の試験片につい
てMo濃化度と腐食減量を調べた。Mo濃化度は、加熱
後の試験片の断面をEPMAで分析し、酸化スケール中
のMo濃化層におけるMoの特性X線強度と、金属母材
中央部の腐食されていない部分におけるMoの特性X線
強度の相対比を求め、その値をMo濃化度とした。腐食
減量は、加熱前の試験片重量と、加熱後に酸化スケール
を除去した後の試験片重量の差を求め、単位面積当たり
の重量減で表した。
【0029】
【表1】
【0030】図1に、その結果を示す。鋼中のMo含有
量が2質量%以上になるとMo濃化度は急激に増加し、
Mo含有量が3質量%を超えるとMo濃化度は3.5以
上の高い値を示すようになる。また、Mo濃化度の増加
に伴って腐食減量は低下すること、つまり焼却炉灰に対
する抵抗力は強くなることがわかる。
【0031】〔実施例2〕表1の鋼A1,A3およびB
2を用いて焼却炉体および焼却炉付帯設備を構成した。
これら3種類の鋼を炉体の内壁のうち最も腐食されやす
い部位で、ほぼ同一の燃焼環境に曝される箇所に使用し
た。また付帯設備である排ガスダクト部内壁でも、これ
ら3鋼種をほぼ同一の環境に曝される箇所に使用した。
焼却炉体および焼却炉付帯設備組立後、直ちに廃棄物を
装入して実際の廃棄物焼却処理に利用した。被処理物は
食品廃棄物を主体とするものであり、焼却は毎日数時間
にわたって実施され、焼却時の炉内温度および排ガスダ
クト部の温度は800℃を超えることもあった。ただ
し、夜間、焼却停止後に炉内温度は約100℃まで低下
した。焼却灰はNa,K,Ca等の塩化物濃度の高いも
のであり、その分析値の一例を示すと例えば、質量%
で、Cl:6.12%,S:0.38%,Na:6.8
5%,Ca:4.50%,残部主としてC,N,Oであ
った。
【0032】焼却炉体の稼働開始から2ヶ月後に、前記
3種類の鋼を使用した炉内壁の部分と排ガスダクト部内
壁の部分を切り出し、使用後の鋼板断面をEPMAで分
析した。その結果、酸化スケール中のMo濃化度はそれ
ぞれ平均でA1:4.3,A3:6.5,B2:3.1
であった。また、表面の酸化スケールを除去した後の板
厚を測定して試験前後の重量変化率を計算したところ、
図2に示す結果を得た。鋼A1およびA3には酸化スケ
ール中に明らかなMo濃化層が認められ、実機において
良好な耐塩化物腐食性を示すことが確かめられた。特に
Moを比較的多量に含有し、かつCuを含有する鋼A3
は、Si含有量が0.6%未満に抑えられているにもか
かわらず非常に良好な耐塩化物腐食性を示していた。図
3には、2ヶ月間焼却炉体に使用した鋼A3における酸
化スケールの断面構造をEPMAの分析結果に基づいて
模式的に示した。
【0033】
【発明の効果】本発明の焼却炉体および焼却炉付帯設備
は、燃焼雰囲気に曝される部位に直接、特定組成のステ
ンレス鋼を配設して成るものであり、キャスタブル等の
耐火物被覆や水冷帯を設けることなく、塩化物を主体と
した溶融塩や塩化水素ガスを発生する廃棄物の焼却燃焼
環境において優れた耐食性を示すものである。このた
め、キャスタブル被覆や水冷帯を設けていた従来の大が
かりな焼却炉体に代わる簡便な構造の焼却炉体を提供す
ることができ、廃棄物処理施設の規模の大小や焼却炉体
および付帯設備の設置条件(冷却水の供給設備の有無
等)による制約も少なくて済む。したがって、本発明の
焼却炉体および付帯設備を用いれば、炉体自体のコスト
およびその付帯設備のコストを共に低減することができ
るので、例えば同じ予算で焼却施設を建設するにしても
排ガス浄化装置等、環境問題の解決に直結する部分に効
率的に投資できるなど、昨今の環境問題の改善にも間接
的に寄与することができる。
【0034】
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼中のMo含有量と、大気中400℃×50時
間の加熱後におけるMo濃化度および腐食減量の関係を
表すグラフである。
【図2】焼却炉体および排ガスダクト部の内壁を構成し
た3種類の鋼について、当該焼却炉体を2ヶ月間毎日稼
働した後の重量変化率を比較したグラフである。
【図3】2ヶ月間焼却炉体に使用した鋼A3における酸
化スケールの断面構造を模式的に表した図である。
フロントページの続き (72)発明者 川畑 幸寛 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 3K065 AA24 AB01 AC01 AC12 BA06 BA09 FB12 FB13 4K056 AA12 CA20 DC00 EA00

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高温塩化物環境となる焼却炉体およびそ
    の付帯設備であって、質量%で、C:0.06%以下、
    Mn:0.1〜1.5%、Cr:15〜30%、Ni:
    12.5〜30.0%、Mo:2〜8%、Si:0.3
    〜3%、Al:0.01〜0.3%を含有し、S:0.
    0015%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純
    物からなるステンレス鋼気に曝される焼を用いて、炉体
    内部および燃焼雰囲却炉付帯設備内の部位を構成し、該
    ステンレス鋼表面にMoの濃化層を有する酸化スケール
    を形成することを特徴とする耐食性に優れた焼却炉体お
    よび焼却炉付帯設備。
  2. 【請求項2】 高温塩化物環境となる焼却炉体およびそ
    の付帯設備であって、質量%で、C:0.06%以下、
    Mn:0.1〜1.5%、Cr:15〜30%、Ni:
    12.5〜30.0%、Mo:2〜8%、Si:0.3
    〜3%、Al:0.01〜0.3%、Cu:0.2〜
    1.0%、N:0〜0.3%(無添加を含む)を含有
    し、S:0.0015%以下であり、残部がFeおよび
    不可避的不純物からなるステンレス鋼を用いて、炉体内
    部および燃焼雰囲気に曝される焼却炉付帯設備内の部位
    を構成し、該ステンレス鋼表面にMoの濃化層を有する
    酸化スケールを形成することを特徴とする耐食性に優れ
    た焼却炉体および焼却炉付帯設備。
  3. 【請求項3】 高温塩化物環境となる焼却炉体およびそ
    の付帯設備であって、質量%で、C:0.06%以下、
    Mn:0.1〜1.5%、Cr:15〜30%、Ni:
    12.5〜30.0%、Mo:2〜8%、Si:0.3
    〜3%、Al:0.01〜0.3%、Cu:0.2〜
    1.0%、N:0〜0.3%(無添加を含む)、希土類
    元素:1種または2種以上合計で0.01〜0.20%
    を含有し、S:0.0015%以下であり、残部がFe
    および不可避的不純物からなるステンレス鋼を用いて、
    炉体内部および燃焼雰囲気に曝される焼却炉付帯設備内
    の部位を構成し、該ステンレス鋼表面にMoの濃化層を
    有する酸化スケールを形成することを特徴とする耐食性
    に優れた焼却炉体および焼却炉付帯設備。
  4. 【請求項4】 高温塩化物環境となる焼却炉体およびそ
    の付帯設備であって、質量%で、C:0.06%以下、
    Mn:0.1〜1.5%、Cr:15〜30%、Ni:
    12.5〜30.0%、Mo:3%を超え〜8%、S
    i:0.3〜0.6%、Al:0.01〜0.3%、
    N:0〜0.3%(無添加を含む)を含有し、S:0.
    0015%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純
    物からなるステンレス鋼を用いて、炉体内部および燃焼
    雰囲気に曝される焼却炉付帯設備内の部位を構成し、該
    ステンレス鋼表面にMoの濃化層を有する酸化スケール
    を形成することを特徴とする耐食性に優れた焼却炉体お
    よび焼却炉付帯設備。
  5. 【請求項5】 高温塩化物環境となる焼却炉体およびそ
    の付帯設備であって、質量%で、C:0.06%以下、
    Mn:0.1〜1.5%、Cr:15〜30%、Ni:
    12.5〜30.0%、Mo:3%を超え〜8%、S
    i:0.3〜0.6%、Al:0.01〜0.3%、C
    u:0.2〜1.0%、N:0〜0.3%(無添加を含
    む)、希土類元素:1種または2種以上合計で0〜0.
    20%(無添加を含む)を含有し、S:0.0015%
    以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる
    ステンレス鋼を用いて、炉体内部および燃焼雰囲気に曝
    される焼却炉付帯設備内の部位を構成し、該ステンレス
    鋼表面にMoの濃化層を有する酸化スケールを形成する
    ことを特徴とする耐食性に優れた焼却炉体および焼却炉
    付帯設備。
  6. 【請求項6】 前記焼却炉付帯設備は、排ガス処理装
    置、熱交換器、ダクト、配管であることを特徴とする請
    求項1,2,3,4または5のいずれかに記載の耐食性
    に優れた焼却炉体および焼却炉付帯設備。
  7. 【請求項7】 下記定義に従うMo濃化度が2以上であ
    ることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6
    のいずれかに記載の耐食性に優れた焼却炉体および焼却
    炉付帯設備。 Mo濃化度:ステンレス鋼表面に形成した酸化スケール
    中のMo濃化層におけるMoの特性X線測定強度と、該
    ステンレス鋼母材中央部の腐食されていない部分におけ
    るMoの特性X線測定強度の相対比。
  8. 【請求項8】 前記Mo濃化度が3.5以上であること
    を特徴とする請求項7に記載の耐食性に優れた焼却炉体
    および焼却炉付帯設備。
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