JP4257858B2 - クリンカ付着防止構造用のオーステナイト系耐熱合金 - Google Patents
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Description
そこで特許文献1(特許第2997869号公報)にて、成分がC:0.1〜0.4重量%、Si:0.2〜1.2重量%、Mn:1.0〜10.0重量%、Cr:22.0〜27.0重量%、Ni:3.0〜6.0重量%、残部が実質的にFeで該成分中Mn+Niが少なくとも6.0重量%である耐熱鋳鋼材が提案されている。
本発明者らはこれら従来の耐熱鋳鋼材を再検討し、更に高いクリンカ付着防止性能を有し、合わせて耐食性、高強度の炉壁内貼り材料に適した鋳物材料を開発するために鋭意研究を行なった。
これによれば、酸化物層36に対して不利益をもたらすMn成分は極力抑え、しかし皮膜にアルカリ性を付与する利益は残る程度の濃度としたため、酸化物層36がポーラス構造を形成することを防止し、耐酸化腐蝕防止機能を高く維持することが可能となる。またAlとSiの比率と含有量を調整したため、酸化物層36にAl、Si、Crの酸化物からなる皮膜の酸素不透過性を大きく向上させ、かつ高温強度を高めることが可能となった。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、800℃を越える高温燃焼ガス中で優れたクリンカ付着防止性能を有するとともに、Alを含有せず、且つSi及びMnの含有量を極力抑えることにより良好な高温耐食性、高温強度特性、組織安定性、耐脆化、劣化性を有するオーステナイト系耐熱合金を提供することを目的とする。
炉壁を形成する無機質耐火断熱材に内張りされるクリンカ付着防止構造用のオーステナイト系耐熱合金において、
質量%で、Mn:0.042〜0.50、Si:0.039〜1.00、Cr:18.0〜28.0、Ni:18.0〜34.0、C:0.20以下、N:0.20以下、Ta+Nb:0.20〜1.20を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であることを特徴とする。
本発明らは、上層のクリンカ剥離機能はFe2O3の組織により充分クリンカの剥離が可能なことを見出したため、下層に対して不利益をもたらすMn成分は極力抑え、しかし皮膜にアルカリ性を付与する利益は残る程度の含有量とした。
Cr、Ni、Feの主要成分は合金の耐食性、耐酸化性の向上、及びクリンカ剥離性能に直接関係する合金元素であり、これらを上記範囲内とすることにより、それぞれの最適組成における複合添加効果および低Mn化の効果によりこれらの性能の大幅な向上が期待できる。800℃を超える超高温度での使用および起動、停止時などの中温域において付着ダストによる塩化、硫化腐食に対する耐食性、さらには耐脆化、製造性などを総合的に良好な状態に保持する適切な値となる。
クリンカの剥離に際してはクリンカと反応した酸化スケール上層部が上層/下層の境界で剥がれて脱落する。残された材料表面のスケール下層は上記合金元素の複合酸化物で構成され、プレートの耐食性維持に寄与する。このような安定した耐久性を有するスケールは、Mnの低減と、含有量を夫々上記範囲内としたSi、Cr、Ni、Feの複合添加効果により形成できる。
炉壁に用いる耐熱合金は、高温での使用に際し、耐クリープ性、高温強度の確保および結晶粒成長などの材質劣化を抑えることが必要である。そのため使用温度に応じてC、N、Ta+Nbの材質強化元素を少量加えることができる。これら元素の多量添加は材質の脆化、劣化を促進するため上記範囲内とすることで適正化できる。
尚、本発明におけるオーステナイト系耐熱合金は、P、S等の不可避的不純物を含有していても良い。
本実施例に係るオーステナイト系耐熱合金は、800℃を越える廃棄物燃焼炉の高温燃焼ガス中で優れたクリンカ付着防止性能を有し、さらに良好な高温耐食性、高温強度特性、組織安定性、材料の耐脆化、劣化性を有する低Mn、低Si含有組成を特徴とするオーステナイト系Cr−Ni−Fe含有耐熱合金である。
Mnは、オーステナイト相を安定させるとともに鋳造性、組成加工性を改善するが、保護性酸化スケールの特性、付着性などを低下させるため高温下での耐食性を劣化させ、またσ相など脆化相の析出を促進し、材質劣化の原因となる。そのため本実施例では0.5質量%以下とし、好適には0.3質量%以下とする。
Siは、鋳造性に必要な元素であるが、オーステナイト系合金ではMnと同様な効果を有し、またNi共存下では材料の融点を低下させて耐熱性を損なうため1.00質量%以下と、含有量を極力抑えた。
クリンカの剥離に際してはクリンカと反応した酸化スケール上層部が上層/下層の境界で剥がれて脱落する。残された材料表面のスケール下層は上記合金元素の複合酸化物で構成され、プレートの耐食性維持に寄与する。このような安定した耐久を有するスケールはMnの低減とSi、Cr、Ni、Feの複合添加効果により形成できる。
炉壁のような高温での使用に際し、本実施例の耐熱合金は耐クリープ性、高温強度の確保および結晶粒成長などの材質劣化を抑えることが必要である。そのため使用温度に応じてC、N、Ta+Nbの材質強化元素を少量加えることができる。これら元素の多量添加は材質の脆化、劣化を促進するため、夫々の添加量は、C:0.20質量%以下、N:0.2質量%以下、Ta+Nb:0.20〜1.20質量%とした。
また、別の例として、質量%で、C:0.20以下、Si:0.5以下、Mn:0.3以下、Cr:18.0〜22.0、Ni:28.0〜34.0で、残部がFe及び不可避的不純物である耐熱合金が挙げられる。
これらの耐熱合金は成分比率のバランスが良好であり複合添加効果が最大限に引き出されるため、クリンカ付着防止性能において特に優れた性能を有する。
これらのうち、試験材A〜Gは本実施例であり、試験材X〜Zは比較例である。
各評価試験の方法を以下に示す。
(1)高温酸化試験
図1(a)に示すように、乾燥空気中に設置した磁性ルツボ1内に試験材2を置き、温度900℃、1000℃、1100℃、1200℃の4段階において200時間保持して、重量減少量或いは重量増加量を測定した。
図1(b)に示すように、磁性ルツボ1内に充填した灰3の中に試験材2を埋没し、塩化腐食試験では1000ppm濃度のHClガスで満たされた酸化性雰囲気として550℃で100時間保持し、重量減少量を測定した。一方、硫化腐食試験では、50ppm濃度のSO2ガスで満たされた還元性雰囲気として550℃で100時間保持し、重量減少量を測定した。塩化腐食試験及び硫化腐食試験の何れの場合も、前記灰3は実機灰とし、NaCl、KCl、Na2SO4:等モル+Al2O3:30重量%を含有する。
前記高温硫化腐食試験は、乾燥空気中にて800℃で100時間保持し、重量減少量を測定した。前記灰3は、Na2SO4、K2SO4+Al2O3:30重量%を含有する。
図1(c)に示すように、磁性ルツボ1に溶融クリンカ4を充填し、該溶融クリンカ4に試験材2が半分程度浸漬するように設置する。磁性ルツボ1内に設置された試験材2を乾燥空気中にて1200℃で100時間保持し、局部減肉量を測定した。
(4)クリンカ剥離試験
図1(d)に示すように、試験材2として、予め1200℃で50時間保持して予備酸化し、一面側にクリンカ2aが付着した材を用いた。本試験では、磁性ルツボ1内にアルミナ粉5を充填し、前記クリンカ2a側が露出するように前記アルミナ粉5に試験材2を埋没し、1200℃で50時間保持して冷却時の試験材2表面のクリンカ2aの剥離状況を観察した。
高温引張試験は、600℃、1000℃の2段階において夫々引張強度σB、降伏強度σY、及び伸び率(%)を測定した。
シャルピー衝撃試験は、2mmVノッチ試験片を用い、0℃、600℃の2段階において吸収エネルギー、脆性破面率を測定した。
硬さ試験では、ビッカース硬度計を用いてビッカース硬さを測定した。
即ち、表2に示した高温耐食性評価結果より、耐高温硫化性はA、C、DがX、Y、Zの比較例(従来材、既存材)より優れている。特に、A、Dが良好である。550℃の高温腐食に対しては、A、B、Cが良好である。総合的にはA、C、Dの高温腐食性が良好である。さらに、炉壁に適用される際に重要特性となる1200℃以上の耐高温酸化性はA、C、Dが優れている。
Mnの含有量の効果として、X、Y、Gに比べAの高温耐食性が極めて良好であり、Mnの低減効果が現れていることがわかる。
クリンカの剥離性は低Mnほど優れており、実施例の試験材は比較例に比べて良好な剥離性を有することがわかる。
3 灰
4 溶融クリンカ
5 アルミナ粉
11 ストーカ式焼却炉
12 炉壁
13 ストーカ
14 二次燃焼室
25 耐火材
Claims (1)
- 炉壁を形成する無機質耐火断熱材に内張りされるクリンカ付着防止構造用のオーステナイト系耐熱合金において、
質量%で、Mn:0.042〜0.50、Si:0.039〜1.00、Cr:18.0〜28.0、Ni:18.0〜34.0、C:0.20以下、N:0.20以下、含有し、残部がFe及び不可避的不純物であることを特徴とするクリンカ付着防止構造用のオーステナイト系耐熱合金。
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JP2004327541A JP4257858B2 (ja) | 2004-11-11 | 2004-11-11 | クリンカ付着防止構造用のオーステナイト系耐熱合金 |
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