JP4153335B2 - 耐熱性、耐食性および耐摩耗性に優れた高Cr鋳鉄 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、耐食性および耐摩耗性に優れた高Cr鋳鉄に関するものであり、特に、焼却炉のような高温かつ腐食性ガスの存在する過酷な環境下で優れた耐熱性と耐食性を発揮し、更には耐摩耗性にも優れた高Cr鋳鉄に関するものである。
【0002】
本発明の高Cr鋳鉄は、各種スラリー搬送ポンプのインペラやケーシング類、各種破砕機用ライナー類、各種加熱炉の炉床材や炉壁材等に適用できるが、以下では、大型ごみ焼却炉の主流となりつつあるストーカ炉において、上記過酷な環境下で使用される火格子に適用した場合を例に説明する。
【0003】
【従来の技術】
近年では、ごみ焼却炉の建設が立地等の制限を受けつつあるため、一つのごみ焼却炉で極力多量のごみを焼却できるよう焼却炉の大型化が求められている。
【0004】
大型ごみ焼却炉として近年ではストーカ炉が主流となりつつある。該ストーカ炉では、上部のごみホッパから投入されたごみが、レール状に敷かれた火格子上を移動する間に燃焼されるしくみとなっている。火格子は、高温に曝されるので耐熱性が要求される。特に近年では、低温燃焼によるダイオキシンの発生を防止すべく、高温で長時間継続して燃焼させる必要があり、より高い耐熱性(高温での機械的特性)が要求される。
【0005】
また火格子には、ごみと擦れ合って生じる引っ掻き摩耗や火格子同士の摺動摩擦による摩耗が生じ易い。更に、ごみの燃焼によって、塩化水素ガスやSOxガス等の腐食ガスが生ずるため、火格子には高温下でこれらのガスによる腐食減量が生じ易い。前記摩耗や腐食が著しいと、火格子表面には大きな凹凸が生じて
ごみがスムーズに搬送されないといった支障が生じる他、火格子自体の強度低下も懸念される。
【0006】
従ってメンテナンスを行う必要があるが、炉部材の度重なる補修・交換のため焼却炉の操業停止および操業開始を繰り返すと、ダイオキシンが生じ易いので望ましくなく、火格子等の焼却炉部材には、頻繁な補修等の必要ない優れた耐摩耗性を有するものが望まれる。
【0007】
この様に、焼却炉に使用される構造部材(以下、単に「焼却炉部材」ということがある)、特に、ストーカ炉の火格子のような過酷な状況下で使用される焼却炉部材には、高レベルの耐熱性、耐食性および耐摩耗性が要求される。
【0008】
火格子用鋼材としては、C量の上限が0.3%でCr:25%とNi:12%を含有する耐熱鋳鋼が提案されているが、この鋳鋼は組織の安定性が低くσ脆性が生じ易いので強度に問題がある。そこで、この様な問題点を改善すべくNi含有量の上限を4%に抑えたものや、耐食性の改善を期してAlを添加したものが提案されている。また近年では、高温強度を高めるためC量を増加させた高Cr鋳鉄も提案されている。
【0009】
この種の高Cr鋳鉄として、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4には、Cr量とAl量を増加させることにより、高温での耐酸化性や耐食性を高めた鋳鋼が開示されている。しかし、これらの鋳鋼はいずれもCとCrの含有量が相対的に少なく、本発明で意図するレベルの耐摩耗性は期待することができない。またAl含有量の増加に伴い耐食性は向上するが、CやCrの含有量を従来レベルに抑えてAl量のみを増加させると、溶鋼の粘性が増大して鋳造時の湯流れ性が低下し、鋳造欠陥が生じやすくなる。
【0010】
また特許文献5には、Wを含有させてWC(タングステンカーバイド)を形成することにより耐摩耗性を高める技術が提案されている。しかしこの技術は、Al含有量が少なめに抑えられているため、耐食性に問題が残されている。またこの技術では、炭化物を形成させることによって耐摩耗性の向上を図っているが、前述した様な引っ掻き摩耗の抑制という観点からすると、炭素量から概算される炭化物量が不十分であると考えられる。
【0011】
また、焼却炉火格子用耐熱鋳鋼として例えば特許文献6や特許文献7には、Coベースにして耐食性を高めた耐熱鋳鋼が提案されている。しかし、Coは極めて高価であるため材料費が高騰し、またC量が少ないので満足のいく耐摩耗性が望めず、実機に採用することは困難であると思われる。
【0012】
上述の様に焼却炉の構造部材には、優れた耐熱性と共に、ごみの燃焼によって生ずる塩化水素ガスやSOxガス等の腐食性ガスに対する高度の耐食性、更には耐摩耗性として多種多様なごみとの擦れ合いによる引っ掻き摩耗が生じ難いことが要求されるが、これまでに提案されているものは上記特性の全てを満たしているとは言えない。
【0013】
【特許文献1】
特開平6−49602号公報
【特許文献2】
特開平8−337812号公報
【特許文献3】
特開平11−106870号公報
【特許文献4】
特開2000−80433号公報
【特許文献5】
特開平11−131192号公報
【特許文献6】
特開平8−134571号公報
【特許文献7】
特開平10−25548号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、焼却炉のような高温かつ腐食性ガス雰囲気といった過酷な環境下でも優れた耐熱性と耐食性を発揮し、更には耐摩耗性にも優れた高Cr鋳鉄を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る高Cr鋳鉄とは、質量%で(以下同じ)、
C :2.0超〜4.0%、
Si:0.5〜4%、
Cr:30超〜50%、
Al:1〜8%、
を満たすところに特徴を有するものである。
【0016】
本発明の高Cr鋳鉄は更に下記成分を含んでいてもよい。
【0017】
▲1▼Moおよび/またはW:合計で5%以下(0%を含まない)
▲2▼Nb、Ti、V、Zr、HfおよびTaよりなる群から選択される1種以上:合計で0.5%以下(0%を含まない)、および/または
N:0.002〜0.03%
▲3▼Cu:5%以下(0%を含まない)、Ni:10%以下(0%を含まない)Mn:5%以下(0%を含まない)、およびB:0.003%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上
▲4▼Ce、La、Pr、NdおよびYよりなる群から選択される1種以上:合計で1%以下(0%を含まない)
更に本発明は、上記高Cr鋳鉄を構成部材として用いた焼却炉をも包含し、特に、本発明の高Cr鋳鉄を火格子に使用したストーカ炉は好ましい利用形態である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前述した様な状況の下で、耐熱性に優れるとともに、より優れた耐食性と耐摩耗性を発揮する高Cr鋳鉄を得るべく様々な角度から検討を行った。その結果、上記特性の全てを満足させるには、特に下記(a)〜(d)の効果を有効に発揮させるべく成分組成を適切に制御すればよいことを見出し本発明に想到した。即ち、
(a)塩化水素ガスやSOxガス等の腐食性ガスに対する耐食性を高めるには、焼却炉の構造部材として、高温酸化性雰囲気となる焼却炉使用時に、化学的に安定なCr酸化物皮膜が炉部材表面に形成されるようCrを添加すること、および/または、一層化学的に安定なAl酸化物皮膜も該表面に形成されるようAlを積極的に含有させるのが好ましいこと、
(b)火格子上をごみが移動する際に生じる引っ掻き摩耗は、組織内に占める硬質相の体積率を増加させることで低減できる。従って、従来の鋳鉄よりもC量およびCr量を更に高めて炭化クロムを多量に析出させることが有効であること、また、この様な多量の炭化クロムは、高温での機械的特性(耐熱性)を高めるのに有効であること、更に上記の如く、従来に比してC量やCr量を高めることは、Alを原因とする鋳造時の湯流れ性悪化を抑制し、鋳造欠陥の発生をも抑制すること、
(c)引っ掻き摩耗とともに、例えば焼却炉の火格子上にごみを落下させた場合に生じる押し込み摩耗を抑制するには、Cr炭化物を増加させるとともに、母相をマルテンサイト組織等の高硬度組織とすることが有効であり、そのためには、Al量を本発明で規定する範囲内で比較的少なめとし、かつ、Cu、Ni、MnおよびBよりなる群から選択される1種以上を含有させるのがよいこと、
(d)高い機械的特性を確保するには、Nb、Ti、V、Zr、HfおよびTaよりなる群から選択される1種以上を含有させて鋳造組織の微細化を図ること、および/または、適量のNを含有させて窒化物を形成させ、鋳造組織の微細化を図るのが有効であること
を見出した。
【0019】
以下、本発明で上述の通り成分組成を規定した理由について詳述する。
【0020】
C:2.0超〜4.0%
Cは、強度および耐摩耗性の向上に必須の元素である。優れた耐摩耗性を発揮させるため十分量の炭化物を生成させるには、C量を2.0%超とするのがよく、好ましくは2.2%以上である。一方、C量が過剰になると延性が低下し、例えば、構造部材を製造する場合に良好に加工できない等の不具合が生じるので好ましくない。従ってC量は4.0%以下、好ましくは3.8%以下に抑える。
【0021】
Si:0.5〜4%
Siは、耐食性向上に有効であり、また鋳造時の湯流れ性を向上させる元素でもある。この様な効果を十分に発揮させるには、Si量を0.5%以上とする必要がある。好ましくは1.0%以上である。一方、過剰に含有させると延性の低下を招くので、Si量は4%以下、好ましくは3.5%以下に抑える。
【0022】
Cr:30超〜50%
Crは、上述の通りCr炭化物を形成して耐摩耗性の向上に寄与する。また上述の通り、高温酸化性雰囲気である焼却炉使用時に、Cr酸化物を炉部材表面に保護皮膜として形成し、耐食性を向上させる上でも必須の元素である。この様な効果を十分に発揮させるには、Crを30%超含有させる必要がある。好ましくは32%以上である。一方、Cr含有量が過剰になると延性が低下するので50%以下、好ましくは45%以下に抑える。
【0023】
Al:1〜8%
Alは、高温酸化性雰囲気でCr酸化物よりも一層化学的に安定なAl酸化物を炉部材表面に保護皮膜として形成し、耐食性を向上させる。この様な効果を有効に発揮させるには1%以上含有させる必要があり、好ましくは2%以上である。しかしAl含有量が過剰になると、上述した通り湯流れ性が低下して鋳造欠陥を生じ易くなるので8%以下に抑える。より好ましくはAl量を7%以下に抑える。
【0024】
Moおよび/またはW:合計で5%以下(0%を含まない)
MoやWは、Mo2CやWC等の炭化物を形成して耐摩耗性や耐熱性を向上させるのに有効な元素である。またこれらの元素は、上述した様な腐食性ガス雰囲気下においても優れた耐食性向上効果を発揮すると考えられるので、必要に応じて含有してもよい。こうした効果を発揮させるには、Moおよび/またはWを合計で0.1%以上含有させるのが好ましいが、過剰に含有させると延性の低下を招くので、合計で5%以下とするのが好ましい。
【0025】
Nb、Ti、V、Zr、HfおよびTaよりなる群から選択される1種以上:合計で0.5%以下(0%を含まない)、および/またはN:0.002〜0.03%
Nb,Ti,V,Zr,Hf,Taは、鋳造組織を微細化させて強度と延性をともに向上させるのに有効な元素であり、また耐熱性の向上にも寄与する。
【0026】
上記効果を発揮させるには、Nb、Ti、V、Zr、HfおよびTaよりなる群から選択される1種以上を合計で0.01%以上含有させるのがよい。しかし、上記元素が過剰に存在すると却って延性が劣化するので、合計で0.5%以下に抑えるのがよい。
【0027】
本発明で意図する前掲の作用効果は、上記各元素を含有させることで有効に発揮されるが、更に適量のNを含有させると、それらの効果を一段と高めることができる。また上記元素(Nb、Ti、V、Zr、Hf、Ta)に代えてNを適量含有させた場合にも耐熱性の向上を図ることができる。
【0028】
この様なNの効果を発揮させるには、Nを0.002%以上含有させることが好ましい。しかしNの場合も上記元素(Nb、Ti、V、Zr、Hf、Ta)と同様に、過剰な含有は延性の劣化を招くのでN量は0.03%以下に抑える。
【0029】
Cu:5%以下(0%を含まない)、Ni:10%以下(0%を含まない)、 Mn:5%以下(0%を含まない)、およびB:0.003%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上
Cu,Ni,Mn,Bは焼入性向上元素であり、硬いマルテンサイトを形成するのに有効な元素である。従って炭化物の析出とともに母相の硬質化も図って耐摩耗性を更に向上させるには、Cu:1%以上、Ni:1%以上、Mn:1%以上、B:0.0002%以上よりなる群から選択される1種以上を含有させることが好ましい。
【0030】
しかしCu,Ni,Mnを過剰に含有させると、残留オーステナイトが形成されて母相の硬質化を図れなくなる。従って上記効果を発揮させるには、Cu:5%以下(0%を含まない)、Ni:10%以下(0%を含まない)、Mn:5%以下(0%を含まない)の範囲内で含有させるのがよい。また、Bを過剰に添加すると延性が低下するので、Bは0.003%以下(0%を含まない)に抑えるのがよい。
【0031】
Ce、La、Pr、NdおよびYよりなる群から選択される1種以上:合計で1%以下(0%を含まない)
Ce,La,Pr,Nd,Yは、上記Cr酸化物皮膜やAl酸化物皮膜と母材との密着性を高めて、耐食性の更なる向上に寄与する元素である。特に、温度変化が著しいときにも、熱膨張率の異なる上記酸化物皮膜と母材の優れた密着性を維持できるので有効である。この様な効果を発揮させるには、Ce、La、Pr、NdおよびYよりなる群から選択される1種以上を0.1%以上含有させるのがよい。
【0032】
しかし上記元素を過剰に含有させると、硫化物や酸化物といった介在物が増大して、延性が低下がするので合計で1%以下を推奨する。
【0033】
本発明の好ましい含有元素は上記の通りであり、残部成分は実質的にFeであるが、本発明の鋳鉄中に、微量の不可避不純物の含有が許容されるのは勿論のこと、前記本発明の作用に悪影響を与えない範囲で更に他の元素を積極的に含有させることも可能である。
【0034】
本発明の高Cr鋳鉄は、この様に成分組成を規定したところに特徴を有するもので、その製造方法については特に限定されない。即ち、具体的な鋳鉄製品を製造するにあたり、本発明で規定の化学成分組成となるよう調整した後は、例えば鋳造、圧延等の一般的な製造工程を採用することができる。尚、母相をマルテンサイト組織等の硬質組織にして耐摩耗性や耐熱性を一段と高めるには、オーステナイト組織とした上で冷却したのち低温で焼き戻す熱処理等を施すことが有効である。
【0035】
本発明の高Cr鋳鉄は、上述の通り焼却炉、各種加熱炉、各種破砕機用ライナー類等に適用できるが、中でもストーカ炉、流動床炉、ガス化溶融炉等の焼却炉の構造部材に用いることによってその特長を十分に発揮する。その中でもストーカ炉の構造部材として火格子に使用すれば、その効果が存分に発揮されるので最適である。
【0036】
本発明の高Cr鋳鉄を例えば火格子に適用する場合には、鋳造まま或いは鋳造後に焼入れ焼戻しを行って該火格子を得ることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
表1および2に示す化学成分組成の鋼を真空溶解法で溶製した後、表3に示す鋳造ままの鋼材と、更に熱処理として、鋼材の母相全体または一部をオーステナイト組織にしてから空冷し、250℃以下で焼き戻しを行った鋼材を用意した。そして、該鋼材から試験片を採取し、耐食性、耐摩耗性および耐熱性(高温での機械的特性)を調べた。
【0039】
耐食性は次の様な灰埋没試験によって評価した。即ち、上記供試鋼材からサイズが幅10mm×長さ10mm×厚さ3.5mmの試験片1を採取し、図1に示すようにアルミナ製るつぼ3に実炉から採取したごみ焼却灰2を入れ、該焼却灰2内に試験片1を埋没させて、埋め込み深さが3mmとなるようにした後、圧力4×105Paを加えて充填した。
【0040】
この様にして試験片入りるつぼ4を準備した後、図2に示す灰埋没試験用装置を用いて、各試験片の耐食性評価試験を行った。尚、図2の装置では、実機での雰囲気を再現すべく、試験片入りるつぼ4を横型管状炉5の石英管6内に設置した耐熱ボード7上に配置した。また、混合用ガス10として水素:2vol%、酸素:5vol%、塩化水素:800(vol)ppm、二酸化硫黄:600(vol)ppm、二酸化窒素:600(vol)ppmで残部が窒素となるよう、マスフローコントローラー11で組成を調整した混合ガスを石英管6内へ供給した。また、窒素ガスを水蒸気発生器12に流入させて、水分含量を12%とした後、リボンヒーター13で結露しないよう加熱して石英管6に供給した。横型管状炉5内の温度は650℃で一定となるよう制御装置8および熱電対9で調節した。
【0041】
この様に、混合ガスを石英管6に流入し且つ該石英管6内を高温にした状態で100時間保持した後、るつぼを冷却してから取り出し、該るつぼ内の試験片の質量を測定した。そして、試験片の試験前の質量から該質量を差し引いて、腐食による試験片の減量分を求め、単位面積あたりの減量分を導出した。該単位面積あたりの減量分が1.00×103g/m2以下の場合を耐食性に優れると評価した。
【0042】
耐摩耗性試験は、ASTM G65−94に準拠して行った。該摩耗試験では、サイズが厚さ12.7mm×幅25mm×長さ76mmの試験片を用いて、試験温度:室温、摩耗距離:5kmの条件で行い、試験後の試験片の質量を測定した。そして、試験片の試験前の質量から該質量を差し引いて、摩耗による試験片の減量分を求め、該減量分が0.30g以下の場合を耐摩耗性に優れると評価した。
【0043】
高温引張試験は、JIS G 0567に準拠して行った。該試験では、平行部の直径が6mmで標点距離30mmの試験片を用いて、500℃で引張試験を行い引張強度と絞りを測定した。そして引張強度が500MPa以上であり、かつ絞りが5.0%以上の場合を機械的特性に優れると評価した。これらの測定結果を表3に併記する。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1〜3から次のように考察することができる。尚、以下のNo.は表1〜3における鋼種No.を示す。
【0048】
No.1〜22は、本発明で規定する化学成分組成を満足するものであり、いずれも耐食性、耐摩耗性および機械的特性に優れていることがわかる。これに対し、No.23〜35は、本発明で規定する化学成分組成を満たすものでなく、耐食性、耐摩耗性または機械的特性に劣る結果となった。
【0049】
No.23は、C量が少ないため耐摩耗性を確保できず、強度も不足している。No.24は、C量が過剰であるため絞りが小さくなる結果となった。No.25は、Cr量が少ないため耐食性および耐摩耗性に劣る結果となった。またNo.26は、Cr量が過剰であるため絞りが小さいものとなった。
【0050】
No.27は、Al量が少ないため十分な耐食性を確保することができなかった。No.28は、Al量が過剰であるため絞りが小さくなる結果となった。
【0051】
No.29は、Si量が少ないため耐食性に優れず、また所望の機械的特性も得られなかった。またNo.30は、Si量が過剰であるため絞りが小さくなった。
【0052】
No.31は、過剰にMoおよびWを含んでいるため、No.32は、NbおよびTiを過剰に含んでいるため、No.33ではN量が過剰であるため、またNo.35は、Ce、La、PrおよびNdの合計量が1%を超えているため、いずれも絞りが小さくなった。またNo.34から、本発明で好ましいとする規定範囲内でNi等の元素を含有すれば、優れた耐摩耗性を確保できることがわかる。
【0053】
【発明の効果】
本発明の高Cr鋳鉄は、焼却炉のような高温かつ腐食性ガス雰囲気といった過酷な状況においても優れた耐熱性と耐食性を発揮し、また耐摩耗性にも優れているので、高温で連続操業される焼却炉で、火格子等の構造部材として使用すればその効果が存分に発揮される。この様に本発明の高Cr鋳鉄を焼却炉の構造部材に使用すれば、腐食や摩耗等による補修・取替えを度々行う必要がなく、結果として該補修等のための焼却炉の操業停止・開始を頻繁に繰り返さずに済むので、ダイオキシンの発生も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における灰埋没試験法に供する試料片のセット方法を示した概略断面図である。
【図2】実施例における灰埋没試験法に用いた装置の概略断面図である。
【符号の説明】
1 試験片
2 ごみ焼却灰
3 るつぼ
4 試験片入りるつぼ
5 横型管状炉
6 石英管
7 耐熱ボード
8 管状炉制御装置
9 熱電対
10 混合用ガス
11 マスフローコントローラー
12 水蒸気発生器
13 リボンヒーター
Claims (7)
- 質量%で(以下同じ)、
C :2.0超〜4.0%、
Si:0.5〜4%、
Cr:30超〜50%、
Al:1〜8%
を満たし、残部がFeおよび不可避不純物であることを特徴とする耐熱性、耐食性および耐摩耗性に優れた高Cr鋳鉄。 - Moおよび/またはWを合計で5%以下(0%を含まない)含む請求項1に記載の高Cr鋳鉄。
- Nb、Ti、V、Zr、HfおよびTaよりなる群から選択される1種以上:合計で0.5%以下(0%を含まない)、および/または
N:0.002〜0.03%を含む請求項1または2に記載の高Cr鋳鉄。 - Cu:5%以下(0%を含まない)、
Ni:10%以下(0%を含まない)、
Mn:5%以下(0%を含まない)、および
B :0.003%以下(0%を含まない)
よりなる群から選択される1種以上を含む請求項1〜3のいずれかに記載の高Cr鋳鉄。 - Ce、La、Pr、NdおよびYよりなる群から選択される1種以上を合計で1%以下(0%を含まない)含む請求項1〜4のいずれかに記載の高Cr鋳鉄。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の高Cr鋳鉄を構成部材に使用した焼却炉。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の高Cr鋳鉄を火格子に使用したストーカ炉。
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