JP2006265580A - 高耐食性耐熱合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】塩素、硫化水素および炭化水素などを含む高温の腐食環境で優れた耐食性を発揮する、新しいNi-Crをベースにした耐食・耐熱合金を提供する。
【解決手段】Ni(60〜80重量%)およびCr(20〜40重量%)をベースにしたオーステナイト合金で、Feを実質1%以下に抑えることにより高温での腐食環境で優れた耐食性を示す。Feは高温に曝される環境において合金の塩化、硫化、酸化および浸炭などによる腐食を促進させている。Feを1%以下に抑えることと、実質Ni-Crでオーステナイト合金化にすることにより、高温腐食に対する抵抗性を既存の合金よりも著しく向上させることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は高温耐食材料に関するもので、特に産業廃棄物焼却炉、都市ごみ焼却炉および化石燃料を使用する加熱炉などのようにClおよびS など腐食性元素を含む高温の環境で、その構成部材として特に優れた耐食性を発揮する。
ClおよびS などの腐食性元素を含む高温装置ではClおよびSOX など腐食性ガスを発生し装置の構成材料を著しく腐食損耗させる。特に産業廃棄物焼却炉、都市ごみ焼却炉などの主要部材である火格子やその廃熱を利用して発電を行っている蒸気発生器の蒸発管や過熱器管などは温度の上昇とともに、これら腐食性ガスやそれを含む焼却灰によって著しい高温腐食を受ける。一方、高温での燃焼はダイオキシンの発生を抑制するとともに、その廃熱が有効に利用されれば環境改善およびエネルギーの有効利用上もきわめて重要であるが、装置の安全性およびメンテナンス上からも現在、火格子温度約600℃、蒸気条件400℃、4MPaが限度である。現在、火格子はSCH2,SCH13およびSCH22などのFe基耐熱鋳鋼が用いられているが、いずれの材料も600℃以上になると高温腐食による損耗が激しく、寿命が著しく短くなる。この対策としてNiやCrの含有量を高めた材料(たとえばインコネル625など)にすることや、火格子を水冷するなどの方法が考えられているが、いずれもコストが著しく高くなるとともに、コストに見合う効果が得られていない。さらに廃熱を利用して発電を行っている蒸発管や過熱器管も高Ni材料ではコストに見合う効果が得られないため、ほとんど採用されておらず炭素鋼鋼管が主体である。
産業廃棄物焼却炉および都市ごみ焼却炉などの燃焼部材(火格子やその支持金具など)はClおよびSOX などの腐食性ガスやそれらを含む灰による高温腐食や部品同士の接触による摩耗を受けやすい。本発明は前記従来技術の実情に鑑み、産業廃棄物焼却炉、都市ごみ焼却炉などの主要部材である火格子やその廃熱を利用して発電を行っている蒸気発生器の蒸発管や過熱器管において、ClおよびS など腐食性元素を含む環境で、優れた耐高温腐食および耐摩耗性を発揮するFeの含有量を1%以下に抑えたNi基耐熱合金を提供するものである。
本発明の耐高温腐食耐熱合金は(1)成分組成が重量パーセントでCr:20〜40 %、Fe:1%以下、残部Niからなるオーステナイト単相合金を特徴とするNi基耐熱合金、(2)請求項1のNi基合金に重量パーセントでC:1%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Mo:10%以下、W:5%以下、Al:2%以下、Co:15%以下、Nb:2%以下、Ti:1%以下、REM:1%以下からなる選ばれた1種以上の元素を添加してなることを特徴とする耐高温腐食耐熱合金である。
本発明合金は都市ごみや産業廃棄物などの焼却炉用火格子やその廃熱を利用して発電するためのボイラー用過熱管などに有用である。また、高温腐食を受けやすい各種燃焼装置のバーナーやディフザーなどの構成材および石油化学プラントのナフサ分解炉用反応管材料としても有用であり、いずれの場合も既存材料に比べ、著しい耐用寿命の延長およびメンテナンスコスト低減を可能にする。
[作用]
ごみ焼却炉の主要構成部材である火格子およびその廃熱を利用して発電するための蒸気発生器などは生成する高温燃焼排ガスおよび焼却灰などにより、著しい高温腐食や摩耗を受けやすい。これら部材は表面に緻密なCrの酸化皮膜を生成させるとともに、組織安定性のためNiを含む合金が使用されている場合が多い。しかし、実装置の焼却炉ではCl,SはもちろんNa,K,Ca,Pb,Znなども含まれている場合が多く、複雑な腐食環境であるため、CrおよびNiを多量に含む合金でも耐食性は十分とは言い難い。
本発明者らは上述の複雑な腐食環境においても優れた耐食性と耐摩耗性を示すためのNiおよびCrの最適成分と従来、高温腐食に対してほとんど注目されていなかったFeの影響を鋭意研究した結果、従来の合金よりも優れた高温腐食抵抗をもつ合金が得られることがわかった。
本発明の成分限定理由は次の通りである。
Cr:20〜40%
Crは合金の表面に緻密なCr酸化膜を生成し、酸化、硫化、浸炭などに対して優れた抵抗性を示す。一方、Crはフェライト相の生成を促進するため、多量に添加するとフェライト相が安定となり高温強度を低下させてしまう。そこでCrは合金表面に緻密で安定な酸化皮膜を生成するために、少なくとも20%以上含有させる必要があるが、40%超えて含有させるとフェライト相が残留し、耐高温腐食性が低下するとともに高温強度も低下してしまう。従ってCrは20〜40%の範囲と限定する。
Ni:60〜80%
Niはオーステナイト相を安定化させる効果が強く、かつ合金表面に生成するCr酸化膜の密着性も著しく改善する。本発明合金はCrを20〜40%含有させ、かつオーステナイト単相とする必要がある。したがってNiはCr含有量によるが、少なくとも60%以上必要である。しかし80%超えて含有させるとCrの含有量が少なくなり、高温腐食抵抗性が低下してしまう。従ってNiは60〜80%の範囲となる。ただし、後述する添加元素によってオーステナイト単相が達成できる場合はNiが60%以下になっても差し支えない。
Fe:1%以下
Feは本発明合金の中で最も重要な元素である。Feは安価でしかも合金化しやすい元素であるため、ほとんどの合金に含まれている。しかし、Feは高温の酸化雰囲気に曝されると、合金表面に容易にFeの酸化皮膜を生成するとともに、Crが多量に含有される合金でもCr酸化皮膜中にFeが侵入し、Cr酸化皮膜の緻密性を阻害してしまう。高温酸化および高温腐食を抑制するためには、合金表面に安定なCr酸化膜を生成させることが重要であるが、Feが1%越えて含有されるとその効果は著しく損なわれてしまう。しかし、1%以下であればFeを実質まったく含まない合金とほぼ同程度の耐高温腐食性が得られる。従って本発明合金ではFeを1%以下にした。
C:1%以下
Cは本発明合金中でCrと結合し、合金中に炭化物を生成させる。生成した炭化物は高温でも安定でかつ硬質なため、強度向上および摩耗性向上に対して有効である。しかし、1%越えて含有させると炭化物が多量になり、靭性を低下させるとともに耐高温腐食性も劣化する。従って本発明合金ではCを1%以下にした。
Si:3%以下
Siを本発明合金中に添加すると、Cr酸化皮膜の安定性を向上させる効果がある。これはCr酸化皮膜と合金層の間に緻密で薄いSi酸化皮膜を生成させることにより達成させられる。しかし、Siを3%越えて含有させるとSi酸化皮膜が多量に生成され、Cr酸化皮膜の劣化を招くとともに、合金中に金属間化合物(Ni-Si-Cr)を生成させて合金の靭性を低下させる。従って本発明合金ではSiを3%以下にした。
Mn:3%以下
Mnは合金製造過程において脱酸目的で添加される。また、製造性(鋳造性、鍛造性、溶接性など)にも効果がある。また、本発明品においてMnは3%以下添加しても耐高温腐食性を損なわない。ただし、3%を越えて添加するとCr酸化皮膜の劣化を招くとともに、製造性の向上にも効果はない。従って本発明合金ではMnを3%以下にした。
Mo:10%以下
Moを本合金中に添加すると、耐高温腐食性を劣化させることなく高温での耐摩耗性を向上させることができる。また、Moは合金中に固溶され母相の高温強度を向上させるとともに表面近傍のCr酸化物の安定性に寄与する。しかし、Moはフェライト相を生成させやすいため、本合金ではCrを最少量に抑えた場合でもMoを10%以下にしなくてはならない。従って本発明合金ではMoを10%以下にした。
W:5%以下
Wを本合金中に添加すると、Moと同様、耐高温腐食性を劣化させることなく高温での耐摩耗性を向上させることができる。しかし、Wもフェライト相を生成させやすいため、本合金ではCrを最少量に抑えた場合でもWを5%以下にしなくてはならない。従って本発明合金ではWを5%以下にした。
Al:2%以下
Alを本合金中に添加すると、合金表面にAl酸化物が生成し高温腐食に対して優れた抵抗性を示す。しかし、Alは非常に酸化しやすい元素であるため、2%を越えて添加すると製造性が著しく悪くなる。従って本発明合金ではAlを2%以下にした。
Co:15%以下
Coは本発明合金中に固溶し高温での強度および耐摩耗性向上に対して有効である。しかしCoを15%越えて含有させても、コストに見合う強度および耐摩耗性向上は見られない。従って本発明合金ではCoを15%以下にした。
Nb:2%以下
Nbは本発明合金中でCと結合しNb炭化物を生成する。Nb炭化物は合金の強度向上および耐摩耗性向上に対して有効であり。特に高温での強度を著しく向上させる効果がある。しかし、Nbを2%越えて含有させても、コストに見合う強度向上は見られない。従って本発明合金ではNbを2%以下にした。
Ti:1%以下
Tiも本発明合金中でCと結合しTi炭化物を生成する。Ti炭化物はNb炭化物と同様、合金の強度および摩耗性向上に対して有効であり、特に高温での強度を著しく向上させる効果がある。しかし、Tiを1%越えて含有させても、コストに見合う強度向上は見られない。従って本発明合金ではTiを1%以下にした。
REM(希土類元素):1%以下
REM(Hf,Ce,La,Yなどの希土類)は合金表面に生成したCr,SiおよびAl系酸化皮膜の安定性を向上させる効果がある。これはCr,SiおよびAl系酸化皮膜と合金層の間にREM系の酸化物が生成し、Cr,SiおよびAl系酸化皮膜の密着性向上させるためである。しかし、REMを1%超えて添加すると合金中に金属間化合物が多量に生成し、合金の靭性を低下させるとともに合金表面に生成している酸化皮膜の劣化も招く。従って本発明ではREMを1%以下にした。
本発明合金は鋳造、鍛造および溶射などの種々の方法により、産業廃棄物および都市ごみ焼却炉などの高温部材に適用することができる。また、Cl、S、Naなどを含む化石燃料を使用する各種燃焼装置(バーナーやデフュザーなど)の高温腐食損傷も著しく低減することが可能である。さらに石油化学プラントにおけるエチレン製造用熱分解炉の反応管などは高温・低酸素環境下に曝され、炭化水素から分解した遊離Cにより浸炭が起こる。この浸炭によって反応管は著しく劣化するが、これに対しても本発明合金は優れた抵抗性を示す。
表1に記載した化学成分からなる合金について、都市ごみ焼却炉から採取した燃焼灰を用いて図1に示す方法にて腐食試験を行った。表2に用いた燃焼灰の化学成分を示す。燃焼灰中にはCl,S04,K,Pb,Znなど腐食性成分および低融点金属などが多量に含まれている。
Figure 2006265580
Figure 2006265580
表3は腐食試験後の重量変化を示している。試験後の重量減が少ないほど耐食性すなわち耐高温腐食性が優れている。本発明合金は既存の合金に比べ、いずれの試験温度においても腐食減量は1/2から1/10程度であり、優れた耐高温腐食性を示している。
Figure 2006265580
図2はけい砂(SiO2)を摩耗媒体として行う摩耗試験(ASTM G65:アメリカ材料試験協会規格)方法である。この試験により材料の耐摩耗性を評価することができる。表4に既存合金および本発明合金の摩耗試験結果を示す。この摩耗試験結果から本発明合金の耐摩耗性は既存合金と同等かそれ以上であることが明らかである。
Figure 2006265580
さらに表5は高温・低酸素環境下(還元性雰囲気)における浸炭試験(図2)の結果である。本発明合金の耐浸炭性は既存合金よりも優れていることが明らかである。
Figure 2006265580
腐食試験の模式図 摩耗試験の模式図 浸炭試験の模式図

Claims (2)

  1. 重量パーセントでCr:20〜40 %、Fe:1%以下、残部Niからなるオーステナイト単相合金であることを特徴とする耐高温腐食耐熱合金。
  2. 請求項1記載の耐高温腐食耐熱合金に対して、C、Si、Mn、Mo、W、Al、Co、Nb、Ti、REM.(希土類)よりなる群から選ばれた1種以上の合金元素を重量%で下記量添加してなることを特徴とする耐高温腐食耐熱合金:
    C:1%以下、Si:3%以下、Mn:3%以下、Mo:10%以下、W:5%以下、Al:2%以下、Co:15%以下、Nb:2%以下、Ti:1%以下、REM:1%以下

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