JP3918443B2 - 改質器用オーステナイト系合金ならびに耐熱用鋼材およびそれを用いた改質器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、改質器の材料として用いるのに好適な改質器用オーステナイト系合金ならびに改質器用耐熱鋼材およびこの鋼材を用いた改質器に係り、より詳しくは、家庭用の燃料電池などの改質器のような加熱と冷却のサイクルを繰り返す部位の材料として用いるのに適したオーステナイト系合金ならびに改質器用耐熱鋼材およびこの鋼材を用いた改質器に関する。
【0002】
【従来の技術】
将来的なエネルギー問題を見越し、省エネルギー化を達成する技術開発が盛んに行われている。なかでも、エネルギーを無駄なく取り出せるため、コジェネレーションが注目されている。コジェネレーションとは、化石燃料を燃焼させることにより発生する熱から発電に用いられる動力と、その動力を得る際に生じる低温の熱を同時に取り出すシステムのことをいう。
【0003】
近年では、家庭でもコジェネレーションを実現するために、燃料電池が注目を集めている。燃料電池では、都市ガス、LPGあるいはナフサなどの燃料ガスを水蒸気と反応させて、H2ガスとCO2ガスを生成する反応プロセス(このプロセスを「改質」あるいは「改質反応」という)と、固体高分子(例えば、ポリマー)を触媒としてこの改質によって得られたH2ガスを空気と化学反応させる反応プロセスの二段階の化学反応により、発電を行う。家庭用として用いられる場合には、発電により取り出した熱で水道水を加熱させ、あわせて給湯を得るといったことが行われる。
【0004】
改質のプロセスでは、燃焼ガスを水蒸気とともに約900℃まで加熱して触媒に通す必要があるため、このプロセスが行われる部位(改質器)は、反応性の高い改質ガス雰囲気中に高温で曝されることとなる。そこで、改質器に用いられる材料には、高温耐食性や強度等の諸特性が必要である。
【0005】
高温耐食性や強度の高い材料としては、一般にSUS309S、SUS310S、NCF800Hなどが知られているが、改質に伴い発生するガスには、H2ガスやCOガスなどが含まれるため、実際に改質器の材料として使用するのには、さまざまな特性を満足しなければならず、さらに使用条件も考慮しなければならない。
【0006】
そこで、改質器の材料として、以下のような発明が開示されている。
【0007】
特開平5−339679号公報には、TiとZrを用い、かつNを低く抑えることで、高いクリープ強度を確保する一方、組織安定性(σ層の生成の抑制)と耐酸化性を得るために、Cr、Ni、Nb、Zrの含有量を一定の範囲内に制御した燃料電池用の改質器材料の発明が開示されている。この改質器材料では、Alloy800Hと同等のクリープ強度、耐酸化性が得られる。
【0008】
特開2000−169103号公報および特開2000−169104号公報には、ともに材料に特徴がある改質器および改質器の改質反応部品の発明が開示されている。これらの公報に開示された発明では、Ni含有量、Cr含有量を規定することにより、Niにメタンスリップやカーボン析出の反応を逆方向に進める(逆反応させる)触媒としての作用を持たせるのとともに、α相、σ相などの金属間化合物の生成を抑制させ、さらに、Crにより耐食性を付与している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のような公報に記載の発明では、その改質器の使用方法によっては、材料自体が浸炭され損傷を受ける場合があった。特に家庭用の燃料電池の場合、日中運転し、夜間は停止する、いわゆるDDS(daily start and stop)という運用サイクルで使用されるため、改質器は毎日、加熱・冷却サイクルを受ける。信頼性の面を考慮に入れると、家庭用の燃料電池では、少なくとも10年の耐久性が求められ、単純計算して、900℃の高温環境下で約4万時間(12時間/日×365日×10年)の使用と、3650回(365回/年×10年)の加熱・冷却サイクルを耐えうる必要がある。
【0010】
このような環境下では、非常に厳しい材料特性が求められる。そして、家庭用に用いられる燃料電池にあっては、コスト面を考えると、Ni、Crといった高価な金属元素を用いることは、好ましくない。
【0011】
本願発明の課題は、高温耐食性が高く、高温下で腐食性のガスに曝されても顕著な浸炭がなく、加熱・冷却サイクル下で実質的に酸化皮膜の剥離のない改質器用オーステナイト系合金ならびに改質器用耐熱鋼材およびそれを用いた改質器を安価に提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述のような問題を解決するために、高温の改質ガス環境下で、改質器に使用される材料が、損傷していく挙動について詳細に調査した。まず、高温に加熱した都市ガスを水蒸気で改質する腐食環境下に従来材を置き、その損傷挙動を調査した結果、従来材は改質により生成した改質ガスにより浸炭されることにより材料に損傷を受けることを見いだした。そして、改質ガスの炭素活量を調べたところ、改質が行われる温度領域において、改質ガスの炭素活量は高い値を示していることがわかった。
【0013】
図1は、改質ガスの炭素活量の温度依存性を表す図である。炭素活量が改質器の材料の炭素含有量よりも高いと、改質ガスに含まれる炭素が改質器の材料に浸炭され易くなる。通常、改質器の材料の炭素含有量は0.1%程度であり、図1より、温度が400〜750℃と広い範囲にわたり炭素活量が0.1を上回っていることがわかる。改質は400〜900℃で行われることを考慮すると、改質が行われる温度領域のうちかなり広い温度領域で、極めて浸炭が起こりやすい状態にあることが確認された。
【0014】
一方で、このように浸炭が起こりやすくなっている状況下に置かれても、特定の組成を有する材料については、材料表面にCr2O3を主体とする酸化皮膜が形成されるため、この酸化皮膜が保護層の役割を果たし、浸炭の進行が妨げられることあることがわかった。
【0015】
しかし、前述したように、改質器はDDSで運用され、日中は改質ガス環境下に置かれる一方、夜間は使用されないため、常温まで冷却される。このような加熱・冷却サイクルを繰り返し受ける環境下では、材料自体が、膨張・収縮を繰り返すために、材料表面に形成された酸化被膜が剥離する。そして、この剥離をきっかけにして、母材が浸炭され、著しい損傷が生じた。
【0016】
そこで、酸化皮膜が母材と密着し、表面に存在する限り、すなわち加熱・冷却の際の膨張・収縮によって剥離しなければ、浸炭されることもなく、著しい損傷は生じないと考えた。そして、酸化皮膜の剥離に対する抵抗性は、母材に含まれるSi含有量に大きく依存し、Si含有量が、母材のCr、Ni含有量と一定の関係を満たせば、剥離に対する抵抗性は飛躍的に向上することを見いだした。
【0017】
本発明は、上述の知見をもとに完成に至ったものであり、その要旨は、下記(1)〜(5)に記載の改質器用オーステナイト系合金ならびに改質器用耐熱鋼材およびそれを用いた改質器にある。
(1)質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.05〜2%、Cr:19〜26%、Ni:10〜35%および下記(a)式を満足する量のSiを含有し、残部がFe および不純物からなることを特徴とする改質器用オーステナイト系合金。
【0018】
0.01<Si<(Cr+0.15×Ni−18)/10 … (a)
(2)質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.05〜2%、Cr:19〜26%、Ni:10〜35%および下記(a)式を満足する量のSiを含有し、さらに、希土類金属の合計:0.01〜0.1%、N:0.1〜0.3%、Ti:0.1〜0.6%、Al:0.1〜0.6%、Mo:0.1〜2%、W:0.1〜2%、Nb:0.1〜1%、Co:0.1〜2%、Cu:0.1〜2%、B:0.001〜0.01%、Mg:0.001〜0.01%、Ca:0.001〜0.01%の1種または2種以上を含有し、残部がFe および不純物からなり、不純物のPが0.03%以下、Sが0.01%以下であることを特徴とする改質器用オーステナイト系合金。
0.01<Si<(Cr+0.15×Ni−18)/10 … (a)
(3)質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.05〜2%、Cr:19〜26%、Ni:10〜35%および下記(a)式を満足する量のSiを含有し、残部がFe および不純物からなるオーステナイト系合金を母材とし、母材の表面にCr系酸化被膜が形成されていることを特徴とする改質器用耐熱鋼材。
【0019】
0.01<Si<(Cr+0.15×Ni−18)/10 … (a)
(4)質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.05〜2%、Cr:19〜26%、Ni:10〜35%および下記(a)式を満足する量のSiを含有し、さらに、希土類金属の合計:0.01〜0.1%、N:0.1〜0.3%、Ti:0.1〜0.6%、Al:0.1〜0.6%、Mo:0.1〜2%、W:0.1〜2%、Nb:0.1〜1%、Co:0.1〜2%、Cu:0.1〜2%、B:0.001〜0.01%、Mg:0.001〜0.01%、Ca:0.001〜0.01%の1種または2種以上を含有し、残部がFe および不純物からなり、不純物のPが0.03%以下、Sが0.01%以下であるオーステナイト系合金を母材とし、母材の表面にCr系酸化被膜が形成されていることを特徴とする改質器用耐熱鋼材。
0.01<Si<(Cr+0.15×Ni−18)/10 … (a)
(5)加熱と冷却のサイクルを繰り返す改質器であって、改質器の材料として上記(3)または(4)の改質器用耐熱鋼材を用いたことを特徴とする改質器。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、改質器用オーステナイト系合金に関する発明であり、改質器用との限定を加えたように、改質器に用いられる材料の発明である。改質器に用いられる材料とは、改質反応が起こる空間に配された部品に用いられる材料をいう。すなわち、改質器を構成する構成部品としては、反応管、触媒担持板、加熱用バーナー、炉体(改質器本体)などが挙げられるが、本発明で規定するオーステナイト合金がこれらの部品の全部あるいは一部に使用されていれば、そのオーステナイト合金は改質器用オーステナイト系合金であるといえる。
【0021】
また、本発明は改質器用耐熱鋼材に関する発明である。改質器は、例えば、日中のみ運転させて加熱し、夜間は運転を停止させるような、加熱と冷却のサイクルを繰り返すように使用をされても、使用に十分耐えうるものである。本発明の改質器用耐熱鋼材には、その表面にCr系酸化被膜が形成されており、この酸化皮膜が母材(オーステナイト系合金)を保護し、改質ガスにより浸炭されるのを防ぐ。
【0022】
以下には、その改質器用オーステナイト系合金および改質器用耐熱鋼材に含まれる化学組成について、具体的に説明する。なお、以下に述べる化学組成の含有量はいずれも質量%で示す。
【0023】
C:0.01〜0.1%
Cは、δフェライトの生成を抑制し、オーステナイト組織を安定させるとともに、高温強度を確保するために添加する。その効果を発揮させるためには、C含有量を0.01%以上とすることが必要である。また、C含有量が0.1%を超えると、高温で使用した場合、合金の結晶粒界に塊状のCr23C6が析出し、合金の靱性が低下し、さらに加熱・冷却を繰り返した場合、合金が熱疲労を起こしやすくなる。好ましくは0.03〜0.09%、より好ましくは0.04〜0.08%である。
【0024】
Mn:0.05〜2%
Mnは、オーステナイト組織を形成する効果を有し、溶解時に脱酸材としても作用するので添加される。その効果を発揮させるためには、Mn含有量を0.05%以上とすることが必要である。また、Mn含有量が2%を超えると、熱間加工性が低下するとともに、改質ガス中での耐高温酸化性が低下する。好ましくは0.1〜1.5%、より好ましくは0.2〜1.2%である。
【0025】
Cr:19〜26%
Crは、耐食性を高める効果を有する。Cr含有量が19%未満であると、耐高温酸化性が低下することから、高温で用いるならば、Cr含有量を19%以上とすることが必要である。好ましくは、20%以上、より好ましくは21%以上である。また、Cr含有量が26%を超えると、オーステナイト組織を安定して形成することができない。なお、Cr含有量が26%を超えても、Niを大量に添加すれば、オーステナイト組織は安定するが、コスト面を考慮すると、Cr含有量を26%超とする意義は小さい。
【0026】
Ni:10〜35%
Niは、オーステナイト組織を形成する効果を有するとともに、耐浸炭性を高める効果を有する。オーステナイト組織を安定して形成するには、Ni含有量を10%以上とすることが必要である。好ましくは、10.5%以上、より好ましくは11%以上である。また、Ni含有量が35%を超えても、上記のような効果を発揮するが、Ni含有量が35%を超えると、その効果は飽和し、そのコストに見合った効果は得られない。したがって、Ni含有量の上限は35%とする。好ましくは、33%以下、より好ましくは32%以下である。
【0027】
Si: 0.01 < Si < (Cr+0.15×Ni−18)/10
Siは、耐食性を高める効果を有し、高温環境下でもその効果を維持する。さらに、溶解時に脱酸材としても作用するので添加される。この効果を発揮させるためには、Si含有量を0.01%以上とすることが必要である。また、Si含有量が多いと、酸化皮膜の密着性を損ねるので、特に、加熱と冷却のサイクルを繰り返すように使用をされた場合に、酸化皮膜の剥離を誘発する原因となる。Si含有量の上限は、CrとNiの含有量により決定し、Si < (Cr+0.15×Ni−18)/10を満たせば、酸化皮膜の剥離を防止できる。
【0028】
希土類金属:0.01〜0.1%
希土類金属は、不純物として存在するSを固定し、さらに、酸化被膜の密着性および安定性を向上させることから、添加することが好ましい。その効果は、希土類金属の含有量の合計が0.01%以上で発揮される。一方、0.1%を超えると、高温で使用中に金属間化合物が析出し、脆化する。好ましくは、0.03%〜0.07%である。なお、希土類金属の成分の割合は特に制限されない。
【0029】
N:0.1〜0.3%
Nは、オーステナイト組織の安定化に寄与し、さらに強度を向上させることから、添加することが好ましい。その効果は、N含有量が0.1%以上で発揮される。一方、通常の溶製技術では、N含有量を0.3%とすることが困難である。好ましくは、0.15%〜0.25%である。
【0030】
Ti:0.1〜0.6%
Tiは、高温クリープに対する抵抗性を高めることができることから、添加することが好ましい。Tiを添加すると、高温使用の際、微細なα-クロム相が析出し、高温クリープに対する抵抗性が高まる。その効果は、Ti含有量が0.1%以上で発揮される。一方、0.6%を超えると、α-クロム析出物が粗大化し、靱性を損ねる。好ましくは、0.2%〜0.4%である。
【0031】
Al:0.1〜0.6%
Alは、Tiと同様に、Alを添加すると、微細なα-クロム相が析出し、高温クリープに対する抵抗性が高まることから、添加することが好ましい。その効果は、Al含有量が0.1%以上で発揮される。一方、0.6%を超えると、高温使用の際、脆いNi3Alが析出し、靱性が劣化する。好ましくは、0.15%〜0.5%である。
【0032】
Mo、W:0.1〜2%
Mo、Wは、高温強度を高めることから、添加することが好ましい。その効果は、Mo含有量、W含有量ともに0.1%以上で発揮される。一方、Mo、Wともに、その含有量が2%を超えると、使用中に脆い金属間化合物が析出し、靱性が低下する。Moの添加の場合、好ましくは、0.3%〜1.8%、Wの添加の場合、好ましくは、0.5%〜1.5%である。
【0033】
Nb:0.1〜1%
Nbは、炭化物を形成しやすく、炭化物の析出により高温強度を高めることができることから、添加することが好ましい。その効果は、Nb含有量が0.1%以上で発揮される。一方、1%を超えると、その効果は飽和する。好ましくは、0.4%〜0.85%である。
【0034】
Co、Cu:0.1〜2%
Co、Cuは、オーステナイト組織の安定化に寄与することから、添加することが好ましい。その効果は、Co含有量、Cu含有量がともに0.1%以上で発揮される。一方、Co、Cuともに、その含有量が2%を超えると、熱間加工性が低下する。Coの添加の場合、好ましくは、0.5%〜1.5%、Cuの添加の場合、好ましくは、0.5%〜1.5%である。
【0035】
B:0.001〜0.01%
Bは、結晶粒界を強化することから、項音響尾を高める目的で添加することが好ましい。その効果は、B含有量が0.001%以上で発揮される。一方、0.01%を超えると、溶接の際に起こる高温割れに対する感受性(溶接高温割れ性)が高くなる。好ましくは、0.002%〜0.005%である。
【0036】
Mg、Ca:0.001〜0.01%
Mg、Caは、熱間加工性を向上させるために添加することが好ましい。その効果は、Mg含有量が0.001%以上、Ca含有量が0.001%以上で発揮される。一方、Mg、Caともに、その含有量が0.01%を超えると、低融点であるNi-Ca、Ni-Mg化合物が形成され、熱間加工性が悪くなる。Mgの添加の場合、好ましくは、0.001%〜0.005%、Caの添加の場合、好ましくは、0.001%〜0.005%である。
【0037】
P:0.03%以下
S:0.01%以下
P、Sは、溶接高温割れ性や熱間鍛造性に直接影響する不純物であり、その含有量は低いほど好ましい。しかしながら、通常、溶解原料としてスクラップが一部使用されるため、そのスクラップからP、Sが混入する。溶接高温割れ性や熱間鍛造性を考慮すると、Pは0.03%以下、Sは0.01%以下とすることが好ましい。
【0038】
【実施例】
改質器用に用いることができる化学組成を調べるために、複数のオーステナイト系合金を作製した。まず、さまざまな組成からなる合金を各50kgずつ溶解炉で真空誘導により加熱し溶製しインゴットとした。得られたインゴットは外削加工を施し、1200℃で1時間加熱した後、熱間鍛造により厚さ20mmの板状にした。続いて、この板を1150℃で1時間加熱し、水冷より板を冷却後、冷間圧延で15mmの冷延板とした。最後に冷延板を再度1150℃で1時間加熱し、水冷より冷却することでオーステナイト系合金板を得た。
【0039】
表1は、以上のように作製したオーステナイト系合金板の化学組成を示した表である。そして、これらの合金板において、酸化被膜の剥離の有無を調べるために、浸炭試験を行った。まず、得られた合金板の肉厚中央部から切削加工により厚み1mm、幅25mm、長さ40mmの大きさに切り出し、供試材とした。
【0040】
【表1】
浸炭試験では、都市ガスを原料として模擬的に作製した改質ガス(1%CH4-7%CO2-12%CO-20%H2O-60%H2)中に供試材を設置し、750℃で3000時間加熱した。いずれの供試材も表面に約10μmのCr2O3を主体とする酸化被膜が形成されたが、浸炭による損傷はなかった。したがって、本試験に使用した供試材の化学組成をもつ材料であれば、少なくとも連続使用する限り(加熱・冷却サイクルを繰り返し受ける環境下に置かれない限り)、改質ガスに対し浸炭されることはないことがわかる。
【0041】
続いて、この供試材を900℃で30分加熱後、10分放冷し室温まで冷却する加熱・冷却サイクルを同改質ガス中で3650回(365日×10年を想定)施し、試験後、浸炭による損傷と酸化被膜の剥離について調べた。その結果、一部のものに著しい酸化皮膜の剥離が見られた。
【0042】
表2は、各供試材の加熱・冷却サイクルを施した後に酸化皮膜が剥離した面積を示した表である。酸化被膜が剥離しなかったものについては、酸化被膜により母材が保護され、浸炭による損傷はなかった。一方、酸化被膜が剥離したものについては、酸化皮膜が再び形成される(回復する)こともなかったため、母材が改質ガスに曝され、浸炭により損傷していることが確認された。
【0043】
【表2】
以上の結果から、全般に酸化皮膜の剥離はSi含有量が多いものほど顕著に生じる傾向が見られた。そこで、耐食性を高めるCrと耐浸炭性を高めるNiの含有量を考慮し、試行錯誤したところ、前記(a)式を満たせば、酸化皮膜の剥離は生じないとの知見を得た。
【0044】
図2は、横軸 に前記(a)式の中項(Cr+0.15×Ni−18)/10、縦軸にSi含有量をとり、酸化皮膜の剥離の有無を表した図である。図2では、酸化被膜の剥離がなかったものを○、酸化被膜の剥離があったものを×で示し、右肩上がりの直線はSi=(Cr+0.15×Ni−18)/10を表す。図2からも明らかなように、Si <(Cr+0.15×Ni−18)/10を満たせば、酸化皮膜の剥離は起こらず、加熱・冷却サイクルを繰り返すと行った厳しい環境下に置かれても、十分に耐久性を有するオーステナイト系合金が得ることができ、しかもこの合金は改質器用の材料として好適である。
【0045】
【発明の効果】
本発明に係わる化学組成を有するオーステナイト系合金あるいは耐熱鋼材は、高温での加熱と室温への冷却を繰り返すといった加熱・冷却サイクルを受けても、表面でできた酸化皮膜が剥離することがなく、改質ガスに侵されても浸炭することがないので、加熱・冷却サイクル下で使用される改質器用の材料に用いることに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】改質ガスの炭素活量の温度依存性を表す図である。
【図2】横軸 に前記(a)式の中項(Cr+0.15×Ni−18)/10、縦軸にSi含有量をとり、酸化皮膜の剥離の有無を表した図である。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.05〜2%、Cr:19〜26%、Ni:10〜35%および下記(a)式を満足する量のSiを含有し、残部がFe および不純物からなることを特徴とする改質器用オーステナイト系合金。
0.01<Si<(Cr+0.15×Ni−18)/10 … (a) - 質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.05〜2%、Cr:19〜26%、Ni:10〜35%および下記(a)式を満足する量のSiを含有し、さらに、希土類金属の合計:0.01〜0.1%、N:0.1〜0.3%、Ti:0.1〜0.6%、Al:0.1〜0.6%、Mo:0.1〜2%、W:0.1〜2%、Nb:0.1〜1%、Co:0.1〜2%、Cu:0.1〜2%、B:0.001〜0.01%、Mg:0.001〜0.01%、Ca:0.001〜0.01%の1種または2種以上を含有し、残部がFe および不純物からなり、不純物のPが0.03%以下、Sが0.01%以下であることを特徴とする改質器用オーステナイト系合金。
0.01<Si<(Cr+0.15×Ni−18)/10 … (a) - 質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.05〜2%、Cr:19〜26%、Ni:10〜35%および下記(a)式を満足する量のSiを含有し、残部がFe および不純物からなるオーステナイト系合金を母材とし、母材の表面にCr系酸化被膜が形成されていることを特徴とする改質器用耐熱鋼材。
0.01<Si<(Cr+0.15×Ni−18)/10 … (a) - 質量%で、C:0.01〜0.1%、Mn:0.05〜2%、Cr:19〜26%、Ni:10〜35%および下記(a)式を満足する量のSiを含有し、さらに、希土類金属の合計:0.01〜0.1%、N:0.1〜0.3%、Ti:0.1〜0.6%、Al:0.1〜0.6%、Mo:0.1〜2%、W:0.1〜2%、Nb:0.1〜1%、Co:0.1〜2%、Cu:0.1〜2%、B:0.001〜0.01%、Mg:0.001〜0.01%、Ca:0.001〜0.01%の1種または2種以上を含有し、残部がFe および不純物からなり、不純物のPが0.03%以下、Sが0.01%以下であるオーステナイト系合金を母材とし、母材の表面にCr系酸化被膜が形成されていることを特徴とする改質器用耐熱鋼材。
0.01<Si<(Cr+0.15×Ni−18)/10 … (a) - 加熱と冷却のサイクルを繰り返す改質器であって、改質器の材料として請求項3または4の改質器用耐熱鋼材を用いたことを特徴とする改質器。
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JP2001058070A JP3918443B2 (ja) | 2001-03-02 | 2001-03-02 | 改質器用オーステナイト系合金ならびに耐熱用鋼材およびそれを用いた改質器 |
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