JP3548080B2 - 建築物又は土木構築物用の表装材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば建築物の壁面に使用される建築物又は土木構築物用の表装材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の建築物の壁面に使用される建築物用の表装材としては、例えば特開昭64−66353号公報に開示されている方法により製造されるものが知られている。その方法としては、まず、シート状をなす基材表面に、着色骨材を混入した第1混合塗布材を点在させて凹凸をなすように塗布し、次にその上に異なる色の着色骨材が混入された第2混合塗布材を塗布する。次いで、第1及び第2混合塗布材が硬化し、基材上に塗料層が形成された後に、前記第1混合塗布材の少なくとも1部分が塗料層表面に露出する程度に同塗料層表面を研磨する。その結果、色が異なる第1及び第2混合塗布材がそれぞれ塗料層表面に露出した表装材が得られる。そして、その表装材を建築物の壁面に装着することにより、その壁面に意匠性が付与される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来方法により得られる建築物用の表装材では、その製造工程において、第1混合塗布材が基材上に点在するように塗布される。そのため、塗料層表面を研磨して、第1混合塗布材を塗料層表面に露出させたとき、第1混合塗布材は斑模様にしか露出しない。従って、従来の建築物用の表装材は装飾性に欠け、外観を向上させることができないという問題があった。
【0004】
また、製造工程は、第1混合塗布材の塗布工程、第2混合塗布材の塗布工程、乾燥工程及び塗料層表面の研磨工程から構成されている。そのため、従来の建築物用の表装材の製造方法は工程数が多く、面倒であるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、塗料層表面に縞模様を表現して良好な外観を発揮できる建築物又は土木構築物用の表装材を提供することにある。その他の目的とするところは、塗料層表面に縞模様を表現して良好な外観を発揮できる建築物又は土木構築物用の表装材を容易に製造することができる建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法は、基材上に塗料層を形成するための1種又は2種以上の色の着色骨材や天然石が混入された塗料を、前記基材上に凹所及び凸所を形成するべく吹き付け、その塗料が流動性を有する状態において、少なくとも前記塗料の凸所を可撓性を有するカーテン材を使用して引張った後、塗料を乾燥して塗料層表面のうちの少なくとも一部分に線状又は帯状に延びる凸部分を形成し、塗料層の内部を粒子状に形成するとともに、その凸部分と複数の凸部分間に形成された凹部分とにより塗料層表面に凹凸形状を形成するものである。
【0007】
請求項2に記載の発明の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記基材上の凹凸における凹所の厚みが凸所の厚みの7/10〜1/10の状態において、塗料層表面の凹凸における凹部分の厚みが凸部分の厚みの4/5〜1/5となるように前記凸所をカーテン材により引張るものである。
【0008】
請求項3に記載の発明の建築物又は土木構築物用の表装材は、請求項1又は請求項2に記載の製造方法で得られた建築物又は土木構築物用の表装材であって、基材と、その基材上に形成された塗料層とよりなり、その塗料層表面の少なくとも一部分に線状又は帯状に延びる凸部分が形成され、塗料層の凸部分の厚みは2〜10mmに設定され、塗料層の内部が粒子状に形成されるとともに、その凸部分と複数の凸部分間に形成された凹部分とにより塗料層表面に凹凸形状が形成されたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明の建築物又は土木構築物用の表装材は、請求項3に記載の発明において、前記塗料層表面の凹凸における凹部分の厚みは凸部分の厚みの4/5〜1/5に形成されているものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を建築用の表装材に具体化した一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、建築用の表装材(以下、単に表装材と称す)11は、基材12と、その基材12上に凹凸状に吹き付けられた塗料を図示しないカーテン材を使用して所定方向へ引張ることにより、その塗料が内部が粒子状に形成されるとともに、表面が線状又は帯状に形成された塗料層13とから構成されている。
【0012】
基材12としては、可撓性のある不織布、織布、ガラスクロス、紙等が使用されるとともに、可撓性のない合板、窯業用サイディング、金属サイディング、ALC板、GRC板、PC板等が使用され、特に可撓性のある不織布又はガラスクロスが好適に使用される。この実施形態では平面四角形状をなす不織布を使用した。
【0013】
塗料層13は基材12の一対角線方向に沿って線状又は帯状に延びる凸部分としての凸条15と隣接する凸条15間に形成された凹部分としての凹条16とにより断面凹凸形状をなすとともに、その凹凸により塗料層13表面に縞模様が形成されている。なお、塗料層13の表面において、凸条15が形成されず、点状をなす凸部分としての凸部17と前記凹条16とにより凹凸が形成されている部分もある。
【0014】
さらに、塗料層13中には1種又は2種以上の色の着色骨材や天然石が混入され、それら着色骨材が前記凸条15、凸部17及び凹条16に点在して、表装材11の表面に色調が発揮されるようになっている。また、塗料層13の内部は図示しないが塗料が粒子状に形成されている。なお、塗料層13の凸部分の厚みは、2〜10mmに設定されるのが好ましい。凸部分の厚みが2mm未満の場合は、表装材11に凹凸感を付与することが困難になり、表装材11全体が平板状になってしまい好ましくない。一方、凸部分の厚みが10mmより厚くなると、表装材11の重量が嵩んで、その表装材11の施工作業が行いにくくなり、さらに、塗料層13の原材料コストが嵩んでしまい好ましくない。
【0015】
図3(c)に示すように、塗料層13の凹凸において、凹条16の厚みt1は凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5〜1/5に設定するのが好ましく、1/2〜1/4に設定するのがより好ましい。凹条16の厚みt1が凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5より大きくなると、塗料層13の表面が平面的になり凹凸形状を表現することができず、良好な外観を得ることができなくなり好ましくない。一方、凹条16の厚みt1が凸条15及び凸部17の厚みt2の1/5より小さくなると、塗料層13の凹凸形状の凹凸差が大きくなり、凹条16に埃等がたまりやすく、汚れの原因となるおそれがあり好ましくない。加えて、凹条16の厚みが薄くなり、表装材11が透けてしまうおそれがあり好ましくない。
【0016】
塗料層13を形成する塗料としては、一般の溶剤型塗料、エマルション型塗料、加熱硬化型塗料等の他、感熱ゲル塗料、スキン系塗料等が使用され、これらの塗料の中でも、顔料、骨材成分の観点から考慮した場合は、骨材固有の色調を効果的に発揮することができるスキン系塗料を使用するのが好ましい。また、結合材成分の観点から考慮した場合は、塗料層13を厚く形成した場合において、その塗料層13内部までの硬化時間を短くできる感熱ゲル塗料を使用するのが好ましい。
【0017】
なお、塗料は、骨材固有の色調を効果的に発揮することができ、塗料層13内部までの硬化時間を短くできることからスキン系塗料と感熱ゲル塗料を併用するのが好ましい。また、塗料層13は、2色以上の着色骨材、天然石等を含有させたりして、2色以上の塗料により形成するのが好ましく、このようにすることにより表装材11の外観をより一層良好にすることができる。
【0018】
塗料を構成するエマルションとしては、各種アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、ベオバアクリル酸エステル共重合体、SBRラテックス、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、特にアクリル系のエマルションが好適に使用される。これらの重合体は、少なくとも1種が適宜選択して使用される。
【0019】
感熱ゲル塗料としては、エマルションと感熱ゲル化剤とを配合したものが使用される。感熱ゲル化剤としては、亜鉛アンモニウム錯塩、ノニオン系界面活性剤、無機金属塩、ポリプロピレングリコール、シリコーンポリエーテル共重合体、ポリビニルメチルエーテル等が使用され、特に亜鉛アンモニウム錯塩が使用される。これらの感熱ゲル化剤はそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。感熱ゲル塗料に着色骨材、天然石等を添加して使用してもよい。
【0020】
スキン系塗料は前記エマルション中に主に着色骨材や天然石を含有した塗料であり、その着色骨材としては、けい砂、寒水石等に着色を施したものが使用され、天然石としては、寒水石、けい砂、大理石等又はこれらの天然石の砕粒が使用される。これらの着色骨材及び天然石は、それぞれ適宜選択して使用される。また、着色骨材及び天然石の他に陶磁器粉砕粒、ガラスビーズ、プラスチック粒、顔料、パール顔料、マイカ粉等が挙げられる。これらの添加物は、1種又は2種以上が適宜選択して使用される。
【0021】
なお、塗料の粘度としては400〜900dPa・sに設定されるのが好ましい。塗料の粘度が400dPa・s未満にあると、塗料が基材12上全体に広がってしまい、塗料層13に凹凸形状を形成しにくくなり好ましくない。一方、塗料の粘度が900dPa・sより大きいと、カーテン材14による塗料の引張り作業を行いにくくなり好ましくない。この実施形態では、塗料として前記スキン系塗料を使用した。
【0022】
次に、図3(b)に示すように、塗料の引張りの際に使用されるカーテン材14について説明すると、このカーテン材14は可撓性を有する合成樹脂材料、金属材料、紙材料(防水加工を施したもの)等をシート状、板状、へら状に成形したものが、塗料の粘度等に対応させて適宜使用される。
【0023】
カーテン材14は、次の方法により撓み量を測定した場合に撓み量5〜50mmのものを使用するのが好ましい。その方法としては、例えば100mm四方のカーテン材14において、図2(a)に示すように、カーテン材14の片側半分{図2(a)においては左側}を基台18上に片持ち支持させ、残りの片側半分{図2(a)においては右側}を支持しないで開放状態にする。そして、そのカーテン材14の右側端縁中心に重さ8gのおもりをぶら下げて、カーテン材14の右側半分を撓ませる。図2(b)に示すように、そのときのカーテン材14の上端面から下方へ撓んだカーテン材14の下端縁までの距離L1を撓み量として測定した。使用するカーテン材14において、上記方法により得られる撓み量が5mm未満にあると、カーテン材14が撓みにくくなり、塗料の引張り作業においてカーテン材14が、凸条15及び凸部17の塗料を掻き取ってしまい、その塗料が凹条16を埋めてしまい好ましくない。
【0024】
また、カーテン材14はカーテン材14を塗料に押し付けて塗料をカーテン材14により確実に引張り、塗料層13表面に確実に凹凸を形成するために、その重量1〜3kg/m2のものを使用するのが好ましい。なお、この実施形態においては、塩化ビニル樹脂材料により、厚み1mm、重量1.2kg/m2、撓み量45mmに形成されたカーテン材14を使用した。
【0025】
次に、表装材11の製造方法について説明する。
表装材11の製造方法は基材12上に塗料を吹き付ける吹き付け工程、基材12上に吹き付けられた塗料をカーテン材14により引張る引張り工程、塗料を乾燥させる乾燥工程よりなっている。
【0026】
まず、吹き付け工程について説明する。図3(a)に示すように、塗料の吹き付け工程は、基材12上に玉状に塗料を吹き付けるために、スプレー等による吹付け塗装法や刷毛等によるブラッシングにより行われる。そして、吹き付け工程により複数箇所に玉状に吹き付けられた塗料により基材12上に凹所19及び凸所20が複数箇所に形成され、それら凹所19及び凸所20により基材12表面が断面凹凸状になる。
【0027】
次に、引張り工程について説明する。上記吹き付け工程により基材12上に吹き付けられた塗料がまだ流動性を有する状態、即ち、塗料が未硬化、未乾燥の状態において、まず、図3(b)に2点鎖線で示すように、上記カーテン材14の下端部が撓むように、カーテン材14を塗料上に載置する。そして、凹所19の厚みが凸所20の厚みの7/10〜1/10の状態において、カーテン材14が図3(b)に実線で示す位置となるように、カーテン材14又は基材12を同基材12の一角部からその対角線上に位置する一角部方向へ移動させる。すると、カーテン材14の下端部により、凹凸に吹き付けられた塗料のうち、カーテン材14の下端部に接触する複数の凸所20の上部がカーテン材14の進行方向又は基材12の進行方向とは反対方向へ引張られる。
【0028】
このとき、凸所20の上部の引張り量は15〜300mmに設定されるのが好ましい。引張り量が15mm未満にあると、塗料層13の表面に線状又は帯状に延びる凸条15を形成しにくく好ましくなく、引張り量を300mmより大きくしても凸条15がそれ以上延びなくなり好ましくない。一方、図3(b)に破線で示すカーテン材14の下端部の通過する高さより低い凸所20は、その上部がカーテン材14により引張られず、そのままの状態となる。
【0029】
すると、図1及び図3(c)に示すように、凸所20の上部は線状又は帯状に延びて凸条15が複数箇所に形成される。一方、撓んだカーテン材14の下端部が通過する線より低い凸所20により基材12上に凸部17が形成される。さらに、隣接する凸条15間にそれら凸条15と同じ方向へ延びる凹条16が形成され、その凹条16の厚みt1は凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5〜1/5になる。また、塗料層13内部は塗料により粒子状に形成される。
【0030】
なお、凸条15の幅やその延びる方向への長さは塗料の表面とカーテン材14の上端縁との間の距離を調整することにより適宜変更することができるようになっている。例えば、カーテン材14をその撓み量が大きく、軽量なものを使用した場合、上記距離が短くてもカーテン材14は容易に撓むため、凸所20上部を確実に引張ることができる。
【0031】
続いて、乾燥工程について説明する。乾燥工程は、遠赤外線炉による加熱の他、直火加熱、熱風加熱、電熱による加熱、電子線照射などの手段が挙げられる。なお、塗料が乾燥すればよいので、強制乾燥ではなくて自然乾燥でもよい。
【0032】
以上のような工程を経ることにより、塗料層13の表面に凸条15と凹条16とにより縞模様が形成され、内部が粒子状に形成された表装材11を製造することができる。
【0033】
上記のような実施形態によって発揮される効果について以下に記載する。
・ 基材12上に塗料を凹凸状をなすように吹き付け、カーテン材14により塗料の複数の凸所20の上部を一定方向へ引張ることにより、塗料層13表面に線状又は帯状に延びる凸条15を形成し、隣接する凸条15間に凸条15と同じ方向へ延びる凹条16を形成した。さらに、塗料層13内を塗料により粒子状に形成した。そのため、得られる表装材11に縞模様及び凹凸を表現して、良好な外観を発揮させることができる。
【0034】
・ 表装材11の製造方法は吹き付け工程、引張り工程及び乾燥工程よりなっている。そのため、従来の表装材の製造方法のように第1混合塗布材の塗布工程、第2混合塗布材の塗布工程、乾燥工程及び研磨工程からなる場合と異なり、製造工程を簡易化して、表装材11を容易に製造することができる。
【0035】
・ 塗料の粘度は400〜900dPa・sに設定されているため、引張り工程において、カーテン材14による塗料の引張り作業を確実に行うことができるとともに、得られる表装材11の塗料層13に凹凸形状を確実に形成することができる。
【0036】
・ 塗料層13の凹凸において、凹条16の厚みt1は凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5〜1/5に設定されているため、塗料層13が汚れたり、薄くなりすぎるのを防止することができるとともに、その塗料層13の表面に凹凸形状を確実に表現することができる。
【0037】
・ カーテン材14はその撓み量が5〜50mm、重量が1〜3kg/m2に設定されたものが使用される。そのため、カーテン材14による塗料の引張り作業を確実に行うことができるとともに、得られる表装材11の塗料層13に凹凸形状を確実に形成することができる。
【0038】
・ 塗料層13をスキン系塗料によって形成することにより、着色骨材や天然石により所定の色や模様を容易に発現させることができ、表装材11の質感を向上させることができる。
【0039】
・ 凹所19の厚みが凸所20の厚みの7/10〜1/10の状態において、得られる表装材11の塗料層13の凹条16の厚みt1が凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5〜1/5となるようにカーテン材14を引っ張るようにした。そのため、表装材11に凹凸を確実に形成することができる。
【0040】
・ 引張り工程において、カーテン材14による凸所20の上部の引張り量は15〜300mmに設定されている。そのため、塗料層13の表面に線状又は帯状に延びる凸条15を確実に形成することができる。
【0041】
【実施例】
以下に、前記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
(実施例1)
アクリル系合成樹脂エマルション(固形分45重量%)を250重量部、着色骨材(粒度500〜45μm)を300重量部、寒水石(粒度800〜45μm)を700重量部、その他の成分(固形分20重量%)50重量部づつ配合して塗料を調製した。次に、着色骨材の色をそれぞれ変更して3色の塗料を調製し、水希釈により各塗料を粘度400dPa・sに調整した。
【0042】
次いで、3色の塗料を、吹き付け量が5.5kg/m2となるように基材12(この実施例1では不織布を使用した)の上に同時にスプレーして吹き付け工程を行った。続いて、塗料が未硬化、未乾燥の時に、撓み量45mm、重量1.23kg/m2の塩化ビニル樹脂製のカーテン材14を使用して引張り工程を行った。最後に乾燥工程を行って塗料を乾燥させ塗料層13を基材12上に形成した。得られた表装材11は、塗料層13表面の凹条16、凸条15、凸部17及び着色骨材とにより奇麗な色調や縞模様が発揮されるとともに、凹凸形状が形成されて良好な外観を有するものであった。
【0043】
(実施例2)
アクリル−スチレン系合成樹脂エマルション(固形分50重量%)を200重量部、着色骨材(粒度500〜45μm)を500重量部、寒水石(粒度800〜45μm)を500重量部、その他の成分(固形分20重量%)50重量部づつ配合して塗料を調製した。次に、着色骨材の色をそれぞれ変更して3色の塗料を調製し、水希釈により各塗料を粘度600dPa・sに調整した。
【0044】
次いで、3色の塗料を基材12(この実施例2では基材として建築物のコンクリート面)10m2に同時にスプレーして吹き付け工程を行った。続いて、塗料が未硬化、未乾燥の時に、撓み量10mm、重量2kg/m2のアクリル樹脂製のカーテン材14を使用して引張り工程を行った。最後に乾燥工程を行って塗料を乾燥させ塗料層13をコンクリート面に形成し、土木構築物用の表装材11を形成した。得られた表装材11は、塗料層13表面の凹条16と凸条15とにより奇麗な色調や縞模様が発揮されるとともに、凹凸形状が形成されて良好な外観を有するものであった。
【0045】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することもできる。
・ 塗料における着色骨材、天然石のうちの少なくともいずれか一方を省略してもよい。実施形態では基材12として不織布を使用したが、基材12として建築物の壁面、床面等に塗料を直接吹き付けてもよい。また、実施形態では、凸条15及び凹条16を平面四角形状の不織布の対角線に沿って形成したが、凸条15及び凹条16を不織布の縦又は横方向へ延びて形成してもよい。
【0046】
・ 表装材11の塗料層13の凹凸において、凹条16の厚みt1を凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5〜1/5以外に設定してもよい。
さらに、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
【0047】
・ 前記塗料の粘度は400〜900dPa・sに設定されている請求項1又は請求項2に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。このように構成した場合、請求項1又は請求項2に記載の効果に加え、塗料の凸所をカーテン材を使用して引張ったとき、そのカーテン材による塗料の引張り作業を確実に行うことができるとともに、得られる表装材の塗料層に凹凸形状を確実に形成することができる。
【0048】
・ 前記塗料に着色骨材及び天然石から選ばれる少なくとも1種を配合した請求項1又は請求項2に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。このように構成すれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、塗料層に複数の色調や質感を付与することができ、得られる建築物又は土木構築物用の表装材の外観をさらに向上させることができる。
【0049】
・ 前記塗料を2色以上の塗料を混合して形成した請求項1又は請求項2に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。このように構成すれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、塗料層に複数の色調を付与することができ、得られる建築物又は土木構築物用の表装材の外観をさらに向上させることができる。
【0050】
・ 前記カーテン材は、100mm四方のカーテン材において、その片側半分を基台上に片持ち支持させるとともに、残りの片側半分を開放状態にし、その開放側の端縁中心に重さ8gのおもりを吊り下げて、カーテン材の片側半分を撓ませたときにおける同カーテン材の上端面からカーテン材の下端縁までの距離を撓み量としたとき、その撓み量が5〜50mmに設定されている請求項1又は請求項2に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。このように構成した場合、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、塗料の引張り作業においてカーテン材により塗料を確実に引張ることができる。
【0051】
・ 前記塗料の凸所のカーテン材による引張り量は15〜300mmに設定されている請求項1又は請求項2に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。このように構成した場合、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、塗料層の表面に線状又は帯状に延びる凸部分を確実に形成することができる。
【0052】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、塗料層表面に縞模様を表現して良好な外観を発揮できる建築物又は建築用の表装材を容易に製造することができる。請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、塗料層を確実に形成することができるとともに、その塗料層の表面に凹凸形状を確実に形成することができる。
【0053】
請求項3に記載の発明によれば、塗料層表面に縞模様を表現して良好な外観を発揮できる。請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、表装材の塗料層が薄くなるのを防止することができるとともに、その塗料層の表面に凹凸形状を確実に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態の表装材を示す斜視図。
【図2】(a)はカーテン材の撓み量の測定方法を示す斜視図、(b)はカーテン材の撓み量の測定方法を示す側面図。
【図3】(a)は基材上に塗料を吹き付ける吹き付け工程を示す断面図、(b)はカーテン材を使用した引張り工程を示す断面図、(c)は表装材の断面図。
【符号の説明】
11…表装材、12…基材、13…塗料層、14…カーテン材、15…凸部分としての凸条、16…凹部分としての凹条、17…凸部分としての凸部、19…凹所、20…凸所。
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば建築物の壁面に使用される建築物又は土木構築物用の表装材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の建築物の壁面に使用される建築物用の表装材としては、例えば特開昭64−66353号公報に開示されている方法により製造されるものが知られている。その方法としては、まず、シート状をなす基材表面に、着色骨材を混入した第1混合塗布材を点在させて凹凸をなすように塗布し、次にその上に異なる色の着色骨材が混入された第2混合塗布材を塗布する。次いで、第1及び第2混合塗布材が硬化し、基材上に塗料層が形成された後に、前記第1混合塗布材の少なくとも1部分が塗料層表面に露出する程度に同塗料層表面を研磨する。その結果、色が異なる第1及び第2混合塗布材がそれぞれ塗料層表面に露出した表装材が得られる。そして、その表装材を建築物の壁面に装着することにより、その壁面に意匠性が付与される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来方法により得られる建築物用の表装材では、その製造工程において、第1混合塗布材が基材上に点在するように塗布される。そのため、塗料層表面を研磨して、第1混合塗布材を塗料層表面に露出させたとき、第1混合塗布材は斑模様にしか露出しない。従って、従来の建築物用の表装材は装飾性に欠け、外観を向上させることができないという問題があった。
【0004】
また、製造工程は、第1混合塗布材の塗布工程、第2混合塗布材の塗布工程、乾燥工程及び塗料層表面の研磨工程から構成されている。そのため、従来の建築物用の表装材の製造方法は工程数が多く、面倒であるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、塗料層表面に縞模様を表現して良好な外観を発揮できる建築物又は土木構築物用の表装材を提供することにある。その他の目的とするところは、塗料層表面に縞模様を表現して良好な外観を発揮できる建築物又は土木構築物用の表装材を容易に製造することができる建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法は、基材上に塗料層を形成するための1種又は2種以上の色の着色骨材や天然石が混入された塗料を、前記基材上に凹所及び凸所を形成するべく吹き付け、その塗料が流動性を有する状態において、少なくとも前記塗料の凸所を可撓性を有するカーテン材を使用して引張った後、塗料を乾燥して塗料層表面のうちの少なくとも一部分に線状又は帯状に延びる凸部分を形成し、塗料層の内部を粒子状に形成するとともに、その凸部分と複数の凸部分間に形成された凹部分とにより塗料層表面に凹凸形状を形成するものである。
【0007】
請求項2に記載の発明の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記基材上の凹凸における凹所の厚みが凸所の厚みの7/10〜1/10の状態において、塗料層表面の凹凸における凹部分の厚みが凸部分の厚みの4/5〜1/5となるように前記凸所をカーテン材により引張るものである。
【0008】
請求項3に記載の発明の建築物又は土木構築物用の表装材は、請求項1又は請求項2に記載の製造方法で得られた建築物又は土木構築物用の表装材であって、基材と、その基材上に形成された塗料層とよりなり、その塗料層表面の少なくとも一部分に線状又は帯状に延びる凸部分が形成され、塗料層の凸部分の厚みは2〜10mmに設定され、塗料層の内部が粒子状に形成されるとともに、その凸部分と複数の凸部分間に形成された凹部分とにより塗料層表面に凹凸形状が形成されたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明の建築物又は土木構築物用の表装材は、請求項3に記載の発明において、前記塗料層表面の凹凸における凹部分の厚みは凸部分の厚みの4/5〜1/5に形成されているものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を建築用の表装材に具体化した一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、建築用の表装材(以下、単に表装材と称す)11は、基材12と、その基材12上に凹凸状に吹き付けられた塗料を図示しないカーテン材を使用して所定方向へ引張ることにより、その塗料が内部が粒子状に形成されるとともに、表面が線状又は帯状に形成された塗料層13とから構成されている。
【0012】
基材12としては、可撓性のある不織布、織布、ガラスクロス、紙等が使用されるとともに、可撓性のない合板、窯業用サイディング、金属サイディング、ALC板、GRC板、PC板等が使用され、特に可撓性のある不織布又はガラスクロスが好適に使用される。この実施形態では平面四角形状をなす不織布を使用した。
【0013】
塗料層13は基材12の一対角線方向に沿って線状又は帯状に延びる凸部分としての凸条15と隣接する凸条15間に形成された凹部分としての凹条16とにより断面凹凸形状をなすとともに、その凹凸により塗料層13表面に縞模様が形成されている。なお、塗料層13の表面において、凸条15が形成されず、点状をなす凸部分としての凸部17と前記凹条16とにより凹凸が形成されている部分もある。
【0014】
さらに、塗料層13中には1種又は2種以上の色の着色骨材や天然石が混入され、それら着色骨材が前記凸条15、凸部17及び凹条16に点在して、表装材11の表面に色調が発揮されるようになっている。また、塗料層13の内部は図示しないが塗料が粒子状に形成されている。なお、塗料層13の凸部分の厚みは、2〜10mmに設定されるのが好ましい。凸部分の厚みが2mm未満の場合は、表装材11に凹凸感を付与することが困難になり、表装材11全体が平板状になってしまい好ましくない。一方、凸部分の厚みが10mmより厚くなると、表装材11の重量が嵩んで、その表装材11の施工作業が行いにくくなり、さらに、塗料層13の原材料コストが嵩んでしまい好ましくない。
【0015】
図3(c)に示すように、塗料層13の凹凸において、凹条16の厚みt1は凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5〜1/5に設定するのが好ましく、1/2〜1/4に設定するのがより好ましい。凹条16の厚みt1が凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5より大きくなると、塗料層13の表面が平面的になり凹凸形状を表現することができず、良好な外観を得ることができなくなり好ましくない。一方、凹条16の厚みt1が凸条15及び凸部17の厚みt2の1/5より小さくなると、塗料層13の凹凸形状の凹凸差が大きくなり、凹条16に埃等がたまりやすく、汚れの原因となるおそれがあり好ましくない。加えて、凹条16の厚みが薄くなり、表装材11が透けてしまうおそれがあり好ましくない。
【0016】
塗料層13を形成する塗料としては、一般の溶剤型塗料、エマルション型塗料、加熱硬化型塗料等の他、感熱ゲル塗料、スキン系塗料等が使用され、これらの塗料の中でも、顔料、骨材成分の観点から考慮した場合は、骨材固有の色調を効果的に発揮することができるスキン系塗料を使用するのが好ましい。また、結合材成分の観点から考慮した場合は、塗料層13を厚く形成した場合において、その塗料層13内部までの硬化時間を短くできる感熱ゲル塗料を使用するのが好ましい。
【0017】
なお、塗料は、骨材固有の色調を効果的に発揮することができ、塗料層13内部までの硬化時間を短くできることからスキン系塗料と感熱ゲル塗料を併用するのが好ましい。また、塗料層13は、2色以上の着色骨材、天然石等を含有させたりして、2色以上の塗料により形成するのが好ましく、このようにすることにより表装材11の外観をより一層良好にすることができる。
【0018】
塗料を構成するエマルションとしては、各種アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、ベオバアクリル酸エステル共重合体、SBRラテックス、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、特にアクリル系のエマルションが好適に使用される。これらの重合体は、少なくとも1種が適宜選択して使用される。
【0019】
感熱ゲル塗料としては、エマルションと感熱ゲル化剤とを配合したものが使用される。感熱ゲル化剤としては、亜鉛アンモニウム錯塩、ノニオン系界面活性剤、無機金属塩、ポリプロピレングリコール、シリコーンポリエーテル共重合体、ポリビニルメチルエーテル等が使用され、特に亜鉛アンモニウム錯塩が使用される。これらの感熱ゲル化剤はそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。感熱ゲル塗料に着色骨材、天然石等を添加して使用してもよい。
【0020】
スキン系塗料は前記エマルション中に主に着色骨材や天然石を含有した塗料であり、その着色骨材としては、けい砂、寒水石等に着色を施したものが使用され、天然石としては、寒水石、けい砂、大理石等又はこれらの天然石の砕粒が使用される。これらの着色骨材及び天然石は、それぞれ適宜選択して使用される。また、着色骨材及び天然石の他に陶磁器粉砕粒、ガラスビーズ、プラスチック粒、顔料、パール顔料、マイカ粉等が挙げられる。これらの添加物は、1種又は2種以上が適宜選択して使用される。
【0021】
なお、塗料の粘度としては400〜900dPa・sに設定されるのが好ましい。塗料の粘度が400dPa・s未満にあると、塗料が基材12上全体に広がってしまい、塗料層13に凹凸形状を形成しにくくなり好ましくない。一方、塗料の粘度が900dPa・sより大きいと、カーテン材14による塗料の引張り作業を行いにくくなり好ましくない。この実施形態では、塗料として前記スキン系塗料を使用した。
【0022】
次に、図3(b)に示すように、塗料の引張りの際に使用されるカーテン材14について説明すると、このカーテン材14は可撓性を有する合成樹脂材料、金属材料、紙材料(防水加工を施したもの)等をシート状、板状、へら状に成形したものが、塗料の粘度等に対応させて適宜使用される。
【0023】
カーテン材14は、次の方法により撓み量を測定した場合に撓み量5〜50mmのものを使用するのが好ましい。その方法としては、例えば100mm四方のカーテン材14において、図2(a)に示すように、カーテン材14の片側半分{図2(a)においては左側}を基台18上に片持ち支持させ、残りの片側半分{図2(a)においては右側}を支持しないで開放状態にする。そして、そのカーテン材14の右側端縁中心に重さ8gのおもりをぶら下げて、カーテン材14の右側半分を撓ませる。図2(b)に示すように、そのときのカーテン材14の上端面から下方へ撓んだカーテン材14の下端縁までの距離L1を撓み量として測定した。使用するカーテン材14において、上記方法により得られる撓み量が5mm未満にあると、カーテン材14が撓みにくくなり、塗料の引張り作業においてカーテン材14が、凸条15及び凸部17の塗料を掻き取ってしまい、その塗料が凹条16を埋めてしまい好ましくない。
【0024】
また、カーテン材14はカーテン材14を塗料に押し付けて塗料をカーテン材14により確実に引張り、塗料層13表面に確実に凹凸を形成するために、その重量1〜3kg/m2のものを使用するのが好ましい。なお、この実施形態においては、塩化ビニル樹脂材料により、厚み1mm、重量1.2kg/m2、撓み量45mmに形成されたカーテン材14を使用した。
【0025】
次に、表装材11の製造方法について説明する。
表装材11の製造方法は基材12上に塗料を吹き付ける吹き付け工程、基材12上に吹き付けられた塗料をカーテン材14により引張る引張り工程、塗料を乾燥させる乾燥工程よりなっている。
【0026】
まず、吹き付け工程について説明する。図3(a)に示すように、塗料の吹き付け工程は、基材12上に玉状に塗料を吹き付けるために、スプレー等による吹付け塗装法や刷毛等によるブラッシングにより行われる。そして、吹き付け工程により複数箇所に玉状に吹き付けられた塗料により基材12上に凹所19及び凸所20が複数箇所に形成され、それら凹所19及び凸所20により基材12表面が断面凹凸状になる。
【0027】
次に、引張り工程について説明する。上記吹き付け工程により基材12上に吹き付けられた塗料がまだ流動性を有する状態、即ち、塗料が未硬化、未乾燥の状態において、まず、図3(b)に2点鎖線で示すように、上記カーテン材14の下端部が撓むように、カーテン材14を塗料上に載置する。そして、凹所19の厚みが凸所20の厚みの7/10〜1/10の状態において、カーテン材14が図3(b)に実線で示す位置となるように、カーテン材14又は基材12を同基材12の一角部からその対角線上に位置する一角部方向へ移動させる。すると、カーテン材14の下端部により、凹凸に吹き付けられた塗料のうち、カーテン材14の下端部に接触する複数の凸所20の上部がカーテン材14の進行方向又は基材12の進行方向とは反対方向へ引張られる。
【0028】
このとき、凸所20の上部の引張り量は15〜300mmに設定されるのが好ましい。引張り量が15mm未満にあると、塗料層13の表面に線状又は帯状に延びる凸条15を形成しにくく好ましくなく、引張り量を300mmより大きくしても凸条15がそれ以上延びなくなり好ましくない。一方、図3(b)に破線で示すカーテン材14の下端部の通過する高さより低い凸所20は、その上部がカーテン材14により引張られず、そのままの状態となる。
【0029】
すると、図1及び図3(c)に示すように、凸所20の上部は線状又は帯状に延びて凸条15が複数箇所に形成される。一方、撓んだカーテン材14の下端部が通過する線より低い凸所20により基材12上に凸部17が形成される。さらに、隣接する凸条15間にそれら凸条15と同じ方向へ延びる凹条16が形成され、その凹条16の厚みt1は凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5〜1/5になる。また、塗料層13内部は塗料により粒子状に形成される。
【0030】
なお、凸条15の幅やその延びる方向への長さは塗料の表面とカーテン材14の上端縁との間の距離を調整することにより適宜変更することができるようになっている。例えば、カーテン材14をその撓み量が大きく、軽量なものを使用した場合、上記距離が短くてもカーテン材14は容易に撓むため、凸所20上部を確実に引張ることができる。
【0031】
続いて、乾燥工程について説明する。乾燥工程は、遠赤外線炉による加熱の他、直火加熱、熱風加熱、電熱による加熱、電子線照射などの手段が挙げられる。なお、塗料が乾燥すればよいので、強制乾燥ではなくて自然乾燥でもよい。
【0032】
以上のような工程を経ることにより、塗料層13の表面に凸条15と凹条16とにより縞模様が形成され、内部が粒子状に形成された表装材11を製造することができる。
【0033】
上記のような実施形態によって発揮される効果について以下に記載する。
・ 基材12上に塗料を凹凸状をなすように吹き付け、カーテン材14により塗料の複数の凸所20の上部を一定方向へ引張ることにより、塗料層13表面に線状又は帯状に延びる凸条15を形成し、隣接する凸条15間に凸条15と同じ方向へ延びる凹条16を形成した。さらに、塗料層13内を塗料により粒子状に形成した。そのため、得られる表装材11に縞模様及び凹凸を表現して、良好な外観を発揮させることができる。
【0034】
・ 表装材11の製造方法は吹き付け工程、引張り工程及び乾燥工程よりなっている。そのため、従来の表装材の製造方法のように第1混合塗布材の塗布工程、第2混合塗布材の塗布工程、乾燥工程及び研磨工程からなる場合と異なり、製造工程を簡易化して、表装材11を容易に製造することができる。
【0035】
・ 塗料の粘度は400〜900dPa・sに設定されているため、引張り工程において、カーテン材14による塗料の引張り作業を確実に行うことができるとともに、得られる表装材11の塗料層13に凹凸形状を確実に形成することができる。
【0036】
・ 塗料層13の凹凸において、凹条16の厚みt1は凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5〜1/5に設定されているため、塗料層13が汚れたり、薄くなりすぎるのを防止することができるとともに、その塗料層13の表面に凹凸形状を確実に表現することができる。
【0037】
・ カーテン材14はその撓み量が5〜50mm、重量が1〜3kg/m2に設定されたものが使用される。そのため、カーテン材14による塗料の引張り作業を確実に行うことができるとともに、得られる表装材11の塗料層13に凹凸形状を確実に形成することができる。
【0038】
・ 塗料層13をスキン系塗料によって形成することにより、着色骨材や天然石により所定の色や模様を容易に発現させることができ、表装材11の質感を向上させることができる。
【0039】
・ 凹所19の厚みが凸所20の厚みの7/10〜1/10の状態において、得られる表装材11の塗料層13の凹条16の厚みt1が凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5〜1/5となるようにカーテン材14を引っ張るようにした。そのため、表装材11に凹凸を確実に形成することができる。
【0040】
・ 引張り工程において、カーテン材14による凸所20の上部の引張り量は15〜300mmに設定されている。そのため、塗料層13の表面に線状又は帯状に延びる凸条15を確実に形成することができる。
【0041】
【実施例】
以下に、前記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
(実施例1)
アクリル系合成樹脂エマルション(固形分45重量%)を250重量部、着色骨材(粒度500〜45μm)を300重量部、寒水石(粒度800〜45μm)を700重量部、その他の成分(固形分20重量%)50重量部づつ配合して塗料を調製した。次に、着色骨材の色をそれぞれ変更して3色の塗料を調製し、水希釈により各塗料を粘度400dPa・sに調整した。
【0042】
次いで、3色の塗料を、吹き付け量が5.5kg/m2となるように基材12(この実施例1では不織布を使用した)の上に同時にスプレーして吹き付け工程を行った。続いて、塗料が未硬化、未乾燥の時に、撓み量45mm、重量1.23kg/m2の塩化ビニル樹脂製のカーテン材14を使用して引張り工程を行った。最後に乾燥工程を行って塗料を乾燥させ塗料層13を基材12上に形成した。得られた表装材11は、塗料層13表面の凹条16、凸条15、凸部17及び着色骨材とにより奇麗な色調や縞模様が発揮されるとともに、凹凸形状が形成されて良好な外観を有するものであった。
【0043】
(実施例2)
アクリル−スチレン系合成樹脂エマルション(固形分50重量%)を200重量部、着色骨材(粒度500〜45μm)を500重量部、寒水石(粒度800〜45μm)を500重量部、その他の成分(固形分20重量%)50重量部づつ配合して塗料を調製した。次に、着色骨材の色をそれぞれ変更して3色の塗料を調製し、水希釈により各塗料を粘度600dPa・sに調整した。
【0044】
次いで、3色の塗料を基材12(この実施例2では基材として建築物のコンクリート面)10m2に同時にスプレーして吹き付け工程を行った。続いて、塗料が未硬化、未乾燥の時に、撓み量10mm、重量2kg/m2のアクリル樹脂製のカーテン材14を使用して引張り工程を行った。最後に乾燥工程を行って塗料を乾燥させ塗料層13をコンクリート面に形成し、土木構築物用の表装材11を形成した。得られた表装材11は、塗料層13表面の凹条16と凸条15とにより奇麗な色調や縞模様が発揮されるとともに、凹凸形状が形成されて良好な外観を有するものであった。
【0045】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することもできる。
・ 塗料における着色骨材、天然石のうちの少なくともいずれか一方を省略してもよい。実施形態では基材12として不織布を使用したが、基材12として建築物の壁面、床面等に塗料を直接吹き付けてもよい。また、実施形態では、凸条15及び凹条16を平面四角形状の不織布の対角線に沿って形成したが、凸条15及び凹条16を不織布の縦又は横方向へ延びて形成してもよい。
【0046】
・ 表装材11の塗料層13の凹凸において、凹条16の厚みt1を凸条15及び凸部17の厚みt2の4/5〜1/5以外に設定してもよい。
さらに、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
【0047】
・ 前記塗料の粘度は400〜900dPa・sに設定されている請求項1又は請求項2に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。このように構成した場合、請求項1又は請求項2に記載の効果に加え、塗料の凸所をカーテン材を使用して引張ったとき、そのカーテン材による塗料の引張り作業を確実に行うことができるとともに、得られる表装材の塗料層に凹凸形状を確実に形成することができる。
【0048】
・ 前記塗料に着色骨材及び天然石から選ばれる少なくとも1種を配合した請求項1又は請求項2に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。このように構成すれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、塗料層に複数の色調や質感を付与することができ、得られる建築物又は土木構築物用の表装材の外観をさらに向上させることができる。
【0049】
・ 前記塗料を2色以上の塗料を混合して形成した請求項1又は請求項2に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。このように構成すれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、塗料層に複数の色調を付与することができ、得られる建築物又は土木構築物用の表装材の外観をさらに向上させることができる。
【0050】
・ 前記カーテン材は、100mm四方のカーテン材において、その片側半分を基台上に片持ち支持させるとともに、残りの片側半分を開放状態にし、その開放側の端縁中心に重さ8gのおもりを吊り下げて、カーテン材の片側半分を撓ませたときにおける同カーテン材の上端面からカーテン材の下端縁までの距離を撓み量としたとき、その撓み量が5〜50mmに設定されている請求項1又は請求項2に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。このように構成した場合、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、塗料の引張り作業においてカーテン材により塗料を確実に引張ることができる。
【0051】
・ 前記塗料の凸所のカーテン材による引張り量は15〜300mmに設定されている請求項1又は請求項2に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。このように構成した場合、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、塗料層の表面に線状又は帯状に延びる凸部分を確実に形成することができる。
【0052】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、塗料層表面に縞模様を表現して良好な外観を発揮できる建築物又は建築用の表装材を容易に製造することができる。請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、塗料層を確実に形成することができるとともに、その塗料層の表面に凹凸形状を確実に形成することができる。
【0053】
請求項3に記載の発明によれば、塗料層表面に縞模様を表現して良好な外観を発揮できる。請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、表装材の塗料層が薄くなるのを防止することができるとともに、その塗料層の表面に凹凸形状を確実に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態の表装材を示す斜視図。
【図2】(a)はカーテン材の撓み量の測定方法を示す斜視図、(b)はカーテン材の撓み量の測定方法を示す側面図。
【図3】(a)は基材上に塗料を吹き付ける吹き付け工程を示す断面図、(b)はカーテン材を使用した引張り工程を示す断面図、(c)は表装材の断面図。
【符号の説明】
11…表装材、12…基材、13…塗料層、14…カーテン材、15…凸部分としての凸条、16…凹部分としての凹条、17…凸部分としての凸部、19…凹所、20…凸所。
Claims (4)
- 基材上に塗料層を形成するための1種又は2種以上の色の着色骨材や天然石が混入された塗料を、前記基材上に凹所及び凸所を形成するべく吹き付け、その塗料が流動性を有する状態において、少なくとも前記塗料の凸所を可撓性を有するカーテン材を使用して引張った後、塗料を乾燥して塗料層表面のうちの少なくとも一部分に線状又は帯状に延びる凸部分を形成し、塗料層の内部を粒子状に形成するとともに、その凸部分と複数の凸部分間に形成された凹部分とにより塗料層表面に凹凸形状を形成する建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。
- 前記基材上の凹凸における凹所の厚みが凸所の厚みの7/10〜1/10の状態において、塗料層表面の凹凸における凹部分の厚みが凸部分の厚みの4/5〜1/5となるように前記凸所をカーテン材により引張る請求項1に記載の建築物又は土木構築物用の表装材の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の製造方法で得られた建築物又は土木構築物用の表装材であって、基材と、その基材上に形成された塗料層とよりなり、その塗料層表面の少なくとも一部分に線状又は帯状に延びる凸部分が形成され、塗料層の凸部分の厚みは2〜10mmに設定され、塗料層の内部が粒子状に形成されるとともに、その凸部分と複数の凸部分間に形成された凹部分とにより塗料層表面に凹凸形状が形成された建築物又は土木構築物用の表装材。
- 前記塗料層表面の凹凸における凹部分の厚みは凸部分の厚みの4/5〜1/5に形成されている請求項3に記載の建築物又は土木構築物用の表装材。
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