JP3547182B2 - 弗化ビニリデンポリマーの製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は水性媒体中ラジカル開始剤と適当な連鎖移動剤の存在下で重合させる弗化ビニリデン(VDF)ポリマーの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及び他の弗化オレフィン(例えばヘキサフルオロプロペン又はテトラフルオロエチレン)とのVDFコポリマーが、有機又は無機過酸化物を開始剤として使用し、水性媒体中で重合させて作りうることが知られている。最も普通に用いられる過酸化物は、ジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)(米国特許第3,193,539号参照)とジ−i−プロピルペルオキシジカーボネート(IPP)(米国特許第3,475,396号参照)である。最終物の機械特性と加工性を改良するように分子量分布を効果的にコントロールするには、重合中、適当な連鎖移動剤の使用が提案されている。例えば、米国特許第3,475,396号では、アセトンが使用されており、これはペルオキシド(IPP)の移動媒体及び連鎖移動剤として作用する。更に、IPPが開始剤として使用されたとき、連鎖移動剤としてのイソプロピルアルコールの使用は、米国特許4,360,652号に記載されている。更に、ヨーロッパ特許第387,938号には、開始剤としてペルオキシジスルフェートを使用し、分子量調整剤としてアルキルアセトンを使用してPVDFを製造している。しかしながら、連鎖移動剤としてそのような極性化合物の使用は、極性末端基を導入する妨げとなり、特に溶融加工段階で、変色生成の現象を生じる。
【0003】
変色現象を減少させることについて、ヨーロッパ特許第169,328号には、VDF重合の連鎖移動剤としてトリクロロフルオロメタンの使用が記載されている。しかしながら、トリクロロフルオロメタンはペルハロゲン化塩素含有化合物であり、高いオゾン減少性を有するので、環境に対する汚染物質である。
【0004】
【課題を解決するための手段及び作用】
出願人は、水性媒体中で、VDF重合中、1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン(HCFC−123)が、連鎖移動剤として特に効果的であり、良好な特性の最終生成物を得ることができ、実質的に高温での変色が全くないことを見いだしている。
【0005】
従って、この発明の目的は、連鎖移動剤として1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン(HCFC−123)及びラジカル開始剤の存在下で、水性媒体中、任意に他の弗化オレフィン類と共に、VDFを重合させることからなる、弗化ビニリデン(VDF)ポリマーの製造法である。
HCFC−123は、実質的にゼロのオゾン減少性を有し、従来のクロロフルオロカーボンの置換化合物であることが知られている。HCFC−123は、例えば、米国特許第4,967,023号に記載されているように、テトラクロロエチレンの弗化水素化により合成することができる。
【0006】
反応媒体に添加するHCFC−123の量は、得るべき分子量により広範囲で変化させることができる。例えば、1〜25g/10′(ASTM D−1238基準により、5Kgの負荷で、230℃で測定)のメルトフローインデックス(MFI)を有するPVDFを得るために、モノマーの全量に対して、0.1〜6.0重量%、好ましくは0.3〜3.0重量%の量のHCFC−123を反応器に供給する。
【0007】
移動剤は、重合中不連続な量で継続的に反応器に供給される。更に、重合の開始時に移動開始剤を一括して添加することもできる。HCFC−123供給の特に好ましい方法は、この出願人名義の1994年5月17日提出のヨーロッパ特許出願第94107588.9号に記載されている方法であり、この記載をここに入れる。
【0008】
重合反応は、20℃〜160℃、好ましくは30℃〜130℃の温度下で一般的に行うことができる。反応圧力は一般的に30〜100バール、好ましくは40〜90バールに変化させることができる。
開始剤としては、選択された(共)重合温度で活性ラジカルを生じうる化合物を使用することができる。例えば、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムペルオキシジスルフェートのようなペルオキシド無機塩、例えばジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)のようなジアルキルペルオキシド類、例えばジエチル−及びジ−i−プロピル−ペルオキシジカーボネート(IPP)、ビス−(4−t−ブチル−シクロヘキシル)−ペルオキシジカーボネートのようなジアルキルペルオキシジカーボネート類、t−アルキルペルオキシベンゾエート類、例えばt−ブチル及びt−アミルペルピバレートのようなt−アルキルペルオキシピバレート類、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシドから選択することができる。
【0009】
使用する開始剤の量は重要ではなく、一般に0.1〜10g/リットルH2O 、好ましくは0.5〜5g/リットルH2O である。
反応は、安定なエマルジョンを形成するために適切な界面活性剤(例えば、米国特許第4,360,652号及び第4,025,709号公報の記載参照)の存在下で行われる。一般に、それらは弗化界面活性剤であり、下記一般式の生成物から選択される:
Rf −X− M+
(式中、Rf は、炭素数5〜16の(ペル)フルオロアルキル鎖又はポリオキシアルキレン鎖であり、X− は−COO− 又は−SO3 − であり、M+ はH+ 、NH4 + 又はアルカリ金属イオンである。)。最も一般的に使用されるものとして、アンモニウムペルフルオロオクタノエート、1以上のカルボキシル基で末端をキャップした(ペル)フルオロポリオキシアルキレン、式Rf −C2 H4 SO3 Hのスルホン酸塩類(式中、Rf は炭素数1〜4のペルフルオロアルキルである。)(米国特許第4,025,709号参照)等が挙げられる。
【0010】
例えば塗料の配合のように、高い分子量を必要としないときは、米国特許第5,095,081号に記載されているように重合を界面活性剤なしで行うこと、又は米国特許第4,524,194号に記載されているように適切な懸濁剤、例えばポリビニルアルコール又は水溶性セルロース誘導体の存在下の懸濁液中で行うことができる。
【0011】
好ましい実施例において、上記ヨーロッパ特許出願第94107588.9号に記載されたように、HCFC123が95〜120℃、好ましくは100〜115℃の温度で、水性エマルジョン中で、VDF重合工程において連鎖移動剤として使用される。この工程で、50℃より高い自己促進分解温度(SADT)を有する有機ペルオキシドが開始剤として好適に使用され、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチル(2−エチル−ヘキシル)ペルオキシカーボネート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートが挙げられる。このような工程により、有害でない過酸化物開始剤を使用して、かなり良好な加工性及び脱ヒドロフルオロ化に対する高い熱化学耐性を有し、室温及び高温の両方で優れた機械特性を有するPVDFを得ることができる。
【0012】
この発明の目的のために、VDFの重合は、VDFホモ重合及び少なくと炭素数2〜6の他の弗化オレフィンで共重合させたVDFを少なくとも50モル%含むコポリマーを得るために、VDF含量が優勢であるモノマー混合物の共重合の両方を意味する。VDFで共重合可能な弗化オレフィンの内、特に次のものが使用できる。即ち、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ビニルフルオライド、ペンタフルオロプロペン等である。特に好ましいことは、VDFが70〜99モル%であり、TFE及び/又はHFPが1〜30モル%からなるコポリマーである。
【0013】
この発明の目的の工程は、エマルジョンの存在下、好ましくは米国特許第4,789,717号及び第4,864,006号に記載されたようにペルフルオロポリオキシアルキレン類のミクロエマルジョンの存在下、又は本出願人の名義で1994年5月5日に出願したヨーロッパ特許出願94107042.7号に記載のように水素含有末端基及び/又は水素含有繰り返し単位を有するフルオロポリオキシアルキレン類のミクロエマルジョンの存在下で行うことができる。
【0014】
ポリマーの凝集を阻害し、反応壁への接着を妨げるために、重合温度で液体の鉱油又はパラフィンを反応混合物に添加することができる。
この発明の製造の実施例を以下に示す。しかし、これら実施例の目的は単に説明のためであり、この発明自身の範囲を限定しない。
【0015】
【実施例】
実施例1.
回転数480rpmにした攪拌機を装着した10リットルの縦型反応器に水6.5リットルとパラフィンワックス(融解温度50〜52℃のAGIP製122−126)35gを入れた。そして、反応器を反応温度115℃にし、VDFガスを供給することにより圧力を44相対バールにした。
【0016】
次に、ペルフルオロオクタン酸ナトリウム塩1.820重量%の水性溶液500mlとジ−t−ブチルペルオキシド23.7gを加えた。このとき、反応器の圧力を一定にするため、VDFが重合中絶えず供給された。
次に、連鎖移動剤として0.120モルのHCFC−123を重合中、10回に分けて反応器に加えた。
【0017】
得られたポリマーの全量は1000gであり、水中のポリマーの最終濃度を143.0g/lH2O に調整し、最終濃度に対して、ポリマー濃度が増加する10%間隔でHCFC−123を加えた。そのことを次の表1に示した。
【0018】
【表1】
【0019】
反応媒体中のポリマー濃度は、初期添加工程後、反応器に加えるガスモノマーの量をはかることで観察した。
反応開始から200分後、所望のポリマー濃度(143.0g/lH2O )に達した。このとき、VDFを加えるのを止め、ラテックスを反応器から取り除いた。次に、ポリマーを凝固させ、脱イオン水で洗浄し、75℃で24時間乾燥した。そして得た反応物は、押出しによってペレットのフォームに成形し、その特性を測定した。
【0020】
ASTMD−1238スタンダードにより5Kg、230℃でMFIを測定した。示差走査熱量測定法(DSC)により、第2溶融エンタルピー(ΔHm′)と第2融解温度(Tm′)を決定した。
ポリマーの熱安定性は、予備加熱4分後ペレット化した生成物及び200℃2分間で生成物粉の圧縮成形より得たプラク(33×32×2mm)の両方を評価した。変色効果を良好に示すために、2時間250℃で加熱処理したプラクの色も評価した。外観の色の評価スケールは、0(白)と5(黒)の間で決定した。そのデータを表2に示した。
【0021】
【表2】
【0022】
実施例2.(比較例)
連鎖移動剤としてメチル−t−ブチルエーテル0.07モルを10回に分けて加える以外は、実施例1と同様の条件で反応器中に導入した。
得られた反応物の特性は、実施例1と同様の方法で行なわれる。そのデータを表2に示した。
【0023】
実施例3.
攪拌機を装着した7.5リットルの横型反応器でVDF重合を行った。水5.5リットル、パラフィンワックス4g及び弗化界面活性剤(Surflon S111S:アサヒガラス社製)2重量%の水溶液115mlを入れた。そして、反応器を反応温度115℃にし、VDFガスを加えることにより圧力50絶対バールにした。次に、ジ−t−ブチルペルオキシド15.1gを加え、一定の圧力に維持するために重合工程中VDFを継続的に供給した。重合開始時に、連鎖移動剤としてHCFC−123を0.279モル加えた。この重合は269分間行われ、417g/lH2O 濃度に対応する2291gのポリマーが得られた。
【0024】
得られた反応物は、実施例1と同様の操作で特性を測定した。そのデータを表2に示した。
【0025】
【発明の効果】
本発明の弗化ビニリデンポリマーの製造方法において、連鎖移動剤として、1,1,1−トリフルオロ2,2−ジクロロエタン(HCFC−123)を使用することにより、有害物質を含まず、高温下での優れた耐変色特性を有し、優れた機械特性と加工性を有する弗化ビニリデン(VDF)ポリマーを得ることができる。
Claims (3)
- 弗化ビニリデンを、任意に他の弗化オレフィンと組み合わせ、水性媒体中、ラジカル開始剤と連鎖移動剤としての1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン(HCFC−123)の存在下で重合させることからなり、供給モノマーの全量に対し、0.1〜6.0重量%のHCFC−123の全量が水性媒体に供給される弗化ビニリデン(VDF)ポリマーの製造法。
- 重合温度が20℃〜160℃である請求項1による製造法。
- 重合が水性エマルジョン中、95℃〜120℃の温度で、ラジカル開始剤として50℃以上の自己促進分解温度(SADT)を有し、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチル(2−エチル−ヘキシル)ペルオキシカーボネート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートからなる群から選択される有機過酸化物を用いて行われる請求項2による製造法。
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