JP3545336B2 - ごま焼酎の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ごま焼酎の製造方法に関し、更に詳しくは、ごま焼酎の製造過程における酵母の使用方法と、及び脂質を調整したごま原料を用いることによってできる、味の調和した、旨いごま焼酎の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ごまを原料としたごま焼酎は、風味が豊かであり、健康趣向にマッチした焼酎として好評を博しているものである。
従来におけるごま焼酎の製造方法としては、例えば、本願出願人による特公昭55−104949号公報及び特公平6−102009号公報で記載したように、ごま焼酎を製造するには、先ず、米こうじを製造する製麹工程を行った後、この米こうじに、水と「さしもと」(種菌)を加えて、1次仕込を行っている。
【0003】
この時、使用する「さしもと」は、日本醸造協会誌(1992年、9月号)、あるいは、本格焼酎製造技術(1991年12月10日発行)に記載されているように、仕込当初の、もろみ数本は、純粋培養酵母を用い、以後は、3〜4日目の1次もろみを種酵母としている。
一般に、「さしもと」は、20〜30仕込続けた後、再び純粋培養酵母で仕込むというパターンが、通常であった。
【0004】
また、3次仕込に用いるごま原料は、特に、脂質を制限していないものを使用するのが通常であった。
【0005】
このような方法で、製造したごま焼酎は、1次仕込に使用する「さしもと」の培養回数が少なく、酒母での揮発酸、電導度が安定せず、もろみでの揮発酸、電導度が高く、そのため、このもろみを常法どおり減圧蒸留しても、香味のバランスが若干悪く、あらくなり、若干雑味のある焼酎になっていっている点に若干の課題がある。
また、従来においては、3次仕込に添加するごまの脂質を制限していないため、脂質の多いごまを使用した場合、もろみでの脂質の浸出が多くなり、油臭が強く、このもろみを常法どおり蒸留しても、ごま香のおもい、油臭のある焼酎になって、品質が一定せず、濾過工程、ブレンド工程での管理に多くの時間を費やす点に課題があるものである。
【0006】
一方、日本人の食生活やライフスタイルが多様化、変化するに従って、健康によい、いろんな飲み方ができるなどの理由で、本格焼酎の消費量が年々増加している。他方で、焼酎のおいしさ、味、質を更に追求する消費者が多くなってきているのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、ごまの香味が更に調和した、本格的で、おいしいごま焼酎の製造方法を提供することを第1の目的とするものである。また、第二の目的は、蒸留後の焼酎の濾過工程、ブレンド工程を簡素化して、品質の一定したごま焼酎の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の課題等について鋭意検討した結果、ごま焼酎の製造過程において、1次仕込に使用する酵母として特定の酵母を用いること、また、この特定の酵母を用いると共に、3次原料であるごまの脂質を特定値以下に調整したものを用いることにより、上記目的のごま焼酎の製造方法が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)に存する。
(1) ごま焼酎の製造過程において、1次仕込に使用する酵母を連続的に培養を繰り返し、酒母中の酵母を順化、安定させたものを用いてごま焼酎を製造することを特徴とするごま焼酎の製造方法。
(2) ごま焼酎の製造過程において、1次仕込に使用する酵母を連続的に培養を繰り返し、酒母中の酵母を順化、安定させたものを用いると共に3次原料であるごまの脂質を15%以下に調整されたものを用いてごま焼酎を製造することを特徴とするごま焼酎の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の第1発明は、ごま焼酎の製造過程において、1次仕込に使用する酵母を連続的に培養を繰り返し、酒母中の酵母を順化、安定させたものを用いてごま焼酎を製造することを特徴とするものであり、第2発明は、ごま焼酎の製造過程において、1次仕込に使用する酵母を連続的に培養を繰り返し、酒母中の酵母を順化、安定させたものを用いると共に、3次原料であるごまの脂質を15%以下に調整されたものを用いてごま焼酎を製造することを特徴とするものである。
以下において、「本発明方法」という場合、上記第1発明及び第2発明を含むものである。
【0010】
本発明方法において、ごま焼酎を製造する場合、先ず、精白米より米こうじを製造する。この製麹過程では、精白米を水洗、浸漬、水切りして、浸漬米とし、これを蒸して、蒸米を製造する。この蒸米に種こうじを添加混合して、製麹機に引込み、30〜35℃、44〜45時間程度で製麹を行い、米こうじとする。
次に、この米こうじに、水と酵母(さしもと)を添加、混合して5〜7日間で酒母を育成する。従来、この1次仕込に使用する「さしもと」は、連続的に培養を繰り返したものでないものであった。
【0011】
本第1及び第2発明では、この「さしもと」を連続的に17回以上、好ましくは、20回以上培養を繰り返したものを用いて、強健な酒母を育成することにある。
2次仕込は、この1次もろみに、通常精白大麦を水洗、浸漬、水切りした、浸漬大麦を蒸した蒸麦と水を添加、混合して発酵させる。2次発酵が終了後、3次仕込は、従来どおり、搾油して油を除去した後のごま、焙煎後搾油して油を除去したごま及び焙煎して摺り潰したごまよりなる郡より選んだ、少なくとも1種を使用していたが、ごまの脂質には制限がなかった。本第2発明では、このごまの脂質を15%以下に、好ましくは、7〜12%、更に好ましくは、8〜9%に調整したものを添加して、発酵させ、常法どおり減圧蒸留することにより、ごま焼酎が製造されることとなる。
【0012】
本発明方法では、通常の「さしもと」を用いて、1次発酵を行った場合、酒母での揮発酸、電導度が高く、この酒母を用いて、2次発酵を行っても、もろみでの揮発酸、電導度は高いものであった。この揮発酸、電導度の高いもろみを常法どおり、減圧蒸留しても、香味のバランスが若干悪く、あらく、若干雑味のある焼酎になっているものであった。従って、本第1及び第3発明では、連続的に17回以上、好ましくは、20回以上酵母の培養を繰り返した同一の「さしもと」を、1次仕込に用いることにより、酒母での揮発酸、電導度を減少させ、安定した熟成酒母を育成することにある。
この酒母を用いて、2次発酵を行うと、下記表1のように2次もろみでの揮発酸、電導度が大幅に減少して、従来よりも更に果実香のする香の良いもろみとなる。なお、17回以上、好ましくは、20回以上培養を繰り返した「さしもと」は、以後も継続して使用することができる。
【0013】
【表1】
【0014】
次に、本第2発明では、更に、3次仕込に添加するごまの脂質を15%以下に調整したものを用いることにより、もろみでの脂質の浸出を抑え、更に、香味のバランスのとれたもろみとなる。脂質が多いと、油臭の原因となる。このもろみを常法どおり減圧蒸留すると、油臭のない、果実香とごま香の調味された、更に雑味のない、旨味のあるごま焼酎を製造することができることとなる。
本第2発明において、用いる3次原料であるごまの脂質が15%以下、好ましくは、7〜12%、更に好ましくは、8〜9%となる、ごまであれば、ごまの種類、処理態様等は特に限定されるものでないが、搾油して油を除去した後のごま、若しくは、焙煎後搾油して油を除去したごま、または、焙煎して摺り潰したごま等の脂質を調整したものが挙げられる。
【0015】
本第2発明において、3次原料であるごまの脂質を15%以下に調整する方法としては、例えば、ごまを加熱焙煎し、エキスぺラ(圧搾機)にかけ、2段階で圧搾すると、脂質が15%以下のものが得られる。なお、最終的にごまの脂質が15%以下に調整できるものであれば、上記方法に限定されるものではない。
【0016】
本発明方法では、上述の如く、1次仕込に使用する酵母は、酒母のなかで連続的に17回以上、好ましくは、20回以上培養を繰り返した、順化、安定した「さしもと」を用いること、更に、この順化、安定した「さしもと」を用いると共に、3次仕込に用いるごま原料のごまの脂質を、15%以下に調整して、その所望量を添加し、発酵させ、常法どおり減圧蒸留すると、本発明の目的を達成できることとなり、上記特定の「さしもと」、ごまの脂質を特定値以下のものを使用する以外の製造工程等は通常のごま焼酎の製造工程と同様である。
このように構成される本第1発明では、ごま焼酎の製造過程において、1次仕込に使用する酵母を連続的に培養を繰り返し、酒母中の酵母を順化、安定させたものを用いてごま焼酎を製造することにより、香味のバランスが更に良好となり、雑味のないごま焼酎となる。また、本第2発明では、上記第1発明のごま焼酎の製造過程において、更に、3次原料であるごまの脂質を15%以下に調整したものを用いてごま焼酎を製造することにより、香味のバランスが更に良好となり、果実香とごま香の調味された、更に雑味のない、旨味のあるごま焼酎となる。
また、上記第2発明において、3次原料であるごまの脂質を15%以下に調整したものを用いたものは、蒸留後の焼酎の工程管理(濾過工程、ブレンド工程)も簡素化され、更に、品質の一定のごま焼酎を提供できることとなる。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0018】
実施例1〜3で用いた「さしもと」、ごま原料は下記のものを用いた。
〔実施例1〜3で用いた「さしもと」〕
実施例1は培養回数37回目のもの、実施例2は培養回数38回目のもの、実施例3は、培養回数32回目のものを夫々用いた。
【0019】
〔実施例1〜3で用いたごま原料〕
実施例1〜2で用いたごま原料は、共にごまの脂質を8〜9%に調整したごまを、実施例3は焙煎したごまの脂質が50%の搾油していないものを用いた。
【0020】
(実施例1)
<製麹過程> 精白米3,000kgを水洗し、18℃で8分間水に浸漬し、水切して、浸漬米とした。この浸漬米を連続蒸米機で50分蒸し、水分35.1%の蒸米を得た。この蒸米に種こうじ3kgを添加、冷却し、33.5℃で製麹機に引込む。製麹時間44時間30分、切返し時の品温35℃で、自動制御通風により品温を35℃〜30℃に保ち、米こうじを製造した。この米こうじの分析値は水分24.2%、酸度5.8(分析は国税庁所定分析法による)であった。
<1次仕込過程> 米こうじに、水4,000リットル、さしもと5リットルを加えて、1次仕込液(6,592リットル)とした。1次発酵を6日間行い、1次もろみ6,420リットルを得た。
1次発酵の最高温度は、20.5℃であった。
【0021】
<2次仕込過程> この1次もろみを2次発酵槽に移動し、精白大麦6,000kgを水洗、18℃、30分、水に浸漬して、水切した浸漬大麦を、連続蒸米機で60分蒸して冷却した蒸麦(水分36.0%)と、水9,000リットルを加えて2次仕込を行った。
仕込温度22.4℃、数量23,180リットルであった。2次発酵の最高温度は23.6℃であった。
<3次仕込過程> 2次発酵を10日間行った後、脂質を9%に調整したごま2,300kg(添加時の品温23.2℃、容量22,959リットルであった。)を添加して、3次仕込とした。3次発酵期間は、4日で、熟成もろみ23,027リットルを得た。
この熟成もろみは、アルコール分18.5%、純アルコールは4,259.99リットルであった。
<蒸留過程> この熟成もろみを、4回に分けて80Torr、沸点43.5℃〜46.1℃で減圧蒸留して、製品(アルコール分44.1%、収得量8,642リットル、純アルコール3,811.12、蒸留歩合89.46%)を得た。
この焼酎の分析値は、酸度0.72、pH4.56、電導度6.3μm/cmであった。
このもろみの発酵経過と分析値を下記表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
(実施例2)
<製麹過程> 精白米3,000kgを実施例1と同様に蒸し、35.5%の蒸米を得、冷却後、種こうじ3kgを添加、混合し、製麹機に引込む。引込時の品温34℃であった。製麹時間44時間30分、切返し時の品温35℃で、自動制御通風により、品温を35℃〜30℃に保ち、米こうじを製造した。米こうじの分析値は、水分24%、酸度7.4(分析は国税庁所定分析法による)であった。
<1次仕込過程> 米こうじに水4,000リットル、さしもと5リットルを加えて、1次仕込液(6,492リットル)とした。1次発酵を6日間行い、1次もろみ6,317リットルを得た。1次発酵の最高温度は20℃であった。
<2次仕込過程> この1次もろみを2次発酵槽に移動し、精白大麦6,000kgを実施例1と同様に蒸麦(水分35.5%)としたものと、水9,000リットルを加えて2次仕込を行った.仕込温度は21.4℃、数量22,929リットルであった。2次発酵の最高温度は、22.9℃であった。
【0024】
<3次仕込過程> 2次発酵を11日間行った後、脂質を8%に調整したごま2,300kg(添加時の品温22.1℃、容量22,895リットルであった。)を添加して、3次仕込とした。3次発酵期間は2日で、熟成もろみ23,048リットルを得た。
熟成もろみのアルコール分は、18.6%、純アルコールは4,286.92リットルであった。
<蒸留過程> この熟成もろみを4回に分けて80Torr、沸点41.6℃〜46.3℃で減圧蒸留して、製品(アルコール分44.1%、収得量8,715リットル、純アルコール3,843.31リットル、蒸留歩合89.65%)を得た。
この焼酎の分析値は、酸度0.72、pH4.61、電導度6.5μm/cmであった。
このもろみの発酵過程と分析値を下記表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
(実施例3)
<製麹過程> 精白米1,000kgを水洗し、18℃で5分間水に浸漬し、水切して、浸漬米とした。この浸漬米を連続蒸米機で50分蒸し、水分36.5%の蒸米を得た。この蒸米に種こうじ1kgを添加、冷却し、32.5℃で製麹機に引込む。製麹時間44時間30分、切返し時の品温35℃で、自動制御通風により品温を30℃〜35℃に保ち、米こうじを製造した。この米こうじの分析値は水分25%、酸度8.5(分析は国税庁所定分析法による)であった。
<1次仕込過程> 米こうじに、水1,333リットル、さしもと1.6リットルを加えて、1次仕込液(2,131リットル)とした。1次発酵を4日間行い、1次もろみ2,110リットルを得た。
1次発酵の最高温度は、22.7℃であった。
【0027】
<2次仕込過程> この1次もろみを2次発酵槽に移動し、精白大麦2,000kgを水洗、18℃、25分、水に浸漬して、水切した浸漬大麦を、連続蒸米機で50分蒸して冷却した蒸麦(水分35.5%)と、水3,000リットルを加えて2次仕込を行った。
仕込温度21.6℃、数量7,558リットルであった。2次発酵の最高温度は25.6℃であった。
<3次仕込過程> 2次発酵を11日間行った後、焙煎した脂質50%のごま345kg(添加時の品温25.2℃、容量7,458リットルであった。)を添加して、3次仕込とした。3次発酵期間は、2日で、熟成もろみ7,399リットルを得た。
この熟成もろみは、アルコール分18.5%、純アルコールは1368.81リットルであった。
<蒸留過程> この熟成もろみを、80Torr、沸点41.9℃〜46.4℃で減圧蒸留して、製品(アルコール分44.1%、収得量2806リットル、純アルコール1237.44リットル、蒸留歩合90.4%)を得た。
この焼酎の分析値は、酸度0.78、pH4.6、電導度6.2μm/cmであった。
このもろみの発酵経過と分析値を下記表4に示す。
【0028】
【表4】
【0029】
上記で得られた実施例1〜3のごま焼酎について、試飲したところ、従来の製法により製造されたごま焼酎に較べ、風味及び香りのバランスが良好であり、雑味がなく、旨味のある今までにない旨いごま焼酎であることが判った。
また、実施例1及び2のごま焼酎と、実施例3のごま焼酎とを、比較して官能評価を行ったところ、実施例1及び2の方が風味及び香りのバランスが更に良好であり、雑味がなく、更に旨味のあるごま焼酎であるものであった。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、風味及び香りのバランスが良好であり、雑味もなく、旨味のあるごま焼酎の製造方法が提供される。
Claims (2)
- ごま焼酎の製造過程において、1次仕込に使用する酵母を連続的に培養を繰り返し、酒母中の酵母を順化、安定させたものを用いてごま焼酎を製造することを特徴とするごま焼酎の製造方法。
- ごま焼酎の製造過程において、1次仕込に使用する酵母を連続的に培養を繰り返し、酒母中の酵母を順化、安定させたものを用いると共に、3次原料であるごまの脂質を15%以下に調整されたものを用いてごま焼酎を製造することを特徴とするごま焼酎の製造方法。
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